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特開2024-72895心拍出量計測センサ、および制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072895
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】心拍出量計測センサ、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/029 20060101AFI20240522BHJP
   A61B 5/0507 20210101ALI20240522BHJP
【FI】
A61B5/029
A61B5/0507
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054907
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】矢部 滝太郎
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭
(72)【発明者】
【氏名】須田 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】曽根 淳
【テーマコード(参考)】
4C017
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA03
4C017AB04
4C017AC40
4C017BC11
4C017DD14
4C017EE01
4C017FF05
4C127AA10
4C127EE03
(57)【要約】
【課題】複数のアンテナ素子それぞれの波形データを取得し、ひいては、心臓から拍出される血液量を比較的高い精度で推定する。
【解決手段】心拍出量計測センサ1000は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、受信アンテナ12で受信した生体90を透過した電磁波を用いて、心臓91から拍出される血液量を推定する心拍出量推定部214と、を備え、送信アンテナ11および受信アンテナ12の少なくとも一方は、複数のアンテナ素子r、および該アンテナ素子rそれぞれのON/OFFを、所定の周期で順次切り替え毎にる高速切替部122を含み、
さらに、高速切替部122によりONとなった複数のアンテナ素子rそれぞれに関する計測値を、各アンテナ素子rと紐付けて点データとして記録する点データ記録部211と、点データ記録部211が記録した点データを並べ、複数のアンテナ素子r毎に計測値の経時的変化を表す波形データを生成する波形データ生成部212と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を生体に向けて送信する送信アンテナと、
前記送信アンテナに対して、前記生体の心臓を挟んで対向するように配置された受信アンテナと、
前記受信アンテナで受信した、前記生体を透過した電磁波を用いて、心臓から拍出される血液量を推定する心拍出量推定部と、を備え、
前記送信アンテナおよび前記受信アンテナの少なくとも一方は、複数のアンテナ素子、および該アンテナ素子それぞれのON/OFFを、所定の周期で順次切り替える高速切替部を含み、
さらに、前記高速切替部によりONとなった前記複数のアンテナ素子それぞれに関する計測値を、各アンテナ素子と紐付けて点データとして記録する点データ記録部と、
前記点データ記録部が記録した点データを並べ、前記複数のアンテナ素子毎に前記計測値の経時的変化を表す波形データを生成する波形データ生成部と、を備える、心拍出量計測センサ。
【請求項2】
前記所定の周期は、複数の前記アンテナ素子へのONが一巡する1サイクル時間が、心周期よりも十分に短くなるような周期に設定されている、請求項1に記載の心拍出量計測センサ。
【請求項3】
前記所定の周期は、1msec以下である、請求項2に記載の心拍出量計測センサ。
【請求項4】
前記高速切替部は、複数の前記アンテナ素子のうち、1つのアンテナ素子のみをONにし、他のアンテナ素子をOFFにするように制御する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の心拍出量計測センサ。
【請求項5】
前記高速切替部は、OFF状態の前記アンテナ素子の終端条件を制御する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の心拍出量計測センサ。
【請求項6】
複数の前記アンテナ素子は、同一平面上に格子状に配置されたアンテナアレイである、請求項1から請求項5のいずれかに記載の心拍出量計測センサ。
【請求項7】
前記アンテナアレイの全体の大きさは、身体の背面側から視たときの心臓のサイズよりも大きいサイズに設定されている、請求項6に記載の心拍出量計測センサ。
【請求項8】
前記アンテナアレイは、アンテナ素子の総個数が、40個以上100個以下である、請求項7に記載の心拍出量計測センサ。
【請求項9】
前記高速切替部は、複数の前記アンテナ素子の全部を一巡させる全巡回モードと、一部の前記アンテナ素子のみを間引いて一巡させる一部巡回モードとの切り替え、および/または、前記所定の周期、もしくは複数の前記アンテナ素子へのONが一巡する1サイクル時間の変更が可能である、請求項1から請求項8のいずれかに記載の心拍出量計測センサ。
【請求項10】
前記受信アンテナが、複数の前記アンテナ素子、および前記高速切替部を備える、請求項1から請求項9のいずれかに記載の心拍出量計測センサ。
【請求項11】
前記電磁波がマイクロ波であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の心拍出量計測センサ。
【請求項12】
前記波形データ生成部が生成した波形データに基づいて、前記複数のアンテナ素子から前記心臓から拍出される血液量の推定の際に用いるアンテナ素子を決定する素子決定部をさらに備え、前記心拍出量推定部は、前記素子決定部により決定された前記アンテナ素子を用いて得られた計測値の経時的変化を表す波形データに基づいて、心臓から拍出される血液量を推定する、請求項1から請求項11のいずれかに記載の心拍出量計測センサ。
【請求項13】
電磁波を生体に向けて送信する送信アンテナと、
前記送信アンテナに対して、前記生体の心臓を挟んで対向するように配置された受信アンテナと、
前記受信アンテナで受信した、前記生体を透過した電磁波を用いて、心臓から拍出される血液量を推定する心拍出量推定部と、を備え、
前記送信アンテナおよび前記受信アンテナの少なくとも一方は、複数のアンテナ素子、および該アンテナ素子それぞれのON/OFFを、所定の周期で順次切り替える高速切替部を含む、心拍出量計測センサを制御するコンピューターで実行される制御プログラムであって、
前記高速切替部によりONとなった前記複数のアンテナ素子それぞれに関する計測値を、各アンテナ素子と紐付けて点データとして記録するステップ(a)と、
前記ステップ(a)で記録した点データを並べ、前記複数のアンテナ素子毎に前記計測値の経時的変化を表す波形データを生成するステップ(b)と、を含む処理を、前記コンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍出量計測センサ、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心拍出量の検出に関する従来技術として、特許文献1には、送信アンテナと、受信アンテナと、推定部と、を備えた装置が開示されている。この装置では、送信アンテナは患者の胸部にマイクロ波等の電波を送信し、受信アンテナは送信アンテナから送信された電波を受信し、推定部は、受信アンテナが受信した電波の位相又は振幅強度に基づいて、測定対象者の心拍出量を検出する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/194093号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電波を送受信する1対の送受信アンテナの生体に対する位置、特に心臓に対する送受信アンテナの位置関係によっては、受信アンテナが得る受信波が心拍出量の測定に適さない場合も考えられる。心臓に対して送受信アンテナの位置がずれている等で、心拍出量の測定に適さない状態で用いられた場合、得られる心拍出量の計測精度が低下する。
【0005】
また、計測毎の心拍出量の変化を診療に用いる際、送受信アンテナの位置を、測定に適した場所に配置させる技術がなければ、得られた心拍出量の変化がアンテナの設置位置が変化したためなのか、患者状態の変化によるものなのか判断できない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数のアンテナ素子それぞれの波形データを取得でき、ひいては、心臓から拍出される血液量を比較的高い精度で推定可能な心拍出量計測センサ、および制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の心拍出量計測センサは、
電磁波を生体に向けて送信する送信アンテナと、
前記送信アンテナに対して、生体の心臓を挟んで対向するように配置された受信アンテナと、
前記受信アンテナで受信した、前記生体を透過した電磁波を用いて、心臓から拍出される血液量を推定する心拍出量推定部と、を備え、
前記送信アンテナおよび前記受信アンテナの少なくとも一方は、複数のアンテナ素子、および該アンテナ素子それぞれのON/OFFを、所定の周期で順次切り替える高速切替部を含み、
さらに、前記高速切替部によりONとなった前記複数のアンテナ素子それぞれに関する計測値を、各アンテナ素子と紐付けて点データとして記録する点データ記録部と、
前記点データ記録部が記録した点データを並べ、前記複数のアンテナ素子毎に前記計測値の経時的変化を表す波形データを生成する波形データ生成部と、を備える。
【0008】
また、上記目的を達成するため本発明の制御プログラムは、
電磁波を生体に向けて送信する送信アンテナと、
前記送信アンテナに対して、生体の心臓を挟んで対向するように配置された受信アンテナと、
前記受信アンテナで受信した、前記生体を透過した電磁波を用いて、心臓から拍出される血液量を推定する心拍出量推定部と、を備え、
前記送信アンテナおよび前記受信アンテナの少なくとも一方は、複数のアンテナ素子、および該アンテナ素子それぞれのON/OFFを、所定の周期で順次切り替える高速切替部を含む、心拍出量計測センサを制御するコンピューターで実行される制御プログラムであって、
前記高速切替部によりONとなった前記複数のアンテナ素子それぞれに関する計測値を、各アンテナ素子と紐付けて点データとして記録するステップ(a)と、
前記ステップ(a)で記録した点データを並べ、前記複数のアンテナ素子毎に、前記計測値の経時的変化を表す波形データを生成するステップ(b)と、を含む処理を、前記コンピューターに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る心拍出量計測センサおよび制御プログラムによれば、複数のアンテナ素子それぞれの波形データを取得でき、ひいては、心臓から拍出される血液量を比較的高い精度で推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態における心拍出量計測センサ全体を示す概略斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る心拍出量計測センサの構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態における送受信アンテナの構成例を示す図である。
図4A】変形例における送受信アンテナの構成例を示す図である。
図4B】別の変形例における送受信アンテナの構成例を示す図である。
図5A】素子走査処理における各アンテナ素子の高速切り替え処理を示す模式図である。
図5B図5Aの処理で得られた点データを示す模式図である。
図5C図5Bの点データにより生成した波形データを示す模式図である。
図6】波形データ生成処理および心拍出量測定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。本発明の技術的範囲は、以下に説明する実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々形態を変更して実施することができる。なお、心拍出量とは、通常は1分間に心臓から拍出される血液量のことをいうが、本明細書においては、心臓から拍出される血液量のことを心拍出量ということがある。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る心拍出量計測センサ1000全体を示す概略図である。図2は、第1の実施形態に係る心拍出量計測センサ1000の構成を示すブロック図であり、図3は、第1の実施形態における送受信アンテナの構成例を示す図である。
【0013】
図1では、ベッド95上に患者90(生体または被検者ともいう)が横たわっている状態(仰臥位)を示している。心拍出量計測センサ1000により患者90の心拍出量等の心臓から拍出される血液量を測定(推定)する。例えば、心拍出量計測センサ1000は、心不全の検査、心臓手術後の経過観察、心臓病の投薬効果・副作用等の検証、等で用いられる。
【0014】
測定時には、看護師、医師等のユーザーにより、送信アンテナ11と受信アンテナ12の中心を結ぶ線が、心臓91に対応するように、両アンテナユニット(以下、単に「送受信アンテナ」ともいう)は、心臓91を挟んで互いに対向するように配置される。なお、外部電波による影響を減少させるために、測定中は、布製の電波シールドで、患者90の胸部および送受信アンテナ全体を覆うようにしてもよい。例えば、受信アンテナ12は、患者90の下に配置され、送信アンテナ11は、患者90の上方に配置される。具体的には、受信アンテナ12はベッド95の上に配置され、その上に患者90が仰向けに寝る。上方の送信アンテナ11は、側面視でコの字型の移動式の固定台(図示せず)に取り付けられる。この固定台は、手動で送信アンテナ11の高さを調整可能である。送信アンテナ11は、固定台により、患者90からわずかに離間した状態で、患者90の上方に配置される。離間させるのは、患者90の呼吸動作を妨げないことと、患者90との接触による、意図しない送信アンテナ11の移動を防止するためである。なお、送受信アンテナの配置は、図1等の配置に限定されない。例えば、上下を逆にし、送信アンテナ11を患者90の下方(背面側)に配置し、受信アンテナ12を患者90の上方側(前面側)に配置してもよい。
【0015】
図2に示すように、心拍出量計測センサ1000は、送信アンテナ11、受信アンテナ12、および装置本体20を含む。装置本体20は、移動式の架台(図示せず)に載せられてベッド95の脇に配置される。装置本体20は、内蔵バッテリまたは、商用電源から供給された電力により動作する。また、両アンテナユニットは、信号ケーブル13を通じて、装置本体20と接続されており、この信号ケーブル13を通じて、データ信号の送受信および電力供給が行われる。送受信アンテナに関しては、後述する。
【0016】
(装置本体20)
装置本体20は、送受信コントローラー14、制御部21、記憶部22、入出力I/F(インターフェース)23、および通信I/F24を備える。
【0017】
(送受信コントローラー14)
送受信コントローラー14は、信号ケーブル13を介して、送信アンテナ11および受信アンテナ12と電気的に接続される。制御部21の制御の下で、送受信コントローラー14は、両アンテナユニット間の送受信のタイミングを制御したり、受信アンテナ12からの計測値(受信信号)を取得したりする。
【0018】
(制御部21)
制御部21は、CPU、RAM、ROM、等を含みROMまたは記憶部22に記憶されたプログラムにしたがって、装置内の各部の制御を行う。制御部21は、プログラムを実行することにより、点データ記録部211、波形データ生成部212、素子決定部213、および心拍出量推定部214として機能する。点データ記録部211は計測値をアンテナ素子と紐付けて記録した点データを生成する。波形データ生成部212は波形データを生成する。素子決定部213は、波形データの特徴量に基づいて、心拍出量の推定の際に用いるアンテナ素子を決定する。心拍出量推定部214は、患者90の心拍出量、すなわち心臓91から拍出される血液量を推定(算出)する。これらの機能については後述する(後述の図5A図5C、および図6)。
【0019】
(記憶部22)
記憶部22は、予め各種プログラムや各種データを格納しておく半導体メモリや、ハードディスク等の磁気メモリから構成される。また記憶部22には、点データ、および波形データ等が記憶される。
【0020】
(入出力I/F23)
入出力I/F23は、入出力部として機能し、USB、DVIの規格等に準拠した入出力端子を備え、キーボード、マウス、マイク等の入力装置およびディスプレイ、スピーカ、プリンタ等の出力装置と接続するインターフェースである。図1図3に示す例では、入出力I/F23には、タッチパネル51が接続されている。タッチパネル51は、液晶パネルおよびこれに重畳させたタッチパッドで構成され、これを介して、ユーザーからアンテナ素子決定処理、および心拍出量測定の開始指示を受け付ける。なお、タッチパネル51等の入出力装置を、装置本体20の構成に含めてもよい。
【0021】
(通信I/F24)
通信I/F24は、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット端末、等の外部の端末装置とネットワーク経由、またはピアツーピアで、有線または無線通信によるデータの送受信を行うインターフェースである。有線通信では、イーサネット(登録商標)、SATA、PCI Express、IEEE1394、等の規格によるネットワークインターフェースを用いてもよく、無線通信では、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11、4Gなどの無線通信インターフェースを用いてもよい。図1図3に示す例では、通信I/F24には、PC61が接続されている。
【0022】
(送信アンテナ11)
図2図3に示すように送信アンテナ11は、基板110、送信波形生成部111、およびアンテナ素子t1で構成される。図3に示す第1の実施形態では、後述の変形例(図4A等)とは異なり、送信アンテナ11は、単一のアンテナ素子t1を備え、受信側は複数のアンテナ素子を備える(1対多の構成)。
【0023】
送信アンテナ11は、生体を透過する電磁波乃至電波を送信する。基板110は、各辺が数十mm~二百数十mmの全体が矩形板状の部材であり、この基板110上に送信波形生成部111、およびアンテナ素子t1が配置される。アンテナ素子t1として、一辺または直径が数十mm~百数十mmのパッチアンテナ、ダイポール形式の線状アンテナ、またはループアンテナを適用できる。例えば、アンテナ素子t1は、パッチアンテナである。
【0024】
送信波形生成部111は、電波生成器を含む。生成する電磁波の周波数は、生体の心臓91を電離作用なく透過することができれば特に限定されない。例えば、周波数300MHz~30GHzのマイクロ波が好ましく、より好ましくは400M~1.0GHzのマイクロ波である。マイクロ波は、生体透過性と、心臓91の収縮/拡張における損失変化による感度(電界強度の変化率)が高いため、心拍出量の測定に好適である。生成する電波の電力は、受信アンテナ12において十分な電力が検出できれば特に限定されないが、例えば、数mW~数十mWとしてもよい。また、生成する電波は、連続波、パルス波、または位相変調若しくは周波数変調を施した電波のいずれでもよい。
【0025】
(受信アンテナ12)
図2図3に示すように受信アンテナ12は、基板120、アンテナアレイ121、高速切替部122、およびサンプリング部123を含む。アンテナアレイ121、高速切替部122、およびサンプリング部123は、各辺が数十mm~二百数十mmの全体が矩形板状の基板120上に形成される。
【0026】
アンテナアレイ121は、複数のアンテナ素子r1~rx(以下、これらを総称して、「アンテナ素子r」ともいう(アンテナ素子tも同じ))で構成され、これらは平面状の基板120の表面に、同一平面上で格子状に配置される。送信側を単一のアンテナ素子t、受信側を複数のアンテナ素子rで構成することで、電界を作る送信アンテナの位置が一定となり、電磁波による電界が安定する。
【0027】
図3に示す第1の実施形態においては、各アンテナ素子rとして、ダイポール形式の線状アンテナ、または微小ループアンテナを適用できる。アンテナ素子rは、例えばそれぞれが、一辺または直径が数mm~十数mmのループアンテナである。隣接するアンテナ素子r同士は、密着することなく配置している。アンテナアレイ121全体のサイズとしては、生体の背面側から視たときの心臓91のサイズよりも大きいサイズに設定している。例えば、1辺が100~150mmの矩形形状である。
【0028】
また、アンテナ素子rの総個数は、好ましくは40個以上100個以下である。後述の使用するアンテナ素子rを決定する際の位置精度(位置解像度)の観点から、40個以上とすることが好ましい。上限個数は、周期tsと総個数を乗じることで算出される1サイクル時間tc(サンプリングレート)の観点や、コストの観点から100個以下が好ましい。例えば図3に示す例では、アンテナ素子rそれぞれは12mmの略矩形のループアンテナであり、アンテナアレイ121は、縦横7個ずつの総数49個のアンテナ素子r1~r49で構成される。そして、隣接するアンテナ素子r同士の間隔は2mm程度で配置され、アンテナアレイ121全体のサイズは約100mm角である。
【0029】
高速切替部122は、各アンテナ素子r1~rxに対応した複数のスイッチング素子s1~sx(以下、これらを総称して、「スイッチング素子s」ともいう)で構成される。高速切替部122では、いずれか1個のスイッチング素子s(例えば素子s1(図2参照))のみをON状態にし、その他のスイッチング素子s(例えば素子s2~sx)は全てOFFにする。複数のアンテナ素子を同時にON状態で動作させた場合、アンテナ同士が結合し、1つのアンテナとして動作してしまい、所望の計測値が得られない虞がある。このような現象を避けるため、高速切替部122では、1つのアンテナ素子r(および図4A等の例では送信アンテナ素子t)のみをON状態にする。
【0030】
また、高速切替部122は、OFF状態のアンテナ素子rの終端条件を制御する、すなわち、OFF状態のアンテナ素子rを、高周波的に接地する。このようにすることで、OFF状態のアンテナ素子による誘導障害等の影響を減らせる。
【0031】
サンプリング部123は、サンプリング回路と、AD変換回路、バッファー回路を含む。サンプリング部123は、ON状態のアンテナ素子r(例えば素子r1)が受信した電波信号をサンプリングし、電界強度をデジタル信号(計測値)に変換する。各アンテナ素子rに対応したデジタル化した計測値は、逐次、または所定単位(例えば、1サイクル時間tc毎の49個のデータ)でまとめて、装置本体20の送受信コントローラー14に送られる。
【0032】
(送受信アンテナの変形例)
図4Aは、変形例(多対多)における送受信アンテナの構成例を示す図であり、図4Bは、別の変形例(多対1)における送受信アンテナの構成例を示す図である。
【0033】
上述した図3に示す第1の実施形態(1対多)では、受信アンテナ12側に複数のアンテナ素子を配置した。すなわち、受信アンテナ12がアンテナアレイ121、およびこれをスイッチング制御する高速切替部122を備えた。しかしながら、図4Aに示す変形例のように、送信アンテナ11b側にも複数のアンテナ素子t1~txを配置してもよい。すなわち、図4Aに示すように、送信アンテナ11bが、送信波形生成部111とともに、アンテナアレイ113、およびこれをスイッチング制御する高速切替部112を備えてもよい。なお、アンテナアレイ113および高速切替部112は、受信アンテナ12のアンテナアレイ121および高速切替部122と同様の構成を備えるため、説明を省略する。
【0034】
また、図4Bに示す別の変形例(多対1)のように、受信アンテナ12b側を1つのアンテナ素子としてもよい。図4Bに示す受信アンテナ12bは、1つの受信アンテナr1とこれに接続したサンプリング部123で構成される。なお、図3図4A図4Bの実施形態でのアンテナアレイを構成する送受信アンテナ素子の数は、あくまでも例示であり、49個よりも少なくともよく、多くてもよい。例えば、送信側アンテナアレイ113のアンテナ素子tの個数を数個にしてもよく、100個以上にしてもよく、受信側アンテナアレイ121のアンテナ素子rの個数を数個にしてもよく、100個以上にしてもよい。これらの数の下限はアンテナ素子の配置の位置精度に影響し、上限は、サンプリングレートに影響する。数を多くすると、1サイクル時間tcが長くなり、サンプリングレートが低くなり、正しい波形データ(後述の図5C参照)が得られなくなる。
【0035】
図3の受信アンテナ側をアンテナアレイにする構成と図4Bの送信アンテナ側をアンテナアレイにする構成を比較すると、受信アンテナ側をアンテナアレイにする構成の方が、送信アンテナ側をアンテナアレイにする構成よりも、心拍出量の測定に好適なアンテナ素子をより正確に選定できることが発明者の検討により明らかになっている。
【0036】
(点データ記録部211、および波形データ生成部212)
次に、図5Aから図5Cを参照し、点データ記録部211、および波形データ生成部212の機能について説明する。なお、以下の説明においては、送受信アンテナの構成は、図3に示した第1の実施形態のような構成例であるとして説明する(図6も同様)。この場合、以下に説明するように点データ記録部211は、高速切替部122によりONとなったアンテナ素子rそれぞれに関して計測された計測値を、アンテナ素子rそれぞれと紐付けて点データとして記録する。
【0037】
なお、図4Aに示した変形例(多対多)を適用する場合には、送信側のアンテナ素子t、および受信側のアンテナ素子rを順次、高速切替部112、122により切り替える。すなわち、ある時刻では、同時に1系統のアンテナ素子t、rの伝播経路のみが作動するように、両アンテナユニットを同期させながら高速で切り替える。この場合、点データ記録部211は、高速切替部112、122によりONとなったアンテナ素子t、rそれぞれに関する計測値を、アンテナ素子t、rそれぞれと紐付けて点データとして記録する。例えば、ある時刻では、送信のアンテナ素子txと受信のアンテナ素子rxの伝播経路で送受信された受信信号を、これらの送受信のアンテナtx、rxに紐付けて、点データとして記録される。図4Bに示した別の変形例(多対1)でも同様の処理により、それぞれのアンテナ素子tx(と1つのアンテナ素子r1)に紐付けて、点データとして記録される。
【0038】
図5Aは、素子走査処理における各アンテナ素子の高速切り替え処理を示す模式図である。送受信コントローラー14は、素子走査処理時(後述の図6のステップS101~S107に対応)には、高速切替部122を制御する。図5Aでは、巡回モードが「全巡回モード」で、所定の周期tsが100μsecに設定された例を示している。素子走査処理時においては、高速切替部122は巡回モードと周期の設定に応じて、アンテナ素子r1~r49まで、それぞれのON/OFFを周期tsで順次切り替える。なお、他の巡回モードとしては、「一部巡回モード」がある。この一部巡回モードでは、アンテナアレイ121のうち一部のアンテナ素子rのみを間引いて一巡させる。例えば、アンテナ素子r1、r3,r5……r47、r49のように1つ置きのアンテナ素子rを使用したり、奇数列のアンテナ素子rのみを使用したりする。
【0039】
また周期ts、および/または1サイクル時間tcも任意の値に設定できる。例えば周期tsは、10μsec~1msecの間で任意の値を設定できる。また、1サイクル時間tcは、周期tsの設定にともない1msec~100msecの間で任意の値に設定したり、周期tsによらず、例えば周期tsを固定(例えば100μsec固定)で、ウェイト時間を調整することで、1サイクル時間tcを5~100msecの間で任意の設定にしたりしてもよい。この巡回モードと周期/1サイクル時間の設定は、ユーザーによりおこなわれてもよく、制御部21側で自動におこなってもよい。
【0040】
サンプリング部123はON状態にあるアンテナ素子rが受信した電界強度に応じた受信信号を取得する。点データ記録部211は、送受信コントローラー14を介して、この受信信号を取得し、各素子rと紐付けて、記憶部22またはRAMに一時的に記録する。
【0041】
図5Bは、図5Aの処理で得られた点データを示す模式図である。隣接するアンテナ素子rでは、1つの周期ts(100μsec)分だけ、取得タイミングがずれる。例えば、素子r2の点データp12の取得時刻は、素子r1の点データp11の取得時刻よりも周期ts分だけ遅れた時刻になる。同様に最後のアンテナ素子r49の点データp149は、素子r1の点データp11よりも、48の周期ts分(4.8msec)遅れることになる。また、1つの素子においては、隣接する点データは、1サイクル時間tc分の間隔となる。例えば、素子r1の点データp11よりも1サイクル時間tc後に点データp21が取得されることになる。1サイクル時間tcは、総個数(多対多の場合は組み合わせ数)に周期tsを乗じることにより算出できる。例えば図5Bでは、1サイクル時間tcは4.9msec(=49×100μsec)となる。なお、図5Bおよび以下においては、数値を丸めて4.9msecを5msecで表記する。
【0042】
図5Cは、図5Bの点データにより生成した波形データを示す模式図である。この波形データは、波形データ生成部212が、点データ記録部211が記録した点データを、素子r毎に収集して、経時的に並べたものである。図5Cでは、素子r1を用いた際の波形データを代表として示している。この波形データは、素子r1に紐付けられた多数の点データp11、p21、p23等で構成される。
【0043】
(所定の周期tsの範囲)
周期tsの上限は、複数のアンテナ素子rへのONが一巡する1サイクル時間tcが、心周期よりも十分に短くなるような周期である。例えば、心周期の5~8分の1、より好ましくは10分の1である。具体的には、心拍数の最大値は、心疾患を考慮して最大180回/分、すなわち3Hzとする。一般に、精度よく波形を生成するためのサンプリングレートは、その10倍以上が好ましく30Hz(33msec)となる。これをアンテナ素子rの総個数の好ましい範囲40~100個の下限個数の40で除すると0.8msecとなる。周期tsの上限としては、これよりも少し広めの1.0msec(サンプリングレートを8倍程度想定)とした。なお周期tsの下限は、回路構成に依存するサンプリングの安定性により適宜決定される。例えば周期tsの下限は数十μsecである。
【0044】
(波形データ生成および心拍出量測定処理)
図6は、波形データ生成処理および心拍出量測定処理を示すフローチャートである。
【0045】
(ステップS101)
制御部21は、ユーザーの開始指示により送受信アンテナによる送受信を開始させる。具体的には、ユーザーは、送信アンテナ11と受信アンテナ12を互いに、心臓91を挟んだ状態で対向させて配置する。その後、ユーザーは、タッチパネル51やキーボード等により、測定開始の指示を入力する。この時に、ユーザーは、巡回モードと周期tsの設定を行ってもよい。以下においては、図5Aから図5Cと同様に、巡回モードは全巡回モードで、素子数は49個で、周期tsが100μsec、1サイクル時間tcが5msecとして説明する。
【0046】
(素子走査処理(S102から107))
このステップS102からS107の処理は素子走査処理である。この素子走査処理では、複数のアンテナ素子の中から心拍出量の測定に好適な、すなわち、心臓91に対する配置位置が最もよいアンテナ素子rを決定するために、各アンテナ素子rを順に走査して、計測信号を収集する。なお、素子走査処理の実行中は、送信アンテナ11では、マイクロ波を送信し続ける、または、受信側のアンテナ素子rの切り替えタイミングに合わせた、パルス波を送信する。
【0047】
(ステップS102)
ステップS102では、制御部21は、ステップS106との間でループの処理を行う。このループでは、全巡回モードの設定に応じて、アンテナ素子r1から最後のアンテナ素子rx(r49)まで1つずつ順々に対象のアンテナ素子rを切り替える。
【0048】
(ステップS103)
高速切替部122により、対象となるアンテナ素子rをON状態に切り替える。例えば、アンテナ素子r1をOFF状態からON状態に変更し、他のON状態のアンテナ素子rがあればこれをOFF状態に変更する。
【0049】
(ステップS104)
サンプリング部123は、ON状態のアンテナ素子rでの計測値を取得する。
【0050】
(ステップS105)
点データ記録部211は、ステップS104で取得した計測値を、対象のアンテナ素子rと紐付けて点データとして記録する。なお、このステップS105は所定単位(例えば1サイクル時間tcの49個分)でまとめて処理するようにしてもよい。例えば、サンプリング部123のバッファーで所定単位のデータを保持しておく。そして点データ記録部211では、この所定単位のデータをまとめて取得し、一括して処理する。
【0051】
(ステップS106)
最後のアンテナ素子rxでなければ、所定周期tsで、対象のアンテナ素子rを次に変更して、ステップS102以下のループ処理を繰り返す。最後のアンテナ素子rxであればループを抜けて処理をステップS107に進める。
【0052】
(ステップS107)
制御部21は、終了条件を満たしているか判定し、満たしていれば(YES)、処理をステップS108に進め、満たしていなければ(NO)、ステップS102以下のループ処理を繰り返す。終了条件としては、例えば1~数回の心拍相当の時間(例えば数秒)が経過した場合、または繰り返し回数(数百~千回)に到達した場合である。
【0053】
(ステップS108)
波形データ生成部212は、点データから素子r1~素子rxのそれぞれを用いた際の波形データを生成する。例えば図5Cのような波形データを素子r毎に生成する。
【0054】
(ステップS109)
素子決定部213は、各素子rxを用いて得られた各波形データの特徴量を算出し、特徴量に基づいて、最も特性がよいアンテナ素子rを決定する。決定するアンテナ素子rの個数は、1個でもよく、複数個(例えば4個)でもよい。これにより、適正に配置された送受信アンテナを利用でき、ひいては高い精度で心臓から拍出される血液量を推定可能となる。ここで特徴量としては、例えば、波形データの振幅、自己相関係数、1波形における波形面積(振幅の時間積分値)、等を用いることができる。以降は、心拍出量計測センサ1000は、この決定したアンテナ素子rを用いて、再度受信信号を測定し、再度測定した受信信号の波形データに基づいて下記ステップS110の処理を行って心拍出量を推定し、患者90の心臓91の挙動をモニターする。なお、再度測定した受信信号のデータも、点データを並べ替えて繋いでいる点を除き、図5Cに示すような波形データとなる。
【0055】
(ステップS110)
心拍出量推定部214は、図5Cに示したような波形データにおいて、心臓が収縮期にあるときと、拡張期にあるときの信号強度の差分から、患者90の心臓91の心拍出量、または心臓から拍出される血液量を推定する。心臓91は、収縮期に比べて拡張期においては、損失がより大きくなり、信号の減衰が大きくなる。すなわち収縮期に比べて拡張期では、受信信号の強度が小さくなる。この信号強度の変化は、心臓の大きさの変化、すなわち1拍出量に比例するので、信号強度の変化により心拍出量を推定(算出)できる。なお、心拍出量に加えて、1つの波形の強度の変化から算出される1回拍出量を表示させてもよい。また、心拍出量に加えて、さらに心拍動の周波数を、心拍数として表示してもよい。さらに、入力された被験者の身長や体重等の情報から体表面積を算出し、心拍出量を体表面積で割ることで、心係数として表示してもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る心拍出量計測センサ1000は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、受信アンテナ12で受信した生体を透過したマイクロ波を用いて、心臓から拍出される血液量を推定する心拍出量推定部214と、を備え、送信アンテナ11および受信アンテナ12の少なくとも一方は、複数のアンテナ素子、および該アンテナ素子それぞれのON/OFFを、所定の周期で順次切り替える高速切替部122を含み、さらに、高速切替部122によりONとなった複数のアンテナ素子rそれぞれに関する計測値を、各アンテナ素子rと紐付けて点データとして記録する点データ記録部211と、点データ記録部211が記録した点データを並べ、複数のアンテナ素子r毎に計測値の経時的変化を表す波形データを生成する波形データ生成部212と、を備える。このように構成することで、複数のアンテナ素子それぞれの波形データを取得でき、これにより最適なアンテナ素子を用いて測定でき、ひいては、心臓から拍出される血液量を比較的高い精度で推定できる。
【0057】
また、所定の周期は、複数のアンテナ素子へのONが一巡する1サイクル時間tcが、心周期よりも十分に短くなるような周期、例えば1msec以下に設定されている。これにより十分なサンプリングレートを確保でき、波形を精度よく生成できる。
【0058】
例えば、本実施形態とは異なり、高速切替部122を適用しない比較例の構成の場合、次のような問題がある。例えば、比較例では、アンテナ素子r1について10秒間、1msec間隔で波形を取得し、その次はアンテナ素子r2について10秒間、1msec間隔で波形を取得する、というように1つのアンテナ素子について10秒間ずつ順番に波形を取得する方式となる。この比較例では、アンテナ素子r1とアンテナ素子r49との波形取得時刻に480秒の差が生じることになる。この場合、各アンテナ素子が取得した波形が、呼吸に伴う臓器位置の変動等の影響を受け、同等の条件で各アンテナ素子の波形を比較することができなくなり、心拍出量の測定に適したアンテナ素子を正しく選択できなくなるおそれがある。
【0059】
これに対して、本実施形態では、1サイクル時間tcが1msec以内に設定されており、全てのアンテナ素子について同一の時間帯(略同時)で波形を取得できる。このため、呼吸に伴う臓器位置の変動等の影響を受けることなく同等の条件でアンテナ素子の波形を比較することができ、心拍出量の測定に好適なアンテナ素子を選択できる。
【0060】
また、本実施形態では、高速切替部は、複数のアンテナ素子のうち、1つの1つのアンテナ素子のみをONにし、他のアンテナ素子をOFFにするように制御する、また、OFF状態のアンテナ素子の終端条件を、高周波的に接地するように構成する。このようにすることで、アンテナ同士が結合し、1つのアンテナとして動作してしまうことを防止し、またOFF状態の他のアンテナからの影響を減少でき、高精度で計測できる。
【0061】
またアンテナアレイ111または112の全体の大きさは、身体の背面側から視たときの心臓のサイズよりも大きいサイズに設定されている。またアンテナ素子の総個数が、40個以上100個以下である。これにより、アンテナ素子を決定する際に、十分な位置精度で最適な位置のアンテナ素子を選択できる。
【0062】
また巡回モードと周期を変更可能とすることで、電磁波の送受信条件を最適な条件に設定できる。
【0063】
また本実施形態では、受信アンテナ12側に、複数のアンテナ素子rおよび高速切替部122を備えた構成とすることが可能である。これにより、電磁波による電界が安定する。
【0064】
また、本実施形態では電磁波としてマイクロ波を用いる。マイクロ波は、人体を透過する際の減衰が他の周波数よりも少なく、また損失が比較的高い心臓の拡張/収縮の動きに応じた損失変化にともなう信号の変化の感度(信号強度の増減率)が他の周波数よりも大きく、心拍出量の測定に好適である。
【0065】
以上に説明した、心拍出量計測センサ1000の構成は、上述の実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上述の構成に限られず、特許請求の範囲内において、種種改変することができる。
【0066】
例えば、上記の実施形態では、ステップS109において、素子決定部213が決定したアンテナ素子rを用いて波形データを再度測定し、再度測定した波形データに基づいて心拍出量を推定する例を記載したが、ステップS108で生成したアンテナ素子r毎の波形データから、素子決定部213が決定したアンテナ素子rを用いて得られた波形データを抽出し、抽出した波形データに基づいて心拍出量を推定してもよい。
【0067】
また、ステップS109において、心拍出量の推定の際に用いるアンテナ素子rとして複数のアンテナ素子rを素子決定部213により決定し、それらのアンテナ素子rを用いて得られた波形データに基づいて心拍出量を推定してもよい。具体的には、例えば、隣接する4つのアンテナ素子rのステップS109で算出された特徴量が非常に近い場合、この4つのアンテナ素子rを心拍出量の推定の際に用いるアンテナ素子rとして決定し、各アンテナ素子rを用いて得られた波形データに基づいて算出された心拍出量の平均値から心拍出量を推定してもよい。
【0068】
また、上述した心拍出量計測センサ1000における各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、例えば、USBメモリやDVD-ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、一機能として装置のソフトウエアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1000 心拍出量計測センサ
11、11b 送信アンテナユニット
110 基板
111 送信波形生成部
112 高速切替部
113 アンテナアレイ(送信側)
t1~tx アンテナ素子(送信側)
12、12b 受信アンテナユニット
120 基板
121 アンテナアレイ(受信側)
122 高速切替部
123 サンプリング部
13 信号ケーブル
14 送受信コントローラー
20 装置本体
21 制御部
211 点データ記録部
212 波形データ生成部
213 素子決定部
214 心拍出量推定部
22 記憶部
23 入出力I/F
24 通信I/F
51 タッチパネル
61 PC
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6