(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007290
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】外観検査装置および外観検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108707
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 央
(72)【発明者】
【氏名】伊部 雅博
(72)【発明者】
【氏名】谷村 幸二郎
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB02
2G051BA01
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB05
2G051CB08
2G051EA12
2G051EA16
2G051EC02
(57)【要約】
【課題】リッド変形が検査可能な技術を提供することにある。
【解決手段】外観検査装置は、リッドを有する半導体装置が載置されるステージと、前記ステージの上方に設けられるカメラと、前記カメラと前記ステージとの間に設けられる同軸照明装置と、前記カメラと前記ステージとの間に設けられる斜光照明装置と、制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記同軸照明装置および前記斜光照明装置により前記半導体装置に照明光を照射すると共に、前記カメラにより前記半導体装置を撮影して画像を取得し、当該画像の二値化処理により所定画素値の画素数を積算して判定値を取得し、前記判定値を所定値と比較して良品または不良品を判定するよう構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リッドを有する半導体装置が載置されるステージと、
前記ステージの上方に設けられるカメラと、
前記カメラと前記ステージとの間に設けられる同軸照明装置と、
前記カメラと前記ステージとの間に設けられる斜光照明装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記同軸照明装置および前記斜光照明装置により前記半導体装置に照明光を照射すると共に、前記カメラにより前記半導体装置を撮影して画像を取得し、
当該画像の二値化処理により所定画素値の画素数を積算して判定値を取得し、
前記判定値を所定値と比較して良品または不良品を判定するよう構成される外観検査装置。
【請求項2】
請求項1の外観検査装置において、
前記制御装置は、
前記ステージにリッドが変形しその変形量が既知の第二の半導体装置を載置し、
前記同軸照明装置および前記斜光照明装置により前記第二の半導体装置に照明光を照射すると共に、前記カメラにより前記第二の半導体装置を撮影して画像を取得し、
当該画像の二値化処理により所定画素値の画素数を積算して測定値を取得し、
前記第二の半導体装置のリッドの変形量および前記測定値に基づいて前記所定値を取得するよう構成される外観検査装置。
【請求項3】
請求項2の外観検査装置において、
前記同軸照明装置の照明光は青色であり、
前記斜光照明装置の照明光は赤色であり、
前記制御装置は、前記リッドの変形が検出可能なように前記同軸照明装置および前記斜光照明装置の輝度を設定するよう構成される外観検査装置。
【請求項4】
請求項3の外観検査装置において、
前記制御装置は、前記同軸照明装置の輝度を前記斜光照明装置の輝度よりも小さく設定するよう構成される外観検査装置。
【請求項5】
同軸照明装置および斜光照明装置によりリッドを有する半導体装置の上面に照明光を照射すると共に、カメラにより前記半導体装置の上面を撮影して画像を取得し、
当該画像の二値化処理により所定画素値の画素数を積算して判定値を取得し、
前記判定値を所定値と比較して良品または不良品を判定する外観検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は外観検査装置に関し、例えば、リッドを有する半導体パッケージの外観検査装置に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
FCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)タイプの半導体パッケージでは、配線基板上に搭載された半導体チップをリッド(Lid:蓋材)と呼ばれるカバーで覆い、半導体チップとリッドとを放熱ペースト等を介して接触させることにより放熱板として機能させるものがある(例えば、特開2011-146415号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、半導体パッケージの完成後、検査工程において、半導体パッケージを押さえることがある。このとき、リッド変形が発生することがある。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付の図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。すなわち、外観検査装置は、リッドを有する半導体装置が載置されるステージと、前記ステージの上方に設けられるカメラと、前記カメラと前記ステージとの間に設けられる同軸照明装置と、前記カメラと前記ステージとの間に設けられる斜光照明装置と、制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記同軸照明装置および前記斜光照明装置により前記半導体装置に照明光を照射すると共に、前記カメラにより前記半導体装置を撮影して画像を取得し、当該画像の二値化処理により所定画素値の画素数を積算して判定値を取得し、前記判定値を所定値と比較して良品または不良品を判定するよう構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、リッド変形を検査することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1はFCBGAタイプの半導体パッケージの構造の概略を示す断面図である。
【
図3】
図3は実施形態における外観検査装置の概略構成を示す図である。
【
図4】
図4はリッド変形を有する半導体パッケージの撮影画像のイメージ図である。
【
図5】
図5は
図4に示す画像のヒストグラムのイメージ図である。
【
図6】
図6は
図4に示す画像を二値化処理した画像のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
まず、リッドを有するFCBGAタイプの半導体パッケージの構造について
図1を用いて説明する。
図1はFCBGAタイプの半導体パッケージの構造の概略を示す断面図である。
【0011】
FCBGAタイプの半導体パッケージ(半導体装置)1では、半導体チップ20はリッド30と呼ばれるカバーにより覆われている。リッド30は、例えば銅等の熱伝導性の高い金属材料により形成されている。リッド30は天井部30bで半導体チップと接着している。また、リッド30は縁30aのみで配線基板10と接着している。リッドの縁30aは配線基板10と接する外枠部分(フランジ)である。リッド30を放熱板として機能させるため、例えば、アンダーフィル(UF)樹脂21の硬化後、半導体チップ20の裏面に放熱ペースト22を塗布する。リッド30は、例えば、次のようにして配線基板10に接着される。配線基板10上に線状に接着剤(リッド接着樹脂)23を塗布し、接着剤23を塗布した部分にリッド30の縁30aを接着させ、リッド30を貼り付け、接着剤23を硬化(キュア)する。
【0012】
次に、半導体パッケージ1の問題点について
図2を用いて説明する。
図2は
図1に示すリッドの変形を示す図である。
【0013】
図1に示すような半導体パッケージ1が完成した後の検査工程、例えば、良品/不良品の選別試験において、
図2に示すように、リッド変形が発生することがある。具体的には、選別試験装置の半導体パッケージ1が載置されるソケット等の測定部において製品ずれが発生する場合、半導体パッケージ1を搬送する測定ハンドラ等によって半導体パッケージ1の上面側のリッド30を押さえることがある。このとき、リッド変形が発生することがある。このリッド変形により、リッド30の縁30aが配線基板10から所定の高さ以上に変位することがある。このときのリッド30の縁30aが正常に固定されている底面と、変形によりリッド30の縁30aが浮き上がっている下面端部との距離を変形量(d)とする。
【0014】
次に、上述したリッド変形が検査可能な外観検査装置について
図3を用いて説明する。
図3は実施形態における外観検査装置の概略構成を示す図である。
【0015】
外観検査装置100は、カメラ110、第一の照明装置120、第二の照明装置130、ステージ140および制御装置150を備える。カメラ110は、例えば、ステージ140の直上に設置され、垂直下方に視野角を向けて設置される。カメラ110は、半導体パッケージ1が視野内に位置するように設置される。照明装置120,130は、ステージ140に載置される半導体パッケージ1をカメラ110が撮影可能な明るさにするため、光を照射する。この構成によって、カメラ110は、半導体パッケージ1の上面が撮影することができる。カメラ110は撮像装置111とレンズ112とを備える。カメラ110は明るさ(光強度)を数値化する。
【0016】
照明装置120はカメラ110とステージ140との間に配置されている。照明装置120は、面発光照明(光源)121、ハーフミラー(半透過鏡)122と、を備えている。面発光照明121からの照射光は、ハーフミラー122によってカメラ110と同じ光軸で反射され、ステージ140の上の半導体パッケージ1に照射される。カメラ110と同じ光軸で撮像対象物に照射されたその散乱光は、半導体パッケージ1で反射し、そのうちの正反射光がハーフミラー122を透過してカメラ110に達し、半導体パッケージ1の映像を形成する。照明装置120は同軸落射照明(同軸照明)装置である。
【0017】
なお、面発光照明121の光源色は単色、例えば、青色を用いる。また、光源は出力調整を調整可能なものを用いるのが好ましく、例えば、LED(Light Emitting Diode)のパルス調光デューティにて光量調節するシステムなどが挙げられる。光源の輝度は、例えば、256(0~255)階調に調整可能である。
【0018】
照明装置130はカメラ110とステージ140との間に配置されている。照明装置130は斜光バー照明であり、カメラ110の光軸に対して所定の角度でステージ140の上の半導体パッケージ1に照射される。斜光バー照明は半導体パッケージ1の四辺に対向するよう四つ設けられる。所定の角度は、例えば、45度±10度である。
【0019】
なお、照明装置130の光源色は単色、例えば、面発光照明121の照明光よりも波長の長い赤色を用いる。また、光源は出力調整を調整可能なものを用いるのが好ましく、例えば、LEDのパルス調光デューティにて光量調節するシステムなどが挙げられる。光源の輝度は、例えば、256(0~255)階調に調整可能である。
【0020】
制御装置150は、中央処理装置(CPU)と、記憶装置と、入出力装置と、を備える。カメラ110で撮像された画像データは、画像取込装置(キャプチャーボード)を介して記憶装置に保存される。記憶装置は、主記憶装置のRAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disc Drive)などの補助記憶装置から構成される。記憶装置は外観検査装置100の上述した各部の動作を制御するプログラム(ソフトウェア)や後述する検査閾値等のデータを格納する。CPUは主記憶装置に格納されたプログラムを実行する。入出力装置は、タッチパネル、マウス、画像取込装置(キャプチャーボード)、モニタ、モータ制御装置およびI/O信号制御装置等から構成される。
【0021】
CPUは、保存された画像データを画像処理する。CPUは、モータ制御装置、センサやスイッチ制御などからなるI/O信号制御装置を介してステージ140のXYテーブル等の駆動部および照明装置120,130を制御する。
【0022】
リッド変形は半導体パッケージ1の上方からカメラで撮影することにより直接観測することは難しい。そこで、本実施形態では、照明装置120,130からの照明光によりリッド変形箇所に影を付ける。カメラ110により半導体パッケージ1を上方から撮影し、半導体パッケージ1の画像の明暗に基づいてリッド変形を間接的に観測する。
【0023】
リッド30の表面は、例えばニッケルメッキされており、照明装置の輝度が大きい(リッド30の表面の照度が大きい)場合、リッド30の縁30aに変形があっても、縁30aの変形箇所とその他の箇所との明暗差が小さくなる。そこで、上記明暗差が大きくなるよう照明装置120,130の輝度を調整する。半導体パッケージ1に照明光を真上から照射する照明装置120の輝度は比較的小さくすることが好ましい。この照明だけでは、照度が不足するので、半導体パッケージ1に照明光を斜めに照射する照明装置130の輝度を照明装置120の輝度よりも少し大きくするのが好ましい。
【0024】
照明装置120,130の設定例を下記に示す。
照明装置120の輝度:5~10(256階調)
照明装置130の輝度:15~20(256階調)
半導体パッケージ1の表面の照度:70~85(lx)
ここで、「5~10」とは「5以上10以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0025】
リッド変形の検出方法について
図4から
図6を用いて説明する。
図4はリッド変形を有する半導体パッケージの撮影画像のイメージ図である。
図5は
図4に示す画像のヒストグラムのイメージ図である。
図6は
図4に示す画像を二値化処理した画像のイメージ図である。
【0026】
(画像取得:ステップS10)
制御装置150は照明装置120,130を所定の条件に設定し、照明装置120,130により照明を照射してカメラ110により半導体パッケージ1を上方から撮影して画像を取得する。撮影された画像は、例えば、8ビットのグレースケールデータ(256階調))である。撮影された画像は、
図4に示すように、変形しているリッド30の縁30aの箇所DFの上面は、変形していない箇所に比べて暗くなる。
【0027】
(二値化処理:ステップS20)
制御装置150はカメラ110により撮影した画像を所定の閾値範囲で二値化処理を行う。二値化処理は、ヒストグラム作成(ステップS21)、閾値設定(ステップS22)および二値化(ステップS23)により行われる。
【0028】
(ステップS21)
制御装置150はこの閾値を設定するため、
図5に示すヒストグラムを作成する。横軸は画素値(明るさを示す階調であり、大きいほど明るい)、縦軸は出現画素数である。出現画素数が多い領域(A)は、リッド30のうちリッド変形がない箇所である。Aより画素値が小さい側に、若干出現画素数が多い領域(B)がある。Bはリッド30のうち変形がある箇所である。Bより画素値が小さい側に出現画素数が小さい領域(C)がある。また、Aより画素値が大きい側に出現画素数が小さい領域(D)がある。
【0029】
(ステップS22)
制御装置150は領域(A)と領域(B)との境界に第一の閾値(Th1)を設定し、領域(B)と領域(C)との境界に第二の閾値(Th2)を設定する。なお、照明装置120,130の設定を適切にすることにより、領域(A)と領域(B)との境界、領域(B)と領域(C)との境界が明確になり、第一の閾値(Th1)および第二の閾値(Th2)の設定が可能になる。
【0030】
(ステップS23)
制御装置150は、第一の閾値(Th1)および第二の閾値(Th2)の間(領域(B))の画素値を有する画素を「1」(白)にし、それ以外の画素値を有する領域(領域(C)、領域(A)および領域(D))の画素を「0」(黒)にする二値化を行う。すなわち、制御装置150は、画素値が所定範囲の内の画素を抽出する。この二値化処理を行うことにより、
図6に示すような画像が得られ、リッドの変形箇所が白になる。
【0031】
(ブロブ解析:ステップS30)
制御装置150は、
図6に示す画像の白の画素数を積算して白の面積を算出する。算出した白の面積(画素数)を判定値とする。
【0032】
(判定処理:ステップS40)
制御装置150は、判定値が予め設定された検査閾値を超えた場合、不良と判定する。ここで、判定値および検査閾値は画素数であり、リッド変形の変形量が大きいほど判定値は大きい。
【0033】
検査閾値の設定方法について説明する。検査閾値は検査前に予め求める。変形量が異なる多数の同一製品のサンプルを製品ごとに準備する。ここで、各サンプルの変形量は測定されて既知である。例えば、実施形態における外観検査装置のステージにサンプルを搭載して、配線基板10の上面とリッジ30の縁30aの上面との距離差を測定するようにしてもよい。
【0034】
制御装置150は、サンプルごとに、上述したステップS10~S30の処理を行いそれぞれの判定値およびその変形量を取得する。制御装置150は、取得した変形量と判定値との関係に基づいて、変形量が所定値以上になる判定値を検査閾値として制御装置150の記憶装置に格納する。これらの処理を製品ごとに行う。
【0035】
本実施形態によれば、レーザー測長機能、位相シフト測長用プロジェクタ等の三次元検査機能を用いなくても、リッジ変形の検査が可能になる。また、リッジ変形の検査を行うことにより、リッド変形の不良品の出荷を低減することが可能になる。
【0036】
以上、本開示者らによってなされた開示を実施形態に基づき具体的に説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0037】
100・・・外観検査装置
110・・・カメラ
120・・・第一の照明装置
130・・・第二の照明装置
140・・・ステージ
150・・・制御装置