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  • 特開-営農放牧型太陽光発電システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072901
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】営農放牧型太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 3/00 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
A01K3/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174063
(22)【出願日】2022-10-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】521031305
【氏名又は名称】株式会社町おこしエネルギー
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】沼田 昭二
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101HA02
(57)【要約】
【課題】広大な敷地に太陽電池パネルを設置した場合にメンテナンスコストの削減を可能とすることである。
【解決手段】営農放牧型太陽光発電システム10は、複数の羊2を放牧させることが可能な第1の領域12と、第1の領域12内において、複数の羊2の高さよりも高い位置に設置される複数の太陽電池パネル部14と、第1の領域12内に設置され、複数の羊2を収容可能な厩舎を含み第1の領域12よりも狭い第2の領域14内を有するパドック部16と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の羊を放牧させることが可能な第1の領域と、
前記第1の領域内において、前記複数の羊の高さよりも高い位置に設置される複数の太陽電池パネル部と、
前記第1の領域内に設置され、前記複数の羊を収容可能な厩舎を含み前記第1の領域よりも狭い第2の領域内を有するパドック部と、
を備えることを特徴とする営農放牧型太陽光発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の営農放牧型太陽光発電システムにおいて、
前記第1の領域は、耕作放棄地であることを特徴とする営農放牧型太陽光発電システム。
【請求項3】
請求項1に記載の営農放牧型太陽光発電システムにおいて、
前記複数の太陽電池パネル部は、面方向が地面に対して傾斜するように設置されていることを特徴とする営農放牧型太陽光発電システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、営農放牧型太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーが注目されており、その中の1つに太陽光発電がある。太陽光発電における太陽電池パネルは、広大な敷地に設置されることがある。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、太陽光を反射する複数の反射部と、前記反射部により反射された太陽光の熱を受けて水を加熱する集熱部と、加熱された水を蒸発させる蒸発部と、蒸発した水蒸気を凝縮させて淡水を生成する凝縮部と、前記反射部を太陽の動きに基づいて駆動し、前記集熱部に向けて太陽光を反射させる駆動部と、を備え、前記複数の反射部を所定の間隔をあけて配置し、地面に、前記複数の反射部により形成される遮光領域と、前記所定の間隔を通過した太陽光を照射させる照射領域と、を形成することを特徴とする太陽熱集熱装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-125700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような広大な敷地に太陽電池パネルが設置されて当該敷地に草が生えてくると除草する必要があり、この除草作業を行うために、トラクターなどの大型の機械や人手の作業によるメンテナンスコストがかかるという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、広大な敷地に太陽電池パネルを設置した場合にメンテナンスコストの削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る営農放牧型太陽光発電システムは、複数の羊を放牧させることが可能な第1の領域と、前記第1の領域内において、前記複数の羊の高さよりも高い位置に設置される複数の太陽電池パネル部と、前記第1の領域内に設置され、前記複数の羊を収容可能な厩舎を含み前記第1の領域よりも狭い第2の領域内を有するパドック部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る営農放牧型太陽光発電システムにおいて、前記第1の領域は、耕作放棄地であることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る営農放牧型太陽光発電システムにおいて、前記複数の太陽電池パネル部は、面方向が地面に対して傾斜するように設置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、広大な敷地に太陽電池パネルを設置した場合にメンテナンスコストの削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る実施形態の営農放牧型太陽光発電システムを示す図である。
図2】本発明に係る実施形態の営農放牧型太陽光発電システムの一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0013】
図1は、本発明に係る実施形態の営農放牧型太陽光発電システム10を示す図である。図2は、本発明に係る実施形態の営農放牧型太陽光発電システム10の一部の拡大図である。
【0014】
営農放牧型太陽光発電システム10は、再生可能エネルギーを生み出しながら営農を行うことを可能とするシステムである。営農放牧型太陽光発電システム10は、第1の領域12と、複数の太陽電池パネル部14と、厩舎18を含むパドック部16とを備えている。
【0015】
第1の領域12は、複数の羊2を放牧させることが可能な領域である。第1の領域12は、例えば、200m×250m=50000m(5ha)の広さを有するものとして説明するが、もちろん、この広さは一例であり、適宜変更することが出来る。
【0016】
また、第1の領域12は、いわゆる耕作放棄地であるものとして説明するが、もちろん、その他の敷地であってもよい。
【0017】
「耕作放棄地」とは、1年以上作物が作られておらず、耕作を再開する見込みのない農地を言う。農林水産省の世界農林業センサスは「以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽培せず、しかも、この数年の間に再び耕作するはっきりした考えのない土地」と定義しており、5年ごとに耕作放棄地の面積などを農家による自己申告方式で調査している。
【0018】
1985年(昭和60年)ごろまで、日本の耕作放棄地面積は13万ヘクタール前後で推移していたが、2010年(平成22年)調査では39万6000ヘクタールと全耕地の1割弱に達している。
【0019】
世界的には水不足、砂漠化、異常気象、病害虫の発生、生態系の破壊、戦乱などで耕作放棄地が増えているが、日本ではもっぱら農業労働力の高齢化とこれに伴う後継者不足により耕作放棄が進んでいる。
【0020】
都市部に住む親族や自分たちの食べる分だけを作付けする自給的農家が農地を相続するケースが増え、農地が手つかずのまま放置されるようになった。このため農業で生計をたてている農家に耕作地がうまく引き継がれず、大規模農家の育成や農業規模の拡大が進んでいない。
【0021】
農林水産省によると、日本では2012年時点で約250万人いる農業従事者のうち70万人が2018年までに引退する見込みであるため、農地の所有と利用を切り離し、いかに耕作地を意欲ある農業生産者へ引き継ぐかが課題となっている。
【0022】
耕作地は長期間、作付けなどがされないと、土壌の荒廃、表土の流出、原野化が進み、再び農地として活用するのは難しくなる。
【0023】
第1の領域12の外周には、羊2が外に逃げ出さないように放牧用のフェンスなどが設置されている。例えば、所定の間隔で杭を打ちつけて、この杭にフェンスが装着されて、第1の領域12を区画している。
【0024】
羊2は、偶蹄目ウシ科ヒツジ属などの哺乳類である。羊2は、中形で、毛は柔らかく、角は大きくて渦巻き状である。羊2は、主に地上の草をかみ切って食べ、群れで暮らす。地中海沿岸から中央アジア、北アメリカ西部の山岳地帯に分布し、ムフロン・アルガリ・ビッグホーンなどが含まれる。
【0025】
複数の太陽電池パネル部14は、複数の羊2の高さよりも高い位置に設置される。
【0026】
パドック部16は、第1の領域12内に設置され、複数の羊2を収容可能な厩舎18を含み第1の領域12よりも狭い第2の領域を有する。
【0027】
複数の太陽電池パネル部14は、面方向が地面に対して傾斜するように設置されている。各太陽電池パネル部14は、複数の太陽電池が並んで構成されており、太陽光を用いた光起電力効果を利用して電力を発生させる機能を有している。
【0028】
太陽電池の構成は、様々なものが考えられており、例えば、シリコン系、化合物系、有機系、量子ドット系などを用いることができる。
【0029】
各太陽電池パネル部14は、図1,2に示されるように、面方向が地面に対して傾斜するように設置されており、手前側の脚部の高さに比べて奥側の脚部が高くなるように設置されている。
【0030】
各太陽電池パネル部14の大きさは、適宜変更することができるが、例えば、縦100cm×横200cmで、高さを所定の高さ(手前側が80cmで、奥側120cm)に設定することができる。もちろん、そのサイズは一例であり、適宜変更が可能である。
【0031】
各太陽電池パネル部14は、図2に示されるように、所定の間隔をおいて整列配置されていて、各太陽電池パネル部14の間には通路が形成されており、この通路は羊2が移動することが出来る。
【0032】
各太陽電池パネル部14には、チャージコントローラーを介してバッテリーに接続される。チャージコントローラーは、太陽電池パネル部14から供給される電力をバッテリーに充電し、また、バッテリーに充電された電力を放電する充放電制御を行う機能を有している。そして、各太陽電池パネル部14により発電された直流電力はパワーコンディショナーによって商用電力として使用可能な交流電力に変換されて供給される。
【0033】
バッテリーは、太陽電池パネル部14から供給される電力を充電する二次電池である。二次電池として、例えば、リチウムイオン二次電池を用いることができるが、もちろん、その他の二次電池であってもよく、例えば、ニッケル水素蓄電池やニッケルカドミウム蓄電池などでもよい。
【0034】
厩舎18は、複数の羊2を飼育するための小屋であり、複数の羊2の寝床や餌や水を与えるためのスペースを有する。
【0035】
パドック部16は、第1の領域12内に設置され、厩舎18から出た複数の羊2が運動するための運動場であり、第1の領域12よりも狭い第2の領域内を有する。パドック部16の第2領域の大きさは、例えば、10m×10m=100mの敷地を有する。
【0036】
続いて、上記構成の営農放牧型太陽光発電システム10の作用について説明する。近年、再生可能エネルギーが注目されており、その中の1つとして太陽光発電がある。太陽光発電は、広大な敷地があった場合に、その敷地に太陽電池パネルを設置して発電をすることができるが、長期間運用していると雑草が育ち、太陽電池パネルに覆いかぶさってしまうと発電効率が低下する。
【0037】
これを防ぐために、トラクターなどの大型機械を用いて除草を行い、また、人手を使って除草作業がなされているが、定期的に行うと費用負担が大きい。
【0038】
一方で、上述したように、世界的には水不足、砂漠化、異常気象、病害虫の発生、生態系の破壊、戦乱などで耕作放棄地が増えているのに対し、日本ではもっぱら農業労働力の高齢化とこれに伴う後継者不足により耕作放棄が進んでおり、耕作放棄地が増えるいっぽうである。
【0039】
このような課題に対して、本発明に係る実施形態の営農放牧型太陽光発電システム10は顕著な効果を発揮する。
【0040】
営農放牧型太陽光発電システム10によれば耕作放棄地である第1の領域12に複数の太陽電池パネル部14を設置するとともに、厩舎18を有するパドック部16を設置し、羊2がパドック部16内だけでなく、第1の領域12内でも羊2が自由に遊べるようにする。
【0041】
また、太陽電池パネル部14で再生可能エネルギーを生成するとともに第1の領域12に草が生えてきた場合であっても羊2が草を食べてくれるため、従来のように、トラクターや人手による除草作業が不要となり、管理コストを抑えることができるという利点がある。そして、営農放牧型太陽光発電システム10によれば、耕作放棄地を有効利用することが出来る。
【0042】
太陽電池パネル部14による発電を行うことで、騒音や二酸化炭素の排出、土壌汚染といった面での環境負荷を低減することができる。
【0043】
また、営農放牧型太陽光発電システム10によれば、羊2を放牧させているため、太陽電池パネル部14に傷つけてしまい、また、配線ケーブルを噛んでしまって故障させるといった心配がない。なお、羊2とは異なる動物、例えば、ヤギであれば、太陽電池パネル部14上を飛び跳ねしまい、また、配線ケーブルを傷つけてしまうことがある。
【0044】
そして、営農放牧型太陽光発電システム10によれば、複数の羊2は、パドック部16だけでなく、より広い範囲の第1の領域12を移動することができるため、ストレスフリーの放牧となる。
【0045】
太陽電池パネル部14は複数の羊2のシェルターともなり得る。例えば、日差しの強い夏場や、雨、風除けに太陽電池パネル部14を活用することができる。これにより、複数の羊2の健康状態を保つことができるため、病気などのリスクも低減できる。
【0046】
また、パドック部16には厩舎18があるため、2月ごろの寒い時期は厩舎18で飼育するなどの対応を行うことで、寒い時期のリスクである濡れ子などによる凍死事項を防ぎつつ、寒い時期でも羊2に安心して出産してもらうことが出来る。
【0047】
以上のように、営農放牧型太陽光発電システム10によれば、羊2の遊牧をストレスフリーで行うことができ、羊2の繁殖から放牧までの循環型飼育ができるとともに、再生可能エネルギーの発電をメンテナンスフリーで行うことができ、日本の喫緊の課題である耕作放棄地を有効に活用することができるという顕著な効果を奏する。
【符号の説明】
【0048】
2 羊、10 営農放牧型太陽光発電システム、12 第1の領域、14 太陽電池パネル部、16 パドック部、18 厩舎。

図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の羊を放牧させることが可能な第1の領域と、
前記第1の領域内において、前記複数の羊の高さよりも高い位置に設置される複数の太陽電池パネル部と、
前記第1の領域内に設置され、前記複数の羊を収容可能な厩舎を含み前記第1の領域よりも狭い第2の領域を有するパドック部と、
を備え
前記複数の太陽電池パネル部は、面方向が地面に対して傾斜するように設置されており、前記羊の高さよりも若干高くなるように手前側が80cmで奥側が120cmの高さに設定されていることを特徴とする営農放牧型太陽光発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の営農放牧型太陽光発電システムにおいて、
前記第1の領域は、耕作放棄地であることを特徴とする営農放牧型太陽光発電システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明に係る営農放牧型太陽光発電システムは、複数の羊を放牧させることが可能な第1の領域と、前記第1の領域内において、前記複数の羊の高さよりも高い位置に設置される複数の太陽電池パネル部と、前記第1の領域内に設置され、前記複数の羊を収容可能な厩舎を含み前記第1の領域よりも狭い第2の領域を有するパドック部と、を備え、前記複数の太陽電池パネル部は、面方向が地面に対して傾斜するように設置されており、前記羊の高さよりも若干高くなるように手前側が80cmで奥側が120cmの高さに設定されていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】