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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072906
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】可撓性ホースおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/24 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
F16L11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183770
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大坪 竜弥
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA01
3H111BA15
3H111BA18
3H111BA19
3H111CA03
3H111CA09
3H111CB02
3H111CB14
3H111DB11
3H111DB18
3H111EA09
3H111EA17
(57)【要約】
【課題】 可撓性ホースの強度を高める。
【解決手段】 可撓性ホース(1)は、可撓性条帯(2)をらせん状に捲回し、金属製条帯(3)によりかしめ接合して構成される。可撓性条帯(2)には、可撓性条帯第1折返し部(21)が設けられ、金属製条帯(3)には、金属製条帯第1折返し部(31)が設けられ、金属製条帯(3)は、内周部(33)に、第1平板部(33b)と第2平板部(33c)、および、第1平板部(33b)と第2平板部(33c)の間に設けられホース外側に突出する突条部(33a)とを有する。突条部(33a)の幅は、内周部(33)の幅の1/5以上3/5以下とされる。可撓性条帯第1折返し部(21)の内側に金属製条帯第1折返し部(31)の末端(31a)が位置する状態で、金属製条帯がかしめられて、金属製条帯第1折返し部の末端(31a)と金属製条帯の突条部(33a)との間に可撓性条帯(2)が挟持されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅の可撓性条帯(2)を所定の折返し形状としつつらせん状に捲回し、互いに隣接する可撓性条帯(2)の端縁部分同士を、金属製の条帯(3)によりかしめ接合した可撓性ホース(1)であって、
かしめ接合された部位において、
前記可撓性条帯(2)には、ホース内側かつ可撓性条帯中央部に向かって折り返された可撓性条帯第1折返し部(21)が設けられており、
前記金属製条帯(3)には、ホース外側かつ金属製条帯中央部に向かって折り返された金属製条帯第1折返し部(31)が設けられており、
前記金属製条帯(3)は、ホースの内側に面するように内周部(33)を有しており、
内周部(33)は、ホース中心軸に平行に延在する第1平板部(33b)と第2平板部(33c)、および、第1平板部(33b)と第2平板部(33c)の間に設けられホース外側に突出するように設けられた突条部(33a)、とを有しており、
前記突条部の幅は、前記内周部(33)の幅の1/5以上3/5以下であり、
可撓性条帯第1折返し部(21)の内側に金属製条帯第1折返し部(31)の末端(31a)が位置する状態で、金属製条帯第1折返し部(31)がかしめられて、金属製条帯第1折返し部(31)の末端(31a)と金属製条帯の突条部(33a)との間に可撓性条帯が挟持されている、
可撓性ホース(1)。
【請求項2】
前記可撓性条帯(2)には、可撓性条帯第1折返し部(21)と反対側の側縁に、ホース内側かつ可撓性条帯中央部に向かって折り返された可撓性条帯第2折返し部(22)が設けられており、
前記金属製条帯(3)には、金属製条帯第1折返し部(31)と反対側の側縁に、ホース外側かつ金属製条帯中央部に向かって折り返された金属製条帯第2折返し部(32)が設けられており、
可撓性条帯第2折返し部(22)の内側に金属製条帯第2折返し部(32)の末端(32a)が位置する状態で、金属製条帯第2折返し部(32)がかしめられて、金属製条帯第2折返し部(32)の末端(32a)と金属製条帯の突条部(33a)との間に可撓性条帯が挟持されている、
請求項1に記載の可撓性ホース。
【請求項3】
前記金属製条帯(3)の内周部(33)において、第1平板部(33b)と第2平板部(33c)とが、同一の円筒面上に位置する、
請求項1または請求項2に記載の可撓性ホース。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の可撓性ホースの製造方法であって、
平板状の金属製条帯に対し条帯の幅方向の中央部に突条部(33a)を形成する、突条部形成工程を有し、
突条部形成工程の後に、可撓性条帯第1折返し部(21)の内側に金属製条帯第1折返し部(31)の末端(31a)が位置する状態で、金属製条帯第1折返し部(31)をかしめて、金属製条帯第1折返し部(31)の末端(31a)と金属製条帯の突条部(33a)との間に可撓性条帯を挟持する、第1かしめ工程を有する、
可撓性ホースの製造方法。
【請求項5】
所定の幅の可撓性条帯(6)を所定の折返し形状としつつらせん状に捲回し、互いに隣接する可撓性条帯(6)の端縁部分同士を、金属製の条帯(7)によりかしめ接合した可撓性ホース(5)であって、
かしめ接合された部位において、
前記可撓性条帯(6)には、ホース外側かつ可撓性条帯中央部に向かって折り返された可撓性条帯第1折返し部(61)が設けられており、
前記金属製条帯(7)には、ホース内側かつ金属製条帯中央部に向かって折り返された金属製条帯第1折返し部(71)が設けられており、
前記金属製条帯(7)は、ホースの外側に面するように外周部(73)を有しており、
外周部(73)は、ホース中心軸に平行に延在する第1平板部(73b)と第2平板部(73c)、および、第1平板部と第2平板部の間に設けられホース内側に突出するように設けられた突条部(73a)、とを有しており、
前記突条部(73a)の幅は、前記外周部(73)の幅の1/5以上3/5以下であり、
可撓性条帯第1折返し部(61)の内側に金属製条帯第1折返し部(71)の末端(71a)が位置する状態で、金属製条帯第1折返し部(71)がかしめられて、金属製条帯第1折返し部の末端(71a)と金属製条帯の突条部(73a)との間に可撓性条帯(6)が挟持されている、
可撓性ホース(5)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の幅の可撓性条帯をらせん状に捲回し、互いに隣接する可撓性条帯の端縁部同士を、金属製の条帯によりかしめ接合した可撓性ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の幅の可撓性条帯をらせん状に捲回し、互いに隣接する可撓性条帯の端縁部同士を、金属製の条帯によりかしめ接合した可撓性ホースは、送風ダクト等の用途に使用されている。かかる可撓性ホースは軽量で、可撓性に優れ、ホースがつぶれにくい。
【0003】
例えば、特許文献1には、所定の繊維構成を有する無機繊維織布製の条帯をらせん状に巻いて、金属製条帯によりかしめて接合した可撓性ダクトの技術が開示されており、当該可撓性ダクトによれば、耐熱性の可撓性ダクトの強度が向上できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-38175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にあるような構造の可撓性ホースでは、金属製の条帯の部分がホースの補強体として機能し、織布製の可撓性条帯の部分が可撓性のホース壁として機能する。しかしながら、特許文献1のような金属製条帯によりかしめ接合したホースでは、かしめ接合した部分の接合が不十分になりやすい。かしめ接合が不十分な場合、ホースを曲げたり引っ張ったりした際に、可撓性条帯がかしめ部から抜け出してしまうことがある。あるいは、かしめ接合が不十分な場合、可撓性条帯と金属製条帯が、巻かれた螺旋に沿ってずれて動いてしまい、ホースの端部で可撓性条帯と金属製条帯が互いに外れてしまうことが起こりうる。
【0006】
特に、高い耐熱性や、不燃性、耐火性を求められる用途の可撓性ホースでは、可撓性条帯にも高い耐熱性や耐火性が要求される。このような分野では、例えばガラス繊維などの無機繊維を含む織布材料を可撓性条帯として使用することが検討されうる。
しかしながら、こうした無機繊維の織布材料は難燃性などでは有利であるものの、弾力性に乏しく、摩擦も少ないため、特許文献1の可撓性ホースのようなかしめ接合する構造において、かしめ部の接合強度を十分に高めることが難しかった。
【0007】
本発明の目的は、かしめ接続構造を有する可撓性ホースにおいて、かしめ部の接合強度を高めることにある。また、本発明の他の目的は、内部を通流する空気の通気抵抗がより少ない可撓性ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、鋭意検討の結果、金属製条帯がかしめられる部分において、かしめられた金属製条帯がスプリングバックすることにより、可撓性条帯の挟持が不十分になりやすいことを発見した。
【0009】
発明者は、更に検討を行い、かしめ接合した構造のホースにおいて、前記金属製条帯の内周部に、ホース外側に突出する突条部を設け、金属製条帯の折返し部の末端と金属製条帯の突条部との間に可撓性条帯が挟持されるようにすると、かしめ部の接合強度を高めることができることを知見し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、所定の幅の可撓性条帯を所定の折返し形状としつつらせん状に捲回し、互いに隣接する可撓性条帯の端縁部分同士を、金属製の条帯によりかしめ接合した可撓性ホースであって、かしめ接合された部位において、前記可撓性条帯には、ホース内側かつ可撓性条帯中央部に向かって折り返された可撓性条帯第1折返し部が設けられており、前記金属製条帯には、ホース外側かつ金属製条帯中央部に向かって折り返された金属製条帯第1折返し部が設けられており、前記金属製条帯は、ホースの内側に面するように内周部を有しており、内周部は、ホース中心軸に平行に延在する第1平板部と第2平板部、および、第1平板部と第2平板部の間に設けられホース外側に突出するように設けられた突条部、とを有しており、前記突条部の幅は、前記内周部の幅の1/5以上3/5以下であり、可撓性条帯第1折返し部の内側に金属製条帯第1折返し部の末端が位置する状態で、金属製条帯第1折返し部がかしめられて、金属製条帯第1折返し部の末端と金属製条帯の突条部との間に可撓性条帯が挟持されている、可撓性ホースである(第1発明)。
【0011】
第1発明において、好ましくは、前記可撓性条帯には、可撓性条帯第1折返し部と反対側の側縁に、ホース内側かつ可撓性条帯中央部に向かって折り返された可撓性条帯第2折返し部が設けられており、前記金属製条帯には、金属製条帯第1折返し部と反対側の側縁に、ホース外側かつ金属製条帯中央部に向かって折り返された金属製条帯第2折返し部が設けられており、可撓性条帯第2折返し部の内側に金属製条帯第2折返し部の末端が位置する状態で、金属製条帯第2折返し部がかしめられて、金属製条帯第2折返し部の末端と金属製条帯の突条部との間に可撓性条帯が挟持されている(第2発明)。また、第1発明または第2発明において、好ましくは、前記金属製条帯の内周部において、第1平板部と第2平板部とが、同一の円筒面上に位置する(第3発明)。
また、本発明は、第1発明の可撓性ホースの製造方法であって、平板状の金属製条帯に対し条帯の幅方向の中央部に突条部を形成する、突条部形成工程を有し、突条部形成工程の後に、可撓性条帯第1折返し部の内側に金属製条帯第1折返し部の末端が位置する状態で、金属製条帯第1折返し部をかしめて、金属製条帯第1折返し部の末端と金属製条帯の突条部との間に可撓性条帯を挟持する、第1かしめ工程を有する、可撓性ホースの製造方法である(第4発明)。
また、本発明は、所定の幅の可撓性条帯を所定の折返し形状としつつらせん状に捲回し、互いに隣接する可撓性条帯の端縁部分同士を、金属製の条帯によりかしめ接合した可撓性ホースであって、かしめ接合された部位において、前記可撓性条帯には、ホース外側かつ可撓性条帯中央部に向かって折り返された可撓性条帯第1折返し部が設けられており、前記金属製条帯には、ホース内側かつ金属製条帯中央部に向かって折り返された金属製条帯第1折返し部が設けられており、前記金属製条帯は、ホースの外側に面するように外周部を有しており、外周部は、ホース中心軸に平行に延在する第1平板部と第2平板部、および、第1平板部と第2平板部の間に設けられホース内側に突出するように設けられた突条部、とを有しており、前記突条部の幅は、前記外周部の幅の1/5以上3/5以下であり、可撓性条帯第1折返し部の内側に金属製条帯第1折返し部の末端が位置する状態で、金属製条帯第1折返し部がかしめられて、金属製条帯第1折返し部の末端と金属製条帯の突条部との間に可撓性条帯が挟持されている、可撓性ホースである(第5発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の可撓性ホース(第1発明)によれば、金属製条帯の折返し部のスプリングバックが抑制され、かしめ部の接合強度を高めることができる。さらに、第2発明のようにした場合には、金属製条帯の両端縁でのかしめ部の接合強度が高められ、可撓性ホースの強度が特に高められる。
【0013】
また、さらに、第3発明のようにした場合には、可撓性ホースの内部を通流する空気の通気抵抗をより少なくすることができる。また、第4発明の製造方法によれば、金属製条帯の内周部に突条部を設けた可撓性ホースを効率的に製造することができる。また、第5発明の可撓性ホースによれば、第1発明と同様に、かしめ部の接合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の可撓性ホースの構造を示す一部断面図である。
図2】第1実施形態の可撓性ホースのかしめ部分の構造を示す断面図である。
図3】第1実施形態の可撓性ホースの製造過程を示す断面図である。
図4】第2実施形態の可撓性ホースのかしめ部分の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面を参照しながら、耐熱性の送気ダクトとして使用されうる可撓性ホースを例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0016】
図1は、第1実施形態の可撓性ホース1の構造を示す一部断面図である。可撓性ホース1は、所定の幅の可撓性条帯2を所定の折返し形状としつつらせん状に捲回し、互いに隣接する可撓性条帯の端縁部分同士を、同様のらせん状に捲回された金属製の条帯3によりかしめ接合した、円筒状の可撓性ホースである。図2に可撓性ホースのかしめ部分の構造を断面図で示す。なお、図1図2では、各条帯の折返し構造を見やすくするために条帯を適宜離間させて表記している部分もある。
【0017】
可撓性条帯2や金属製条帯3は、それぞれの両端縁部が所定の形状に折り返されて、可撓性条帯2の折返し部分と金属製条帯3の折返し部分とが互いにかみ合うように、可撓性条帯2と金属製条帯3がらせん状に捲回され、金属製条帯3の折返し部がかしめられて、可撓性条帯2と金属製条帯3とが接合された円筒状の可撓性ホース1となっている。
【0018】
可撓性ホース1では、可撓性条帯2の部分が可撓性を有するホース壁として機能し、金属製条帯3の部分がホースの円筒状形状を維持するらせん状の補強体として機能する。また、必須ではないが、かしめにより可撓性条帯2と金属製条帯3とが接合される部分に、ひも状のシール部材を配置して、シール性を高めてもよい。また、可撓性条帯2と金属製条帯3との間にシール材料を塗布してシール性を高めてもよい。
【0019】
可撓性条帯2を構成する材料は特に限定されないが、好ましくは、樹脂製シートや、金属箔もしくは金属薄板、織布、不織布などを含む条帯であってもよい。可撓性ホースに耐熱性が求められる場合には、可撓性条帯を所望の耐熱性を有する素材から選択すればよい。例えば、可撓性条帯は、織布を樹脂によりコーティングした複合素材により構成されていてもよい。織布を構成する繊維は特に限定されないが、木綿や麻などの天然繊維や、ポリエステルやポリアミド等の合成樹脂繊維、ガラス繊維や炭素繊維、シリカ繊維などの無機繊維などを用いた織布が利用できる。織布をコーティングする樹脂は特に限定されないが、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂や、熱可塑性エラストマーであってもよく、合成ゴム等の熱硬化性樹脂であってもよい。また、可撓性条帯は、金属箔と樹脂を積層した素材や、異なる材料の樹脂層を積層した積層樹脂シートであってもよい。
【0020】
また、耐熱性を高める観点からは、可撓性条帯は、金属箔もしくは金属製の薄板を含む条帯であることが好ましい。金属箔もしくは金属製の薄板を含む条帯は、例えばステンレス箔(SUS箔)によって構成されていてもよく、アルミニウム箔(AL箔)をポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)によりコーティングした複合材料によって構成されていてもよい。このような金属箔もしくは金属製の薄板を含む条帯はホースの耐熱性を高めうる。
【0021】
ホースの耐熱性や耐火性を高める観点からは、可撓性条帯2を構成する織布が、無機繊維を主体に構成され、シリコーン樹脂もしくはフッ素樹脂によりコーティングされていることが好ましい。無機繊維としては、ガラス繊維やシリカ繊維、アルミナ繊維、カーボン繊維、セラミック繊維などが例示されるが、これらに限定されない。織布は無機繊維以外の繊維、例えば、合成樹脂繊維などを含んでいてもよい。シリコーン樹脂はシリコーンゴムであることが好ましく、フッ素樹脂は熱可塑性フッ素樹脂やフッ素ゴムであることが好ましい。本実施形態においては、ガラス繊維を主体とする織布が熱可塑性のフッ素樹脂によりコーティングされた複合素材が、所定の幅に裁断された条帯を、可撓性条帯2として使用している。
【0022】
金属製条帯3は、メッキされた鉄、ステンレス、アルミニウム、真鍮等の金属材料製の薄板により構成されている。金属製条帯3は、ホースとなった際につぶれにくさを発揮する補強体として機能するため、また、条帯をかしめることによって、可撓性条帯2と金属製条帯3とを強固に接合するため、所定の厚さで設けられる。金属製条帯の厚みは、典型的には0.1mm~1.5mmである。
【0023】
以下、可撓性条帯2や金属製条帯3の折返し形状やかしめ接合構造、およびシール構造の詳細を説明する。図2では、図の上側がホース外側に対応し、図の下側がホース内側に対応している。また、説明の便宜上、図中Aで示した方向をホースの一端側、図中Bで示した方向をホースの他端側と呼ぶ。
【0024】
可撓性ホース1では、金属製条帯3は、ホースの一端側に位置する端縁部(図中A側の条帯端縁部)と、ホースの他端側に位置する端縁部(図中B側の条帯端縁部)が折り返されている。金属製条帯3において、図中B側の条帯端縁部の側の折返し部を金属製条帯第1折返し部31と呼び、図中A側の条帯端縁部の側の折返し部を金属製条帯第2折返し部32と呼ぶ。
【0025】
金属製条帯第1折返し部31は、ホース外側かつ、金属製条帯中央部35に向かって折り返されている。本実施形態では、第1折返し部31は、略円弧状断面の部分を有するように折り返されている。円弧の半径は一定であってもよいが変化していてもよい。なお、条帯の端縁部が、ホース外側かつ、条帯中央部に向かって折り返される、とは、条帯の端縁部がホース外側に向かうように折り曲げられ、さらに条帯端縁部が条帯中央部に向かうよう、Uの字状に折り返されることを意味する。以下の記載における折返し部も同様である。
【0026】
また、金属製条帯第2折返し部32は、ホース外側かつ、金属製条帯中央部35に向かって折り返されている。
【0027】
さらに、金属製条帯3は、ホースの内側に面するように内周部33を有している。
内周部33は、第1平板部33bと第2平板部33cと突条部33aとを有する。
第1平板部33bはホース中心軸と略平行に延在する。第2平板部33cもホース中心軸と略平行に延在する。突条部33aは、金属製条帯の長さ方向に沿って、内周部33の幅方向中央部に線状に設けられている。また、突条部33aは、第1平板部33bと第2平板部33cの間に設けられており、第1平板部33bおよび第2平板部33cに対し、ホース外側に突出するように設けられている。
【0028】
すなわち、金属製条帯3は、ホース外側に開いた、つぶれた「3」もしくは「ω」の字型の断面形状となるように折り曲げられている。
金属製条帯3がかしめられた状態で、金属製条帯第1折返し部31および金属製条帯第2折返し部32は、条帯の幅方向に、それぞれの末端31a、32aが突条部33aに達するように延在している。
突条部33aの幅は、前記内周部33の幅の1/5以上3/5以下とされる。ここで「幅」とは、図2における左右方向に測った寸法のことである。また、突条部33aの高さは、かしめられた金属製条帯の高さの1/4以上1.0倍以下であることが好ましい。ここで「高さ」とは、図2における上下方向に測った寸法のことである。
また、必須ではないが、第1平板部33bと第2平板部33cとがほぼ同じ幅であることが好ましい。
【0029】
可撓性条帯2において、条帯単体で見た際にホースの一端側(図中A側)に位置する可撓性条帯2の端縁部分(即ち、金属製条帯第1折返し部31と組み合わされる部分)を可撓性条帯第1端縁部2Aと呼ぶ。可撓性条帯第1端縁部2Aには、ホース内側かつ、可撓性条帯2の中央部29に向かって折り返された可撓性条帯第1折返し部21が設けられている。
【0030】
可撓性条帯第1折返し部21の内側に金属製条帯第1折返し部31の末端31aが位置する状態で、金属製条帯第1折返し部31がかしめられて、金属製条帯第1折返し部31の末端31aと、金属製条帯突条部33aとの間に、可撓性条帯が挟持されて、可撓性条帯2の第1端縁部2Aと金属製条帯3とが接合されている。ここで、「可撓性条帯第1折返し部21の内側に」とは、ひだ状に折り返された可撓性条帯第1折り返し部のひだの内側に、金属製条帯の末端31aが位置することを意味する。以下、同様に記載する。また、かしめられた状態では、可撓性条帯第1折返し部21は、金属製条帯第1折返し部31と金属製条帯第1平板部33bの間に位置する。
【0031】
前記可撓性条帯2において、条帯単体で見た際にホースの他端側(図中B側)に位置する可撓性条帯2の端縁部分(即ち、金属製条帯第2折返し部32と組み合わされる部分)を可撓性条帯第2端縁部2Bと呼ぶ。本実施形態では、可撓性条帯第2端縁部2Bには、ホース内側かつ、可撓性条帯2の中央部29に向かって折り返された可撓性条帯第2折返し部22が設けられている。
【0032】
また、本実施形態では、可撓性条帯第2折返し部22の内側に金属製条帯第2折返し部32の末端32aが位置する状態で、金属製条帯第2折返し部32がかしめられて、金属製条帯第2折返し部32の末端32aと、金属製条帯突条部33aとの間に可撓性条帯が挟持されて、可撓性条帯2の第2端縁部2Bと金属製条帯3とが接合されている。
【0033】
可撓性ホース1は、公知の製造方法を応用して製造可能である。まず、それぞれ所定の幅のリボン状にされた可撓性条帯2と金属製条帯3が準備される。可撓性条帯2と金属製条帯3は、それぞれ所定の折返し形状の断面に折り曲げられながら、互いの折返し部がかみ合うように組み合わされつつ、らせん状に捲回され、金属製条帯3の折返し部をかしめて、可撓性ホース1が製造される。
【0034】
可撓性ホース1の製造を、例示的に、より詳細に説明すると、金属製条帯3が図3に示すような過程を経て、可撓性条帯2とかしめられて、ホースが製造される。
図3(a)に示したような断面の金属製条帯3は、例えば、突条や凹溝が設けられたローラに挟み込まれて、加工され、図3(b)に示したような、両端縁部が折り曲げられて全体が略「コ」の字状断面を呈するようにされるとともに、中央部に突条が設けられた形態となる(突条部形成工程)。この突条が、のちに突条部33aとなり、突条の両側の部分がのちに第1平板部33bと第2平板部33cになる。
【0035】
金属製条帯3に突条33aが設けられたのち、折り曲げられた両端縁部は、図3(c)に示すように、さらに折り曲げられる。この折り曲げられた部分が、のちに金属製条帯第1折返し部31、金属製条帯第2折返し部32となる部分である。
【0036】
金属製条帯3が図3(c)の形態になった状態で、可撓性条帯2とともに、捲回かしめ装置に送り込まれ、金属製条帯3と可撓性条帯2とが円筒状に捲回されながらかしめ接合されて、可撓性ホース1は製造される。捲回かしめ装置には曲げ型や曲げローラ、かしめローラなどが使用される。
【0037】
捲回かしめ装置の内部で、可撓性条帯第1折返し部21の内側に金属製条帯第1折返し部31の末端31aが位置する状態で、金属製条帯第1折返し部31がかしめられる(図3(d))。図3(d)では、かしめ操作を白抜き矢印で示している。かしめにより、金属製条帯第1折返し部31の末端31aと、金属製条帯突条部33aとの間に、可撓性条帯2が挟持されて、可撓性条帯2の第1端縁部2Aと金属製条帯3とが接合される(第1かしめ工程:図3(d))。
【0038】
捲回かしめ装置の内部で、可撓性条帯第2折返し部22の内側に金属製条帯第2折返し部32の末端32aが位置する状態で、金属製条帯第2折返し部32がかしめられる(第2かしめ工程:図3(e))。図3(e)では、かしめ操作を白抜き矢印で示している。かしめにより、金属製条帯第2折返し部32の末端32aと、金属製条帯突条部33aとの間に、可撓性条帯2が挟持されて、可撓性条帯2の第2端縁部2Bと金属製条帯3とが接合される。
【0039】
なお、本製造方法の例示においては、金属製条帯第1折返し部31のかしめ(図3(d))を、金属製条帯第2折返し部32のかしめ(図3(e))よりも先行させる例を示したが、かしめの順序は逆であってもよく、2か所のかしめが略同時に行われてもよい。
【0040】
以上の工程を経て、可撓性条帯2の両端縁部が、金属製条帯2によってかしめ接合され、可撓性ホース1が製造される(図3(f))。以上の工程は、長尺の金属製条帯3や長尺の可撓性条帯2を用いて連続的に行われ、長尺の可撓性ホース1が連続的に製造される。
【0041】
なお、必須ではないが、本製造方法の例示のように、図3(b)の突条部形成工程の後に、可撓性条帯第1折返し部21の内側に金属製条帯第1折返し部31の末端31aが位置する状態で、金属製条帯第1折返し部31をかしめて、金属製条帯第1折返し部31の末端31aと金属製条帯の突条部33aとの間に可撓性条帯を挟持する、第1かしめ工程(図3(d))を行うことが好ましい。同様に、金属製条帯第2折返し部32のかしめ工程(第2かしめ工程:図3(e))も、図3(b)の突条部形成工程の後に行われることが好ましい。
【0042】
上記第1実施形態の可撓性ホース1の作用および効果について説明する。上記可撓性ホース1によれば、金属製条帯の折返し部のスプリングバックが抑制され、かしめ部の接合強度を高めることができる。
【0043】
上記第1実施形態の可撓性ホース1によれば、金属製条帯第1折返し部31の末端31aと金属製条帯の突条部33aとの間に可撓性条帯が挟持されている。このため、図2に示すように、金属製条帯第1折返し部の末端31aの半径方向の位置が、第1平板部33bや第2平板部33cの半径方向の位置よりも、半径方向外側に位置することになる。したがって、金属製条帯第1折返し部の末端31aが配置される位置における周長は、第1平板部33bや第2平板部33cが配置される位置における周長よりも、長くなる。
【0044】
金属製条帯の末端31aの部分も第1平板部33bや第2平板部33cの部分も、もともとは平板状の金属製条帯として同じ長さだったため、配置される部分の周長が異なることにより、金属製条帯の末端31aの部分は、相対的に引き延ばされた状態で配置されることになる。これにより、金属製条帯の末端31aの部分に張力が働き、末端31aの部分が突条部33aの部分を締め付けるように付勢される。この締めつけ作用により、金属製条帯の折返し部31のスプリングバックが抑制され、かしめ部の接合強度が高められる。
【0045】
上記第1実施形態の可撓性ホース1のように、金属製条帯の内周部33が、第1平板部33bと第2平板部33c、および、ホース外側に突出するように設けられた突条部33a、とを有しており、前記突条部33aの幅が、前記内周部33の幅の1/5以上3/5以下であることにより、上記締めつけ作用が確実に発揮される。
【0046】
さらに、上記実施形態のように、金属製条帯3の反対側の第2折り返し部32でも同様のかしめ構造とされていれば、第2折り返し部32の側でもスプリングバックが抑制され、かしめ部の接合強度が高められることになり、金属製条帯の両端縁でのかしめ部の接合強度が高められて、可撓性ホースの強度が特に高められる。
【0047】
また、さらに、上記実施形態のように、前記金属製条帯3の内周部33において、第1平板部33bと第2平板部33cとが、同一の円筒面上に位置するようにされていると、ホース内周面に露出する金属製条帯の内周部33が実質的に平滑な円筒状になって、可撓性ホースの内部を通流する空気の通気抵抗をより少なくすることができる。
【0048】
また、上記実施形態の可撓性ホース1を、例示した製造方法のように、突条部形成工程(図3(b))の後に、第1かしめ工程(図3(d))を行うようにすれば、金属製条帯の内周部に突条部を設けた可撓性ホースを効率的に製造することができる。金属製条帯3に突条33aが設けられると、金属製条帯の長手方向に沿って延在する折り目がより多く入ることになって、金属製条帯が長手方向に折れ曲がりにくくなり、捲回かしめ装置に対し、より確実に金属製条帯を送り込めるようになるからである。
【0049】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0050】
図4には、第2実施形態の可撓性ホース5におけるかしめ部の構造を示す。第2実施形態の可撓性ホース5は、上記した第1実施形態の可撓性ホース1のホース壁の構造を、内/外逆にしたような構造をしている。
【0051】
すなわち、第2実施形態の可撓性ホース5において、所定の幅の可撓性条帯6を所定の折返し形状としつつらせん状に捲回し、互いに隣接する可撓性条帯6の端縁部分同士は、金属製の条帯7によりかしめ接合されている。かしめ接合された部位において、前記可撓性条帯6には、ホース外側かつ可撓性条帯中央部に向かって折り返された可撓性条帯第1折返し部61が設けられており、前記金属製条帯7には、ホース内側かつ金属製条帯中央部に向かって折り返された金属製条帯第1折返し部71が設けられている。
【0052】
前記金属製条帯7は、ホースの外側に面するように外周部73を有しており、
外周部73は、ホース中心軸に平行に延在する第1平板部73bと第2平板部73c、および、第1平板部と第2平板部の間に設けられホース内側に突出するように設けられた突条部73a、とを有している。そして、前記突条部73aの幅は、前記外周部の幅の1/5以上3/5以下とされる。
【0053】
そして、可撓性条帯第1折返し部61の内側に金属製条帯第1折返し部71の末端71aが位置する状態で、金属製条帯第1折返し部71がかしめられて、金属製条帯第1折返し部の末端71aと金属製条帯の突条部73aとの間に可撓性条帯6が挟持されている。
【0054】
かかる構造により、同様に、金属製条帯7の第1平板部73bや第2平板部73cに対し、第1折返し部71の末端71aが、比較的周長が短くなるホースの内側に配されることとなり、第1折返し部71の末端71aの部分がホース外側に向かって押し付けられるような力が負荷されることとなる。その結果、金属製条帯第1折返し部の末端71aと金属製条帯の突条部73aとの間に可撓性条帯6が挟持されることになって、金属製条帯の折返し部のスプリングバックが抑制され、かしめ部の接合強度が高められる。
【0055】
必須ではないが、第2実施形態の可撓性ホース5においては、金属製条帯7の反対側の端縁部でも同様に、前記可撓性条帯6には、ホース外側かつ可撓性条帯中央部に向かって折り返された可撓性条帯第2折返し部62が設けられており、前記金属製条帯7には、ホース内側かつ金属製条帯中央部に向かって折り返された金属製条帯第2折返し部72が設けられており、前記金属製条帯7は、ホースの外側に面するように外周部73を有しており、外周部は、ホース中心軸に平行に延在する第1平板部73bと第2平板部73c、および、第1平板部と第2平板部の間に設けられホース内側に突出するように設けられた突条部73a、とを有しており、前記突条部73aの幅は、前記外周部73の幅の1/5以上3/5以下であり、可撓性条帯第2折返し部62の内側に金属製条帯第2折返し部72の末端72aが位置する状態で、金属製条帯第2折返し部72がかしめられて、金属製条帯第2折返し部72の末端72aと金属製条帯の突条部73aとの間に可撓性条帯6が挟持されている。かかる構成により、ホースの接合強度がより高められうる。
【0056】
必須ではないが、本第2実施形態のように、さらに、可撓性条帯6の第2端縁部6Bには、可撓性条帯第6の第2折返し部62よりもさらに端縁に近い側に、ホース外側かつ、ホースの他端側(図中右側)に向かって折り返された可撓性条帯第4折返し部64が設けられていてもよい。すなわち、可撓性条帯6の第2端縁部6BはS字状に折り曲げられていてもよい。かかる構成は、可撓性条帯6と金属製条帯7との接合強度やシール性の向上に寄与しうる。
【0057】
同様に、必須ではないが、可撓性条帯の第1端縁部6Aに、可撓性条帯第1折返し部61よりもさらに端縁に近い側に、ホース外側かつ、ホースの一端側(図中左側)に向かって折り返された可撓性条帯第3折返し部(図示せず)が設けられていてもよい。すなわち、可撓性条帯の第1端縁部6Aは逆S字状に折り曲げられていてもよい。第3折返し部が設けられると、可撓性条帯6の第1端縁部6Aと金属製条帯3との接合強度が向上する。また、第3折返し部はシール性の向上にも寄与しうる。
【0058】
必須ではないが、また、本第2実施形態の可撓性ホース5のように、可撓性条帯の折り返し部がS字状に折り返される場合には、可撓性条帯の第2端縁部6Bの第4折返し部64の内側や、可撓性条帯の第1端縁部2Aの第3折返し部(図示せず)の内側に、線材8が配置されていてもよい。線材としては、特に限定されないが、金属線や樹脂線、ひもなどが例示される。線材8が配置されると、可撓性条帯6の第1端縁部6Aや第2端縁部6Bと金属製条帯7との接合強度が向上する。
【0059】
上記第1実施形態の説明では、金属製条帯に2か所存在するかしめ構造が、実質的に同じ構造である例を説明したが、2か所に同じかしめ構造を採用することは必須ではなく、別のかしめ構造を採用してもよい。例えば、一方のかしめ部には、第1実施形態もしくは第2実施形態におけるかしめ/シール構造を採用しつつ、他方のかしめ部では、従来技術のかしめ構造により接合を行うようにしてもよい。
【0060】
また、可撓性ホースの用途は特に限定されない。空調用の送風ダクトや、熱風を送る配管、内燃機関や燃焼装置等の排気ダクト、液体や粉体、粒体を送るための可撓性ホース、建物内部等で使用されるケーブル用シース部材などに、上記可撓性ホースは使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
上記可撓性ホースは送風ダクト等に使用でき、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0062】
1 可撓性ホース
2 可撓性条帯
2A 第1端縁部
2B 第2端縁部
21 第1折返し部
22 第2折返し部
3 金属製条帯
31 第1折返し部
31a 第1折返し部の末端
32 第2折返し部
32a 第2折返し部の末端
33 内周部
33a 突条部
33b 第1平板部
33c 第2平板部
図1
図2
図3
図4