(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072907
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】断熱パネル
(51)【国際特許分類】
E04B 1/80 20060101AFI20240522BHJP
E04C 2/292 20060101ALI20240522BHJP
E04C 2/30 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
E04B1/80 100Q
E04C2/292
E04C2/30 T
E04C2/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183771
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】514137573
【氏名又は名称】ガリレイパネルクリエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】黒田 義憲
(72)【発明者】
【氏名】大橋 克麻
【テーマコード(参考)】
2E001
2E162
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001FA03
2E001FA07
2E001FA14
2E001GA12
2E001GA81
2E001GA82
2E001HA32
2E001HB02
2E001HD03
2E001HD04
2E001HD13
2E162BA10
2E162CA31
2E162CB02
2E162CD01
2E162CD02
(57)【要約】
【課題】表面板が剥落あるいは脱落するのを確実に防止できる断熱パネルを提供する。
【解決手段】断熱パネルPは、所定の間隔をおいて対向するように配置された1対の表面板1,2と、1対の表面板1,2の周縁部間に介在された枠3と、1対の表面板1,2および枠3によって画定された内部空間に配置された断熱材5とを備え、1対の表面板1,2の周縁部に、互いに向かい合うように折り曲げられた折曲縁部12,22が形成されており、1対の表面板1,2の折曲縁部12,22と同時に係り合わせられることにより1対の表面板1,2の離間方向への相対移動を阻止しうる係合部材4が、枠3に一体的に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔をおいて対向するように配置された1対の表面板と、
前記1対の表面板の周縁部間に介在された枠と、
前記1対の表面板および前記枠によって画定された内部空間に配置された断熱材とを備え、
前記1対の表面板の周縁部に、互いに向かい合うように折り曲げられた折曲縁部が形成されており、
前記1対の表面板の前記折曲縁部に同時に係り合わせられることにより前記1対の表面板の離間方向への相対移動を阻止しうる係合部材が、前記枠に一体的に設けられている、断熱パネル。
【請求項2】
前記1対の表面板の前記折曲縁部に、対をなす係合孔が形成されており、
前記係合部材が、前記対をなす係合孔の縁にそれぞれ係り合わせられる複数の係合爪部を有している、請求項1に記載の断熱パネル。
【請求項3】
前記係合部材が、さらに、少なくとも一部が前記枠の内部に埋設されるかまたは前記枠の内面に固定されたベース部を有しており、
前記ベース部が、前記断熱パネルの厚さ方向の両側に、前記複数の係合孔に前記1対の表面板の折曲縁部の内側から臨まされる2つの端部を有しており、
前記ベース部の2つの端部に前記複数の係合爪部が設けられている、請求項2に記載の断熱パネル。
【請求項4】
前記枠は、前記1対の表面板の折曲縁部がそれぞれ挿入される複数の挿入溝を有しており、
前記複数の係合爪部は、これらの先端が前記複数の挿入溝それぞれの外側面に当接あるいは近接させられるように配置されており、
前記枠における前記複数の挿入溝の外側面を形成している部分は、それぞれ、前記折曲縁部を、前記挿入溝に、前記係合爪部の先端を乗り越えて前記係合孔に前記係合爪部が挿入される位置まで挿入しうるように、弾性変形可能となされている、請求項3に記載の断熱パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物、例えば組立式の冷凍冷蔵庫、クリーンルーム、倉庫等の天井、壁あるいは間仕切りを構成する断熱パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば上記の建造物に用いられる断熱パネルとしては、所定厚みを有する板状に形成した断熱材の表面に表面板を貼着して構成されており、この表面板の面(断熱材の表裏両面に表面板が貼着されている場合はそのいずれかの面)を断熱室の室内側に向けて配設することで、室内外を断熱すると共に、室内側の美観が保たれるようになされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の断熱パネルの別の構造としては、例えば建造物の天井を構成するものとして、一対の表面板(上面板・下面板)と、上下面板の辺部に介在される枠材と、上下面板に各辺に形成された端部折曲片を枠材の嵌合溝に嵌合して組み付けることで上下面板および枠材間に形成された空間内に注入充填される断熱材とで構成され、上面板の内面に取付金具を装着する構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記特許文献2に記載の断熱パネルは、天井を構成する位置に下地材として配置されたレールに連結金具を介して取り付けられている。この場合、連結金具と断熱パネルの固定は、連結金具の下方フランジ部の下面に上面板を当接させ、上面板の内面に装着された取付金具の取付ねじ受け部に下方フランジ部の上方から連結ねじを螺着して固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-095926号公報
【特許文献2】特開2009-084782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の従来の断熱パネルによれば、経年劣化や荷重等によって断熱材および表面板の接着性能の低下することにより、断熱材から表面板が剥落するおそれがあった。
また、特許文献2に記載の従来の断熱パネルによれば、経年劣化や荷重等によって上下面板および断熱材の密着性が低下した場合や、上下面板と枠材の係合が不十分となった場合に、取付金具および連結金具が連結ねじで螺着されていることにより上面板は連結金具を介して天井下地材への固定が保たれるが、下面板が断熱パネルから脱落するおそれがあった。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、組立式の冷凍冷蔵庫、クリーンルーム、倉庫等の天井、壁あるいは間仕切りを構成する断熱パネルとして、断熱パネルから表面板が剥落あるいは脱落するのを確実に防止できるものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0009】
1)所定の間隔をおいて対向するように配置された1対の表面板と、
前記1対の表面板の周縁部間に介在された枠と、
前記1対の表面板および前記枠によって画定された内部空間に配置された断熱材とを備え、
前記1対の表面板の周縁部に、互いに向かい合うように折り曲げられた折曲縁部が形成されており、
前記1対の表面板の前記折曲縁部に同時に係り合わせられることにより前記1対の表面板の離間方向への相対移動を阻止しうる係合部材が、前記枠に一体的に設けられている、断熱パネル。
【0010】
2)前記1対の表面板の前記折曲縁部に、対をなす係合孔が形成されており、
前記係合部材が、前記対をなす係合孔の縁にそれぞれ係り合わせられる複数の係合爪部を有している、上記1)の断熱パネル。
【0011】
3)前記係合部材が、さらに、少なくとも一部が前記枠の内部に埋設されるかまたは前記枠の内面に固定されたベース部を有しており、
前記ベース部が、前記断熱パネルの厚さ方向の両側に、前記複数の係合孔に前記1対の表面板の折曲縁部の内側から臨まされる2つの端部を有しており、
前記ベース部の2つの端部に前記複数の係合爪部が設けられている、上記2)の断熱パネル。
【0012】
4)前記枠は、前記1対の表面板の折曲縁部がそれぞれ挿入される複数の挿入溝を有しており、
前記複数の係合爪部は、これらの先端が前記複数の挿入溝それぞれの外側面に当接あるいは近接させられるように配置されており、
前記枠における前記複数の挿入溝の外側面を形成している部分は、それぞれ、前記折曲縁部を、前記挿入溝に、前記係合爪部の先端を乗り越えて前記係合孔に前記係合爪部が挿入される位置まで挿入しうるように、弾性変形可能となされている、上記3)の断熱パネル。
【発明の効果】
【0013】
上記(1)の断熱パネルによれば、1対の表面板に形成された折曲縁部同士が係合部材によって係り合わせられているため、両表面板の離間方向への相対移動が阻止され、経年劣化や荷重等で両表面板および断熱材の接着性能が低下したとしても、断熱パネルから表面板が剥落あるいは脱落するのを確実に防止できる。
【0014】
上記(2)の断熱パネルによれば、係合部材が係合爪部を有しており、係合爪部が折曲縁部に形成された係合孔と係り合わせられるため、断熱パネルから表面板が剥落あるいは脱落するのをより確実に防止できる。また、枠への両表面板の取り付けも容易であり、作業性の低下も防止できる。
【0015】
上記(3)の断熱パネルによれば、係合部材が、少なくとも一部が枠の内部に埋設されるかまたは枠の内面に固定されたベース部を有しており、ベース部が、断熱パネルの厚さ方向の両側に、複数の係合孔に前記1対の表面板の折曲縁部の内側から臨まされる2つの端部を有しており、ベース部の2つの端部に前記複数の係合爪部が設けられていることで、係合爪部は係合孔に内側から係り合わせられるため、係合爪部および係合孔の係合が確実に保たれ、断熱パネルから表面板が剥落あるいは脱落するのをより確実に防止できる。
【0016】
上記(4)の断熱パネルによれば、挿入溝に折曲縁部が挿入されることで、折曲縁部の断熱パネルにおける厚さ方向に直交する方向への移動が規制されるため、係合爪部および係合孔の係合が確実に保たれ、断熱パネルから表面板が剥落あるいは脱落するのをより確実に防止できる。また、枠に挿入溝が形成されていることで、両表面板を枠に取り付ける際の位置決めが容易になり、さらに、枠における複数の挿入溝の外側面を形成している部分が弾性変形可能となされていることで、枠への両表面板の取り付けも容易になるとともに、係合爪部および係合孔の係合がより確実に保たれ、作業性および取り回し性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の第1の実施形態に係る断熱パネルを示すものであって、枠に1対の表面板を組み付ける前の状態を示した全体斜視図である。
【
図2】同断熱パネルを示すものであって、枠に両表面板を組み付けた状態を示した全体斜視図である。
【
図3】
図1のIII―III線に沿う垂直断面図である。
【
図4】
図1のIV―IV線に沿う垂直断面図である。
【
図5】この発明の第2の実施形態に係る断熱パネルを示すものであって、枠に1対の表面板を組み付ける前の状態を示した全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を、
図1ないし
図5を参照して、以下に説明する。なお、この実施形態では、この発明に係る断熱パネルを天井パネルに使用する場合について説明する。
以下の説明において、「上下」は
図1ないし
図5の各上下をいうものとする。「左右」は
図1、
図2および
図5の各左上および右下、
図3の手前側および奥側、ならびに
図4の左右をいうものとする。また、「前後」は
図1、
図2および
図5の各左下および右上、
図3の右左、ならびに
図4の手前側および奥側をいうものとする。
ただし、これらの図面上での方向による構成部品等の方向の指称は便宜的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。また、以下の説明において、「斜め」との用語には垂直から若干傾いた角度から水平から若干傾いた角度も含まれるものとする。なお、この実施例に記載されている構成部品の形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0019】
この発明の第1の実施形態の断熱パネル(P1)は、
図1および
図2に示されるように、所定の間隔をおいて対向させられた平面略方形状の上下1対の表面板(1,2)(以下の説明おいて上面板(1),下面板(2)という)と、表面板(1,2)の周縁部(この実施形態では4辺)同士の間に介在されるとともに、表面板(1,2)に係合させられることで表面板(1,2)が離間方向に相対移動するのを阻止する枠(3)と、表面板(1,2)および枠(3)によって画定された内部空間に配置された断熱材(5)とを備えている。断熱パネル(P1)は、前後および左右に複数の列をなすように隣接配置されて、それぞれの断熱パネル(P1)同士が接合されることで天井面が構成されうるようになされている。なお、方形とは4つの角が90°の四角形を指し、各辺の長さは特に限定されないものとする。また、図示は省略したが、例えば、躯体に吊り下げ手段によって吊り下げ状に保持されている支持梁が隣り合う断熱パネル(P1)の側縁部上面にまたがって取り付けられるとともに、支持梁が断熱パネル(P1)の上面板(1)に設けられた座金にボルトを介して固着されることで、上面板(1)が躯体に支持梁を介して吊り下げ状に保持されうるようになされている。
【0020】
表面板(1,2)は、例えばカラー鋼板(PCM)等よりなり、所定の規格の大きさに薄板状に形成されている。
【0021】
枠(3)は、その長さ方向に沿って断面略台形状に形成される係合凸条(6)、あるいは、係合凸条(6)と係合しうる係合凹条(7)が形成されており、隣接する断熱パネル(P1)同士を接合する際、接合される一方の断熱パネル(P1)の係合凸条(6)を有する側面、および、接合される一方の断熱パネル(P1)の係合凹条(7)を有する側面を対向させることで、断熱パネル(P1)同士を隙間なく接合することができる。詳細には、係合凸条(6)は、枠(3)における断熱パネル(P1)の厚さ方向中央部が枠(3)の長さ方向に沿って外方に断面略台形状に突出するように形成されており、係合凹条(7)は、枠(3)における断熱パネル(P1)の厚さ方向中央部が枠(3)の長さ方向に沿って内方に断面略台形状に陥没するように形成されている。断熱パネル(P1)のどの側面に係合凸条(6)あるいは係合凹条(7)を形成するかは特に限定されない。また、係合凸条(6)および係合凹条(7)の形状、大きさは特に限定されず、その機能を果たしうる範囲で、適宜変更可能である。
【0022】
断熱材(5)は、例えば、ウレタンフォーム、イソシアヌレートフォーム等の合成樹脂発泡体や、ロックウール等よりなり、表面板(1,2)および枠(3)によって画定された内部空間に注入充填されている。
【0023】
次に、表面板(1,2)および枠(3)の係合構造について説明する。
【0024】
1対の表面板(1,2)の周縁部には、その全長にわたって、互いに向かうように折り曲げられた折曲縁部(12,22)が形成されている。さらに、折曲縁部(12,22)における表面板(1,2)の各側縁部に対応する4つの直線部それぞれの両端部には、係合孔(13,23)が形成されている。すなわち、上面板(1)の折曲縁部(12)の4つの直線部それぞれの両端に計8つの係合孔(13)、下面板(2)の折曲縁部(22)の4つの直線部それぞれの両端に計8つの係合孔(23)が形成されている。係合孔(13,23)の形状は、この実施形態では横長方形状とされているが、その機能を果たしうる範囲で適宜変更可能である。
【0025】
枠(3)は、表面板(1,2)の各側縁部間に対応する4つの略直線形状のストレート枠材(31)と、表面板(1,2)の4つの角部に対応して配置されて、隣接するストレート枠材(31)同士を連結する平面略L字形状のコーナー枠材(32)とを有している。コーナー枠材(32)およびストレート枠材(31)は、例えば、ストレート枠材(31)が中空部材からなり、あるいは、ストレート枠材(31)におけるコーナー枠材(32)が取り付けられる端部に差込凹部が形成されており、コーナー枠材(32)の端部にストレート枠材(31)の(あるいは凹部の)内面よりもやや小さくなされた取付代部が形成されており、コーナー枠材(32)の取付代部がストレート枠材(31)の端部に差し込まれることでコーナー枠材(32)およびストレート枠材(31)が接続されている。ストレート枠材(31)およびコーナー枠材(32)はそれぞれが構成する枠(3)の形状に応じて適宜係合凸条(6)および/あるいは係合凹条(7)が形成される。すなわち、コーナー枠材(32)は、断熱パネル(P1)の隣接する側面(枠(3))が両方係合凸条(6)を有している場合、あるいは、両方係合凹条(7)を有している場合は、コーナー枠材(32)は係合凸条(6)が2つ、あるいは、係合凹条(7)が2つ形成され、断熱パネル(P1)の隣接する側面(枠(3))の一方が係合凸条(6)を有し、他方が係合凹条(7)を有している場合は、コーナー枠材(32)は係合凸条(6)および係合凹条(7)が1つずつ形成される。また、枠(3)(ストレート枠材(31)、コーナー枠材(32))の上下端面における表面板(1,2)の折曲縁部(12,22)に対応する箇所には長さ方向に延びて、折曲縁部(12,22)がそれぞれ挿入される挿入溝(34)が形成されている。挿入溝(34)の内側面は略平坦となされている。また、挿入溝(34)の外側面の形状は特に限定されないが、挿入溝(34)の外側面を構成する部分(以下の説明において外側壁(35)という)における挿入溝(34)の底面側が肉厚部(36)とされ、連続する傾斜面(37)を介して、挿入溝(34)の開口側が肉薄部(38)とされているのが好ましい。この場合、表面板(1,2)の折曲縁部(12,22)がそれぞれ挿入溝(34)に挿入された際、折曲縁部(12,22)のそれぞれの先端が肉厚部(36)に対応する位置に配置されるのが好ましい。ストレート枠材(31)は、例えばポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等の合成樹脂形材よりなり、押出成形や射出成形によって形成される。
【0026】
コーナー枠材(32)には係合部材(4)が一体的に設けられている。詳細には、係合部材(4)は、コーナー枠材(32)の内部に埋設されて、断熱パネル(P1)の厚さ方向に延びたベース部(41)を有している。ベース部(41)は、断熱パネル(P1)の厚さ方向の両側に、係合孔(13,23)に折曲縁部(12,22)の内側から臨まされる2つの端部を有しており、その両端部のそれぞれに係合爪部(42)が設けられている。係合爪部(42)は、ベース部(41)の両端部からベース部(41)の中央側へ斜めに延び、かつ、係合爪部(42)の両先端がコーナー枠材(32)から外方へ突出させられて挿入溝(34)の外側面における外側壁(35)の肉薄部(38)に対応する箇所に当接あるいは近接させられている。さらに、係合爪部(42)は、表面板(1,2)を枠(3)に組み付けた際に、折曲縁部(12,22)の係合孔(13,23)に折曲縁部(12,22)の内側から挿通させられて折曲縁部(12,22)から外方へ突出させられて、係合孔(13,23)のの縁に係り合わせられるようになされている。また、ベース部(41)における断熱パネル(P1)の厚さ方向中央部は、係合部材(4)が設けられるコーナー枠材(32)の形状に応じて、適宜凸状および/あるいは凹状に成形されるが、その形状は隣接する断熱パネル(P1)同士の接合の妨げとならない範囲で適宜変更可能である。係合部材(4)は、不燃材料、例えば、SUS型材やアルミ型材等からなる。また、この実施形態において、係合爪部(42)はベース部(41)の2つの端部の先端縁部が折り曲げられてベース部(41)と一体的に形成された薄板状のものとされているが、形状や構造はこれに限定されず、例えば、凸状部材がベース部(41)とは別部材としてベース部(41)の先端に取り付けられていてもよい。なお、上側の係合爪部(42)における上面および下側の係合爪部(42)における下面は、折曲縁部(12,22)の挿入溝(34)への挿入方向に対して直角から挿入方向へ傾斜させられているのが好ましい。また、上側の係合爪部(42)における下面および下側の係合爪部(42)における上面は、折曲縁部(12,22)の挿入溝(34)への挿入方向に対して直角あるいは直角から挿入方向へ傾斜させられているのが好ましく、直角から挿入方向へ傾斜させられているのがより好ましい。
【0027】
上記のように構成される断熱パネル(P1)を製作するには、まず、4つのストレート枠材(31)および4つのコーナー枠材(32)を連結して、断熱パネル(P1)の側面全周を画定する枠(3)を枠組みする。その後、表面板(1,2)をそれぞれ上下から枠(3)へ押し込んでいき、折曲縁部(12,22)を挿入溝(34)に挿入して組み付ける。その際、係合爪部(42)の先端および外側壁(35)の肉薄部(38)間に折曲縁部(12,22)の先端が押し込まれると、合成樹脂形材よりなる外側壁(35)の肉薄部(38)が外方へ弾性変形し、係合爪部(42)の先端から離間させられて、折曲縁部(12,22)の先端が係合爪部(42)の先端および外側壁(35)の肉薄部(38)間を挿通可能となり、折曲縁部(12,22)の先端が係合爪部(42)の先端を乗り越えて、折曲縁部(12,22)が挿入溝(34)に挿入される。さらに折曲縁部(12,22)の先端が押し込まれると、係合爪部(42)が係合孔(13,23)に折曲縁部(12,22)の内側から挿通させられて折曲縁部(12,22)から外方へ突出し、外側壁(35)の肉薄部(38)は再び係合爪部(42)の先端に当接位置あるいは近接位置へ戻る。表面板(1,2)における上下方向の内面が断熱材の上下面に当接する位置で折曲縁部(12,22)の挿入溝(34)への挿入は停止し、その位置において折曲縁部(12,22)の先端は外側壁(35)の肉厚部(36)に対向する位置に配置される。こうして組付けられた表面板(1,2)および枠(3)によって画定された内部空間に、枠(3)に設けられた注入口(図示略)から断熱材(5)が注入充填され、表面板(1,2)および断熱材(5)が接着させられて、断熱パネル(P1)が製作される。
【0028】
上記の実施形態に係る断熱パネル(P1)によれば、表面板(1,2)および断熱材(5)の接着性能が低下し、断熱材(5)から表面板(1,2)が剥がれた場合であっても、上面板(1)の折曲縁部(12)の係合孔(13)の下縁に係合部材(4)の上側の係合爪部(42)が係合して上面板(1)の上方への移動を阻止すると同時に,下面板(2)の折曲縁部(22)の係合孔(23)の上縁に係合部材(4)の下側の係合爪部(42)が係合して下面板(2)の下方への移動を阻止するため、表面板(1,2)が互いに離間する方向への力が作用したとしても、表面板(1,2)の離間方向への相対移動が確実に阻止される。また、係合爪部(42)がベース部(41)の両先端からベース部(41)の中央側へ斜めに延びているため、表面板(1,2)に離間方向への力が作用したとしても、係合孔(13,23)および係合爪部(42)の係合が確実に保たれる。また、上側の係合爪部(42)における上面および下側の係合爪部(42)における下面が、折曲縁部(12,22)の挿入溝(34)への挿入方向に対して直角から挿入方向へ傾斜させられているとともに、上側の係合爪部(42)における下面および下側の係合爪部(42)における上面が折曲縁部(12,22)の挿入溝(34)への挿入方向に対して直角から挿入方向へ傾斜させられているため、表面板(1,2)の枠(3)への組み付けも容易であるうえ、係合孔(13,23)および係合爪部(42)の係合が確実に維持される。さらに、表面板(1,2)が枠(3)に組み付けられた状態において、折曲縁部(12,22)の先端が外側壁(35)の肉厚部(36)に対向する位置に配置されるため、表面板(1,2)の水平方向への移動が規制され、表面板(1,2)に水平方向への力が作用したとしても、係合孔(13,23)および係合爪部(42)の係合がより確実に維持される。このことから躯体に吊り下げ状に保持された上面板(1)だけでなく、下面板(2)が断熱パネル(P1)から剥落あるいは脱落するのが確実に防止される。また、係合孔(13,23)および係合部材(4)が表面板(1,2)の4つの角部に設けられていることで安定性が向上し、さらに、補強部材(39)を備えていることによって、例えば、使用者が作業等のために断熱パネル(P1)の上を歩行した際でも、荷重を分散することができ、下面板(2)が断熱パネル(P1)から剥落あるいは脱落するのがより確実に防止され、安全に作業を行うことができる。また、合成樹脂形材よりなる外側壁(35)の肉薄部(38)が外方へ弾性変形可能となされているため、表面板(1,2)の枠(3)への組付け作業も容易であり、作業性の低下も防止される。さらに、係合部材(4)は、SUS型材やアルミ型材等の不燃材料からなるため、万が一、火災等で断熱材(5)が焼失した場合であっても、係合部材(4)によって表面板(1,2)の剥落あるいは脱落するのが確実に防止される。
【0029】
係合部材(4)は、コーナー枠材(32)の隣接する2つの外側面、すなわち、折曲縁部(12,22)の角部を挟むように配置された2つの面に対応して、1つのコーナー枠材(32)に2つの係合部材(4)が設けられているが、1つのコーナー枠材(32)に角部に対応しうるように折り曲げられた1つの係合部材が設けられていてもよい。また、係合部材(4)は、4つのコーナー枠材(32)全てに設けられているが、4つのコーナー枠材(32)のうち少なくとも対角位置にある2つのコーナー枠材(32)に設けられていればよい。少なくとも対角位置の2つのコーナー枠材(32)に係合部材(4)が設けられていれば、断熱パネル(P1)の安定性が向上し、例えば、使用者が断熱パネル(P1)の上に乗って作業を行った際に断熱パネル(P1)に荷重かかったとしても、断熱パネル(P1)から表面板(1,2)が剥落あるいは脱落するのを確実に防止できる。
【0030】
折曲縁部(12,22)は表面板(1,2)の周縁部の全周にわたって形成されているが、これに限定されず、折曲縁部(12,22)は表面板(1,2)それぞれの前後左右の端部の一部、例えば、表面板(1,2)の角部に対応する箇所のみが折り曲げられて形成されていてもよいし、表面板本体(11,21)のそれぞれの前後左右の端部における長さ方向中間部のみが折り曲げられて形成されていてもよい。これらの場合、挿入溝(34)は折曲縁部(12,22)のそれぞれに対応する箇所に複数形成される。折曲縁部(12,22)、係合孔(13,23)および係合部材(4)が配置される位置は特に限定されず、その機能を果たしうる範囲で、断熱パネル(P1)の構成等によって適宜変更される。
【0031】
外側壁(35)の形状は上記のものに限定されず、その機能を果たしうる範囲で適宜変更可能であるが、折曲縁部(12,22)の先端に対応して、表面板(1,2)の水平方向への移動を規制しうるように弾性変形しにくくなされた肉厚部(36)と、係合爪部(42)の先端に対応して、折曲縁部(12,22)の先端が外側壁(35)の内面および係合爪部(42)間を挿通しうるように弾性変形しやすくなされた肉薄部(38)とを有しているのが好ましい。
【0032】
係合孔(13,23)および係合爪部(42)の断熱パネル(P1)の厚さ方向における配置は特に限定されないが、係合孔(13,23)における折曲縁部(12,22)の先端側の縁および係合爪部(42)が係り合わせられた際に折曲縁部(12,22)の先端が外側壁(35)の肉厚部(36)に対向しうるように配置されるのが好ましい。
【0033】
係合部材(4)のベース部(41)は、枠(3)(この実施形態ではコーナー枠材(32))の内部に全体が埋設されているが、ベース部(41)の枠(3)への取り付け構造はこれに限定されず、ベース部(41)の少なくとも一部が枠(3)の内部に埋設されるかまたは枠(3)の内面に固定されていればよい。好ましくは、少なくともベース部(41)における断熱パネル(P1)の側面方向の外側面が枠(3)に覆われうるようになされており、より好ましくは、ベース部(41)の全体が枠(3)の内部に埋設されている。このような構造とされることで、断熱パネル(P1)の外面に不燃材料からなるベース部(41)が露出せず、断熱パネル(P1)の外観を損なうことがなく、デザイン性も向上する。
【0034】
図5には、この発明の第2の実施形態に係る断熱パネル(P2)を示す。なお、以下の断熱パネル(P2)の説明において、この発明の第1の実施形態に係る断熱パネル(P1)と同様の構成については説明を省略する。
【0035】
断熱パネル(P2)は、所定の間隔をおいて対向させられたの平面略六角形の上下1対の表面板(101,102)(以下の説明おいて上面板(101),下面板(102)という)と、表面板(101,102)の周縁部(この実施形態では6辺)同士の間に介在されるとともに、表面板(101,102)に係合させられることで表面板(101,102)が離間方向に相対移動するのを阻止する枠(103)と、表面板(101,102)および枠(103)によって画定された内部空間に配置される断熱材(5)とを備えている。表面板(101,102)は、詳細には、方形の1つの角部が方形状に切り欠かれた形状を有しており、内角が略直角をなす5つの角部、および、内角が略270°をなす1つの角部を有している。上記のような形状を有する表面板(101,102)を備えた断熱パネル(P2)を組み合わせて隣接配置することで、下面板(102)を天井面として室内側に配置した場合に種々の模様を形成することができ、審美的にも優れた天井面を構成することができる。
【0036】
1対の表面板(101,102)の周縁部には、その全長にわたって、互いに向かうように折り曲げられた折曲縁部(112,122)が形成されている。さらに、折曲縁部(112,122)における表面板(101,102)の内角が略直角をなす5つの角部に対応する箇所を挟んだ直線部それぞれの端部には、係合孔(113,123)が形成されている。すなわち、上面板(101)の折曲縁部(112)に計10つの係合孔(13)、下面板(102)の折曲縁部(122)に計10つの係合孔(123)が形成されている。係合孔(113,123)の形状は、この実施形態では横長方形状とされているが、その機能を果たしうる範囲で適宜変更可能である。
【0037】
枠(103)は、表面板(101,102)の各側縁部間に対応する、6つの略直線形状のストレート枠材(31)と、表面板(101,102)における内角が直角をなす5つの角部に対応して配置されて、隣接するストレート枠材(31)同士を連結する平面略L字形状のコーナー枠材(32)とを有している。なお、表面板(101,102)における内角が270°をなす1つの角部を挟む側縁部間に対応するストレート枠材(31)は、一体的に形成されたL字枠材に代替されてもよい。また、この実施形態における表面板(101,102)における内角が270°をなす1つの角部を挟む側縁部間に対応するストレート枠材(31)同士は、例えば、端面同士が接着等で接続されるが、コーナー枠材(32)を内角が270°の角部に対応する構成に変更したコーナー枠材を使用して接続してもよい。
【0038】
枠(103)(ストレート枠材(31)およびコーナー枠材(32))の長さ方向に沿って断面略台形状に係合凸条(106)と、係合凸条(106)と係合しうる係合凹条(107)とが形成されているが、断熱パネル(P2)のどの側面に係合凸条(106)あるいは係合凹条(107)が形成されるかは特に限定されず、断熱パネル(P2)の隣接する断熱パネルとの組合せによって適宜設定される。また、係合凸条(106)および係合凹条(107)の形状、大きさは特に限定されず、その機能を果たしうる範囲で、適宜変更可能である。
【0039】
断熱パネル(P2)の表面板(101,102)および枠(103)の係合構造、すなわち、表面板(101,102)の折曲縁部(112,122)の係合孔と、コーナー枠材(32)の係合部材(4)との係合構造は第1の実施形態の断熱パネル(P1)と同様である。
【0040】
なお、上記の2つの実施形態では、断熱パネル(P1,P2)は平面から見て略方形、あるいは、略六角形とされているが、本発明に係る断熱パネルはこれらに限定されず、種々の平面視多角形状に適用可能である。その場合、コーナー枠材(32)は表面板(1,2,101,102)の角部の形状(内角の角度)、例えば鋭角、鈍角、あるいは180°を超える場合であっても、適宜対応した形状に変更される。また、上記において、この発明に係る断熱パネル(P1,P2)を天井パネルに使用する場合について説明したが、この発明に係る断熱パネル(P1,P2)を壁パネルにも使用することができる。この場合は、上面板(1,101)を躯体(壁スラブ)側に配置し、下面板(2,102)を室内側に配置する構成とする。
【0041】
また、本発明における表面板(1,2,101,102)および枠(3,103)の係合構造において、たとえば、コーナー枠材(32)の挿入溝(34)の内側面を構成する部分から係合部材(4)にわたって係合凹部(あるいは係合溝)が形成されるとともに、表面板(1,2,101,102)の折曲縁部(12,22,112,122)の先端側から内側方向に突出させられた係合爪部が設けられて、係合凹部および係合爪部が係合させられるようになされていてもよい。この場合、上側の係合爪部における下面および下側の係合爪部における上面は、折曲縁部(12,22,112,122)の挿入溝(34)への挿入方向に対して直角から挿入方向と反対の方向へ傾斜させられているのが好ましい。また、上側の係合爪部における上面および下側の係合爪部における下面は、折曲縁部(12,22,112,122)の挿入溝(34)への挿入方向に対して直角あるいは直角から挿入方向と反対の方向へ傾斜させられているのが好ましく、直角から挿入方向と反対の方向へ傾斜させられているのがより好ましい。係合凹部における係合爪部と係合する部分は表面板(1,2,101,102)および枠(3,103)の組み付けが容易かつ係合凹部および係合爪部の係合が確実に維持されうるように、上側の係合爪部における上面および下側の係合爪部における下面と係合する部分は、折曲縁部(12,22,112,122)の挿入溝(34)への挿入方向に対して直角あるいは直角から挿入方向と反対の方向へ傾斜させられた面とされているのが好ましく、直角から挿入方向と反対の方向へ傾斜させられた面とされているのがより好ましい。また、コーナー枠材(32)に、係合凹部ではなく係合爪部(42)を設けて、折曲縁部(12,22,112,122)に設けられた係合爪部と係合させられるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、建造物、例えば組立式の冷凍冷蔵庫、クリーンルーム、倉庫等の天井、壁あるいは間仕切りを構成する断熱パネルとして、好適に使用できる。
【符号の説明】
【0043】
(1)(2)(101)(102):表面板
(12)(22)(112)(122):折曲縁部
(13)(23)(113)(123):係合孔
(3)(103):枠
(31):ストレート枠材
(32):コーナー枠材
(34):挿入溝
(35):外側壁
(36):肉厚部
(37):傾斜部
(38):肉薄部
(4):係合部材
(41):ベース部
(42):係合爪部
(5):断熱材
(6)(106):係合凸条
(7)(107):係合凹条
(P1)(P2):断熱パネル