(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007291
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
A47J27/00 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108708
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萱森 雅之
(72)【発明者】
【氏名】木村 智志
(72)【発明者】
【氏名】小林 博明
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一也
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055AA09
4B055BA03
4B055BA56
4B055CA21
4B055CA42
4B055CA73
4B055CB08
4B055DA04
4B055DB14
4B055GD05
(57)【要約】
【課題】容器内の洗浄時の臭い除去能力を向上させた加熱調理器を提供する。
【解決手段】本発明の炊飯器は、被調理物Sを収容する有底筒状の鍋4と、被調理物Sを加熱する加熱手段56と、鍋4の開口部を密閉可能に覆う蓋体2と、を備え、加熱手段56は、鍋4に収容された水を加熱して水蒸気に気化させる加熱コイル17と、水蒸気をさらに加熱する蓋ヒータ30やコードヒータ9,18と、を有し、蓋体2は、当該蓋体2が鍋4を覆っているときに鍋4と密着する蓋パッキン33を有し、蓋パッキン33を洗浄する洗浄工程において、加熱手段56により水および水蒸気を加熱して、過熱蒸気で鍋4の収容空間5を充満させる過熱蒸気空間を形成する構成としている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収容する有底筒状の容器と、
前記被調理物を加熱する加熱手段と、
前記容器の開口部を覆う蓋と、を備えた加熱調理器であって、
前記加熱手段は、前記容器に収容された水を加熱して水蒸気に気化させる第1の加熱手段と、前記水蒸気を加熱する第2の加熱手段と、を有し、
前記蓋は、当該蓋が前記容器を覆っているときに前記容器と密着する弾性部材を有し、
前記弾性部材を洗浄する洗浄工程において、前記加熱手段により前記水および前記水蒸気を加熱して、過熱蒸気で前記容器を充満させて過熱蒸気空間を形成することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記第1の加熱手段は、前記容器を加熱することにより前記水を加熱し、
前記第2の加熱手段は、前記蓋を加熱することにより前記水蒸気を加熱することを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記弾性部材がフッ素系ゴムで形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記容器の最外面がポリエーテルケトン系の樹脂の層で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項5】
被調理物を収容する有底筒状の容器と、
前記容器を加熱する加熱手段と、
前記容器の開口部を密閉可能に覆う蓋と、
前記容器内を脱気する脱気手段と、を備え、
前記脱気手段により前記容器内を脱気し、かつ前記加熱手段により前記容器を加熱して当該容器内の圧力で前記被調理物が沸騰しない所定の温度に保持する温度保持工程を有することを特徴とする加熱調理器。
【請求項6】
前記温度保持工程は、前記被調理物の調理終了後に行なわれることを特徴とする請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記被調理物の調理時刻を指定可能な予約手段をさらに備え、
前記予約手段により前記調理時刻が指定されたときから前記被調理物の調理開始までに所定時間以上ある場合に、当該調理開始まで前記温度保持工程が行なわれることを特徴とする請求項5または6に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄機能を有する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器や蓋の染みついた臭いを除去するために洗浄機能を有する加熱調理器として、例えば特許文献1では、内鍋内の炊飯物を加圧しながら炊飯することが可能な加熱調理器としての圧力式炊飯器において、内鍋内の水を常温から沸点まで昇温させる昇温工程と、内鍋内の圧力が大気圧より高い高圧で内鍋内の水を沸騰状態に維持する沸騰維持工程と、内鍋内の圧力を大気圧より高い高圧から大気圧よりも高い中圧まで減圧させる減圧工程と、を含む洗浄コースを実行可能としたものが開示されている。そのため洗浄コースの実行中にパッキン類等に接触させる蒸気の温度を高めることができ、洗浄コースにおける臭い除去能力や洗浄能力を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、例えば炊飯器などの加熱調理器には多様な調理メニューの自動調理を実施する機能が搭載されており、白米や玄米を炊飯する他にも、例えばカレーや煮豚などの煮込み料理の加熱調理をする場合や、炊き込みご飯やピラフなどの香りが強い料理を炊飯する場合があるが、このような場合、容器内の洗浄時の臭い除去能力をさらに高める必要があった。
【0005】
そこで本発明は、容器内の洗浄時の臭い除去能力を向上させた加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加熱調理器は、被調理物を収容する有底筒状の容器と、前記被調理物を加熱する加熱手段と、前記容器の開口部を覆う蓋と、を備えた加熱調理器であって、前記加熱手段は、前記容器に収容された水を加熱して水蒸気に気化させる第1の加熱手段と、前記水蒸気を加熱する第2の加熱手段と、を有し、前記蓋は、当該蓋が前記容器を覆っているときに前記容器と密着する弾性部材を有し、前記弾性部材を洗浄する洗浄工程において、前記加熱手段により前記水および前記水蒸気を加熱して、過熱蒸気で前記容器を充満させて過熱蒸気空間を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱調理器によれば、より高い温度である過熱蒸気の水分蒸発作用で、容器や蓋、特に弾性部材に付着した臭い成分や食中毒菌を除去して洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示す炊飯器の外観斜視図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態を示す炊飯器の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】同上、保温工程における、容器温度の経時的な変化、容器内の減圧脱気度合と減圧脱気の有無、および容器の加熱の有無の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明における好ましい炊飯器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
【実施例0010】
図1および
図2は、本発明の加熱調理器を炊飯器に適用した第1の実施形態の全体構成を示している。これらの各図において、1は上面が開口された本体、2は本体1の上面を開閉自在に覆う蓋体2で、これらの本体1と蓋体2により、炊飯器全体の外郭が構成される。本体1は上面を開口した鍋収容部3を有し、蓋体2を開けたときに、被調理物Sを収容する有底筒状の容器としての鍋4が鍋収容部3に着脱自在に収容される構成となっている。5は、鍋4により形成された被調理物Sの収容空間であり、以後この収容空間5を鍋4の内部という。
【0011】
本体1は、その上部と上側面部を構成する上枠6と、側底面部を構成する外枠7とを主な構成要素とする。その際、上枠6や外枠7は、PPやABSポリカなどの合成樹脂で形成される。凹状の鍋収容部3の上部から側部にかけては、上枠6と一体化で形成されており、内枠収容部3の底部は、上枠6と別部材の内枠8で形成してある。内枠8は、PETなどの合成樹脂で形成される。
【0012】
鍋収容部3の上端にはコードヒータ9を備えてあり、コードヒータ9は熱伝導がよいアルミ板などの金属板部10で覆われている。これらのコードヒータ9と金属板部10は、発熱手段としてのフランジヒータ12を構成する。フランジヒータ12には、鍋4の略中央部から外周方向全周に延出させたフランジ状の鍋リング部13の下面が載置し、鍋4が吊られた状態で鍋収容部3に収容される。フランジヒータ12は、炊飯時や保温時に鍋リング部13および鍋4の側面を加熱すると共に、本体1と蓋体2との隙間および鍋収容部3と鍋4との隙間に向けて、金属板部10から熱を放射することで、鍋4の冷えを抑制し、加熱により被調理物Sから発生する水分が、鍋4の上部内面へ結露するのを防止する構成となっている。
【0013】
鍋4は、熱伝導性のよいアルミニウムを主材15とし、フェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱体16が、主材15の外面の側面下部から底部にかけて接合して設けられる。鍋4の側面中央から上部に発熱体16を設けないのは、鍋4の軽量化を図るためである。なお
図2では、被調理物Sとして水Wと白米Rが図示されているが、白米Rや玄米などの米の他に、麦類や豆類を含む一乃至複数種類の穀物を、水Wと共に鍋4に入れてもよく、また味付けのために塩や醤油などの調味料を加えてもよい。そして白米や玄米を炊飯する他にも、例えばカレーや煮豚などの煮込み料理を加熱調理してもよい。
【0014】
発熱体16に対向する内枠8の側面下部と底部には、鍋4を電磁誘導で加熱する第1の加熱手段としての加熱コイル17が配置される。リッツ線からなる加熱コイル17は、お椀状に形成された内枠8の外面に渦巻き状に設けられる。また、鍋4の上部外側面に対向して、蓋体2の内側面部には、フランジヒータ12とは別のコードヒータ18が設けられる。胴ヒータとしてのコードヒータ18は、熱伝導がよいステンレスやアルミニウムなどの金属板からなる内蓋リング19に固定され、蓋側面加熱手段としての内蓋リングヒータ20を構成している。
【0015】
内枠8の底部中央部には、鍋温度検知手段としての鍋温度センサ21が、鍋4の外面底部に鍋4の外面底部と弾発的に接触するように設けられる。鍋温度センサ21は鍋4の温度を検知するものであり、加熱制御手段22が、鍋温度センサ21からの検知信号に基づき、加熱コイル17による鍋4の底部の加熱温度を主に温度管理するように構成されている。
【0016】
蓋体2の前方上面には、蓋体操作体23が露出状態で配設されており、この蓋体操作体23を押すと、本体1と蓋体2との係合が解除され、蓋体2の後部に設けられたヒンジ軸24を回転中心として蓋体2が自動的に開く構成となっている。また、蓋体2の後方上面には、鍋4内の被調理物Sから発生する蒸気を、炊飯器の外部に排出する蒸気口ユニット25が着脱可能に装着される。
【0017】
蓋体2は、その外郭上面をなす外観部品としての外蓋27と、蓋体2の下面を形成する放熱板28と、外蓋27および放熱板28を結合させて、蓋体2の骨格を形成する蓋ベース材としての外蓋カバー29とを、主な構成要素とする。蓋体2の内部にあって、放熱板28の上面には、第2の加熱手段の蓋加熱手段としての蓋ヒータ30が設けられる。この蓋ヒータ30は、コードヒータなどの電熱式ヒータや、電磁誘導加熱式による加熱コイルでもよい。
【0018】
放熱板28の下側には、蓋体2の下部部材としてのユニット化された内蓋組立体31が着脱可能に設けられる。内蓋組立体31は、鍋4の上方開口部と略同径で円盤状を有する金属製の内蓋32と、鍋4と内蓋32との間をシールするための弾性部材からなる蓋パッキン33と、蓋パッキン33を内蓋32の外側全周に装着するための内蓋リング34と、鍋4の内部の圧力となる内圧を調整する調圧部35と、をそれぞれ備えている。環状に形成された蓋パッキン33は、蓋体2を閉じた蓋閉時に鍋4の上面である上端部に当接して鍋4と内蓋32との隙間を塞ぎ、鍋4から発生する蒸気を密閉するものである。すなわち蓋パッキン33は、内蓋32が鍋4を覆っているときに鍋4の上端部と密着する弾性部材としての機能を有している。
【0019】
放熱板28には、蓋体2の特に内蓋32の温度を検知する蓋温度検知手段として、加熱制御手段22が蓋ヒータ30による温度管理を行なうためのサーミスタ式の蓋温度センサ36が設けられる。また蓋体2の内部には、鍋4内で発生した蒸気を外部へ放出する通路として、蒸気口ユニット25と調圧部35とを連通する蒸気排出経路37が形成される。この蒸気排出経路37において、蒸気口ユニット25との接続部には弾性部材としての蒸気排出路内パッキン26が設けられ、内蓋組立体31との接続部には弾性部材としての蒸気排出路内パッキン40が設けられる。このように構成することで、蒸気排出経路37において蒸気口ユニット25や内蓋組立体31との接続部から蒸気が漏れることが無く、かつ、蓋体2からの蒸気口ユニット25や内蓋組立体31の着脱を容易にしている。
【0020】
調圧部35には、鍋4の内部と蒸気口ユニット25との間の蒸気排出経路37を開閉する調圧弁38が設けられる。調圧弁38はボール状で、蓋体2の内部に設けたソレノイド39と連動し、鍋4内の蒸気を外部へ放出する場合には、蒸気排出経路37を開放するのに対し、鍋4内を炊飯器外部の大気圧よりも低い減圧状態、または大気圧よりも高い加圧状態にする場合には、蒸気排出経路37を閉塞するように、電動のソレノイド39が調圧弁38を転動させる。そして加圧時には、加熱コイル17への高周波通電により鍋4内の被調理物が加熱され、鍋4の内圧が所定値に達すると、調圧弁38の自重に抗して蒸気排出経路37を開放することで、鍋4の内圧を大気圧以上に維持する構成となっている。
【0021】
蓋体2の内部には、蓋体2を本体1に閉じた蓋閉状態で、鍋4の内圧を大気圧よりも低くするための減圧手段41が配設される。減圧手段41は、蓋体2の後部に設けた減圧駆動源としての減圧ポンプ42の他に、蓋体2の内部において、減圧ポンプ42と鍋4の内部との間を連通する管状の経路(図示せず)と、その経路を開閉する減圧弁43(
図3を参照)とにより構成される。そして本実施形態では、鍋4を鍋収容部3に収容し、蓋体2を閉じた後でソレノイド39を通電して、調圧弁38が蒸気排出経路37を塞いだ状態で減圧ポンプ42を駆動させると、減圧弁43により経路を開放して、鍋4内部の空気が経路及び減圧ポンプ42を通って炊飯器の外部に排出され、密閉した鍋4内部の圧力が低下する。また鍋4内部の圧力が大気圧よりも一定値下がった場合には、減圧ポンプ42の動作を停止し、減圧弁43により経路を閉塞して、鍋4内を減圧状態に保っている。さらに、鍋4内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す場合には、減圧ポンプ42の動作を停止し、減圧弁43により経路43を開放する。つまり減圧手段41は、鍋4内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す圧力戻し手段としての構成を兼用している。
【0022】
本体1の内部には、加熱制御手段22を含むユニット化された加熱基板組立44が配設される。加熱制御手段22は、炊飯器の各部を電気的に制御するために、マイクロコンピュータ(マイコン)や加熱手段の駆動素子などを含んで構成される。
【0023】
45は、炊飯器の表示操作ユニットとなる操作パネルである。操作パネル45は、調理に関わる様々な情報を表示する表示部46の他に、調理や予約調理を開始させたり、時間や炊飯コースなどを選択させたりするための操作部47を備えており、これらの下面には、制御用ICを含む様々な電子部品が搭載される制御基板48が配置される。
【0024】
その他、本体1の内部後方には、炊飯器の各部に給電するコードリール装置51が設けられる。コードリール装置51は、自動的に巻取り可能な電源プラグ付きのコード52を備えて構成される。
【0025】
次に、加熱制御手段22および制御基板48の制御系統について、
図3を参照しながら説明する。同図において、55は加熱制御手段22と制御基板48とを含む制御手段で、この制御手段55は、マイクロコンピュータを構成する制御用ICや、各種の情報やデータを記憶する読み出しおよび書き込みが可能なメモリなどの記憶手段57や、時刻や調理に関する時間など様々な時間を計測可能なタイマなどの計時手段58などを備え構成される。また制御手段55は、鍋温度センサ21や蓋温度センサ36からの各温度検知信号と、操作部47からの操作信号を受けて、炊飯時および保温時に鍋4を加熱する加熱コイル17やコードヒータ9,18と、蓋体2を加熱する蓋ヒータ30を各々制御すると共に、前述した調圧弁38を動かすソレノイド39や、減圧ポンプ42や、減圧弁43の動作を各々制御し、さらには表示部46の表示を制御するものである。特に本実施形態の制御手段55は、鍋温度センサ21の検知温度に基づいて主に加熱コイル17を制御して鍋4の底部を温度管理し、蓋温度センサ36の検知温度に基づいて主に蓋ヒータ30を制御して、内蓋22を温度管理する。これらの加熱コイル17や蓋ヒータ30と、コードヒータ9,18は、鍋4内部の被調理物Sを加熱する加熱手段56に相当する。
【0026】
制御手段55は、記憶媒体となる記憶手段57に記憶されたプログラムの制御シーケンス上の機能として、調理制御手段61および表示制御手段62を備えている。調理制御手段61は、操作部47からの調理開始の指示を受けて、設定された調理コースに基づいて加熱手段56やソレノイド39や減圧ポンプ42や減圧弁43を制御して調理工程を行なうものであり、例えば設定された調理コースが「炊飯」である場合は、鍋4に投入した米Rの吸水を促進させるひたし炊き工程と、被調理物Sの温度を短時間に沸騰まで上昇させる沸騰加熱工程と、被調理物Sの沸騰状態を継続させる沸騰継続工程と、ご飯を焦がさない程度の高温に維持するむらし工程の各工程を順に実行して、鍋4内部の被調理物Sに対して所望の圧力で加熱する調理制御を行なう。また表示制御手段62は、操作部47からの操作信号に基づき各種の制御信号を生成し、また表示部46の表示動作を制御するものである。
【0027】
記憶手段44は、例えばそれぞれの調理メニューや当該調理メニューの設定に応じた調理コースが記憶されており、記憶手段44に記憶された調理メニューや当該調理メニューの設定などが表示部46に選択可能に表示され、操作部47で選択してこれらの設定を行なうことで、当該調理コースの選択および設定を行なっている。また記憶手段44は、どのようなタイミングや出力で加熱コイル17やコードヒータ9,18や蓋ヒータ30やソレノイド39や減圧ポンプ42や減圧弁43を駆動させるかの、加熱コイル17、コードヒータ9,18、蓋ヒータ30、ソレノイド39、減圧ポンプ42および減圧弁43の駆動のパターンである加熱パターンを複数記憶しており、後述する調理制御手段51は、これらの加熱パターンにより加熱コイル17、コードヒータ9,18、蓋ヒータ30、ソレノイド39、減圧ポンプ42および減圧弁43を制御している。
【0028】
次に上記構成の炊飯器について、鍋4内を洗浄する洗浄機能における作用を説明する。先ず鍋4内に所定量の水を入れ、この鍋4を鍋収容部3にセットした後に、蓋体2を閉じる。それと前後して、コード52の電源プラグコンセントに挿入して炊飯器を通電すると、本体1や蓋体2は炊飯や保温が行われていない初期の切(待機)状態となる。
【0029】
そして操作部47で、鍋4内を洗浄する調理コースである、例えば「お手入れモード」コースの設定後に調理開始の指示を操作すると、調理制御手段61が、今回の調理コースの設定の加熱パターンに沿って洗浄工程の動作を行なう。
【0030】
洗浄工程が開始されると、調理制御手段61は、加熱コイル17および蓋ヒータ30を連続通電させるように制御する。また調理制御手段61は、ソレノイド39を制御して蒸気排出経路37を開放させるように調圧弁38を転動させ、鍋4内を本体1の機外と連通させた状態にする。そのため鍋4内の水温が沸騰温度である100℃まで上昇し、鍋4内の水が水蒸気に気化して収容空間5の上方へと移動する。そして当該水蒸気が、蓋ヒータ30により加熱された内蓋32や当該内蓋32により加熱された収容空間5の上方空間へと移動すると、これらの内蓋32や上方空間により、水蒸気の100℃を超えた温度に上昇し顕熱化して過熱蒸気になる。
【0031】
過熱蒸気は、飽和した水蒸気をさらに加熱して得られる水蒸気ガスのことであり、本実施形態では水蒸気の温度が大気圧下で100℃以上のものを過熱蒸気としている。過熱蒸気は、当該過熱蒸気が接触する対象である被加熱物の水分を乾燥させる熱媒体として利用可能であり、過熱蒸気中では極低酸素雰囲気となるため、被加熱物への酸化の少ない加熱が可能であり、初期凝縮による潜熱の伝達と水蒸気自体の熱容量により迅速な表面加熱が可能である、などの特徴を有している。また過熱蒸気は、加熱初期では被加熱物の表面に水蒸気の凝縮による水層が存在するため、被加熱物が湿った状態で潜熱の形で熱が伝達され、この作用で短時間での表面殺菌に利用可能である、という特徴も有している。過熱蒸気のこれらの特徴は、過熱蒸気の温度が高温である程そのエネルギーも高くなるため、より効果的に発揮される。このような過熱蒸気が、当該過熱蒸気になった場所である上方空間にある鍋4内面や内蓋32内面や蓋パッキン33に接触することで、過熱蒸気の温度が高温に保たれたまま鍋4内面や内蓋32内面や蓋パッキン33に接触して、当該過熱蒸気の水分蒸発作用により鍋4内面や内蓋32内面や、特に蓋パッキン33の表面に付着している油脂などの臭い成分や食中毒菌が除去・脱油される。
【0032】
また蒸気排出経路37が開放しているため、過熱蒸気は調圧部35から蒸気排出経路37内に移動し、蒸気口ユニット25を経由して炊飯器の機外に排出される。このとき、移動してきた過熱蒸気が、蒸気排出経路37内面や、蒸気排出経路37に配設された蒸気排出路内パッキン26,40に接触することで、当該過熱蒸気の水分蒸発作用により、蒸気排出経路37内面や、特に蒸気排出路内パッキン26,40の表面に付着している臭い成分が除去・脱油される。
【0033】
その後、調理制御手段61は、計時手段58から洗浄工程を開始してから、例えば1~10分など所定時間経過した計時信号を受信すると、加熱コイル17および蓋ヒータ30の通電を停止させるように制御する。また表示制御手段62は、洗浄工程が終了した旨を表示するように表示部46を制御し、併せて洗浄工程が終了した旨の報知を行なうように図示しないブザーを制御する。
【0034】
なお本実施形態では、水を用いる構成としたが、例えばレモンの果汁やクエン酸などを水に溶解させた水溶液を用いてもよく、また洗浄液を用いてもよい。また本実施形態では、蓋ヒータ30による加熱により気化した水蒸気をさらに加熱する構成としたが、コードヒータ9や18により鍋4の側面上部を加熱し、加熱された側面上部や当該側面上部により加熱された収容空間5の上方空間により水蒸気をさらに加熱して過熱蒸気にする構成としてもよい。そして本実施形態では、蒸気排出経路37を開放させて、気化した水蒸気を加熱手段56により加熱して過熱蒸気にする構成を採用しているが、例えば鍋4内面や内蓋32内面や蓋パッキン33のみの洗浄の場合では、調圧弁38により蒸気排出経路37を閉塞させ、密閉された収容空間5で鍋4を加熱して水を沸騰させ、例えば1.4atm~2.0atmの加圧状態にして110℃~120℃の水蒸気を発生させるように構成してもよい。
【0035】
以上のように、本実施形態の加熱調理器としての炊飯器では、被調理物Sを収容する有底筒状の容器としての鍋4と、被調理物Sを加熱する加熱手段56と、鍋4の開口部を密閉可能に覆う蓋としての蓋体2と、を備え、加熱手段56は、鍋4に収容された水を加熱して水蒸気に気化させる第1の加熱手段としての加熱コイル17と、水蒸気をさらに加熱する第2の加熱手段としての蓋ヒータ30やコードヒータ9,18と、を有し、蓋体2は、当該蓋体2が鍋4を覆っているときに鍋4の上端部と密着する弾性部材としての蓋パッキン33を有し、蓋パッキン33を洗浄する洗浄工程において、加熱手段56により水および水蒸気を加熱して、100℃以上の温度の水蒸気である過熱蒸気で鍋4の収容空間5を充満させる過熱蒸気空間を形成する構成としている。
【0036】
このように構成することにより、より高い温度の過熱蒸気の水分蒸発作用で、鍋4内面や、蓋体2の内面である内蓋32内面や、特に蓋パッキン33に付着した臭い成分や食中毒菌を除去して洗浄することができる。
【0037】
また本実施形態の炊飯器では、加熱コイル17は鍋4を加熱することにより水を加熱し、蓋ヒータ30は蓋体2の内蓋32を加熱することにより水蒸気を加熱する構成としており、過熱蒸気の温度が高温に保たれたまま過熱蒸気を鍋4内面や内蓋32内面や蓋パッキン33に接触させることができるため、より効果的に臭い成分や食中毒菌を除去して洗浄することができる。
一般的に、加熱調理器の鍋5と内蓋32とをシールする蓋パッキン33や、蓋体2と蒸気口ユニット25とをシールする蒸気排出路内パッキン26や、蓋体2と内蓋組立体31とをシールする蒸気排出路内パッキン40など、鍋4や蒸気排出経路37や蒸気口ユニット25の蒸気のリーク防止を行う弾性部材には、耐熱性、耐蒸気性、食品衛生性、比較的安価な費用という観点からシリコーンゴムが使用されている。弾性部材としてのゴムの気体透過性は、ゴムの原料の種類によるものだけではなく、気体、温度、架橋密度、配合剤などによって大きく変化する。例えば原料ゴムの気体透過性は、ブチルゴム(Isobutene-isoprene rubber(IIR))、多硫化ゴム、エピクロロヒドリンゴム(epichlorohydrin rubber)、高ニトリルゴム(アクリロニトリル-ブタジエンゴム:Acrylonitrile-Butadiene Rubber(NBR))、フッ素ゴムなどが小さく、シリコーンゴム、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber (SBR))、ブタジエンゴム(butadiene rubber (BR))、エチレンプロピレンゴム(Ethylene Propylene Rubber (EPEM))などは大きい。
また気体透過性は、高圧側の気体分子が弾性部材に入りこみ、次に当該気体分子が弾性部材中を拡散していき、そして低圧側で弾性部材から排出されて外界に拡散するというプロセスに基づいているが、気体透過性が大きい要因は、水分子は透過しない一方で気体分子が透過可能な微細な空隙が弾性部材に存在することに起因する。ここで、臭いの物質が気相中で蒸散し、微粒子状となった状態、あるいはガス状の気体となった状態が「臭い」であり、人は、この臭い物質が鼻孔付近から咽頭付近の空間である鼻腔に到達するとこの「臭い」を感じる。そして調理時に鍋4内で被調理物Sが沸騰して鍋4の内圧が高くなると、鍋4内が大気圧のときよりも被調理物Sから気化した臭い成分である気体が弾性部材の内部へ入り込みやすくなり、気体透過性が高いシリコーンゴムの場合は、より「臭い」が吸着しやすくなる。
そこで本実施形態では、耐蒸気性や食品衛生性がシリコーンゴムと同水準以上であり、気体透過性がシリコーンゴムより小さなフッ素ゴムで蓋パッキン33、蒸気排出路内パッキン26,40を形成する構成としており、気体透過性が小さいために蓋パッキン33内部や、蒸気排出路内パッキン26,40内部への臭い成分ガスの侵入を抑制することで、臭い成分ガスが蓋パッキン33や蒸気排出路内パッキン26,40の内部に残留することを抑制することができ、「臭い」の吸着を抑制することができる。またフッ素ゴムはシリコーンゴムよりも費用が高価である一方で、「臭い」が吸着した蓋パッキン33や蒸気排出路内パッキン26,40を毎回洗浄する手間を省略することができ、また、「臭い」が吸着して除去できなくなったこれらの部品を交換する期間を延長させることができるため、これらの部品を交換するするための出費を抑えることができる。特に、例えばカレーや煮豚などの煮込み料理の加熱調理をする場合や、炊き込みご飯やピラフなどの香りが強い料理を炊飯する場合など、「臭い」の強い調理メニューなど多様な調理を可能とした加熱調理器である本実施形態では、手間と費用を抑えることができる。
以上のように、本実施形態の加熱調理器としての炊飯器では、弾性部材としての蓋パッキン33がフッ素系ゴムで形成されている構成としており、フッ素系ゴムは気体透過性が小さいために蓋パッキン33内部への臭い成分ガスの侵入を抑制することで、臭い成分ガスが蓋パッキン33の内部に残留することを抑制することができ、「臭い」の吸着を抑制することができる。