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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072925
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】車両の出張診断提案方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240522BHJP
【FI】
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183809
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】田中 康裕
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】車両の故障の予兆を検知したときに、所要時間が所定時間以内であることを条件として、ユーザに出張診断を提案し、ディーラーへの持ち込みを不要とする。
【解決手段】車両側装置において車両データから故障の予兆を検知し(ステップ101)、サーバ側で過去の他車の故障予兆検知結果データベースを参照して(ステップ103)、異常信号の組み合わせパターンの一致度が高い1つあるいは複数の部品を故障部品候補として抽出する(ステップ105)。故障部品候補の全てが出張診断対応部品であるか判定(ステップ108)した上で、出張診断で要する所要時間を算出し(ステップ119)、所要時間が所定時間以内であれば、ユーザに出張診断を提案する(ステップ120,109)。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の部品の故障の予兆を検知し、
この予兆に基づいて1つあるいは複数の故障部品候補を特定し、
故障部品候補について出張診断で要する所要時間を算出し、
所要時間が所定時間以内であれば、ユーザに出張診断を提案する、
車両の出張診断提案方法。
【請求項2】
さらに、
故障部品候補の各々について出張診断での対応の可否を判定し、
出張診断での対応が可能であることを条件としてユーザに出張診断を提案する、
請求項1に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項3】
車両の表示部もしくはユーザの携帯端末を介して出張診断の提案を行う、
請求項1に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項4】
算出した所要時間を、ユーザに出張診断を提案するときに併せて提示する、
請求項1に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項5】
他の車両における過去の予兆と診断結果とをまとめた診断データを参照して故障部品候補の特定を行う、
請求項1に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項6】
上記診断データは、過去の予兆の内容とこれに対応して修理交換した後の結果が良好であった修理交換部品との対応を含み、
検知した予兆の内容と診断データにおける過去の予兆の内容との一致度が高い修理交換部品を、故障部品候補として抽出する、
請求項5に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項7】
検知した予兆の内容と診断データにおける過去の予兆の内容との一致度に基づき、一致度が比較的に高い複数の故障部品候補を抽出する、
請求項6に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項8】
予め設定した出張診断対応部品情報に基づいて、故障部品候補の各々について出張診断での対応の可否を判定する、
請求項2に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項9】
上記出張診断対応部品情報を、実際に行った出張診断のデータを用いて更新する、
請求項8に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項10】
複数の故障部品候補の全てが出張診断での対応が可能であることを条件としてユーザに出張診断を提案する、
請求項2に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項11】
複数の故障部品候補の各々について当該部品が修理交換の必要な部品であることの確率を求め、
出張診断での対応可能な故障部品候補の確率が所定の閾値以上であれば、出張診断での対応不可の故障部品候補を含んでいても出張診断を提案する、
請求項2に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項12】
複数の故障部品候補を優先度順に並べ、その上位所定範囲の故障部品候補が出張診断での対応が可能なものであれば、下位に出張診断での対応不可の故障部品候補を含んでいても出張診断を提案する、
請求項2に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項13】
車両の部品の故障の予兆検知を車両側で行い、
予兆情報としてサーバに送信し、
このサーバ側で、故障部品候補の特定、所要時間の算出および出張診断の提案を処理する、
請求項1に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項14】
算出した所要時間が所定時間を越える場合に、出張診断を受けるために必要な追加の条件を含む選択肢をユーザに提示する、
請求項1に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項15】
算出した所要時間が所定時間を越える場合に、所定時間以内で出張診断が完了する確率を算出し、ユーザに提示する、
請求項1に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項16】
算出した所要時間が所定時間を越える場合に、ディーラーへの持ち込みを提案する、
請求項1に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項17】
さらに、車両が修理工場まで走行可能であるかどうかを判定し、
走行可能でなければ、ディーラーへの搬送を提案する、
請求項16に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項18】
上記所定時間は、出張診断についてユーザが任意に設定する上限作業時間からなる、
請求項1に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項19】
上記予兆の内容は、複数の異常信号を含み、
自車両について過去に検知した異常信号の履歴を記憶しておき、
この異常信号の履歴を考慮して、検知した予兆の内容と過去の予兆の内容との一致度を求める、
請求項6に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項20】
上記予兆の内容は、複数の異常信号を含み、
これらの複数の異常信号には予め重要度が定められており、
各信号の重要度を考慮して、検知した予兆の内容と過去の予兆の内容との一致度を求める、
請求項6に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項21】
上記予兆の内容は、複数の異常信号を含み、
複数の部品の各々について異常信号の特徴量が異なる場合に当該異常信号を異常分類に対する寄与度が高い異常信号と定め、
この寄与度が高い異常信号を優先して、検知した予兆の内容と過去の予兆の内容との一致度を求める、
請求項6に記載の車両の出張診断提案方法。
【請求項22】
車両の部品の故障の予兆を検知する故障予知部と、
この予兆に基づいて1つあるいは複数の故障部品候補を特定する故障部品特定部と、
故障部品候補について出張診断で要する所要時間を算出する出張診断所要時間算出部と、
所要時間が所定時間以内であれば、ユーザに出張診断を提案する出張診断提案部と、
を備えてなる、車両の出張診断提案装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の故障診断の際にディーラーの修理工場に入庫せずに車両ユーザの自宅等で診断する出張診断をユーザに提案する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に何らかの不調があったり故障の予兆を感じた場合、ユーザ(車両の保有者)は、ディーラーつまり当該車両の販売会社に車両を持ち込んで故障診断を受ける必要がある。作業員による故障診断によって修理交換が必要な部品が特定される。簡単な消耗部品の交換など故障診断の際に部品の交換や修理が可能な場合もあるが、多くの場合は、診断で特定した部品の取り寄せやスケジュール調整など修理交換の準備を要するため、診断とは別の日程で改めて車両をディーラーに入庫することになる。つまり、ユーザはディーラーに2回行く必要がある。
【0003】
特許文献1には、メンテナンスのためにユーザがディーラーに車両を入庫させる回数を低減するように、複数の部品について使用時間および走行距離を閾値と比較し、メンテナンスが既に必要な車両部品とともにメンテナンス時期が近い車両部品をユーザに報知するようにしたメンテナンス時期報知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-308075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般のユーザにとって車両をディーラーに持ち込むことは、時間や手間等の点で面倒である。そのため、何らかの車両の不調を感じていても、ディーラーで診断を受けずに乗り続けてしまいやすい。
【0006】
特許文献1は、あくまでもユーザがディーラーに車両を入庫させることを前提としており、ユーザの自宅等までディーラーの作業員が出張して診断を行う出張診断という診断の形態を開示するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車両の出張診断提案方法は、
車両の部品の故障の予兆を検知し、
この予兆に基づいて1つあるいは複数の故障部品候補を特定し、
故障部品候補について出張診断で要する所要時間を算出し、
所要時間が所定時間以内であれば、ユーザに出張診断を提案する。
【0008】
ユーザは、例えば、車両の表示部やユーザが保有する携帯端末を介して、出張診断の提案を受領する。ユーザがこの提案に同意すれば、ディーラーの作業員がユーザの自宅等の車両の保管場所に出張し、故障診断を行うこととなる。修理交換が必要な車両部品は、作業員の故障診断によって最終的に確定される。
【0009】
出張診断はユーザにとって便利であるが、診断に長時間の作業が必要な場合は、出張作業を行う作業員ならびに自宅の車庫等で作業がなされているユーザの双方にとって負担となり、出張診断は必ずしも効率のよいものではない。
【0010】
本発明では、1つあるいは複数の故障部品候補を特定した上で、その出張診断に必要な所要時間を算出し、所要時間が所定時間以内であれば出張診断を提案する。所定時間を越える場合は、基本的に出張診断の提案は行わない。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、故障の予兆を検知したときに所要時間が所定時間内であることを条件としてユーザが出張診断の提案を受領するので、ユーザは安心して出張診断を受けることができ、診断のために車両をディーラーに入庫させる手間や時間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明に係る出張診断提案システムの第1実施例を示す構成説明図。
図2】車両側での故障予兆検知結果のデータを表形式で示す説明図。
図3】出張診断判定装置側の故障予兆検知結果データベースの説明図。
図4】出張診断対応部品情報データベースの説明図。
図5】出張診断所要時間データベースの説明図。
図6】第1実施例の処理の流れを示すフローチャート。
図7】故障予兆情報の一致度の説明図。
図8】一致度が高い部品のリストの例を示す説明図。
図9】出張診断提案システムの第2実施例を示す構成説明図。
図10】第2実施例の処理の流れを示すフローチャート。
図11】出張診断提案システムの第3実施例を示す構成説明図。
図12】第3実施例の処理の流れを示すフローチャート。
図13】出張診断提案システムの第4実施例を示す構成説明図。
図14】第4実施例の処理の流れを示すフローチャート。
図15】故障部品候補の特定を行う処理の変形例を示すフローチャート。
図16】ステップ202における故障予兆検知結果データベースの説明図。
図17】ステップ203における故障予兆検知結果履歴データベースの説明図。
図18】故障部品候補の特定を行う処理の他の変形例を示すフローチャート。
図19】ステップ206における信号重要度データベースの説明図。
図20】ステップ207による処理の結果を示す説明図。
図21】故障部品候補の特定を行う処理のさらに他の変形例を示すフローチャート。
図22】ステップ208における信号特徴量データベースの説明図。
図23】ステップ209による処理の結果を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明に係る出張診断提案システムの第1実施例を示す構成説明図である。出張診断提案システムは、個々の車両(例えば車両A)が有する車両側装置001と、ディーラー等に設けられたサーバーやクラウドコンピュータからなる出張診断判定装置002と、から構成される。
【0014】
車両側装置001は、車両が有するいわゆるコンピュータシステムの一部からなり、診断装置003と、メモリ004と、表示部005と、ECU(Electronic Control Unit)006と、通信部007と、故障予知部008と、を備えている。診断装置003は、車両の各部から得られる種々の信号(車両データともいう)を監視し、異常な信号を検出する。故障予知部008は、1つあるいは複数の異常信号に基づいて何らかの部品が故障に至る予兆であることを検知し、メモリ004に保存するとともに、通信部007を介して出張診断判定装置002へ送信する。車両は、いわゆるコネクテッドカーとして構成されており、通信部007を介して例えばインターネットに常時接続されている。この通信機能を利用して車両側装置001と出張診断判定装置002との間で種々の情報の送受信が行われる。表示部005は、例えば運転席の前方に設けられたディスプレイからなり、種々の情報が表示される。
【0015】
なお、故障予知部008が故障の予兆を検知したときに、出張診断判定装置002への送信と併せて、故障の予兆があったことを表示部005に表示するようにしてもよい。あるいは故障の予兆単独では表示せずに、後述する出張診断の提案と併せて表示するようにしてもよい。
【0016】
故障予知部008においては、故障の予兆を検知したときに、図2に示すような形で故障予兆検知結果050のデータが生成され、これが通信部007を介して送信される。図2に例示するように、このデータは、車両の識別番号と、予兆を検知した日時と、予兆の内容つまり異常信号の内容(図示例では、a,b,cの3つの異常信号を含む)と、を含んでいる。他の付加的な情報を含んでいてもよい。
【0017】
出張診断判定装置002は、通信部009と、故障部品特定部010と、故障予兆一致度診断部011と、故障予兆検知結果データベース012と、出張診断可否判定部013と、出張診断対応部品情報データベース014と、出張診断提案部015と、出張診断所要時間算出部025と、出張診断所要時間データベース024と、を含んで構成される。なお、これらの各部が必ずしも1つのコンピュータによって構成される必要はなく、複数台のサーバーやクラウドコンピュータによって構成することが可能である。
【0018】
通信部009は、車両側の通信部007との間で適当な通信網を介して通信を行うものであり、車両側で故障の予兆を検知したときは、図2に示す故障予兆検知結果050のデータを車両側から受領し、最終的に後述する出張診断の提案を行うときには、その旨の情報を車両側へ送信する。
【0019】
故障予兆検知結果データベース012には、他の車両(自車両の過去分を含んでいてもよい)における過去の予兆と診断結果とをまとめた多量の診断データ、例えば図3に示すような故障予兆検知結果データ051、が格納されている。この故障予兆検知結果データベース012のデータ051は、図3に例示するように、車両の識別番号と、予兆がどのような箇所の異常であるかという予兆検知内容と、予兆を検知した日時と、異常信号の内容と、実際に修理交換した部品名と、修理交換後の結果(つまり不具合が解消したかどうか)と、の情報を含んでいる。修理交換後の結果が良好であるということは、予兆に基づいて修理交換した部品が妥当であったことを意味している。故障予兆検知結果データベース012のデータ051には、他の付加的な情報を含んでいてもよい。例えば、予兆を検知した時点から実際に修理交換するまでの経過期間(時間ないし走行距離)、あるいは、放置したまま故障に至った場合は、故障するまでの経過期間(時間ないし走行距離)、等の情報を加えてもよい。
【0020】
故障予兆一致度診断部011は、車両側で検知した予兆の内容と、故障予兆検知結果データベース012における過去のデータ051に含まれる予兆の内容と、の一致度を求める。例えば、故障予知部008で得た予兆の内容が異常信号「a,b,c」の組み合わせであった場合、故障予兆検知結果データベース012の過去のデータ051の中で、異常信号「a,b,c」の組み合わせを含む組み合せパターンを一致度の高い組み合わせパターンと判断する。図3の例では、「a,b,c」および「a,b,c,f」の異常信号の組み合わせが一致度が高い一致パターンであると判断される。なお、「a,b,c」の組み合わせの方が「a,b,c,f」の組み合わせよりも一致度が高いものとなる。そして、「a,b,c」を含まない(一部が不足している)組み合わせパターンや、「a,b,c」以外に複数の異常信号を含む組み合わせパターンは、一致度が低い不一致パターンとする。なお、本発明においては、必要な一致度をどの程度に設定するかは任意である。
【0021】
故障部品特定部010は、故障予兆一致度診断部011による車両側で検知した予兆の内容と過去のデータ051における予兆の内容との一致度に基づき、予兆の内容に対して一致度の高い部品の特定を行う。ここで特定された部品が、予兆に対応した故障部品候補となる。この故障部品候補には、一致度の高い複数の部品が含まれ得る。なお、過去のデータ051において予兆に基づいて修理交換したものの良好な結果が得られなかった部品は、予兆内容の一致度が高くでも故障部品候補から除くことが望ましい。
【0022】
出張診断可否判定部013は、出張診断対応部品情報データベース014を参照して、出張診断の可否を判断するものである。出張診断対応部品情報データベース014には、図4に例示するように、車両に含まれる全ての部品(主要な一部の部品であってもよい)について、個々に、出張診断での対応が可能か否かの情報を付した多量の部品情報データ052が格納されている。例えば、修理工場にある大掛かりな装置や特殊な機器がないと診断が困難な部品等については、出張診断が否である。出張診断可否判定部013は、故障部品特定部010が特定した故障部品候補の各々について、出張診断対応部品情報データベース014を参照して出張診断での対応が可能かどうかを判定し、例えば、全ての故障部品候補が出張診断での対応が可能な場合に、出張診断可能と判定する。なお、出張診断対応部品情報データベース014は、実際に出張診断や部品の修理交換を行ったときに逐次更新することが望ましい。特に、仕様が新しい部品については、実際に出張診断や部品の修理交換を行ったときに、出張診断対応部品情報データベース014や後述の出張診断所要時間データベース024を更新して新たな情報を蓄えていくことが望ましい。
【0023】
他の例として、出張診断可否判定部013は、一部の故障部品候補が出張診断での対応が否であっても、出張診断可能と判断するようにしてもよい。例えば、複数の故障部品候補の各々について当該部品が修理交換の必要な部品であることの確率を求め、出張診断での対応可能な故障部品候補の確率が所定の閾値以上であれば、出張診断での対応不可の故障部品候補を含んでいても出張診断が可能とする。なお、上記の確率は、例えば、前述した予兆の内容の一致度や過去の故障予兆検知結果データ051に基づいて求められる。
【0024】
あるいは、複数の故障部品候補を優先度順に並べ、その上位所定範囲の故障部品候補が出張診断での対応が可能なものであれば、下位に出張診断での対応不可の故障部品候補を含んでいても出張診断が可能であるとしてもよい。例えば、優先度順に並べた中で上位3位までの故障部品候補が出張診断での対応が可能であれば、4位以下に対応不可の故障部品候補を含んでいても出張診断が可能であるとする。
【0025】
出張診断所要時間算出部025は、出張診断可否判定部013によって出張診断可能であると判断した場合に、出張診断所要時間データベース024を参照して、出張診断で要する所要時間を算出する。出張診断所要時間データベース024には、図5に例示するように、車両に含まれる全ての部品(出張診断可能な部品のみであってもよい)について、個々に、出張診断で要する所要時間の情報を付した多量の所要時間データ057が格納されている。出張診断所要時間算出部025は、故障部品候補として挙げられた複数の部品の所要時間を合算して出張診断で要する所要時間を求める。
【0026】
この所要時間が所定時間以内であれば、出張診断提案部015が車両のユーザに対し出張診断を提案する。具体的には、通信部009,007を介して車両側装置001へ出張診断の提案に関する情報が送られ、車両の表示部005やユーザが保有する携帯端末(いわゆるスマートフォン等)において、その表示(音声を含んでいてもよい)がなされる。例えば、故障の予兆があること、自宅等での出張診断を受けることができること、等の情報がユーザに伝えられる。
【0027】
図6は、第1実施例の出張診断提案システムの処理の流れを示すフローチャートである。なお、この図6のフローチャートは、車両側装置001が行う処理と出張診断判定装置002が行う処理とを区別せずに、全体的な処理の流れの順に各ステップを示している。
【0028】
ステップ101では、車両側装置001の診断装置003および故障予知部008によって、車両データに基づき故障予知(予兆の検知)を行う。ここで検知した故障予知情報(故障予兆検知結果050)は、ステップ102において、車両側装置001から出張診断判定装置002に送信される。
【0029】
ステップ103では、故障予兆検知結果データベース012に蓄積されたデータ051つまり他車両の故障予兆の情報を参照する。ステップ104では、車両側装置001から送られた故障予兆検知結果050と、故障予兆検知結果データベース012から得た他車両の故障予兆の情報の一致度を診断する。前述したように、一致度の診断には、複数の異常信号の組み合わせパターンを用いる。例えば、図7に示すように、検知した予兆の内容が異常信号「a,b,c」の組み合わせであった場合、「a,b,c」や「a,b,c,f」の異常信号の組み合わせは一致度が高い一致パターンであり、「g,f」や「s,t」のように信号が異なる場合あるいは「a,b,c,f,g,h」のように他の複数の異常信号を含む組み合わせパターンは、一致度が低い不一致パターンである。
【0030】
そして、ステップ105において、一致度が高い部品を絞り込み、故障部品候補とする。ここでは、複数の候補があってもよい。例えば、図8の例では、異常信号「a,b,c」の組み合わせに対し一致度が高い故障部品候補として、プラグおよびインジェクタの2つの部品が抽出されている。
【0031】
次にステップ106において、出張診断対応部品情報データベース014に格納されたデータ052を参照し、ステップ107において、故障部品候補である複数の部品(ステップ105で一致度が高い部品)について出張診断対応部品情報データベース014のデータ052と照合する。例えば図4に例示したデータ052では、プラグおよびインジェクタは出張診断対応部品となっている。ステップ108では、一致度が高い故障部品候補が全て出張診断対応部品であるかどうかの判定を行う。全ての故障部品候補が出張診断対応部品である場合は、ステップ118に進む。故障部品候補の1つでも出張診断対応部品ではない場合は、ステップ110に進み、出張診断は提案しない。
【0032】
なお、出張診断可否判定部013について前述したように、ステップ108において、一部の故障部品候補が出張診断での対応が否であっても、例えば優先度等に応じて、出張診断可能と判断し、ステップ118に進むようにしてもよい。
【0033】
ステップ118では、一致度が高い故障部品候補について出張診断所要時間データベース024に格納されたデータ057を参照し、ステップ119において、複数の故障部品候補全体での出張診断所要時間(合計時間)を算出する。例えば、図5に例示したデータ057では、プラグについては「15分」、インジェクタについては1個当たり「30分」であることが示されている。なお、一般に、作業に伴って発生する工賃が単位時間(例えば15分)毎に1単位として計上されることから、出張診断所要時間データベース024のデータ057も基本的に15分の倍数となるように定められている。
【0034】
そして、ステップ120において、合計の出張診断所要時間が出張診断に関して予め定められている所定時間以内であるか否かを判定する。所定時間以内の場合はステップ109に進み、車両の表示部005やユーザが保有する携帯端末等を介して出張診断を提案する。出張診断の提案に際しては、算出した所要時間を併せて提示することが望ましい。フローチャートには含まれていないが、最終的に、出張診断の提案を受領したユーザが出張診断を要請するか否かを決定することとなる。所定時間は、例えば、1時間あるいは2時間、のように適当に設定される。
【0035】
一方、所定時間を超過している場合は、ステップ110に進み、出張診断を提案しない。なお、出張診断を提案しない場合、出張診断に不適当である旨の表示等を行ってもよく、あるいは、何も表示しないようにしてもよい。
【0036】
次に、図9図10を参照して、本発明の第2実施例を説明する。なお、以下では、第1実施例と異なる部分について主に説明する。第2実施例は、出張診断の所要時間に関してユーザが希望所要時間を入力できるとともに、ユーザの希望所要時間内で診断が困難な場合に追加料金等のオプションを提示してユーザに問い合わせる点で、第1実施例と異なっている。
【0037】
図9は、この発明に係る出張診断提案システムの第2実施例を示す構成説明図である。出張診断提案システムは、個々の車両が有する車両側装置001と、ディーラー等に設けられたサーバーやクラウドコンピュータからなる出張診断判定装置002と、ユーザが保有する携帯端末040(例えばスマートフォン等)と、から構成される。
【0038】
車両側装置001は、第1実施例と同様であり、診断装置003と、メモリ004と、表示部005と、ECU(Electronic Control Unit)006と、通信部007と、故障予知部008と、を備えている。
【0039】
出張診断判定装置002は、第1実施例と特に変わりがなく、通信部009と、故障部品特定部010と、故障予兆一致度診断部011と、故障予兆検知結果データベース012と、出張診断可否判定部013と、出張診断対応部品情報データベース014と、出張診断提案部015と、出張診断所要時間算出部025と、出張診断所要時間データベース024と、を含んで構成される。出張診断提案部015では、ユーザの希望所要時間を考慮して、出張診断の提案の可否を決定する。
【0040】
携帯端末040は、ユーザとの間のインタフェースとなる表示・入力部041と、サーバつまり出張診断判定装置002の通信部009との間でインターネットや適当な通信網を介して情報の授受が可能な通信部042と、を含んで構成される。出張診断の提案を含む出張診断判定装置002から送られた情報は、ユーザが保有するスマートフォン等からなる携帯端末040の表示・入力部041に表示される。一方、ユーザは、表示・入力部041を介して、出張診断についてユーザの希望所要時間を入力することができ、その時間内で出張診断が完了できる場合に、出張診断判定装置002から表示・入力部041を介してユーザに出張診断が提案される。
【0041】
図10は、第2実施例の出張診断提案システムの処理の流れを示すフローチャートである。基本的な処理の流れは第1実施例と同様であり、ステップ101では、車両側装置001の診断装置003および故障予知部008によって、車両データに基づき故障予知(予兆の検知)を行う。ここで検知した故障予知情報(故障予兆検知結果050)は、ステップ102において、車両側装置001から出張診断判定装置002に送信される。
【0042】
ステップ103では、故障予兆検知結果データベース012に蓄積されたデータ051つまり他車両の故障予兆の情報を参照する。ステップ104では、車両側装置001から送られた故障予兆検知結果050と、故障予兆検知結果データベース012から得た他車両の故障予兆の情報の一致度を診断する。前述したように、一致度の診断には、複数の異常信号の組み合わせパターンを用いる。
【0043】
そして、ステップ105において、一致度が高い部品を絞り込み、故障部品候補とする。ここでは、複数の候補があってもよい。
【0044】
次にステップ106において、出張診断対応部品情報データベース014に格納されたデータ052を参照し、ステップ107において、故障部品候補である複数の部品(ステップ105で一致度が高い部品)について出張診断対応部品情報データベース014のデータ052と照合する。ステップ108では、一致度が高い故障部品候補が全て出張診断対応部品であるかどうかの判定を行う。全ての故障部品候補が出張診断対応部品である場合は、ステップ118に進む。故障部品候補の1つでも出張診断対応部品ではない場合は、ステップ110に進み、出張診断は提案しない。
【0045】
ステップ118では、一致度が高い故障部品候補について出張診断所要時間データベース024に格納されたデータ057を参照し、ステップ119において、複数の故障部品候補全体の出張診断所要時間(合計時間)を算出する。
【0046】
一方、ステップ121において、ユーザが出張診断の希望所要時間を入力する。一つの例では、出張診断判定装置002が携帯端末040を介して希望所要時間についての問い合わせをユーザに対し行い、この問い合わせにユーザが応答する形で希望所要時間が入力される。なお、基本的に、診断の所要時間はユーザが負担する料金に相関するので、この希望所要時間は、出張診断に関してユーザが許容し得る費用とも言える。
【0047】
そして、ステップ122において、合計の出張診断所要時間がユーザの希望所要時間以内であるか否かを判定する。希望所要時間以内の場合はステップ109に進み、ユーザが保有する携帯端末040を介して出張診断を提案する。出張診断の提案に際しては、算出した所要時間を併せて提示することが望ましい。
【0048】
これに対し、希望所要時間を超過する場合は、ステップ129に進み、ユーザに対し携帯端末040を介して追加オプションを提示する。追加オプションとしては、例えば、希望所要時間を越える結果生じる超過分の料金の提示や、逆に長時間を要することによる料金割引の提示、あるいは、希望所要時間内に診断を完了させるために作業員を増やす等による追加料金の提示、等が含まれ得る。ステップ130では、このように提示された追加オプションをユーザが受け入れたかどうか判定する。ユーザは、携帯端末040の表示・入力部041を介して追加オプションの可否を入力することができる。そして、ユーザが追加オプションを許可した場合は、ステップ109に進んで出張診断を提案し、ユーザが追加オプションを許可しない場合は、ステップ110に進んで出張診断の提案を行わない。
【0049】
次に、図11図12を参照して、本発明の第3実施例を説明する。第3実施例は、算出した所要時間が所定時間を越える場合に、所定時間以内で出張診断が完了する確率を算出し、ユーザに提示するとともに、その上でユーザが出張診断を希望するか否かを問い合わせる点で、第2実施例と異なっている。
【0050】
図11は、この発明に係る出張診断提案システムの第3実施例を示す構成説明図である。出張診断提案システムは、個々の車両が有する車両側装置001と、ディーラー等に設けられたサーバーやクラウドコンピュータからなる出張診断判定装置002と、ユーザが保有する携帯端末040と、から構成される。
【0051】
車両側装置001は、第1実施例と同様であり、診断装置003と、メモリ004と、表示部005と、ECU(Electronic Control Unit)006と、通信部007と、故障予知部008と、を備えている。
【0052】
携帯端末040は、第2実施例と同様に、ユーザとの間のインタフェースとなる表示・入力部041と、サーバつまり出張診断判定装置002の通信部009との間で情報の授受が可能な通信部042と、を含んで構成される。出張診断の提案や後述の確率を含む出張診断判定装置002から送られた情報は、ユーザが保有するスマートフォン等からなる携帯端末040の表示・入力部041に表示される。ユーザは、表示・入力部041を介して、出張診断についてユーザの希望所要時間を入力することができる。さらに、希望所要時間を超過する場合に、ユーザは、表示・入力部041を介して、後述する確率を考慮した上で出張診断を希望するかどうかを入力することができる。
【0053】
出張診断判定装置002は、基本的には第2実施例と同様であり、通信部009と、故障部品特定部010と、故障予兆一致度診断部011と、故障予兆検知結果データベース012と、出張診断可否判定部013と、出張診断対応部品情報データベース014と、出張診断提案部015と、出張診断所要時間算出部025と、出張診断所要時間データベース024と、を含んで構成される。そして、第3実施例では、さらに、ユーザの希望所要時間内で診断が完了する確率を算出する診断確率算出部026を備えている。出張診断提案部015では、ユーザの希望所要時間を超過する場合に、この診断確率に対し応答するユーザの出張診断の希望を考慮して、出張診断の提案の可否を決定する。
【0054】
図12は、第3実施例の出張診断提案システムの処理の流れを示すフローチャートである。基本的な処理の流れは第2実施例と同様であり、ステップ101では、車両側装置001の診断装置003および故障予知部008によって、車両データに基づき故障予知(予兆の検知)を行う。ここで検知した故障予知情報(故障予兆検知結果050)は、ステップ102において、車両側装置001から出張診断判定装置002に送信される。
【0055】
ステップ103では、故障予兆検知結果データベース012に蓄積されたデータ051つまり他車両の故障予兆の情報を参照する。ステップ104では、車両側装置001から送られた故障予兆検知結果050と、故障予兆検知結果データベース012から得た他車両の故障予兆の情報と、の一致度を診断する。前述したように、一致度の診断には、複数の異常信号の組み合わせパターンを用いる。
【0056】
そして、ステップ105において、一致度が高い部品を絞り込み、故障部品候補とする。ここでは、複数の候補があってもよい。
【0057】
次にステップ106において、出張診断対応部品情報データベース014に格納されたデータ052を参照し、ステップ107において、故障部品候補である複数の部品(ステップ105で一致度が高い部品)について出張診断対応部品情報データベース014のデータ052と照合する。ステップ108では、一致度が高い故障部品候補が全て出張診断対応部品であるかどうかの判定を行う。全ての故障部品候補が出張診断対応部品である場合は、ステップ118に進む。故障部品候補の1つでも出張診断対応部品ではない場合は、ステップ110に進み、出張診断は提案しない。
【0058】
ステップ118では、一致度が高い故障部品候補について出張診断所要時間データベース024に格納されたデータ057を参照し、ステップ119において、複数の故障部品候補の出張診断所要時間(合計時間)を算出する。
【0059】
一方、ステップ121において、ユーザが出張診断の希望所要時間を入力する。一つの例では、出張診断判定装置002が携帯端末040を介して希望所要時間についての問い合わせをユーザに対し行い、この問い合わせにユーザが応答する形で希望所要時間が入力される。
【0060】
そして、ステップ122において、合計の出張診断所要時間がユーザの希望所要時間以内であるか否かを判定する。希望所要時間以内の場合はステップ109に進み、ユーザが保有する携帯端末040を介して出張診断を提案する。出張診断の提案に際しては、算出した所要時間を併せて提示することが望ましい。
【0061】
これに対し、希望所要時間を超過する場合は、ステップ123に進み、ユーザの希望所要時間以内に出張診断が完了する確率を算出し、この確率をユーザの携帯端末040に通知する。例えば、複数の故障部品候補の所要時間の総和としてステップ118で算出される出張診断所要時間が希望所要時間を超過していても、故障の予兆の内容に対してある一つの故障部品候補の一致度が十分に高く、他の故障部品候補の一致度が比較的低い場合に、実際の診断作業においては、一致度の高い部品の診断のみで修理交換が必要な部品を特定し得ることがある。また、算出した出張診断所要時間が希望所要時間を僅かに越えるような場合は、実際の診断作業が希望所要時間以内に終了することもあり得る。このような種々の条件を考慮して、希望所要時間以内に出張診断が完了する確率を算出する。このような確率の提示を受けることで、ユーザは、出張診断を行うか否かの判断材料を得ることができる。
【0062】
ステップ124では、このように提示された確率に対して、ユーザが出張診断を希望したか否か判定する。ユーザは、携帯端末040の表示・入力部041を介して出張診断の希望を入力することができる。そして、ユーザが出張診断を希望した場合は、ステップ109に進んで出張診断を提案し、ユーザが積極的に出張診断を希望しない場合は、ステップ110に進んで出張診断の提案を行わない。
【0063】
次に、図13図14を参照して、本発明の第4実施例を説明する。第4実施例は、故障予知を車両側装置001ではなくディーラー等が管理する出張診断判定装置002において行う点、および、車両が修理工場まで走行可能な状態であるかどうかを診断して適切な提案を行うようにした点で、第1実施例と異なっている。
【0064】
図13は、この発明に係る出張診断提案システムの第4実施例を示す構成説明図である。出張診断提案システムは、個々の車両が有する車両側装置001と、ディーラー等に設けられたサーバーやクラウドコンピュータからなる出張診断判定装置002と、から構成される。なお、図示はしていないが、第2,第3実施例と同様に、ユーザが保有する携帯端末040を含んでいてもよい。
【0065】
車両側装置001は、第1実施例と同様に、診断装置003と、メモリ004と、表示部005と、ECU(Electronic Control Unit)006と、通信部007と、を備えている。但し、車両側装置001は、故障予知部008は含んでいない。
【0066】
出張診断判定装置002は、基本的には第1実施例と同様に、通信部009と、故障部品特定部010と、故障予兆一致度診断部011と、故障予兆検知結果データベース012と、出張診断可否判定部013と、出張診断対応部品情報データベース014と、出張診断提案部015と、出張診断所要時間算出部025と、出張診断所要時間データベース024と、を含んで構成される。そして、第4実施例では、故障予知部008が出張診断判定装置002の一部として構成されている。故障予知部008は、車両側装置001の診断装置003から通信部007,009を介して送られてくる1つあるいは複数の異常信号に基づいて何らかの部品が故障に至る予兆であることを検知する。そして、この故障予知部008において、故障の予兆を検知したときに、図2に示したような故障予兆検知結果050のデータが生成される。これは、基本的には第1実施例と同様のデータであり、図2に例示するように、例えば、車両の識別番号と、予兆を検知した日時と、異常信号の内容(図示例では、a,b,cの3つの異常信号を含む)と、を含んでいる。他の付加的な情報を含んでいてもよい。
【0067】
第4実施例の出張診断判定装置002は、さらに、車両側装置001から送られてくる車両データ(異常信号を含む)に基づいて車両の状態を診断する車両状態診断部027を含んでいる。この実施例では、車両状態診断部027は、主に、車両が走行可能な状態であるか否かを診断する。
【0068】
図14は、第4実施例の出張診断提案システムの処理の流れを示すフローチャートである。基本的な処理の流れは第1実施例と同様であるが、ステップ101では、車両側装置001から送られてくる車両データに基づき出張診断判定装置002側で故障予知(予兆の検知)を行う。
【0069】
ステップ103では、故障予兆検知結果データベース012に蓄積されたデータ051つまり他車両の故障予兆の情報を参照する。ステップ104では、故障予知部008が出力した故障予兆検知結果050と、故障予兆検知結果データベース012から得た他車両の故障予兆の情報と、の一致度を診断する。前述したように、一致度の診断には、複数の異常信号の組み合わせパターンを用いる。
【0070】
そして、ステップ105において、一致度が高い部品を絞り込み、故障部品候補とする。ここでは、複数の候補があってもよい。
【0071】
次にステップ106において、出張診断対応部品情報データベース014に格納されたデータ052を参照し、ステップ107において、故障部品候補である複数の部品(ステップ105で一致度が高い部品)について出張診断対応部品情報データベース014のデータ052と照合する。ステップ108では、一致度が高い故障部品候補が全て出張診断対応部品であるかどうかの判定を行う。全ての故障部品候補が出張診断対応部品である場合は、ステップ118に進む。故障部品候補の1つでも出張診断対応部品ではない場合は、ステップ110に進み、出張診断は提案しない。
【0072】
ステップ118では、一致度が高い故障部品候補について出張診断所要時間データベース024に格納されたデータ057を参照し、ステップ119において、複数の故障部品候補全体の出張診断所要時間(合計時間)を算出する。
【0073】
そして、ステップ120において、合計の出張診断所要時間が出張診断に関して予め定められている所定時間以内であるか否かを判定する。所定時間以内の場合はステップ109に進み、車両の表示部005やユーザが保有する携帯端末040等を介して出張診断を提案する。出張診断の提案に際しては、算出した所要時間を併せて提示することが望ましい。
【0074】
一方、所定時間を超過している場合は、ステップ125に進み、車両が走行可能な状態であるか否を診断する。走行可能な状態であれば、ステップ126に進み、出張診断は提案しない。さらにステップ127に進み、車両の表示部005やユーザが保有する携帯端末040等を介して、ディーラーにユーザが車両を持ち込んで診断を行う(ディーラー訪問診断)ことを提案する。
【0075】
ステップ125において車両が走行可能な状態ではないと判定した場合は、ステップ128へ進み、レッカー車でディーラーまで車両を搬送して診断・修理を受けることを、車両の表示部005やユーザが保有する携帯端末040等を介して提案する。この場合、ユーザが提案を受け入れれば、ディーラーがレッカー車の手配等を行うこととなる。
【0076】
なお、ステップ125における走行可否の判断には、車両の状態のほかに、ユーザの都合や意向をユーザに問い合わせて、これを考慮するようにしてもよい。
【0077】
この第4実施例によれば、車両の状況等を考慮した上で、ユーザに対し、出張診断、ディーラー訪問診断、およびレッカー車での搬送、といった適切な対応が提案されることになる。
【0078】
次に、図15は、故障部品候補の特定を行う処理の変形例を示すフローチャートである。これは、第1実施例(図6)のステップ103~105の処理に対応する。ステップ201では、車両側装置001もしくは出張診断判定装置002に含まれる故障予知部008において車両データに基づき故障予知を行う。ここでは、図2に例示したような故障予兆検知結果050のデータが生成される。ステップ203では、図17に例示する故障予兆検知結果履歴データベース061に、ステップ201で検知された今回の故障予兆検知結果050のデータを加える。つまり、今回の故障予兆検知結果050を記憶させる。これにより作成される故障予兆検知結果履歴データベース061は、自車両の故障予兆に関するデータベースである。
【0079】
ステップ202では、故障予兆検知結果データベース062から他車両の故障予兆に関する情報を参照する。この実施例の故障予兆検知結果データベース062は、基本的には第1実施例の故障予兆検知結果データベース012(図3)に相当するものであるが、図16に例示するように、各車両について過去の何回かの異常信号の履歴も含まれている。
【0080】
次のステップ204では、故障予兆検知結果データベース062の故障予兆情報と、自車両に関する故障予兆検知結果履歴データベース061の故障予兆履歴と、の一致度を診断する。この一致度診断では、過去の履歴を含めた異常信号の組み合わせパターンを用いる。例えば、自車両の故障予兆検知結果履歴データベース061における異常信号の組み合わせパターンが、1回目が「a,b,c」、2回目が「a,b」、3回目が「a,b,c」(図17参照)であった場合、他車の故障予兆検知結果データベース062における異常信号の履歴を含む組み合せパターンの中で、「a,b,c」の組み合わせパターンと「a,b」の組み合わせパターンを、一致パターンとして判断する。一方、「a,b,c,f」のようにa、b、c以外の信号が含まれている組み合せパターンや、a、bが含めれていない組み合わせパターンは不一致パターンとする。図16の例では、太実線で囲んだ部分が一致パターンとなる。
【0081】
そして、ステップ205において、一致度が高い部品を絞り込み、故障部品候補とする。ここでは、複数の候補があってもよい。
【0082】
次に図18は、故障部品候補の特定を行う処理の他の変形例を示すフローチャートである。これは、第1実施例(図6)のステップ103~105の処理に対応する。ステップ201では、車両側装置001もしくは出張診断判定装置002に含まれる故障予知部008において車両データに基づき故障予知を行う。ここでは、図2に例示したような故障予兆検知結果050のデータが生成される。ステップ202では、故障予兆検知結果データベース012(図3)から他車両の故障予兆に関する情報を参照する。ステップ204では、自車両の故障予兆検知結果050と、故障予兆検知結果データベース012から得た他車両の故障予兆の情報と、の一致度を診断する。前述したように、一致度の診断には、複数の異常信号の組み合わせパターンを用いる。
【0083】
ステップ206では、異常信号の重要度情報をまとめた信号重要度データベース(信号重要度リストともいう)063の情報を参照し、次のステップ207において、異常信号の重要度情報を考慮して優先順位の順位付けをし、一致度が高い部品(故障部品候補)の絞り込みを行う。図19は、信号重要度データベース063の一例を示す。また、図20は、順位付けがなされた結果を表064として示した説明図である。
【0084】
図19の例では、信号重要度データベース063に、例えば、予兆検知内容がプラグの場合、異常信号の組み合わせパターンとして「a,b,c」と「a,b」とがあり、異常信号の重要度は「a,b>c」と記録されている。つまり、信号cの重要度は低い。一方、予兆検知内容がインジェクタの場合、異常信号の組み合わせパターンとして「a,b,c,f」と「a,b,f」とがあり、異常信号の重要度は「a,f>b>c」と記録されている。
【0085】
従って、この例では、検知された故障予兆の異常信号の組み合わせが「a,b,c」である場合、インジェクタに関して重要度が高い信号である信号fが含まれていないことから、故障部品候補の絞り込みに際して、プラグに比較してインジェクタとの一致度は低い、ものとする(図20参照)。
【0086】
次に図21は、故障部品候補の特定を行う処理のさらに他の変形例を示すフローチャートである。これは、第1実施例(図6)のステップ103~105の処理に対応する。ステップ201では、車両側装置001もしくは出張診断判定装置002に含まれる故障予知部008において車両データに基づき故障予知を行う。ここでは、図2に例示したような故障予兆検知結果050のデータが生成される。ステップ202では、故障予兆検知結果データベース012(図3)から他車両の故障予兆に関する情報を参照する。ステップ204では、自車両の故障予兆検知結果050と、故障予兆検知結果データベース012から得た他車両の故障予兆の情報と、の一致度を診断する。前述したように、一致度の診断には、複数の異常信号の組み合わせパターンを用いる。
【0087】
ステップ208では、異常信号の特徴量に関する情報をまとめた信号特徴量データベース065の情報を参照し、次のステップ209において、ステップ204において一致度が比較的高かった部品に対して優先順位付けを行う。図22は、信号特徴量データベース065の一例を示す。また、図23は、順位付けがなされた結果を表066として示した説明図である。
【0088】
図22の例では、信号特徴量データベース065に、例えば、予兆検知内容がプラグの場合、異常信号として、a、b、cがあり、信号aの特徴量は10分間のデータの尖度、信号bの特徴量は10分間のデータの分散値、信号cの特徴量は1分間のデータの差分値、である旨が記録されている。
【0089】
一方、予兆検知内容がインジェクタの場合、異常信号として、a、b、c、fがあり、信号aの特徴量は10分間のデータの尖度、信号bの特徴量は10分間のデータの分散値、信号cの特徴量は1分間のデータの平均値、信号fの特徴量は10分間のデータの分散値、である旨が記録されている。
【0090】
従って、例えば、車両側装置001で検知された故障予兆の異常信号cの特徴量が、プラグに関しては1分間のデータの差分値、インジェクターに関しては1分間のデータの平均値、であって互いに異なるため、異常信号cに着目することで、より高精度に一致度を判定することができる。つまり、異常を検出した信号の中で異常分類への寄与度が高い信号の種類を用いて一致度を診断することで、故障部品候補の特定の精度が高くなる。ひいては、実際に出張診断を実施した際に、予定の時間内で診断が完了する確率が高くなる。
【0091】
なお、前述した信号重要度データベース063や信号特徴量データベース065は、過去の蓄積したデータを利用することで比較的容易に構築することができる。また、部品の故障メカニズムが明らかになっていない場合においても、過去のデータから信号の重要度等を知ることができる。
【符号の説明】
【0092】
001…車両側装置
002…出張診断判定装置
003…診断装置
005…表示部
007…通信部
008…故障予知部
009…通信部
010…故障部品特定部
011…故障予兆一致度診断部
012…故障予兆検知結果データベース
013…出張診断可否判定部
014…出張診断対応部品情報データベース
015…出張診断提案部
024…出張診断所要時間データベース
025…出張診断所要時間算出部
040…携帯端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図19
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