IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グローブライド株式会社の特許一覧

特開2024-72931糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール
<>
  • 特開-糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール 図1
  • 特開-糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール 図2
  • 特開-糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール 図3
  • 特開-糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール 図4
  • 特開-糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール 図5
  • 特開-糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール 図6
  • 特開-糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール 図7
  • 特開-糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール 図8
  • 特開-糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール 図9
  • 特開-糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール 図10
  • 特開-糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール 図11
  • 特開-糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール 図12
  • 特開-糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072931
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/015 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
A01K89/015 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183823
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
(72)【発明者】
【氏名】野々垣 元博
(72)【発明者】
【氏名】石原 和政
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108EA02
2B108EA16
2B108GA31
2B108GA35
2B108GA38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】巻き取った釣糸の長さが入力不要となり、かつ下巻き/高切れに対応可能な糸長設定方法を実現する糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リールを提供することにある。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る糸長計測装置は、リール本体4と、釣糸2が巻回可能なスプール3と備える魚釣用リールの該スプールから引き出された該釣糸の糸長を計測可能な糸長計測装置であって、前記スプールの前記リール本体に対する相対回転数を検出可能な回転検出部と、該回転検出部により検出された回転数から前記引き出された釣糸の糸長を算出する糸長算出部と、該糸長算出部による前記引き出された釣糸の糸長の算出のため釣糸情報を設定する釣糸情報設定部と、を備え、該釣糸情報設定部は、巻回する釣糸の種類と、該巻回する釣糸の巻回後のスプールの糸巻き径(Dmax)とを入力可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体と、釣糸が巻回可能なスプールと備える魚釣用リールの該スプールから引き出された該釣糸の糸長を計測可能な糸長計測装置であって、
前記スプールの前記リール本体に対する相対回転数を検出可能な回転検出部と、
該回転検出部により検出された回転数から前記引き出された釣糸の糸長を算出する糸長算出部と、
該糸長算出部による前記引き出された釣糸の糸長の算出のため釣糸情報を設定する釣糸情報設定部と、を備え、
該釣糸情報設定部は、巻回する釣糸の種類と、該巻回する釣糸の巻回後のスプールの糸巻き径(Dmax)とを入力可能に構成されることを特徴とする糸長計測装置。
【請求項2】
前記巻回する釣糸の種類は、該釣糸の号数、該釣糸のポンド数、又は該釣糸の太さ(d)の少なくともいずれかである、請求項1に記載の糸長計測装置。
【請求項3】
前記釣糸情報設定部は、前記釣糸の種類を設定すると、前記巻回する釣糸を巻回した後のスプールの糸巻き径(Dmax)と、前記巻回する釣糸の巻回後の巻回釣糸の糸長(Lmax)との関係を表示するように構成される、請求項1に記載の糸長計測装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の糸長計測装置を備える魚釣用リール。
【請求項5】
前記スプールに、前記巻回する釣糸を巻回した後のスプールの糸巻き径(Dmax)判別のための目印が設けられた、請求項4に記載の魚釣用リール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸長計測装置、特に、引き出された釣糸の糸長の算出のため糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スプールの回転数を検出することで、放出される釣糸の長さを検出する技術が知られている。
【0003】
特許文献1では、釣り用リールのスプールから繰り出される、あるいは前記スプールに巻き取られる釣り糸の長さを計測するための釣り用リールの糸長計測装置であって、前記スプールの回転位置データを検出する回転位置データ検出手段と、前記スプールに釣り糸を巻き付ける際に略最終巻き付け部分での釣り糸の所定長さと前記回転位置データ検出手段の検出結果との第1関係を学習する関係学習手段と、前記第1関係に基づき、前記スプールの単位回転当たりの糸長と前記回転位置データとの第2関係を求める関係算出手段と、前記回転位置データ検出手段により検出された回転位置データと前記関係算出手段で算出された前記第2関係とに基づき、前記釣り糸の長さを求める糸長算出手段と、を備えた釣り用リールの糸長計測装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-225632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スプールに巻き取られた釣糸の糸巻き径は、釣糸の放出と共に減少し、釣糸の巻き取りと共に増加する。スプールに巻き取られた釣糸の糸巻き径変化ΔDが一定とみなせる場合、スプールの回転数Nと糸の放出距離Lの関係は、L=(AX2+BN)で示される2次関数の関係式になることが判っている(但し、A、Bは所定の定数)。
【0006】
定数A、Bは、スプールの形状等、魚釣用リールの仕様が決定された段階で決まるものと、釣糸の太さ、巻き取った釣糸の長さ、下巻きの有無等釣糸を巻回する段階で決まるものとがある。定数A、Bを算定する方法として、釣糸を巻き取る際の釣糸の放出距離Lとスプールの回転数Nの関係を入力、実測し、そこからA、Bを算出する方法や魚釣用リール内に保存されたプリセット値から使用者が選べるようにする方法が考えられるが、実測するには手間が掛かり、また、巻き取った釣糸の長さが分からないと入力できず、高切れの際の対応や下巻きの対応が手間となってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、巻き取った釣糸の長さが入力不要となり、かつ下巻き/高切れに対応可能な糸長設定方法を実現する糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リールを提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る糸長計測装置は、リール本体と、釣糸が巻回可能なスプールと備える魚釣用リールの該スプールから引き出された該釣糸の糸長を計測可能な糸長計測装置であって、前記スプールの前記リール本体に対する相対回転数を検出可能な回転検出部と、該回転検出部により検出された回転数から前記引き出された釣糸の糸長を算出する糸長算出部と、該糸長算出部による前記引き出された釣糸の糸長の算出のため釣糸情報を設定する釣糸情報設定部と、を備え、該釣糸情報設定部は、巻回する釣糸の種類と、該巻回する釣糸の巻回後のスプールの糸巻き径(Dmax)とを入力可能に構成される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る糸長計測装置において、前記巻回する釣糸の種類は、該釣糸の号数、該釣糸のポンド数、又は該釣糸の太さ(d)の少なくともいずれかである。
【0010】
本発明の一実施形態に係る糸長計測装置において、前記釣糸情報設定部は、前記釣糸の種類を設定すると、前記巻回する釣糸を巻回した後のスプールの糸巻き径(Dmax)と、前記巻回する釣糸の巻回後の巻回釣糸の糸長(Lmax)との関係を表示するように構成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、上記いずれかの糸長計測装置を備えるように構成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、上記魚釣用リールにおいて、前記スプールに、前記巻回する釣糸を巻回した後のスプールの糸巻き径(Dmax)判別のための目印が設けられるようにされている。
【発明の効果】
【0013】
上記実施形態によれば、巻き取る釣糸の糸長を入力する必要がなく、また巻き取り時の回転数測定の必要もなく、糸巻き径や釣糸の種類に関する情報を活用して、実用領域での誤差の少ない、引き出された釣糸の糸長を算出することができる糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールの基本構成について説明する図である。
図2】本発明の一実施形態に係る糸長計測装置における釣糸の長さ(糸長)の算出方法について説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールのスプールを軸方向からみた概念図である。
図4】本発明の一実施形態に係る糸長計測装置における釣糸の糸長とスプールの回転量との関係を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る糸長計測装置における入力フォームを示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールのスプールの目盛(目印)を説明する図である。
図7】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールのスプールへの糸巻きのモデルを示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る糸長計測装置における釣糸の種類変更後の入力フォームを示す図である。
図9】糸の種類毎のスプール回転数と引き出し糸長との関係を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る糸長計測装置における入力フォームのその他の例を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る糸長計測装置における入力フォームのその他の例を示す図である。
図12】本発明の一実施形態に係る糸長計測装置における釣糸の引き出し糸長の算出方法を説明する図である。
図13】(a)は、本発明の一実施形態に係る糸径計測ゲージの示す図である。(b)は、本発明の一実施形態に係る糸長計測装置における釣糸の引き出し糸長の算出方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る糸長計測装置及びこれを備える魚釣用リールの実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0016】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールの基本構成について説明する。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、釣糸2を巻回可能なスプール3と、該スプール3を回転可能に軸支するリール本体4と、該スプール3を回転操作する操作部(操作手段)5と、を少なくとも含むように構成される。また、魚釣用リール1は、電気的な構成要素として、リール本体4に対するスプール3の相対回転量を検出する検出部(回転センサ)6と、該検出部(回転センサ)6の検出結果を処理する制御部(制御手段)7と、制御部(制御手段)7の処理した結果を出力する出力部(出力手段)8と、を有する。当該制御部(制御手段)7は、後述する糸長算出部を含み、当該出力部(出力手段)8は、後述する釣糸情報設定部を含むように構成される。
【0017】
なお、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1において、上述の制御部7は必ずしも一つである必要はなく、複数の制御部で構成しても構わない。その際、例えば、第1の制御部を魚釣用リール1内に配置し、第2の制御部をスマートフォン等の外部装置(機器)に配置し、それぞれの制御部の間で必要に応じて通信を行うことで、処理の一部を第2の制御部で行っても良い。これにより、第1の制御部の計算コストを抑えることができる等の効果がある。また、外部装置(機器)の第2の制御部は当該糸長算出部を含むように構成してもよく、その場合、魚釣用リールと外部装置(機器)とを含む糸長算出・管理システムを構成する(詳細は後述する)。
【0018】
ここで、魚釣用リール1は、両軸受リールと呼ばれ、スプールが回転することによって釣糸を巻き取るタイプのものである。使用者がハンドル等の操作部(操作手段)5を操作すると、操作部(操作手段)5からギヤ等で動力が伝達され、スプール3がリール本体4に対して回転運動をする。これにより、リール本体4に案内された釣糸2をスプール3で巻き取ることができる。なお、このときの動力源は、使用者による手動でもよいし、モータや原動機を利用してもよい。また、魚釣用リール1は、クラッチやドラグ等を備えるようにしてもよい。クラッチやドラグ等により、スプール3の動力伝達状態を変更することで、スプール3を放出方向に回転させることができ、これにより、スプール3に巻回された釣糸2を放出させることができる。
【0019】
検出部(回転センサ)6は、光センサ、磁気センサ等の検出手段(図示しない)と、反射板や遮光板、磁石等の被検出手段(図示しない)とからなる。スプール3の摺動抵抗の発生を避けるため、非接触タイプの検出部(検出手段)であることが望ましいが、これに限られない。検出部(検出手段)をリール本体4側に、被検出部(被検出手段)をスプール3側に配置することで、検出部(検出手段)への給電を容易に行うことが可能となる。また、検出部(回転センサ)6として、スプール3の相対回転量に応じた信号を発するインクリメンタル式の回転センサを構成してもよいし、スプール3の絶対回転量に応じた信号を発するアブソリュート式の回転センサを構成してもよいが、釣糸の糸長の算出を行うためには、インクリメンタル式の方が単純な構成となるため望ましい。
【0020】
制御部(制御手段)7は、検出部(回転センサ)6によるスプール3の回転信号を検知(カウントする)ことで、スプール3に巻き取った又は放出した釣糸の長さ(糸長)を算出する。算出方法の詳細に関しては後述する。
【0021】
出力部(出力手段)8は、算出した釣糸の長さ(糸長)を出力する。本発明においては、出力部(出力手段)8は釣糸の長さ(糸長)を利用することを前提として、その目的のために当該糸長を知らせるための手段の総称である。すなわち、当該出力部(出力手段)8として、LEDやLCD等の表示手段、スピーカーやイヤホン等の発音手段、内蔵メモリやリムーバブルメディア等の保存手段、スマートフォンや魚群探知機等の外部機器への送信のための有線通信手段や無線通信手段等があるが、これらに限られない。出力部(出力手段)8のこれ以上の詳細については省略する。
【0022】
制御部7及び出力部8は、上述のようにリール1内に内蔵させてもよいし、一部の機能をスマートフォン等の外部装置(機器)内で実現してもよい。本発明の一実施形態に係る糸長算出・管理システムでは、魚釣用リールと、該魚釣用リールと通信可能に構成されるスマートフォン等の外部装置(機器)とを含み、該魚釣用リール内に第1の制御部を有し、該外部装置(機器)内に第2の制御部を有する。第1の制御部では、スプール3の回転信号を検知しカウントする処理までを担い、その結果を公知の通信手段等を介して第2の制御部へ送信する。当該第2の制御部では、受信したスプールの回転信号を基に、後述の算出方法によって糸長を算出する。算出された糸長は、外部装置(機器)内に設けられた保存部(手段)により保存され、表示部(手段)により出力可能にされる。このようにして、第1の制御部に必要な計算リソースを低減することができ、第1の制御部の小型化や低コスト化、低消費電力化を実現できる。
【0023】
また、本発明の一実施形態に係る糸長算出・管理システムでは、当該外部装置(機器)内で後述する設定モードを使用できるようにするとよい。これにより、魚釣用リール内に設定用ボタン等の入力手段を新たに設ける必要がなく、リール本体の小型化や低コスト化が実現できる。また、当該外部装置(機器)において設定モードで入力した設定値は、公知の通信手段等により魚釣用リールと共有するようにしてもよい。これにより、例えば、複数の外部装置(機器)が魚釣用リールと通信する場合でも、入力した設定値を、魚釣用リールを介して全ての外部装置(機器)で共有することができる。なお、第1の制御部と第2の制御部の役割分担は、上記方法に限定しない。糸長の算出までを当該第1の制御部内で行い、当該第2の制御部では出力のみを行う方法や、設定モードを第1の制御部で行い、当該第2の制御部で糸長の算出及び出力を行う方法等でも、同様の効果を実現できる。
【0024】
なお、上述の説明では、魚釣用リール1として両軸受リールを例に挙げたが、両軸受リールに限定されるものではなく、固定されたスプールの周囲に、ラインガイドを保持するロータが回動することでスプールに糸を巻き取るスピニングリールと呼ばれるタイプの魚釣用リールにも適用可能である。スピニングリールの場合でも、スプールとロータの相対回転量を検出(測定)することで、巻き取った釣糸の長さ(糸長)を算出し、同様の効果を発揮せしめることができる。
【0025】
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係る糸長計測装置における釣糸の長さ(糸長)の算出方法について説明する。一般に、魚釣用リールを用いる際、釣糸の引き出し距離(Y)を計測できると便利である。スプールに巻かれた釣糸は、引き出し又は巻き取りと共に糸巻き径が変化するため、この引き出し距離(Y)は、スプールの回転量Xと必ずしも比例関係にはならず、適切な換算を行う必要がある。
【0026】
釣糸の糸巻き径の変化率が一定と見做せる場合、この換算式Y=f(x)は、後述するように、Y=AX2+BXの形の2次関数で表すことができる(A, Bは所定の定数)。このとき、定数A、Bの値は、スプールの形状や使用している釣糸の太さ、釣糸の巻き取り長さによって変わり得る。このため、一般的な魚釣用リールにおいてもこれらの定数を決定する必要があるが、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールでは、図2に示すように換算式Y=f(x)の2つの定数を決定するための設定モード(S)を有する。当該設定モード(S)では、使用者の使用状態に応じて変化する2種類の情報を入力する(S1)ことで、換算式中の未知の定数A、Bを決定する(S2)。後述するように、本発明の一実施形態においては、当該2種類の情報は、例えば、糸の太さに関する情報と、釣糸が巻き取られた後のスプールの太さの情報であり、設定モード(S)においては検出部(回転センサ)6の情報を利用しなくてもよい。魚釣用リールの使用を開始し計測モード(T)に入ると、距離0m状態(T1)からのスプールの回転量(回転数)(X)を検出部(回転センサ)6により常時監視し(T2)、設定モードで決定した換算式Y=f(x)を用いて、釣糸の引き出し量(Y)を算出する(T3)。
【0027】
次に、スプールの回転量(X)と釣糸の引き出し量(Y)の換算式Y=f(x)についてさらに説明する。釣糸の糸巻き時、使用時の各変数を下記のように定義する。ここで、釣糸の糸巻き時とは、魚釣用リールの使用開始前の準備状態を指し、この状態ではスプールへの糸巻きや後述する釣糸情報の設定を行う(魚釣用リールの設定モード(S)の状態に対応する)。また、使用時とは、魚釣用リールの使用開始前の準備状態を終え、魚釣用リールの使用開始及びそれ以降の状態を指す(魚釣用リールの計測モード(T)の状態に対応する)。
糸巻き時:釣糸を巻いていないスプール径D0(m)のスプールに太さが均一の釣糸を巻き付ける。

使用時:上記最終状態から、Y(m)の釣糸を引き出す。

【0028】
次に、図3及び図4を参照して、これらをさらに説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールのスプールの軸方向からみた概念図を示し、図4は糸長とスプールの回転量の関係を示すグラフである。魚釣用リールの使用中は、既述の通り、使用開始状態からのスプールの回転量(X)を計測し、後述する換算式Y=f(X)を用いることで、釣糸の引き出し量(Y)を得ることができる。
【0029】
スプールに釣糸を1回巻き付ける糸巻き径の変化量をΔD(m)とし、ΔD(m)が糸巻き時、使用時において一定値と見做せる場合、下記の関係が成り立つ。
(糸長)=π×(平均糸巻き径)×(回転量)
L=πn(D0+D)/2 式(1)
Y=πX(Dmax+D)/2 式(2)
また、糸巻き径の変化量ΔD(m)は一定なので、下記の関係が成り立つ。
D=D0+ΔDn 式(3)
D=Dmax-ΔDX 式(4)
ΔD=(Dmax-D0)/Nmax 式(5)
そして、式(1)、式(2)に、式(3)、式(4)を代入することにより、それぞれ下記が成り立つ。
L=πnD0+π/2×ΔD×n2 式(6)
Y=πXDmax-π/2×ΔD×X2 式(7)
【0030】
また、式(1)に最終状態であるNmax、Dmax、Lmaxを代入すると、
Lmax=πNmax(D0+Dmax)/2 式(8)
となる。
式(5)、式(8)より、ΔDは、D0、Lmax、Nmaxを用いて下記のように表せる。
ΔD=2/(πNmax^2)(Lmax-π D0 Nmax) 式(9)
そして、式(6)に式(9)を代入すると、下記が得られる。
L=πnD0 +(n/Nmax)^2 (Lmax-π D0 Nmax) 式(10)
また、LとY、nとXの関係は
L+Y=Lmax 式(11)
n+X=Nmax 式(12)
式(10)、式(11)、式(12)を整理すると、下記式(13)が得られる。
Y=X/Nmax(2Lmax-πD0Nmax)-(X/Nmax)2(Lmax-πD0Nmax) 式(13)
【0031】
従来の魚釣用リールの一例では、式(13)により、スプールの回転量を計測することで、釣糸の引き出し量Yを得ていた。すなわち、D0の値はスプールの固有値であり、工場出荷時に設定できる。糸巻き時に巻き付ける糸長Lmaxを使用者が入力し、その時に必要な回転量Nmaxを計測する。このD0、Lmax、Nmaxの値をマイコンに記憶させ、順次スプールの回転量Xの値を計測することで、引き出し量Yの値を算出することができる。
【0032】
これに対して、本発明の一実施形態に係る糸長計測装置を備える魚釣用リールでは、上述の(7)式により、糸長の算出を行うことができる。使用者は、後述する釣糸情報設定部において、糸巻き作業後の最終状態である糸巻き径(Dmax)及び使用する糸の種類を設定する。一例として、図5に示すような入力フォームを準備しておく。糸巻き径(Dmax)の値は、スプールの最大糸巻き径に対する割合を入力するようにしておくと、目分量でも判断しやすくなる。例えば、スプールの最大糸巻き径が36mmの場合、最大糸巻き径の90%まで糸を巻き取った場合は、制御部7側でDmax=36(mm)×90%=32.4mmと算出できる。この時、入力フォームでは、図示のように入力した条件に応じた糸巻き径を画像等で表示しておくと、より正確な値を判断しやすくなる。他方で、Lmaxを入力後、Dmaxを算出するようにしてもよい。すなわち、所定回転(例えば、スプール1回転)で引き出された糸長を計測し、そこからDmaxを算出するようにしてもよい。
【0033】
また、図6のようにスプール側に目盛(目印)を設けておくと、Dmaxの値を判断しやすくなる。このとき、図6に示すようにスプールの左右で異なる間隔の目盛(目印)を設けるようにしてもよい。これにより、それぞれの目盛(目印)の間隔を大きくすることができ、精度を保ったまま視認性が向上する。
【0034】
また、釣糸の種類を設定することにより、ΔDの値を決定することができる。図7を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールのスプールへの糸巻きのモデルについて説明する。図7は、断面形状が矩形で幅がb(m)のスプールに、糸径dl(m)の釣糸が、各層で均一に配置(配列)されるように巻き付ける場合を想定した断面図である。このようなモデルに基づくと、糸巻き径Dは、b/dl回巻き付けるごとにdl(m)増加することになるので、
ΔD=dl2/b 式(14)
となる。すなわち、ΔDは糸の直径の2乗に比例し、釣糸の断面積に比例する。
【0035】
実際のΔDの値は、張力変動による釣糸の伸びの変化、それに伴う断面積変化、形状変化、又は糸巻き状態の変化を受けることで、占積率は変化する。また、スプールの断面形状も、実際には矩形ではなく概略台形状であることが多いが、同じ太さの釣糸を所定範囲内の張力で巻回すると、ΔDの値は一定と見做してもよく、このようなモデルに基づき引き出し量Yを算出するようにしても実用上十分な精度が得られることが判った。
【0036】
釣糸の種類は、慣習的に、釣糸の断面積に比例した号数で表示されたり、破断力に比例した強度(ポンド数)で表示されることが多い。釣糸の破断力は、同一の材料であれば断面積に比例する。また、釣糸の材質が決まれば、その材質の釣糸でスプールに巻回した際の占積率は概ね一定値に定まる。すなわち、ΔDの値は、釣糸の号数や強度にほぼ比例するため、釣糸の種類(号数、材質)が決まれば一意に決まる。この関係を予め算出しておけば、使用者が釣糸の種類を入力することで、ΔDの値を決定することができる。このように、本発明の一実施形態に係る糸長計測装置では、使用者から既述の糸巻き径(Dmax)の値と糸の種類を入力可能とすることで、上述の式(7)の未知の定数を決定することができ、後述する糸長算出部において、随時引き出し糸長Yを算出することができる。
【0037】
釣糸の種類が決定され、ΔDの値が決まると、式(1)及び式(3)式より、釣糸の糸巻き径Dmaxと糸長Lmaxの関係が決まる。図5に示すように、入力フォーム上でこの関係を表示するとよい。このようにして、使用者が巻回した釣糸の糸長Lmaxが把握できた場合、より正確にDmaxの値を入力することができる。また、使用中に高切れ(糸先端部の破断)が発生した場合、引き出し糸長Yの算出精度を保つためには再度Dmaxを設定し直す必要があるが、そのような場合、Dmaxの変化量よりも高切れした糸の長さの方が把握しやすい場合が多いため、より正確な値を設定し易くなる。すなわち、本発明の一実施形態に係る糸長計測装置では、糸巻き径Dmaxの代わりに釣糸の糸長Lmaxが入力できれば、糸巻き径Dmaxの値を算出することができる。釣糸の種類変更後の入力フォームの一例を図8に示す。また、一例として、図9に太さの異なる2種類の釣糸(2号、3号)を、それぞれDmax=36mまで巻き付けた際の、引き出し糸長Y[m]と引き出し回転数x[回]との関係、及び糸巻き径D[mm]と引き出し回転数x[回]との関係を示す。それぞれの釣糸では、既述の式(4)及び式(7)におけるΔDの値が1.5倍異なる。そのため、糸巻き径Dを示す関係では、引き出し糸長Yの切片が共通で、傾きが1.5倍異なる。引き出し糸長Yとの関係では、x=0付近の傾きが共通であり、引き出し回転数xが大きくなるに連れて曲率変化が異なる。
【0038】
本発明の一実施形態に係る糸長計測装置における糸巻き径(Dmax)の入力方法について、その他の方法を述べる。糸巻き径(Dmax)を得るためには、直接スプールの直径を検出(測定)する以外に、スプールを所定回転(例えば、1回転)回したときの釣糸の引き出し糸長を検出(測定)するようにしてもよい。図12を用いて、本発明の一実施形態に係る糸長計測装置における糸巻き径(Dmax)の入力方法の詳細を説明する。本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1のスプール3と、リール本体4には、それぞれ目印がついており、使用者はこの目印を目安にスプールを1回転させる。その時の引き出し糸長を定規等で検出(測定)し、その値を設定値に入力する。例えば、引き出し糸長が10cmだった場合、その時のスプール径Dmaxは、10/π≒3.18cmと算出できる。
【0039】
別の例として、ゲージを使った例を図13を用いて説明する。本実施例では、図13(a)に示すような糸径計測ゲージ200を用いる。糸径計測ゲージ200は、概略N角形(本例では6角形)をしており、各々の辺に糸突き当て部201と、リール突き当て部202を有する。N個のリール突き当て部202は、すべて同一形状であり、図13(b)に示すようにリール突き当て部202をリールの所定位置に突き当てて使用する。N個の糸突き当て部201は、中心からの距離が少しずつ変わるように形成され、それぞれの糸巻き径(Dmax)(本実施形態では、100分率で表示)が記載されている。使用者は、各糸突き当て部201を魚釣用リール1の巻回された釣糸の外面に当てて、リール突き当て部202と糸突き当て部201とが魚釣用リール1に概ね同時に当たる場所を見つけ、その値を設定値として入力するようにすればよい。
【0040】
本発明の一実施形態に係る糸長計測装置は、リール本体と、釣糸が巻回可能なスプールとを備える魚釣用リールの該スプールから引き出された該釣糸の糸長を計測可能な糸長計測装置であって、該スプールの該リール本体に対する相対回転数を検出可能な回転検出部と、該回転検出部により検出された回転数から前記引き出された釣糸の糸長を算出する糸長算出部と、該糸長算出部による前記引き出された釣糸の糸長の算出のため釣糸情報を設定する釣糸情報設定部と、を備え、該釣糸情報設定部は、巻回する釣糸の種類と、該巻回する釣糸の巻回後のスプールの糸巻き径(Dmax)とを入力可能に構成される。
【0041】
本発明の一実施形態に係る糸長計測装置によれば、巻き取る釣糸の糸長を入力する必要がなく、また巻き取り時の回転数測定の必要もなく、糸巻き径や釣糸の種類に関する情報を活用して、実用領域での誤差の少ない、引き出された釣糸の糸長を算出することができる糸長計測装置を提供することが可能となる。
【0042】
本発明の一実施形態に係る糸長計測装置において、巻回する釣糸の種類は、該釣糸の号数、該釣糸のポンド数、又は該釣糸の太さ(d)の少なくともいずれかである。
【0043】
本発明の一実施形態に係る糸長計測装置において、釣糸情報設定部は、釣糸の種類を設定すると、巻回する釣糸を巻回した後のスプールの糸巻き径(Dmax)と、巻回する釣糸の巻回後の巻回釣糸の糸長(Lmax)との関係を表示するように構成される。
【0044】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、上記いずれかの糸長計測装置を備えるように構成される。
【0045】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールによれば、巻き取る釣糸の糸長を入力する必要がなく、また巻き取り時の回転数測定の必要もなく、糸巻き径や釣糸の種類に関する情報を活用して、実用領域での誤差の少ない、引き出された釣糸の糸長を算出することができる糸長計測装置を備えた魚釣用リールを提供することが可能となる。
【0046】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、スプールに、巻回する釣糸を巻回した後のスプールの糸巻き径(Dmax)判別のための目盛(目印)が設けられるようにされている。
【0047】
本発明の一実施形態に係る糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リールにより得られる技術的効果のより詳細について述べる。前述の通り、従来の方法では、NmaxやLmaxの値の入力を必要としていた。このため、使用者は巻回した釣糸の糸長Lmaxを把握する必要があるが、無色の均一な釣糸を巻き付ける場合等、使用者が釣糸の糸長Lmaxを把握するのが実際上難しい場合がある。また、従来の魚り用リールでは、設定モードにおいて、釣糸の巻回に必要なスプールの回転量Nmaxを検出(測定)するための作業が必要となるが、この作業が煩わしいという問題もあった。すなわち、スプールの回転量Nmaxを入力するためには、以下の手順を踏む必要があった。
設定モードに入る→入力開始操作を行う→釣糸をスプールに結び、操作手段を操作してスプールに巻回する→設定終了操作を行う
しかしながら、このような一連の作業の過程で、設定操作に失敗したり、糸切れ等で釣りをしている間に再設定の必要があった際に再設定を行うのが難しいという問題もあった。
【0048】
これに対して、本発明の一実施形態に係る糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リールでは、糸巻き後の最終状態でのスプールの糸巻き径(Dmax)、及び巻回した釣糸の種類を入力すればよく、設定モードにおいて、上述の糸長(Lmax)やスプール回転量(Nmax)を入力する必要がないため、最終状態から目分量でも判断し易い。このため、使用者の要する作業を大幅に簡易化することができる。また、使用者が釣りをしている間に釣糸に糸切れが発生した場合等、再設定の必要が生じた際にも、使用者は切れた釣糸の長さを把握していれば、その場で簡易かつ確実に再設定が行うことができる。さらに、従来の方法では、下巻きと呼ばれる、使用時に使う釣糸の内周側に異なる糸を巻くような使い方をした場合、D0やNmaxの値が変わってしまうため、特別な作業が必要であったところ、本発明の一実施形態に係る糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リールでは、最終状態である糸巻き径(Dmax)を入力しており、D0側の情報は不要であるため、下巻きの有無に限らず同じ入力方法を用いることができる。
【0049】
また、本発明の一実施形態に係る糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リールでは、糸巻き径(Dmax)の値が間違っていなければ、実使用領域において大きな誤差が生じにくいという点も挙げられる。図9に、糸の種類毎のスプール回転数(X)と引き出し糸長(Y)との関係を示す。スプール回転数(X)の値が小さいときは、既述の式(7)上のスプール回転数(X)の1次の項の影響が大きく、スプール回転数(X)が大きくなるにつれて既述の式(2)の影響が大きくなる。魚釣用リールにおける一般的な使用方法としては、巻き取った釣糸の外周部のほうが、より使用頻度が高い。すなわち、スプール回転数(X)が大きくなる領域は高切れ等のトラブル時の予備と考えることが多く、スプール回転数(X)が小さい領域の方が使用頻度は高い。この領域で影響の大きい1次の項の係数は糸巻き径(Dmax)であるため、糸巻き径(Dmax)の入力精度が殆どそのまま引き出し糸長(Y)の算出精度となる。例えば、スプールの最大径が36mmの場合、巻き取った糸とスプールの外縁との隙間は、目分量でも比較的容易に把握できる。この時の誤差を1mmとすると、引き出し糸長(Y)の算出精度は1/36≒3%となり、入力が容易である上に、実用上十分な算出精度も得ることができる。
【0050】
なお、上述の説明では、引き出し糸長(Y)をスプール回転数(X)の2次式として算出しているが、本発明の一実施形態に係る糸長計測装置及びこれを備えた魚釣用リールではこれに限定されるものではない。スプールの形状によって、他の換算式を用いてもよい。例えば、スプールの最小径と最大径の比が小さい、所謂浅溝スプールと呼ばれるような形状であれば、相対的に既述の式(7)の2次の項の影響が小さいため、1次式で近似しても実用上十分な精度が得られることが多い。また、スプールの断面形状が矩形よりは三角形に近いような形状では、ΔDが一定と見做せなくなるため、引き出し糸長(Y)をスプール回転数(X)の3次式以上で近似しないと実用上十分な精度が得られないことがある。いずれの場合にあっても、既述の方法と同様に、糸巻き径(Dmax)と糸種を入力することにより、スプール回転数(X)と引き出し糸長(Y)の関係式を決定することができ、同様の効果が実現できる。
【0051】
本発明の一実施形態に係る糸長算出・管理システムは、魚釣用リールと、該魚釣用リールと通信可能に構成される外部装置と、を備え、該魚釣用リールは、リール本体と、釣糸が巻回可能なスプールと、該スプールの該リール本体に対する相対回転数を検出可能な回転検出部と、該糸長算出部による前記引き出された釣糸の糸長の算出のため釣糸情報を設定する釣糸情報設定部と、該回転検出部により検出された回転数と該釣糸情報とを外部装置に送信する送信部と、を備え、該釣糸情報設定部は、巻回する釣糸の種類と、該巻回する釣糸の巻回後のスプールの糸巻き径(Dmax)とを入力可能に構成され、該外部装置は、該魚釣用リールより該回転検出部により検出された回転数と該釣糸情報とを受信する受信部と、該回転数と該釣糸情報に基づき前記引き出された釣糸の糸長を算出する糸長算出部と、算出された糸長を出力する表示部と、を備え、このようにして、糸長算出・管理システムは、魚釣用リールの該スプールから引き出された該釣糸の糸長を外部装置により算出・出力可能に構成される。
【0052】
次に、図10図11を参照して、本発明の一実施形態に係る糸長計測装置における入力フォームのその他の例を説明する。図10に示すように、最終糸巻き径に応じたスプールのイラストや写真を表示し、使用者が選択できるようにしてもよい。これにより、使用者が直観的に糸巻き径(Dmax)の値を把握し、入力することができる。また、図11に示すように、使用者が糸巻き径(Dmax)の値を入力できるようにしてもよい。これにより、精密かつ容易に糸巻き径(Dmax)の値を入力できるため、引き出し糸長(Y)の表示精度を向上させることができる。
【0053】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 魚釣用リール
2 釣糸
3 スプール
4 リール本体
5 操作部(操作手段)
6 検出部(回転センサ)
7 制御部(制御手段)
8 出力部(出力手段)
10 糸長計測装置
200 糸径計測ゲージ
201 糸突き当て部
202 リール突き当て部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
記魚釣用リールにおいて、前記スプールに、前記巻回する釣糸を巻回した後のスプールの糸巻き径(Dmax)判別のための目印が設けられるようにされている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係る糸長計測装置における釣糸の長さ(糸長)の算出方法について説明する。一般に、魚釣用リールを用いる際、釣糸の引き出し糸長(Y)を計測できると便利である。スプールに巻かれた釣糸は、引き出し又は巻き取りと共に糸巻き径が変化するため、この引き出し距離(Y)は、スプールの回転量Xと必ずしも比例関係にはならず、適切な換算を行う必要がある。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
釣糸の糸巻き径の変化率が一定と見做せる場合、この換算式Y=f(x)は、後述するように、Y=AX2+BXの形の2次関数で表すことができる(A, Bは所定の定数)。このとき、定数A、Bの値は、スプールの形状や使用している釣糸の太さ、釣糸の巻き取り長さによって変わり得る。このため、一般的な魚釣用リールにおいてもこれらの定数を決定する必要があるが、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールでは、図2に示すように換算式Y=f(x)の2つの定数を決定するための設定モード(S)を有する。当該設定モード(S)では、使用者の使用状態に応じて変化する2種類の情報を入力する(S1)ことで、換算式中の未知の定数A、Bを決定する(S2)。後述するように、本発明の一実施形態においては、当該2種類の情報は、例えば、糸の太さに関する情報と、釣糸が巻き取られた後のスプールの太さの情報であり、設定モード(S)においては検出部(回転センサ)6の情報を利用しなくてもよい。魚釣用リールの使用を開始し計測モード(T)に入ると、距離0m状態(T1)からのスプールの回転量(回転数)(X)を検出部(回転センサ)6により常時監視し(T2)、設定モードで決定した換算式Y=f(x)を用いて、釣糸の引き出し糸長(Y)を算出する(T3)。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
次に、スプールの回転量(X)と釣糸の引き出し糸長(Y)の換算式Y=f(x)についてさらに説明する。釣糸の糸巻き時、使用時の各変数を下記のように定義する。ここで、釣糸の糸巻き時とは、魚釣用リールの使用開始前の準備状態を指し、この状態ではスプールへの糸巻きや後述する釣糸情報の設定を行う(魚釣用リールの設定モード(S)の状態に対応する)。また、使用時とは、魚釣用リールの使用開始前の準備状態を終え、魚釣用リールの使用開始及びそれ以降の状態を指す(魚釣用リールの計測モード(T)の状態に対応する)。
糸巻き時:釣糸を巻いていないスプール径D0(m)のスプールに太さが均一の釣糸を巻き付ける

使用時:上記最終状態から、Y(m)の釣糸を引き出す。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
次に、図3及び図4を参照して、これらをさらに説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールのスプールの軸方向からみた概念図を示し、図4は糸長とスプールの回転量の関係を示すグラフである。魚釣用リールの使用中は、既述の通り、使用開始状態からのスプールの回転量(X)を計測し、後述する換算式Y=f(X)を用いることで、釣糸の引き出し糸長(Y)を得ることができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
本発明の一実施形態に係る糸長算出・管理システムは、魚釣用リールと、該魚釣用リールと通信可能に構成される外部装置と、を備え、該魚釣用リールは、リール本体と、釣糸が巻回可能なスプールと、該スプールの該リール本体に対する相対回転数を検出可能な回転検出部と、該糸長算出部によるき出された釣糸の糸長の算出のため釣糸情報を設定する釣糸情報設定部と、該回転検出部により検出された回転数と該釣糸情報とを外部装置に送信する送信部と、を備え、該釣糸情報設定部は、巻回する釣糸の種類と、該巻回する釣糸の巻回後のスプールの糸巻き径(Dmax)とを入力可能に構成され、該外部装置は、該魚釣用リールより該回転検出部により検出された回転数と該釣糸情報とを受信する受信部と、該回転数と該釣糸情報に基づき前記引き出された釣糸の糸長を算出する糸長算出部と、算出された糸長を出力する表示部と、を備え、このようにして、糸長算出・管理システムは、魚釣用リールの該スプールから引き出された該釣糸の糸長を外部装置により算出・出力可能に構成される。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
釣糸の種類が決定され、ΔDの値が決まると、式(1)及び式(3)式より、釣糸の糸
巻き径Dmaxと糸長Lmaxの関係が決まる。図5に示すように、入力フォーム上でこの関係を表示するとよい。このようにして、使用者が巻回した釣糸の糸長Lmaxが把握できた場合、より正確にDmaxの値を入力することができる。また、使用中に高切れ(糸先端部の破断)が発生した場合、引き出し糸長Yの算出精度を保つためには再度Dmaxを設定し直す必要が
あるが、そのような場合、Dmaxの変化量よりも高切れした糸の長さの方が把握しやすい場合が多いため、より正確な値を設定し易くなる。すなわち、本発明の一実施形態に係る糸長計測装置では、糸巻き径Dmaxの代わりに釣糸の糸長Lmaxが入力できれば、糸巻き径Dmaxの値を算出することができる。釣糸の種類変更後の入力フォームの一例を図8に示す。また、一例として、図9に太さの異なる2種類の釣糸(2号、3号)を、それぞれDmax=3
mmまで巻き付けた際の、引き出し糸長Y[m]と引き出し回転数x[回]との関係、及び糸巻き径D[m]と引き出し回転数x[回]との関係を示す。それぞれの釣糸では、既述の式(4)及び式(7)におけるΔDの値が1.5倍異なる。そのため、糸巻き径Dを示す関係では、引き出し糸長Yの切片が共通で、傾きが1.5倍異なる。引き出し糸長Yとの関係では、x=0付近の傾きが共通であり、引き出し回転数xが大きくなるに連れて曲率変化が異なる。