(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072934
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】工事現場の区画状況の点検方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/00 20060101AFI20240522BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20240522BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20240522BHJP
G06Q 50/08 20120101ALN20240522BHJP
【FI】
E04G21/00 ESW
E04G21/14
G06T7/70 A
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183831
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518156358
【氏名又は名称】株式会社センシンロボティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 嵩之
(72)【発明者】
【氏名】中山 淳
(72)【発明者】
【氏名】諸藤 洋明
【テーマコード(参考)】
2E174
5L049
5L050
5L096
【Fターム(参考)】
2E174DA01
2E174DA40
2E174DA41
5L049CC07
5L050CC07
5L096BA03
5L096BA05
5L096DA02
5L096FA66
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】工事現場の区画状況を、時間を要さずに簡便に点検する点検方法を提供する。
【解決手段】撮像部21を備えた無人航空機20を用いた工事現場9の区画状況の点検方法であって、工事現場9を区画された領域91に仕切る仕切り部材5の上部に、複数の点検用のマーカー4を配置する配置工程S1と、点検の基準となる工事現場の基準画像GAを取得する画像取得工程S2と、基準画像GAに対して、マーカー4の基準位置を設定する基準位置設定工程S3と、点検の対象となる工事現場9の対象画像を、無人航空機の前記撮像部で取得する撮像工程S4と、対象画像GBに含まれるマーカー4ごとの位置座標を取得する座標取得工程S5と、取得したマーカー4ごとに、基準位置に基づいたマーカーの移動量を、マーカー4の位置座標から算出する移動量算出工程S6と、移動量が許容範囲内であるか否かを判定する判定工程S7と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部を備えた無人航空機を用いた工事現場の区画状況の点検方法であって、
前記工事現場を区画された領域に仕切る仕切り部材の上部に、前記無人航空機から視認可能な複数の点検用のマーカーを配置する配置工程と、
点検の基準となる前記工事現場の基準画像を取得する画像取得工程と、
前記基準画像に対して、前記マーカーの基準位置を設定する基準位置設定工程と、
点検の対象となる前記工事現場の対象画像を、前記無人航空機の前記撮像部で取得する撮像工程と、
前記対象画像に含まれる前記マーカーごとの位置座標を取得する座標取得工程と、
位置座標を取得した前記マーカーごとに、前記基準位置に基づいた前記マーカーの移動量を、前記マーカーの位置座標から算出する移動量算出工程と、
前記移動量が許容範囲内であるか否かを判定する判定工程と、
を含むことを特徴とする工事現場の区画状況の点検方法。
【請求項2】
前記配置工程において、前記工事現場に、測定原点および測定寸法の基準となる基準シートを配置し、
前記撮像工程において、前記対象画像に前記基準シートの画像が含まれるように、前記対象画像を取得し、
前記座標取得工程において、前記測定原点からの前記マーカーの座標を取得し、
前記移動量算出工程において、前記測定寸法に合わせた前記マーカーの移動量を算出することを特徴とする請求項1に記載の工事現場の区画状況の点検方法。
【請求項3】
前記配置工程において、前記工事現場に、前記基準シートを複数配置し、
前記座標取得工程において、複数の前記測定原点を用いて、前記基準画像に対して、前記対象画像を位置合わせした後、前記マーカーの位置座標を取得することを特徴とする請求項2に記載の工事現場の区画状況の点検方法。
【請求項4】
前記画像取得工程において、前記基準画像として、前記無人航空機の前記撮像部で撮像された前記工事現場の撮像画像を取得し、
前記基準位置設定工程において、前記撮像画像に含まれる前記マーカーの画像から、前記マーカーの前記基準位置を設定することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の工事現場の区画状況の点検方法。
【請求項5】
前記画像取得工程において、前記基準画像として、予め用意された前記工事現場の仮設計画図の画像を取得し、
前記基準位置設定工程において、前記仮設計画図の画像に、前記マーカーの前記基準位置を設定することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の工事現場の区画状況の点検方法。
【請求項6】
撮像部を備えた無人航空機を用いた工事現場の区画状況の点検システムであって、
前記撮像部が搭載された無人航空機と、
前記工事現場を区画された領域に仕切る仕切り部材の上部に配置され、前記無人航空機から視認可能な複数の点検用のマーカーと、
前記撮像部で撮像された点検の対象となる前記工事現場の対象画像に基づいて、工事現場の区画状況の点検の処理を行う処理装置と、を備えており、
前記処理装置は、
点検の基準となる前記工事現場の基準画像を登録する画像登録部と、
前記基準画像に対して、前記マーカーの基準位置を設定する基準位置設定部と、
前記対象画像に含まれる前記マーカーの位置座標を取得する座標取得部と、
位置座標を取得した前記マーカーごとに、前記基準位置に基づいた前記マーカーの移動量を前記マーカーの位置座標から算出する移動量算出部と、
前記移動量が許容範囲内であるか否か判定する判定部と、を有する、
ことを特徴とする工事現場の配置状況の点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像部を備えた無人航空機を用いた、工事現場の区画状況の点検方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種工事が施工される現場においては、安全性確保の観点から工事区域と一般区域との間、資材及び工事車両周辺を仕切り部材で仕切り、人員が安易に立ち入れないように区画することが実施されている。
【0003】
したがって、仕切り部材が適切に配置されているか否かについては常時監視・点検する必要がある。しかし、工事現場の規模が大きく、工事対象敷地の面積が広くなればなるほど、作業者による巡回目視の手間が大きくなり、点検に時間を要してしまう。
【0004】
そこで、撮像部を備えた無人航空機を用い画像解析によって上記点検を機械化・自動化する技術の開発が進められている。このような無人航空機を用いた画像解析の例としては例えば特許文献1が挙げられる。特許文献1においては、写真画像上に配置したマーカーが所定の画角に収まるように写真を撮影し、各マーカーの緯度経度座標を測量している。そして、各マーカーの緯度経度座標が、デジタル地図上の緯度経度座標と一致するように、画像の重ね合わせ・変形を行うことで、画像上で、マーカー間の距離等、配置情報を計測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、マーカーを基準として対象物の位置情報を明らかにしているのみであり、その位置情報が本来予定されていた正しいものであるか否かの判定を行うことができない。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、工事現場の区画状況を、時間を要さずに簡便に点検する点検方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を鑑みて、本発明に係る工事現場の区画状況の点検方法は、撮像部を備えた無人航空機を用いた工事現場の区画状況の点検方法であって、前記工事現場を区画された領域に仕切る仕切り部材の上部に、前記無人航空機から視認可能な複数の点検用のマーカーを配置する配置工程と、点検の基準となる前記工事現場の基準画像を取得する画像取得工程と、前記基準画像に対して、前記マーカーの基準位置を設定する基準位置設定工程と、点検の対象となる前記工事現場の対象画像を、前記無人航空機の前記撮像部で取得する撮像工程と、前記対象画像に含まれる前記マーカーごとの位置座標を取得する座標取得工程と、位置座標を取得した前記マーカーごとに、前記基準位置に基づいた前記マーカーの移動量を、前記マーカーの位置座標から算出する移動量算出工程と、前記移動量が許容範囲内であるか否かを判定する判定工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る点検方法によれば、画像取得工程において、工事現場の区画状況のうち、点検の基準となる工事現場の基準画像を取得し、基準位置設定工程において、基準画像に対して、後述するマーカーの基準位置を設定する。この基準画像における基準位置を用いて、工事現場の区画状況の良否を確認する(点検する)ことができる。
【0010】
ここで、区画状況の点検を行う際には、配置工程において、工事現場を区画された領域に仕切る仕切り部材の上部にマーカーを配置し、撮像工程において、工事現場を区画された領域に仕切る仕切り部材の上部に配置されたマーカーとともに工事現場を無人航空機で撮影し、工事現場の対象画像を取得する。対象画像に含まれるマーカーの画像は、無人航空機から視認可能なマーカーであるので、対象画像に含まれるマーカーの画像を容易に識別することができる。
【0011】
そこで、本発明では、座標取得工程において、対象画像全体に対して、対象画像に含まれるマーカーごとの位置座標を取得する。この位置座標とは、工事現場を平面視したときにおける対象画像の位置座標であり、実際の寸法から特定してもよく、対象画像のピクセル数から特定してもよい。
【0012】
次に、移動量算出工程で、取得したマーカーの画像ごとに、基準位置に基づいたマーカーの移動量を、マーカーの位置座標から算出する。ここでは、マーカーの位置座標に基づく移動量を、直交座標系から移動距離として算出してもよく、基準位置に基づいて設定された基準線に対して変化した変化角度として算出してもよい。最後に、判定工程において、移動量が許容範囲内であるか否かを判定し、移動量が許容範囲であれば、点検結果、工事現場の区画状況を「異常なし」と判定し、移動量が許容範囲から外れれば、工事現場の区画状況を「異常あり」と判定する。このようにして、工事現場を点検員が見回りすること無く、工事現場の区画状況を、時間を要さずに簡便に点検することができる。
【0013】
より好ましい態様としては、前記配置工程において、前記工事現場に、測定原点および測定寸法の基準となる基準シートを配置し、前記撮像工程において、前記対象画像に前記基準シートの画像が含まれるように、前記対象画像を取得し、前記座標取得工程において、前記測定原点からの前記マーカーの座標を取得し、前記移動量算出工程において、前記測定寸法に合わせた前記マーカーの移動量を算出する。
【0014】
この態様によれば、配置工程において、工事現場に基準シートを配置し、撮像工程において、対象画像に基準シートの画像が含まれるように、対象画像を取得する。これにより、座標取得工程において、測定原点からのマーカーの座標を実寸法に応じた座標として取得し、移動量算出工程において、測定寸法に合わせたマーカーの移動量を実寸法に応じて、算出することができる。
【0015】
さらに好ましい態様としては、前記配置工程において、前記工事現場に、前記基準シートを複数配置し、前記座標取得工程において、複数の前記測定原点を用いて、前記基準画像に対して、前記対象画像を位置合わせした後、前記マーカーの位置座標を取得する。
【0016】
この態様によれば、前記配置工程において、工事現場に基準シートを複数配置し、撮像工程において、対象画像に基準シートの画像が含まれるように、対象画像を取得する。これにより、座標取得工程において、複数の測定原点を用いて、基準画像に対して対象画像を位置合わせするため、マーカーの位置座標とその移動量を正確に取得することができる。
【0017】
より好ましい態様としては、前記画像取得工程において、前記基準画像として、前記無人航空機の前記撮像部で撮像された前記工事現場の撮像画像を取得し、前記基準位置設定工程において、前記撮像画像に含まれる前記マーカーの画像から、前記マーカーの前記基準位置を設定する。
【0018】
この態様によれば、基準画像と対象画像とは、同じ工事現場においてマーカーが配置された画像であるため、基準画像と対象画像とを簡単に対比して、マーカーの移動量を算出することができる。
【0019】
前記画像取得工程において、前記基準画像として、予め用意された前記工事現場の仮設計画図の画像を取得し、前記基準位置設定工程において、前記仮設計画図の画像に、前記マーカーの前記基準位置を設定する。
【0020】
この態様によれば、基準画像に、工事現場の仮設計画図の画像を用いるため、仮設計画ごとに、基準画像と対象画像とを簡単に対比して、マーカーの移動量を算出することができる。
【0021】
本発明に係る配置状況の点検システムは、撮像部を備えた無人航空機を用いた工事現場の区画状況の点検システムであって、前記撮像部が搭載された無人航空機と、前記工事現場において、区画された領域に仕切る仕切り部材の上部に配置され、前記無人航空機から視認可能な複数の点検用のマーカーと、前記撮像部で撮像された点検の対象となる前記工事現場の対象画像に基づいて、工事現場の区画状況の点検の処理を行う処理装置と、を備えており、前記処理装置は、点検の基準となる前記工事現場の基準画像を登録する画像登録部と、前記基準画像に対して、前記マーカーの基準位置を設定する基準位置設定部と、前記対象画像に含まれる前記マーカーの位置座標を取得する座標取得部と、位置座標を取得した前記マーカーごとに、前記基準位置に基づいた前記マーカーの移動量を前記マーカーの位置座標から算出する移動量算出部と、前記移動量が許容範囲内であるか否か判定する判定部と、を有する、ことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る点検システムによれば、画像登録部が、工事現場の区画状況のうち、点検の基準となる工事現場の基準画像を登録し、基準位置設定部が、基準画像に対して、後述するマーカーの基準位置を設定する。この基準画像における基準位置を用いて、工事現場の区画状況の良否を確認する(点検する)ことができる。
【0023】
ここで、工事現場を区画された領域に仕切る仕切り部材の上部にマーカーを配置し、工事現場を区画された領域に仕切る仕切り部材の上部に配置されたマーカーとともに工事現場を無人航空機で撮影し、工事現場の対象画像を取得する。ここで、マーカーは、無人航空機から視認可能なマーカーであるので、座標取得部は、対象画像に含まれるマーカーの画像を容易に識別し、対象画像全体に対して、対象画像に含まれるマーカーごとの位置座標を取得することができる。この位置座標とは、工事現場を平面視したときにおける対象画像の位置座標であり、実際の寸法から特定してもよく、対象画像のピクセル数から特定してもよい。
【0024】
次に、移動量算出部は、位置座標を取得したマーカーごとに、基準位置に基づいたマーカーの移動量を、マーカーの位置座標から算出する。ここでは、マーカーの位置座標に基づく移動量を、直交座標系から移動距離として算出してもよく、基準位置に基づいて設定された基準線に対して変化した変化角度として算出してもよい。最後に、判定部は、移動量が許容範囲内であるか否かを判定する。これにより、移動量が許容範囲であれば、点検結果、工事現場の区画状況を「異常なし」と判定し、移動量が許容範囲から外れれば、工事現場の区画状況を「異常あり」と判定することができる。このようにして、工事現場を点検員が見回りすること無く、工事現場の区画状況を、時間を要さずに簡便に点検することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、無人航空機によって取得した画像内のマーカーの位置座標を、基準位置と比較してマーカーの移動量を算出し、その移動量が許容範囲内であるか否かを判定する。これによって、工事現場が適切に仕切り部材によって区画されているかを機械的に、すなわち時間を要さず簡便に点検することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る点検システムの模式図である。
【
図3】
図2に示す処理装置の演算ブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る点検システムにおける、(a)基準画像の模式図であり、(b)対象画像の模式図である。
【
図5】第1実施形態に係る点検方法のフロー図である。
【
図6】第1実施形態の変形例に係る点検システムにおける、(a)基準画像の模式図であり、(b)対象画像の模式図である。
【
図7】第2実施形態の変形例に係る点検システムにおける、(a)基準画像の模式図であり、(b)対象画像の模式図である。
【
図8】(a)~(c)は、マーカーの変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る工事現場の区画状況の点検方法及びシステムについて、図面を参照しながら説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る点検システム1の模式図であり、
図2は、
図1に示す点検システム1の概念図である。
図1に示すように、本実施形態に係る点検システム1は、撮像部21を備えた無人航空機(UAV)20を用いた工事現場9の区画状況の点検システム1である。本実施形態では、点検システム1は、例えば工事現場9のフェンスなどの仕切り部材5の配置状態に異常が生じているか否かを点検する際に用いられる。
【0029】
1.点検システム1について
点検システム1は、撮像部21が搭載された無人航空機20と、工事現場9において、区画された領域91に仕切る仕切り部材5の上部に配置され、無人航空機20から視認可能な複数の点検用のマーカー4、4、…とを備えている。さらに、点検システム1は、撮像部21で撮像された点検の対象となる工事現場の対象画像に基づいて、工事現場9の区画状況の点検の処理を行う処理装置10を備えている。この他にも、本実施形態では、点検システム1は、測定原点および測定寸法の基準となる基準シート7をさらに備えてもよい。
【0030】
ここで、仕切り部材5は、例えば、フェンス、壁材、バー、ポール、または、カラーコーン(登録商標)であり、区画された領域91に仕切ることができるのであれば、特に限定されるものではない。マーカー4は、仕切り部材5の上部に配置された状態で、無人航空機20から視認可能な形状および色を有しており、本実施形態では、半球状の着色されたものを挙げることができる。ただし、マーカー4は、無人航空機20から視認可能な形状および色を有していれば、特に限定されるものではない。基準シート7は、矩形状のシートであり、その中心が、後述する測定原点(黒丸部分)に相当し、縦横の寸法が、予め設定された寸法となっており、これが、後述する測定寸法となる。
【0031】
無人航空機20は、所謂ドローンであり、操作装置(図示せず)からの制御信号により操作される。無人航空機20には、撮像部21として、デジタルカメラが搭載されており、撮像した画像は、送信機(図示せず)を介して、処理装置10に送信され、受信機(図示せず)を介して、処理装置10で受信される。
【0032】
2.処理装置10のハードウエアの構成について
図2に示すように、処理装置10は、ハードウエアとして、ROM、RAM等で構成され、工事現場9の区画状況の点検プログラム等が記録された記憶部10Aと、この点検プログラムを実行する演算部10Bと、を備えている。
【0033】
処理装置10には、入力装置31と出力装置32とが接続されている。本実施形態では、入力装置31と出力装置32とが一体となったタッチパネルディスプレイであってもよい。入力装置31は、点検のための初期条件、工事現場9の区画状況の点検プログラム等のデータが入力される。本実施形態では、入力装置31で入力されたデータは、記憶部10Aに記憶される。出力装置32は、撮像部21で撮像された画像データ、演算部10Bで演算された演算結果等が、表示される。
【0034】
本実施形態では、処理装置10は、記憶部10Aおよび演算部10Bで構成されていたが、例えば、入力装置31および出力装置32を備えたものであってもよく、これらが一体となったスマートフォンまたはタブレットなどの携帯端末であってもよい。
【0035】
3.処理装置10のソフトウエアの構成について
本実施形態では、
図3に示すように、処理装置10は、画像登録部11と、基準位置設定部12と、座標取得部13と、移動量算出部14と、判定部15とを備えている。
【0036】
3-1.画像登録部11について
画像登録部11には、
図4(a)に示すように、点検の基準となる工事現場9の基準画像GAが登録されている。具体的には、画像登録部11には、基準画像GAとして、無人航空機20の撮像部21で撮像された工事現場9の撮像画像が登録されている。ここでは、仕切り部材5が適切な位置に配置されており、仕切り部材5に配置されたマーカー4の位置も適正な位置に配置されている。なお、マーカー4は、仕切り部材5の上部の両端に配置されている。
【0037】
基準画像GAは、仕切り部材の画像5Aと、マーカーの画像4Aとが、適正な位置関係となる画像である。基準画像GAは、区画状況が健全な状態にある工事現場9を俯瞰した画像である。なお、本実施形態では、工事現場9に、測定原点および測定寸法の基準となる基準シート7が配置されており、基準画像GAには、基準シートの画像7Aも含まれている。
【0038】
3-2.基準位置設定部12について
基準位置設定部12は、基準画像GAにおいて、評価すべきマーカー4(の画像4A)の基準となる位置(基準位置)を設定する。具体的には、本実施形態では、基準画像GAと後述する対象画像GBとは、撮像部21で撮像した画像であるため、基準位置設定部12は、基準画像GAに含まれるマーカーの画像4A(の中心点)を基準位置として設定する。
【0039】
さらに、基準位置設定部12は、基準シートの画像7Aの中心点を測定原点として設定する。これにより、測定原点(基準シートの画像7Aの中心点)に対して、各マーカーの画像4Aの中心点の座標を、二次元のデカルト座標系で設定することができる。ここで、基準シート7の縦横の寸法は、測定寸法として予め設定されているため、縦横のピクセル数を、実際の長さに換算し、マーカーの画像4Aの各座標を、実際の長さに応じた座標として、換算してもよい。
【0040】
ただし、基準シート7を用いない場合には、特定のマーカー4を基準として、そのマーカーの画像4Aの中心点の座標を測定原点としてもよい。なお、各マーカーの画像4Aの中心点は、手動で特定してもよいが、たとえば、後述する対象画像GBと同じように、マーカーの画像4Aの形状および色を機械学習したものを用いて特定してもよく、マーカーの画像4AのRGB値、または、明度、輝度、および彩度等から、特定してもよい。
【0041】
3-3.座標取得部13について
座標取得部13は、
図4(b)に示すように、評価対象となる対象画像GBに含まれるマーカーの画像4Aの位置座標を取得する。ここでは、対象画像GBは、基準画像GAを撮像した無人航空機(UAV)20と同じ位置(高度も含む)から、同じ方位で撮像部21により、評価したい工事現場9を撮像した画像であることが好ましい。
【0042】
ここで、座標取得部13は、サポートベクターマシーン(SVM)などを利用して、対象画像GBのマーカーの画像4Aと、この画像4Aの形状の特徴量(例えば、マーカーの画像4Aの外縁である円周に沿った複数の点)を、教師データとし、撮像画像からマーカーの画像4Aの特徴量を学習したものを用いてもよい。これにより、マーカーの画像4Aを含む任意の対象画像GBから、マーカーの画像4Aを抽出することができる。たとえば、Haar-like特徴量などの特徴量を用いたカスケード分類器を用いもよい。このようにして、抽出したマーカーの画像4Aの中心点の座標を取得する。
【0043】
ここでも、対象画像GBに含まれる基準シートの画像7Aの中心を測定原点としてもよい。これにより、測定原点(基準シートの画像7Aの中心)に対して、対象画像GBに含まれる各マーカーの画像4Aの中心点の座標を、二次元のデカルト座標系で設定することができる。ここでも、基準シート7の縦横の寸法は、測定寸法として予め設定されているため、対象画像GBに含まれる基準シート7の縦横のピクセル数を、縦横の実際の寸法に換算し、マーカーの画像4Aの各座標を、実際の長さに応じた座標として、換算することができる。ただし、基準シート7を用いない場合には、特定のマーカー4を基準として、そのマーカーの画像4Aの中心点の座標を測定原点とし、マーカーの画像4Aの位置座標を、ピクセル数で特定してもよい。
【0044】
3-4.移動量算出部14について
移動量算出部14は、対象画像GBで取得したマーカーの画像4Aごとに、基準位置に基づいたマーカーの移動量をマーカーの位置座標から算出する。本実施形態では、基準画像GAおよび対象画像GBに含まれる各マーカーの画像4Aを識別し、それぞれ、対応するマーカーの画像4Aに紐付ける。ここで、基準画像GAおよび対象画像GBに含まれる各マーカーの画像4Aは、その周りのマーカーの画像4Aとの位置関係から、工事現場9のどの位置に配置されているかを特定(識別)した上で、これらを対応させてもよく、画像の左上端から順に、識別番号を付与し、これらを対応させてもよい。
【0045】
ここでは、基準画像GAのマーカーの画像4Aとの位置座標と、対象画像GBの対応するマーカーの画像4Aとの位置座標と、から、三平方の定理を利用して、これらの距離を算出する。この算出した距離が、移動量に相当する。一方の移動前のマーカーの画像4Aの基準座標は、(X1、Y1)であり、マーカーの画像4A’の位置座標(X1b、Y1b)に変化していることから、この2点から、移動量を算出する。同様に、他方の移動前のマーカーの画像4Aの基準座標は、(X2、Y2)であり、マーカーの画像4A’の位置座標(X2b、Y2b)に変化していることから、この2点から、移動量を算出する。
【0046】
なお本実施形態では、基準となる基準画像GAも、評価対象となる対象画像GBも、各仕切り部材5に対して、マーカー4は同じ位置に配置された画像である。したがって、マーカー4の移動量を算出すれば、仕切り部材5の移動量を算出したことになる。このようにして、本実施形態では、仕切り部材5の実際の移動量をより正確に測定することができる。
【0047】
3-5.判定部15について
判定部15は、各マーカーの画像4Aごとに、移動量が、予め設定された許容範囲内であるか否か判定する。ここでは、移動量が許容範囲であれば、点検結果、工事現場9の区画状況に異常なしと判定し、移動量が許容範囲から外れれば、工事現場9の区画状況に異常ありと判定することができる。たとえば、
図4(b)では、2つのマーカーの画像4A’、4A’の移動量が許容範囲を超えていることから、画像5A’に対応する仕切り部材5の配置が異常であると判定することができる。
【0048】
4.点検方法について
図5は、第1実施形態に係る点検方法のフロー図である。
まず、配置工程S1において、工事現場9を区画された領域91に仕切る仕切り部材5の上部に、無人航空機20から視認可能な複数の点検用のマーカー4、4、…を配置する。また、配置工程S1において、工事現場9に、測定原点および測定寸法の基準となる基準シート7を配置する。
【0049】
画像取得工程S2では、点検の基準となる工事現場9の基準画像GAを取得する。ここでは、
図4(a)に示すように、無人航空機(UAV)20を飛行させ、工事現場9の上空から、撮像部21で工事現場9を撮像した画像を、基準画像GAとして取得する。この際に、配置した複数のマーカー4、4、…と、基準シート7とが、写り込むように、基準画像GAを取得する。これにより、画像登録部11に、工事現場9の区画状況のうち、点検の基準となる工事現場9の基準画像GAが登録される。
【0050】
次に、基準位置設定工程S3では、上述したように、基準画像GAに対して、マーカーの基準位置(基準座標)を設定する。なお、上述した方法では、基準位置設定部12により、基準シートの画像7Aを用いて、この設定を自動的に行ったが、たとえば、手動によりこれらの基準位置(基準座標)を設定してもよい。この基準画像GAにおける基準位置を用いて、評価すべき工事現場9の区画状況の良否を確認する(点検する)ことができる。
【0051】
次に、撮像工程S4により、点検の対象となる工事現場9の対象画像GBを、無人航空機(UAV)20の撮像部21で取得する。ここでは、
図4(b)に示すように、無人航空機20を飛行させ、工事現場9の上空から、撮像部21で工事現場9を撮像した画像を、対象画像GBとして取得する。なお、撮像工程S4では、定位置から工事現場9を撮像できるように、無人航空機20の飛行および撮像部21による撮像を、自動制御で行ってもよく、これらを手動で行ってもよい。
【0052】
次に、座標取得工程S5では、座標取得部13により、対象画像GBに含まれるマーカーの画像4Aごとの位置座標を取得する。なお、ここでは、上述した座標取得部13で説明した内容に沿って行うが、ここでも、たとえば、手動によりこれらのマーカーの画像4Aごとの位置座標を取得してもよい。ここで、マーカー4は、無人航空機20から視認可能なマーカーであるので、対象画像GBに含まれるマーカーの画像4Aを容易に識別し、対象画像全体に対して、対象画像GBに含まれるマーカー4ごとの位置座標を取得することができる。なお、この位置座標とは、工事現場9を平面視したときの位置座標であり、実際の寸法から特定してもよく、対象画像GBのピクセル数から特定してもよい。
【0053】
さらに、移動量算出工程S6では、移動量算出部14により、取得したマーカー4、4ごとに、基準位置に基づいたマーカーの移動量を、マーカーの位置座標から算出する。ここでは、上述した如く、基準画像GAおよび対象画像GBに含まれる各マーカーの画像4Aを識別し、それぞれ、対応するマーカーの画像4Aに紐付け、紐付けられたマーカー4同士の距離を算出する。なお、これらの移動量の算出も、移動量算出部14によらず、手動で行ってもよい。
【0054】
さらに、判定工程S7では、判定部15により、各マーカー4の移動量が許容範囲内であるか否かを判定する。これにより、移動量が許容範囲であれば、点検結果、工事現場9の区画状況を「異常なし」と判定し、移動量が許容範囲から外れれば、工事現場9の区画状況を「異常あり」と判定することができる。このようにして、工事現場9を点検員が見回りすること無く、工事現場9の区画状況を、時間を要さずに簡便に点検することができる。なお、これらの判定も、判定部15によらず、手動で行ってもよい。
【0055】
本実施形態では、配置工程S1において、工事現場9に基準シート7を配置し、撮像工程S4において、対象画像GBに基準シートの画像7Aが含まれるように、対象画像GBを取得した。これにより、座標取得工程S5において、測定原点からのマーカー4の位置座標を実寸法に応じた座標として取得し、移動量算出工程S6において、測定寸法に合わせたマーカー4の移動量を実寸法に応じて、算出することができる。
【0056】
図6は、第1実施形態の変形例に係る点検システムにおける、(a)基準画像GAの模式図であり、(b)対象画像GBの模式図である。この変形例では、配置工程S1において、工事現場9に、基準シート7を複数(その一例として2枚)配置し、画像取得工程S2において、
図6(a)に示す基準画像GAを取得する。次に、座標取得工程S5において、複数の測定原点を用いて、基準画像GAに対して、対象画像GBを位置合わせした後、マーカー4の位置座標を取得する。具体的に、基準画像GAに対して、対象画像GBを位置合わせするとは、これらを撮像した方向の方位および縮尺を合わせることをいう。
【0057】
この態様によれば、配置工程S1において、工事現場9に基準シート7を複数配置し、撮像工程S4において、対象画像GBに基準シートの画像7Aが含まれるように、対象画像GBを取得する。これにより、座標取得工程S5において、複数の測定原点を用いて、基準画像GAに対して対象画像GBを位置合わせするため、マーカーの位置座標とその移動量を正確に取得することができる。なお、移動量算出工程S6において、2つの測定原点間の実距離と、これらの間のピクセル数とに基づいて、1ピクセルあたりの実長さを算出すれば、各マーカー4の位置座標をより正確に取得することができる。
【0058】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態に係る点検システムおよび点検方法を説明する。
図7は、第2実施形態の変形例に係る点検システムにおける、(a)基準画像GAの模式図であり、(b)対象画像GBの模式図である。本実施形態が、第1実施形態と主に相違する点は、工事現場9における区画状況と、基準画像GAに、仮設計画図の画像を用いた点であり、第1実施形態と同じ構成は、その詳細な説明を省略する。
【0059】
本実施形態では、画像取得工程S2において、基準画像GAとして、予め用意された工事現場9の仮設計画図の画像を取得する。画像登録部11には、この仮設計画図の画像が、基準画像GAとして、登録されている。
【0060】
ここでは、基準位置設定工程S3において、仮設計画図(工事現場9)に対して、マーカーの基準位置を設定する。具体的には、本実施形態において、仮設計画図では、全体領域と2つの部分領域とで、仕切られており、基準位置設定部12は、全体領域の画像91Aに対して、全体全領域の画像91Aの隅部の点4APを設定し、さらに、これらの点を結ぶ直線5ALを、マーカー4の基準位置として設定する。なお、直線5AL上には、フェンスに相当する仕切り部材(
図7(b)の画像5Aに相当)が配置されている。同様に、基準位置設定部12は、部分領域(の画像92A、93A)にも、部分領域の画像92A、93Aの隅部の点4BP、4CPを設定し、さらに、これらの点を結ぶ直線5BL、5CLを、マーカーの基準位置として設定する。なお、使用目的に合わせた部分領域に応じて、各隅部の点に色が付されていてもよい。さらに、2つの(複数の)基準シート7を配置する測定原点の位置として、位置合わせ用の点7B、7Bが、設定されている。なお、部分領域92A、93Aは、同じ目的で使用するため、同じ色のマーカーが配置されている。
【0061】
移動量算出工程S6において、位置座標を取得したマーカーごとに、その位置座標と、基準位置(直線5AL~5CL)とを用いて点と直線と公式から、これらの距離を算出し、算出した距離を、マーカー4の移動量としてもよい。また、基準画像GAの直線5AL~5CLと、対象画像GBの対応する仕切り部材の画像5A~5Cごとの成す角度を、算出し、これをマーカー4の移動量としてもよい。
【0062】
ここで、撮像工程S4で設定された対象画像GBは、
図7(b)に示すようであり、対象画像GBにおける資材または重機(たとえば重機)が配置される部分領域の画像93Aと、基準画像GAにおける部分領域94A、95Aとが相違する。このような場合であっても、各マーカー4の移動量を特定すれば、対象画像GBで撮像された区画状況が適切ではない(異常である)と、判定工程S7において、判定部15により、簡単に把握することができる。
【0063】
なお、ここで、領域の使用目的に合わせて、各マーカーの色を特定してもよいが、たとえば、マーカーの色が同じ場合には、基準位置設定工程S3では、たとえば、対象画像GBのうち、マーカーのある画像を起点として、最も近いマーカーを特定する。さらに、特定したマーカー4から、最も近いマーカーを特定するようなことを繰り返すことにより、その領域を区画するための仕切り部材に配置されたマーカーであると識別することができる。
【0064】
この態様によれば、基準画像GAに、工事現場9の仮設計画図の画像を用いるため、仮設計画ごとに、基準画像GAと対象画像GBとを簡単に対比して、マーカーの移動量を算出することができる。さらに、たとえば、仮設計画図に、位置合わせ用の点7B、7Bを設定し、ここに、基準シート7、7の測定原点を合わせることにより、基準画像GAと対象画像GBとの位置合わせを行うが、たとえば、建屋の四隅92Bにマーカーを配置し、仮設計画図(基準画像GA)の建屋の四隅92Bの位置座標と、対象画像GBの建屋の四隅92Bの位置座標とを用いて、基準画像GAと対象画像GBと位置合わせを行ってもよい。
【0065】
図8(a)~(c)は、マーカー4の変形例を示した図である。たとえば、
図8(a)に示すマーカーは、資材の置き場に用いるマーカーであり、
図8(b)に示すマーカーは、工事車両の置き場に用いるマーカーである。
図8(a)、(b)に示す、左側の部分41には、同じ色が付されており、右側の部分42、43には、異なる色が付されている。すなわち、その一部に、同じ色を付すことにより、その領域の使用目的(置き場の使用)が同じであることを意味し、その一部に、異なる色を付すことにより、領域で使用されるもの(資材または工事車両)を区別している。このように、1つのマーカー4を、用途の違い、配置されるものの違いなど、で色分けすることにより、同種のマーカー4を結べば1つの領域を設定することができる。
【0066】
さらに、
図8(c)に示すように、マーカー4の上側の部分44の色が、安全通路側であり、下側の部分45の色が、作業領域側であると設定してもよい。このように、マーカー4を色分けして、その使用用途に合わせて、用途およびその用途として用いられる方向を、設定することができる。また、仮設トイレ、現場事務所などの一部(壁部)を仕切り部材とし、これらの上部にマーカー4を配置してもよい。また、マーカー4は、シールなどであってもよい。
【0067】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0068】
1:点検システム、4:マーカー、4A:マーカーの画像、5:仕切り部材、7:基準シート、7A:基準シートの画像、9:工事現場、10:処理装置、11:画像登録部、12:基準位置設定部、13:座標取得部、14:移動量算出部、15:判定部、20:無人航空機、21:撮像部、GA:基準画像、GB:対象画像