(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072939
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】3次元変位計測システム
(51)【国際特許分類】
G01C 7/04 20060101AFI20240522BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240522BHJP
G01C 15/04 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G01C7/04
G01C15/00 102C
G01C15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183838
(22)【出願日】2022-11-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2022年9月 5日掲載 https://www.tobishima.co.jp/press_release/detail/20220824092607.html
(71)【出願人】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】勝部 峻太郎
(72)【発明者】
【氏名】松田 浩▲朗▼
(72)【発明者】
【氏名】藤本 克郎
(72)【発明者】
【氏名】古宮 正勝
(72)【発明者】
【氏名】及川 典生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】飯田 大貴
(57)【要約】
【課題】GNSS計測技術と3次元データ計測手段によるレーザー測量、写真測量、地上型3Dスキャナーなどでの3次元データ計測の技術とを組み合わせ、もって地上や空中からの写真計測技術を用いて座標値が確定した3次元の面的な計測が自動的に、連続的に行えて正確な変位計測が出来る変位計測システムを提供する。
【解決手段】GNSS計測技術及び地上、空中からの3次元データ計測手段による3次元データ計測技術の双方技術を用いた変位計測システムであり、GNSS衛星16より送出された位置情報信号22を受信して位置座標を取得したアンテナの設置位置を、前記3次元データ計測に用いられる位置座標を有する標定点18の代用とし、代用した前記標定点18を用いて位置座標を有する3次元データを生成し、時間をあけて行われる3次元データの計測により複数生成される位置座標を有する3次元データの変動により計測領域21の変位が計測できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSS計測技術及び地上、空中からの3次元データ計測手段による3次元データ計測技術の双方技術を用いた変位計測システムであり、GNSS衛星より送出された位置情報信号を受信して位置座標を取得したアンテナの設置位置を、前記3次元データ計測に用いられる位置座標を有する標定点の代用とし、代用した前記標定点を用いて位置座標を有する3次元データを生成し、時間をあけて行われる3次元データの計測により複数生成される位置座標を有する3次元データの変動により計測領域の変位が計測できる、
ことを特徴とする3次元変位計測システム。
【請求項2】
前記アンテナの上方に配置した標定点形成部材に計測標識模様をペイントして計測標識を構成し、該計測標識を前記位置座標を有する標定点取得の目印とした、
ことを特徴とする請求項1記載の3次元変位計測システム。
【請求項3】
前記標定点形成部材は地表面と略面一になるよう設置された、
ことを特徴とする請求項1記載の3次元変位計測システム。
【請求項4】
前記アンテナには傾斜センサが設置され、アンテナ傾斜時に行われた標定点取得作業から得られた位置座標の補正が前記傾斜センサの計測値を用いて行える、
ことを特徴とする請求項1記載の3次元変位計測システム。
【請求項5】
計測領域に複数設置された対空標識部と、該対空標識部内に設けられたアンテナと、前記アンテナに送出される位置情報信号により位置座標を有するアンテナ設置位置が計測できるアンテナ設置位置計測手段と、前記対空標識部の表面に設けられた計測標識と、前記位置座標を有するアンテナ設置位置を位置座標を有する計測標識位置に補正する計測補正部と、補正された前記位置座標を有する計測標識位置を、位置座標を有する標定点として用い、地上または空中の3次元データ計測手段が取得する3次元データから位置座標を有する3次元データを生成する生成手段を有する、
ことを特徴とする3次元変位計測システム。
【請求項6】
時間をあけ複数回地上または空中の3次元データ計測手段から3次元データを取得し、取得した3次元データから位置座標を有する3次元データを複数生成し、生成された複数の位置座標を有する3次元データから計測領域の変位が計測できる、
ことを特徴とする請求項5記載の3次元変位計測システム。
【請求項7】
前記計測される3次元データは、3次元点群データである、
ことを特徴とする請求項1または請求項5記載の3次元変位計測システム。
【請求項8】
容器状の標定点形成部材と、前記標定点形成部材内の所定位置に固定され位置情報を取得するためのGNSSアンテナと、前記標定点形成部材の表面に設けられ3次元データを取得するための計測標識とを備えた、
ことを特徴とする標識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元変位計測システムに係り、特に、GNSS計測技術とドローン計測など3次元データ計測手段によるレーザー測量、写真測量、地上型3Dスキャナー測量などで得られる3次元データ計測の技術を組み合わせて構成した3次元変位計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設工事などでは工事に伴い周辺地山や構造物に変位が発生するおそれがあるため、その変位の監視システムの構築は極めて重要な事項とされている。
従来では、地表面などの変位計測に関して、伸縮計やGNSS計測、トータルステーション等が利用されている。特に、GNSS計測は高精度かつリアルタイムに計測可能であることから、トンネル等の掘削に伴い地表面への変動が予想される箇所への適用が行われていた。
【0003】
しかしながら、GNSS計測は、アンテナを設置した地表面位置の「点」の箇所での計測であり、より面的に詳細に計測を行うには、複数箇所でのアンテナの増設が必要となり、そのためアンテナ設置のためのコストが多大となるとの課題があった。
【0004】
一方で、例えばドローンによる写真計測がいわゆる点群計測技術(面的計測技術)として知られている。かかるドローンによる写真計測は、面的に計測が可能であり、土工の出来形計測などに活用されている。
【0005】
しかし、ドローンによる写真計測はいわゆる相対計測技術のため、座標値が確定した、換言すればスケールの確定した3次元の面的な計測を行うには、3次元座標値が既知の標定点を複数必要とされる。すると、ドローンによる写真計測で3次元の面的な変位計測を行うには、別途、座標値が既知の標定点についての連続的な計測が必要となり、その計測労力は極めて多大になるとの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-146546号公報
【特許文献2】特開2020-052029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来の課題を解決するために創案されたものであり、GNSS計測技術と例えばドローン計測など3次元データ計測手段によるレーザー測量、写真測量、地上型3Dスキャナーなどでの3次元データ計測の技術とを組み合わせ、もってドローンなど地上や空中からの写真計測技術を用いて座標値が確定した3次元の面的な計測が自動的に、連続的に行えて正確な変位計測が出来る変位計測システムを提供することを目的とするものである。
【0008】
すなわち、GNSS衛星から送出された位置情報信号を地上の計測領域に設置したGNSSアンテナで受信させ、該受信した位置情報信号を用いて取得した座標値の確定したアンテナ設置位置をドローンなど地上や空中からの写真計測など3次元点群計測を行う際に座標値が確定した標定点として使用し、もってドローンなどでの写真計測など3次元点群計測を行うものであり、座標値の確定した標定点の計測労力を削減しながら、3次元での正確な変位計測が自動的に連続的に計測可能とした3次元変位計測システムを提供することを目的とするものである。
【0009】
尚、上記目的達成に関連の技術として例えば、特開2018-146546号公報や特開2020-052029号公報のように、対空標識にGNSSアンテナと電源バッテリーを搭載するものを用いた装置が知られている。
【0010】
従来、前記のドローンなどの3次元点群計測にあっては、例えばトータルステーションなどの測量機器を用いて1つ1つの標定点で位置計測を行い、これによって座標値が確定した標定点や検証点を取得していた。計測領域の正確な位置が確定した3次元データ作成には正確な座標値が確定した標定点や検証点の取得が必要となるためである。
【0011】
しかるに、測量機器を用いて標定点の座標値を取得するのはあまりにも労力が大きいといわざるを得ず、特開2018-146546号公報や特開2020-052029号公報に示された発明は上記課題を解決する発明ともいえる。
【0012】
しかしながら前記特開2018-146546号公報や特開2020-052029号公報に示された発明は対空標識(標定点、検証点)の設置治具が内蔵バッテリーによる短時間のみの稼働であることや、長期間の屋外使用に耐えうる防塵防水機能を有しないものであり、さらに前記対空標識設置治具の直上を人や車両が通行できる構造的な耐久性を有していないなど課題があった。
【0013】
そして、変位計測のように連続的に、定期的に例えばドローン計測を実施するような場合には、その都度、標定点、検証点となる対空標識を設置する設置治具の設置作業あるいは撤去作業さらにはトータルステーションなどの計測機器を用いての位置計測を必要とするものであったのである。本発明はこれら課題も解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
GNSS計測技術及び地上、空中からの3次元データ計測手段による3次元データ計測技術の双方技術を用いた変位計測システムであり、GNSS衛星より送出された位置情報信号を受信して位置座標を取得したアンテナの設置位置を、前記3次元データ計測に用いられる位置座標を有する標定点の代用とし、代用した前記標定点を用いて位置座標を有する3次元データを生成し、時間をあけて行われる3次元データの計測により複数生成される位置座標を有する3次元データの変動により計測領域の変位が計測できる、
ことを特徴とし、
または、
前記アンテナの上方に配置した標定点形成部材に計測標識模様をペイントして計測標識を構成し、該計測標識を前記位置座標を有する標定点取得の目印とした、
ことを特徴とし、
または、
前記標定点形成部材は地表面と略面一になるよう設置された、
ことを特徴とし、
または、
前記アンテナには傾斜センサが設置され、アンテナ傾斜時に行われた標定点取得作業から得られた位置座標の補正が前記傾斜センサの計測値を用いて行える、
ことを特徴とし、
または、
計測領域に複数設置された対空標識部と、該対空標識部内に設けられたアンテナと、前記アンテナに送出される位置情報信号により位置座標を有するアンテナ設置位置が計測できるアンテナ設置位置計測手段と、前記対空標識部の表面に設けられた計測標識と、前記位置座標を有するアンテナ設置位置を位置座標を有する計測標識位置に補正する計測補正部と、補正された前記位置座標を有する計測標識位置を、位置座標を有する標定点として用い、地上または空中の3次元データ計測手段が取得する3次元データから位置座標を有する3次元データを生成する生成手段を有する、
ことを特徴とし、
または、
時間をあけ複数回地上または空中の3次元データ計測手段から3次元データを取得し、取得した3次元データから位置座標を有する3次元データを複数生成し、生成された複数の位置座標を有する3次元データから計測領域の変位が計測できる、
ことを特徴とし、
または、
前記計測される3次元データは、3次元点群データである、
ことを特徴とし、
または、
容器状の標定点形成部材と、前記標定点形成部材内の所定位置に固定され位置情報を取得するためのGNSSアンテナと、前記標定点形成部材の表面に設けられ3次元データを取得するための計測標識とを備えた、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、GNSS計測技術と地上または空中の3次元データ計測手段による3次元データの計測技術とを組み合わせ、もってGNSS計測で計測した座標値が確定した対空標識(標定点)を用い、地上または空中の3次元データ計測手段による座標値を有する3次元データの計測で3次元の面的な変位計測が行えるシステムが提供できるとの優れた効果を奏する。
【0016】
すなわち、複数のGNSSアンテナで計測した「点」を、座標値が確定した対空標識である標定点あるいは検証点として連続的に用いることが出来、この複数の対空標識を使用してドローン計測など3次元データ計測手段による3次元データの計測を行うことで、座標値が確定した対空標識の計測労力を削減しながら、3次元での面的な変位計測が可能とした3次元変位計測システムを提供できるのである。
【0017】
対空標識の1つ1つを前記トータルステーションなどの測量機器で計測し、座標値が確定した対空標識をその都度形成する必要がなく、特開2018-146546号公報や特開2020-052029号公報に示されたシステムのように対空標識の設置治具が内蔵バッテリーによる短時間のみの稼働であることや、長期間の屋外使用に耐えうる防塵防水機能を有さず、さらに対空標識設置治具の直上を人や車両が通行できる構造的な耐久性を有していないなどの問題がなく、変位計測のように連続的に、定期的に例えばドローン計測を実施するような場合には、その都度、対空標識設置治具の設置作業あるいは撤去作業さらにはトータルステーションなどの測量機器を用いての位置計測を必要としない変位測定システムが構築できるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の概略構成を説明する概略構成説明図(1)である。
【
図2】本発明の概略構成を説明する概略構成説明図(2)である。
【
図3】本発明の概略構成を説明する概略構成説明図(3)である。
【
図4】本発明の対空標識部の構成を説明する構成説明図である。
【
図6】対空標識部の設置例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、
図1に示す制御装置23を有しており、該制御装置23は、信号やデータなどを送受信する受信部31、送信部32、GNSSアンテナ1が受信した位置情報信号22あるいは地上または空中のドローン36など3次元データ計測手段から得られた3次元データ、例えば3次元点群データを入力して処理する制御部28、処理されたデータを格納保存するデータ格納部33、ディスプレイなどの表示部34、キーボードなどの入力部35を備えている。
【0020】
そして、GNSS計測技術(
図2参照)及び地上または空中の3次元データ計測手段から3次元データが取得できる、例えばドローン36などからの空撮による写真データなどに基づく3次元データ、例えば3次元点群データの取得計測技術(
図3参照)の双方技術を用い、それらで得られたデータを前記制御装置23で処理し、もって所定の計測領域の変位を計測するシステムとして構築してある。
【0021】
すなわち、変位計測すべき地上の計測領域21に設置した複数のGNSSアンテナ1にGNSS衛星16から位置情報信号22を送信し、GNSSアンテナ1が位置情報信号22を受信して計測したアンテナ設置位置を解析して位置座標を有する地上基準点を取得する。次いで、この地上基準点を、例えばドローン36などで空撮して写真データなどに基づく3次元データ、例えば3次元点群データを取得し、該3次元点群データなどの3次元データを使用して位置座標を有する3次元データを生成する際、前記GNSS計測技術で取得した地上基準点を位置座標が確定した標定点18、検証点19として使用できる変位計測システムなのである。
【0022】
よって、本発明では、例えばドローン36で空撮して行う写真計測につき、所定の計測領域21において複数回の3次元データ、すなわち3次元点群データの取得毎に位置座標を有する標定点18を計測しなければならない作業が不必要となった。
すなわち、位置座標を有する標定点18の計測労力が大幅に削減でき、位置座標が確定した3次元画像での正確な変位計測が自動的に連続的に、定期的に行えるものとなった。
【0023】
上記の構成であれば、GNSS計測技術で計測したGNSSアンテナ1の設置位置の位置座標情報(地上基準点)を、ドローン36など空撮による写真などに基づく3次元点群データの計測に用いられる位置座標を持った標定点18として代用でき、代用した標定点18を用いて位置座標を有する3次元データ、すなわち実際のスケールを有する例えば3次元点群データが生成できて取得でき、さらに時間をあけて複数生成された前記位置座標を有する3次元点群データの変動により計測領域21の変位が確実に計測出来るのである。
【0024】
尚、本発明では前記GNSSアンテナ1の上方に配置される標定点形成部材2の蓋の表面部には計測標識模様がペイントされて計測標識20としており、該計測標識20を前記位置座標を有する標定点18の取得の目印としている。
さらに、前記標定点形成部材2の蓋、すなわち計測標識20の表面部は地表面25と略面一になるよう設置され、前記標定点形成部材2の設置によっても人や車の往来が妨げられないものとなっている。
【0025】
また、前記埋設したGNSSアンテナ1に該GNSSアンテナ1の傾斜が検出出来る傾斜センサ8を設置すれば、例えば地盤の変動によってGNSSアンテナ1が傾斜したとしても、前記標定点18から取得した位置座標値の補正が前記傾斜センサ8で検出されたデータを使用して制御部28内の補正部26によって補正制御出来るものとなっている。
【0026】
図1乃至
図4は本発明のシステム構成を概略的に説明した構成説明図である。
図1乃至
図4から理解されるように、計測領域21内には、計測領域21を囲むように複数設置された複数の標識装置(対空標識部17)と、該対空標識部17の内部に設けられたGNSSアンテナ1が設置されている。尚、
図2、
図3から理解される様に、複数の対空標識部17に常時電力を付与出来るよう前記複数の対空標識部17と外部の電源15とが接続されている。よってGNSSアンテナ1に使用される電力あるいは対空標識部17が有する制御部や送受信部(図示せず)に使用される電力は内蔵バッテリーから与えられるものではないため、長期間、確実安全に電力を供給することが出来、もってスムーズな変位計測システムの運営ができる。
【0027】
複数のGNSSアンテナ1にはGNSS衛星16から位置情報信号22が送出され、GNSSアンテナ1は該位置情報信号22を受信する。受信された位置情報信号22は対空標識部17の送信部から外部の制御装置23の受信部31を介し、制御部28に有するGNSSアンテナ設置位置の座標値を解析するGNSSアンテナの座標値解析部24に送出される。かかる送出はインターネット37を介して行っても良いし、直接送出出来るように構成しても良い。
【0028】
そして、該アンテナの座標値解析部24によってGNSSアンテナ1における設置位置の座標値が検出される。
【0029】
ところで、GNSSアンテナ1は対空標識部17の構成部材である標定点形成部材2の内部側に収納されて取り付けられている。尚、対空標識部17は、標定点形成部材2、標定点形成部材2の内部に取り付けられたGNSSアンテナ1及び標定点形成部材2の蓋の表面部に形成された計測標識20を有して構成される。
図4にその詳細の構成を示す。
【0030】
本発明によるGNSSアンテナ1は略円盤状をなすアンテナ本体部3と該アンテナ本体部3の底部略中央から連結されて垂下する固定用棒状部4を有して構成されている。
【0031】
符号5は、GNSSアンテナ1を固定する固定具であり、該固定具5はその中央に前記固定用棒状部4が貫挿してアンテナ本体部3を固定する固定孔6が設けられている。
標定点形成部材2は、GNSSアンテナ1を所定の位置に固定して収納する収納容器状の部材でもある。
【0032】
そして、標定点形成部材2は、略円筒状をなす第1容器構成部材と第2容器構成部材10によって構成される。しかし、標定点形成部材2は、複数の構成部材で構成せず、円筒状の単体の容器状部材で構成しても構わない。そして、通常、標定点形成部材2は円筒状の枡として構成されるが、枡に限定されるものでもない。
【0033】
第1容器構成部材7は、略円筒状をなして構成され、前記前記GNSSアンテナ1を固定すべく、地中に埋設される。すなわち、所定箇所の地中が掘削され、その掘削された箇所に、GNSSアンテナ1の固定用棒状部4が貫挿して固定された固定具5及び第1容器構成部材7が設置される。
【0034】
ここで、前記固定具5は第1容器構成部材7と連結されて一体化されているのが好ましいが一体化されていなくとも構わない。尚、固定具5には傾斜センサ8が取り付けられている。
【0035】
図4に示されるように、第1容器構成部材7の底面側部分及び第1容器構成部材7と固定具5との間にはGNSSアンテナ1の保護のため砂などの湿気吸収材9を介在させておくと良い。
【0036】
前記第1容器構成部材7の上面部には、略円筒状をなす第2容器構成部材10との接続部13が構成される。該接続部13は、第1容器構成部材7の上面において、内側に折曲した段部片11と該段部片11の先端から略垂直に立ち上がる突出片12を有して構成されている。
【0037】
しかるに、前記接続部13に略円筒状をなす第2容器構成部材10の下部が嵌め込まれて接続され、もって接続された第1容器構成部材7と第2容器構成部材10により収納容器状の標定点形成部材2が構成されるものとなる。
【0038】
尚、接続部13に略円筒状をなす第2容器構成部材10の下部が嵌め込まれて接続される際、第1容器構成部材7の突出片12外側面と第2容器構成部材10の下部内側面の間にはシール材が介在されると共に、第2容器構成部材10の下部外周面にシールリング14が取り付けられて締め付けられ、もって第1容器構成部材7と第2容器構成部材10の一体性が図られている。
【0039】
図4に示す様に、第2容器構成部材10の内部側はGNSSアンテナ1の略円盤状をなすアンテナ本体部3を収納する収納空間部となっており、先に設置された第1容器構成部材7の内部のように湿気吸収材9は充填されない。
【0040】
符号20は標定点形成部材2の蓋の表面に設けられた計測標識であり、該計測標識20が設けられた蓋は設置された第2容器構成部材10の上面開口を塞ぐよう設置される。尚、該計測標識20が設けられた蓋はGNSS衛星16からの位置情報信号22がGNSSアンテナ1に受信できる材質で構成されることが重要である。換言すれば位置情報信号22が標定点形成部材2内に設置されたGNSSアンテナ1に届かず、遮断される様な材質で作製してはならない。
【0041】
さらに、計測領域21がその上に人や車両が走行しなければならない領域であることもあり、その加重に耐えられる材質であることも要求される。上記要求が満たされる材質であれば材質の種類は限定されない。例として、一定の剛性を備えた合成樹脂材で形成した標定点形成部材2の蓋が挙げられる。
【0042】
上記のように標定点形成部材2の敷設につき、埋設方式を採用することで標定点形成のための部材や装置はすべて地中内に設置される。そのため、その計測領域21の景観を損ねず、また、対空標識部17の直上を通行する人・車両の障害物とならない。
【0043】
尚、計測標識20の模様例は
図5に示すとおりであり、いずれの模様例でも構わない。さらに、★型、 X型、 +型、 〇型や、その他任意の形状に模様を塗色したものでもよい。尚、計測標識20の模様の配色は、上空からの視認性のよいものを選択するのが好ましい。なぜなら、標定点の計測に用いられる計測標識20は、地上、空中からドローン36など3次元計測手段によって認識できることが必要であり、そのため計測標識20は地表面など表面に必ず、露出されて設置されていることが必要だからである。これは、GNSS衛星14がGNSSアンテナ1に位置情報信号22を送信する際、GNSSアンテナ1は必ずしも表面に露出していなくともよく、位置情報信号22が受信できれば、表面から隠れた箇所にGNSSアンテナ1が設置されていても構わないことと大きく相違するところである。本発明はかかる違いを利用して創案したものともいえるのである。また、景観に配慮する場合、周囲環境と同系色を選択してもよい。
【0044】
図4に示すように、GNSSアンテナ1が位置情報信号22を受信する受信位置、すなわち、アンテナ設置位置は、空撮による写真計測で使用する標定点の位置、すなわち、標定点形成部材2の蓋表面部に設けられた計測21の設置位置と異なる。従ってあらかじめこの違い分を補正係数として認識しておき、標定点の位置座標解析の処理を行うのである。
【0045】
図3に示すように、座標値解析部24でアンテナ設置位置の位置座標が解析されるが、この解析値は補正部26によって前記補正係数が加味されて標定点の座標値解析部27で解析処理され、空撮による写真計測で使用する位置座標の確定した標定点18が生成されることになる。
【0046】
すなわち、GNSSアンテナ1の計測においては、アンテナ本体部3における上面中心の座標値が計測される。一方、ドローン36など例えば空撮の写真計測の際には、計測標識20の中心の座標値が必要となる。前記のように、アンテナ本体部3の上面中心位置と計測標識20の中心位置は上下方向に間隔があいており、一致していない。そのため、初回の計測のみは例えば計測機を使用して計測標識20の中心位置を計測しておき、双方の中心のxyz方向のオフセット値を取得しておくのである。
【0047】
そして、2回目以降は、GNSSアンテナ1の中心位置の座標値に前記取得したオフセット値を加算する補正制御を補正部26により行えば、計測標識20の中心位置の座標値、すなわち標定点18を得ることができるものとなる。
【0048】
なお、補正部26は、前述したように、GNSSアンテナ1の傾斜が検出出来る傾斜センサ8からの傾斜データを入力し、地盤の変動などによってGNSSアンテナ1が傾斜したときなどに対応すべく前記標定点18から取得した位置座標値の補正制御も行う構成になっている。
尚、xyz軸に対するGNSSアンテナ1の傾斜による回転が計測できる装置や方法があれば、補正デバイスは傾斜センサ8に限定されるものではない。
【0049】
さらに、対空標識部17自体が地盤の変動によって移動してしまい連続的にGNSS衛星16とGNSSアンテナ1で計測している位置座標情報が平行移動して変動してしまうこともある。しかしながら、その変動分についても変動データが対空標識部17あるいはGNSS衛星16などから制御装置23へ送出されるものとなっており、前記補正部26で解析出来る。かかる補正制御も補正部26で行うものとなっている。
【0050】
本発明では前述のように、各々のオフセット情報を取得して計測した位置座標を補正制御することができ、もって、GNSSアンテナ1の設置位置が移動したり、変位したとしても、その移動や変位を補正してリアルタイムに高精度の標定点18の位置座標を求めることが出来るのである。
【0051】
ところで、GNSSアンテナ1自体を地表面25と面一になるよう露出させて設置することも考えられる。このように設置すれば、ドローン36など空撮の写真計測の際に、直接GNSSアンテナ1の表面部を計測標識20として使用出来、前記したオフセット補正をする必要がないからである。しかしながら、このような構成であると、その上に人や車両が走行しなければならない場合もあり、GNSSアンテナ1はその加重に耐えられない。また、長期間の耐久性にも問題が生じる。
【0052】
そこで、本発明では、位置情報信号22を受信するGNSSアンテナ1は地表面より下側に配置し、前記GNSSアンテナ1を保護すべく、蓋で塞ぎ、該蓋の表面に標定点計測用の計測標識20を形成する構成を採用したのである。すなわち、前記位置情報信号22は前記蓋を通ってGNSSアンテナ1に届くが、空撮などによる3次元データの取得にあっては、地表面に露出した計測標識20でなければ、3次元点群データなどの3次元データを取得できないからである。本発明の大きな特徴である。
【0053】
しかるに、前記座標値が確定した標定点18を用いて、空中あるいは地上から空撮などして3次元データ、例えば3次元点群データを取得し、該3次元データから座標値が確定した3次元データ、例えば3次元点群データが制御装置23における制御部28の生成部29で生成されるものとなる。
【0054】
さらに、空中あるいは地上から時間をあけて複数回空撮などして複数の座標値が確定した3次元データ、例えば3次元点群データを生成部29で生成し、生成された複数の座標値が確定した3次元データ、例えば3次元点群データから計測領域21の変位が変位計測部30で計測できるシステムが構築できるものとなる。
【0055】
ところで、ドローン36などによる空撮の写真計測の解析作業の際には、計測標識20を用いて、3次元データへ座標値を付与するが、全ての計測標識20に座標値を付与する必要はない。
【0056】
図6に示す様に、表面に計測標識20を有する対空標識部17には、標定点18になるものと検証点19になるものとがあり、標定点18は3次元データへの座標値付与に用いられるが、検証点19は座標値が付与されない。検証点19は、生成した座標値を有する3次元データに対し、計測値と解析値の差分により、解析精度を算出するために用いられるものだからである。前記算出も補正部26で行う。
【0057】
ところで、ドローン36に3Dレーザースキャナーを搭載し、上空から広範囲の3次元データ、例えば3次元点群データを取得することもできる。よって、本発明は、ドローン36による写真計測に限定されるものではない。
尚、本発明であれば、地上型レーザースキャナーやMMSでは計測不可能な場所、山林など空中写真計測が適さない現場でもその変位計測ができるものとなっている。
【0058】
(まとめ)
本発明は、地上の計測対象領域に対して、上空からドローン36などの飛行物によって面的に複数箇所から空撮などを行う。前記空撮により取得した3次元データ、例えば3次元点群データから、対象領域の形状をひとまず3次元で取得する。
【0059】
そして、取得した3次元データ、例えば3次元点群データ内の計測標識20に座標値を付与することにより、座標系が確定し、前記取得した3次元データ、例えば3次元点群データはスケールを持つことができる。よって前記計測標識20に座標値を付与することは必須である。そして本発明では、この座標値の付与につき、GNSS計測の手法を利用して行った。
【0060】
すなわち、GNSS衛星16から位置情報信号22を送出し、地上のGNSSアンテナ1が前記位置情報信号22を受信する。そして、地上のGNSSアンテナ1の設置位置は連続的に座標値を持つことになり、この座標値を空撮により取得した3次元データの座標値として代用したのである。
【0061】
前記したように、従来では、対空標識1つ1つをトータルステーション(計測機)で計測し、座標値が付与された対空標識部17を形成する必要があった。しかし前記方法では極めて労力が大きい。
【0062】
そこで本発明では、GNSS衛星16から送出される位置情報信号22を受信するGNSSアンテナ1を内蔵した対空標識部部17を開発したものである。
また、従来の対空標識部の形成は、内蔵バッテリーによる動作に限定され、数時間程度しか作動しないものであったがそれも解決した。
【0063】
さらに、計測座標値の自動アップロードによる保存がスムーズでないこと、ドローン計測毎の前記バッテリー内蔵型の対空標識17の設置や撤去は必須であり、かつバッテリー動作のため長期間の動作は行えず、かつ、屋外環境下において、長期間の存置・連続も出来ないことなどの従来課題も解決した。
【0064】
すなわち、本発明では計測対象領域(例えばゴルフコース内)に例えば枡から形成された収容容器状の標定点形成部材2を埋設し、前記標定点形成部材2内にGNSSアンテナ1を設置し、かつ該標定点形成部材2の蓋表面に計測標識20を形成して対空標識部17を構成したのである。そして、計測標識20の形成は、前記蓋の表面を所定模様に塗色することで形成したものである。
【0065】
その結果、本発明は、対空標識部17の設置場所における3次元変位を連続的に、自動的に計測することが出来るものとなった。また、その計測結果はインターネット37経由などでも迅速、確実に送信でき、また配信することが出来る。
【0066】
さらに、標定点形成部材2の蓋表面部に対空標識模様に塗色することによって、ドローン計測毎発生する作業を省略できた。
また、本発明によって、いわゆる3次元変位の長期間の連続自動計測が可能となった。そして、対空標識部17の座標値の長期間の自動計測が可能であり、地表面25が変動しても、その移動量さえも取得可能となっている。
さらに、電源ケーブルで外部の電源15から電源供給するため、長期間動作可能となっている。
また、対空標識部17は防塵防水、耐久性を向上させてあるので屋外環境下での長期間使用可能であり、長期間の屋外存置が可能である。
【0067】
すなわち、本発明によって、計測領域21を繰り返し、定期的に、高頻度に変位計測を行えることとなり、例えば土木工事における地表面沈下計測やその他地盤変位の定期的な観察や土工事における土量算出などにも使用することが出来るのである。
【0068】
ところで、本発明では、ドローン36など3次元データ計測手段で3次元点群データを計測し、データ処理した実施例を示したが、計測する3次元データは3次元点群データに限定されるものではない。すなわち、ほかに好ましい3次元データの計測があればその3次元データを使用してデータ計測、データ処理を行っても構わない。
【符号の説明】
【0069】
1 GNSSアンテナ
2 標定点形成部材
3 アンテナ本体部
4 固定用棒状部
5 固定具
6 固定孔
7 第1容器構成部材
8 傾斜センサ
9 湿気吸収材
10 第2容器構成部材
11 段部片
12 突出片
13 接続部
14 シーリングリング
16 GNSS衛星
17 対空標識部
18 標定点
19 検証点
20 計測標識
21 計測領域
22 位置情報信号
23 制御装置
24 アンテナの座標値解析部
25 地表面
26 補正部
27 標定点の座標値解析部
28 制御部
29 生成部
30 変位計測部
31 受信部
32 送信部
33 データ格納部
34 表示部
35 入力部
36 ドローン
37 インターネット