(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072953
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】熱交換器およびこれを備えた温水装置
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20240522BHJP
F28F 9/18 20060101ALI20240522BHJP
F28D 1/047 20060101ALI20240522BHJP
F24H 9/00 20220101ALI20240522BHJP
F28D 7/10 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
F28F9/02 G
F28F9/18
F28D1/047 B
F24H9/00 A
F28D7/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183861
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】和田 憲英
(72)【発明者】
【氏名】堀内 健吾
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 秀行
(72)【発明者】
【氏名】中村 明信
【テーマコード(参考)】
3L036
3L065
3L103
【Fターム(参考)】
3L036AA04
3L036AA42
3L065CA17
3L103AA01
3L103AA10
3L103BB43
3L103CC06
3L103CC27
3L103DD06
3L103DD42
3L103DD68
(57)【要約】
【課題】製造作業の煩雑化などを抑制しつつ、伝熱管がヘッダ部から不当な熱応力を受けることを適切に防止可能な熱交換器を提供する。
【解決手段】加熱用媒体が内部に供給されるケース1の側壁部10aの外面側に配され、かつ複数の伝熱管2の端部20が挿通する複数の孔部42を有し、複数の伝熱管2の内部に連通するチャンバ59を形成しているヘッダ部Hを、備えている、熱交換器HEであって、ヘッダ部Hの各孔部42の周縁部から側壁部10a側に突出し、かつ各伝熱管2の端部20に外嵌している筒状のバーリング部43と、バーリング部43の前端周縁部43aの一部から側壁部10a側に部分的に延出し、かつ先端部が側壁部10aに当接する延出部44と、をさらに備えている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用媒体が内部に供給されるケースと、
このケース内に収容され、かつ前記ケースの側壁部に設けられている複数の孔部を介して前記ケースの外部に端部が引き出されている複数の伝熱管と、
前記側壁部の外面側に配され、かつ前記複数の伝熱管の前記端部が挿通する複数の孔部を有し、前記複数の伝熱管の内部に連通するチャンバを形成しているヘッダ部と、
を備えている、熱交換器であって、
前記ヘッダ部の前記複数の孔部の周縁部から前記ケースの前記側壁部側に突出するように設けられ、かつ前記各伝熱管の前記端部に外嵌している筒状の複数のバーリング部と、
前記各バーリング部の前端周縁部の一部から前記ケースの前記側壁部側に部分的に延出するように設けられ、かつ先端部が前記側壁部に当接する延出部と、
をさらに備えていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記延出部は、基端部の幅よりも前記先端部の幅の方が狭い構成とされている、熱交換器。
【請求項3】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記各伝熱管の前記端部と前記バーリング部との相互間に、前記バーリング部の前記前端周縁部側の外方部分からロウ材が進入しているロウ付け部を、さらに備えている、熱交換器。
【請求項4】
請求項3に記載の熱交換器であって、
前記各伝熱管の前記端部が水平方向に延び、かつ前記ケースが上下高さ方向に起立した所定のロウ付け可能姿勢にある場合において、前記延出部は、前記バーリング部の最上部を避けた位置にある、熱交換器。
【請求項5】
請求項3に記載の熱交換器であって、
前記各バーリング部に設けられる前記延出部として、複数の延出部を備えており、
これら複数の延出部の先端部の相互間の内幅は、前記各バーリング部の内径よりも大きい、熱交換器。
【請求項6】
請求項5に記載の熱交換器であって、
前記複数の延出部は、これらの先端部側ほど前記複数の延出部の内幅が漸次大きくなる先広がり傾斜状である、熱交換器。
【請求項7】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記ヘッダ部のうち、前記各バーリング部と前記延出部との境界部には、この境界部の周辺部と比較して強度が部分的に小さくされた脆弱部が設けられている、熱交換器。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の熱交換器と、
この熱交換器の前記ケース内に前記加熱用媒体を供給する加熱用媒体供給手段と、
を備えていることを特徴とする、温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば給湯装置の構成要素などとして用いられる熱交換器、およびこれを備えた給湯装置などの温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器としては、たとえば特許文献1,2に記載のものがある。
これらの文献に記載の熱交換器は、給湯装置などに組み込まれて湯水加熱に用いられるものであり、燃焼ガスなどの加熱用媒体が供給されるケース内に、複数の伝熱管が収容されている。複数の伝熱管の端部は、ケースの側壁部に設けられた孔部を貫通して外部に引き出されており、この部分にはヘッダ部が取付けられている。ヘッダ部内には、複数の伝熱管内どうしを連通させるチャンバが形成されており、複数の伝熱管のそれぞれの内部は、前記チャンバを介して互いに連通している。したがって、ヘッダ部を利用し、複数の伝熱管における所定の湯水流通を適切に実行させることが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、ヘッダ部を伝熱管の端部に取付ける場合、このヘッダ部は、できる限りケースの側壁部に広い面積で当接しないようにすることが望まれる。ヘッダ部がケースの側壁部に広い面積で当接していると、ケース内に燃焼ガスなどの加熱用媒体が供給されることにより、ケースの側壁部が温度上昇した場合に、ヘッダ部もこれと同様に温度上昇して大きな熱応力が発生し、これが伝熱管に作用することとなり、伝熱管に歪みなどを生じさせる原因となるからである。
このようなことを解消する手段として、特許文献1においては、ヘッダ部をケースの側壁部から離間させた配置に設けている。ところが、このような手段によれば、ヘッダ部の位置決めが難しいものとなり、製造の容易化を図る観点からすると改善の余地がある。
一方、特許文献2においては、ケースの側壁部とヘッダ部との相互間に、スペーサとしての板材を介在させているため、ヘッダ部の位置決めの確実化を図ることが可能である。ところが、このような手段によれば、スペーサとしての板材を用いるため、全体の部品点数が多くなって、製造作業の煩雑化や製造コストの増加を招く虞がある。したがって、この場合においても改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-32494号公報
【特許文献2】特許第6895048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、製造作業の煩雑化や製造コストの増加などをできる限り抑制しつつ、ケースの側壁部の温度上昇時に、伝熱管がヘッダ部から不当な熱応力を受けることを適切に防止することが可能な熱交換器、およびこれを備えた温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供される熱交換器は、加熱用媒体が内部に供給されるケースと、このケース内に収容され、かつ前記ケースの側壁部に設けられている複数の孔部を介して前記ケースの外部に端部が引き出されている複数の伝熱管と、前記側壁部の外面側に配され、かつ前記複数の伝熱管の前記端部が挿通する複数の孔部を有し、前記複数の伝熱管の内部に連通するチャンバを形成しているヘッダ部と、を備えている、熱交換器であって、前記ヘッダ部の前記複数の孔部の周縁部から前記ケースの前記側壁部側に突出するように設けられ、かつ前記各伝熱管の前記端部に外嵌している筒状の複数のバーリング部と、前記各バーリング部の前端周縁部の一部から前記ケースの前記側壁部側に部分的に延出するように設けられ、かつ先端部が前記側壁部に当接する延出部と、をさらに備えていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、ヘッダ部の各バーリング部に設けられた延出部の先端部は、ケースの側壁部の外面に当接しているため、ヘッダ部の位置決め作業、つまりケースの側壁部からヘッダ部までの離間距離を所望寸法に規定するようにして、伝熱管にヘッダ部を取付ける作業を的確に図ることが可能である。ヘッダ部の位置決めは、熱交換器の組立作業時において、延出部の先端部をケースの側壁部に当接させるだけで行なわれる。離間距離を規定するための専用部材(スぺーサ)を、別途用いる必要もない。したがって、ヘッダ部の取付け作業、ひいては熱交換器全体の製造作業の容易化を図り、熱交換器の生産性の向上、ならびに製造コストの低減を好適に図ることが可能である。伝熱管の端部には、ヘッダ部の筒状のバーリング部が外嵌しているため、これらの嵌合連結状態を安定したものとする効果も得られる。
第2に、延出部の先端部は、ケースの側壁部に当接しているものの、その当接面積は小さいものとすることが可能である。したがって、たとえばヘッダ部がケースの側壁部に広い面積で当接している場合とは異なり、ケース内に加熱用媒体が供給されることによってケースの側壁部が温度上昇した場合に、ヘッダ部もそれと同様に温度上昇して大きな熱応力が発生して伝熱管に作用することを解消することが可能となる。したがって、ヘッダ部の熱応力に起因して伝熱管に歪みが生じる不具合も適切に抑制することが可能である。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記延出部は、基端部の幅よりも前記先端部の幅の方が狭い構成とされている。
【0011】
このような構成によれば、延出部の先端部とケースの側壁部との当接面積を、より小さくし、ヘッダ部の熱応力が伝熱管に及ぶ現象を抑制する上で一層好ましいものとなる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記各伝熱管の前記端部と前記バーリング部との相互間に、前記バーリング部の前記前端周縁部側の外方部分からロウ材が進入しているロウ付け部を、さらに備えている。
【0013】
このような構成によれば、前記ロウ付け部を利用し、ヘッダ部のバーリング部と伝熱管との接合を適切に図ることが可能である。バーリング部の長さを長くとれば、ロウ付け部のボリュームを大きくし、ロウ付け強度を高めることも容易に達成することが可能である。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記各伝熱管の前記端部が水平方向に延び、かつ前記ケースが上下高さ方向に起立した所定のロウ付け可能姿勢にある場合において、前記延出部は、前記バーリング部の最上部を避けた位置にある。
【0015】
このような構成によれば、前記ロウ付け部を設けるためのロウ付け作業を容易かつ適切に行なうことができる。すなわち、熱交換器の製造工程において、ケースを所定のロウ付
け可能姿勢に設定し、伝熱管の端部とヘッダ部のバーリング部とをロウ付けする手法としては、バーリング部の前端周縁部の最上部の近傍部分であって、伝熱管の端部の最上部の位置にロウ材を塗布してから、これを加熱溶融させる手法が挙げられる。前記構成によれば、前記したロウ材の塗布が行なわれる位置に、ヘッダ部の延出部が存在しないようにすることができるため、前記したロウ付け作業を支障なく適切に行なうことが可能である。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記各バーリング部に設けられる前記延出部として、複数の延出部を備えており、これら複数の延出部の先端部の相互間の内幅は、前記各バーリング部の内径よりも大きい。
【0017】
このような構成によれば、熱交換器の製造工程において、伝熱管の端部に複数の延出部およびバーリング部を外嵌させる場合に、伝熱管と複数の延出部との相互間の隙間を大きくできるため、複数の延出部が前記外嵌作業の支障にならないようにすることが可能である。一方、伝熱管とバーリング部との相互間の隙間は小さくできるため、それらの嵌合状態の安定化が適切に図られる。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記複数の延出部は、これらの先端部側ほど前記複数の延出部の内幅が漸次大きくなる先広がり傾斜状である。
【0019】
このような構成によれば、熱交換器の製造工程として、ヘッダ部の複数の延出部およびバーリング部を、伝熱管の端部に外嵌させる作業を行なう場合に、複数の延出部を伝熱管の端部に対して円滑に外嵌させ易くなり、前記作業の一層の容易化ならびに迅速化を図ることが可能となる。
【0020】
本発明において、好ましくは、前記ヘッダ部のうち、前記各バーリング部と前記延出部との境界部には、この境界部の周辺部と比較して強度が部分的に小さくされた脆弱部が設けられている。
【0021】
このような構成によれば、次のような効果がえられる。
すなわち、伝熱管の端部にヘッダ部を取付ける際の作業性をよくするなどの理由から、延出部を外開き状に傾斜させるように曲げ変形させる場合、脆弱部の位置を、その曲げ変形の起点とすることができる。このようにすると、延出部の曲げ変形の影響が、バーリング部に及ばないようになり、バーリング部が不当に歪むことを回避することが可能である。
【0022】
本発明の第2の側面により提供される温水装置は、本発明の第1の側面により提供される熱交換器と、この熱交換器の前記ケース内に前記加熱用媒体を供給する加熱用媒体供給手段と、を備えていることを特徴としている。
【0023】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される熱交換器について述べたのと同様な効果が得られる。
【0024】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る熱交換器の一例を示す斜視図である。
【
図6】(a)は、
図5のVIa-VIa断面図であり、(b)は、
図5のVIb-VIb断面図である。
【
図7】(a)は、
図1~
図4に示す熱交換器の一部のヘッダ部の概略正面図であり、(b)は、前記熱交換器の他の一部のヘッダ部の概略正面図である。
【
図8】(a)は、
図7(a)のVIII-VIII断面図であり、(b)は、
図7(a)の側面図である。
【
図9】(a),(b)は、
図1~
図4に示す熱交換器のヘッダ部の組み付け作業工程の例を示す要部説明図である。
【
図10】(a)は、
図1~
図4に示す熱交換器のヘッダ部のロウ付け作業工程の例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)のXb-Xb要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
図1~
図4に示す熱交換器HEは、上面部および下面部が開口した略矩形筒状または枠状のケース1、このケース1内に配された複数の胴パイプ39、および複数の伝熱管2を備えている。
【0028】
図3,
図4に示すように、本実施形態の熱交換器HEは、たとえばバーナ8(加熱用媒体供給手段の具体例に相当)と組み合わされ、給湯装置などの温水装置WHを構成するのに利用される。バーナ8においては、燃料ガスまたは液体燃料が燃焼し、その燃焼ガス(加熱用媒体の具体例に相当)は熱交換器HEのケース1内に供給される。このことにより、複数の胴パイプ39および伝熱管2の内部を流通している湯水は加熱され、温水が生成される。
【0029】
熱交換器HEの構成を、以下により具体的に説明する。
この熱交換器HEの複数の胴パイプ39は、ケース1の複数の側壁部10b~10dの内面に沿って設けられており、湯水加熱のための燃焼ガスからの吸熱に加え、複数の側壁部10b~10dを冷却し、これらが過熱状態となることを防止する役割をも果たす。これら複数の胴パイプ39は、ケース1の側壁部10aの外面部に設けられたヘッダ部7A,7Bを介して接続されている。胴パイプ39の入水口38に供給された湯水は、
図1の破断線の矢印で示すように、胴パイプ39および複数のヘッダ部7A,7Bを通過する。その後は、複数の伝熱管2および後述するヘッダ部H内を流れてから出湯口37に到達する。
【0030】
図4に表われているように、ヘッダ部7A,7Bにおいては、ケース1の側壁部10aに、内側部分が凹状のカバー部材7a,7bが接合されていることにより、これらカバー部材7a,7bと側壁部10aとの相互間に、湯水流通用のチャンバが形成されている。これらヘッダ部7A,7Bは、本発明(請求項に記載の発明)でいうヘッダ部には相当しない。
複数のヘッダ部H(Ha,Hb)が、本発明でいうヘッダ部に相当する。ただし、その詳細は後述する。
【0031】
複数の伝熱管2は、
図2および
図3に示すように、たとえばプレート状の複数のフィン9に挿通して接合されたフィンチューブタイプであり、ケース1内に横架設されて上下および水平方向に複数並んでいる。各伝熱管2の両端部20は、ケース1の側壁部10a,10cを貫通し、ケース1の外部に引き出されている。
【0032】
熱交換器HEは、複数のヘッダ部H(Ha,Hb)をさらに備えており、これらヘッダ
部Hの構成に大きな特徴がある。
複数のヘッダ部Hのうち、1つのヘッダ部H(Hb)は、最下段の胴パイプ39の端部39bと伝熱管2の端部20とを接続している。一方、これ以外の他の複数のヘッダ部H(Ha)は、複数の伝熱管2の端部20どうしを接続している。最下段の胴パイプ39は、複数の伝熱管2と同様に、本発明でいう伝熱管に含まれる(以下、最下段の胴パイプ39およびその端部39bについては、特別に区別していない限りは、伝熱管2およびその端部20と同様な部位であるとして説明を進める)。
【0033】
図5~
図8によく表われているように、各ヘッダ部Hは、ヘッダベース4と、ヘッダカバー5とが組み合わされて構成されている。これらはともに金属製であり、かつ正面視略長円状である。
ヘッダカバー5は、ケース1の側壁部10aに対向する片面側が凹状に窪んだカップ状の部材である。
ヘッダベース4は、ヘッダカバー5の先端周壁部が嵌合する外周壁部40、この外周壁部40が外周縁に連設され、かつケース1の側壁部10aに対向する主壁部41、この主壁部41に設けられ、かつ一対の伝熱管2の端部20が挿通している一対の孔部42を備えている。ヘッダベース4とヘッダカバー5との両者の内側には、一対の伝熱管2の端部20の内部に連通し、一対の伝熱管2の一方から他方への湯水流通を可能とするチャンバ59が設けられている。
【0034】
ヘッダベース4は、バーリング部43、延出部44、および脆弱部45を、さらに具備している。
【0035】
バーリング部43は、主壁部41のうち、各孔部42の周縁部からケース1の側壁部10a側に突出する円筒状の部位であり、主壁部41に一体形成されている。このバーリング部43は、伝熱管2の端部20に外嵌し、かつロウ付け部Brを介して端部20にロウ付けされている(
図5および
図6(a)では、ロウ付け部Brを黒塗り部分として示しているが、
図6(b)では、ロウ付け部Brの一部分のみを仮想線で概略的に示している)。ロウ付け部Brは、伝熱管2の端部20の外周面とバーリング部43の内周面との相互間の領域に、バーリング部43の前端周縁部43a側の外方部分からロウ材が進入した構成である。
【0036】
延出部44は、バーリング部43の前端周縁部43aの一部からケース1の側壁部10a側に部分的に延出し、かつ側壁部10aに当接する部位であり、バーリング部43に一体形成されている。本実施形態では、1つのバーリング部43に、2つの延出部44が設けられている。
【0037】
図8(b)によく表われているように、各延出部44は、基端部よりも先端部の方が幅が狭い側面視略三角状である。また、
図8(a)によく表われているように、2つの延出部44は、これらの先端部側ほど、これら2つの延出部44の内幅が漸次大きくなる先広がり傾斜状であり、2つの延出部44の先端部の相互間の内幅Laは、バーリング部43の内径Daよりも大きい。なお、バーリング部43の内径Daは、伝熱管2の端部20の外径に対応する寸法である。
【0038】
脆弱部45は、バーリング部43と延出部44との境界部に設けられており、かつこの境界部の周辺部と比較して強度が部分的に小さくされた部位である。本実施形態においては、脆弱部45は、前記境界部のうち、凹溝部45aが設けられた部位である。凹溝部45aは、バーリング部43の周方向に一連に延びる凹溝部として設けられた構成、あるいは前記周方向に断続的に並ぶ複数の凹溝部として設けられた構成のいずれであってもよい。この脆弱部45は、複数の延出部44を、
図8(a)に示した外開き状に設定すべく、
各延出部44に矢印Na方向の力を作用させた際に、各延出部44の変形の起点となる。このことにより、この各延出部44の変形による影響(Na方向の力の影響)は、バーリング部43に大きくは及ばないこととなる。したがって、バーリング部43に歪みが生じないようにし、その寸法精度を良好に維持可能である。
【0039】
図7に示すように、延出部44は、バーリング部43の最上部Pを避けた位置に設けられている(同図において、符号VLは、バーリング部43の中心を通過する鉛直線を示している。)。バーリング部43に設けられている2つの延出部44は、上下高さ方向に離間しており、上側に位置する一方の延出部44は、バーリング部43の最上部Pから適当な角度α1,α2だけオフセットされた配置にある。
【0040】
図9は、2つの伝熱管2の端部20に、ヘッダ部Hのヘッダベース4を取付ける作業の一例を示している。同図においては、各伝熱管2の端部20が側壁部10aから上向きに突出するように熱交換器HEが横倒しに設定された姿勢で、各伝熱管2の端部20の上側からヘッダベース4が降ろされている。このことにより、各伝熱管2の端部20にバーリング部43を外嵌させる。また、延出部44の先端部が側壁部10aに当接するまで、ヘッダベース4を降ろす。このことにより、側壁部10aからヘッダ部Hのバーリング部43までの距離、あるいは主壁部41までの距離などを所望の距離に正確に規定することが可能である。
【0041】
なお、
図9(b)に示したように、伝熱管2の端部20にバーリング部43を外嵌させる組み付け作業を終えた後には、端部20に、拡管処理が施される。この拡管処理を終えた後に、既述したロウ付け部Brが設けられている。
図5および
図6において、伝熱管2の端部20の最先端部に、フレア部21が形成されているが、これは前記拡管処理により形成されたものである。
【0042】
熱交換器HEの製造工程において、ヘッダ部Hの前記したロウ付け部Brを設ける作業を行なう場合、熱交換器HEは、
図1~
図4に示すように、各伝熱管2の端部20が水平方向に延び、ケース1が上下高さ方向に起立した姿勢に設定される。この姿勢は、ロウ付け部Brを適切に設けることが可能なロウ付け可能姿勢の一例に相当する。熱交換器HEがそのようなロウ付け可能姿勢にある場合、延出部44は、バーリング部43の最上部Pを避けた配置となる。
【0043】
ロウ付け部Brを設けるためのロウ付け作業は、
図10に示すように、伝熱管2の端部20の外周面の最上部に、たとえばペースト状のロウ材Br’を塗着し、かつこれを加熱溶融させて行なう。これに対し、本実施形態においては、延出部44がバーリング部43の最上部Pを避けた位置にあるため、ロウ材Br’の前記した塗着に支障を生じないようにすることが可能である。
図10に示した状態において、ロウ材Br’を加熱溶融させると、その溶融ロウ材は、伝熱管2の端部20の外周面に沿って下方に流れていき、その際の過程において、端部20の外周面とバーリング部43の内周面との微小な隙間内に溶融ロウ材を進入させていくことができる。前記隙間への溶融ロウ材の進入は、伝熱管2の端部20の全周にわたって行なわせることが可能である。
【0044】
次に、前記した熱交換器HEおよび温水装置WHの作用について説明する。
【0045】
各ヘッダ部Hの延出部44の先端部は、ケース1の側壁部10aに当接しているものの、その当接面積は小さい。本実施形態とは異なり、たとえばヘッダ部Hとケース1の側壁部10aとの当接面積が大きい場合には、ケース1内に燃焼ガスが供給されることにより側壁部10aの温度が相当な高温に上昇した際に、ヘッダ部Hがその影響を大きく受けてこのヘッダ部Hに大きな熱応力が発生し、これが側壁部10aおよびこの側壁部10aに
貫通している伝熱管2の端部20に強く作用する虞がある。これに対し、本実施形態によれば、そのようなことを適切に防止または抑制し、ヘッダ部Hから伝熱管2の端部20に不当な熱応力が及び難くすることが可能である。
【0046】
一方、ケース1の側壁部10aに対するヘッダ部Hの位置決めは、
図9を参照して説明したように、各バーリング部43に設けられた延出部44の先端部を、ケース1の側壁部10aに当接させることにより図られている。このため、ヘッダ部Hの位置決め作業は容易であり、しかもヘッダ部Hを所望の位置に配置させることを高精度で行なうことも可能となる。ケース1の側壁部10aとヘッダ部Hとの相対的な位置決めを図るための専用部材(スぺーサ)を、別途用いる必要もない。したがって、熱交換器HEの製造作業の容易化を図り、熱交換器の生産性の向上、ならびに製造コストの低減を好適に図ることが可能である。
【0047】
本実施形態においては、伝熱管2の端部20に対し、ヘッダ部Hの筒状のバーリング部43が外嵌していることに加え、端部20には、拡管処理が施された上で、ロウ付け部Brを介してロウ付けされているため、伝熱管2に対するヘッダ部Hの取付け強度を高くすることができる。
図7および
図10を参照して説明したように、ヘッダ部Hの延出部44は、ロウ付け作業時において、ロウ材Br’が塗布される箇所(最上部P)を避けているため、ロウ付け作業をより適切に行なうことが可能である。
【0048】
図8を参照して説明したように、ヘッダ部Hの2つの延出部44の先端部の相互間の内幅Laは、バーリング部43の内径Daよりも大きく、しかも内幅Laは、延出部44の先端部側ほど漸次大きくなる先広がり傾斜状である。このため、
図9に示すように、ヘッダベース4を伝熱管2の端部20に組み付ける作業を行なう際には、2つの延出部44を伝熱管2の端部20に外嵌させ易くなり、ひいては延出部44に引き続いて端部20にバーリング部43を外嵌させる作業も容易となる。
【0049】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器および温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0050】
上述の実施形態においては、1つのバーリング部43に2つの延出部44が設けられているが、本発明はこれに限定されず、延出部44の具体的な数は限定されない。延出部44を複数設ける場合、1つのヘッダ部Hにおいて、これら複数の延出部44の全てが一直線上に並んだ配置にはならないようにすることが好ましい。また、延出部44は、先端部側ほど幅狭な側面視略三角状とされているが、これとは異なる形状(たとえば、側面視略矩形状なと)とすることもできる。延出部44の具体的な突出寸法なども限定されない。
【0051】
上述の実施形態にといては、バーリング部43と延出部44との境界部に、脆弱部45を設けるための手段として、凹溝部45aを設けているが、本発明はこれに限らない。本発明における脆弱部は、前記境界部を部分的な薄肉部としたり、あるいは凹溝部に代えて、バーリング部43の周方向に延びるスリットを設けるなどの手段を採用することも可能である。
【0052】
ヘッダ部は、2つの伝熱管の端部どうしを接続するだけではなく、3以上の伝熱管の端部どうしを接続するものとして構成することもできる。また、入水口や出湯口を備えた入水用または出湯用のヘッダ部として構成することもできる。
熱交換器に複数のヘッダ部が具備されている場合、これら複数のヘッダ部の全てが、本発明の意図する構成とされていなくてもよく、一部のヘッダ部の構成が本発明の意図する構成であれば、それは本発明の技術的範囲に属することとなる。
【0053】
伝熱管は、直管状のものに限らず、蛇行状、あるいは螺旋状などのものを用いることもできる。先にも述べたが、上述の実施形態の胴パイプ39を、本発明でいう伝熱管に含めることができる。
本発明に係る温水装置は、熱交換器の上側から下側に燃焼ガスを進行させる逆燃焼式に限らず、たとえば燃焼ガスの進行方向がそれとは反対の正燃焼式のものとすることが可能である。また、加熱用媒体としては、燃焼ガスに代えて、たとえばコージェネレーションシステムなどで生成される高温の排ガスなどを用いることも可能である。したがって、本発明でいう加熱用媒体供給手段としては、バーナ以外の手段を採用することができる。
本発明に係る熱交換器は、給湯装置用のものに限らない。
【符号の説明】
【0054】
HE 熱交換器
WH 温水装置
Br ロウ付け部
H(Ha,Hb) ヘッダ部
1 ケース
10a 側壁部
2 伝熱管
20 端部(伝熱管の)
4 ヘッダベース(ヘッダ部の)
43 バーリング部
43a 前端周縁部(バーリング部の)
44 延出部
45 脆弱部
5 ヘッダカバー
59 チャンバ(ヘッダ部の)
8 バーナ