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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072963
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/083 20060101AFI20240522BHJP
   F16H 3/04 20060101ALI20240522BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20240522BHJP
   F16D 13/06 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
F16H3/083
F16H3/04
B60K17/12
F16D13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183883
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佳宏
【テーマコード(参考)】
3D042
3J056
3J528
【Fターム(参考)】
3D042AA06
3D042AB01
3D042BE01
3J056AA10
3J056AA63
3J056BB02
3J056BE30
3J056CC02
3J056DA04
3J056GA04
3J056GA12
3J528EA09
3J528EB23
3J528EB33
3J528EB35
3J528EB54
3J528EB63
3J528EB73
3J528EB93
3J528FA13
3J528FA14
3J528FC32
3J528FC42
3J528FC47
3J528GA08
3J528HA02
3J528HA23
(57)【要約】
【課題】電気モータが出力する正回転のトルクと逆回転のトルクとをそれぞれ異なるギア列を介して出力ユニットへ伝達する。
【解決手段】駆動ユニットは、電気モータ2、第1ギア列、第2ギア列、第3ギア列、及び移動機構を備える。第1ギア列は、第1駆動ギア、第1従動ギア、及びクラッチ部材を有する。第1従動ギアは、筒状である。クラッチ部材は、第1従動ギア内において軸方向に移動可能に配置される。クラッチ部材は、第1従動ギアからのトルクが伝達される。第2ギア列は、第1ギア列からのトルクを出力ユニットに伝達する。第3ギア列は、第1ギア列からのトルクを出力ユニットに伝達する。移動機構は、電気モータが正回転したときにクラッチ部材を第2駆動ギアに向かって軸方向移動させる。移動機構は、電気モータが逆回転したときにクラッチ部材を第3駆動ギアに向かって軸方向移動させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力ユニットを駆動するように構成された駆動ユニットであって、
正回転及び逆回転するように構成される電気モータと、
前記電気モータからのトルクが伝達されるように構成される第1駆動ギア、前記第1駆動ギアからのトルクが伝達されるように構成される筒状の第1従動ギア、及び前記第1従動ギア内において軸方向に移動可能に配置され前記第1従動ギアからのトルクが伝達されるように構成されるクラッチ部材、を有する第1ギア列と、
第2駆動ギアを有し、前記第1ギア列からのトルクを前記出力ユニットに伝達するように構成される第2ギア列と、
第3駆動ギアを有し、前記第1ギア列からのトルクを前記出力ユニットに伝達するように構成される第3ギア列と、
前記電気モータが正回転したときに前記クラッチ部材を前記第2駆動ギアに向かって軸方向移動させて前記第2駆動ギアと係合させ、前記電気モータが逆回転したときに前記クラッチ部材を前記第3駆動ギアに向かって軸方向移動させて前記第3駆動ギアと係合させるように構成される移動機構と、
を備える、駆動ユニット。
【請求項2】
前記クラッチ部材は、前記第1従動ギアの内周面に形成される複数の歯と噛み合うように構成されるはすば歯車である、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記第3ギア列は、前記第2ギア列よりも大きい減速比を有する、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記第2ギア列は、前記第2駆動ギアから軸方向に延びる支持シャフトを有し、
前記クラッチ部材は、前記支持シャフト上に相対回転且つ軸方向移動可能に配置される、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記第3駆動ギアは、前記支持シャフト上に相対回転可能に配置される、
請求項4に記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記クラッチ部材に回転抵抗を付与するように構成される回転抵抗付与部材をさらに備える、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記回転抵抗付与部材は、前記電気モータの回転時且つ前記出力ユニットの停止時において、停止している停止部材と前記クラッチ部材との間に配置される、
請求項6に記載の駆動ユニット。
【請求項8】
前記第2ギア列は、前記第2駆動ギアから軸方向に延びる支持シャフトを有し、
前記クラッチ部材は、前記支持シャフト上に相対回転且つ軸方向移動可能に配置され、
前記回転抵抗付与部材は、前記クラッチ部材と前記支持シャフトとの間に配置される、
請求項6に記載の駆動ユニット。
【請求項9】
前記クラッチ部材の軸方向移動を規制するように構成される規制機構をさらに備える、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項10】
前記規制機構は、前記クラッチ部材と一体的に回転可能である遠心部材を有し、
前記遠心部材は、前記クラッチ部材の回転時に生じる遠心力によって径方向外側に移動して前記第1従動ギアと係合するように構成される、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項11】
前記クラッチ部材は、前記第2駆動ギア又は前記第3駆動ギアとドグ係合するように構成される、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項12】
前記電気モータの正回転のトルクを増幅して前記第1ギア列に伝達するように構成されるトルクコンバータをさらに備える、
請求項1に記載の駆動ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気モータを駆動源とする駆動ユニットが提案されている。電気モータは正回転及び逆回転のトルクを出力することができる。駆動ユニットが搭載された車両は、電気モータが正回転したときに前進し、電気モータが逆回転したときに後進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-172974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気モータが出力する正回転のトルクと逆回転のトルクとをそれぞれ異なるギア列を介して出力ユニットへ伝達したいという要望がある。そこで、本発明は、電気モータが出力する正回転のトルクと逆回転のトルクとをそれぞれ異なるギア列を介して出力ユニットへ伝達できる駆動ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様に係る駆動ユニットは、出力ユニットを駆動するように構成されている。この駆動ユニットは、電気モータ、第1ギア列、第2ギア列、第3ギア列、及び移動機構を備える。電気モータは、正回転及び逆回転するように構成される。第1ギア列は、第1駆動ギア、第1従動ギア、及びクラッチ部材を有する。第1駆動ギアは、電気モータからのトルクが伝達されるように構成される。第1従動ギアは、第1駆動ギアからのトルクが伝達されるように構成される。第1従動ギアは、筒状である。クラッチ部材は、第1従動ギア内において軸方向に移動可能に配置される。クラッチ部材は、第1従動ギアからのトルクが伝達されるように構成される。第2ギア列は、第2駆動ギアを有する。第2ギア列は、第1ギア列からのトルクを出力ユニットに伝達するように構成される。第3ギア列は、第3駆動ギアを有する。第3ギア列は、第1ギア列からのトルクを出力ユニットに伝達するように構成される。移動機構は、電気モータが正回転したときにクラッチ部材を第2駆動ギアに向かって軸方向移動させて第2駆動ギアと係合させるように構成される。移動機構は、電気モータが逆回転したときにクラッチ部材を第3駆動ギアに向かって軸方向移動させて第3駆動ギアと係合させるように構成される。
【0006】
この構成によれば、電気モータが正回転したとき、移動機構はクラッチ部材を第2駆動ギアに向かって移動させる。この結果、クラッチ部材は第2駆動ギアと係合するため、第1ギア列からのトルクが第2ギア列を介して出力ユニットへ伝達される。一方、電気モータが逆回転したとき、移動機構はクラッチ部材を第3駆動ギアに向かって移動させる。この結果、クラッチ部材は第3駆動ギアと係合するため、第1ギア列からのトルクが第3ギア列を介して出力ユニットへ伝達される。このように、第1態様に係る駆動ユニットは、電気モータが出力する正回転のトルクと逆回転のトルクとをそれぞれ異なるギア列を介して出力ユニットへ伝達することができる。
【0007】
第2態様に係る駆動ユニットは、第1態様に係る駆動ユニットにおいて、次のように構成される。クラッチ部材は、はすば歯車である。クラッチ部材は、第1従動ギアの内周面に形成される複数の歯と噛み合うように構成される。
【0008】
第3態様に係る駆動ユニットは、第1又は第2態様に係る駆動ユニットにおいて、次のように構成される。第3ギア列は、第2ギア列よりも大きい減速比を有する。
【0009】
第4態様に係る駆動ユニットは、第1から第3態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、次のように構成される。第2ギア列は、第2駆動ギアから軸方向に延びる支持シャフトを有する。クラッチ部材は、支持シャフト上に相対回転且つ軸方向移動可能に配置される。
【0010】
第5態様に係る駆動ユニットは、第4態様に係る駆動ユニットにおいて、次のように構成される。第3駆動ギアは、支持シャフト上に相対回転可能に配置される。
【0011】
第6態様に係る駆動ユニットは、第1から第5態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、回転抵抗付与部材をさらに備える。回転抵抗付与部材は、クラッチ部材に回転抵抗を付与するように構成される。
【0012】
第7態様に係る駆動ユニットは、第6態様に係る駆動ユニットにおいて、次のように構成される。回転抵抗付与部材は、電気モータの回転時且つ出力ユニットの停止時において、停止している停止部材とクラッチ部材との間に配置される。
【0013】
第8態様に係る駆動ユニットは、第6態様に係る駆動ユニットにおいて、次のように構成される。第2ギア列は、第2駆動ギアから軸方向に延びる支持シャフトを有する。クラッチ部材は、支持シャフト上に相対回転且つ軸方向移動可能に配置される。回転抵抗付与部材は、クラッチ部材と支持シャフトとの間に配置される。
【0014】
第9態様に係る駆動ユニットは、第1から第8態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、規制機構をさらに備える。規制機構は、クラッチ部材の軸方向移動を規制するように構成される。
【0015】
第10態様に係る駆動ユニットは、第1から第9態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、次のように構成される。規制機構は、クラッチ部材と一体的に回転可能である遠心部材を有する。遠心部材は、クラッチ部材の回転時に生じる遠心力によって径方向外側に移動して第1従動ギアと係合するように構成される。
【0016】
第11態様に係る駆動ユニットは、第1から第10態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、次のように構成される。クラッチ部材は、第2駆動ギア又は第3駆動ギアとドグ係合するように構成される。
【0017】
第12態様に係る駆動ユニットは、第1から第11態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、トルクコンバータをさらに備える。トルクコンバータは、電気モータの正回転のトルクを増幅して第1ギア列に伝達するように構成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電気モータが出力する正回転のトルクと逆回転のトルクとをそれぞれ異なるギア列を介して出力ユニットへ伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】駆動ユニットの断面図。
図2】第1~第3ギア列を示す拡大断面図。
図3】クラッチ部材の正面図。
図4】クラッチ部材の側面図。
図5】クラッチ部材の周辺を示す拡大断面図。
図6】変形例に係る駆動ユニットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態に係る駆動ユニットについて図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、特に指定のない限り、軸方向とは、第1従動ギア52の回転軸Oが延びる方向である。また、周方向とは、回転軸Oを中心とした円の周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。
【0021】
<駆動ユニット>
図1及び図2に示すように、駆動ユニット100は、電気モータ2、トルクコンバータ3、伝達シャフト4、第1ギア列5、第2ギア列6、第3ギア列7、移動機構8、回転抵抗付与部材9、規制機構11を備えている。駆動ユニット100は、出力ユニット101を駆動するように構成されている。なお、出力ユニット101は、デファレンシャルギア102、一対のドライブシャフト103、及び駆動輪(図示省略)を含んでいる。なお、出力ユニット101は、駆動輪のみを有していてもよい。この駆動ユニット100は、例えば、電気自動車に搭載される。
【0022】
<電気モータ>
電気モータ2は、モータケース21、モータステータ22、及びロータ23を有している。モータケース21は、車体フレームなどに固定されており、回転不能である。このモータケース21内に、モータステータ22及びロータ23が収容されている。モータステータ22は、モータケース21の内周面に固定されている。ロータ23は、径方向において、モータステータ22の内側に配置される。すなわち、電気モータ2は、いわゆるインナーロータ型のモータである。なお、電気モータ2はアウターロータ型であってもよい。電気モータ2は、正回転及び逆回転するように構成されている。電気モータ2が正回転すると、駆動ユニットが搭載された車両が前進する。電気モータ2が逆回転すると、車両は後進する。
【0023】
<トルクコンバータ>
トルクコンバータ3は、回転可能に配置されている。トルクコンバータ3の回転軸は、電気モータ2の回転軸と実質的に一致している。トルクコンバータ3は、その回転軸が延びる方向において、電気モータ2と間隔をあけて配置されている。このトルクコンバータ3と電気モータ2との間に、第1~第3ギア列5~7が配置されている。軸方向において、電気モータ2、第3ギア列7、第1ギア列5、第2ギア列6、トルクコンバータ3の順で配列している。トルクコンバータ3は、電気モータ2からのトルクが伝達される。トルクコンバータ3は、電気モータ2の正回転のトルクを増幅して第1ギア列5に伝達するように構成されている。
【0024】
トルクコンバータ3は、カバー31、インペラ32、タービン33、ステータ34、第1ワンウェイクラッチ36、及び遠心クラッチ37を有している。
【0025】
トルクコンバータ3は、インペラ32が電気モータ2側(図1の左側)に配置され、カバー31が電気モータ2と反対側(図1の右側)に配置されている。このトルクコンバータ3は、トルクコンバータケース30内に収容されている。トルクコンバータ3内には作動流体が供給されている。作動流体は、例えば作動油である。
【0026】
カバー31は、電気モータ2からのトルクが入力される。カバー31は、第1伝達シャフト41に固定されている。カバー31は、第1伝達シャフト41と一体的に回転する。カバー31は、タービン33を覆うように配置されている。
【0027】
インペラ32は、カバー31と一体的に回転する。インペラ32は、軸受部材(図示省略)を介して第1固定シャフト104に回転可能に支持されている。第1固定シャフト104は、回転不能である。
【0028】
タービン33は、インペラ32と対向して配置されている。詳細には、タービン33は、軸方向においてインペラ32と対向している。タービン33は、作動流体を介してインペラ32からトルクが伝達される。
【0029】
タービン33には、第2伝達シャフト42が取り付けられている。詳細には、第2伝達シャフト42が、タービン33にスプライン嵌合している。タービン33は、第2伝達シャフト42と一体的に回転する。
【0030】
ステータ34は、タービン33からインペラ32へと戻る作動油を整流するように構成されている。ステータ34は、第2固定シャフト105に、第1ワンウェイクラッチ36を介して支持されている。このステータ34は、軸方向において、インペラ32とタービン33との間に配置される。
【0031】
第1ワンウェイクラッチ36は、第2固定シャフト105とステータ34との間に配置されている。第1ワンウェイクラッチ36は、ステータ34を正回転可能とするように構成されている。一方、第1ワンウェイクラッチ36は、ステータ34を逆回転不能とする。このステータ34によって、トルクが増幅されて、インペラ32からタービン33へと伝達される。
【0032】
遠心クラッチ37は、タービン33又は第2伝達シャフト42に取り付けられている。遠心クラッチ37は、タービン33と一体的に回転する。遠心クラッチ37は、タービン33の回転によって生じる遠心力によって、カバー31とタービン33とを連結するように構成されている。詳細には、遠心クラッチ37は、タービン33が所定の回転速度以上になると、カバー31からタービン33にトルクを伝達するように構成されている。
【0033】
<伝達シャフト>
伝達シャフト4は、電気モータ2と第1ギア列5との間でトルクを伝達するように構成されている。伝達シャフト4は、第1伝達シャフト41と第2伝達シャフト42とを有する。
【0034】
第1伝達シャフト41は、電気モータ2からトルクコンバータ3に向かって延びている。詳細には、第1伝達シャフト41は、電気モータ2のロータ23から延びている。第1伝達シャフト41は、回転可能に配置されている。第1伝達シャフト41の回転軸は、電気モータ2の回転軸、及びトルクコンバータ3の回転軸と実質的に同一線上にある。
【0035】
第1伝達シャフト41は、電気モータ2とトルクコンバータ3との間でトルクを伝達するように構成されている。第1伝達シャフト41は、トルクコンバータ3のインペラ32に接続されている。詳細には、第1伝達シャフト41は、カバー31を介してインペラ32に接続されている。第1伝達シャフト41の先端部は、トルクコンバータ3のカバー31に取り付けられている。
【0036】
第2伝達シャフト42は、トルクコンバータ3と第1ギア列5との間でトルクを伝達する。第2伝達シャフト42は、トルクコンバータ3から電気モータ2に向かって延びている。第2伝達シャフト42は、回転可能に配置されている。第2伝達シャフト42の回転軸は、電気モータ2の回転軸、及びトルクコンバータ3の回転軸と実質的に同一線上にある。また、第2伝達シャフト42の回転軸は、第1伝達シャフト41の回転軸とも実質的に同一線上にある。
【0037】
第2伝達シャフト42は、円筒状である。第1伝達シャフト41は、この第2伝達シャフト42内を延びている。なお、第1伝達シャフト41は中実状である。第2伝達シャフト42の一方の端部(図1の右端部)は、トルクコンバータ3のタービン33に取り付けられている。第2伝達シャフト42は、回転可能に配置されている。第2伝達シャフト42は、例えば、ケース40などに軸受部材などを介して回転可能に支持されている。
【0038】
第1伝達シャフト41と第2伝達シャフト42との間には、第2ワンウェイクラッチ43が配置されている。第2ワンウェイクラッチ43は、第1伝達シャフト41が電気モータ2の正回転のトルクを伝達するとき、空回りする。すなわち、車両の前進時において、第2ワンウェイクラッチ43は、第1伝達シャフト41から第2伝達シャフト42へとトルクを伝達しない。一方、第2ワンウェイクラッチ43は、第1伝達シャフト41が電気モータ2の逆回転のトルクを伝達するとき、そのトルクを伝達する。すなわち、車両の後進時において、第2ワンウェイクラッチ43は、第1伝達シャフト41から第2伝達シャフト42へとトルクを伝達する。
【0039】
<第1ギア列>
図2に示すように、第1ギア列5は、第1駆動ギア51、第1従動ギア52、及びクラッチ部材53を有している。第1駆動ギア51は、電気モータ2からのトルクが伝達されるように構成されている。第1駆動ギア51は、第2伝達シャフト42と一体的に回転する。具体的には、第1駆動ギア51は、第2伝達シャフト42と一つの部材によって構成されている。
【0040】
第1従動ギア52は、回転軸Oを中心に回転可能に配置されている。第1従動ギア52は、軸方向に移動不能である。具体的には、第1従動ギア52は、複数の軸受部材、第2駆動ギア61、及び第3駆動ギア71を介して、ケース40に支持されている。このため、第1従動ギア52は、軸方向に移動不能である。
【0041】
第1従動ギア52は、第1駆動ギア51からのトルクが伝達されるように構成されている。第1従動ギア52は、円筒状である。第1従動ギア52は、外周面及び内周面のそれぞれに複数の歯が形成されている。第1従動ギア52の外周面に形成された各歯によって、第1従動ギア52は第1駆動ギア51と噛み合っている。第1従動ギア52の内周面に形成された各歯は、はすば歯車を構成している。すなわち、第1従動ギア52は、はすば内歯車である。
【0042】
クラッチ部材53は、第1従動ギア52内に配置されている。クラッチ部材53は、第1従動ギア52からのトルクが伝達されるように構成されている。クラッチ部材53は、回転軸Oを中心に回転可能に配置されている。クラッチ部材53は、第1従動ギア52と一体的に回転する。
【0043】
クラッチ部材は、軸方向に移動可能に配置されている。クラッチ部材53は、円筒状である。クラッチ部材53は、外周面に複数の歯を有している。クラッチ部材53の外周面に形成された各歯は、第1従動ギア52の内周面に形成された各歯と噛み合っている。クラッチ部材53は、第1従動ギアの内周面に形成された各歯と噛み合うように構成されるはすば歯車である。
【0044】
図3は、クラッチ部材53の正面図である。すなわち、図3は、クラッチ部材53を回転軸Oと直交する方向に沿って見た図である。図4はクラッチ部材の側面図である。すなわち、図4はクラッチ部材53を軸方向に沿って見た図である。
【0045】
図3及び図4に示すように、クラッチ部材53は、本体部531と、複数の第1嵌合凸部532と、複数の第2嵌合凸部533を有している。本体部531は、円筒状であって、外周面に複数の歯を有している。
【0046】
第1嵌合凸部532は、本体部531から軸方向に突出している。詳細には、第1嵌合凸部532は、本体部531から第2ギア列6に向かって突出している。各第1嵌合凸部532は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0047】
第2嵌合凸部533は、本体部531から軸方向に突出している。詳細には、第2嵌合凸部533は、本体部531から第3ギア列7に向かって突出している。すなわち、第2嵌合凸部533は、第1嵌合凸部532とは逆側に突出している。各第2嵌合凸部533は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0048】
<第2ギア列>
図2に示すように、第2ギア列6は、軸方向において、第1ギア列5と隣り合うように配置されている。第2ギア列6は、第1ギア列5からのトルクを出力ユニット101に伝達するように構成されている。第2ギア列6は、電気モータ2の正回転のトルクを伝達するように構成されている。第2ギア列6は、第2駆動ギア61と、第2従動ギア62と、支持シャフト63を有している。
【0049】
第2駆動ギア61は、複数の軸受部材を介して、ケース40などに回転可能に支持されている。第2駆動ギア61は、軸方向に移動不能である。第2駆動ギア61は、回転軸Oを中心に回転可能に配置されている。第2駆動ギア61は、軸方向において、クラッチ部材53と隣り合うように配置されている。
【0050】
第2駆動ギア61は、クラッチ部材53を向く面において、複数の第1嵌合凹部611を有している。複数の第1嵌合凹部611は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。複数の第1嵌合凹部611は、複数の第1嵌合凸部532と対応している。複数の第1嵌合凸部532と複数の第1嵌合凹部611とが嵌合することによって、クラッチ部材53は、第2駆動ギア61の第2駆動ギア61とドグ係合する。この結果、クラッチ部材53と第2駆動ギア61とが一体的に回転し、第1ギア列5からのトルクが第2ギア列6を介して出力ユニット101へと伝達される。
【0051】
支持シャフト63は、第2駆動ギア61から軸方向に延びている。支持シャフト63は、第2駆動ギア61から第3駆動ギア71に向かって延びている。支持シャフト63は、第2駆動ギア61と一体的に回転する。第2駆動ギア61と支持シャフト63とは一つの部材によって一体的に形成されている。
【0052】
支持シャフト63に、クラッチ部材53が支持されている。具体的には、クラッチ部材53を、支持シャフト63が軸方向に貫通している。クラッチ部材53は、支持シャフト63に対して、相対回転可能である。また、クラッチ部材53は、支持シャフト63上を軸方向に移動可能である。
【0053】
第2従動ギア62は、第2駆動ギア61からトルクが伝達されるように構成されている。詳細には、第2従動ギア62は、第2駆動ギア61と噛み合っている。第2従動ギア62は、出力ユニット101へとトルクを伝達する。
【0054】
<第3ギア列>
第3ギア列7は、軸方向において、第1ギア列5と隣り合うように配置されている。第3ギア列7は、軸方向において、第1ギア列5を基準に、第2ギア列6の反対側に配置されている。すなわち、軸方向において、第2ギア列6と第3ギア列7との間に第1ギア列5が配置されている。
【0055】
第3ギア列7は、第1ギア列5からのトルクを出力ユニット101に伝達するように構成されている。第1ギア列5からのトルクは、第2ギア列6又は第3ギア列7のどちらかを介して出力ユニット101に伝達される。第3ギア列7は、電気モータ2の逆回転のトルクを伝達するように構成されている。第3ギア列7は、第2ギア列6よりも大きい減速比を有する。
【0056】
第3ギア列7は、第3駆動ギア71と、第3従動ギア72とを有している。第3駆動ギア71は、支持シャフト63上に相対回転可能に支持されている。詳細には、支持シャフト63は、第3駆動ギア71を軸方向に貫通している。また、第3駆動ギア71は、複数の軸受部材を介して、ケース40などに回転可能に支持されている。
【0057】
第3駆動ギア71は、回転軸Oを中心に回転可能に配置されている。第3駆動ギア71は、軸方向において、クラッチ部材53と隣り合うように配置されている。第3駆動ギア71は、
軸方向において、クラッチ部材53を基準に、第2駆動ギア61の反対側に配置されている。すなわち、軸方向において、第2駆動ギア61と第3駆動ギア71との間にクラッチ部材53が配置されている。第3駆動ギア71は、軸方向に移動不能である。第3駆動ギア71は、第2駆動ギア61よりも、径が小さく歯数が少ない。
【0058】
第3駆動ギア71は、クラッチ部材53を向く面において、複数の第2嵌合凹部711を有している。複数の第2嵌合凹部711は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。複数の第2嵌合凹部711は、複数の第2嵌合凸部533と対応している。複数の第2嵌合凸部533と複数の第2嵌合凹部711とが嵌合することによって、クラッチ部材53は、第3駆動ギア71とドグ係合する。この結果、クラッチ部材53と第3駆動ギア71とが一体的に回転し、第1ギア列5からのトルクが第3ギア列7を介して出力ユニット101へと伝達される。
【0059】
第3従動ギア72は、第3駆動ギア71からトルクが伝達されるように構成されている。詳細には、第3従動ギア72は、第3駆動ギア71と噛み合っている。第3従動ギア72は、出力ユニット101へとトルクを伝達する。
【0060】
<移動機構>
移動機構8は、クラッチ部材53を軸方向に移動させるように構成されている。電気モータ2が正回転したとき、移動機構8は、クラッチ部材53を第2駆動ギア61に向かって軸方向移動させる。これにより、クラッチ部材53は、第2駆動ギア61と係合し、第2駆動ギア61と一体的に回転する。詳細には、クラッチ部材53の第1嵌合凸部532が第2駆動ギア61の第1嵌合凹部611と嵌合する。すなわち、クラッチ部材53が第2駆動ギア61にドグ係合する。
【0061】
電気モータ2が逆回転したとき、移動機構8は、クラッチ部材53を第3駆動ギア71に向かって軸方向移動させる。これにより、クラッチ部材53は、第3駆動ギア71と係合し、第3駆動ギア71と一体的に回転する。詳細には、クラッチ部材53の第2嵌合凸部533が第3駆動ギア71の第2嵌合凹部711と嵌合する。すなわち、クラッチ部材53が第3駆動ギア71にドグ係合する。
【0062】
この移動機構8は、第1従動ギア52の内周面に形成された複数の歯と、クラッチ部材53の外周面に形成された複数の歯とによって構成される。なお、第1従動ギア52の内周面の各歯は、はすば内歯車を構成している。また、クラッチ部材53の外周面の各歯も、はすば歯車を構成している。すなわち、移動機構8は、第1従動ギア52の内周面に形成されたはすば内歯車と、クラッチ部材53の外周面に形成されたはすば歯車とによって構成されている。
【0063】
第1従動ギア52の内周面に形成された各歯から、クラッチ部材53の各歯にトルクが伝達されるとき、クラッチ部材53にスラスト力が作用する。電気モータ2が正回転したとき、クラッチ部材53には、第2駆動ギア61に向かうスラスト力が作用する。この結果、クラッチ部材53は、第2駆動ギア61に向かって軸方向移動し、すなわち、図2の右側に移動し、第2駆動ギア61とドグ係合して一体的に回転する。そして、第1ギア列5からのトルクが第2ギア列6を介して出力ユニット101へと伝達される。
【0064】
一方、電気モータ2が逆回転したとき、クラッチ部材53には、第3駆動ギア71に向かうスラスト力が作用する。この結果、クラッチ部材53は、第3駆動ギア71に向かって軸方向移動し、すなわち、図2の左側に移動し、第3駆動ギア71とドグ係合して一体的に回転する。そして、第1ギア列5からのトルクが第3ギア列7を介して出力ユニット101へと伝達される。
【0065】
<回転抵抗付与部材>
回転抵抗付与部材9は、クラッチ部材53に回転抵抗を付与するように構成されている。回転抵抗付与部材9は、クラッチ部材53と支持シャフト63との間に配置されている。例えば、回転抵抗付与部材9は、クラッチ部材53の内周面に取り付けられている。この回転抵抗付与部材9によって、クラッチ部材53が支持シャフト63と相対回転する際にクラッチ部材53に回転抵抗を付与し、この結果、クラッチ部材53に確実にスラスト力を作用させることができる。回転抵抗付与部材9は、クラッチ部材53よりも摩擦係数が高い材質によって構成されている。例えば、回転抵抗付与部材9は、例えば、樹脂、摩擦材、又は板バネなどによって構成されている。
【0066】
<規制機構>
図5に示すように、規制機構11は、クラッチ部材53の軸方向移動を規制するように構成されている。規制機構11は、遠心部材111を有している。また、規制機構11は、第1従動ギア52の内周面に形成された第1係合凹部112及び第2係合凹部113を有している。
【0067】
第1係合凹部112と第2係合凹部113は、互いに軸方向に間隔をあけて配置されている。第1係合凹部112は、クラッチ部材53が第2駆動ギア61と係合している状態において、遠心部材111と径方向において対向する位置に形成されている。第2係合凹部113は、クラッチ部材53が第3駆動ギア71と係合している状態において、遠心部材111と径方向において対向する位置に形成されている。
【0068】
遠心部材111は、クラッチ部材53に取り付けられている。遠心部材111は、クラッチ部材53と一体的に回転可能である。遠心部材111は、クラッチ部材53の回転時に生じる遠心力によって径方向外側に移動する。
【0069】
遠心部材111は、径方向外側に移動することによって、第1従動ギア52と係合する。これによって、クラッチ部材53は、軸方向移動が規制される。詳細には、クラッチ部材53が第2駆動ギア61と係合している状態で回転すると、遠心部材111は第1係合凹部112と係合する。この結果、減速などによってクラッチ部材53に第2駆動ギア61から離れる方向にスラスト力が作用しても、クラッチ部材53が第2駆動ギア61と係合した状態を維持することができる。また、クラッチ部材53が第3駆動ギア71と係合している状態で回転すると、遠心部材111は第2係合凹部113と係合する。この結果、減速などによってクラッチ部材53に第3駆動ギア71から離れる方向のスラスト力が作用しても、クラッチ部材53が第3駆動ギア71と係合した状態を維持することができる。
【0070】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の各変形例は、基本的には同時に適用することができる。
【0071】
(a)上記実施形態では、駆動ユニット100は、トルクコンバータ3を有していたが、駆動ユニット100の構成はこれに限定されない。例えば、図6に示すように、駆動ユニット100は、トルクコンバータを有していなくてもよい。この場合、伝達シャフト4は、電気モータ2から第1ギア列5へと直接トルク伝達する。なお、伝達シャフト4は、電気モータ2の正回転のトルク及び逆回転のトルクのどちらも、第1ギア列5へと直接伝達する。
【0072】
(b)上記実施形態では、移動機構8は、第1従動ギア52の内周面、及びクラッチ部材53の外周面のそれぞれに形成されたはすば歯車によって構成されているが、移動機構8の構成はこれに限定されない。例えば、移動機構8は、油圧などによってクラッチ部材53を軸方向に移動させるように構成されていてもよい。この場合、第1従動ギア52の内周面、及びクラッチ部材53の外周面のそれぞれには、はすば歯車ではなく平歯車が形成されていてもよい。
【0073】
(c)上記実施形態では、回転抵抗付与部材9は、クラッチ部材53の内周面に取り付けられていたが、支持シャフト63の外周面に取り付けられていてもよい。この場合、回転抵抗付与部材9は、支持シャフト63よりも摩擦係数が高い材質によって構成されている。
【0074】
また、回転抵抗付与部材9は、クラッチ部材53と支持シャフト63との間に配置されていたが、回転抵抗付与部材9は、停止部材とクラッチ部材53との間に配置されていれば他の位置に配置されていてもよい。なお、停止部材とは、電気モータ2が回転し且つ出力ユニット101が停止している時において、停止している部材のことである。なお、支持シャフト63も、停止部材の一例である。他にも、第2駆動ギア61、第3駆動ギア71などが、停止部材の一例である。なお、駆動ユニット100は回転抵抗付与部材9を有していなくてもよい。
【0075】
(d)上記実施形態では、規制機構11は、遠心部材111を有していたが、規制機構11の構成はこれに限定されない。例えば、規制機構11は、遠心部材111の代わりに、油圧又はアクチュエータなどによって操作される規制部材を有していてもよい。この規制部材は、遠心部材111と同様にクラッチ部材53に取り付けられており、第1係合凹部112及び第2係合凹部113に係合可能である。遠心部材111は、遠心力によって径方向外側に移動したが、規制部材は、油圧又はアクチュエータによって、径方向に移動させられる。
【0076】
(e)上記実施形態では、支持シャフト63は、第2駆動ギア61から軸方向に延びていたが、支持シャフト63の構成はこれに限定されない。例えば、支持シャフト63は、第3駆動ギア71から第2駆動ギア61に向かって延びていてもよい。そして、クラッチ部材53及び第2駆動ギア61が、支持シャフト63に相対回転可能に支持されていてもよい。
【符号の説明】
【0077】
2 :電気モータ
3 :トルクコンバータ
5 :第1ギア列
51 :第1駆動ギア
52 :第1従動ギア
53 :クラッチ部材
6 :第2ギア列
61 :第2駆動ギア
63 :支持シャフト
7 :第3ギア列
71 :第3駆動ギア
8 :移動機構
9 :回転抵抗付与部材
11 :規制機構
111 :遠心部材
100 :駆動ユニット
101 :出力ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6