(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072978
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 3/00 20060101AFI20240522BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B41M3/00 Z
B41J2/01 123
B41J2/01 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183907
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 広美
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼津 章
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
【Fターム(参考)】
2C056HA42
2C056HA44
2H113AA04
2H113BA01
2H113BA05
2H113BA09
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB09
2H113BB22
2H113BC01
2H113CA46
2H113DA03
2H113EA02
2H113EA07
2H113EA12
2H113EA13
2H113FA06
2H113FA10
2H113FA29
2H113FA32
2H113FA43
2H113FA48
(57)【要約】
【課題】基材の有効利用を図りつつ、目的とする品質を有する印刷層の基材からの剥離を防止し得る印刷物の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、印刷物の製造方法が提供される。この製造方法は、下地層形成工程と、印刷層形成工程と、印刷品質確認工程と、後処理工程とを備える。下地層形成工程では、基材の表面に、基材から除去可能な下地層を形成する。印刷層形成工程では、下地層の基材と反対側の面に、印刷層を形成する。印刷品質確認工程では、印刷層の品質を確認する。後処理工程では、印刷層の品質に応じて、印刷層を覆う被覆層を形成するか、又は印刷層を下地層ごと基材から除去する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物の製造方法であって、
下地層形成工程と、印刷層形成工程と、印刷品質確認工程と、後処理工程とを備え、
前記下地層形成工程では、基材の表面に、前記基材から除去可能な下地層を形成し、
前記印刷層形成工程では、前記下地層の前記基材と反対側の面に、印刷層を形成し、
前記印刷品質確認工程では、前記印刷層の品質を確認し、
前記後処理工程では、前記印刷層の前記品質に応じて、前記印刷層を覆う被覆層を形成するか、又は前記印刷層を前記下地層ごと前記基材から除去する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷物の製造方法において、
前記下地層として、前記基材側の第1の下地層と、前記第1の下地層の前記基材と反対側に、前記第1の下地層より前記印刷層に対する密着性が高い第2の下地層とを形成する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷物の製造方法において、
前記第1の下地層は、前記第2の下地層より前記基材に対する密着性が高い、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷物の製造方法において、
前記下地層は、液滴吐出法又はバーコート法により形成される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の印刷物の製造方法において、
前記基材を前記表面の法線方向から見たとき、前記下地層は、前記印刷層を包含する大きさを有する、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の印刷物の製造方法において、
前記印刷層は、液滴吐出法により形成される、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の印刷物の製造方法において、
前記被覆層は、液滴吐出法により形成される、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の印刷物の製造方法において、
前記基材を前記表面の法線方向から見たとき、前記被覆層は、前記下地層を包含する大きさを有する、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の印刷物の製造方法において、
前記被覆層は、前記下地層より前記基材に対する密着性が高い、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の印刷物の製造方法において、
前記印刷層の前記品質は、ひび割れ、滲み、白濁及びベタつきから選択される少なくとも1つである、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の印刷物の製造方法において、
前記下地層の除去は、溶剤との接触、紫外線照射、加熱及びプラズマ処理から選択される少なくとも1つにより行われる、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の印刷物の製造方法において、
前記下地層の前記溶剤との接触は、前記下地層を前記溶剤に浸漬する方法により行われる、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の印刷物の製造方法において、
前記下地層を前記溶剤へ浸漬する際、超音波の照射、加熱及び揺動から選択される少なくとも1つが行われる、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の印刷物の製造方法において、
さらに、前記印刷層形成工程と前記印刷品質確認工程との間に、仮被覆層形成工程を備え、
前記仮被覆層形成工程では、前記印刷層を覆う仮被覆層を形成する、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の印刷物の製造方法において、
前記印刷層が前記下地層ごと除去された後の前記基材は、再度、前記下地層形成工程、前記印刷層形成工程、前記印刷品質確認工程及び前記後処理工程に供される、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の印刷物の製造方法において、
前記印刷層を覆う前記被覆層を形成した後、前記印刷層の除去が必要な場合、前記被覆層を厚さ方向に貫通する貫通部を形成する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像層が形成された記録媒体から画像層を除去して、記録媒体を再利用する方法が検討されている(特許文献1参照)。かかる方法では、光の照射を受けることで硬化し、硬化した状態で溶媒によって溶解する光硬化性化合物を含む第1インクを用いて、記録媒体上にインクジェット方式でコート層を形成し、コート層上に第2インクを用いて、インクジェット方式で画像層を形成し、形成した画像層を光の照射によって定着させた後、コート層を溶媒で溶解して記録媒体上から画像層を除去する。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、記録媒体上から画像層を除去することが開示されるのみであり、記録媒体上に画像層を形成した印刷物を如何にして、最終製品とするかについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討によれば、コート層は記録媒体から除去可能であるため、記録媒体との密着性も必然的に低く、よって最終製品である印刷物では、画像層(印刷層)が記録媒体(基材)から剥離し易くなる傾向にある。
本発明では上記事情に鑑み、基材の有効利用を図りつつ、目的とする品質を有する印刷層の基材からの剥離を防止し得る印刷物の製造方法を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、印刷物の製造方法が提供される。この製造方法は、下地層形成工程と、印刷層形成工程と、印刷品質確認工程と、後処理工程とを備える。下地層形成工程では、基材の表面に、基材から除去可能な下地層を形成する。印刷層形成工程では、下地層の基材と反対側の面に、印刷層を形成する。印刷品質確認工程では、印刷層の品質を確認する。後処理工程では、印刷層の品質に応じて、印刷層を覆う被覆層を形成するか、又は印刷層を下地層ごと基材から除去する。
【0006】
かかる態様によれば、基材の有効利用を図りつつ、目的とする品質を有する印刷層の基材からの剥離を防止し得る印刷物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る印刷物の製造方法の第1実施形態を示すフロー図である。
【
図2】下地層及び印刷層を形成した状態を示す平面図(上)及び断面図(下)である。
【
図3】下地層、印刷層及び被覆層を形成した状態を示す平面図(上)及び断面図(下)である。
【
図4】本発明に係る印刷物の製造方法の第2実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る印刷物の製造方法について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて、詳細に説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明に係る印刷物の製造方法の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る印刷物の製造方法の第1実施形態を示すフロー図である。
図2は、下地層及び印刷層を形成した状態を示す平面図(上)及び断面図(下)である。
図3は、下地層、印刷層及び被覆層を形成した状態を示す平面図(上)及び断面図(下)である。
【0009】
以下の説明では、
図2及び
図3中の上側を「上」又は「上方」と、下側を「下」又は「下方」と規定する。
図1に示す印刷物の製造方法は、下地層形成工程S1と、印刷層形成工程S2と、印刷品質確認工程S3と、被覆層形成判断工程S4と、後処理工程としての被覆層形成工程S5及び印刷層・下地層除去工程S6とを備えている。
以下、各工程について、順次説明する。
【0010】
<下地層形成工程S1>
下地層形成工程S1では、基材(メディア)1の上面(表面)に、基材1から除去可能な下地層2を形成する。
まず、基材1を用意する。
基材1としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、オレフィン系エラストマー等から形成される樹脂基材が好ましいが、紙基材、セラミックス基材等であってもよい。
また、基材1の形状としては、例えば、シート状、平板状、任意の立体形状等の如何なる形状であってよい。
なお、基材1は、その表面付近にインク受理層を有する構成、すなわち基材本体と、基材本体の表面に形成されたインク受理層とを有する構成であってもよい。
【0011】
次に、基材1の上面に下地層2を形成する。
この下地層2は、第1のインク(下地層形成用インク)を、基材1の上面に供給することにより行われる。第1のインクの供給方法としては、特に限定されないが、例えば液滴吐出法(インクジェット法)、バーコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等が挙げられる。
これらの中でも、第1のインクの供給方法としては、液滴吐出法又はバーコート法が好ましい。すなわち、下地層2は、液滴吐出法又はバーコート法により好適に形成される。液滴吐出法によれば、後述する印刷層3の形状に対応した形状を有する下地層2を正確に形成し易い。また、液滴吐出法によれば、微細な形状を有する下地層2を正確に形成することもできる。
また、バーコート法によれば、比較的大きい面積を有する下地層2を均一な厚さで形成し易い。
【0012】
下地層2は、基材1から除去可能に構成されるが、その除去は、溶剤との接触、紫外線照射、加熱及びプラズマ処理から選択される少なくとも1つにより行われることが好ましい。
下地層2を溶剤との接触により除去する場合、使用可能な溶剤としては、例えば水、弱アルカリ水溶液、有機溶剤(アルコール類、エステル類等)等が挙げられる。したがって、溶剤との接触により除去可能な下地層2は、例えば水溶性化合物を含んで構成される。
かかる水溶性化合物としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ブテンジオールビニルアルコール共重合体(BVOH)、ポリアリルアミン(PAA)のような水溶性樹脂が好ましい。これらの水溶性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
また、水溶性樹脂の分子量(重量平均分子量)は、特に限定されないが、1000以上7500以下程度であることが好ましく、1250以上5000以下程度であることがより好ましく、1500以上3000以下程度であることがさらに好ましい。かかる分子量を有する水溶性樹脂は、下地層2の強度の低下を招くことなく、十分に高い水溶性を維持することができる。
なお、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン基準の換算値として求められる。
【0014】
下地層2を紫外線照射により除去する場合、下地層2は、例えば紫外線分解性化合物を含んで構成される。
かかる紫外線分解性化合物としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、少量の糖ポリマーユニットを導入したポリ乳酸、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂のような紫外線分解性樹脂が好ましい。これらの紫外線分解性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
下地層2を熱により除去する場合、下地層2は、例えば熱分解性化合物を含んで構成される。
かかる熱分解性化合物としては、例えばエチルセルロース、アルキル化、(メタ)アクリレート化又はエポキシ化されたポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリスチレン、架橋ポリスチレンのような熱分解性樹脂が好ましい。これらの熱分解性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
また、下地層2は、例えばガラス転移温度(Tg)が室温程度の樹脂、熱膨張粒子を含んで構成されてもよい。この場合、下地層2が室温(25℃)より若干高い温度で高度に軟化して、又は熱膨張粒子が熱膨張することにより物理的な応力を付与して、下地層2を基材1から剥離させることができる。
Tgが室温程度の樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
熱膨張粒子の構成材料としては、例えばアクリロニトリル共重合体のようなアクリル系樹脂、アミド系樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。これらの材料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
熱膨張粒子は、中空であっても中実であってもよいが、中空であることが好ましい。中空の熱膨張粒子は、ガスを内包するため、熱膨張による容積変化をより大きくすることができる。
【0017】
熱膨張粒子に内包されるガスとしては、例えば空気、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n-ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-へキサン、ヘプタン、石油エーテルのような低分子量炭化水素(低沸点炭化水素)、CCl3F、CCl2F2、CClF3のようなクロロフルオロカーボン、テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシランのようなテトラアルキルシラン等が挙げられる。
【0018】
下地層2をプラズマ処理により除去する場合、下地層2は、例えばプラズマ分解性化合物を含んで構成される。
かかるプラズマ分解性化合物としては、例えば炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)クリル酸エステルの重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、セルロース及びその誘導体、これらを主成分とする共重合体のようなプラズマ分解性樹脂が好ましい。これらのプラズマ分解性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記成分を溶解又は分散して、第1のインクを調製するのに使用する溶媒又は分散媒としては、親水性溶剤が好ましい。
かかる親水性溶剤としては、例えば水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールのような炭素数3以下のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンのようなアミド類、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンのようなラクトン類、アセトンのようなケトン類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
第1のインクには、基材1の上面への濡れ性を改善する目的等により、例えば各種界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれも使用することができる。
陽イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0021】
陰イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば脂肪酸石鹸、N-アシル-N-メチルグリシン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0022】
両性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばカルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0023】
非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0024】
これらの界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
第1のインクにおける界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、0.001質量%以上5質量%以下程度であることが好ましく、0.01質量%以上1質量%以下程度であることがより好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下程度であることがさらに好ましい。かかる範囲で界面活性剤の含有量を調製することにより、第1のインクの表面張力を任意に調整すること、特に液滴吐出法に適した範囲に調製することができる。
【0025】
第1のインクは、光硬化性化合物を含有してもよい。この場合、第1のインクに光硬化性(光重合性)を付与することができる。
上記水溶性化合物を使用する場合、光硬化性化合物には、水溶性光硬化性化合物が好適に使用される。
かかる水溶性光硬化性化合物としては、例えばアクリルアミド系化合物、単官能(メタ)アクリレート系化合物及び、多官能(メタ)アクリレート系化合物等が挙げられる。
アクリルアミド系化合物としては、例えば炭素数3以上15以下の(メタ)アクリルアミド誘導体、炭素数5以上15以下の水酸基含有(メタ)アクリレート、数平均分子量(Mn)200以上1000以下の水酸基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0026】
炭素数3以上15以下の(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N'-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N'-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド(HEAA)、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0027】
炭素数5以上15以下の水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
数平均分子量(Mn)200以上1000以下の水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えばポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(炭素数1以上4以下)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(炭素数1以上4以下)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)-ポリプロピレングリコール(PPG)ブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
単官能(メタ)アクリレート系化合物としては、高い極性を有する単官能(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。
この単官能(メタ)アクリレート系化合物の具体例としては、例えばN-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムのようなビニル基含有ラクタム、アクリロイルモルフォリン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0029】
多官能(メタ)アクリレート系化合物としては、脂肪族ポリエーテル構造又は脂肪族ポリエステル構造を有する多官能(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。
この多官能(メタ)アクリレート系化合物の具体例としては、例えばテトラメチレングリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステルジオールジアクリレート等が挙げられる。
また、多官能(メタ)アクリレート系化合物としては、脂肪族ポリエーテル構造又は脂肪族ポリエステル構造を有するウレタン(メタ)アクリレートも好適に用いられる。
これらの多官能(メタ)アクリレートが有する脂肪族ポリエーテル構造又は脂肪族ポリエステル構造の数平均分子量(Mn)は、好ましくは600以上2000以下であり、より好ましくは800以上1500以下である。
【0030】
光硬化性化合物を使用する場合、第1のインクには、光硬化開始剤を添加することが好ましい。
光硬化開始剤は、光が照射されることにより、光硬化性化合物の硬化(重合)を開始させる化合物であればよく、例えば光重合開始剤が挙げられる。
光重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよく、さらに増感剤を併用してもよい。主な光重合開始剤及び増感剤の選定、組合せ及び配合比は、使用する光硬化性化合物の種類及び基材の種類等によって適宜決定するようにすればよい。
【0031】
光重合開始剤としては、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0032】
増感剤としては、例えばアミン系(脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジン等)、尿素(アリル系、o-トリルチオ尿素等)、イオウ化合物(ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩等)、ニトリル系化合物(N,N-ジ置換pアミノベンゾニトリル等)、リン化合物(トリnブチルホスフィン、ネトリウムジエチルジチオホスフィード等)、窒素化合物(ミヒラーケトン、Nニトリソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ1,3オキサジン化合物、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドとジアミンの縮合物等)、塩素化合物(四塩化炭素、ヘキサクロロエタン等)、エポキシ樹脂とアミンとの反応生成物である高分子化アミン、トリエタノールアミントリアクリレート等が挙げられる。
【0033】
さらに、第1のインクには、必要に応じて、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、分散剤等を添加することができる。
防腐剤又は防黴剤を添加することにより、第1のインクの長期保存安定性を保持することができる。防腐剤又は防黴剤としては、例えば芳香族ハロゲン化合物、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン等が挙げられる。
【0034】
基材1の上面に供給された第1のインクの被膜(液状被膜)は、乾燥させることにより、第1のインクに含まれる固形成分が固化して乾燥被膜が得られる。この乾燥には、自然乾燥、減圧乾燥、ブロー乾燥、加熱乾燥等を使用することができる。また、2つ以上の乾燥方法を組み合わせて乾燥を行ってもよい。
この乾燥被膜は、そのまま下地層としてもよいし、熱による影響を受け難い第1のインクを使用した場合には、熱処理を施してもよい。
熱処理温度は、特に限定されないが、40℃以上120℃以下程度であることが好ましく、60℃以上100℃以下程度であることがより好ましい。
熱処理時間も、特に限定されないが、1分以上30分以下程度であることが好ましく、5分以上20分以下程度程であることがより好ましい。
【0035】
また、第1のインクが光硬化性化合物を含有する場合、液状被膜又は乾燥被膜に対して紫外線(活性エネルギー線)を照射することができる。
紫外線を発生させるランプとしては、例えばUV-LED(紫外線発光ダイオード)、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、蛍光管等を用いることができる。
また、照射する紫外線は、300nm以上400nm以下程度の波長を有する紫外線であることが好ましく、必要に応じて所定の波長をカットして使用することがより好ましい。
紫外線を照射する際の温度は、15℃以上100℃以下程度であることが好ましく、20℃以上50℃以下程度であることがより好ましい。UV硬化は発熱反応であるため、温度が高くなるほど反応が促進されることを考えると第1のインクに含まれるモノマーの種類等を考慮して温度を調整してもよい。
【0036】
照射する紫外線の強度は、0.1mW/cm2以上100W/cm2以下程度であることが好ましく、2mW/cm2以上50W/cm2以下程度であることがより好ましい。なお、強度を変化させつつ、紫外線を照射するようにしてもよい。また、紫外線は、連続的に照射してもよく、間欠的(パルス的)に照射してもよい。
照射する紫外線のエネルギー量は、適宜調整することができるが、10mJ/cm2以上500J/cm2以下程度であることが好ましく、100mJ/cm2以上200J/cm2以下程度であることがより好ましい。
【0037】
下地層2となる液状被膜の厚さは、特に限定されないが、0.05μm以上20μm以下程度であることが好ましく、0.1μm以上25μm以下程度であることがより好ましい。このような厚さを有する下地層2であれば、十分な強度を維持しつつ、必要時には基材1からの優れた除去効果(分解効果又は剥離効果)を発揮することができる。
なお、水溶性化合物としてポリアリルアミン(PAA)を含有する第1のインクを使用する場合、基材の表面に供給された第1のインクによる液状被膜上(基材1と反対側の面)に、後述する第2のインク(印刷層形成用インク)を供給するようにしてもよい。すなわち、印刷層3は、いわゆるwet on wetにより形成するようにしてもよい。
【0038】
使用する第1のインクは、基材1の上面に対する濡れ性、形成される下地層2の基材1に対する密着性等を考慮して、基材1の構成材料、表面状態、表面処理、化学処理等に基づいて適宜選択される。
第1のインクの室温(25℃)での粘度は、20mPa・s以下程度であることが好ましく、3mPa・s以上15mPa・s以下程度であるのがより好ましい。この場合、均一な厚さを有する均質な下地層2を形成し易い。
【0039】
下地層2は、1種の第1のインクのみで形成される単層体であってもよく、2種以上の第1のインクで形成された複数層を有する積層体であってもよい。後者の場合、下地層2として、基材1側の第1の下地層と、第1の下地層の基材1と反対側に、第1の下地層より印刷層2に対する密着性が高い第2の下地層とを形成することができる。これにより、印刷層3を下地層(第2の下地層)2上に安定的に保持することができる。また、この場合、第1の下地層は、第2の下地層より基材1に対する密着性が高いことが好ましい。これにより、下地層2を基材1上に安定的に保持することができる。
なお、第1の下地層と第2の下地層との間には、例えばこれらの密着性を向上させる目的等で中間層を設けるようにしてもよい。
【0040】
本実施形態では、
図2に示すように、下地層2として、円形状をなす中央下地層2aと、中央下地層2aの外周に沿って配置された複数の外周下地層2bとを形成する。
下地層2(中央下地層2a及び外周下地層2b)のサイズは、次に形成する印刷層3のサイズに対して、
図2(a)に示すように略等しくてもよく、
図2(b)に示すように若干大きくてもよい。
かかる構成によれば、基材1の下地層2及び印刷層3から露出する領域を十分に確保することができる。このため、下地層2の除去を溶剤との接触により行う場合には、下地層2の溶剤との十分な接触面積を確保することができ、下地層2を迅速に除去することができる。また、後述するように、被覆層4を形成する場合には、基材1と被覆層4との間に十分な接触面積を確保することができ、被覆層4の基材1からの剥離を防止し易やすくなる。
【0041】
<印刷層形成工程S2>
印刷層形成工程S2では、下地層2の上面(基材1と反対側の面)に、印刷層3を形成する。
この印刷層3は、第2のインク(印刷層形成用インク)を、下地層2の上面に供給することにより行われる。第2のインクの供給方法としては、特に限定されないが、例えば液滴吐出法(インクジェット法)、バーコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等が挙げられる。
これらの中でも、第2のインクの供給方法としては、液滴吐出法が好ましい。すなわち、印刷層3は、液滴吐出法により好適に形成される。液滴吐出法によれば、下地層2の形状に対応した形状を有する印刷層3を正確に形成し易い。また、液滴吐出法によれば、微細な形状を有する印刷層3を正確に形成することもできる。
【0042】
印刷層3の形成に使用可能な第2のインクとしては、例えば光硬化型インク、水系インク、溶剤インク等が挙げられる。
<<光硬化型インク>>
光硬化型インクは、少なくとも光硬化性化合物と、着色剤とを含有することが好ましい。
光硬化性化合物としては、例えば不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸)又はそのエステル類、スチレン、スチレン誘導体(ビニルトルエン、ジメチルスチレン等)、N-ビニル化合物(N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等)、N-置換マレイミド、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリウレタンメタクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、オリゴメタクリレート、アルキドメタクリレート、ポリオールメタクリレート等が挙げられる。
【0043】
これらの中でも、光硬化性化合物は、アクリル酸エステル類及びN-ビニル化合物のうちの少なくとも一方を含むことが好ましい。これらの光硬化性化合物は、光重合性に優れることから好ましい。また、下地層2との密着性が高い印刷層3を形成することもできる。
アクリル酸エステル類としては、例えばヘキシル(メタ)アクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレートのような単官能(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのような多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
着色剤は、顔料及び染料から選択されるが、耐光性を向上させる観点からは、顔料を使用することが好ましい。顔料には、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
無機顔料としては、例えばファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックのようなカーボンブラック類、酸化鉄、酸化チタン等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料のようなアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料のような多環式顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料等が挙げられる。
以上のような顔料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
光硬化型インク(他の第2のインクにおいても同様)における着色剤の含有量は、特に限定されないが、0.1質量%以上10質量%以下程度であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下程度であることがより好ましい。
また、光硬化型インク(他の第2のインクにおいても同様)が液滴吐出用のインクである場合、着色剤の平均粒子径は、10nm以上500nm以下程度であることが好ましく、25nm以上200nm以下程度であることがより好ましく、50nm以上100nm以下程度であることがさらに好ましい。この場合、第2のインクの吐出安定性や分散安定性等を高め得るとともに、高画質の印刷層(画像)3を形成することもできる。ここで、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における体積積算値50%での粒径(D50)を意味する。
また、光硬化型インクは、さらに、上記第1のインクで説明したのと同様の溶剤、光重合開始剤、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、分散剤の他、光重合促進剤、光重合禁止剤等を含有してもよい。
【0046】
<<水系インク>>
水系インクは、少なくとも水溶性化合物と、着色剤と、溶剤とを含有することが好ましい。
水溶性化合物には、上記第1のインクで説明したのと同様の化合物を使用することができる。水系インクの場合、水系インクにおける水溶性化合物の含有量は、1質量%以上20質量%以下程度であることが好ましく、5質量%以上10質量%以下程度であることがより好ましい。
また、着色剤には、上記光硬化型インクで説明したのと同様の着色剤を使用することができる。
さらに、溶剤には、上記第1のインクで説明したのと同様の化合物(溶媒又は分散媒)を使用することができる。これらの中でも、溶剤には、水と、アルコール類及びグリコールエーテル類のうちの少なくとも一方とを併用することが好ましい。
【0047】
また、水系インクには、アルカリを添加することにより、そのpHを調整するようにしてもよい。
かかるアルカリとしては、無機アルカリ及び有機アルカリのいずれも使用可能である。
無機アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等が挙げられる。
有機アルカリとしては、例えばアンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、N-メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
水系インクにおけるアルカリの含有量は、0.05質量%以上1質量%以下程度であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下程度であることがより好ましい。
水系インクは、さらに、上記第1のインクで説明したのと同様の界面活性剤、防腐剤、防黴剤、粘度調整剤、分散剤等を含有してもよい。
【0048】
<<溶剤インク>>
溶剤インクは、少なくとも樹脂と、着色剤と、溶剤とを含有することが好ましい。
樹脂としては、例えばビニル系樹脂(酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等)、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、樹脂としては、ビニル系樹脂が好ましい。ビニル系樹脂を含有する溶剤インクを使用することにより、第2のインクの下地層2に対する高い濡れ性を維持しつつ、形成される印刷層3と下地層2との密着性を十分に高めることができる。
溶剤インクにおける樹脂の含有量は、0.1質量%以上程度であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下程度であることがより好ましく、1質量%以上5質量%以下程度であることがさらに好ましい。溶剤インクにおける樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、より見栄えの良い印刷層3を形成することができる。
【0049】
着色剤には、上記光硬化型インクで説明したのと同様の着色剤を使用することができる。
また、溶剤には、上記第1のインクで説明したのと同様の化合物(溶媒又は分散媒)を使用することができる。これらの中でも、溶剤には、グリコールエーテル類及びラクトン類のうちの少なくとも一方を使用することが好ましい。
溶剤インクは、さらに、上記第1のインクで説明したのと同様の界面活性剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、分散剤等を含有してもよい。
【0050】
下地層2の上面に供給された第2のインクの被膜(液状被膜)は、乾燥させることにより、第2のインクに含まれる固形成分が固化して乾燥被膜が得られる。この乾燥には、自然乾燥、減圧乾燥、ブロー乾燥、加熱乾燥等を使用することができる。また、2つ以上の乾燥方法を組み合わせて乾燥を行ってもよい。さらに、第1のインクの被膜を乾燥する方法と同一の方法を用いてもよい。
この乾燥被膜に熱処理を施すことにより、印刷層3が得られる。
熱処理温度は、特に限定されないが、40℃以上120℃以下程度であることが好ましく、60℃以上100℃以下程度であることがより好ましい。
熱処理時間も、特に限定されないが、5分以上24時間以下程度であることが好ましく、10分以上20時間以下程度程であることがより好ましい。
【0051】
また、第2のインクが光硬化型インクの場合、液状被膜又は乾燥被膜に対して紫外線(活性エネルギー線)を照射することができる。
なお、紫外線照射の条件は、下地層2を形成する際の紫外線照射の条件と同様に設定することができる。
印刷層3となる液状被膜の厚さは、特に限定されないが、1μm以上50μm以下程度であることが好ましく、10μm以上25μm以下程度であることがより好ましい。このような厚さを有する印刷層3であれば、十分な強度を維持することができる。
【0052】
使用する第2のインクは、下地層2の上面に対する濡れ性、形成される印刷層3の下地層2に対する密着性等を考慮して、下地層2(第1のインク)の構成材料、表面状態等に基づいて適宜選択される。
第2のインクの室温(25℃)での粘度は、20mPa・s以下程度であることが好ましく、3mPa・s以上15mPa・s以下程度であるのがより好ましい。この場合、均一な厚さを有する均質な印刷層3を形成し易い。
【0053】
基材1を上面(表面)の法線方向から見たとき、印刷層3は、下地層2の領域内に形成されること、すなわち下地層2は、印刷層3を包含する大きさを有することが好ましい(
図2(a)及び(b)参照)。これにより、下地層2を介して印刷層3を基材1により安定的に保持することができる。
図2(b)では、中央下地層2aの領域の内側に中央印刷層3aが形成され、各外周下地層2bの領域の内側に外周印刷層3bが形成されている。すなわち、中央下地層2aの外縁部が中央印刷層3aから露出し、各外周下地層2bの外縁部が外周印刷層3bから露出している。
【0054】
<印刷品質確認工程S3>
印刷品質確認工程S3では、印刷層3の品質を確認する。
印刷層3の品質は、目的とする印刷品質に応じて適宜設定されるため、特に限定されないが、ひび割れ、滲み、白濁及びベタつきから選択される少なくとも1つであることが好ましい。
印刷層3の品質の確認は、例えば目視による観察、触診による観察、撮像素子(CCDカメラ等)を使用した画像解析、表面粗さ測定試験、テープ剥離試験、摩擦摩耗試験、引っかき硬度試験、鉛筆硬度試験等が挙げられる。これらの方法は、1つのみを使用してもよく、2つ以上を併用してもよい。
<被覆層形成判断工程S4>
被覆層形成判断工程S4では、印刷品質確認工程S3で確認された印刷層3の品質に応じて、被覆層4を形成するか(
図1中の「YES」)、又は印刷層3を下地層2ごと基材1から除去するか(
図1中の「NO」)を判断する。
【0055】
<被覆層形成工程S5>
被覆層形成工程S5では、印刷層3を覆う被覆層4を形成する。
この被覆層4は、第3のインク(被覆層形成用インク)を、印刷層3を覆うように供給することにより行われる。第3のインクの供給方法としては、特に限定されないが、例えば液滴吐出法(インクジェット法)、バーコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等が挙げられる。
これらの中でも、第3のインクの供給方法としては、液滴吐出法が好ましい。すなわち、被覆層4は、液滴吐出法により好適に形成される。液滴吐出法によれば、下地層2及び印刷層3の形状に対応した形状を有する被覆層4を正確に形成し易い。また、液滴吐出法によれば、微細な形状を有する被覆層4を正確に形成することもできる。
【0056】
第3のインクは、少なくとも単官能(メタ)アクリレートと、多官能(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを含有することが好ましい。
単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートには、上記第1のインク又は第2のインクで説明したのと同様の化合物を使用することができる。
また、光重合開始剤には。上記第1のインクで説明したのと同様の化合物を使用することができる。
第3のインクは、さらに、上記第1のインクで説明したのと同様の溶剤、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、分散剤の他、光重合促進剤、光重合禁止剤等を含有してもよい。
かかる第3のインクを使用すれば、基材1との密着性が高い被覆層4を形成することができる。
【0057】
第3のインクにおける単官能(メタ)アクリレートの含有量は、30質量%以上80質量%以下程度であることが好ましく、40質量%以上70質量%以下程度であることがより好ましく、50質量%以上60質量%以下程度であることがさらに好ましい。
第3のインクにおける多官能(メタ)アクリレートの含有量は、10質量%以上55質量%以下程度であることが好ましく、20質量%以上45質量%以下程度であることがより好ましく、30質量%以上35質量%以下程度であることがさらに好ましい。
第3のインクにおける光重合開始剤の含有量は、1質量%以上35質量%以下程度であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下程度であることがより好ましく、10質量%以上15質量%以下程度であることがさらに好ましい。
【0058】
印刷層3を覆うように供給された第3のインクの被膜(液状被膜)は、必要に応じて乾燥させることにより、第3のインクに含まれる固形成分が固化して乾燥被膜が得られる。この乾燥には、自然乾燥、減圧乾燥、ブロー乾燥、加熱乾燥等を使用することができる。また、2つ以上の乾燥方法を組み合わせて乾燥を行ってもよい。さらに、第1のインク又は第2のインクの被膜を乾燥する方法と同一の方法を用いてもよい。
次いで、乾燥被膜に対して紫外線(活性エネルギー線)を照射することができる。紫外線は、液状被膜に対して直接照射してもよい。
なお、紫外線照射の条件は、下地層2を形成する際の紫外線照射の条件と同様に設定することができる。
被覆層4となる液状被膜の厚さは、特に限定されないが、10μm以上60μm以下程度であることが好ましく、20μm以上40μm以下程度であることがより好ましい。このような厚さを有する被覆層4であれば、十分な強度を維持することができる。
【0059】
使用する第3のインクは、印刷層3の上面に対する濡れ性、形成される被覆層4の基材1及び印刷層3に対する密着性等を考慮して、基材1及び印刷層3(第2のインク)の構成材料、表面状態等に基づいて適宜選択される。
第3のインクの室温(25℃)での粘度は、20mPa・s以下程度であることが好ましく、3mPa・s以上15mPa・s以下程度であるのがより好ましい。この場合、均一な厚さを有する均質な被覆層4を形成し易い。
【0060】
基材1を上面(表面)の法線方向から見たとき、被覆層4は、下地層3を包含する大きさを有することが好ましい(
図3(a)及び(b)参照)。これにより、下地層2及び印刷層3を基材1により安定的に保持することができる。
被覆層4は、
図3(a)に示すように、中央下地層2a及び中央印刷層3aを被覆する中央被覆層4aと、外周下地層2b及び外周印刷層3bを被覆する外周被覆層4aとを含む個別被覆層で構成するようにしてもよく、
図3(b)に示すように、中央下地層2a、中央印刷層3a、外周下地層2b及び外周印刷層3bを一括して被覆する一括被覆層で構成するようにしてもよい。
この場合、特に、被覆層4は、その構成材料を選択することにより、下地層2より基材1に対する密着性が高くなるように構成することが好ましい。これにより、下地層2及び印刷層3の基材1に対する保持力をより向上させることができる。
以上のように、基材1上に、下地層2、印刷層3及び被覆層4を順次形成することにより、最終製品としての印刷物が得られる。
【0061】
<印刷層・下地層除去工程S6>
印刷層・下地層除去工程S6では、印刷層3を下地層2ごと基材1から除去する。
上述したように、下地層2の除去は、好ましくは溶剤との接触、紫外線照射、加熱及びプラズマ処理から選択される少なくとも1つにより行われることが好ましい。
【0062】
<<溶剤との接触>>
下地層2と溶剤との接触は、例えば下地層2(又は下地層2及び印刷層3が形成された基材1)を溶剤に浸漬する方法(浸漬法)、下地層2に溶剤を塗布する方法(塗布法)、下地層2に溶剤をスプレーする方法(スプレー法)等により行うことができる。これらの中でも、下地層2の溶剤との接触は、浸漬法により行われることが好ましい。
溶剤の温度は、特に限定されないが、20℃以上70℃以上程度であることが好ましく、30℃以上60℃以上程度であることがより好ましく、40℃以上50℃以上程度であることがさらに好ましい。かかる温度の溶剤を使用すれば、下地層2をより短時間で除去することができる。
【0063】
下地層2(又は下地層2及び印刷層3が形成された基材1)を溶剤へ浸漬する際、超音波の照射、加熱及び揺動から選択される少なくとも1つが行われることが好ましい。これにより、下地層2の溶剤への溶解による除去を促進することができる。
超音波を照射する場合、超音波の周波数は、10kHz以上100kHz以下程度であることが好ましく、15kHz以上80Hz以下程度であることがより好ましく、30kHz以上60Hz以下程度であることがさらに好ましい。
超音波の照射時間は、1分間以上60分間以下程度であることが好ましく、5分間以上45分間以下程度であることがより好ましい。
加熱する場合、溶剤(下地層2)の温度は、30℃以上85℃以下程度であることが好ましく、40℃以上65℃以下程度であることがより好ましい。
揺動は、溶剤に対して基材1を往復動することにより行うことができる。
【0064】
<<紫外線照射>>
紫外線照射の条件は、紫外線分解性化合物の種類等に応じて適宜設定されるため、特に限定されない。
紫外線照射の条件の一例としては、紫外線の強度が、10mW/cm2以上3000mW/cm2以下程度であることが好ましく、20mW/cm2以上500mW/cm2以下程度であることがより好ましい。
また、紫外線のエネルギー量が、100mJ/cm2以上20000mJ/cm2以下程度であることが好ましく、200mJ/cm2以上10000mJ/cm2以下程度であることがより好ましい。
【0065】
<<加熱>>
加熱の条件も、熱分解性化合物の種類、Tgが室温程度の樹脂の種類、熱膨張粒子に内包されるガスの種類等に応じて適宜設定されるため、特に限定されない。
加熱の条件の一例としては、加熱の温度が、110℃以上170℃以上程度であることが好ましく、125℃以上150℃以下程度であることがより好ましい。
また、加熱の時間が、5分間以上100分間以下程度であることが好ましく、10分間以上60分間以下程度であることがより好ましい。
【0066】
<<プラズマ処理>>
プラズマ処理の条件も、プラズマ解性化合物の種類等に応じて適宜設定されるため、特に限定されない。
プラズマの発生に使用可能な処理ガスとしては、特に限定されないが、例えば酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、フッ化炭素の少なくとも1種を主成分として含有するガスが挙げられる。特に、アルゴン又はヘリウムを主成分として含有する処理ガスを使用すれば、比較的真空度の低い雰囲気下又は大気圧下でプラズマを発生することができるので、装置の簡易化を図ることができる。
処理ガスの流量は、10sccm以上500sccm以下程度であることが好ましく、50sccm以上400sccm以下程度であることがより好ましい。
【0067】
高周波出力(RFパワー)は、0.005W/cm2以上0.2W/cm2以下程度であることが好ましく、0.05W/cm2以上0.1W/cm2以下程度であることがより好ましい。
プラズマ処理における時間(処理時間)は、60秒以上600秒以下程度であることが好ましく、180秒以上360秒以下程度であることがより好ましい。
プラズマ処理における雰囲気の温度(雰囲気温度)は、0℃以上100℃以下程度であることが好ましく、20℃以上50℃以下程度であることがより好ましい。
プラズマ処理における雰囲気は、比較的真空度の低い雰囲気又は大気圧とすることが好ましい。
【0068】
このようにして、印刷層3が下地層2ごと基材1から除去される。
そして、印刷層3が下地層2ごと除去された後の基材1は、再度、下地層形成工程S1に戻され、印刷層形成工程S2、印刷品質確認工程S3及び後処理工程である被覆層形成工程S5又は印刷層・下地層除去工程S6に供される。
以上説明した印刷物の製造方法によれば、仮に目的とする品質の印刷層3が形成できなかった場合でも、印刷層3を下地層2ごと除去するため、基材1の有効利用を図ることができる。特に、貴重な基材1や1つのみの基材1を使用して印刷物を製造する場合にメリットが大きい。また、得られた印刷物では、被覆層4の存在により、印刷層3の剥離を防止するとともに、印刷層3の品質の低下を抑制することもできる。
【0069】
最終製品としての印刷物を長期間使用し、印刷層の品質や被覆層4の性能が低下した場合、すなわち印刷層3を覆う被覆層4を形成した後、印刷層2の除去が必要な場合、被覆層4を厚さ方向に貫通する貫通部を形成することが好ましい。この場合、例えば下地層2を溶解し得る溶剤を、貫通部を介して浸透させ、下地層2、印刷層3及び被覆層4を基材1から除去して、基材1を再利用することができる。
なお、下地層2の除去に、溶剤との接触以外の方法を使用する場合でも、貫通部を形成することにより被覆層4の強度を低下させることができるため、下地層2、印刷層3及び被覆層4を基材1から除去し易くなる。
かかる貫通部としては、例えば連続して形成される切れ込み、断続して形成される切れ込み(ミシン目)、貫通孔(針孔、パンチ孔等)等が挙げられる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る印刷物の製造方法の第2実施形態について説明する。
以下、第2実施形態の印刷物の製造方法について説明するが、上記第1実施形態の印刷物の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図4は、本発明に係る印刷物の製造方法の第2実施形態を示すフロー図である。
図4に示すように、第2実施形態の印刷物の製造方法は、印刷層形成工程S2と印刷品質確認工程S3との間に、さらに仮被覆層形成判断工程S7及び仮被覆層形成工程S8を備え、それ以外は、第1実施形態の印刷物の製造方法と同様である。
以下、各工程について、順次説明する。
【0071】
<仮被覆層形成判断工程S7>
仮被覆層形成判断工程S7では、印刷層3を覆う仮被覆層を形成するか否かを判断する。
仮被覆層を形成するか否かは、例えば印刷層3と下地層2との密着性(親和性)の程度、印刷層3の劣化(酸化等)のし易さの程度等に基づいて決定される。
仮被覆層の形成が必要であると判断した場合(
図4中、「YES」)、仮被覆層形成工程S8に移行し、仮被覆層の形成が不要であると判断した場合(
図4中、「NO」)、印刷品質確認工程S3に移行する。
【0072】
<仮被覆層形成工程S8>
仮被覆層形成工程S8では、印刷層3を覆う仮被覆層を形成する。
この仮被覆層は、I:被覆層4を形成するまで、印刷層2の形状を保持する機能、II:被覆層4を形成するまで、印刷層2の基材1からの剥離を防止する機能、III:被覆層4を形成するまで、印刷層3の品質が低下するのを防止する機能、IV:最終製品である印刷物を使用した後、基材1を再利用する際に、印刷層3等の基材1からの除去処理を補助する機能、V:被覆層4を形成する際に、完成度又は、意匠の状態等を確認する機能等を有していてもよい。
【0073】
この仮被覆層は、第4のインク(仮被覆層形成用インク)を、印刷層2を覆うように供給することにより行われる。第4のインクの供給方法としては、特に限定されないが、例えば液滴吐出法(インクジェット法)、バーコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等が挙げられる。
これらの中でも、第4のインクの供給方法としては、液滴吐出法が好ましい。すなわち、仮被覆層は、液滴吐出法により好適に形成される。液滴吐出法によれば、印刷層3の形状に対応した形状を有する仮被覆層を正確に形成し易い。また、液滴吐出法によれば、微細な形状を有する仮被覆層を正確に形成することもできる。
【0074】
第4のインクには、下地層2の形成に使用可能な第1のインク、被覆層4の形成に使用可能な第3のインク等から選択される少なくとも1種を使用することができる。
仮被覆層の形成条件は、例えば下地層2で説明した形成条件、被覆層4で説明した形成条件等と同夜に設定することができる。
このような第2実施形態の印刷物の製造方法によっても、上記第1実施形態の印刷物の製造方法と同様の作用・効果が得られる。特に、必要に応じて、印刷層3を覆う仮被覆層を形成するので、印刷層3の構成材料によらず、適切な品質を有する印刷層3を有する印刷物を製造することができる、
【0075】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0076】
(1)印刷物の製造方法であって、下地層形成工程と、印刷層形成工程と、印刷品質確認工程と、後処理工程とを備え、前記下地層形成工程では、基材の表面に、前記基材から除去可能な下地層を形成し、前記印刷層形成工程では、前記下地層の前記基材と反対側の面に、印刷層を形成し、前記印刷品質確認工程では、前記印刷層の品質を確認し、前記後処理工程では、前記印刷層の前記品質に応じて、前記印刷層を覆う被覆層を形成するか、又は前記印刷層を前記下地層ごと前記基材から除去する、方法。
【0077】
(2)上記(1)に記載の印刷物の製造方法において、前記下地層として、前記基材側の第1の下地層と、前記第1の下地層の前記基材と反対側に、前記第1の下地層より前記印刷層に対する密着性が高い第2の下地層とを形成する、方法。
【0078】
(3)上記(2)に記載の印刷物の製造方法において、前記第1の下地層は、前記第2の下地層より前記基材に対する密着性が高い、方法。
【0079】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法において、前記下地層は、液滴吐出法又はバーコート法により形成される、方法。
【0080】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法において、前記基材を前記表面の法線方向から見たとき、前記下地層は、前記印刷層を包含する大きさを有する、方法。
【0081】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法において、前記印刷層は、液滴吐出法により形成される、方法。
【0082】
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法において、前記被覆層は、液滴吐出法により形成される、方法。
【0083】
(8)上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法において、前記基材を前記表面の法線方向から見たとき、前記被覆層は、前記下地層を包含する大きさを有する、方法。
【0084】
(9)上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法において、前記被覆層は、前記下地層より前記基材に対する密着性が高い、方法。
【0085】
(10)上記(1)~(9)のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法において、前記印刷層の前記品質は、ひび割れ、滲み、白濁及びベタつきから選択される少なくとも1つである、方法。
【0086】
(11)上記(1)~(10)のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法において、前記下地層の除去は、溶剤との接触、紫外線照射、加熱及びプラズマ処理から選択される少なくとも1つにより行われる、方法。
【0087】
(12)上記(11)に記載の印刷物の製造方法において、前記下地層の前記溶剤との接触は、前記下地層を前記溶剤に浸漬する方法により行われる、方法。
【0088】
(13)上記(12)に記載の印刷物の製造方法において、前記下地層を前記溶剤へ浸漬する際、超音波の照射、加熱及び揺動から選択される少なくとも1つが行われる、方法。
【0089】
(14)上記(1)~(13)のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法において、さらに、前記印刷層形成工程と前記印刷品質確認工程との間に、仮被覆層形成工程を備え、前記仮被覆層形成工程では、前記印刷層を覆う仮被覆層を形成する、方法。
【0090】
(15)上記(1)~(14)のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法において、前記印刷層が前記下地層ごと除去された後の前記基材は、再度、前記下地層形成工程、前記印刷層形成工程、前記印刷品質確認工程及び前記後処理工程に供される、方法。
【0091】
(16)上記(1)~(15)のいずれか1つに記載の印刷物の製造方法において、前記印刷層を覆う前記被覆層を形成した後、前記印刷層の除去が必要な場合、前記被覆層を厚さ方向に貫通する貫通部を形成する、方法。
もちろん、この限りではない。
【0092】
既述のとおり、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を何ら限定するものではない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例0093】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
1.材料の準備
まず、以下の材料を用意した。
【0094】
<基材>
・基材1:PETフィルム(東レ株式会社製、「ルミラーS10」)
・基材2:PETフィルム(パナック株式会社製、「ゲルポリ50UV-IJ」)
・基材3:PETフィルム(東山フィルム株式会社製、「HK-31WF」)
・基材4:PETフィルム(東洋紡株式会社製、「U292W」)
【0095】
<第1のインク(下地層形成用インク)>
・第1のインク1:3Dサポート材(株式会社ミマキエンジニアリング社製、「SW-100」)
・第1のインク2:ポリアリルアミン含有インク(ニットーボーメディカル株式会社製、「PPA-01(分子量:1600)」)
・第1のインク3:ポリアリルアミン含有インク(ニットーボーメディカル株式会社製、「PPA-03(分子量:3000)」)
【0096】
<第2のインク(印刷層形成用インク)>
・第2のインク1:水系インク(株式会社ミマキエンジニアリング社製)
・第2のインク2:光硬化型インク(株式会社ミマキエンジニアリング社製、「LUS-170」)
・第2のインク3:溶剤インク(株式会社ミマキエンジニアリング社製、「SS21」)
【0097】
<第3のインク(被覆層形成用インク)>
・第3のインク1:光硬化型インク(株式会社ミマキエンジニアリング社製、「TCU-100」)
・第3のインク2:光硬化型インク(株式会社ミマキエンジニアリング社製、「LH-100 CL」)
【0098】
2-1.下地層及び印刷層の形成
以下で使用する基材のサイズは、それぞれ12mm×12mmとした。
(サンプルNo.1A)
<下地層形成工程>
まず、基材1の上面に、バーコート法により、第1のインク1を供給して、厚さ2μmの液状被膜を形成した。
次に、液状被膜に対して、室温(25℃)で、紫外線を照射した。これにより、液状被膜を硬化させて、下地層を形成した。なお、紫外線の強度を466mW/cm2とし、紫外線のエネルギー量を336mJ/cm2とした。
【0099】
<印刷層形成工程>
まず、下地層の上面に、インクジェット法(液滴吐出法)により、第2のインク1を液滴吐出して、厚さ14~42μmの液状被膜を形成した。なお、インクジェット装置のプラテンヒーターの温度を60℃とした。
次に、液状被膜を大気中、80℃×10分間で熱処理した。これにより、液状被膜を固化させて、印刷層を形成した。
なお、基材1を上面の法線方向から見たとき、下地層の形状及びサイズと印刷層の形状及びサイズとが一致するように設定した。
【0100】
(サンプルNo.2A)
第1のインク1による液状被膜の厚さを10μmに変更した以外は、サンプルNo.1Aと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
(サンプルNo.3A)
基材1に代えて基材2を使用した以外は、サンプルNo.1Aと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
(サンプルNo.4A)
第1のインク1による液状被膜の厚さを10μmに変更した以外は、サンプルNo.3Aと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
【0101】
(サンプルNo.5A)
<下地層形成工程>
まず、基材3の上面に、バーコート法により、第1のインク1を供給して、厚さ0.1μmの液状被膜を形成した。
次に、液状被膜に対して、室温(25℃)で、紫外線を照射した。これにより、液状被膜を硬化させて、下地層を形成した。なお、紫外線の強度を466mW/cm2とし、紫外線のエネルギー量を336mJ/cm2とした。
【0102】
<印刷層形成工程>
まず、下地層の上面に、インクジェット法(液滴吐出法)により、第2のインク2を液滴吐出して、厚さ23~69μmの液状被膜を形成した。なお、インクジェット装置のプラテンヒーターを作動させなかった。
次に、液状被膜に対して、室温(25℃)で、紫外線を照射した。これにより、液状被膜を硬化させて、下地層を形成した。なお、紫外線の強度を370mW/cm2とし、紫外線のエネルギー量を710mJ/cm2とした。
なお、基材3を上面の法線方向から見たとき、下地層の形状及びサイズと印刷層の形状及びサイズとが一致するように設定した。
【0103】
(サンプルNo.6A)
第1のインク1による液状被膜の厚さを13.7μmに変更した以外は、サンプルNo.5Aと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
(サンプルNo.7A)
基材3に代えて基材4を使用した以外は、サンプルNo.5Aと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
(サンプルNo.8A)
第1のインク1による液状被膜の厚さを13.7μmに変更した以外は、サンプルNo.7Aと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
【0104】
(サンプルNo.9A)
<下地層形成工程>
まず、基材3の上面に、バーコート法により、第1のインク1を供給して、厚さ0.1μmの液状被膜を形成した。
次に、液状被膜に対して、室温(25℃)で、紫外線を照射した。これにより、液状被膜を硬化させて、下地層を形成した。なお、紫外線の強度を466mW/cm2とし、紫外線のエネルギー量を366mJ/cm2とした。
【0105】
<印刷層形成工程>
まず、下地層の上面に、インクジェット法(液滴吐出法)により、第2のインク3を液滴吐出して、厚さ19~57μmの液状被膜を形成した。なお、インクジェット装置のプラテンヒーターの温度を45℃とした。
次に、液状被膜を大気中、60℃×18時間で熱処理した。これにより、液状被膜を固化させて、印刷層を形成した。
なお、基材3を上面の法線方向から見たとき、下地層の形状及びサイズと印刷層の形状及びサイズとが一致するように設定した。
【0106】
(サンプルNo.10A)
第1のインク1による液状被膜の厚さを13.7μmに変更した以外は、サンプルNo.9Aと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
(サンプルNo.11A)
基材3に代えて基材2を使用した以外は、サンプルNo.9Aと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
(サンプルNo.12A)
第1のインク1による液状被膜の厚さを13.7μmに変更した以外は、サンプルNo.11Aと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
【0107】
(サンプルNo.1B)
<下地層形成工程>
まず、基材1の上面に、バーコート法により、第1のインク2を供給して、厚さ2μmの液状被膜を形成した。
<印刷層形成工程>
まず、液状被膜の上面に、インクジェット法(液滴吐出法)により、第2のインク1を液滴吐出して、厚さ14~42μmの液状被膜を形成(積層)した。なお、インクジェット装置のプラテンヒーターを作動させなかった。
次に、積層された液状被膜を大気中、80℃×10分間で熱処理した。これにより、積層された液状被膜を固化させて、下地層及び印刷層を形成した。
なお、基材1を上面の法線方向から見たとき、下地層の形状及びサイズと印刷層の形状及びサイズとが一致するように設定した。
【0108】
(サンプルNo.2B)
第1のインク2による液状被膜の厚さを10μmに変更した以外は、サンプルNo.1Bと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
(サンプルNo.3B)
基材1に代えて基材2を使用した以外は、サンプルNo.1Bと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
(サンプルNo.4B)
第1のインク2による液状被膜の厚さを10μmに変更した以外は、サンプルNo.3Bと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
【0109】
(サンプルNo.5B)
<下地層形成工程>
まず、基材1の上面に、バーコート法により、第1のインク3を供給して、厚さ2μmの液状被膜を形成した。
<印刷層形成工程>
まず、液状被膜の上面に、インクジェット法(液滴吐出法)により、第2のインク1を液滴吐出して、厚さ14~42μmの液状被膜を形成(積層)した。なお、インクジェット装置のプラテンヒーターを作動させなかった。
次に、積層された液状被膜を大気中、80℃×10分間で熱処理した。これにより、積層された液状被膜を固化させて、下地層及び印刷層を形成した。
なお、基材1を上面の法線方向から見たとき、下地層の形状及びサイズと印刷層の形状及びサイズとが一致するように設定した。
【0110】
(サンプルNo.6B)
第1のインク3による液状被膜の厚さを10μmに変更した以外は、サンプルNo.5Bと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
(サンプルNo.7B)
基材1に代えて基材2を使用した以外は、サンプルNo.5Bと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
(サンプルNo.8B)
第1のインク3による液状被膜の厚さを10μmに変更した以外は、サンプルNo.7Bと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
【0111】
(サンプルNo.9B)
<下地層形成工程>
まず、基材1の上面に、バーコート法により、第1のインク2を供給して、厚さ2μmの液状被膜を形成した。
次に、液状被膜を大気中、80℃×10分間で熱処理した。これにより、液状被膜を固化させて、下地層を形成した。
【0112】
<印刷層形成工程>
まず、下地層の上面に、インクジェット法(液滴吐出法)により、第2のインク1を液滴吐出して、厚さ14~42μmの液状被膜を形成した。なお、インクジェット装置のプラテンヒーターの温度を60℃とした。
次に、積層された液状被膜を大気中、80℃×10分間で熱処理した。これにより、積層された液状被膜を固化させて、下地層及び印刷層を形成した。
なお、基材1を上面の法線方向から見たとき、下地層の形状及びサイズと印刷層の形状及びサイズとが一致するように設定した。
【0113】
(サンプルNo.10B)
第1のインク2による液状被膜の厚さを10μmに変更した以外は、サンプルNo.9Bと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
【0114】
2-2.評価
<印刷層の品質確認>
印刷層の上面の状態(画質)を、目視及び触診による観察により評価した。
<Xカット試験>
印刷層に碁盤の目に切れ目を入れることにより、複数の区画を形成した後、印刷層にテープを貼着した。その後、印刷層からテープを剥離して、印刷層の上面の状態を確認した。
なお、表中には、剥離せずに基材上に残った区画の割合(剥離がない場合を「10」とする。)を記載し、印刷層にべたつきがあって、Xカット試験を実施しなかった場合、「べたつきあり」と記載する。
【0115】
<爪摩擦試験>
印刷層の上面を爪で10回擦って、以下の基準に従って評価した。
○:剥がれない。
△:強く擦ると剥がれる。
×:簡単に剥がれる。
<水浸漬試験>
小瓶にサンプル及び水(25℃)を入れて軽く振った後、印刷層の剥離の程度を観察した。なお、超音波を付与する場合、その周波数を38kHzとした。
【0116】
これらの結果を、以下の表1及び2に示す。
【0117】
【0118】
表1に示すように、3Dサポート材を使用して下地層を形成した場合、光硬化型インクで形成した印刷層との相性が良好であることが判った。
また、3Dサポート材を使用して下地層を形成した場合、印刷層の形成に使用する第2のインクの種類に関わらず、水への浸漬により簡単に印刷層(下地層)を剥離し得ることが判った。
さらに、3Dサポート材を使用して下地層を形成した場合、その厚さは薄い方が印刷層の強度に影響を与え難いようであった。水への浸漬による剥離のし易さは、下地層の厚さに依存しないことも確認することができた。
なお、サンプルNo.1A~4A及び9A~12Aでは、印刷層がべたつき、その強度が低かった。このような場合に、被覆層を形成するのに先立って、仮被覆層を形成しておくことが有効であると考えられる。
【0119】
【0120】
表2に示すように、ポリアリルアミン含有インクを使用して下地層を形成した場合、水系インクを使用して印刷層を形成すると、印刷層が白濁する傾向を示した。これは、第1のインクの溶剤の種類、第2のインクの種類等を検討すること、すなわち第1のインクと第2のインクとの組み合わせの選択により解消することができると考えられる。
また、超音波付与60分後において残存する印刷層(下地層)は、擦ることにより簡単に剥離することができた。
さらに、wet on wetで印刷層を形成する場合より、ポリアリルアミン含有インクを硬化又は固化した後に、印刷層を形成する場合の方が水への浸漬で印刷層(下地層)を剥離し易いことが判った。
【0121】
3-1.被覆層の形成
(サンプルNo.1C)
<被覆層形成工程>
まず、サンプルNo.5Aの印刷層及び下地層の一部を覆うように、バーコート法により、第3のインク1を液滴供給して、厚さ22.9μmの液状被膜を形成した。
次に、液状被膜に対して、室温(25℃)で、紫外線を照射した。これにより、液状被膜を硬化させて、被覆層を形成した。なお、紫外線の強度を466mW/cm2とし、紫外線のエネルギー量を336mJ/cm2とした。
【0122】
(サンプルNo.2C)
第3のインク1に代えて第3のインク2を使用した以外は、サンプルNo.1Cと同様にして、被覆層を形成した。
(サンプルNo.3C)
被覆層を印刷層及び下地層の全体を覆うように形成した以外は、サンプルNo.1Cと同様にして、被覆層を形成した。
【0123】
3-2.評価
<被覆層の品質確認>
被覆層を目視で観察することにより、画質ムラの有無について評価した。
<爪摩擦試験>
上記と同様にして行った。
<水浸漬試験>
上記と同様にして行った。
【0124】
これらの結果を、以下の表3に示す。
【0125】
【0126】
表3中「※」は、被覆層で覆われた部分の印刷層の剥離は認められず、被覆層で覆われていない部分の印刷層の剥離が認められたことを示す。
表3に示すように、被覆層を形成することにより、爪摩擦試験においても、印刷層の剥離が生じないことが明らかとなった。
また、被覆層を形成することにより、水への浸漬91時間後及び30分間の超音波付与によっても、印刷層の剥離が生じないことが確認された。
【0127】
4.常温常湿環境下での時間経過の影響
(サンプルNo.1D)
100mm×160mmの基板3を使用した以外は、サンプルNo.5Aと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
(サンプルNo.2D)
100mm×160mmの基板3を使用した以外は、サンプルNo.3Cと同様にして、下地層、印刷層及び被覆層を形成した。
【0128】
次に、サンプルNo.1D及び2Dの印刷層及び被覆層について、形成直後と常温常湿環境下に3ヶ月放置後とにおける変化を確認した。
この結果を、以下の表4に示す。
【0129】
【0130】
表4に示すように、3カ月放置すると、被覆層を形成しない場合、印刷層(特に、色が薄い部分)において滲みの程度が悪化する傾向を示した。被覆層を形成することにより、滲みの程度に変化は見られなかったが、光沢が低下する傾向にあった。
また、3カ月放置すると、被覆層を形成しても、爪摩擦試験において、印刷層の剥離が生じ易くなるようであった。なお、水浸漬試験では、変化は認められなかった。
なお、サンプルの印刷層(画像)は、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックについて、各色ごと印刷濃度20~100%(20%刻み)で印刷している。また、マゼンタとイエローとの混色、シアンとイエローとの混色、シアンとマゼンタとの混色について、各色ごと印刷濃度40~200%(40%刻み)で印刷している。更に、シアンとマゼンタとイエローとの混色について、印刷濃度60~300%(60%刻み)で印刷している。
表4中の「カラー濃度20%のみ剥離」とは、印刷濃度20%のシアン、印刷濃度20%のマゼンタ、印刷濃度20%のイエロー、及び印刷濃度20%のブラックが剥離することを意味する。
【0131】
5.高温高湿環境下での時間経過の影響
サンプルNo.1D及び2Dの印刷層及び被覆層について、形成直後と高温高湿環境(35℃、90%RH)下に1日及び3ヶ月放置した後とにおける変化を確認した。
この結果を、以下の表5に示す。
【0132】
【0133】
表5に示すように、高温高湿環境下(過酷環境下)においては、被覆層を形成しても画質及び剥離強度が経時的に低下するようであった。
このような場合に、下地層、印刷層及び被覆層を基材から除去して、基材を再利用するのが有効であると考えられる。
【0134】
6.耐摩擦性の検討
(サンプルNo.1E)
100mm×160mmの基板3を使用した以外は、サンプルNo.5Aと同様にして、下地層及び印刷層を形成した。
(サンプルNo.2E)
100mm×160mmの基板3を使用した以外は、サンプルNo.3Cと同様にして、下地層、印刷層及び被覆層を形成した。
【0135】
次に、サンプルNo.1E及び2Eの印刷層及び被覆層に対して、次のようにして、乾摩擦試験及び湿摩擦試験を行った。
・乾摩擦試験:学振型摩擦試験機を使用して、サンプルに対して乾いた綿ブロードを、高さ0mm、荷重1000gで往復動させた。
・湿摩擦試験:学振型摩擦試験機を使用して、サンプルに対して水を染込ませた綿ブロードを、高さ0mm、荷重1000gで往復動させた。
【0136】
その結果、乾摩擦試験では、被覆層を形成しないと、100回の往復動動作で印刷層の剥離が観察された。これに対して、被覆層を形成することにより、2000回の往復動動作でも印刷層に傷が生じなかった。
また、湿摩擦試験では、被覆層を形成しないと、2000回の往復動動作で印刷層の表面に僅かに傷が確認された。これに対して、被覆層を形成することにより、2000回の往復動動作でも印刷層に傷が生じなかった。
【0137】
以上のようなことから、下地層の構成材料と印刷層の構成材料とを適宜組み合わせることにより、高い品質の印刷層を形成することができる。
印刷層の品質が要求する品質に適合しない場合、印刷層を下地層ごと剥離(除去)することができるので、基材を再利用することができる。
また、要求する品質を満足する印刷層が形成されれば、被覆層を形成することにより、最終製品としての印刷物とすることがでる。かかる印刷物では、長期にわたって印刷層の品質を保持することができる。
さらに、被覆層が経時劣化した場合には、下地層、印刷層及び被覆層を除去することにより、基材を再利用することができる。