(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072986
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】開閉器の操作機構、開閉器、及び開閉器の操作方法
(51)【国際特許分類】
H01H 33/28 20060101AFI20240522BHJP
H01H 33/42 20060101ALI20240522BHJP
H01H 31/02 20060101ALI20240522BHJP
H02B 5/02 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01H33/28 B
H01H33/42 B
H01H31/02 E
H01H33/42 Q
H02B5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183923
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003171
【氏名又は名称】株式会社戸上電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】福島 啓司
(57)【要約】
【課題】開閉器の手動入状態における主接点の不用意な開放を防止し、主接点の投入状態を保持することができる開閉器の操作機構、開閉器、及び開閉器の操作方法を提供することを目的とする。
【解決手段】操作機構30は、駆動機構40、出力伝達機構60、及びラッチ機構70から主に構成され、ラッチ機構70は第1のラッチ部71と第2のラッチ部72を有している。開閉器1が手動入状態で主接点が投入された状態で、主接点に電磁反発力が作用すると、第1のラッチ部71の被係合部711に第2のラッチ部72の係合部721が本係合位置で係合する。従って、電磁反発力が蓄勢ばね52による付勢力を上回ったとしても、主接点はラッチ機構70により機械的に保持されるため、不用意に主接点が開放されることを防止することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側電極に電気的に接続された固定接触子と、前記固定側電極に対して対向配置された可動側電極に電気的に接続された可動接触子とにより主接点を構成する開閉器の操作機構において、
手動操作で回転させる手動ハンドルと、
該手動ハンドルによる駆動力を蓄勢する蓄勢ばね、該蓄勢ばねの一端に接続されて前記手動ハンドルの操作力を出力するハンドル軸に連接されたハンドルアーム、前記蓄勢ばねの他端に接続されて該蓄勢ばねによる放勢力を出力するトグルアームを有するトグル機構と、
前記蓄勢ばねの放勢力を伝達する主軸を有するとともに、一端が前記可動接触子、他端が前記主軸にそれぞれ接続され、前記主軸の回転力を往復動に変換して前記可動接触子を前記固定接触子に対して接離する方向に移動可能に保持されたロッドを有する出力伝達機構と、
被係合部を有し前記主軸に軸支された第1のラッチ部、前記ハンドルアームにリンクを介して連結され前被記係合部と係合可能な係合部が形成された第2のラッチ部を有し、前記手動ハンドルの操作に応じて前記係合部が前記被係合部に係合可能な係合位置と前記係合部が前記被係合部から離脱する解除位置との間で移動可能なラッチ機構と、を備える
開閉器の操作機構。
【請求項2】
前記第2のラッチ部は、前記リンクに形成された長孔にスライド自在に連結され、
前記手動ハンドルの操作に連動する前記リンクの往復動作に従って、前記第2のラッチ部が前記長孔に沿ってスライドすることで、前記第1のラッチ部と前記第2のラッチ部との係合位置または解除位置が切り替えられる
請求項1に記載の開閉器の操作機構。
【請求項3】
前記手動ハンドルにより前記開閉器を手動入状態と自動操作可能状態とに切り替えが可能であり、
前記ラッチ機構は、
前記手動ハンドルを手動入状態に操作した場合に、前記第1のラッチ部の被係合部に前記第2のラッチ部の係合部が係合し、
前記手動ハンドルを自動操作可能状態に操作した場合に、前記第1のラッチ部の被係合部と前記第2のラッチ部の係合部との係合状態が解除される
請求項1または請求項2に記載の開閉器の操作機構。
【請求項4】
前記手動ハンドルにより前記開閉器を手動入状態と手動切状態とに切り替えが可能であり、
前記ラッチ機構は、
前記手動ハンドルを手動入状態に操作した場合に、前記第1のラッチ部の被係合部に前記第2のラッチ部の係合部が係合し、
前記手動ハンドルを手動切状態に操作した場合に、前記第1のラッチ部の被係合部と前記第2のラッチ部の係合部との係合状態が解除される
請求項1または請求項2に記載の開閉器の操作機構。
【請求項5】
固定側電極に電気的に接続された固定接触子と、
該固定接触子と主接点を構成し、前記固定側電極に対して対向配置された可動側電極に電気的に接続された可動接触子と、
手動操作で回転させる手動ハンドル、該手動ハンドルによる駆動力を蓄勢する蓄勢ばねを有し、該蓄勢ばねによる放勢力を前記可動接触子に伝達する主軸を含む出力伝達機構を有する操作機構を備える開閉器において、
前記操作機構は、
一端が前記可動接触子、他端が前記主軸にそれぞれ接続され、前記主軸の回転力を往復動に変換して前記可動接触子を前記固定接触子に対して接離する方向に移動可能に保持されたロッドと、
前記手動ハンドルの操作力を出力するハンドル軸に連接されたハンドルアームと、
被係合部を有し前記主軸に軸支された第1のラッチ部、前記ハンドルアームにリンクを介して連結され前記被係合部と係合可能な係合部が形成された第2のラッチ部を有し、前記手動ハンドルの操作に応じて前記係合部が前記被係合部に係合可能な係合位置と前記係合部が前記被係合部から離脱する解除位置との間で移動可能なラッチ機構と、を備える
開閉器。
【請求項6】
固定側電極に電気的に接続された固定接触子と、前記固定側電極に対して対向配置された可動側電極に電気的に接続された可動接触子とにより主接点を構成し、蓄勢ばねによる放勢力を利用して前記主接点の投入動作を行う開閉器の操作方法において、
手動ハンドルを操作して、手動による主接点の投入を行う手動入状態に切り替える工程と、
前記手動ハンドルの操作に連動して、前記蓄勢ばねの放勢力を利用して前記可動接触子を前記主接点に投入する工程と、
前記蓄勢ばねにより前記主接点の投入を保持する工程と、
ラッチ機構の係合部と被係合部とを係合する工程と、を備える
開閉器の操作方法。
【請求項7】
前記手動ハンドルを手動入状態から、前記手動ハンドルの操作に連動して前記主接点が開放される手動切状態、または主接点の投入動作を自動制御可能な自動操作可能状態に切り替えることで、前記ラッチ機構による係合状態を解除し、前記主接点を開放する工程を有する
請求項6に記載の開閉器の操作方法。
【請求項8】
前記ラッチ機構の係合部と被係合部とを係合する工程は、
前記主接点に所定の電磁反発力が発生し前記可動接触子が開放側に移動した場合に、前記係合部と前記被係合部との間に所定の隙間が形成された仮係合位置から、前記隙間が閉塞される本係合位置での係合に切り替わる工程を含む
請求項6または請求項7に記載の開閉器の操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉器の操作機構、開閉器、及び開閉器の操作方法に関する。詳しくは開閉器の手動入状態における主接点の不用意な開放を防止し、主接点の投入状態を保持することができる開閉器の操作機構、開閉器、及び開閉器の操作方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、変電所から引き出される高圧の電力配電線は、市中に立てられた多数の電柱により網目状に張り巡らされ、需要家に電力を供給するようになっている。このような各電柱には需要家の入り口に責任分界点用、又は作業区間、事故区間を切り離す配電線路区分用の開閉器が随所に設置され、例えば異常発生時や電気機器類の点検、及び修理作業時等に、この開閉器を操作して電流の流れを一時的に遮断するようになっている。
【0003】
この種の開閉器としては、電磁アクチュエータによる電磁的な反発力を利用して、固定接触子と可動接触子との主接点の開閉動作を自動制御するものが知られている(特許文献1)。特許文献1に開示の電磁アクチュエータは、磁路を形成するヨークと、ヨーク内を可動するように設けられたアーマチュアと、アーマチュアを可動または投入保持するための永久磁石と、ヨーク内の磁束を増減させるソレノイドコイルと、操作ロッドから主に構成されている。
【0004】
操作ロッドには、閉路時に固定接触子と可動接触子とを加圧するために設けられた蓄勢ばねが取り付けられており、その先には真空バルブ可動軸と連結されている。また、アーマチュアには、真空バルブの可動接触子を開放した際に開放状態を保持するための力が開路ばねにより加えられている。
【0005】
そして、この電磁アクチュエータによる開閉動作は、投入状態で永久磁石による磁束とともに、ソレノイドコイルの励磁による永久磁石の磁束と同方向の磁束が生じると、アーマチュアがギャップを縮める方向に吸引される。これにより、アーマチュアとともに真空バルブ可動軸と連結されている操作ロッドが押上げられて投入状態となる。投入状態では、ソレノイドコイルは無励磁であり、永久磁石による磁力のみで投入状態が保持される。
【0006】
一方、開放状態では、ソレノイドコイルの励磁による永久磁石の磁束と逆方向の磁束が生じると、ヨーク内の磁束が減少し、蓄勢ばね、及び開路ばねによる開路方向への荷重の作用により、アーマチュアが開路方向に移動する。これにより、アーマチュアとともに操作ロッドが引下げられ、開路状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、通常、開閉器は前記した通り自動で投入、及び開放の制御が行われているが、停電や配電機器の定期点検等が必要な場合には、手動ハンドルを操作して自動操作可能状態から手動入状態に切り替える必要がある。そして、自動操作可能状態から手動入状態に切り替えた場合には、操作機構の蓄勢ばねの付勢力で主接点の投入保持がされるが、短絡電流通電時に主接点に作用する電磁反発力が蓄勢ばねによる保持力を上回ると、主接点を開放してしまい、短絡電流の遮断能力を有しない開閉器は破壊に至る可能性もある。
【0009】
このような不具合を防止するために、例えば蓄勢ばねの付勢力を強化することも考えられるが、開閉器の自動制御においては主接点の投入、及び保持力が蓄勢ばねの付勢力を上回る必要があるため、電磁アクチュエータの大型化が必要となり、開閉器内のスペース上、或いはレイアウト上の制約が生じるとともに、設備コストの高騰を招くという問題がある。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、開閉器の手動入状態における主接点の不用意な開放を防止し、投入状態を保持することができる開閉器の操作機構、開閉器、及び開閉器の操作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明の開閉器の操作機構は、固定側電極に電気的に接続された固定接触子と、前記固定側電極に対して対向配置された可動側電極に電気的に接続された可動接触子とにより主接点を構成する開閉器の操作機構において、手動操作で回転させる手動ハンドルと、該手動ハンドルによる駆動力を蓄勢する蓄勢ばね、該蓄勢ばねの一端に接続されて前記手動ハンドルの操作力を出力するハンドル軸に連接されたハンドルアーム、前記蓄勢ばねの他端に接続されて該蓄勢ばねによる放勢力を出力するトグルアームを有するトグル機構と、前記蓄勢ばねの放勢力を伝達する主軸を有するとともに、一端が前記可動接触子、他端が前記主軸にそれぞれ接続され、前記主軸の回転力を往復動に変換して前記可動接触子を前記固定接触子に対して接離する方向に移動可能に保持されたロッドを有する出力伝達機構と、被係合部を有し前記主軸に軸支された第1のラッチ部、前記ハンドルアームにリンクを介して連結され前記被係合部と係合可能な係合部が形成された第2のラッチ部を有し、前記手動ハンドルの操作に応じて前記係合部が前記被係合部に係合可能な係合位置と前記係合部が前記被係合部から離脱する解除位置との間で移動可能なラッチ機構とを備える。
【0012】
ここで、開閉器の操作機構が、手動操作で回転させる手動ハンドルを備えることにより、手動操作型の開閉器においては、手動ハンドルを操作することで主接点の投入、及び開放を操作することができる。また、自動操作型の開閉器においては、通常時は手動ハンドルを自動操作可能状態として主接点の開閉動作を自動制御する一方で、停電時や配電機器の定期点検時には手動ハンドルを操作することで自動操作可能状態から手動入状態に切り替え、主接点の開閉動作を操作することができる。
【0013】
また、手動ハンドルの操作力を出力するハンドル軸に連接されたハンドルアームを備えることにより、手動ハンドルの操作に応じてハンドルアームの位置を切り替え、後記する通り、ハンドルアームに連動するラッチ機構を操作することができる。
【0014】
また、手動ハンドルによる駆動力を蓄勢する蓄勢ばねを有し、蓄勢ばねによる放勢力を利用して主接点の投入動作を行うトグル機構を備えることにより、ハンドルアームの操作速度に関わらず、一定速度で主接点の投入、及び開放を行うことができる。
【0015】
また、蓄勢ばねの放勢力を伝達する主軸を有する出力伝達機構を備えることにより、手動ハンドルの操作力、或いは電磁アクチュエータによる電磁的な操作力を、主軸を介して可動接触子に伝達し、固定接触子と可動接触子との主接点の開閉動作を行うことができる。
【0016】
また、出力伝達機構は、一端が可動接触子、他端が主軸にそれぞれ接続され、主軸の回転力を往復動に変換して可動接触子を固定接触子に対して接離する方向に移動可能に保持されたロッドをさらに備えることにより、主軸の回転動作を往復動作に変換することで、固定接触子と可動接触子との主接点の開閉動作を行うことができる。
【0017】
また、被係合部を有し主軸に軸支された第1のラッチ部、ハンドルアームにリンクを介して連結され被係合部と係合可能な係合部が形成された第2のラッチ部を有し、手動ハンドルの操作に応じて係合部が被係合部に係合可能な係合位置と係合部が被係合部から離脱する解除位置との間で移動可能なラッチ機構を備えることにより、手動ハンドルの操作に応じて第1のラッチ部と第2のラッチ部との係合、または非係合を切り替えることができる。
【0018】
そして、第1のラッチ部と第2のラッチ部とを係合することで、主軸の回転がロックされて固定接触子と可動接触子との投入状態が機械的に維持され、電磁反発力等による主接点の不用意な開放を防止し、主接点の投入状態を保持することができる。また、ラッチ機構は被係合部と係合部とからなるシンプルな構成であるため、レイアウト上の制約のある開閉器内でも余裕をもって配置することができる。
【0019】
また、第2のラッチ部は、リンクに形成された長孔にスライド自在に連結され、手動ハンドルの操作に連動するリンクの往復動作に従って、第2のラッチ部が長孔に沿ってスライドすることで、第1のラッチ部と第2のラッチ部との係合位置または解除位置が切り替えられる場合には、第1のラッチ部と第2のラッチ部との係合位置と解除位置との切り替えを手動ハンドルの操作により行うことができる。
【0020】
また、手動ハンドルにより開閉器を手動入状態と自動操作可能状態とに切り替えが可能であり、ラッチ機構は、手動ハンドルを手動入状態に操作すると第1のラッチ部の被係合部に第2のラッチ部の係合部が係合し、手動ハンドルを自動操作可能状態に操作すると第1のラッチ部の被係合部と第2のラッチ部の係合部との係合状態が解除される場合には、自動操作型の開閉器においては、自動操作可能状態から手動入状態に切り替え、蓄勢ばねの付勢力により主接点の投入保持がされている状態で主接点に電磁反発力が作用し、この電磁反発力が蓄勢ばねの付勢力を上回ったとしても、ラッチ機構の係合により主接点の不用意な開放を防止することができる。
【0021】
また、手動ハンドルにより開閉器を手動入状態と手動切状態とに切り替えが可能であり、ラッチ機構は、手動ハンドルを手動入状態に操作すると第1のラッチ部の被係合部に第2のラッチ部の係合部が係合し、手動ハンドルを手動切状態に操作すると第1のラッチ部の被係合部と第2のラッチ部の係合部との係合状態が解除される場合には、手動操作型の開閉器においては、手動ハンドルの操作による主接点の投入に同期して第1のラッチ部と第2のラッチ部とが係合する。そして、蓄勢ばねの付勢力により主接点の投入保持がされている状態で主接点に電磁反発力が作用し、この電磁反発力が蓄勢ばねの付勢力を上回ったとしても、ラッチ機構の係合により主接点の不用意な開放を防止することができる。
【0022】
前記の目的を達成するために、本発明の開閉器は、固定側電極に電気的に接続された固定接触子と、該固定接触子と主接点を構成し、前記固定側電極に対して対向配置された可動側電極に電気的に接続された可動接触子と、手動操作で回転させる手動ハンドル、該手動ハンドルによる駆動力を蓄勢する蓄勢ばねを有し、該蓄勢ばねによる放勢力を前記可動接触子に伝達する主軸を含む出力伝達機構を有する操作機構を備える開閉器において、前記操作機構は、一端が前記可動接触子、他端が前記主軸にそれぞれ接続され、前記主軸の回転力を往復動に変換して前記可動接触子を前記固定接触子に対して接離する方向に移動可能に保持されたロッドと、前記手動ハンドルの操作力を出力するハンドル軸に連接されたハンドルアームと、被係合部を有し前記主軸に軸支された第1のラッチ部、前記ハンドルアームにリンクを介して連結され前記被係合部と係合可能な係合部が形成された第2のラッチ部を有し、前記手動ハンドルの操作に応じて前記係合部が前記被係合部に係合可能な係合位置と前記係合部が前記被係合部から離脱する解除位置との間で移動可能なラッチ機構とを備える。
【0023】
以上の構成により、自動操作型の開閉器においては、通常時は自動操作可能状態として主接点の開閉動作を自動制御する一方で、停電時や配電機器の定期点検時には手動ハンドルを操作することで自動操作可能状態から手動入状態に切り替えることが可能である。そして、手動入状態への切り替えに連動して、第1のラッチ部と第2のラッチ部とが係合するため、蓄勢ばねの付勢力により主接点の投入保持がされている状態で、主接点に電磁反発力が作用して電磁反発力が蓄勢ばねの付勢力を上回ったとしても、ラッチ機構の係合により主接点の不用意な開放を防止することができる。
【0024】
また、手動操作型の開閉器においては、手動切状態から手動入状態に操作して主接点を投入する場合には、手動入状態への切り替えに連動して、第1のラッチ部と第2のラッチ部とが係合することで、蓄勢ばねの付勢力により主接点の投入保持がされている状態で、主接点に電磁反発力が作用して電磁反発力が蓄勢ばねの付勢力を上回ったとしても、ラッチ機構の係合により主接点の不用意な開放を防止することができる。
【0025】
前記の目的を達成するために、本発明の開閉器の操作方法は、固定側電極に電気的に接続された固定接触子と、前記固定側電極に対して対向配置された可動側電極に電気的に接続された可動接触子とにより主接点を構成し、蓄勢ばねによる放勢力を利用して前記主接点の投入動作を行う開閉器の操作方法において、手動ハンドルを操作して、手動による主接点の投入を行う手動入状態に切り替える工程と、前記手動ハンドルの操作に連動して、前記蓄勢ばねの放勢力を利用して前記可動接触子を前記主接点に投入する工程と、前記蓄勢ばねにより前記主接点の投入を保持する工程と、ラッチ機構の係合部と被係合部とを係合する工程とを備える。
【0026】
以上の構成により、手動ハンドルを操作して手動入状態に切り替えると、それに連動してラッチ機構の係合部が被係合部に係合するため、蓄勢ばねの付勢力により主接点の投入保持がされている状態で主接点に電磁反発力が作用し、電磁反発力が蓄勢ばねの付勢力を上回ったとしても、ラッチ機構の係合により主接点の不用意な開放を防止することができる。
【0027】
また、手動ハンドルを手動入状態から、手動ハンドルの操作に連動して主接点が開放される手動切状態、または主接点の投入動作を自動制御可能な自動操作可能状態に切り替えることで、ラッチ機構による係合状態を解除し、主接点を開放する工程を有する場合には、手動操作型の開閉器においては、手動切状態に操作することで、ラッチ機構による係合状態が解除された主接点を開放することができる。また、自動操作型の開閉器においては、自動操作可能状態に切り替え後の主接点は、ラッチ機構による係合状態が解除され、電磁アクチュエータによる自動制御により投入保持される。
【0028】
また、ラッチ機構の係合部と被係合部とを係合する工程は、主接点に所定の電磁反発力が発生し可動接触子が開放側に移動した場合に、係合部と被係合部との間に所定の隙間が形成された仮係合位置から、隙間が閉塞される本係合位置での係合に切り替わる工程を含む場合には、電磁反発力が作用した場合にのみ本係合位置において強固に係合することができるとともに、隙間が形成されていることでラッチ機構は非係合位置から仮係合位置への円滑な移動を実現することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る開閉器の操作機構、開閉器、及び開閉器の操作方法は、開閉器の手動入状態における主接点の不用意な開放を防止し、主接点の投入状態を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係る開閉器の全体図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る開閉器の操作機構を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る開閉器の手動入状態における主接点の投入動作とラッチ機構との関係を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る開閉器の自動操作可能状態における主接点の投入動作とラッチ機構との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係る開閉器の操作機構、開閉器、及び開閉器の操作方法について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、各図においては、説明の便宜上、開閉器を設置した状態において、底面から上面に向かう方向を上方向と定義し、上方向の反対方向を下方向と定義し、上方向、及び下方向により表される軸方向を鉛直方向と定義する。
【0032】
まず、本発明を適用した実施形態に係る開閉器1の全体構成について、
図1、及び
図2を用いて説明する。開閉器1は、例えば需要家の入り口に責任分界点用として電柱に設置される柱上開閉器であり、金属製のケース10内に各種の電源機器20が収納されている。
【0033】
ここで、必ずしも、開閉器1は柱上開閉器である必要はない。例えば、平常時の負荷電流を開閉でき、かつ電路の短絡状態における異常電流も投入できる開閉器であれば、どのような用途に使用される開閉器であってもよい。
【0034】
ケース10の一側の側面には、配電系統内の配電線に接続される電源側接続端子22を備える電源側ブッシング21aが設けられ、ケース10の他側の側面には、配電線に接続される負荷側接続端子23を有する負荷側ブッシング21bがそれぞれ設けられている(以下、電源側ブッシング21aと負荷側ブッシング21bを、まとめて「ブッシング21」という。)。また、電源側ブッシング21aには固定接触子24が接続固定されるとともに、負荷側ブッシング21bには可動接触子25が設けられている。
【0035】
ここで、
図1に示したブッシング21は、3本一組で一対、即ち合計6本のブッシング21を有する場合を示しているが、ブッシング21は1本、2本または4本以上を一組とし、また二対以上で構成されていてもよい。
【0036】
可動接触子25は、固定接触子24に対して接離可能に回転軸に軸支されており、可動接触子25が固定接触子24に接触している状態を主接点(回路)の投入状態とし、可動接触子25が固定接触子24から離間している状態を主接点(回路)の開放状態とする。そして、固定接触子24と可動接触子25との主接点の投入、及び開放は操作機構30により実現される。操作機構30は、駆動力(回転力)を発生させるための駆動機構40、駆動機構40で発生した駆動力を出力する出力伝達機構60、及び固定接触子24に対する可動接触子25の投入状態を機械的に保持するラッチ機構70から主に構成されている。
【0037】
駆動機構40は、第1の駆動部41と第2の駆動部42とから構成されている。第1の駆動部41として、開閉器1のケース10の正面側に取り付けられた手動ハンドル411がハンドル軸412に連接されている。手動ハンドル411は、作業者が把持して一方側、及び他方側に回転させることで、後記する第2の駆動部42による自動制御が可能な「自動」位置(自動操作可能状態)と、手動操作が可能な「手動入」位置(手動入状態)とに切り替えることができる。
【0038】
ここで、必ずしも、開閉器1は、第1の駆動部41による手動入状態と、第2の駆動部42による自動操作可能状態とに切り替えが可能な自動操作型の開閉器である必要はない。例えば、駆動機構40として、第1の駆動部41のみから構成され、手動ハンドル411の操作により可動接触子25の固定接触子24に対する主接点の投入、開放動作を行う手動操作型の開閉器であってもよい。なお、説明の便宜上、本発明の実施形態に係る開閉器1としては、自動操作型の開閉器に基づいて説明する。
【0039】
手動ハンドル411による操作力は、トグル機構50による放勢力として出力伝達機構60を介して可動接触子25へと伝達される。ここで、トグル機構50は周知の構造であり、手動ハンドル411の操作力を出力するハンドルアーム51、ハンドルアーム51の駆動力を蓄勢する蓄勢ばね52、及び蓄勢ばね52の放勢力を出力伝達機構60に出力するためのトグルアーム53から主に構成されている。
【0040】
第2の駆動部42は、手動ハンドル411を「自動」位置の状態において、自動で主接点の投入、及び開放を実現する駆動機構である。第2の駆動部42は、プランジャ421と、プランジャ421を吸引するソレノイド422とを備えており、ケース10の内部の所定の位置に固定具により固定されている。
【0041】
そして、図示しない操作スイッチにより投入指令が入力されるとソレノイド422が通電し、プランジャ421がソレノイド422の内部へと吸引され、連結されたトグルアーム53を回転させると同時に蓄勢ばね52を蓄勢する。このソレノイド422の吸引動作と蓄勢された蓄勢ばね52の放勢力とによりトグルアーム53を回転させて主接点の投入、及び開放を行うことができる。
【0042】
なお、本発明の実施形態のソレノイド422は、投入指令が入力されている間は常時通電が行われる常時励磁式のソレノイドを採用するが、投入指令時のみ瞬間的に通電が行われる瞬時励磁式のソレノイドを採用することも可能である。
【0043】
出力伝達機構60は、第1の駆動部41、及び第2の駆動部42による駆動力を可動接触子25に伝達するための機構であり、駆動力を回転力として伝達する主軸61、及び主軸の回転力を往復動に変換して可動接触子25に伝達するロッド62から構成されている。
【0044】
主軸61は、後記するラッチ機構70を構成する第1のラッチ部71に軸支され、この第1のラッチ部71の一端とトグルアーム53とが連結ボルト63により連結されている。また、ロッド62は長尺状であり、一端が連結アーム64を介して主軸61に連結され、他端が可動接触子25に連結されている。
【0045】
そして駆動機構40により出力された駆動力は、トグルアーム53から連結ボルト63を介して第1のラッチ部71に伝達し、第1のラッチ部71の回転力が主軸61に伝達される。主軸61に伝達された回転力は連結アーム64を介してロッド62の往復動に変換され、このロッド62の往復動により可動接触子25を固定接触子24に対して接離する方向に駆動させ、主接点の投入、及び開放動作が可能となる。
【0046】
ラッチ機構70は、被係合部711を有する略V字状の第1のラッチ部71と、被係合部711に係合する係合部721が形成された略V字状の第2のラッチ部72とから構成されている。第1のラッチ部71は、前記した通り、略中間部分に挿通孔(符号を付さない)が形成され、該挿通孔に主軸61が軸支されている。そして、第1のラッチ部71の一端側が前記した被係合部711となり、被係合部711とは異なる他端側が連結ボルト63と接続されている。
【0047】
ここで、必ずしも、第1のラッチ部71、及び第2のラッチ部72は略V字状である必要はなく、略L字状や略I字状のように、第1のラッチ部71と第2のラッチ部72とが係合可能な形状であれば、適宜変更することができるものとする。
【0048】
第2のラッチ部72は、一端側が被係合部711に係合する係合部721が形成され、他端側がリンク73を介してハンドルアーム51に接続されている。リンク73は、第2のラッチ部72との連結部分に長孔が形成されており、リンク73の動作に従って第2のラッチ部72の連結部分が所定の距離だけスライド自在に接続されている。
【0049】
次に、
図3、及び
図4に基づいて、主接点の投入動作とラッチ機構70の関係について説明する。なお、
図3、及び
図4の下段の図は、上段の図のうち、主にラッチ機構70と出力伝達機構60を抜き出した図である。また、前記の通り、本発明の実施形態においては自動操作型の開閉器の動作を前提として説明するが、手動操作型の開閉器においては、以下の説明において「自動」位置を「手動切」と読み替えるものとする。
【0050】
<手動投入動作:開放状態→投入状態>
図3(a)に示されるように、手動ハンドル411が「自動」位置にあり、第2の駆動部42のソレノイド422が非通電状態である場合には、可動接触子25は固定接触子24から離間した位置にあり、主接点は開放状態となっている。
【0051】
この状態から手動ハンドル411を「自動」位置から「手動入」位置に向けて回転(紙面に向かって時計回りに回転)させると、それに連動してハンドルアーム51と蓄勢ばね52も時計回りに回転しながら蓄勢ばね52が圧縮され、ハンドルアーム51と蓄勢ばね52とが一直線にとなる死点を形成したときに蓄勢ばね52は最大に圧縮される。
【0052】
さらに手動ハンドル411を時計方向に回転させ、蓄勢ばね52が死点を超えた直後に圧縮された蓄勢ばね52が放勢され、トグルアーム53がクイック動作する。この時、蓄勢ばね52の放勢力は、トグルアーム53を反時計回りに回転させ、係る回転力が出力伝達機構60を通じて可動接触子25に伝達される。
【0053】
そして、可動接触子25が固定接触子24に向けて回転し、
図3(b)に示すように、主接点が投入されて開閉器1を閉路状態とすることができる。このトグル機構50により、手動ハンドル411の操作速度に関わらず、蓄勢ばね52が死点を過ぎるとトグルアーム53をクイック動作させ、可動接触子25を固定接触子24に即座に投入動作することが可能となる。
【0054】
また蓄勢ばね52の放勢力により、トグルアーム53に連結されている連結ボルト63が第1のラッチ部71を下方向に押し下げ、第1のラッチ部71を時計方向に回転させることで、この回転力が主軸61から連結アーム64、及びロッド62を通じて可動接触子25に伝達され、可動接触子25が固定接触子24に投入される。
【0055】
一方、蓄勢ばね52のクイック動作に連動して、ハンドルアーム51は時計方向に回転する。ハンドルアーム51の回転動作により、ハンドルアーム51にリンク73を介して接続された第2のラッチ部72はリンク73の長孔731に沿ってスライド移動しながら時計方向に回転する。このとき、同じく時計方向に回転する第1のラッチ部71の被係合部711が第2のラッチ部72の係合部721に係合して、ラッチ機構70が係合状態となる(
図3(b)の下段参照)。
【0056】
なお、ラッチ機構70は、手動ハンドル411による切り替え操作の直後は所定の隙間(クリアランス)が形成される仮係合位置で係合される。そして、主接点に電磁反発力が生じた場合に、第1のラッチ部71が係る隙間を閉塞する方向に移動して本係合位置で強固に係合するように構成される。そのため、主接点が蓄勢ばね52の付勢力により保持された状態で主接点に電磁反発力が作用し、電磁反発力が蓄勢ばね52の付勢力を上回ることがあったとしても、ラッチ機構70による係合により主接点の不用意な開放を防止することができる。
【0057】
ここで、必ずしも、ラッチ機構70は、主接点に電磁反発力が作用した場合に本係合位置で係合される必要はない。例えば、手動ハンドル411の操作に連動して、第1のラッチ部71の被係合部711に第2のラッチ部72の係合部721が隙間なく強固に固定されるように構成してもよい。
【0058】
また、必ずしも、主接点に電磁反発力が生じた場合に、第1のラッチ部71が隙間を閉塞する方向に移動するように構成する必要はなく、第2のラッチ部72が隙間を閉塞する方向に移動するように構成してもよい。
【0059】
<手動開放動作:投入状態→開放状態>
手動による開放動作は、前記した動作と逆の動作を行うことで主接点を開放することができる。即ち、手動ハンドル411を「手動入」位置から「自動」位置に反時計方向に回転させることにより、ハンドルアーム51も反時計方向に回転する。このとき、ハンドルアーム51は反時計方向、トグルアーム53は時計方向に回転することで、第1のラッチ部71と第2のラッチ部72とはそれぞれ反時計方向に回転して係合状態が解除される。このとき、第1のラッチ部71の回転力がロッド62を介して可動接触子25に伝達し、可動接触子25は固定接触子24から離間する方向に移動する(
図3(c))。
【0060】
<自動投入動作:開放状態→投入状態>
自動操作型の開閉器1では、手動ハンドル411を「自動」位置の自動操作可能状態に切り替えて第2の駆動部42を駆動して主接点の投入、及び開放がされる。自動操作可能状態における主接点の投入は、
図4(a)に示す状態で、ソレノイド422に対して通電指令を出すことでプランジャ421の吸引動作によりトグルアーム53を反時計方向に回転させ、蓄勢ばね52が蓄勢する。このとき、連結ボルト63が第1のラッチ部71を押し下げることで、主軸61が時計方向に回転し、係る回転力がロッド62を通じて可動接触子25を固定接触子24に対して駆動し、
図4(b)に示すような投入状態を実現することができる。
【0061】
<自動開放動作:投入状態→開放状態>
自動操作可能状態において、
図4(b)の状態から主接点の開放動作を行う場合には、ソレノイド422に対して通電停止の指令を出力し、プランジャ421の吸着力を喪失させることで、前記した自動投入動作とは逆の動作により、主接点の開放を実現することができる。即ち、蓄勢ばね52の放勢力でトグルアーム53を時計方向に回転させ、それに伴い第1のラッチ部71、及び主軸61も反時計方向に回転する。そして、主軸61に連結されているロッド62が押し上げられることで可動接触子25が主接点から離間する方向に駆動して、主接点の開放が行われる。
【0062】
以上のように、自動操作型の開閉器においては、手動ハンドル411が「自動」位置にあり自動操作可能状態である場合には、ラッチ機構70は常に解除された状態となるため、主接点の機械的な保持力が無くなるため、第2の駆動部42による主接点の投入、及び開放を行うことが可能となる。そして、手動ハンドル411を「手動入」位置に操作して手動入状態とすることで、ラッチ機構70が仮係合位置で係合し、主接点に電磁反発力が作用した場合に本係合位置で係合するように構成されることで、電磁反発力が蓄勢ばね52の付勢力を上回ったとしでも、ラッチ機構70の機械的な保持力により、主接点の不用意な開放を防止することができる。
【0063】
以上、本発明に係る開閉器の操作機構、開閉器、及び開閉器の操作方法は、開閉器の手動入状態における主接点の不用意な開放を防止し、主接点の投入状態を保持することができるものとなっている。
【符号の説明】
【0064】
1 開閉器
10 ケース
20 電源機器
21 ブッシング
21a 電源側ブッシング
21b 負荷側ブッシング
22 電源側接続端子
23 負荷側接続端子
24 固定接触子
25 可動接触子
30 操作機構
40 駆動機構
41 第1の駆動部
411 手動ハンドル
412 ハンドル軸
42 第2の駆動部
421 プランジャ
422 ソレノイド
50 トグル機構
51 ハンドルアーム
52 蓄勢ばね
53 トグルアーム
54 連結板
60 出力伝達機構
61 主軸
62 ロッド
63 連結ボルト
64 連結アーム
70 ラッチ機構
71 第1のラッチ部
711 被係合部
72 第2のラッチ部
721 係合部
73 リンク
731 長孔