(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072988
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】空調用レジスタ
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20240522BHJP
B60Q 3/14 20170101ALI20240522BHJP
B60Q 3/62 20170101ALI20240522BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
B60Q3/14
B60Q3/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183932
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野々川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】寺井 伸弘
(72)【発明者】
【氏名】長坂 茜
【テーマコード(参考)】
3K040
3L211
【Fターム(参考)】
3K040AA02
3K040CA05
3K040DA05
3K040EA04
3K040EA05
3K040GC04
3K040HB04
3L211BA43
3L211DA14
3L211DA83
3L211EA16
3L211EA33
3L211GA82
(57)【要約】
【課題】空調用レジスタにおいて、発光可能な領域を拡大し、視認性や意匠性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】車両(VH)に用いられる空調用レジスタ(100)は、リテーナ通風路(30S)を規定するリテーナ内壁(30W)と、リテーナ通風路(30S)の下流端に設けられたリテーナ開口部(306)とを有する筒状のリテーナ(30)と、リテーナ(30)の内部に設けられる蓋部材(60)であって、リテーナ開口部(306)から露出する露出面(606)、およびリテーナ開口部(306)と対向してリテーナ開口部(306)との間に吹出口を規定するリテーナ対向面を有する蓋部材(60)と、を備える。露出面(606)は、蓋部材(60)の外部に向かって発光可能に構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に用いられる空調用レジスタであって、
リテーナ通風路を規定するリテーナ内壁と、前記リテーナ通風路の下流端に設けられたリテーナ開口部とを有する筒状のリテーナと、
前記リテーナの内部に設けられる蓋部材であって、前記リテーナ開口部から露出する露出面、および前記リテーナ開口部と対向して前記リテーナ開口部との間に吹出口を規定するリテーナ対向面を有する蓋部材と、を備え、
前記露出面は、前記蓋部材の外部に向かって発光可能に構成される、
空調用レジスタ。
【請求項2】
請求項1に記載の空調用レジスタであって、
さらに、前記露出面を発光させるための光を出射する発光部を備える、
空調用レジスタ。
【請求項3】
請求項2に記載の空調用レジスタであって、
前記発光部は、前記蓋部材の内部に配置され、
前記露出面は、出射された前記光を前記蓋部材の外部に向かって透過可能に構成される、
空調用レジスタ。
【請求項4】
請求項2に記載の空調用レジスタであって、
前記露出面は、導光体を有し、
前記発光部は、出射した前記光を前記導光体に導入可能な位置に配置される、
空調用レジスタ。
【請求項5】
請求項2に記載の空調用レジスタであって、
さらに、前記発光部を制御する発光制御部と、
空調に関する空調情報を取得するための空調情報取得部と、を備え、
前記発光制御部は、前記空調情報に関連付けて前記発光部を発光させる、
空調用レジスタ。
【請求項6】
請求項5に記載の空調用レジスタであって、
前記空調情報は、前記吹出口から吹き出される空気の風向を含み、
前記発光制御部は、前記風向に関連付けた発光方向に従って前記発光部を発光させる、
空調用レジスタ。
【請求項7】
請求項5に記載の空調用レジスタであって、
前記空調情報は、空調温度と気温との少なくともいずれかを含む温度情報を含み、
前記発光制御部は、前記温度情報に関連付けた色で前記発光部を発光させる、
空調用レジスタ。
【請求項8】
請求項2に記載の空調用レジスタであって、
さらに、前記発光部を制御する発光制御部と、
前記空調用レジスタが搭載される車両に関する車両情報を取得するための車両情報取得部と、を備え、
前記発光制御部は、前記車両情報に関連付けて前記発光部を発光させる、
空調用レジスタ。
【請求項9】
請求項8に記載の空調用レジスタであって、
前記車両情報は、前記車両の走行方向を含み、
前記発光制御部は、前記走行方向に関連付けた発光方向に従って前記発光部を発光させる、
空調用レジスタ。
【請求項10】
請求項1に記載の空調用レジスタであって、
前記リテーナ開口部は、一辺と、前記一辺と対向する他辺とを有し、
前記リテーナ対向面は、前記吹出口として、前記リテーナ開口部の一辺との間の第一吹出口と、前記リテーナ開口部の他辺との間の第二吹出口とを規定し、
前記第一吹出口および前記第二吹出口は、前記第一吹出口から吹き出される気流の方向と、前記第二吹出口から吹き出される気流の方向とが互いに交差するように構成される、
空調用レジスタ。
【請求項11】
請求項10に記載の空調用レジスタであって、
さらに、前記リテーナ内壁のうち前記リテーナ開口部の一辺と連続する第一リテーナ内壁と前記蓋部材との間に規定され、前記第一吹出口に連通する第一リテーナ通風路と、
前記リテーナ内壁のうち前記リテーナ開口部の他辺と連続する第二リテーナ内壁と前記蓋部材との間に規定され、前記第二吹出口に連通する第二リテーナ通風路と、
前記リテーナの内部に配置され、前記リテーナ通風路を前記第一リテーナ通風路と前記第二リテーナ通風路とに分流するための分流部とを備える、
空調用レジスタ。
【請求項12】
請求項11に記載の空調用レジスタであって、
前記蓋部材は、
前記リテーナの内部で回転可能に構成され、
前記回転によって、前記第一リテーナ通風路の流路抵抗を大きくし、前記第二リテーナ通風路の流路抵抗を小さくする第一回転状態と、前記第一リテーナ通風路の流路抵抗を小さくし、前記第二リテーナ通風路の流路抵抗を大きくする第二回転状態と、に切り替え可能である、
空調用レジスタ。
【請求項13】
請求項12に記載の空調用レジスタであって、
さらに、光を出射する発光部を備え、
前記露出面は、出射された前記光を前記蓋部材の外部に向かって透過可能に構成され、
前記発光部は、
前記蓋部材の内部に固定され、
前記蓋部材の回転とともに回転する、
空調用レジスタ。
【請求項14】
請求項11に記載の空調用レジスタであって、
前記分流部は、前記第一リテーナ通風路に連通する流路の開度を小さくして前記第二リテーナ通風路に連通する流路の開度を大きくする第一分流状態と、前記第一リテーナ通風路に連通する流路の開度を大きくして前記第二リテーナ通風路に連通する流路の開度を小さくする第二分流状態とに切り替え可能である、
空調用レジスタ。
【請求項15】
請求項11に記載の空調用レジスタであって、
さらに、前記第一リテーナ通風路に設けられ、前記第一リテーナ内壁に交差する中心軸の周りを回転可能に構成される平板状の第一フィンと、
前記第二リテーナ通風路に設けられ、前記第二リテーナ内壁に交差する中心軸の周りを回転可能に構成される平板状の第二フィンと、を備える、
空調用レジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調用レジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
ダクトの開閉度を調節するダンパと、ダンパの作動量を調節するノブと、ノブの操作量に応じて抵抗値を変化させる可変抵抗器と、可変抵抗器を利用してノブの操作量に応じて光の明るさや色が変化するように構成された光源と、通風口の周囲に配置された導光体とを備える空調用レジスタが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、発光可能な領域が通風口の周囲のみに限定されている。空調用レジスタでは、発光可能な領域を拡大したいといった要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、車両に用いられる空調用レジスタが提供される。この空調用レジスタは、リテーナ通風路を規定するリテーナ内壁と、前記リテーナ通風路の下流端に設けられたリテーナ開口部とを有する筒状のリテーナと、前記リテーナの内部に設けられる蓋部材であって、前記リテーナ開口部から露出する露出面、および前記リテーナ開口部と対向して前記リテーナ開口部との間に吹出口を規定するリテーナ対向面を有する蓋部材と、を備える。前記露出面は、前記蓋部材の外部に向かって発光可能に構成される。
この形態の空調用レジスタによれば、リテーナ開口部の露出面を発光領域として利用することにより、発光可能な領域を拡大し、視認性や意匠性を向上させることができる。
(2)上記形態の空調用レジスタであって、さらに、前記露出面を発光させるための光を出射する発光部を備えてよい。
この形態の空調用レジスタによれば、簡易な構成により露出面を発光させることができる。
(3)上記形態の空調用レジスタであって、前記発光部は、前記蓋部材の内部に配置されてよく、前記露出面は、出射された前記光を前記蓋部材の外部に向かって透過可能に構成されてよい。
この形態の空調用レジスタによれば、蓋部材を発光部の配置領域として利用することにより、発光部の設置に伴う空調用レジスタの大型化を抑制することができる。
(4)上記形態の空調用レジスタであって、前記露出面は、導光体を有してよく、前記発光部は、出射した前記光を前記導光体に導入可能な位置に配置されてよい。
この形態の空調用レジスタによれば、露出面を面発光させることができ、空調用レジスタの視認性を向上させることができる。
(5)上記形態の空調用レジスタであって、さらに、前記発光部を制御する発光制御部と、空調に関する空調情報を取得するための空調情報取得部と、を備えてよい。前記発光制御部は、前記空調情報に関連付けて前記発光部を発光させてよい。
この形態の空調用レジスタによれば、発光部の発光処理を空調情報と関連付けることにより、露出面を、空調情報を表示する表示部として機能させることができる。
(6)上記形態の空調用レジスタであって、前記空調情報は、前記吹出口から吹き出される空気の風向を含んでよい。前記発光制御部は、前記風向に関連付けた発光方向に従って前記発光部を発光させてよい。
この形態の空調用レジスタによれば、露出面を、風向を表示する表示部として利用することができる。
(7)上記形態の空調用レジスタであって、前記空調情報は、空調温度と気温との少なくともいずれかを含む温度情報を含んでよい。前記発光制御部は、前記温度情報に関連付けた色で前記発光部を発光させてよい。
この形態の空調用レジスタによれば、露出面を、温度情報を表示する表示部として機能させることができる。
(8)上記形態の空調用レジスタであって、さらに、前記発光部を制御する発光制御部と、前記空調用レジスタが搭載される車両に関する車両情報を取得するための車両情報取得部と、を備えてよい。前記発光制御部は、前記車両情報に関連付けて前記発光部を発光させてよい。
この形態の空調用レジスタによれば、露出面を、車両情報を表示する表示部として利用することができる。
(9)上記形態の空調用レジスタであって、前記車両情報は、前記車両の走行方向を含んでよい。前記発光制御部は、前記走行方向に関連付けた発光方向に従って前記発光部を発光させてよい。
この形態の空調用レジスタによれば、露出面を、車両の走行方向を表示する表示部として利用することができる。
(10)上記形態の空調用レジスタであって、前記リテーナ開口部は、一辺と、前記一辺と対向する他辺とを有してよい。前記リテーナ対向面は、前記吹出口として、前記リテーナ開口部の一辺との間の第一吹出口と、前記リテーナ開口部の他辺との間の第二吹出口とを規定してよい。前記第一吹出口および前記第二吹出口は、前記第一吹出口から吹き出される気流の方向と、前記第二吹出口から吹き出される気流の方向とが互いに交差するように構成されてよい。
この形態の空調用レジスタによれば、気流の流量のバランスを調節するという簡易な方法により、空調用レジスタから吹き出される気流の流動方向を調節することができる。
(11)上記形態の空調用レジスタであって、さらに、前記リテーナ内壁のうち前記リテーナ開口部の一辺と連続する第一リテーナ内壁と前記蓋部材との間に規定され、前記第一吹出口に連通する第一リテーナ通風路と、前記リテーナ内壁のうち前記リテーナ開口部の他辺と連続する第二リテーナ内壁と前記蓋部材との間に規定され、前記第二吹出口に連通する第二リテーナ通風路と、前記リテーナの内部に配置され、前記リテーナ通風路を前記第一リテーナ通風路と前記第二リテーナ通風路とに分流するための分流部とを備えてよい。
この形態の空調用レジスタによれば、簡易な構成により、第一リテーナ通風路および第二リテーナ通風路に空気を分流させることができる。
(12)上記形態の空調用レジスタであって、前記蓋部材は、前記リテーナの内部で回転可能に構成されてよい。前記回転によって、前記第一リテーナ通風路の流路抵抗を大きくし、前記第二リテーナ通風路の流路抵抗を小さくする第一回転状態と、前記第一リテーナ通風路の流路抵抗を小さくし、前記第二リテーナ通風路の流路抵抗を大きくする第二回転状態と、に切り替え可能であってよい。
この形態の空調用レジスタによれば、蓋部材の回転という簡易な方法によって、空調用レジスタから吹き出される空気の流動方向を切り替えることができる。
(13)上記形態の空調用レジスタであって、さらに、光を出射する発光部を備えてよい。前記露出面は、出射された前記光を前記蓋部材の外部に向かって透過可能に構成されてよい。前記発光部は、前記蓋部材の内部に固定されてよく、前記蓋部材の回転とともに回転してよい。
この形態の空調用レジスタによれば、蓋部材の回転という簡易な方法により、空調用レジスタから吹き出される空気の風向と、発光部から出射される光の位置とを関連付けることができる。
(14)上記形態の空調用レジスタであって、前記分流部は、前記第一リテーナ通風路に連通する流路の開度を小さくして前記第二リテーナ通風路に連通する流路の開度を大きくする第一分流状態と、前記第一リテーナ通風路に連通する流路の開度を大きくして前記第二リテーナ通風路に連通する流路の開度を小さくする第二分流状態とに切り替え可能であってよい。
この形態の空調用レジスタによれば、分流部による流量調整という簡易な構成により、空調用レジスタから吹き出される空気の向きを切り替えることができる。
(15)上記形態の空調用レジスタであって、さらに、前記第一リテーナ通風路に設けられ、前記第一リテーナ内壁に交差する中心軸の周りを回転可能に構成される平板状の第一フィンと、前記第二リテーナ通風路に設けられ、前記第二リテーナ内壁に交差する中心軸の周りを回転可能に構成される平板状の第二フィンと、を備えてよい。
この形態の空調用レジスタによれば、第一フィンおよび第二フィンの回転という簡易な方法により、第一吹出口と第二吹出口との空気の流動方向を切り替えることができる。
本開示は、空調用レジスタ以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、空調用レジスタの製造方法、空調用レジスタを備える車両、空調装置、車両の制御方法、空調装置の制御方法、空調用レジスタの制御方法、これらの制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る空調用レジスタの全体構成を示す説明図。
【
図3】空調用レジスタの各部の構成を示す分解斜視図。
【
図5】発光部をオンにした状態の空調用レジスタの外観を示す説明図。
【
図7】中立状態の空調用レジスタの内部での空調用空気の流動方向を示す説明図。
【
図8】第一回転状態の空調用レジスタ内での空調用空気の流動方向を示す説明図。
【
図9】第2実施形態に係る空調用レジスタの外観構成を示す斜視図。
【
図11】中立状態の空調用レジスタ内での空調用空気の流動方向を示す説明図。
【
図12】第一分流状態の空調用レジスタ内での空気の流動方向を示す説明図。
【
図13】第一分流状態で発光部が発光した状態を示す説明図。
【
図14】発光部の発光状態の他の形態を示す説明図。
【
図15】第3実施形態に係る空調用レジスタの外観構成を示す斜視図。
【
図16】第3実施形態の空調用レジスタの発光部が発光した状態を示す説明図。
【
図18】中立状態の空調用レジスタ内での空調用空気の流動方向を示す説明図。
【
図19】第一分流状態の空調用レジスタにおける気流の流速のシミュレーション結果を示す説明図。
【
図20】第二分流状態の空調用レジスタにおける気流の流速のシミュレーション結果を示す説明図。
【
図21】第4実施形態に係る空調用レジスタの外観構成を示す斜視図。
【
図22】発光部をオンにした状態の空調用レジスタの外観を示す説明図。
【
図23】他の実施形態に係る空調用レジスタの外観構成を示す斜視図。
【
図24】第5実施形態に係る空調用レジスタの外観構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、本開示の第1実施形態に係る空調用レジスタ100の全体構成を示す説明図である。
図2は、空調用レジスタ100の外観構成を示す斜視図である。
図1に示すように、空調用レジスタ100は、車両VHの車室内などに搭載される。
図1の例では、空調用レジスタ100は、例えば、車両のハンドル12近傍のインストルメントパネル10に組み込まれている。空調用レジスタ100は、車両VHに備えられる図示しない空調装置から送風ダクトを通じて供給される空調用空気を車室内に吹き出す。なお、
図1ならびに
図1以降の各図に示すX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とも呼ぶ。向きを特定する場合には、正の方向を「+」、負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用し、各図の矢印が向かう向きを+方向、その反対方向を-方向として説明する。本開示では、X方向が、車両の車幅方向と一致し、+X方向が車両を後方から見た右方向と一致し、-X方向が左方向と一致し、Y方向が、車両の進行方向と一致し、+Y方向が後進方向と一致し、-Y方向が前進方向と一致し、Z方向は、鉛直方向と一致し、+Z方向は鉛直下向きと一致し、-Z方向は鉛直上向きと一致する場合を例に説明する。
【0009】
図1に示すように、空調用レジスタ100は、発光部70と、発光部70を制御する制御装置90とを備えている。また、
図2に示すように、空調用レジスタ100は、リテーナ30と、ベゼル20と、蓋部材60と、露出面606と、第一吹出口101と、第二吹出口102と、を備えている。
【0010】
発光部70は、露出面606を発光させるための光を出射する光源である。本実施形態では、発光部70は、複数のLED発光素子72が反射基板上にグリッド状に配列された、いわゆるLED照明モジュールである。
図2の例では、複数のLED発光素子72は、車幅方向に沿った3つの列L1,L2,L3に配列されている。発光部70は、
図2に示すように、空調用レジスタ100の内部、より具体的には、光透過性を有する蓋部材60の内部に配置されている。
【0011】
LED発光素子72は、電圧を加えることによって発光する半導体を含む素子である。本実施形態では、LED発光素子72は、赤、緑、青で発光可能なLED素子を合成した、いわゆるフルカラーLEDで構成されている。LED発光素子72は、砲弾型、表面実装(SMD:Surface Mount Device)型などの種々のタイプの素子を採用できる。LED発光素子72は、発光制御部922の制御のもとで、オンオフ、調光、調色などの種々の方法により発光する。
図2では、すべてのLED発光素子72がオフの状態が示されている。なお、LED発光素子72は、赤、緑、青で発光可能なものには限定されず、単色のみで発光するLEDが用いられてもよい。また、LED発光素子72は、蛍光物質との組み合わせや紫外・近紫外LEDを用いることによって、所望の色の光を発光できるように構成されていてもよい。
【0012】
図1に示すように、制御装置90は、中央処理装置としてのCPU92と、ROMやRAM等のメモリ94と、インターフェース回路96とを有するマイクロコンピュータ、あるいは論理回路である。メモリには、発光部70の発光処理を実現するための発光プログラム942など、本実施形態において提供される各機能を実現するためのプログラムが格納されている。CPUがこれらのプログラムをRAM等に展開して実行することによって、発光制御部922などの一部または全部の機能が実現される。インターフェース回路96には、発光処理に用いられる車両情報を取得するための車両情報取得部98と、発光処理に用いられる空調情報を取得するための空調情報取得部99とが接続されている。本実施形態では、発光制御部922は、不図示の空調装置からの空調用空気の供給のオンオフの状態を空調情報取得部99から取得し、空調用空気の供給のオンオフに合わせて、発光部70のオンオフを切り替える発光処理を実行する。
【0013】
車両情報取得部98は、車両VHに備えられる各種センサであり、車両VHに関する車両情報を取得する。車両情報取得部98には、例えば、加速度センサ、車速センサ、ヨーレートセンサ、自車位置センサ、および車両VHに設けられる各種ECUなどが含まれる。「車両情報」には、例えば、車両VHの走行方向が含まれる。車両情報には、さらに、車両VHの走行速度、車両VHの位置情報、車両VHの加速度、車両VHの重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)、車両VHの運転モードなどが含まれてもよい。車両VHの運転モードには、例えば、車両VHが自動運転モードであるか手動運転モードであるかに関する情報が含まれる。「自動運転」とは、ドライバが運転操作を行うことなく、駆動部制御とブレーキ制御と操舵角制御のすべてを自動で実行する運転を意味する。「手動運転」とは、駆動部制御のための操作(アクセルペダルの踏込)と、ブレーキ制御のための操作(ブレーキベダルの踏込)と、操舵角制御のための操作(ステアリングホイールの回転)を、ドライバが実行する運転を意味する。
【0014】
空調情報取得部99は、空調用レジスタ100あるいは車両VHに備えられる図示しない空調装置などに備えられる各種センサであり、空調に関する空調情報を取得する。空調情報取得部99には、例えば、車室の気温を取得する温度センサ、空調用レジスタ100に設けられる後述するフィン66の角度や向きを取得するセンサ、空調装置に設けられる各種センサおよび制御装置などが含まれる。「空調情報」には、空調用空気の供給のオンオフ、空調用レジスタ100から吹き出される空気の風向、湿度、ならびに温度情報が含まれる。「温度情報」には、空調温度と、車室内の気温との少なくともいずれかが含まれる。「空調温度」には、例えば、空調用レジスタ100から吹き出される空調用空気の温度と、空調装置の設定温度とが含まれ得る。空調情報には、さらに、風量、風速など、空調用レジスタ100および空調装置の各種設定に関する情報などが含まれてよい。本実施形態では、空調情報取得部99は、空調用空気の供給のオンオフのみを空調情報として取得する。
【0015】
図3は、空調用レジスタ100の各部の構成を示す分解斜視図である。
図3に示すように、リテーナ30は、リテーナ通風路30Sが内部に形成された筒状の構造体である。リテーナ30は、樹脂材料、金属材料、無機材料などの任意の材料を用いて形成することができる。リテーナ30は、例えば有色の樹脂材料を用いて、可視光を透過しないように構成されている。リテーナ30は、第一壁部302と、第二壁部304と、側壁部303とを有している。
【0016】
第一壁部302は、リテーナ30を構成する鉛直方向上側の壁面である。第二壁部304は、鉛直方向下側の壁面である。側壁部303は、第一壁部302と第二壁部304とを接続する壁面である。側壁部303には、後述するように、蓋部材60に設けられる突出部646と嵌合するための嵌合孔308が設けられている。第一壁部302の内壁面を「第一リテーナ内壁302W」とも呼び、第二壁部304の内壁面を「第二リテーナ内壁304W」とも呼ぶ。各壁部302,303,304の内壁面を総称して「リテーナ内壁30W」とも呼ぶ。リテーナ内壁30Wは、リテーナ通風路30Sを規定している。
【0017】
図3に示すように、リテーナ30の一端には、リテーナ開口部306が形成され、他端には流入口305が形成されている。流入口305は、車両の空調装置から供給される空気を受け入れる。リテーナ開口部306は、リテーナ通風路30Sの下流端に位置し、車室に面するように配置されている。リテーナ開口部306は、リテーナ通風路30Sを介して流入口305と連通している。リテーナ開口部306は、車幅方向に沿って長尺な略矩形形状を有している。リテーナ開口部306の長辺のうち一辺を「第一辺306s1」とも呼び、他辺を「第二辺306s2」とも呼ぶ。本実施形態では、第一辺306s1は、鉛直方向上側に配置され、リテーナ内壁30Wのうち第一リテーナ内壁302Wと連続している。第二辺306s2は、鉛直方向下側で第一辺306s1と対向して配置されている。第二辺306s2は、リテーナ内壁30Wのうち第二リテーナ内壁304Wと連続している。
【0018】
図2に示すように、後述する蓋部材60がリテーナ30の内部に収容された状態では、第一辺306s1と蓋部材60との間には、第一辺306s1に沿ったスリット状の第一吹出口101が形成され、第二辺306s2と蓋部材60との間には、第二辺306s2に沿ったスリット状の第二吹出口102が形成される。
図2に矢印ARで示すように、図示しない空調装置から供給される空調用空気は、流入口305からリテーナ通風路30Sへと流入し、第一吹出口101および第二吹出口102から車室へと吹き出される。なお、本開示では、空調用空気の流動方向において、所定の基準位置に対して空調装置に近い位置を「上流」あるいは「上流側」とも呼び、空調装置から遠い位置を「下流」、「下流側」、「前面」、あるいは「前面側」とも呼ぶことがある。
【0019】
蓋部材60は、内部を空調用空気が流動可能な中空の構造体である。本実施形態では、蓋部材60は、ポリカーボネート、アクリル、ならびにポリ塩化ビニルなどの樹脂材料、あるいはガラスなどの光透過性を有する部材を用いて形成されている。
図3に示すように、蓋部材60には、第一吹出口101と連通する第一スリット602と、第二吹出口102と連通する第二スリット604とが形成されている。蓋部材60は、略円柱状の外観形状を有しており、軸方向が車幅方向と一致するようにリテーナ通風路30Sに配置されている。なお、蓋部材60のすべての部材が光透過性を有してもよく、例えば、後述する前壁部62のみなど、蓋部材60のうち露出面606に対応する範囲のみが光透過性を有するように構成されてもよい。
【0020】
蓋部材60は、リテーナ通風路30Sのうちリテーナ開口部306の近傍で、リテーナ30の内部からリテーナ開口部306を覆うように配置されている。リテーナ開口部306が蓋部材60で覆われることにより、空調用レジスタ100の内部構造を外部から容易に視認できないように構成されている。なお、「蓋部材60がリテーナ開口部306を覆う」とは、空調用レジスタ100の内部構造を外部から視認できない程度に蓋部材60がリテーナ開口部306を覆うことを意味し、第一吹出口101や第二吹出口102などの空調用空気の流路が蓋部材60とリテーナ開口部306との間に形成されることを許容する。
【0021】
図2に示す露出面606は、蓋部材60のうちリテーナ開口部306から露出する部分である。露出面606には、例えば意匠性向上などを目的とする加飾を行うことができる。「加飾」とは、装飾的要素を加えることを意味する。加飾には、例えば、塗装、めっき、印刷、着色、表面処理、表面加工、装飾部材の付加などが含まれ得る。加飾は、空調用レジスタ100の製造時に行われてもよく、車両や空調用レジスタ100のユーザによって行われてもよい。
【0022】
ベゼル20は、ベゼル開口部206が形成された枠体である。ベゼル開口部206は、車幅方向に長尺な矩形形状を有しており、本実施形態では、リテーナ開口部306の形状と略一致するように形成されている。ベゼル20は、ベゼル開口部206がリテーナ開口部306と重なるように、リテーナ30の下流端に接続されており、ベゼル開口部206から露出面606を露出させている。これにより、ベゼル20は、露出面606とともに空調用レジスタ100の正面視での意匠面を構成している。
【0023】
図4は、蓋部材60の各部の構成を示す分解斜視図である。
図4に示すように、蓋部材60は、内部に発光部70を収容するようにして、前壁部62と、上壁部63と、下壁部64と、フィン66と、分流部68とが互いに組み付けられることにより形成されている。
【0024】
前壁部62は、蓋部材60の前側の壁面として機能する。前壁部62は、前面626と、凹状の軸嵌合部628とを備えている。軸嵌合部628は、前面626とは逆側である蓋部材60の背面に設けられており、分流部68が嵌合される。前面626は、空調用レジスタ100の外側に向かって凸状の曲面で構成されている。前面626は、その上端に位置する直線状の端辺623と、下端に位置する直線状の端辺624とを有している。前面626は、一部がリテーナ開口部306から露出し、それ以外の部分は、リテーナ内壁30Wと対向する。前面626のうちリテーナ開口部306から露出する面は、露出面606として機能する。蓋部材60のうちリテーナ内壁30Wと対向する面を、「リテーナ対向面」とも呼ぶ。
【0025】
上壁部63は、蓋部材60の上側の壁面として機能する。上壁部63は、上面部632と、上面部632の両端に連続される2枚の側壁部634とを備えている。上面部632には、フィン66に設けられる突出部662と嵌合するための嵌合孔638がフィン66と同数だけ形成されている。上面部632の前面側には直線状の端辺632Eが形成されている。端辺632Eは、蓋部材60が形成された状態では、前壁部62の端辺623と離間かつ対向している。これにより、端辺632Eと端辺623との間に、
図3に示す第一スリット602が形成される。
【0026】
下壁部64は、蓋部材60の下側の壁面として機能する。下壁部64は、下面部642と、下面部642の両端に連続される2枚の側壁部644とを備えている。下壁部64には、フィン66に設けられる突出部662と嵌合するための嵌合孔648がフィン66と同数だけ形成されている。下面部642の前面側には直線状の端辺642Eが形成されている。端辺642Eは、蓋部材60が形成された状態では、前壁部62の端辺624と離間かつ対向している。これにより、端辺642Eと端辺624との間に、
図3に示す第二スリット604が形成される。
【0027】
2枚の側壁部644のそれぞれの上端644Tは、上壁部63の側壁部634の下端634Bと接合される。上端644Tのそれぞれには、蓋部材60の外側に向かって突出する突出部646が形成されている。突出部646は、略円柱形状を有しており、リテーナ30の側壁部303に形成された嵌合孔308と嵌合する。これにより、蓋部材60は、リテーナ通風路30Sにおいて中心軸AX周りに回転可能に支持される。
【0028】
フィン66は、蓋部材60の内部に収容され、第一吹出口101および第二吹出口102から吹き出される空気の向きを、車幅方向に沿って左右に切り替える。フィン66は、突出部662と、第一フィン664と、第二フィン665と、軸部666と、連結部668とを備えている。
【0029】
第一フィン664および第二フィン665は、蓋部材60内の流路形状に対応する外形形状を有する略平板状の部材である。第一フィン664および第二フィン665は、軸部666の軸方向である中心軸AX2周りに回転できるように、軸部666に取り付けられている。本実施形態では、第一フィン664および第二フィン665は、一つの軸部666および連結部668とともに一体的に形成されており、中心軸AX2を共有している。
【0030】
突出部662は、軸部666の上下の先端に配置されている。突出部662は、略円柱形状を有しており、上壁部63の嵌合孔638と、下壁部64の嵌合孔648とに嵌合する。これにより、フィン66は、蓋部材60の内部において、軸部666の中心軸AX2周りを回転可能に支持されている。なお、本実施形態において、中心軸AX2は、鉛直方向と一致する。ただし、中心軸AX2は、鉛直方向には限らず、第一リテーナ内壁302Wおよび第二リテーナ内壁304Wに対して交差する任意の方向となるように構成されてもよい。
【0031】
連結部668は、軸部666を回転させるためのいわゆるリンク機構として機能する。本実施形態では、例えば、連結部668は、前壁部62と連結することができる。この場合には、前壁部62を車幅方向に沿って往復移動させることにより、連結部668は、車幅方向に沿って移動する。連結部668の往復移動が軸部666に伝達されることで、軸部666は中心軸AX2周りを回転する。軸部666の回転により、第一フィン664と第二フィン665の面方向が切り替えられる。この結果、蓋部材60内の空気の流動方向が車幅方向に沿って左右に切り替えられる。連結部668は、前壁部62に代えて、不図示の操作レバーなどと連結されてもよい。
【0032】
発光部70は、前壁部62、上壁部63、ならびに下壁部64の接合時に蓋部材60の内部に収容される。本実施形態では、発光部70は、フィン66よりも前壁部62に近い位置で蓋部材60の内壁面に固定されている。この結果、発光部70は、蓋部材60の回転と同期して中心軸AX周りに回転することができる。
【0033】
図4に示すように、分流部68は、車幅方向に沿って長尺な軸部材である。分流部68は、蓋部材60の内部の流路を二方向に分流させる。分流部68は、フィン66の軸部666を回転可能に支持するための支持凹部682と、突出部684とを備えている。分流部68は、軸部666を支持凹部682に挿通した状態で、前壁部62の軸嵌合部628に嵌合される。
【0034】
分流部68は、突出部684を頂点として互いに接続される第一斜面683と第二斜面685との2つの斜面を有している。突出部684は、リテーナ通風路30Sの上流側に配置される。この結果、分流部68は、流入口305に向かって突出した状態でリテーナ通風路30Sに配置される。分流部68を上流側に向かって突出する形状とすることにより、流路抵抗の増加を抑制しつつ流路を上下に分流させることができる。なお、分流部68の断面形状は、三角形に限らず、平板状、円形や楕円形、四角形、六角形、八角形などの多角形などの種々の形状とされてもよい。リテーナ通風路30Sが第一吹出口101および第二吹出口102それぞれに個別に対応する二つの流路を有するなど、第一吹出口101および第二吹出口102に個別に空調用空気が供給される場合には、分流部68を省略することもできる。本実施形態の空調用レジスタ100では、分流部68を設けることにより、リテーナ通風路30Sに複雑な流路を設けることなく簡易な構成により、第一吹出口101および第二吹出口102に流路を分流させることができる。
【0035】
図5は、発光部70をオンにした状態の空調用レジスタ100の外観を示す説明図である。
図5には、発光部70に備えられるすべてのLED発光素子72がオンにされた状態が示されている。上述したように、蓋部材60は、光透過性を有する部材を用いて形成されている。そのため、内部に配置された発光部70から出射された光72Lは、蓋部材60の外部である車室側に向かって透過することができる。なお、本実施形態では、蓋部材60は、光透過率が蓋部材60の内部を視認できない程度に低い、いわゆる半透明となるように加工されている。このように構成することにより、発光部70からの光72Lを内部から透過させつつ、発光部70がオフにされて発光していない状態であっても内部構造が視認されにくい、高い意匠性を有する空調用レジスタ100を提供することができる。なお、蓋部材60のすべての部材が光透過性を有してもよく、例えば、前壁部62のみであってもよく、蓋部材60のうち露出面606に対応する範囲のみが光透過性を有するように構成されてもよい。
【0036】
図6は、
図2のVI-VI位置の断面図である。
図6には、中立状態の空調用レジスタ100が示されている。「中立状態」とは、空調用レジスタ100の内部構造が、第一吹出口101から吹き出される空気の流量と、第二吹出口102から吹き出される空気の流量とが略一致するように構成された状態を意味する。本実施形態では、空調用レジスタ100の内部構造は、後述するように、蓋部材60の回転により蓋部材60の向きを調節することによって切り替えることができる。なお、
図6および後述する
図7、
図8では、技術の理解を容易にするために、前壁部62および分流部68の断面構造を簡略化して示している。
【0037】
図6に示すように、本実施形態では、中立状態は、空調用レジスタ100の内部構造が中心軸AXを含むY方向に対して上下で線対称とされるいわゆる鏡像対称の状態となることで形成される。中立状態における蓋部材60の向きは、Y方向と略一致する方向DT1である。「蓋部材60の向き」は、例えば、蓋部材60における前面626の中点CPと、中心軸AXとを結ぶ直線DTで規定することができる。「前面626の中点CP」は、例えば、端辺623までの直線距離と、端辺624までの直線距離とが略一致する前面626上の位置を用いて規定することができる。なお、発光部70は、発光部70から出射される光の方向が蓋部材60の向きと略同じ方向DT1となるように蓋部材60の内部に固定されている。
【0038】
図6に示すように、蓋部材60の内部および周囲には、流入口305から流入される空調用空気を第一吹出口101および第二吹出口102へと導くための流路が形成されている。具体的には、蓋部材60の内部には、分流部68の第一斜面683と上面部632との間の第一内部流路601と、第二斜面685と下面部642との間の第二内部流路603とが形成されている。第一内部流路601は、第一スリット602と連通し、第二内部流路603は、第二スリット604と連通している。
【0039】
蓋部材60の外部には、第一リテーナ通風路612および第二リテーナ通風路614が形成されている。第一リテーナ通風路612は、第一リテーナ内壁302Wと、蓋部材60の前面626との間に規定される流路であり、第二リテーナ通風路614は、第二リテーナ内壁304Wと、前面626との間に規定される流路である。第一リテーナ通風路612は、第一スリット602と第一吹出口101とを連通し、第二リテーナ通風路614は、第二スリット604と第二吹出口102とを連通している。
【0040】
図6に示すように、本実施形態では、第一リテーナ内壁302Wおよび第二リテーナ内壁304Wの断面形状は、蓋部材60の断面の外形に対応する略円弧形状とされている。このように構成することにより、蓋部材60の回転により、第一リテーナ通風路612の流路高さと第二リテーナ通風路614の流路高さとを略一定としつつ、第一リテーナ通風路612の流路長と第二リテーナ通風路614の流路長とのバランスを切り替えることができる。換言すれば、蓋部材60の回転により、第一リテーナ通風路612の流路抵抗と、第二リテーナ通風路614の流路抵抗とのバランスを切り替えることができる。このように構成することにより、蓋部材60の回転によって、第一吹出口101から吹き出される空気と、第二吹出口102から吹き出される空気との互いの流量・流速等のバランスを容易に調節することができる。
【0041】
図6には、第一吹出口101から吹き出される空気の吹出方向DS1と、第二吹出口102から吹き出される空気の吹出方向DS2とが模式的に示されている。「空気の吹出方向」とは、吹出口における巨視的な空気の流動方向を意味する。空気の吹出方向DS1は、例えば、断面視における第一リテーナ内壁302Wにおける第一辺306s1の接線、あるいは当該位置に対向する蓋部材60表面上の接線などを用いて規定することができ、吹出方向DS2は、第二リテーナ内壁304Wにおける第二辺306s2の接線、あるいは当該位置に対向する蓋部材60の表面上の接線などで規定することができる。本実施形態では、吹出方向DS1と、吹出方向DS2とが
図6に示す交点ISで互いに交差するように構成されており、これにより、第一吹出口101から吹き出された空気と、第二吹出口102から吹き出された空気とが前面626近傍で合流するように構成されている。
【0042】
図6では、空調装置からの空気が空調用レジスタ100には供給されていない状態が示されている。発光制御部922は、空調用空気の供給がオフにされているという空調情報を空調情報取得部99から取得し、発光部70のLED発光素子72をオフに切り替える。したがって、
図6では、発光部70はオフにされた状態である。
【0043】
図7は、中立状態の空調用レジスタ100の内部での空調用空気の流動方向を模式的に示す説明図である。空調装置からの空気が空調用レジスタ100に供給されると、
図7に矢印S11,S21で示すように、流入口305からリテーナ通風路30Sへと流入した空調用空気は、分流部68の突出部684まで流動する。
【0044】
図7に示すように、空調装置からの空気が空調用レジスタ100に供給されると、発光制御部922は、空調用空気の供給がオンにされたことを空調情報取得部99から取得し、発光部70のLED発光素子72をオンに切り替える。
図7に示すように、中立状態の空調用レジスタ100では、列L1,L2,L3のLED発光素子72から出射されるすべての光LT1,LT2,LT3は、露出面606を透過して、空調用レジスタ100の前方へと出射される。
【0045】
リテーナ通風路30Sへと供給された空気は、突出部684に到達すると、矢印S12,S22で示すように、突出部684によって第一内部流路601と、第二内部流路603とに分流される。フィン66の操作により軸部666を回転させて第一フィン664と第二フィン665の面方向を切り替えることによって、矢印S12,S22で示す分流後の空気の流動方向を車幅方向に沿って左右に切り替えることができる。
【0046】
第一内部流路601を流動する空気は、第一スリット602から蓋部材60の外部へと送り出されて、矢印S13で示すように、第一リテーナ通風路612を流動する。同様に、第二内部流路603を流動する空気は、第二スリット604から蓋部材60の外部へと送り出されて、矢印S23で示すように、第二リテーナ通風路614を流動する。
【0047】
ここで、本実施形態の空調用レジスタ100では、
図7に示すように、中立状態では、第一リテーナ通風路612の流路長W11と、第二リテーナ通風路614の流路長W21と、が略同じになるように構成されている。すなわち、中立状態では、第一リテーナ通風路612の流路抵抗と、第二リテーナ通風路614の流路抵抗とが略同一になるように構成されている。この結果、中立状態では、第一吹出口101から吹き出される空気と、第二吹出口102から吹き出される空気との流量等を同程度にすることができる。
【0048】
矢印S14,S24で示すように、第一吹出口101および第二吹出口102からリテーナ30の外部へと吹き出された空気は、コアンダ効果に従って前面626の表面上を流動し、前面626の表面上、あるいは剥離により前面626の表面から離れた位置で合流する。
図6および
図7に示すように、互いの流量等が略同じ状態で合流した空気は、矢印S200で示すように略水平方向に沿って空調用レジスタ100の前方に向かって流動する。
【0049】
図8は、第一回転状態の空調用レジスタ100の内部での空調用空気の流動方向を模式的に示す説明図である。本実施形態の空調用レジスタ100では、蓋部材60を回転させることによって、吹き出される空気の方向を鉛直方向に沿って上下に調節することができる。ユーザは、例えば、露出面606の手動操作によって蓋部材60を上下方向に回転させて空気の向きを調節することができる。蓋部材60は、露出面606の手動操作には限らず、蓋部材60に接続されるリンク機構を介した操作レバーなどによって回転されてもよい。
【0050】
図8に示すように、蓋部材60が矢印D20に示す上側に回転されると、蓋部材60の向きは、
図6で示した方向DT1から方向DT2へと切り替えられる。この結果、空調用レジスタ100を、
図8に示す第一回転状態とすることができる。このとき、蓋部材60の内部に固定された発光部70は、蓋部材60の回転に同期して回転し、発光部70からの光LT1,LT2,LT3の出射方向は方向DT1から方向DT2へと切り替えられる。
【0051】
第一回転状態では、中立状態に対して、第一リテーナ通風路612の流路長は、
図5で示した流路長W11から
図8に示す流路長W12へと延長される。また、第二リテーナ通風路614の流路長は、流路長W21から流路長W22へと短縮される。換言すれば、第一回転状態とは、中立状態に対して、第一リテーナ通風路612の流路長を長くした分だけ流路抵抗を増加させ、第二リテーナ通風路614において流路長が短くした分だけ流路抵抗を減少させた状態である。
【0052】
図8に矢印S31,S41で示すように、流入口305からリテーナ通風路30Sへと流入した空調用空気は、分流部68の突出部684まで流動すると、矢印S32,S42で示すように、突出部684によって第一内部流路601と、第二内部流路603とに分流されて第一スリット602および第二スリット604へと導かれる。第一内部流路601を流動する空気は、第一スリット602から蓋部材60の外部へと送り出され、矢印S33で示すように、流路長が延長された状態の第一リテーナ通風路612を流動する。第二内部流路603を流動する空気は、第二スリット604から蓋部材60の外部へと送り出されて、矢印S43で示すように、流路長が短縮された状態の第二リテーナ通風路614を流動する。
【0053】
第一回転状態では、矢印S44で示される第二吹出口102から吹き出される空気の流量は、流路抵抗の減少に応じて中立状態よりも大きくなり、また矢印S34で示される第一吹出口101から吹き出される空気の流量よりも大きくなる。そのため、第一吹出口101からの空気と第二吹出口102からの空気との合流点が中立状態に対して上側となる。この結果、
図8に矢印S202で示すように、空調用レジスタ100から吹き出される空気は、水平方向に対して上向き、すなわち仰角となる方向に向かって流動する。
【0054】
図8に示すように、空調装置からの空気は空調用レジスタ100に供給されており、列L1,L2,L3のLED発光素子72はオンにされた状態である。
図8に示す第一回転状態の空調用レジスタ100では、列L1のLED発光素子72、および列L2のLED発光素子72の一部分は、リテーナ内壁30Wと対向した状態となる。そのため、列L1から出射された光LT1ならびに列L2から出射された光LT2の一部はリテーナ30によって遮光される。これに対して、列L3のLED発光素子72からの光LT3、および列L2のLED発光素子72からの光LT2の一部は、露出面606を透過し、車室へと出射される。
【0055】
光LT2,LT3の出射方向は、蓋部材60の回転に応じて上側となり、第一吹出口101近傍に向けて出射される。そのため、車室内のユーザは、発光部70から出射される光を、中立状態よりも露出面606の上側に偏在した状態で視認する。したがって、本実施形態の空調用レジスタ100によれば、蓋部材60の回転量や空気の吹き出し方向などの情報を空調情報取得部99等から取得することなく、空調用レジスタ100からの空気の風向と、露出面606から発光される光の位置とを関連付けることができる。なお、光LT1ならびに光LT2は、リテーナ30やベゼル20を透過するように構成されてもよい。この場合であっても、第一回転状態に切り替えることによって、光LT1,LT2,LT3を中立状態よりも露出面606の上側に向けることができるので、同様の効果を得ることができる。
【0056】
図示を省略するが、本実施形態の空調用レジスタ100では、蓋部材60を中立状態よりも下側に回転させた第二回転状態とすることで、空調用レジスタ100から車室内に吹き出される空気を中立状態よりも下向きにすることも可能である。第二回転状態は、例えば、蓋部材60を回転させて、第一回転状態を方向DT1に対して上下反転させた状態にすることで形成することができる。第二回転状態では、中立状態に対して、第一リテーナ通風路612において流路長を短縮した分だけ流路抵抗が減少され、第二リテーナ通風路614において流路長を延長した分だけ流路抵抗が増加される。この結果、空調用レジスタ100から吹き出される空気を、水平方向に対して下向き、すなわち俯角となる方向に向かって流動させることができる。また、第二回転状態では、光LT2,LT3の出射方向は、蓋部材60の回転に応じて下側となり、第二吹出口102の近傍に向けて出射される。したがって、発光部70から出射される光を、中立状態よりも露出面606の下側に偏在させることができ、第一回転状態と同様に、空調用レジスタ100からの空気の風向と、露出面606に表示される出射光の位置とを関連付けることができる。
【0057】
以上、説明したように、本実施形態の空調用レジスタ100は、リテーナ30と、リテーナ30の内部に配置される蓋部材60とを備えている。蓋部材60は、リテーナ開口部306から露出する露出面606と、リテーナ開口部306と対向してリテーナ開口部306との間に吹出口を規定するリテーナ対向面を有し、露出面606は、蓋部材60の外部に向かって発光可能に構成されている。本実施形態によれば、リテーナ30の内部からリテーナ開口部306を介して露出させた露出面606を備えることにより、内部構造が容易に視認できず意匠性が高い空調用レジスタ100を提供することができる。また、リテーナ開口部306の露出面606を発光領域として利用することにより、発光可能な領域を拡大し、空調用レジスタ100の視認性や意匠性を向上させることができる。
【0058】
本実施形態の空調用レジスタ100は、さらに、露出面606を発光させるための光を出射する発光部70を備えている。したがって、簡易な構成により露出面606を発光させることができる。
【0059】
本実施形態の空調用レジスタ100によれば、発光部70は、蓋部材60の内部に配置され、露出面606は、発光部70から出射された光を蓋部材60の外部に向かって透過可能に構成されている。したがって、リテーナ開口部306の蓋部材60を発光部70の配置領域として利用することにより、発光部70の設置に伴う空調用レジスタ100の大型化を抑制することができる。
【0060】
本実施形態の空調用レジスタ100は、さらに、発光部70を制御する発光制御部922と、空調情報を取得するための空調情報取得部99と、を備えている。発光制御部922は、空調情報として空調用空気の供給のオンオフに関連付けて発光部70を発光させる。発光部70の発光処理を空調情報と関連付けることにより、露出面606を、空調情報を表示する表示部として機能させることができる。これにより、例えば、空調装置のオンオフの状態を示すインジケータなど、空調情報をユーザが視認するための部材を省略することができ、空調用レジスタ100あるいはインストルメントパネル10の部品点数を少なくすることができる。
【0061】
本実施形態の空調用レジスタ100によれば、リテーナ開口部306は、第一辺306s1と、第一辺306s1と対向する第二辺306s2と、を有している。リテーナ対向面としての前面626は、第一辺306s1との間の第一吹出口101と、第二辺306s2との間の第二吹出口102とを規定している。第一吹出口101および第二吹出口102は、第一吹出口101から吹き出される空気の吹出方向DS1と、第二吹出口102から吹き出される空気の吹出方向DS2とが交点ISで互いに交差するように構成されている。第一吹出口101および第二吹出口102から吹き出される空気を合流させることにより、第一吹出口101と第二吹出口102との空気の流量等のバランスを調節するという簡易な方法により、空調用レジスタ100から吹き出される空気の流動方向を調節することができる。
【0062】
本実施形態の空調用レジスタ100は、さらに、リテーナ通風路30Sを第一リテーナ通風路612と第二リテーナ通風路614とに分流するための分流部68を備えている。分流部68を備えることにより、第一リテーナ通風路612と第二リテーナ通風路614とに対して個別に連通する2つの流路を形成することなく、また、空調用空気の供給源を第一リテーナ通風路612と第二リテーナ通風路614とに対して個別に設けることなく簡易な構成により、第一吹出口101および第二吹出口102の複数の吹出口に空気を流動させることができる。
【0063】
本実施形態の空調用レジスタ100によれば、蓋部材60がリテーナ30の内部で回転可能に構成されている。蓋部材60の回転によって、第一リテーナ通風路612の流路抵抗を大きくし、第二リテーナ通風路614の流路抵抗を小さくする第一回転状態と、第一リテーナ通風路612の流路抵抗を小さくし、第二リテーナ通風路614の流路抵抗を大きくする第二回転状態と、に切り替え可能に構成されている。したがって、蓋部材60の回転という簡易な方法によって、空調用レジスタ100から吹き出される空気の流動方向を切り替えることができる。また、合流させる第一吹出口101の流量と第二吹出口102の流量とのバランスによって空気の流動方向を調節することができるため、フィンなどを用いる従来の技術と比較して、空調用レジスタ100から吹き出される空気の流動方向を広い範囲で調節することができる。
【0064】
本実施形態の空調用レジスタ100によれば、発光部70は、蓋部材60の内部に固定されており、蓋部材60の回転と同期して中心軸AX周りを回転することができる。蓋部材60の回転量や空気の吹き出し方向などの情報を取得することなく簡易な方法により、空調用レジスタ100からの空気の風向と、発光部70から出射される光の位置とを関連付けることができる。
【0065】
本実施形態の空調用レジスタ100によれば、第一リテーナ通風路612に設けられ、第一リテーナ内壁302Wに交差する軸線の周りを回転可能に構成される平板状の第一フィン664と、第二リテーナ通風路614に設けられ、第二リテーナ内壁304Wに交差する軸線の周りを回転可能に構成される平板状の第二フィン665と、を備えている。第一フィン664および第二フィン665の回転という簡易な方法により、第一吹出口101の空気の流動方向と、第二吹出口102の空気の流動方向とを車幅方向の左右に切り替えることができる。
【0066】
B.第2実施形態:
図9は、第2実施形態に係る空調用レジスタ100bの外観構成を示す斜視図である。第2実施形態の空調用レジスタ100bは、蓋部材60に代えて蓋部材60bを備える点と、さらに操作レバー40を備える点とにおいて、第1実施形態の空調用レジスタ100とは相違し、それ以外の構成は同様である。第1実施形態では、蓋部材60がリテーナ通風路30S内で回転可能に支持される例を示した。これに対して、本実施形態では、蓋部材60bは、リテーナ通風路30S内で固定されている点において相違する。本実施形態では、第一吹出口101bおよび第二吹出口102bの空気の流量の調整は、後述するように、操作レバー40を用いた分流部68bの操作によって実現される。
【0067】
図10は、
図9のX-X位置の断面図である。
図10には、中立状態の空調用レジスタ100bが示されている。空調用レジスタ100bの中立状態は、第1実施形態と同様に、内部構造が中心軸AXを含むY方向に対して鏡像対称となることで形成される。
【0068】
図10に示すように、蓋部材60bは、前壁部62bと、フィン66bと、分流部68bとを備えている。蓋部材60bは、第1実施形態で示した蓋部材60とは、上壁部63、下壁部64、第一スリット602ならびに第二スリット604を備えない点において相違する。蓋部材60bの外部には、第一リテーナ通風路612bおよび第二リテーナ通風路614bが形成されている。第一リテーナ通風路612bの流路高さと、第二リテーナ通風路614bの流路高さとは互いに略同じであり、かつ、第一リテーナ通風路612bの流路長W31と、第二リテーナ通風路614bの流路長W41とが略同一とされている。すなわち、第一リテーナ通風路612bと第二リテーナ通風路614bとの流路抵抗が互いに略同一になるように構成されている。なお、第一吹出口101bおよび第二吹出口102bの構成は、第1実施形態で示した第一吹出口101および第二吹出口102と同様であるので説明を省略する。
【0069】
前壁部62bは、第1実施形態で示した前壁部62とは、同様の断面形状の前面626を備える点で共通し、軸嵌合部628を備えない点において相違する。前壁部62bは、不図示の固定具によりリテーナ内壁30Wに固定されている。
【0070】
発光部70は、前壁部62bの内部に固定されている。発光部70からの光の出射方向は、蓋部材60の向きと略同じ方向DT3である。本実施形態では、発光部70は、空調用空気の供給のオンオフに代えて、車両VHを起動するためのスイッチのオンオフと対応付けられている。また、発光制御部922による発光部70の発光処理は、後述するように、車両情報取得部98によって取得される車両情報と、空調情報取得部99によって取得される空調用レジスタ100から吹き出される空気のオンオフ、風向、および温度情報とを用いて実行される。
【0071】
フィン66bは、中心軸AX2周りに回転する。フィン66bは、第1実施形態で示したフィン66とは形状が相違し、それ以外の機能・構成は同様である。フィン66bの上端の突出部662は、上壁部63の嵌合孔638に代えて、第一リテーナ内壁302Wの嵌合孔302Tに嵌合され、下端の突出部662は、下壁部64の嵌合孔648に代えて、第二リテーナ内壁304Wの嵌合孔304Tに嵌合されている。本実施形態では、フィン66bの回転は、例えば、図示しない操作レバーの操作によって調整することが可能である。フィン66bの回転量は、例えば操作レバーの操作量を取得するための可変抵抗器などの空調情報取得部99によって、空調用レジスタ100から吹き出される空気の車幅方向の風向を示す空調情報として取得される。
【0072】
分流部68bは、車幅方向に沿って長尺な板状部材である。分流部68bは、上流側の端部が突出部684として機能し、リテーナ通風路30Sを上下に分流している。
図10の例では、分流部68bは、その面方向が水平面と略一致する方向DT3となるようにリテーナ通風路30Sに配置されている。
【0073】
本実施形態では、分流部68bの上面と、第一リテーナ内壁302Wとの間に第一内部流路601bが形成され、分流部68bの下面と、第二リテーナ内壁304Wとの間に第二内部流路603bが形成されている。第一内部流路601bは、第一リテーナ通風路612bを介して第一吹出口101bと連通し、第二内部流路603bは、第二リテーナ通風路614bを介して第二吹出口102bと連通している。
【0074】
分流部68bは、
図10に矢印AG2で示すように、分流部68bの下流側の端部近傍に設定された中心軸AXの周りを回転可能となるように、リテーナ30の内壁に支持されている。分流部68bは、不図示のリンク機構により、
図9で示した操作レバー40と連結されている。
図9に矢印AG1で示す上下方向に操作レバー40を操作することにより、分流部68bを中心軸AX周りに回転させることができる。これにより、分流部68bは、突出部684が第一リテーナ内壁302Wに近接する第一分流状態と、突出部684が第二リテーナ内壁304Wに近接する第二分流状態とに切り替えられる。
【0075】
第一分流状態は、第一リテーナ通風路612bに連通する第一内部流路601bの開度が小さくされるとともに、第二リテーナ通風路614bに連通する第二内部流路603bの開度が大きくされた状態である。第二分流状態は、第一内部流路601bの開度が大きくされ、第二内部流路603bの開度が小さくされた状態である。本実施形態では、分流部68bの回転量は、例えば操作レバー40の操作量を取得するための可変抵抗器などの空調情報取得部99によって、空調用レジスタ100から吹き出される空気の鉛直方向の風向を示す空調情報として取得される。
【0076】
図11は、中立状態の空調用レジスタ100bの内部での空調用空気の流動方向を模式的に示す説明図である。中立状態の空調用レジスタ100bでは、分流部68bによる第一内部流路601bの開度と、第二内部流路603bの開度とが略同じである。
図12に矢印S51,S61で示すように、流入口305からリテーナ通風路30Sへと流入した空調用空気は、分流部68bの突出部684まで流動すると、矢印S52,S62で示すように、突出部684によって第一内部流路601bと、第二内部流路603bとに分流される。
【0077】
第一内部流路601bを流動する空気は、矢印S53で示すように、第一リテーナ通風路612bを流動する。第二内部流路603bを流動する空気は、矢印S63で示すように、第二リテーナ通風路614bを流動する。第一リテーナ通風路612bと第二リテーナ通風路614bとの流路抵抗は略同じであり、第一吹出口101bから吹き出される空気の流量と、第二吹出口102bから吹き出される空気の流量とは略同じになる。
【0078】
矢印S54,S64で示すように、第一吹出口101bおよび第二吹出口102bからリテーナ30の外部へと吹き出された空気は、コアンダ効果に従って、前面626の表面上を流動し、前面626の表面上、あるいは剥離により前面626の表面から離れた位置で合流する。合流した空気は、矢印S204で示すように、略水平方向に沿って空調用レジスタ100bの前方に向かって流動する。
【0079】
空調装置からの空気の供給がオンにされると、発光制御部922は、空調情報取得部99から空調情報として取得し、LED発光素子72を調光して、空調装置からの空気の供給がオフの状態よりも発光部70からの光量を大きくする。
【0080】
図12は、第一分流状態の空調用レジスタ100b内部での空気の流動方向を示す説明図である。操作レバー40の操作により、分流部68bが矢印D21に示す上側に回転されると、分流部68bの面方向は方向DT3から方向DT4に切り替えられる。この結果、
図12に示す第一分流状態とすることができる。
【0081】
矢印S71,S81で示すように、リテーナ通風路30Sに流入した空気は、分流部68bの突出部684まで流動する。突出部684に到達した空気は、矢印S32で示すように、分流部68bによって、流量が小さくされた状態で第一内部流路601bに流入するとともに、矢印S42で示すように、流量が大きくされた状態で第二内部流路603bに流入する。矢印S73で示すように、第一内部流路601bに流入された空気は、第一リテーナ通風路612bを流動し、矢印S83で示すように、第二内部流路603bに流入された空気は、第二リテーナ通風路614bを流動する。
【0082】
第一分流状態では、第二リテーナ通風路614bに送り出される空気の流量は、中立状態よりも大きく、また第一リテーナ通風路612bに送り出される空気の流量よりも多い。したがって、矢印S84で示す第二吹出口102bから吹き出される空気の流量が、矢印S74で示す第一吹出口101bから吹き出される空気の流量よりも大きくなる。したがって、第一吹出口101bからの空気と第二吹出口102bからの空気との合流点が中立状態よりも上側となる。この結果、
図12に矢印S206で示すように、空調用レジスタ100bから吹き出される空気は、中立状態よりも上向きとなる。
【0083】
図示を省略するが、本実施形態の空調用レジスタ100bでは、操作レバー40の操作により分流部68bを中立状態よりも下側に回転させた第二分流状態とすることで、空調用レジスタ100bから車室内に吹き出される空気を中立状態よりも下向きにすることも可能である。第二分流状態は、例えば、分流部68bを回転させて、第一分流状態を方向DT3に対して上下反転させた状態にすることで形成することができる。第二分流状態では、中立状態に対して、第一内部流路601bの開度を大きくして流量を大きくし、第二内部流路603bの開度を小さくして流量を小さくする。この結果、空調用レジスタ100から吹き出される空気を、水平方向に対して下向き、すなわち俯角となる方向に沿って流動させることができる。
【0084】
図13は、第一分流状態で発光部70が発光した状態を示す説明図である。本実施形態では、発光制御部922は、空調用レジスタ100bから吹き出される空気の鉛直方向の風向を空調情報取得部99から取得し、取得した風向に関連付けた発光方向に従って発光部70を発光させる。「風向に関連付けた発光方向」とは、LED発光素子72のオンオフの配列、光量の変化などを利用することによって、発光部70の発光状態が風向を視認できる程度の方向性を備えていることを意味する。
【0085】
本実施形態では、矢印S206で示すように、風向が上向きであるので、発光制御部922は、列L1,L2,L3のうち最下段の列L3の光量を最も小さくし、最上段の列L1の光量を最も大きくさせるように、列L1,L2,L3の光量を風向に応じた向きに従って順に大きくなるように発光部70を発光させている。なお、本実施形態では、発光制御部922は、列L1,L2,L3それぞれのLED発光素子72の発光数によって光量を調節しているが、LED発光素子72の列L1,L2,L3の列ごとの調光によって光量が調節されてもよい。
【0086】
図14は、発光部70の発光状態の他の形態を示す説明図である。本実施形態では、発光制御部922は、さらに、空調用レジスタ100bから吹き出される空気の車幅方向の風向を空調情報取得部99から取得し、取得した車幅方向の風向に関連付けた発光方向に従って発光部70を発光させる。
図14の例では、空調用レジスタ100bから吹き出される空気の風向は、フィン66bの回転により車幅方向右側、すなわち+X方向に向けられている。そのため、発光制御部922は、例えば、右側に対応する位置のLED発光素子72を発光させるなど、+X方向での光量が大きくなるように発光部70を発光させる。
【0087】
本実施形態では、発光制御部922は、さらに、車両情報取得部98から車両情報を取得し、取得した車両情報に関連付けて発光部70を発光させる。発光制御部922は、例えば、車両情報としての車両VHの走行方向を車両情報取得部98から取得し、取得した走行方向に関連付けた発光方向に従って発光部70を発光させる。「走行方向に関連付けた発光方向」とは、LED発光素子72のオンオフの配列、光量の変化などを利用することによって、発光部70の発光状態が車両VHの走行方向を視認できる程度の方向性を備えていることを意味する。例えば、車両VHが右折する場合には、
図14に示すように、発光制御部922は、+X方向での光量が大きくなるように発光部70を発光させる。
【0088】
本実施形態の空調用レジスタ100bによれば、分流部68bは、第一リテーナ通風路612bに連通する第一内部流路601bの開度を小さくするとともに第二リテーナ通風路614bに連通する第二内部流路603bの開度を大きくする第一分流状態と、第一内部流路601bの開度を大きくして第二内部流路603bの開度を小さくする第二分流状態とに切り替え可能である。空調用レジスタ100b内の流路抵抗の切り替えに代えて、分流部68bによる第一内部流路601bおよび第二内部流路603bの流量調整という簡易な構成により、空調用レジスタ100bから吹き出される空気の向きを切り替えることができる。
【0089】
本実施形態の空調用レジスタ100bによれば、発光制御部922は、空調用レジスタ100bから吹き出される空気の風向に関連付けた発光方向に従って発光部70を発光させる。したがって、空調用レジスタ100bを、風向を表示する表示部として機能させることができる。
【0090】
本実施形態の空調用レジスタ100bによれば、発光制御部922は、車両情報に関連付けて発光部70を発光させる。したがって、空調用レジスタ100bを、車両情報を表示する表示部として機能させることができる。
【0091】
本実施形態の空調用レジスタ100bによれば、発光制御部922は、車両VHの走行方向に関連付けた発光方向に従って発光部70を発光させる。したがって、空調用レジスタ100bを、車両VHの走行方向を表示する表示部として機能させることができる。これにより、例えば、ウインカなど、車両VHの走行方向の状態を示すインジケータなど、車両情報をユーザが視認するための部材を省略することができ、車両VHの部品点数を少なくすることができる。
【0092】
C.第3実施形態:
図15は、第3実施形態に係る空調用レジスタ100cの外観構成を示す斜視図である。第3実施形態の空調用レジスタ100cは、第一吹出口101および第二吹出口102、蓋部材60、ベゼル20、ならびに発光部70に代えて、第一吹出口101cおよび第二吹出口102c、蓋部材60c、ベゼル20c、ならびに発光部70cを備える点において第1実施形態の空調用レジスタ100とは相違し、それ以外の構成は同様である。本実施形態では、蓋部材60cは、第2実施形態で示した蓋部材60bと同様に、リテーナ通風路30S内に固定されており、分流部68cの操作によって第一吹出口101cおよび第二吹出口102cの空気の流量が調整される。発光部70cは、LED発光素子72の個数およびその配列が発光部70とは異なり、それ以外の構成は発光部70と同様である。発光部70cは、蓋部材60cの内部に固定されており、蓋部材60cのサイズに対応するように上記各実施形態の発光部70よりも小型化されている。具体的には、発光部70cでは、LED発光素子72は、列L4,L5の2列で配列されている。
【0093】
図16は、第3実施形態の空調用レジスタ100cの発光部70cが発光した状態を示す説明図である。発光部70cは、蓋部材60cの内部に固定されており、発光部70cから出射された光72Lは、露出面606を透過して空調用レジスタ100cの前側へと出射される。発光部70cは、発光制御部922により、第1実施形態と同様に空調用空気の供給のオンオフと同期してオンオフを切り替えられる。
【0094】
図17は、
図15のXVII-XVII位置の断面図である。
図17には、中立状態の空調用レジスタ100cが示されている。空調用レジスタ100cの中立状態は、分流部68cの向きをY方向と略一致させることで形成できる。本実施形態では、分流部68cの向きは、例えば、突出部684の先端と、分流部68cの回転軸AX5とを結ぶ直線DT5で規定することができる。
【0095】
図17に示すように、蓋部材60cは、前壁部62cと、フィン66cと、分流部68cとを備えている。蓋部材60cは、第1実施形態で示した蓋部材60とは、上壁部63、下壁部64、第一スリット602ならびに第二スリット604を備えない点において相違する。蓋部材60cの外部には、第一リテーナ通風路612cおよび第二リテーナ通風路614cが形成されている。
【0096】
前壁部62cは、第1実施形態で示した前壁部62とは、前面626を備える点で共通し、軸嵌合部628を備えない点で相違する。前壁部62cは、不図示の固定具によりリテーナ内壁30Wに固定されている。前壁部62cの内部には、発光部70cが固定されている。
【0097】
フィン66cは、第一フィン664と、第二フィン665とが別体であり、
図17に示す中心軸AX3,AX4をそれぞれ個別に有している。連結部668cは、第一フィン664と、第二フィン665とを連結しており、各フィンの回転方向を互いに同期させている。
【0098】
連結部668cは、車幅方向に延在する長尺な平板形状を有している。連結部668cは、
図15で示したように、空調用レジスタ100cの外部にまで延在しており、空調用レジスタ100cの外部で図示しない操作レバーと連結されている。第一フィン664および第二フィン665は、不図示の操作レバーにより連結部668cが車幅方向に沿って摺動されることによって、中心軸AX3,AX4周りを回転する。これにより、第一吹出口101cおよび第二吹出口102cから吹き出される空気の向きは、車幅方向に沿って左右に切り替えられる。なお、第一フィン664、第二フィン665、ならびに連結部668cは、発光部70cと干渉しないように、発光部70cの周囲に配置されている。
【0099】
分流部68cは、第一斜面683と第二斜面685との2つの斜面を有している。第一斜面683と第二斜面685とは、突出部684の先端を頂点として互いに接続されている。第一斜面683は、第一リテーナ内壁302Wとの間に第一内部流路601cを規定し、第二斜面685は、第二リテーナ内壁304Wとの間に第二内部流路603cを規定している。第一内部流路601cは、第一リテーナ通風路612cを介して第一吹出口101cと連通し、第二内部流路603cは、第二リテーナ通風路614cを介して第二吹出口102cと連通している。
【0100】
分流部68cは、
図17に矢印AG3で示すように、分流部68cよりも下流側に位置する回転軸AX5の周りを回転可能となるように、リテーナ内壁30Wに支持されている。分流部68cは、例えば、不図示の操作レバーの操作により回転軸AX5周りを回転させることができる。これにより、分流部68cは、リテーナ通風路30Sを、突出部684が第一リテーナ内壁302Wに近接する第一分流状態と、突出部684が第二リテーナ内壁304Wに近接する第二分流状態とに切り替えることができる。第一分流状態は、第一内部流路601cの開度が小さくされ、第二内部流路603cの開度が大きくされた状態である。第二分流状態は、第一内部流路601cの開度が大きくされ、第二内部流路603cの開度が小さくされた状態である。本実施形態の空調用レジスタ100cによれば、第2実施形態と同様に、分流部68cによる流量調整という簡易な方法により空調用レジスタ100cから吹き出される空気の向きを切り替えることができる。
【0101】
本実施形態の空調用レジスタ100cは、第一リテーナ通風路612cと、第二リテーナ通風路614cとが上下非対称の構造を有しており、内部構造がY方向に対して鏡像対称とはならない。具体的には、空調用レジスタ100c内の流路等は、以下(1)-(3)の特徴を有している。
【0102】
(1)第一吹出口101cの開口幅が第二吹出口102cの開口幅よりも大きくなるように設定されている。なお、図示を省略するが、第一吹出口101cおよび第二吹出口102cは、互いの吹き出し方向が前面626の前方で交差するように構成されている。
(2)第一内部流路601cと第一リテーナ通風路612cとの流路長の合計値W51が、第二内部流路603cと第二リテーナ通風路614cとの流路長の合計値W61よりも大きい。すなわち、分流部68cによる分流後の流路において、第一吹出口101cまでの流路の方が第二吹出口102cまでの流路よりも長い。
(3)分流部68cによる分流後の流路において、第一吹出口101cまでの流路の高さ612hの平均値が第二吹出口102cまでの流路の高さ614hの平均値よりも大きい。
【0103】
上記(1)-(3)の特徴は、分流部68cによる分流後の流路において、第一吹出口101cまでの流路の流路抵抗と、第二吹出口102cまでの流路の流路抵抗とを略同じにするために導かれた設定値である。上記(1)-(3)の特徴を有することにより、本実施形態のように空調用レジスタ100cが上下非対称の構造を有する場合であっても、中立状態において、第一吹出口101cから吹き出される空気の流量と、第二吹出口102cから吹き出される空気の流量とを略同じにすることができる。
【0104】
ベゼル20cは、第1実施形態で示したベゼル20とは、鍔部210を備える点において相違する。鍔部210は、
図15に示すように、リテーナ開口部306の第一辺306s1から連続する部分である。鍔部210は、第一辺306s1から空調用レジスタ100cの外部に向かって突出する形状を有している。このように構成することにより、第一吹出口101cは、車室のユーザから視認されにくくなるので、本実施形態のように第一吹出口101cの開口幅が大きく形成された場合であっても、第一吹出口101cを視認されにくくすることができ、ユーザから空調用レジスタ100cの内部の構造物が視認されることを抑制することができる。なお、鍔部は、ベゼル20cに代えてリテーナ30に形成されてもよい。
【0105】
図18は、中立状態の空調用レジスタ100cの内部での空調用空気の流動方向を模式的に示す説明図である。中立状態の空調用レジスタ100cでは、分流部68cによる第一内部流路601cの開度と、第二内部流路603cの開度とが略同じである。矢印S91,S101で示すように、流入口305からリテーナ通風路30Sへと流入した空調用空気は、分流部68cまで流動すると、矢印S92,S102で示すように、突出部684によって第一内部流路601cと、第二内部流路603cとに分流される。
【0106】
第一内部流路601cを流動する空気は、矢印S93で示すように、第一リテーナ通風路612cへと送り出され、第二内部流路603cを流動する空気は、矢印S103で示すように、第二リテーナ通風路614bへと送り出される。第一リテーナ通風路612cと第二リテーナ通風路614cとの流路抵抗は互いに略同じであり、第一吹出口101cから吹き出される空気の流量と、第二吹出口102cから吹き出される空気の流量とは略同じになる。
【0107】
第二吹出口102cから外部へと吹き出された空気は、コアンダ効果に従って、前面626の表面を流動し、前面626の表面上、あるいは剥離により前面626の表面から離れた位置で第一吹出口101cから吹き出された空気と合流する。合流した空気は、
図18に矢印S208で示すように、Y方向に沿って空調用レジスタ100cの前方に向かって流動する。
【0108】
図19は、第一分流状態の空調用レジスタ100cにおける気流の流速のシミュレーション結果を示す説明図である。分流部68cの向きが、方向DT5よりも上側の方向DT6に切り替えられることによって、第一分流状態を形成することができる。第一分流状態では、第二吹出口102cからの流量が第一吹出口101cからの流量よりも大きくなるため、
図19に矢印S210で示すように、空調用レジスタ100cから吹き出される空気は、中立状態よりも上向きに向かって流動する。
【0109】
図20は、第二分流状態の空調用レジスタ100cにおける気流の流速のシミュレーション結果を示す説明図である。分流部68cの向きが方向DT5よりも下側となる方向DT7に切り替えられることによって第二分流状態を形成することができる。第二分流状態では、第一吹出口101cからの流量が第二吹出口102cからの流量よりも大きくなるため、
図19に矢印S212で示すように、空調用レジスタ100cから吹き出される空気は、中立状態よりも下向きに向かって流動する。
【0110】
本実施形態の空調用レジスタ100cによれば、上下非対称の構造を有する場合であっても、上記第2実施形態と同様に、第一吹出口101cから吹き出される空気の流量と、第二吹出口102cから吹き出される空気の流量とを調節することによって空気の吹き出し方向を調節することができる。蓋部材60cの形状や位置を上下非対称とすることができ、蓋部材60cおよび露出面606における設計の自由度を向上させることができる。また、本実施形態の空調用レジスタ100cにおいても蓋部材60cの内部に発光部70cを配置することができ、蓋部材60cを発光領域として利用し、視認性や意匠性を向上させることができる。
【0111】
D1.第4実施形態:
図21は、第4実施形態に係る空調用レジスタ100dの外観構成を示す斜視図である。第4実施形態の空調用レジスタ100dは、第1実施形態の空調用レジスタ100とは、蓋部材60および発光部70に代えて、蓋部材60dおよび発光部70dを備える点において相違し、それ以外の構成は同様である。なお、
図21では、発光部70dがオフの状態の空調用レジスタ100dが示されている。
【0112】
本実施形態において、蓋部材60dのうち露出面606は、導光体を有している。具体的には、露出面606は、いわゆる導光板(LGP:Light Guiding Panel)で形成されている。「導光板」とは、高い光透過率を有する樹脂材料に対して、所望の発光状態を実現するための印刷や溝形成などの加工部が施された板状部材である。露出面606を導光板で構成することにより、露出面606に入射された光を拡散させて面全体を発光させることができる。蓋部材60dのその他の構成は、第1実施形態で示した蓋部材60と同様である。なお、「露出面606が導光体を有する」とは、本実施形態のように露出面606が導光体で形成される場合と、例えばシート状の導光体など、蓋部材60dとは別体の導光体が露出面606に取り付けられる場合とが含まれる。
【0113】
発光部70dは、導光板としての露出面606に光を出射するためのLED照明モジュールである。発光部70dは、露出面606における車幅方向の両端に当接して配置されている。発光部70dは、導光板の厚みに対応する大きさを有する複数のLED発光素子72dを備えている。なお、発光部70dは、必ずしも露出面606に当接していなくてもよく、露出面606から離間されていてもよい。発光部70dは、露出面606の両端には限らず、片方の端部でもよく、出射された光が露出面606に導入可能であることを前提として任意の位置に配置されてもよい。
【0114】
図22は、発光部70dをオンにした状態の空調用レジスタ100dの外観を示す説明図である。LED発光素子72dから出射された光は、露出面606に導入され、導光体内の加工部で屈折して拡散する。この結果、
図22に示すように、露出面606の面全体を発光させることができる。ただし、露出面606の面全体には限らず、露出面606のうち任意の範囲が発光されてもよく、露出面606に任意の形状が形成されるように発光されてもよい。
【0115】
本実施形態では、発光制御部922は、空調情報取得部99から取得した空調情報のうち温度情報に関連付けて露出面606の発光色を切り替えることが可能である。露出面606の発光色は、LED発光素子72dに設けられたRGBそれぞれに対応するLED素子の光量を個別に調節することで切り替えられる。発光制御部922は、空調情報取得部99から車室の気温を温度情報として取得し、気温が適温範囲内であれば露出面606を緑系の色に発光させ、気温が適温範囲よりも低い場合には青などの寒色に発光させ、気温が適温範囲よりも高い場合には赤などの暖色に発光させる。「適温範囲」とは、例えば25度以上28度以下である。適温範囲は、ユーザによって任意に設定されてもよく、夏は25度以上28度以下であり冬は18度以上22度以下など、季節ごとに設定されてもよい。気温に代えて、空調装置の設定温度あるいは空調用レジスタ100dに設定される空気の温度などが用いられてもよい。
【0116】
以上のように、本実施形態の空調用レジスタ100dによれば、露出面606が導光体で構成され、発光部70dは、LED発光素子72dから出射した光を導光体としての露出面606に導入可能な位置に配置されている。導光板により高い均一性を有する光量で露出面606を面発光させることができ、空調用レジスタ100dの視認性を向上させることができる。また、露出面606の面発光を利用することにより、露出面606が透過性を有する材料であっても外部から露出面606の内部の構造を容易に視認できないようにすることができる。
【0117】
本実施形態の空調用レジスタ100dによれば、発光制御部922は、温度情報に関連付けた色で発光部70dを発光させる。発光部70dの発光処理を温度情報に関連付けることにより、露出面606を、温度情報を表示する表示部として機能させることができる。また、車室内のユーザが体感し得る車室の気温と、露出面606の発光色とを関連付けることにより、露出面606の視認性を向上させることができる。
【0118】
D2.第4実施形態の他の実施形態:
図23は、第4実施形態の他の実施形態に係る空調用レジスタ100d2の外観構成を示す斜視図である。上記第4実施形態の空調用レジスタ100dでは、露出面606が導光板で構成されている例を示した。これに対して、
図23に示すように、例えば導光棒など、導光板以外の導光体が用いられてもよい。
【0119】
図23に示すように、本実施形態の空調用レジスタ100d2は、蓋部材60d2と、発光部70d2とを備えている。発光部70d2は、複数のLED発光素子72d2と、導光棒75とを備えるLED照明モジュールである。導光棒75は、例えば、円柱、あるいは四角柱、六角柱、八角柱を含む多角柱などの任意の形状を有する光透過性の部材である。導光棒75の材料としては、例えばアクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン、エポキシ等の合成樹脂やガラス等の任意の光透過性材料を用いることができる。導光棒75は、端部から入射された光を内部で反射させて全体を発光させることができる。なお、導光棒75は、無色透明には限らず、着色されていてもよい。
【0120】
蓋部材60d2の露出面606には、導光棒75を車幅方向に沿って挿通するための貫通孔606pが設けられている。本実施形態では、列L6~L8の3列の貫通孔606pが設けられており、導光棒75は、列L6~L8の貫通孔606pそれぞれに挿通されて露出面606に固定されている。複数のLED発光素子72d2は、各列の導光棒75それぞれの両端に当接して配置されており、各列の導光棒75それぞれに光を導入する。このように構成された空調用レジスタ100d2によれば、露出面606に配置された複数の導光棒75を発光させることにより、ライン発光など、導光棒75の配置や形状に合わせて露出面606を発光させることができる。
【0121】
E.第5実施形態:
図24は、第5実施形態に係る空調用レジスタ100eの外観構成を示す斜視図である。本実施形態の空調用レジスタ100eは、第2実施形態で示した空調用レジスタ100bと同様の構成を備えるが、発光部70に代えて発光部70eを備える点において相違する。発光部70eは、第2実施形態で示した発光部70と同様の構成を備えるが、さらに光拡散シート77を備える点において相違する。
【0122】
光拡散シート77は、例えば、表面の凹凸加工、あるいは光拡散用の粒子や材料が導入されたシート状の樹脂材料であり、入射した光を拡散させた状態で透過させる。LED発光素子72から出射される光72Lは、光拡散シート77によって拡散され、露出面606から略均一の光量となって透過する。
図24の例では、発光部70eの各LED発光素子72は、
図13で示したように列L1,L2,L3の光量がこの順で大きくなるように発光されている。したがって、
図24に示すように、列L3から列L1に向かって段階的に光量が変化するように面発光させることができ、空調用レジスタ100eの視認性をより向上させることができる。
【0123】
F.他の実施形態:
(F1)上記各実施形態では、発光部70には、LED発光素子72が用いられる例を示した。これに対して、発光部70は、LED発光素子72を備える構成のみには限定されず、白熱電球、蛍光灯などの種々の光源が用いられてもよい。
【0124】
(F2)上記各実施形態では、LED発光素子72を備える発光部70により露出面606が発光する例を示した。これに対して、発光部70を省略し、露出面606が蓄光性を有する材料で形成されるなど、露出面606が発光するように構成されていてもよい。
【0125】
(F3)上記各実施形態では、空調用レジスタ100が第一吹出口101と、第二吹出口102との2つの吹出口を備える例を示した。これに対して、例えば、第一吹出口101と、第二吹出口102とのいずれか一方のみが備えられてもよい。このように構成した場合であっても、露出面606が発光する意匠性を向上させた空調用レジスタ100を提供することができる。
【0126】
(F4)上記第1実施形態では、蓋部材60が円柱状である例、あるいは露出面606が曲面で構成される例を示した。これに対して、蓋部材60は、円柱状には限らず、多角柱などの任意の柱状体であってもよく、球体であってもよい。蓋部材60が多角柱である場合には、露出面606は、多角柱のいずれか一つの平面であってもよく、角部を含む2以上の平面であってもよい。
【0127】
(F5)上記各実施形態では、リテーナ開口部306の外形が矩形である例を示した。これに対して、リテーナ開口部306は、矩形に限らず円形や楕円、多角形などの任意の幾何学的形状であってもよい。また、上記各実施形態において、ベゼル開口部206の形状がリテーナ開口部306の形状と一致する例を示したが、これに限らず、ベゼル開口部206の形状とリテーナ開口部306の形状とが不一致であってもよい。この場合において、露出面606の形状は、リテーナ開口部306に応じた形状とされてよい。
【0128】
(F6)上記各実施形態では、リテーナ開口部306の第一辺306s1および第二辺306s2が車幅方向に沿って配置される例を説明した。これに対して、空調用レジスタ100は、リテーナ開口部306の第一辺306s1および第二辺306s2が車幅方向に交差する向きになるように配置されるなど、車幅方向に対して垂直を含む任意の角度に傾斜させた状態で配置されてもよい。
【0129】
(F7)上記各実施形態では、第一辺306s1および第二辺306s2が直線状である例を示したが、直線状には限らず、円弧などの種々の曲線とされてもよく、波状などの種々の形状とされてもよい。第一吹出口101および第二吹出口102も同様である。
【0130】
(F8)上記第1実施形態では、発光部70は、複数のLED発光素子72が反射基板上にグリッド状に配列されている例を示した。これに対して、LED発光素子72の配置は、所望する露出面606の発光方法に応じて任意に調整することが可能である。同様に、光拡散シート77、導光棒75、導光板、ならびにこれら材料に対する光拡散のための加工部などは上記各実施形態のみには限定されず、所望する露出面606の発光方法に応じた任意の形状や位置などに調整されてよい。
【0131】
(F9)上記各実施形態では、空調用レジスタ100は、発光処理を行う制御装置90を備える例を示した。これに対して、例えば、発光部70の発光処理が行われない場合などには、制御装置90を省略してもよい。
【0132】
(F10)上記第4実施形態では、発光制御部922が空調情報取得部99から取得した温度情報に関連付けて露出面606の発光色を切り替える例を示した。これに対して、発光制御部922は、車両情報取得部98から取得した車両情報に関連付けて露出面606の発光色を切り替えてもよい。発光制御部922は、例えば、車両VHの運転モードごとに発光色を切り替えることができる。具体的には、自動運転モードである場合には、露出面606を緑系の色に発光させることにより、乗員のリラックスを促すことができる。手動運転モードである場合には、露出面606を青系の色に発光させることにより、ドライバの集中力を高めることができる。
【0133】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0134】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0135】
10…インストルメントパネル、12…ハンドル、20,20c…ベゼル、30…リテーナ、30S…リテーナ通風路、30W…リテーナ内壁、40…操作レバー、60,60b,60c,60d,60d2…蓋部材、62,62b、62c…前壁部、63…上壁部、64…下壁部、66,66b,66c…フィン、68,68b、68c…分流部、70,70c,70d,70d2,70e…発光部、72,72d,72d2…LED発光素子、72L…光、75…導光棒、77…光拡散シート、90…制御装置、92…CPU、94…メモリ、96…インターフェース回路、98…情報取得部、99…空調情報取得部、100,100b,100c,100d,100d2,100e…空調用レジスタ、101,101b、101c…第一吹出口、102,102b,102c…第二吹出口、206…ベゼル開口部、210…鍔部、302…第一壁部、302T…嵌合孔、302W…第一リテーナ内壁、303…側壁部、304…第二壁部、304T…嵌合孔、304W…第二リテーナ内壁、305…流入口、306…リテーナ開口部、306s1…第一辺、306s2…第二辺、308…嵌合孔、601,601b,601c…第一内部流路、602…第一スリット、603,603b,603c…第二内部流路、604…第二スリット、606…露出面、606p…貫通孔、612,612b,612c…第一リテーナ通風路、614,614b,614c…第二リテーナ通風路、623…端辺、624…端辺、626…前面、628…軸嵌合部、632…上面部、632E…端辺、634…側壁部、634B…下端、638…嵌合孔、642…下面部、642E…端辺、644…側壁部、644T…上端、646…突出部、648…嵌合孔、662…突出部、664…第一フィン、665…第二フィン、666…軸部、668,668c…連結部、682…支持凹部、683…第一斜面、684…突出部、685…第二斜面、922…発光制御部、942…発光プログラム、CP…中点、VH…車両