(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072997
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】無線通信装置及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 27/26 20060101AFI20240522BHJP
H04J 1/02 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H04L27/26 200
H04J1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183944
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】望月 拓志
(57)【要約】
【課題】複数CC合成時間信号の周波数配置の変更に応じて、CFR回路を自律的に最適な設定にすること。
【解決手段】本開示に係る無線通信装置(10B)は、CFR(Crest Factor Reduction)回路(101)と、DPD(Digital Pre-Distortion)回路(104)と、CFR回路(101)に入力される、複数のCC(Component Carrier)毎の時間信号が合成されてなる複数CC合成時間信号の周波数配置を判定する判定部(102)と、判定部(102)により判定された複数CC合成時間信号の周波数配置に基づいて、CFR回路(101)を制御する制御部(103)と、を備える。
【選択図】
図27
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CFR(Crest Factor Reduction)回路と、
DPD(Digital Pre-Distortion)回路と、
前記CFR回路に入力される、複数のCC(Component Carrier)毎の時間信号が合成されてなる複数CC合成時間信号の周波数配置を判定する判定部と、
前記判定部により判定された前記複数CC合成時間信号の周波数配置に基づいて、前記CFR回路を制御する制御部と、を備える、
無線通信装置。
【請求項2】
前記CFR回路は、通過帯域が互いに異なる複数のフィルタを保持し、
前記制御部は、前記複数のフィルタの中から、前記判定部により判定された前記複数CC合成時間信号の周波数配置に応じた通過帯域を有するフィルタを選択し、
前記CFR回路は、前記制御部により選択されたフィルタを用いて、前記複数CC合成時間信号のピークを抑圧するCFR処理を実施する、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記CFR回路は、前記CFR処理を繰り返し実施し、
前記制御部は、前記判定部により判定された前記複数CC合成時間信号の周波数配置におけるCC間の周波数間隔に基づいて、前記CFR回路における前記CFR処理の繰り返し回数を制御する、
請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記判定部により判定された前記複数CC合成時間信号の周波数配置におけるCC間の周波数間隔が大きくなるほど、前記CFR回路における前記CFR処理の繰り返し回数を減らす、
請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記判定部により判定された前記複数CC合成時間信号の周波数配置におけるCC間の周波数間隔に基づいて、前記CFR回路における前記CFR処理のピークの抑圧量である補正振幅を制御する、
請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記判定部により判定された前記複数CC合成時間信号の周波数配置におけるCC間の周波数間隔が大きくなるほど、前記CFR回路における前記補正振幅を小さくする、
請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
CFR(Crest Factor Reduction)回路及びDPD(Digital Pre-Distortion)回路を備える無線通信装置により実行される無線通信方法であって、
前記CFR回路に入力される、複数のCC(Component Carrier)毎の時間信号が合成されてなる複数CC合成時間信号の周波数配置を判定することと、
前記判定された前記複数CC合成時間信号の周波数配置に基づいて、前記CFR回路を制御することと、を含む、
無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AAS(Active Antenna System)等であるRU(Radio Unit)には、送信AMP(AMPlifier)が搭載されている。しかし、送信AMPのAM(Amplitude Modulation)-AM/AM-PM(Phase Modulation)等の非線形歪特性に起因して、ACLR(Adjacent Channel Leakage Ratio)/EVM(Error Vector Magnitude)等の通信品質が悪化することが懸念される。
【0003】
そのため、RUでは、DPD(Digital Pre-Distortion)回路が、送信AMPの非線形歪特性の線形化を行うことにより、ACLR/EVMの改善を図っている。しかし、RUにおいて、DPD回路によりACLR/EVMのさらなる改善を図る上では、CFR(Crest Factor Reduction)回路が重要な基盤技術要素となる。CFR回路は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
以下、関連技術に係るRUについて説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、以下で示す具体的な数値等は、本開示の理解を容易とするための例示にすぎず、これに限定されるものではない。
【0005】
図1は、関連技術に係るRU10の構成例を示す図である。なお、
図1において、一方向性の矢印は、ある信号(データ)の流れの方向を端的に示したもので、双方向性を排除するものではない(後述する
図3及び
図23等において同じ)。
【0006】
図1に示されるように、関連技術に係るRU10は、光トランシーバ11と、eCPRI(enhanced Common Public Radio Interface)部12と、LPHY(Low PHYsical layer)部13と、複数のCDUC(Carrier Digital Up Converter)14と、複数の加算器15と、Digital Baseband部16と、TRX-Frontend部17と、複数のアンテナ18と、を備えている。
【0007】
LPHY部13には、DU(Distributed Unit)20から光トランシーバ11及びeCPRI部12を介して、複数RAN(Radio Access Network) Sharing Operatorの各端末へ送信されるべきDATA Streamが到来する。ここで、DATA Streamは、複数CC(Component Carrier)から構成されており、具体的には、LPHY部13には、複数CCからなる複数CC信号が周波数毎に入力される。
【0008】
LPHY部13は、不図示のIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部を備えている。IFFT部は、周波数毎に入力されてくる複数CC信号を、CC毎の時間信号に変換し、CC毎の時間信号を複数のCDUC14のそれぞれに出力する。
【0009】
複数のCDUC14は、TRX-Frontend部17内の後述する複数のTRX(送受信機)171にそれぞれ対応して設けられている。
図1に示されるRU10は、最大で8つのCCに対応可能であるものとする。そのため、各CDUC14は、8つのCCにそれぞれ対応して設けられた8つのDUC Sliceを備えている。
【0010】
各DUC Sliceは、Channel Filter141と、NCO(Numerically Controlled Oscillator)142と、乗算器143と、を備えている。各DUC Sliceは、Channel Filter141を用いて、対応するTRX171のCC毎の時間信号のうち、対応するCCの時間信号を抽出する。そして、各DUC Sliceは、NCO142及び乗算器143を用いて、対応するCCの時間信号を、DBB(Digital Baseband)周波数軸上に配置する。
【0011】
複数の加算器15は、後述する複数のTRX171にそれぞれ対応して設けられている。
各加算器15は、DBB周波数軸上に配置された、対応するTRX171の各CCの時間信号を合成し、合成された時間信号を、対応するTRX171の複数CC合成時間信号としてDigital Baseband部16に出力する。
【0012】
図2は、複数CC合成時間信号の周波数配置の例を示す図である。
図2に示される複数CC合成時間信号は、3つのCCが不連続に配置された状態になっている。以下、このような状態を3CC Non-Contiguous状態と適宜称する。3CC Non-Contiguous状態の周波数配置は、イギリスで採用されているDBB spectrumと類似している。また、以下では、2つのCCが連続して配置された状態を2CC Contiguous状態と適宜称する。2CC Contiguous状態の周波数配置は、ドイツで採用されている周波数配置とほぼ同等である。また、以下では、2つのCCが不連続に配置された状態を2CC Non-Contiguous状態と適宜称する。
【0013】
Digital Baseband部16は、複数のCFR回路161と、複数のDPD回路162と、を備えている。
複数のCFR回路161及び複数のDPD回路162は、後述する複数のTRX171にそれぞれ対応して設けられている。
【0014】
各CFR回路161は、対応するTRX171の複数CC合成時間信号のPeakを抑圧するSoft Clipping処理を行う。具体的には、各CFR回路161は、対応するTRX171の後段に設けられた後述する送信AMP172の飽和(Psat)レベル以下になるように、複数CC合成時間信号のPeakを抑圧する。
【0015】
各DPD回路162は、対応するTRX171の後段に設けられた後述する送信AMP172で非線形歪が印加された複数CC合成時間信号がFeedbackされる。そして、各DPD回路162は、Feedbackされた複数CC合成時間信号が、CFR回路161の出力後(DPD回路162の入力前)の複数CC合成時間信号に漸近するように、送信AMP172の非線形性とは逆特性のAM/PMをDPD Weightとして逐次形成する。そして、各DPD回路162は、形成されたDPD Weightを、CFR回路161の出力後の複数CC合成時間信号へ乗算する。この乗算により得られた複数CC合成時間信号が送信AMP172を通過することで、送信AMP172のAM/PM歪等の非線形歪は相殺され、最大定格送信出力(RMS:Root Mean Square)レベル近傍の非線形歪が線形化されることとなる。
【0016】
TRX-Frontend部17は、複数のTRX171と、複数の送信AMP172と、複数の受信AMP173と、複数のカプラ174と、複数のスイッチ175と、複数のBPF(Band Pass Filter)176と、を備えている。
複数の送信AMP172、複数の受信AMP173、複数のカプラ174、複数のスイッチ175、及び複数のBPF176は、複数のTRX171にそれぞれ対応して設けられている。
【0017】
複数CC合成時間信号は、TRX171でRMSレベルのレベル合わせが行われ、送信AMP172で増幅され、BPF176で所定の周波数帯域が通過した後、対応するアンテナ18に出力され、UE(User Equipment:端末)に送信される。
また、送信AMP172で非線形歪が印加された複数CC合成時間信号は、カプラ174により、対応するDPD回路162にFeedbackされる。
【0018】
一方、対応するアンテナ18でUEから受信された信号は、受信AMP173で増幅されて、TRX171に出力される。
スイッチ175は、送信と受信とを切り替えるスイッチである。
【0019】
なお、
図1では、LPHY部13とDigital Baseband部16との間の構成としては、送信に係る構成のみが示されており、受信に係る構成は省略されている。
【0020】
図3は、
図1に示されるRU10において、CFR回路161の入力段以降の複数CC合成時間信号の波形の例を示す図である。
図3において、波形W1は、CFR回路161の入力前の複数CC合成時間信号の波形を示している。
【0021】
CFR回路161は、送信AMP172の飽和(Psat)レベル以下になるように、波形W1のPeakを抑圧するSoft Clipping処理を行う。これにより、波形W2が得られる。
TRX171は、他のTRX171との間で、波形W2のRMSレベルのレベル合わせを行う。これにより、波形W3が得られる。
【0022】
送信AMP172は、波形W3を増幅する。このとき、送信AMP172の非線形歪が波形W3に印加される。これにより、波形W4が得られる。波形W4の非線形歪が印加された領域の線形性がDPD回路162により改善される。
【0023】
このように、以下の関係を確保する必要がある。
最大定格送信出力(RMS)レベル+CFR閾値<送信AMP172のPsat(飽和出力)
そのためには、CFR回路161によって、送信AMP172の入力信号のPeakと送信AMP172のPsat(飽和出力)とのレベルの大小関係を常に維持することが重要となる。
【0024】
このことから、CFR回路161の主目的は、以下の2事項となる。
目的 (1):
送信AMP172のPsatでのHard Clipping により顕著な高次非線形歪が発生する場合がある。目的 (1)は、このような場合に、DPD回路162による歪補償の改善が不能になることを回避することである。
【0025】
目的 (2):
送信AMP172に効率重視のDoherty AMPを採用した場合、不用意なPeakが印加されると、消費電流が増加する。目的 (2)は、このような場合に、消費電流の増加によるRU10許容消費電力及び放熱量の超過を回避することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかし、RU10は、配置場所が変更される場合がある。例えば、RU10の配置場所がドイツからイギリスに変更されると、複数CC合成時間信号の周波数配置が、2CC Contiguous状態から3CC Non-Contiguous状態に切替又は変化する。
【0028】
複数CC合成時間信号の周波数配置が、2CC Contiguous状態から2CC Non-Contiguous状態又は3CC Non-Contiguous状態に切替又は変化した場合、複数CC合成時間信号のPeak時間の発生頻度とPeak時間の半値幅に変化が表れる。
【0029】
そのため、複数CC合成時間信号の周波数配置の変更に応じて、CFR回路161を自律的に最適な設定にすることが、本開示の第1の課題となる。以下、本開示の第1の課題について詳細に説明する。
【0030】
図4は、2CC Contiguous状態の複数CC合成時間信号の周波数配置の例を示す図である。
図5は、
図4に示される2CC Contiguous状態の複数CC合成時間信号の周波数Spectrumの例を示す図である。
図6は、
図4に示される2CC Contiguous状態の複数CC合成時間信号のPeak様相の例を示す図である。
【0031】
一方、
図7は、3CC Non-Contiguous状態の複数CC合成時間信号の周波数配置の例を示す図である。
図8は、
図7に示される3CC Non-Contiguous状態に類似する2CC Non-Contiguous状態の複数CC合成時間信号の周波数Spectrumの例を示す図である。
図9は、
図7に示される3CC Non-Contiguous状態に類似する2CC Non-Contiguous状態の複数CC合成時間信号のPeak様相の例を示す図である。
【0032】
図6及び
図9に示されるように、2CC Non-Contiguous状態の周波数配置の場合、2CC Contiguous状態の周波数配置の場合と比較して、Peak時間の発生頻度が高まり、かつ、Peak時間の半値幅が狭まっている。従い、CC間の周波数間隔が広がるほど、Peak時間の発生頻度が高まり、かつ、Peak時間の半値幅が狭まっていると言える。
【0033】
この現象は、CC間の周波数間隔が広がるほど、複数CC合成時間信号のAM変調成分のBeat周波数が高まること、即ち、Peak時間の発生頻度が高まり、かつ、Peak時間の半値幅が狭まることに相当する。言い換えれば、この現象は、複数CC合成時間信号のAM変調成分のBeat周波数が高まると、Peak時間の半値幅が狭いPeakが時間的に高頻度で出現する現象である。
【0034】
図10は、2CC Contiguous状態及び3CC Non-Contiguous状態の各々の複数CC合成時間信号のPeakの分布の例を示す図である。
図11は、2CC Contiguous状態及び3CC Non-Contiguous状態の各々の複数CC合成時間信号のPeak距離の分布の例を示す図である。Peak距離とは、Peakの発生位置と前回のPeakの発生位置との間の距離を示す。
【0035】
図10及び
図11に示されるように、2CC Contiguous状態の周波数配置よりも、3CC Non-Contiguous状態の周波数配置の方が、Peakの発生頻度及びPeakの伸長度が大きくなる。
【0036】
図12は、ある周波数配置の複数CC合成時間信号に対し、CFR回路161によるCFR処理を1回実施した前後のPeak様相の例を示す図である。
図12に示されるように、CFR処理を1回実施しただけでは、抑圧されないPeakも存在する。このPeakは、次に実施されるCFR処理によって抑圧されることになる。
【0037】
そのため、CFR回路161は、CFR処理を巡回実施するCFR Iterationを行う。CFR Iterationでは、CFR処理を実施した後の時間波形群をFIFO(First-In First-Out)に格納した後、再度、CFR処理を実施する。このようにして、CFR回路161は、CFR処理を巡回実施する。
【0038】
図13は、2CC Contiguous状態及び3CC Non-Contiguous状態の各々の複数CC合成時間信号に対し、2回のCFR処理を実施した後のPeakレベルの分布の例を示す図である。
図13に示されるように、2CC Contiguous状態の複数CC合成時間信号については、2回のCFR処理により、Peakは完全に抑圧される。しかし、3CC Non-Contiguous状態の複数CC合成時間信号については、2回のCFR処理を実施しても、Peakは残存気味となる。これは、2CC Contiguous状態の複数CC合成時間信号よりも、3CC Non-Contiguous状態の複数CC合成時間信号の方が、Peak時間の発生頻度が大きいため、CFR Iteration回数を増やしても、Peakが残留傾向になると考えられる。
【0039】
上述したように、3CC Non-Contiguous状態の周波数配置のように、複数CCがNon-Contiguousに配置されている場合、言い換えれば、CC間の周波数間隔が広い場合、Peak時間の発生頻度が高まり、かつ、Peak時間の半値幅が狭まる。
【0040】
そのため、複数CCがNon-Contiguousに配置されている場合、CFR Iteration回数を多くし、かつ、CFR閾値を下げた設定にするほど、Peak成分の抑圧度が高まる。しかし、その反面、複数CC合成時間信号自身が欠損され過ぎてしまうため、EVM等の通信品質の劣化に繋がってしまう。この点は、本開示の後述する第2の課題に関係する。
【0041】
ここで、CFR回路161の構成例について説明する。
図14は、CFR回路161の構成例を示す図である。
図14に示されるように、CFR回路161は、Switch1611と、変換器1612と、Peak検出器1613と、基本Impulse信号発生器1614と、逆Impulse生成器1615と、delay FIFO1616と、加算器1617と、Iteration判定器1618と、を備えている。
【0042】
CFR回路161には、対応する加算器15から、複数CC合成時間信号が複素信号として入力される。
Switch1611は、加算器15から入力された複数CC合成時間信号、又は、Iteration判定器1618から入力された、何回かのCFR処理が実施された後の複数CC合成時間信号、のいずれかを出力する。
【0043】
変換器1612は、Switch1611から複数CC合成時間信号として出力された複素信号I+jQをパワーレベルI^2+Q^2に変換して出力する。
Peak検出器1613は、変換器1612の出力に基づいて、複数CC合成時間信号のCFR閾値以上のPeakを検出し、検出されたPeakの各々について時間位置l及びCFR閾値から超過したレベルεを抽出して出力する。
【0044】
基本Impulse信号発生器1614は、基本Impulse信号を発生させる。
逆Impulse生成器1615は、基本Impulse信号発生器1614で発生した基本Impulse信号に基づいて、複数CC合成時間信号のPeakを抑圧するための逆Impulseを生成して出力する。なお、逆Impulse生成器1615の詳細な動作については後述する。
【0045】
delay FIFO1616は、Switch1611から出力された複数CC合成時間信号を遅延させ、後段の加算器1617で逆Impulseを加算するときのTiming合わせを行う。
加算器1617は、delay FIFO1616から出力された複数CC合成時間信号のPeak位置にて、逆Impulse生成器1615から出力された逆Impulseを加算するCFR処理を実施する。これにより、複数CC合成時間信号のPeak抑圧が実現される。
【0046】
Iteration判定器1618は、CFR処理を再度実施するか否かを判定する。例えば、Iteration判定器1618は、CFR処理の実施回数が、CFR回路161に設定されているCFR Iteration回数に達していない場合は、CFR処理を再度実施すると判定する。Iteration判定器1618は、CFR処理を再度実施する場合は、加算器1617から出力された複数CC合成時間信号をSwitch1611に入力する。一方、Iteration判定器1618は、CFR処理を再度実施しない場合は、加算器1617から出力された複数CC合成時間信号を、後段の対応するDPD回路162に出力する。
【0047】
ここで、逆Impulse生成器1615の詳細な動作について説明する。
まず、逆Impulse生成器1615は、Peakの抑圧量である補正振幅(Error magnitude vector)εを算出する。補正振幅εは、Peak検出器1613で抽出されたPeakのレベルεに相当する。
【0048】
次に、逆Impulse生成器1615は、基本Impulse信号発生器1614で発生した基本Impulse信号と、補正振幅εと、に基づいて、逆Impulseの素信号を生成する。逆Impulseの素信号の例を
図15に示す。
【0049】
次に、逆Impulse生成器1615は、逆Impulseの素信号を、複数CC合成時間信号の周波数配置に応じた通過帯域を有するCFR Filter(Correction Pulse Filter)を通過させることにより、逆Impulseを生成する。この処理により、逆Impulseの周波数成分を、複数CC合成時間信号の周波数配置に合わせることができるため、CCが配置された領域外に逆Impulseによる広帯域拡散Spectrumが漏洩することが防止される。この処理は、時間域処理としては乗算及びMixingに相当し、周波数域処理としては畳み込み積分に相当する。この処理の例を
図16に示す。また、この処理により生成された逆Impulseの例を
図17に示す。
【0050】
その後、逆Impulse生成器1615は、複数CC合成時間信号のPeak位置にて、逆Impulseを加算器1617に加算させる。これにより、複数CC合成時間信号のPeakが抑圧される。複数CC合成時間信号のPeakが抑圧された例を
図18に示す。
【0051】
続いて、本開示の第2の課題について説明する。
上述したように、複数CCがNon-Contiguous状態で配置されている場合、CFR Iteration回数を多くするほど、Peak成分の抑圧度が高まる。しかし、その反面、複数CC合成時間信号自身が欠損され過ぎてしまうため、EVM等の通信品質の劣化に繋がってしまう。
【0052】
そのため、Power Backoffを実施しつつ、CFR閾値を高くしなければ、EVM等の通信品質を維持及び確保できなくなるという問題が生じる。ここで、Power Backoffとは、最大定格送信出力(RMS)のレベルを下げて、送信AMP172のPsatとRMS間にBackoffを確保することである。但し、CFR閾値を高くし過ぎると、PsatがCFR閾値以下となり、Psatで送信系の飽和が支配的に決まってしまう状態となることから、この場合PsatによるHard Clippingが常時発生し、高次の非線形歪が大量に発生することとなってしまうため、DPD回路162による非線形歪補償が不能となる。従いCFR閾値を不用意に高くすることに関しては十分注意を払う必要がある。
【0053】
図19は、2CC Contiguous状態及び3CC Non-Contiguous状態の各々の複数CC合成時間信号のCFR無効時のPAPR(Peak-to-Average Power Ratio)/CCDF(Complementary Cumulative Distribution Function)特性の例を示す図である。
図20は、2CC Contiguous状態及び3CC Non-Contiguous状態の各々の複数CC合成時間信号のCFR有効時のPAPR/CCDF特性の例を示す図である。
図21は、
図20に示されるx領域の拡大図である。なお、
図20及び
図21において、CFR閾値は8.5dBになっている。
【0054】
図19に示されるように、CFR無効時、すなわち、CFR処理によるPeakの抑圧をしない場合は、2CC Contiguous状態と3CC Non-Contiguous状態とでCCDFに差異が無いことがわかる。
【0055】
一方、
図20及び
図21に示されるように、CFR有効時、すなわち、CFR処理によりPeakを抑圧する場合は、2CC Contiguous状態の場合と比して、3CC Non-Contiguous状態の場合の方が、CFR閾値近傍のPAPRが 0.2dB 小さくなる。このことから、3CC Non-Contiguous状態の場合の方が、2CC Contiguous状態の場合に比して、CFR処理により、Peakが抑圧されていることになる。つまり、3CC Non-Contiguous状態の場合に、CFR処理によるPeakの抑圧を徹底してしまうと、2CC Contiguous状態の場合に比して、0.2dB 分だけ信号純度が劣化してしまう。そのため、3CC Non-Contiguous状態の場合、CFRに起因してEVMの劣化が顕著に現れることにとなる。
【0056】
従って、3CC Non-Contiguous状態の場合に、2CC Contiguous状態の場合と同等のEVMを実現するためには、関連技術としては、CFR回路161により、Power Backoffを拡大し、最大定格送信出力(RMS)のレベルを下げる必要がある。但し、送信EIRP(Equivalent Isotropically Radiated Power)低下を犠牲とする事で、ようやくEVM(=DL SINR)が確保できることになるが、送信EIRPの低下により、DL Coverageの縮小化を招くという問題が発生してしまう。
【0057】
図22は、2CC Contiguous状態及び3CC Non-Contiguous状態の各々の複数CC合成時間信号のPAPR/EVM特性の例を示す図である。
図22に示されるように、3CC Non-Contiguous状態の場合は、2CC Contiguous状態の場合に比して、CFR閾値 vs EVM特性が劣化している。一例として、3CC Non-Contiguous状態の場合に、EVM 2%(5G NR-TM3.1a:256QAM EVM Core Spec 3.5%、Test Torelance:+1%を加えた試験時規格は4.5%以下となる)を得るためには、0.6dBのPower Backoffが必要となることがわかる。
【0058】
従って、本開示の課題を纏めると、以下の通りとなる。
第1の課題:
複数CC合成時間信号の周波数配置の変更に応じて、CFR回路161を自律的に最適な設定にすることが、第1の課題となる。
第2の課題:
複数CC合成時間信号の周波数配置が2CC Contiguous状態から3CC Non-Contiguous状態に変化する等でCC間の周波数間隔が広がった場合、CFR処理によるPeakの抑圧を完遂してしまうと、複数CC合成時間信号が欠損し、EVM等の通信品質が劣化してしまう。そのため、CC間の周波数間隔が広がった場合、CFRによるPeak抑圧の掛け過ぎによるEVM等の通信品質の劣化を回避することが、第2の課題となる。
【0059】
本開示の目的は、上述した課題のいずれかの解決に寄与し得る無線通信装置及び無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0060】
一態様による無線通信装置は、
CFR(Crest Factor Reduction)回路と、
DPD(Digital Pre-Distortion)回路と、
前記CFR回路に入力される、複数のCC(Component Carrier)毎の時間信号が合成されてなる複数CC合成時間信号の周波数配置を判定する判定部と、
前記判定部により判定された前記複数CC合成時間信号の周波数配置に基づいて、前記CFR回路を制御する制御部と、を備える。
【0061】
一態様による無線通信方法は、
CFR(Crest Factor Reduction)回路及びDPD(Digital Pre-Distortion)回路を備える無線通信装置により実行される無線通信方法であって、
前記CFR回路に入力される、複数のCC(Component Carrier)毎の時間信号が合成されてなる複数CC合成時間信号の周波数配置を判定することと、
前記判定された前記複数CC合成時間信号の周波数配置に基づいて、前記CFR回路を制御することと、を含む。
【発明の効果】
【0062】
上述の態様によれば、上述した課題のいずれかの解決に寄与し得る無線通信装置及び無線通信方法を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】関連技術に係るRUの構成例を示す図である。
【
図2】複数CC合成時間信号の周波数配置の例を示す図である。
【
図3】
図1に示されるRUにおいて、CFR回路の入力段以降の複数CC合成時間信号の波形の例を示す図である。
【
図4】2CC Contiguous状態の複数CC合成時間信号の周波数配置の例を示す図である。
【
図5】
図4に示される2CC Contiguous状態の複数CC合成時間信号の周波数Spectrumの例を示す図である。
【
図6】
図4に示される2CC Contiguous状態の複数CC合成時間信号のPeak様相の例を示す図である。
【
図7】3CC Non-Contiguous状態の複数CC合成時間信号の周波数配置の例を示す図である。
【
図8】
図7に示される3CC Non-Contiguous状態に類似する2CC Non-Contiguous状態の複数CC合成時間信号の周波数Spectrumの例を示す図である。
【
図9】
図7に示される3CC Non-Contiguous状態に類似する2CC Non-Contiguous状態の複数CC合成時間信号のPeak様相の例を示す図である。
【
図10】2CC Contiguous状態及び3CC Non-Contiguous状態の各々の複数CC合成時間信号のPeakの分布の例を示す図である。
【
図11】2CC Contiguous状態及び3CC Non-Contiguous状態の各々の複数CC合成時間信号のPeak距離の分布の例を示す図である。
【
図12】ある周波数配置の複数CC合成時間信号に対し、CFR回路によるCFR処理を1回実施した前後のPeak様相の例を示す図である。
【
図13】2CC Contiguous状態及び3CC Non-Contiguous状態の各々の複数CC合成時間信号に対し、2回のCFR処理を実施した後のPeak距離の分布の例を示す図である。
【
図15】関連技術に係るCFR回路により生成される逆Impulseの素信号の例を示す図である。
【
図16】関連技術に係るCFR回路において、逆Impulseの素信号を、複数CC合成時間信号の周波数配置に応じた通過帯域を有するCFR Filterを通過させることにより、逆Impulseを生成する処理の例を示す図である。
【
図17】
図16に示される処理により生成された逆Impulseの例を示す図である。
【
図18】
図17に示される逆Impulseにより複数CC合成時間信号のPeakが抑圧された例を示す図である。
【
図19】2CC Contiguous状態及び3CC Non-Contiguous状態の各々の複数CC合成時間信号のCFR無効時のPAPR/CCDF特性の例を示す図である。
【
図20】2CC Contiguous状態及び3CC Non-Contiguous状態の各々の複数CC合成時間信号のCFR有効時のPAPR/CCDF特性の例を示す図である。
【
図22】2CC Contiguous状態及び3CC Non-Contiguous状態の各々の複数CC合成時間信号のPAPR/EVM特性の例を示す図である。
【
図23】実施の形態1に係るRUの構成例を示す図である。
【
図24】実施の形態1に係るCFR回路により生成される逆Impulseの素信号の例を示す図である。
【
図25】実施の形態1に係るCFR回路において、逆Impulseの素信号を、複数CC合成時間信号の周波数配置に応じた通過帯域を有するCFR Filterを通過させることにより、逆Impulseを生成する処理の例を示す図である。
【
図26】
図25に示される逆Impulseにより複数CC合成時間信号のPeakが抑圧された例を示す図である。
【
図27】実施の形態2に係る無線通信装置の構成例を示す図である。
【
図28】実施の形態2に係る無線通信装置の概略的な動作の流れの例を示すフロー図である。
【
図29】本開示に係る無線通信装置の一部の機能を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。
<実施の形態1>
図23は、本実施の形態1に係るRU10Aの構成例を示す図である。
図23に示されるように、本実施の形態1に係るRU10Aは、
図1に示される関連技術に係るRU10と比較して、周波数配置判定部131と、CFR制御部163と、を追加した点が異なる。
【0065】
周波数配置判定部131は、LPHY部13に設けられており、CFR回路161に入力される複数CC合成時間信号の周波数配置を判定する。
上述したように、LPHY部13は、周波数毎に入力されてくる複数CC信号を、CC毎の時間信号に変換する不図示のIFFT部を備えている。IFFT部の前段では、周波数毎の複数CC信号が合成される前の状態になっている。
そのため、周波数配置判定部131は、IFFT部の前段で、複数CC信号の周波数Spectrumに基づいて、複数CCの有無を判定する。
【0066】
また、各CDUC14は、複数(
図23では8つ)のDUC Sliceを備えており、各DUC Sliceは、NCO142及び乗算器143を用いて、CCの時間信号を、DBB周波数軸上に配置する。このとき、周波数配置判定部131は、各CDUC14に対し、NCO142を制御するためのNCO制御情報を出力しており、各CDUC14は、このNCO制御情報に基づいて、NCO142を制御し、CCの時間信号をDBB周波数軸上に配置させている。
そのため、周波数配置判定部131は、NCO制御情報を保持している。
【0067】
そこで、周波数配置判定部131は、IFFT部の前段で判定した複数CCの有無と、NCO制御情報と、に基づいて、複数CC合成時間信号の周波数配置を判定する。具体的には、周波数配置判定部131は、複数CC合成時間信号の周波数配置として、CCの数、CC間の周波数間隔等を判定する。そのため、周波数配置判定部131は、複数CC合成時間信号の周波数配置が、2CC Contiguous状態、2CC Non-Contiguous状態、又は3CC Non-Contiguous状態であるか等を判定できる。
【0068】
CFR制御部163は、Digital Baseband部16に設けられており、周波数配置判定部131により判定された複数CC合成時間信号の周波数配置に基づいて、CFR回路161を制御する。
【0069】
上述したように、CFR回路161内の逆Impulse生成器1615は、CFR Filter(Correction Pulse Filter)を用いて、逆Impulseを生成する。このとき、CFR Filterの通過帯域は、CFR回路161に入力される複数CC合成時間信号の周波数配置に準拠する必要がある。
【0070】
そこで、本実施の形態1では、逆Impulse生成器1615は、通過帯域と周波数配置が互いに異なる複数のCCのみを通過させる様な逆Impulseの周波数Spectrumを生成すべく、CFR制御部163は、複数のCFR Filterの中から、周波数配置判定部131により判定された周波数配置に応じた通過帯域を有するCFR Filterを選択する。逆Impulse生成器1615は、逆Impulseの素信号を、CFR制御部163により選択されたCFR Filterを通過させることにより、逆Impulseを生成する。
【0071】
そのため、複数CC合成時間信号の周波数配置が変更された場合でも、周波数配置の変更に応じて、CFR回路161を自律的に最適な設定にすることができる。
これにより、上述した第1の課題の解決に寄与し得る。
【0072】
次に、上述した第2の課題の解決に寄与し得る方法について説明する。
上述したように、複数CC合成時間信号の周波数配置が、2CC Contiguous状態から、2CC Non-Contiguous状態又は3CC Non-Contiguous状態に切替・変化した場合、複数CC合成時間信号は、Peak時間の発生頻度が高まり、かつ、Peak時間の半値幅が狭まる。
【0073】
そのため、複数CCがNon-Contiguousに配置されている場合、CFR Iteration回数を多くすれば、Peak成分の抑圧度が高まる。しかし、その反面、複数CC合成時間信号自身が欠損され過ぎてしまうため、EVM等の通信品質の劣化に繋がってしまう。
【0074】
また、上述したように、CFR回路161内のIteration判定器1618は、CFR処理の実施回数が、CFR回路161に設定されているCFR Iteration回数に達しているか否かに応じて、CFR処理を再度実施するか否かを判定する。
【0075】
そこで、CFR制御部163は、周波数配置判定部131により、複数CC合成時間信号の周波数配置が、2CC Non-Contiguous状態又は3CC Non-Contiguous状態のように、CC間の周波数間隔が大きいと判定した場合には、CFR回路161に設定するCFR Iteration回数を減らす。即ち、CFR制御部163は、CC間の周波数間隔が大きいほど、CFR Iteration回数が減るように制御する。なお、複数CC合成時間信号の周波数配置が、3つ以上のCCを有する場合には、CFR Iteration回数の決定に用いるCC間の周波数間隔は、そのうち最も大きいもの又は最も小さいもののどちらであっても良い。
【0076】
そのため、複数CC合成時間信号自身が欠損され過ぎることが回避されるため、EVM等の通信品質の維持を図ることができる。
これにより、上述した第2の課題の解決に寄与し得る。
【0077】
次に、上述した第2の課題の解決に寄与し得る別の方法について説明する。
上述したように、複数CC合成時間信号の周波数配置が、2CC Contiguous状態から、2CC Non-Contiguous状態又は3CC Non-Contiguous状態に切替・変化した場合、複数CC合成時間信号は、Peak時間の発生頻度が高まり、かつ、Peak時間の半値幅が狭まる。
【0078】
そのため、複数CCがNon-Contiguousに配置されている場合、CFR閾値を下げれば、Peak成分の抑圧度が高まる。しかし、その反面、複数CC合成時間信号自身が欠損され過ぎてしまうため、EVM等の通信品質の劣化に繋がってしまう。
【0079】
また、上述したように、CFR回路161内の逆Impulse生成器1615は、Peakの抑圧量である補正振幅(Error magnitude vector)εを算出し、算出された補正振幅εに基づいて、逆Impulseを生成する。
【0080】
そこで、CFR制御部163は、周波数配置判定部131により、複数CC合成時間信号の周波数配置が、2CC Non-Contiguous状態又は3CC Non-Contiguous状態のように、CC間の周波数間隔が大きいと判定された場合には、逆Impulseとしての補正振幅εが小さくなるように、CFR回路161を制御する。このとき、CFR制御部163は、CC間の周波数間隔が大きいほど、補正振幅εが小さくなるようにする。
【0081】
具体的には、CFR回路161内の逆Impulse生成器1615は、補正振幅εに重みを乗算し、得られた補正振幅ε’に基づいて、逆Impulseを生成することとする。
CFR制御部163は、周波数配置判定部131により、CC間の周波数間隔が大きいと判定された場合には、逆Impulse生成器1615に設定する重みが小さくなるように制御する。このとき、CFR制御部163は、CC間の周波数間隔が大きいほど、逆Impulse補正が小さくなるようにする。なお、複数CC合成時間信号の周波数配置が、3つ以上のCCを有する場合には、重みの決定に用いるCC間の周波数間隔は、そのうち最も大きいもの又は最も小さいもののどちらであっても良い。
【0082】
図24は、本実施の形態1に係るCFR回路161により生成される逆Impulseの素信号の例を示す図である。
図25は、本実施の形態1に係るCFR回路161において、逆Impulseの素信号を、複数CC合成時間信号の周波数配置に応じた通過帯域を有するCFR Filterを通過させることにより、逆Impulseを生成する処理の例を示す図である。
図26は、本実施の形態1に係るCFR回路161において、複数CC合成時間信号のPeakが抑圧された例を示す図である。
【0083】
図24、
図25、及び
図26に示されるように、本実施の形態1では、Peakの抑圧量が、εに対応する量から、ε’に対応する量に低減されていることがわかる。
そのため、複数CC合成時間信号自身が欠損され過ぎることが回避されるため、EVM等の通信品質の維持を図ることができる。
これにより、上述した第2の課題の解決に寄与し得る。
【0084】
上述したように本実施の形態1によれば、周波数配置判定部131は、CFR回路161に入力される複数CC合成時間信号の周波数配置を判定し、CFR制御部163は、周波数配置判定部131により判定された複数CC合成時間信号の周波数配置に基づいて、CFR回路161を制御する。具体的には、CFR制御部163は、周波数配置判定部131により判定された周波数配置に応じた通過帯域を有するCFR Filterを選択し、CFR回路161内の逆Impulse生成器1615は、CFR制御部163により選択されたCFR Filterを用いて、逆Impulseを生成する。
【0085】
そのため、複数CC合成時間信号の周波数配置が変更された場合でも、周波数配置の変更に応じて、CFR回路161を自律的に最適な設定にすることができる。
これにより、上述した第1の課題の解決に寄与し得る。
【0086】
このことから、RU10Aの配置後に、欧米で周波数帯域のTrade等が今後も頻繁に行われたとしても、RU10A単独でCFR回路161が自律的に最適な設定にされる。そのため、RU10Aの現地での設定の変更や、Remoteでの設定の変更が、いずれも不要となるという効果が得られる。
【0087】
また、本実施の形態1によれば、CFR制御部163は、周波数配置判定部131により、CC間の周波数間隔が大きいと判定された場合には、CFR回路161におけるCFR Iteration回数を減らしたり、CFR回路161におけるPeakの抑圧量である補正振幅を小さくしたりする。そのため、複数CC合成時間信号自身が欠損され過ぎることが回避されるため、EVM等の通信品質の維持を図ることができる。
これにより、上述した第2の課題の解決に寄与し得る。
【0088】
このことから、Power backoffを大きくとり、最大定格送信出力(RMS)のレベル=EIRPを無暗に下げた上で、EVM規格を満足させる必要が無くなる。そのため、送信EIRPを犠牲とすること無く、各DL QAMに必要となるEVM(=DL SINR)を確保できるという効能を有する。また、低次から高次QAM(QPSK/16QAM/64QAM/256QAM/1024QAM)に亘って、EIRPを下げること無く、DL-SINR/EVMを確保できる。そのため、広帯域に亘り複数CCがNon-Contiguousに配置される場合でも、DL Coverageの縮小化を回避し、DL Coverageを維持できるという効果が得られる。
【0089】
<実施の形態2>
本実施の形態2は、上述した実施の形態1を上位概念化した実施の形態に相当する。
図27は、本実施の形態2に係る無線通信装置10Bの構成例を示す図である。
図27に示されるように、本実施の形態2に係る無線通信装置10Bは、CFR回路101と、判定部102と、制御部103と、DPD回路104と、を備えている。
【0090】
無線通信装置10Bは、上述した実施の形態1に係るRU10Aに対応する。
CFR回路101は、上述した実施の形態1に係るCFR回路161に対応する。
DPD回路104は、上述した実施の形態1に係るDPD回路162に対応する。
【0091】
判定部102は、CFR回路101に入力される複数CC合成時間信号の周波数配置を判定する。複数CC合成時間信号は、複数のCC毎の時間信号が合成された信号である。判定部102は、上述した実施の形態1に係る周波数配置判定部131に対応する。
【0092】
制御部103は、判定部102により判定された複数CC合成時間信号の周波数配置に基づいて、CFR回路101を制御する。制御部103は、上述した実施の形態1に係るCFR制御部163に対応する。
【0093】
図28は、本実施の形態2に係る無線通信装置10Bの概略的な動作の流れの例を示すフロー図である。
図28に示されるように、判定部102は、CFR回路101に入力される複数CC合成時間信号の周波数配置を判定する(ステップS11)。制御部103は、判定部102により判定された複数CC合成時間信号の周波数配置に基づいて、CFR回路101を制御する(ステップS12)。
【0094】
上述したように本実施の形態2によれば、判定部102は、CFR回路101に入力される複数CC合成時間信号の周波数配置を判定し、制御部103は、判定部102により判定された複数CC合成時間信号の周波数配置に基づいて、CFR回路101を制御する。
【0095】
そのため、複数CC合成時間信号の周波数配置が変更された場合でも、周波数配置の変更に応じて、CFR回路101を自律的に最適な設定にすることができる。
これにより、上述した第1の課題の解決に寄与し得る。
【0096】
具体的には、CFR回路101は、通過帯域が互いに異なる複数のフィルタを保持していても良い。また、制御部103は、複数のフィルタの中から、判定部102により判定された複数CC合成時間信号の周波数配置に応じた通過帯域を有するフィルタを選択しても良い。また、CFR回路101は、制御部103により選択されたフィルタを用いて、複数CC合成時間信号のピークを抑圧するCFR処理を実施しても良い。
【0097】
また、CFR回路101は、CFR処理を繰り返し実施しても良い。また、制御部103は、判定部102により判定された複数CC合成時間信号号の周波数配置におけるCC間の周波数間隔に基づいて、CFR回路101におけるCFR処理の繰り返し回数を制御しても良い。このとき、制御部103は、判定部102により判定された複数CC合成時間信号号の周波数配置におけるCC間の周波数間隔が大きくなるほど、CFR回路101におけるCFR処理の繰り返し回数を減らしても良い。
【0098】
また、制御部103は、判定部102により判定された複数CC合成時間信号号の周波数配置におけるCC間の周波数間隔に基づいて、CFR回路101におけるCFR処理のピークの抑圧量である補正振幅を制御しても良い。このとき、制御部103は、判定部102により判定された複数CC合成時間信号号の周波数配置におけるCC間の周波数間隔が大きくなるほど、CFR回路101における補正振幅を小さくしても良い。
【0099】
このように、制御部103は、複数CC合成時間信号号の周波数配置におけるCC間の周波数間隔に基づいて、CFR回路101におけるCFR処理の繰り返し回数や補正振幅を制御する。そのため、複数CC合成時間信号自身が欠損され過ぎることが回避されるため、EVM等の通信品質の維持を図ることができる。
これにより、上述した第2の課題の解決に寄与し得る。
【0100】
以上、実施の形態を参照して本開示について説明したが、本開示は上述した実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0101】
例えば、本開示に係る無線通信装置(RUを含む)の一部の機能を、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
図29は、本開示に係る無線通信装置の一部の機能を実現するコンピュータ90のハードウェア構成例を示す図である。
図29に示されるように、コンピュータ90は、プロセッサ91及びメモリ92を備えている。
【0102】
プロセッサ91は、例えば、マイクロプロセッサ、CPU又はMPU(Micro Processing Unit)、又はであっても良い。プロセッサ91は、複数のプロセッサを含んでも良い。
【0103】
メモリ92は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ92は、プロセッサ91から離れて配置されたストレージを含んでも良い。この場合、プロセッサ91は、図示されていないI(Input)/O(Output)インタフェースを介してメモリ92にアクセスしても良い。
【0104】
メモリ92には、プログラムが記憶される。このプログラムは、コンピュータ90に読み込まれた場合に、上述した実施の形態1又は2に係るRU10A又は無線通信装置10Bの一部の機能をコンピュータ90に行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。上述したRU10A又は無線通信装置10Bにおける構成要素は、プロセッサ91がメモリ92に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより実現されても良い。また、上述したRU10A又は無線通信装置10Bにおける記憶機能を備える構成要素は、メモリ92により実現されても良い。
【0105】
また、上述したプログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されても良い。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されても良い。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【符号の説明】
【0106】
10A RU
11 光トランシーバ
12 eCPRI部
13 LPHY部
131 周波数配置判定部
14 CDUC
141 Channel Filter
142 NCO
143 乗算器
15 加算器
16 Digital Baseband部
161 CFR回路
1611 Switch
1612 変換器
1613 Peak検出器
1614 基本Impulse信号発生器
1615 逆Impulse生成器
1616 delay FIFO
1617 加算器
1618 Iteration判定器
162 DPD回路
163 CFR制御部
17 TRX-Frontend部
171 TRX
172 送信AMP
173 受信AMP
174 カプラ
175 スイッチ
176 BPF
18 アンテナ
10B 無線通信装置
101 CFR回路
102 判定部
103 制御部
104 DPD回路
20 DU
90 コンピュータ
91 プロセッサ
92 メモリ