IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社西行土木の特許一覧 ▶ ドリルマシン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-削岩機 図1
  • 特開-削岩機 図2
  • 特開-削岩機 図3
  • 特開-削岩機 図4
  • 特開-削岩機 図5
  • 特開-削岩機 図6
  • 特開-削岩機 図7
  • 特開-削岩機 図8
  • 特開-削岩機 図9
  • 特開-削岩機 図10
  • 特開-削岩機 図11
  • 特開-削岩機 図12
  • 特開-削岩機 図13
  • 特開-削岩機 図14
  • 特開-削岩機 図15
  • 特開-削岩機 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000073
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】削岩機
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20231225BHJP
   E21C 25/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
E21D20/00 X
E21C25/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098599
(22)【出願日】2022-06-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】522246430
【氏名又は名称】株式会社西行土木
(71)【出願人】
【識別番号】391066157
【氏名又は名称】ドリルマシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】西行 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】樋口 武
(72)【発明者】
【氏名】永井 敏実
(72)【発明者】
【氏名】阪本 貴久
(72)【発明者】
【氏名】小川 健太郎
【テーマコード(参考)】
2D065
【Fターム(参考)】
2D065AA13
(57)【要約】
【課題】掘削直後の凹凸面状になっていていてベアリングプレートを取り付けるに当たって密着性を低くすることなく、ロックボルト打設後、次の切羽発破作業時において、切羽に近接しているロックボルトの壁面突起部となるベアリングプレートやナットは発破の爆風や振動の影響を受けることが少ない削岩機を提供する。
【解決手段】先端方向に突出する突出力により所定深さのロックボルト挿入用掘削孔18を穿孔する切削ロッド3を備えた削岩機1であり、前記削岩機1は、切削ロッド3を貫挿させて保持する貫挿部5を有する保持部材4と、保持部材4の先端側に設けられたブレード盤6を有し、ブレード盤6の表面には破砕面14が形成され、前記突出力により前記破砕面14が揺動し、該揺動による切削動作により前記ロックボルト挿入用掘削孔18に挿入したロックボルト17を吹き付けコンクリート面に固定するプレートが密着収納できる収納凹面9を形成可能とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端方向に突出する突出力により所定深さのロックボルト挿入用掘削孔を穿孔する切削ロッドを備えた削岩機であり、
前記削岩機は、切削ロッドを貫挿させて保持する貫挿部を有する保持部材と、保持部材の先端側に設けられたブレード盤を有し、
前記ブレード盤の表面には破砕面が形成され、前記突出力により前記破砕面が揺動し、該揺動による切削動作により前記ロックボルト挿入用掘削孔に挿入したロックボルトを吹き付けコンクリート面に固定するプレートが密着収納できる収納凹面を形成可能とした、
ことを特徴とした削岩機。
【請求項2】
前記収納凹面の形成は、該収納凹面の深さを変更して形成できる、
ことを特徴とした請求項1記載の削岩機。
【請求項3】
前記破砕面には突出する切削刃が複数個散点状に固着された、
ことを特徴とした請求項1または請求項2記載の削岩機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は削岩機に係り、特に山岳トンネルの掘削面からロックボルトを挿入して掘削後のトンネルを保持、補強する工法、いわゆるロックボルト工法に使用される削岩機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(ロックボルト工法の役割)
例えば、山岳トンネルの構築においては、掘削後のトンネルを保持、補強するためにロックボルト工法が採用されている。
ここで、ロックボルト工法には 「縫付け効果」「はり形成効果」「内圧効果」「アーチ形成効果」「地山改良効果」の作用を有している。
【0003】
(ロックボルト工法の施工方法)
ロックボルトは掘削後のいわゆるアーチ状をなす吹き付けコンクリート面に対し略直角方向(即ち放射線状)に打設されるものであり、該ロックボルトの頭部(余長部)側にはベアリングプレートと称されるプレート板を配置し、そのベアリングプレートをナットで地山側に締め付けることによりロックボルトを地山に安定的に定着させるものとしている。そして、上記の様にロックボルトを地山に固定して掘削後のトンネルを保持、補強する工法をロックボルト工法と称している。
【0004】
ここで、ロックボルト打設の工程につき説明する。
まず、吹き付けコンクリート面を掘削する削岩機、例えば、ドリルジャンボマシンを使用してロックボルト挿入孔の削孔を行う。
次いで、削孔を行った孔にドライモルタルを充填する。その後、ロックボルトを挿入する。最後に、ナットでベアリングプレートが吹き付けコンクリート面に密着するよう締め付ける。
【0005】
しかしながら、ロックボルトのベアリングプレートを設置する吹き付けコンクリート面は平坦面ではなく凹凸面になっていることが多い。従ってこのような凹凸面にベアリングプレートを取り付けるには密着性が低くなってしまうとの課題があった。
よって、従来では、前記吹き付けコンクリート面の凹凸面にドライモルタルを盛り付け、平坦面にしてベアリングプレートを取り付けていた。
【0006】
しかしながら、ロックボルト打設後、次の切羽発破作業時において、前記切羽に近接している既に打設したロックボルトの取付箇所で以下の課題が生じていた。すなわち、前記切羽に近接しているロックボルトの打設箇所では吹き付けコンクリート面から突出している突起部であるベアリングプレートやナットは発破の爆風や振動の影響を受ける可能性がきわめて高い。そして、吹き付けコンクリート面とベアリングプレートとの間に盛り付けたドライモルタルが前述の影響により破損し剥落する恐れがある。
【0007】
さらに、盛り付けたドライモルタルが破損し剥落した場合には、ベアリングプレートにガタツキが発生し密着性が著しく低下する為、補修作業が必要となるのである。
【0008】
また、発破後のずり出し時においては、掘削断面下半部の左右両側壁面に打設したロックボルトはずりに覆われている場合が多く、そのずりを油圧ショベル等の重機で取り除く際、壁面突起物となるロックボルトのベアリングプレートやナットに油圧ショベルのバケットが接触し破損する可能性もあった。
そして、前記接触により破損した場合には、破損したベアリングプレートやナットの交換作業が必要となるとの課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-97821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するために創案されたものであり、ロックボルトのベアリングプレートを設置する吹き付けコンクリート面は平坦面ではなく掘削直後の凹凸面状になっていていても、ベアリングプレートを取り付けるに当たって密着性を低くすることなく、しかも従来のように吹き付けコンクリート面の凹凸面にドライモルタルを盛り付け、平坦面にする必要もなく、さらに、ロックボルト打設後、次の切羽発破作業時において、前記切羽に近接しているロックボルトの壁面突起部となるベアリングプレートやナットは発破の爆風や振動の影響を受けることが少ないため、吹き付けコンクリート面とベアリングプレートとの間に盛り付けたドライモルタルが前述した爆風や振動の影響により破損し剥落する恐れもなく、もって、ドライモルタルが破損し剥落した場合に必要な補修作業も必要とせず、発破後のずり出し時において、掘削断面下半部の左右両側壁面に打設したロックボルトはずりに覆われており、そのずりを油圧ショベル等の重機で取り除く際、壁面突起物となるロックボルトのベアリングプレートやナットに油圧ショベルのバケットが接触し破損する可能性が少ない削岩機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
先端方向に突出する突出力により所定深さのロックボルト挿入用掘削孔を穿孔する切削ロッドを備えた削岩機であり、
前記削岩機は、切削ロッドを貫挿させて保持する貫挿部を有する保持部材と、保持部材の先端側に設けられたブレード盤を有し、
前記ブレード盤の表面には破砕面が形成され、前記突出力により前記破砕面が揺動し、該揺動による切削動作により前記ロックボルト挿入用掘削孔に挿入したロックボルトを吹き付けコンクリート面に固定するプレートが密着収納できる収納凹面を形成可能とした、
ことを特徴とし、
または、
前記収納凹面の形成は、該収納凹面の深さを変更して形成できる、
ことを特徴とし、
または、
前記破砕面には突出する切削刃が複数個散点状に固着された、
ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロックボルトのベアリングプレートを設置する吹き付けコンクリート面は平坦面ではなく掘削直後の凹凸面状になっていていても、ベアリングプレートを取り付けるに当たって密着性を低くすることなく、しかも従来のように吹き付けコンクリート面の凹凸面にドライモルタルを盛り付け、平坦面にする必要もなく、さらに、ロックボルト打設後、次の切羽発破作業時において、前記切羽に近接しているロックボルトの壁面突起部となるベアリングプレートやナットは発破の爆風や振動の影響を受けることが少ないため、吹き付けコンクリート面とベアリングプレートとの間に盛り付けたドライモルタルが前述した爆風や振動の影響により破損し剥落する恐れもなく、もって、ドライモルタルが破損し剥落した場合に必要な補修作業も必要とせず、発破後のずり出し時において、掘削断面下半部の左右両側壁面に打設したロックボルトはずりに覆われており、そのずりを油圧ショベル等の重機で取り除く際、壁面突起物となるロックボルトのベアリングプレートやナットに油圧ショベルのバケットが接触し破損する可能性が少ないとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による削岩機の構成を説明する説明図である。
図2】保持部材とアダプターとブレード盤との接続関係を説明する説明図である。
図3】ブレード盤の破砕面の構成を説明する説明図(1)である。
図4】ブレード盤とアダプターとの動作状態を平面図で説明する説明図である。
図5】本発明による削岩機の動作を説明する説明図(1)である。
図6】本発明による削岩機の動作を説明する説明図(2)である。
図7】ブレード盤の揺動動作を一部破断した側面図で説明する説明図である。
図8】ブレード盤の揺動動作を一部破断した平面図で説明する説明図である。
図9】ブレード盤の破砕面の構成を説明する説明図(2)である。
図10】本発明による削岩機の一連の動作を説明する説明図である。
図11】本発明によってロックボルトが挿入された状態を説明する説明図(1)である。
図12】本発明によってロックボルトが挿入された状態を説明する説明図(2)である。
図13】従来の従来のロックボルト挿入時の構造を説明する説明図(1)である。
図14】本発明と従来例の効果を比較して説明する説明図である。
図15】従来の従来のロックボルト挿入時の構造を説明する説明図(2)である。
図16】従来の削岩機の動作を説明する説明図(3)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
図1に本発明による削岩機1の概略構成を示す。
図1において、削岩機1は削岩機駆動部2を有し、該削岩機駆動部2の先端からは長尺直線棒状の切削ロッド3が前後方向に揺動可能にして取り付けられている。
【0015】
符号4は前記切削ロッド3を保持して切削ロッド3の揺動動作を安定させるべくサポートする保持部材であり、前記切削ロッド3を貫挿させて保持する貫挿部5を有して、該保持部材4は削岩機1に連結されて取り付けられている。
【0016】
さらに、保持部材4の先端側にはブレード盤6が前記切削ロッド3の長手方向と略直交する様に配置されて取り付けられている。そして、このブレード盤6は、前記切削ロッド3の前後揺動動作に同期して揺動するよう構成されている。その動作の詳細は後述する。
【0017】
図6から理解されるように、削岩機1と切削ロッド3先端側との間にはスリーブ7が介在されており、かつ該スリーブ7の配置位置から所定の間隔をおいて保持部材4にアダプター8が設けられている。そしてアダプター8はブレード盤6を前方に揺動させるよう構成されている。よって、スリーブ7がアダプター8に当接して前記アダプター8が前方に揺動する長さは、前記ブレード盤6が吹き付けコンクリート面を破砕して収納凹面9を切削形成する前記収納凹面9の深さとほぼ同じになる様構成されている。
【0018】
従ってスリーブ7がアダプター8に当接してアダプター8が前方に揺動する間隔を変更すれば前記ブレード盤6が吹き付けコンクリート面を破砕して収納凹面9を切削形成する前記収納凹面9の深さが変更できるのである。すなわち、スリーブ7がアダプター8に当接して前記アダプター8が前方に揺動する間隔が長くなれば、切削形成する前記収納凹面9の深さは深くなり、スリーブ7がアダプター8に当接して前記アダプター8が前方に揺動する間隔が短くなれば、切削形成する前記収納凹面9の深さは浅くなる。
【0019】
しかして、スリーブ7がアダプター8を押しながら前方への突出揺動を繰り返すと、図6の下図に示す様に、アダプター8がブレード盤6を揺動させて前記ブレード盤6の破砕面14が吹き付けコンクリート面を破砕掘削し、所定深さの収納凹面9が形成される。
【0020】
図7図8を参照して、本発明におけるアダプター8と貫挿部5とブレード盤6との接続関係につき説明する。図7はアダプター8と貫挿部5とブレード盤6との接続関係を示す図につき、一部断面にした側面図であり、図8は一部断面にした平面図である。
【0021】
図8に示す様にブレード盤6には貫挿部5の孔内に挿入される突起部11を有しており、該突起部11はアダプター8に押されて、ブレード盤6を前方に揺動させるよう構成されている。すなわち、ブレード盤6は前述したように削岩機駆動部2によって前方に揺動する切削ロッド3と同期して前方に揺動する構成になっている。
【0022】
図7は上記の動きを側面図で説明したものであり、図8は上記の動きを平面図で説明したものである。
図8(a)に示す様に、ブレード盤6の中央部からは貫挿部5の孔に貫挿する略円筒状の突起部11が突設され、該突起部11の後端開口からはアダプター8が入り込み、かつアダプター8の外周面にはストッパー12が設けられ、このストッパー12が前記突起部11の後端部に係止して突起部11を前方に押し出す構造になっている。
【0023】
さらに、ブレード盤6裏面の外周端側にはブレード盤6を引き戻す張力を有する引き戻しスプリング13が接続されており、前記削岩機駆動部2の動作によりブレード盤6が前方に突出した後、前記引き戻しスプリング13により後ろ側に引き戻される構造となっている。
【0024】
すなわち、削岩機1の削岩機駆動部2による打撃エネルギーは、アダプター8を介してブレード盤6に伝達され、前記打撃エネルギーにより押し出されたブレード盤6が吹き付けコンクリート面を破砕するものとなる。ここで、前記削岩機駆動部2による打撃運動は前後に揺動するストローク運動であるが、ブレード盤6を前方に押し出す力は打撃エネルギーを利用しており、後方に引き戻す力は引き戻しスプリング13の張力を利用するものとなっている。そして、前記打撃運動は反復を繰り返して行われ、吹き付けコンクリート面にブレード盤6を押し付けて削岩機駆動部2からの打撃を繰り返すことで、前記収納凹面9の掘削が確実に行えるものとなる。
【0025】
図9はブレード盤6の破砕面14の構成を説明した図であり、この破砕面14には複数個の切削ビット16が取り付けられている。よって、前記複数個の切削ビット16がコンクリート壁面を効率よく切削し、底面が略平坦面になる所定深さの収納凹面9が形成できるものとなる。
【0026】
ここで、破砕面14の中央部には切削ロッド3が通過できる通過孔が設けられており、前記切削ロッド3の先端に取り付けられた切削刃15によって、ロックボルト17挿入用の掘削孔18が掘削される。
【0027】
以上において、本発明の動作につき説明する。
図5図6に示す様に削岩機駆動部2からの打撃エネルギーはスリーブ7及び切削ロッド3さらに先端の切削刃15の順に伝達されて吹き付けコンクリート面を切削し、ロックボルト挿入孔を削孔する。次いで図6の下図に示す様にロックボルト挿入孔の削孔後、さらに削岩機1を前進させながら削岩機駆動部2を駆動させると、前記スリーブ7がアダプター8に接触する。そして、前記の接触した状態で削岩機駆動部2を駆動させ、スリーブ7を前後揺動させる。
【0028】
すなわち前後揺動という打撃エネルギーを与えると、前記スリーブ7に伝達された打撃エネルギーがアダプター8を介してブレード盤6に伝わり、ブレード盤6が前後揺動し、吹き付けコンクリート面を掘削(破砕)するものとなる。
【0029】
ところでブレード盤6は通常、図8に示す様に引き戻しスプリング13によって後方へ引っ張られている。しかしながら、削岩機駆動部2からの打撃エネルギーがアダプター8に加えられると貫挿部5内に設けられたスプリング13が収縮してブレード盤6を前方に押し出すのである。すなわち、削岩機駆動部2からの打撃エネルギーは、スリーブ7からアダプター8を介してブレード盤6に伝達され、打撃エネルギーにより押し出されたブレード盤6が吹き付けコンクリート面を破砕する。
【0030】
ここで、前記ブレード盤6の揺動運動は前後に揺動する削岩機1からのストローク運動で行われているが、ブレード盤6を前方に押し出す力は削岩機駆動部2からの打撃エネルギーを利用しており、ブレード盤6を後方に下げる力は引き戻しスプリング13の張力を利用して行っていることはすでに述べた。
【0031】
そして、前記の揺動運動は反復を繰り返して行われる為、吹き付けコンクリート面にブレード盤6を押し付けて削岩機駆動部2を駆動し、打撃を与えることで、所定の深さを有し、底面が平坦面となった収納凹面9の確実な掘削が可能となっているのである。
【符号の説明】
【0032】
1 削岩機
2 削岩機駆動部
3 切削ロッド
4 保持部材
5 貫挿部
6 ブレード盤
7 スリーブ
8 アダプター
9 収納凹面
11 突起部
12 ストッパー
13 引き戻しスプリング
14 破砕面
15 切削刃
16 切削ビット
17 ロックボルト
18 掘削孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-05-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端方向に突出する打撃エネルギーにより所定深さのロックボルト挿入用掘削孔を穿孔する切削ロッドを備えた削岩機であり、
前記削岩機は、
前記切削ロッドを貫挿させて保持する貫挿部を有する保持部材と、
前記保持部材の先端側に設けられたブレード盤と、
前記打撃エネルギーを与える削岩機駆動部と、
前記削岩機駆動部と前記切削ロッドとの間に介在されたスリーブと、
前記スリーブから所定の間隔をおいて前記切削ロッドが貫挿できる様前記保持部材に取り付けられたアダプターと、を有し、
前記切削ロッドによるロックボルト挿入掘削孔の穿孔作業と共に、前記打撃エネルギーにより前記ブレード盤の表面に形成された破砕面を前後揺動させて前記ロックボルト挿入用掘削孔に挿入するロックボルトを吹き付けコンクリート面に固定するプレートが密着収納できる収納凹面を形成可能とし、
前記収納凹面の形成は、前記切削ロッドを突出させ、前記スリーブを前記アダプターに当接させて前記破砕面を前後揺動させて行い、前記収納凹面の深さ調整は、前記アダプターの長さ調整で行える、
ことを特徴とした削岩機。
【請求項2】
前記破砕面には突出する切削刃が複数個散点状に固着された、
ことを特徴とした請求項1記載の削岩機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は削岩機に係り、特に山岳トンネルの掘削面からロックボルトを挿入して掘削後のトンネルを保持、補強する工法、いわゆるロックボルト工法に使用される削岩機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(ロックボルト工法の役割)
例えば、山岳トンネルの構築においては、掘削後のトンネルを保持、補強するためにロックボルト工法が採用されている。
ここで、ロックボルト工法には 「縫付け効果」「はり形成効果」「内圧効果」「アーチ形成効果」「地山改良効果」の作用を有している。
【0003】
(ロックボルト工法の施工方法)
ロックボルトは掘削後のいわゆるアーチ状をなす吹き付けコンクリート面に対し略直角方向(即ち放射線状)に打設されるものであり、該ロックボルトの頭部(余長部)側にはベアリングプレートと称されるプレート板を配置し、そのベアリングプレートをナットで地山側に締め付けることによりロックボルトを地山に安定的に定着させるものとしている。そして、上記の様にロックボルトを地山に固定して掘削後のトンネルを保持、補強する工法をロックボルト工法と称している。
【0004】
ここで、ロックボルト打設の工程につき説明する。
まず、吹き付けコンクリート面を掘削する削岩機、例えば、ドリルジャンボマシンを使用してロックボルト挿入孔の削孔を行う。
次いで、削孔を行った孔にドライモルタルを充填する。その後、ロックボルトを挿入する。最後に、ナットでベアリングプレートが吹き付けコンクリート面に密着するよう締め付ける。
【0005】
しかしながら、ロックボルトのベアリングプレートを設置する吹き付けコンクリート面は平坦面ではなく凹凸面になっていることが多い。従ってこのような凹凸面にベアリングプレートを取り付けるには密着性が低くなってしまうとの課題があった。
よって、従来では、前記吹き付けコンクリート面の凹凸面にドライモルタルを盛り付け、平坦面にしてベアリングプレートを取り付けていた。
【0006】
しかしながら、ロックボルト打設後、次の切羽発破作業時において、前記切羽に近接している既に打設したロックボルトの取付箇所で以下の課題が生じていた。すなわち、前記切羽に近接しているロックボルトの打設箇所では吹き付けコンクリート面から突出している突起部であるベアリングプレートやナットは発破の爆風や振動の影響を受ける可能性がきわめて高い。そして、吹き付けコンクリート面とベアリングプレートとの間に盛り付けたドライモルタルが前述の影響により破損し剥落する恐れがある。
【0007】
さらに、盛り付けたドライモルタルが破損し剥落した場合には、ベアリングプレートにガタツキが発生し密着性が著しく低下する為、補修作業が必要となるのである。
【0008】
また、発破後のずり出し時においては、掘削断面下半部の左右両側壁面に打設したロックボルトはずりに覆われている場合が多く、そのずりを油圧ショベル等の重機で取り除く際、壁面突起物となるロックボルトのベアリングプレートやナットに油圧ショベルのバケットが接触し破損する可能性もあった。
そして、前記接触により破損した場合には、破損したベアリングプレートやナットの交換作業が必要となるとの課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-97821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するために創案されたものであり、ロックボルトのベアリングプレートを設置する吹き付けコンクリート面は平坦面ではなく掘削直後の凹凸面状になっていていても、ベアリングプレートを取り付けるに当たって密着性を低くすることなく、しかも従来のように吹き付けコンクリート面の凹凸面にドライモルタルを盛り付け、平坦面にする必要もなく、さらに、ロックボルト打設後、次の切羽発破作業時において、前記切羽に近接しているロックボルトの壁面突起部となるベアリングプレートやナットは発破の爆風や振動の影響を受けることが少ないため、吹き付けコンクリート面とベアリングプレートとの間に盛り付けたドライモルタルが前述した爆風や振動の影響により破損し剥落する恐れもなく、もって、ドライモルタルが破損し剥落した場合に必要な補修作業も必要とせず、発破後のずり出し時において、掘削断面下半部の左右両側壁面に打設したロックボルトはずりに覆われており、そのずりを油圧ショベル等の重機で取り除く際、壁面突起物となるロックボルトのベアリングプレートやナットに油圧ショベルのバケットが接触し破損する可能性が少ない削岩機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
先端方向に突出する打撃エネルギーにより所定深さのロックボルト挿入用掘削孔を穿孔する切削ロッドを備えた削岩機であり、
前記削岩機は、
前記切削ロッドを貫挿させて保持する貫挿部を有する保持部材と、
前記保持部材の先端側に設けられたブレード盤と、
前記打撃エネルギーを与える削岩機駆動部と、
前記削岩機駆動部と前記切削ロッドとの間に介在されたスリーブと、
前記スリーブから所定の間隔をおいて前記切削ロッドが貫挿できる様前記保持部材に取り付けられたアダプターと、を有し、
前記切削ロッドによるロックボルト挿入掘削孔の穿孔作業と共に、前記打撃エネルギーにより前記ブレード盤の表面に形成された破砕面を前後揺動させて前記ロックボルト挿入用掘削孔に挿入するロックボルトを吹き付けコンクリート面に固定するプレートが密着収納できる収納凹面を形成可能とし、
前記収納凹面の形成は、前記切削ロッドを突出させ、前記スリーブを前記アダプターに当接させて前記破砕面を前後揺動させて行い、前記収納凹面の深さ調整は、前記アダプターの長さ調整で行える、
ことを特徴とし、
または、
前記破砕面には突出する切削刃が複数個散点状に固着された、
ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロックボルトのベアリングプレートを設置する吹き付けコンクリート面は平坦面ではなく掘削直後の凹凸面状になっていていても、ベアリングプレートを取り付けるに当たって密着性を低くすることなく、しかも従来のように吹き付けコンクリート面の凹凸面にドライモルタルを盛り付け、平坦面にする必要もなく、さらに、ロックボルト打設後、次の切羽発破作業時において、前記切羽に近接しているロックボルトの壁面突起部となるベアリングプレートやナットは発破の爆風や振動の影響を受けることが少ないため、吹き付けコンクリート面とベアリングプレートとの間に盛り付けたドライモルタルが前述した爆風や振動の影響により破損し剥落する恐れもなく、もって、ドライモルタルが破損し剥落した場合に必要な補修作業も必要とせず、発破後のずり出し時において、掘削断面下半部の左右両側壁面に打設したロックボルトはずりに覆われており、そのずりを油圧ショベル等の重機で取り除く際、壁面突起物となるロックボルトのベアリングプレートやナットに油圧ショベルのバケットが接触し破損する可能性が少ないとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による削岩機の構成を説明する説明図である。
図2】保持部材とアダプターとブレード盤との接続関係を説明する説明図である。
図3】ブレード盤の破砕面の構成を説明する説明図(1)である。
図4】ブレード盤とアダプターとの動作状態を平面図で説明する説明図である。
図5】本発明による削岩機の動作を説明する説明図(1)である。
図6】本発明による削岩機の動作を説明する説明図(2)である。
図7】ブレード盤の揺動動作を一部破断した側面図で説明する説明図である。
図8】ブレード盤の揺動動作を一部破断した平面図で説明する説明図である。
図9】ブレード盤の破砕面の構成を説明する説明図(2)である。
図10】本発明による削岩機の一連の動作を説明する説明図である。
図11】本発明によってロックボルトが挿入された状態を説明する説明図(1)である。
図12】本発明によってロックボルトが挿入された状態を説明する説明図(2)である。
図13】従来の従来のロックボルト挿入時の構造を説明する説明図(1)である。
図14】本発明と従来例の効果を比較して説明する説明図である。
図15】従来の従来のロックボルト挿入時の構造を説明する説明図(2)である。
図16】従来の削岩機の動作を説明する説明図(3)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
図1に本発明による削岩機1の概略構成を示す。
図1において、削岩機1は削岩機駆動部2を有し、該削岩機駆動部2の先端からは長尺直線棒状の切削ロッド3が前後方向に揺動可能にして取り付けられている。
【0015】
符号4は前記切削ロッド3を保持して切削ロッド3の揺動動作を安定させるべくサポートする保持部材であり、前記切削ロッド3を貫挿させて保持する貫挿部5を有して、該保持部材4は削岩機1に連結されて取り付けられている。
【0016】
さらに、保持部材4の先端側にはブレード盤6が前記切削ロッド3の長手方向と略直交する様に配置されて取り付けられている。そして、このブレード盤6は、前記切削ロッド3の前後揺動動作に同期して揺動するよう構成されている。その動作の詳細は後述する。
【0017】
図6から理解されるように、削岩機1と切削ロッド3先端側との間にはスリーブ7が介在されており、かつ該スリーブ7の配置位置から所定の間隔をおいて保持部材4にアダプター8が設けられている。そしてアダプター8はブレード盤6を前方に揺動させるよう構成されている。よって、スリーブ7がアダプター8に当接して前記アダプター8が前方に揺動する長さは、前記ブレード盤6が吹き付けコンクリート面を破砕して収納凹面9を切削形成する前記収納凹面9の深さとほぼ同じになる様構成されている。
【0018】
従ってスリーブ7がアダプター8に当接してアダプター8が前方に揺動する間隔を変更すれば前記ブレード盤6が吹き付けコンクリート面を破砕して収納凹面9を切削形成する前記収納凹面9の深さが変更できるのである。すなわち、スリーブ7がアダプター8に当接して前記アダプター8が前方に揺動する間隔が長くなれば、切削形成する前記収納凹面9の深さは深くなり、スリーブ7がアダプター8に当接して前記アダプター8が前方に揺動する間隔が短くなれば、切削形成する前記収納凹面9の深さは浅くなる。
【0019】
しかして、スリーブ7がアダプター8を押しながら前方への突出揺動を繰り返すと、図6の下図に示す様に、アダプター8がブレード盤6を揺動させて前記ブレード盤6の破砕面14が吹き付けコンクリート面を破砕掘削し、所定深さの収納凹面9が形成される。
【0020】
図7図8を参照して、本発明におけるアダプター8と貫挿部5とブレード盤6との接続関係につき説明する。図7はアダプター8と貫挿部5とブレード盤6との接続関係を示す図につき、一部断面にした側面図であり、図8は一部断面にした平面図である。
【0021】
図8に示す様にブレード盤6には貫挿部5の孔内に挿入される突起部11を有しており、該突起部11はアダプター8に押されて、ブレード盤6を前方に揺動させるよう構成されている。すなわち、ブレード盤6は前述したように削岩機駆動部2によって前方に揺動する切削ロッド3と同期して前方に揺動する構成になっている。
【0022】
図7は上記の動きを側面図で説明したものであり、図8は上記の動きを平面図で説明したものである。
図8(a)に示す様に、ブレード盤6の中央部からは貫挿部5の孔に貫挿する略円筒状の突起部11が突設され、該突起部11の後端開口からはアダプター8が入り込み、かつアダプター8の外周面にはストッパー12が設けられ、このストッパー12が前記突起部11の後端部に係止して突起部11を前方に押し出す構造になっている。
【0023】
さらに、ブレード盤6裏面の外周端側にはブレード盤6を引き戻す張力を有する引き戻しスプリング13が接続されており、前記削岩機駆動部2の動作によりブレード盤6が前方に突出した後、前記引き戻しスプリング13により後ろ側に引き戻される構造となっている。
【0024】
すなわち、削岩機1の削岩機駆動部2による打撃エネルギーは、アダプター8を介してブレード盤6に伝達され、前記打撃エネルギーにより押し出されたブレード盤6が吹き付けコンクリート面を破砕するものとなる。ここで、前記削岩機駆動部2による打撃運動は前後に揺動するストローク運動であるが、ブレード盤6を前方に押し出す力は打撃エネルギーを利用しており、後方に引き戻す力は引き戻しスプリング13の張力を利用するものとなっている。そして、前記打撃運動は反復を繰り返して行われ、吹き付けコンクリート面にブレード盤6を押し付けて削岩機駆動部2からの打撃を繰り返すことで、前記収納凹面9の掘削が確実に行えるものとなる。
【0025】
図9はブレード盤6の破砕面14の構成を説明した図であり、この破砕面14には複数個の切削ビット16が取り付けられている。よって、前記複数個の切削ビット16がコンクリート壁面を効率よく切削し、底面が略平坦面になる所定深さの収納凹面9が形成できるものとなる。
【0026】
ここで、破砕面14の中央部には切削ロッド3が通過できる通過孔が設けられており、前記切削ロッド3の先端に取り付けられた切削刃15によって、ロックボルト17挿入用の掘削孔18が掘削される。
【0027】
以上において、本発明の動作につき説明する。
図5図6に示す様に削岩機駆動部2からの打撃エネルギーはスリーブ7及び切削ロッド3さらに先端の切削刃15の順に伝達されて吹き付けコンクリート面を切削し、ロックボルト挿入孔を削孔する。次いで図6の下図に示す様にロックボルト挿入孔の削孔後、さらに削岩機1を前進させながら削岩機駆動部2を駆動させると、前記スリーブ7がアダプター8に接触する。そして、前記の接触した状態で削岩機駆動部2を駆動させ、スリーブ7を前後揺動させる。
【0028】
すなわち前後揺動という打撃エネルギーを与えると、前記スリーブ7に伝達された打撃エネルギーがアダプター8を介してブレード盤6に伝わり、ブレード盤6が前後揺動し、吹き付けコンクリート面を掘削(破砕)するものとなる。
【0029】
ところでブレード盤6は通常、図8に示す様に引き戻しスプリング13によって後方へ引っ張られている。しかしながら、削岩機駆動部2からの打撃エネルギーがアダプター8に加えられると貫挿部5内に設けられたスプリング13が収縮してブレード盤6を前方に押し出すのである。すなわち、削岩機駆動部2からの打撃エネルギーは、スリーブ7からアダプター8を介してブレード盤6に伝達され、打撃エネルギーにより押し出されたブレード盤6が吹き付けコンクリート面を破砕する。
【0030】
ここで、前記ブレード盤6の揺動運動は前後に揺動する削岩機1からのストローク運動で行われているが、ブレード盤6を前方に押し出す力は削岩機駆動部2からの打撃エネルギーを利用しており、ブレード盤6を後方に下げる力は引き戻しスプリング13の張力を利用して行っていることはすでに述べた。
【0031】
そして、前記の揺動運動は反復を繰り返して行われる為、吹き付けコンクリート面にブレード盤6を押し付けて削岩機駆動部2を駆動し、打撃を与えることで、所定の深さを有し、底面が平坦面となった収納凹面9の確実な掘削が可能となっているのである。
【符号の説明】
【0032】
1 削岩機
2 削岩機駆動部
3 切削ロッド
4 保持部材
5 貫挿部
6 ブレード盤
7 スリーブ
8 アダプター
9 収納凹面
11 突起部
12 ストッパー
13 引き戻しスプリング
14 破砕面
15 切削刃
16 切削ビット
17 ロックボルト
18 掘削孔