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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007300
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
G01N27/447 331E
G01N27/447 301C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110835
(22)【出願日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2022108663
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼根 英里
(72)【発明者】
【氏名】本田 泰祐
(72)【発明者】
【氏名】後 早希子
(57)【要約】
【課題】電気泳動電圧の極性に関して、一方向及びその逆方向の双方を選択可能とする。
【解決手段】電気泳動装置1(分析システム)は、キャピラリー4の両端に一対の電極6,8が設けられたマイクロチップ2(分析用具)における一対の電極6,8に電圧を印加して、キャピラリー4内の試料を電気泳動させる電気泳動装置1であって、マイクロチップ2を設置する設置部12と、設置部12に設置されたマイクロチップ2の一対の電極6,8の一方と他方に各々接触する第1端子22及び第2端子24と、第1端子22及び第2端子24に接続され、キャピラリー4内に電圧を印加する電源装置20(電圧印加部)と、一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せを変更する端子回転部14(変更手段)と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャピラリーの両端に一対の電極が設けられた分析用具における前記一対の電極に電圧を印加して、前記キャピラリー内の試料を電気泳動させる分析システムであって、
前記分析用具を設置する設置部と、
前記設置部に設置された前記分析用具の前記一対の電極の一方と他方に各々接触する第1端子及び第2端子と、
前記第1端子及び前記第2端子に接続され、前記キャピラリー内に電圧を印加する電圧印加部と、
前記一対の電極と、前記第1端子及び前記第2端子との電気的接続の組合せを変更する変更手段と、
を備えた分析システム。
【請求項2】
前記変更手段として、前記第1端子及び前記第2端子を移動させる端子移動手段を有する、請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記端子移動手段は、前記第1端子及び前記第2端子の位置を入れ替える、請求項2に記載の分析システム。
【請求項4】
前記変更手段として、前記設置部の位置を移動させる設置部移動手段を有する、請求項1に記載の分析システム。
【請求項5】
前記設置部移動手段は、前記設置部を回転させて、前記一対の電極の位置を入れ替える、請求項4に記載の分析システム。
【請求項6】
前記変更手段として、
前記第1端子と前記第2端子の間隔を維持しつつ、その一方を移動させる端子移動手段と、
前記設置部の位置を移動させ、前記一対の電極と、前記第1端子及び前記第2端子との組合せを入れ替える設置部移動手段と、
を有する、請求項1に記載の分析システム。
【請求項7】
前記変更手段として、前記第1端子と前記第2端子の間に設けられた整流子を有する、請求項1に記載の分析システム。
【請求項8】
前記変更手段として、前記第1端子及び前記第2端子と前記電圧印加部との間に設けられた転換器を有する、請求項1に記載の分析システム。
【請求項9】
前記第1端子及び前記第2端子の一方が、他方の両側に対称に配置され、
前記変更手段として、前記設置部の位置を移動させ、前記一対の電極と、前記第1端子及び前記第2端子との組合せを入れ替える設置部移動手段と、を有する請求項1に記載の分析システム。
【請求項10】
キャピラリーの両端に一対の電極が設けられた分析用具を設置部に設置するステップと、
入力デバイスを介して、前記分析用具に印加する電圧についての順方向極性及び逆方向極性のいずれか一方の指示を受けるステップと、
入力された指示に基づいた前記一対の電極と、前記一対の電極の一方と他方に各々接触する第1端子及び第2端子との電気的接続の組合せの変更が必要か否か判定するステップと、
前記組合せの変更が必要な場合に、前記一対の電極と、前記第1端子及び前記第2端子との電気的接続の組合せが、入力された指示に基づいた組合せになるよう、変更手段が前記第1端子及び前記第2端子を移動させるステップと、
定められた電気的接続の組合せで、前記一対の電極と前記第1端子及び前記第2端子とを接続するステップと、
前記分析用具の前記一対の電極に電圧を印加して、前記キャピラリー内の試料を電気泳動させるステップと、
を有する分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気泳動を行う分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気泳動装置が開示されている。電気泳動装置は、電源装置を含み、電源装置は、電気泳動のための電圧(以下、「電気泳動電圧」と記す)を生成し、電気泳動装置において、電気泳動電圧はキャピラリーに印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6856495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電源装置は、電源装置の内部接続により規定された向きに電気泳動電圧を印加する。具体的には、導入側端子(プローブ)が導入槽の電極に接触し、排出側端子(プローブ)が排出槽の電極に接触し、導入槽が正、排出槽が負とした電圧印加を行う。
【0005】
しかしながら、電気泳動電圧の極性(電圧印加の向き)を、一方向及びその逆方向の双方を選択できる技術が求められている。
【0006】
本開示は、電気泳動電圧の極性に関して、一方向及びその逆方向の双方を選択可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る分析システムは、キャピラリーの両端に一対の電極が設けられた分析用具における前記一対の電極に電圧を印加して、前記キャピラリー内の試料を電気泳動させる分析システムであって、前記分析用具を設置する設置部と、前記設置部に設置された前記分析用具の前記一対の電極の一方と他方に各々接触する第1端子及び第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子に接続され、前記キャピラリー内に電圧を印加する電圧印加部と、前記一対の電極と、前記第1端子及び前記第2端子との電気的接続の組合せを変更する変更手段と、を備える。
【0008】
この分析システムでは、変更手段により、分析用具の一対の電極と、第1端子及び第2端子との電気的接続の組合せを変更することができる。したがって、電圧印加部により第1端子及び第2端子から一対の電極を通じて分析用具に印加する電気泳動電圧の極性に関して、一方向及びその逆方向の双方を選択できる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る分析システムにおいて、前記変更手段として、前記第1端子及び前記第2端子を移動させる端子移動手段を有する。
【0010】
この分析システムでは、端子移動手段により第1端子及び第2端子を移動させることで、分析用具の一対の電極と、第1端子及び第2端子との電気的接続の組合せを変更することができる。
【0011】
第3の態様は、第2の態様に係る分析システムにおいて、前記端子移動手段が、前記第1端子及び前記第2端子の位置を入れ替える。
【0012】
この分析システムでは、端子移動手段が第1端子及び第2端子の位置を入れ替えることで、分析用具の一対の電極と、第1端子及び第2端子との電気的接続の組合せを変更することができる。分析用具において一対の電極が非対称に配置されている場合にも対応できる。
【0013】
第4の態様は、第1の態様に係る分析システムにおいて、前記変更手段として、前記設置部の位置を移動させる設置部移動手段を有する。
【0014】
この分析システムでは、設置部移動手段により設置部の位置を移動させることで、分析用具の一対の電極と、第1端子及び第2端子との電気的接続の組合せを変更することができる。
【0015】
第5の態様は、第4の態様に係る分析システムにおいて、設置部移動手段が、前記設置部を回転させて、前記一対の電極の位置を入れ替える。
【0016】
この分析システムでは、設置部移動手段が設置部を回転させて一対の電極の位置を入れ替えることで、分析用具の一対の電極と、第1端子及び第2端子との電気的接続の組合せを変更することができる。
【0017】
第6の態様は、第1の態様に係る分析システムにおいて、前記変更手段として、前記第1端子と前記第2端子の間隔を維持しつつ、その一方を移動させる端子移動手段と、前記設置部の位置を移動させ、前記一対の電極と、前記第1端子及び前記第2端子との組合せを入れ替える設置部移動手段と、を有する。
【0018】
この分析システムでは、端子移動手段により、第1端子と第2端子の間隔を維持しつつその一方を移動させると共に、設置部移動手段により設置部の位置を移動させることで、一対の電極と、第1端子及び第2端子との組合せを入れ替えることができる。
【0019】
第7の態様は、第1の態様に係る分析システムにおいて、前記変更手段として、前記第1端子と前記第2端子の間に設けられた整流子を有する。
【0020】
この分析システムでは、第1端子と第2端子の間に設けられた整流子により、分析用具の一対の電極と、第1端子及び第2端子との電気的接続の組合せを変更することができる。
【0021】
第8の態様は、第1の態様に係る分析システムにおいて、前記変更手段として、前記第1端子及び前記第2端子と前記電圧印加部との間に設けられた転換器を有する。
【0022】
この分析システムでは、第1端子及び第2端子と電圧印加部との間に設けられた転換器により、分析用具の一対の電極と、第1端子及び第2端子との電気的接続の組合せを変更することができる。
【0023】
第9の態様は、第1の態様に係る分析システムにおいて、前記第1端子及び前記第2端子の一方が、他方の両側に対称に配置され、前記変更手段として、前記設置部の位置を移動させ、前記一対の電極と、前記第1端子及び前記第2端子との組合せを入れ替える設置部移動手段と、を有する。
【0024】
この分析システムでは、第1端子及び第2端子の一方が、他方の両側に対称に配置されている。設置部移動手段が設置部の位置を移動させることで、一対の電極と、第1端子及び第2端子との組合せを入れ替えることができる。
【0025】
第10の態様に係る分析方法は、キャピラリーの両端に一対の電極が設けられた分析用具を設置部に設置するステップと、入力デバイスを介して、前記分析用具に印加する電圧についての順方向極性及び逆方向極性のいずれか一方の指示を受けるステップと、入力された指示に基づいた前記一対の電極と、前記一対の電極の一方と他方に各々接触する第1端子及び第2端子との電気的接続の組合せの変更が必要か否か判定するステップと、前記組合せの変更が必要な場合に、前記一対の電極と、前記第1端子及び前記第2端子との電気的接続の組合せが、入力された指示に基づいた組合せになるよう、変更手段が前記第1端子及び前記第2端子を移動させるステップと、定められた電気的接続の組合せで、前記一対の電極と前記第1端子及び前記第2端子とを接続するステップと、前記分析用具の前記一対の電極に電圧を印加して、前記キャピラリー内の試料を電気泳動させるステップと、を有する。
【0026】
この分析システムでは、変更手段により、設置部に設置された分析用具の一対の電極と、第1端子及び第2端子との電気的接続の組合せを変更することができる。したがって、入力デバイスから受けた分析用具に印加する電圧についての順方向極性及び逆方向極性のいずれか一方の指示に基づき、順方向極性及び逆方向極性の双方を選択できる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、電気泳動電圧の極性に関して、一方向及びその逆方向の双方を選択可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1(A)は、本実施の形態に係る電気泳動装置の例示的な構成を概略的に示す図面である。図1(B)は、本実施の形態に係る電気泳動装置に関連する細部の例示的な構成を概略的に示す図面である。
図2】本実施形態の電源装置の構成の一例の概略を表すブロック図である。
図3】分析用具を示す断面図である。
図4】分析工程を示す要部平面図である。
図5図4のV-V線に沿う要部拡大断面図である。
図6図6(A)は、電気泳動電圧の極性について一方向を選択した状態を示す斜視図である。図6(B)は、端子移動手段により、電気泳動電圧の極性について他方向を選択した状態を示す斜視図である。
図7】本実施形態に係る電気泳動装置を制御する方法の主要な手順を示すフロー図である。
図8】変形例1に係る設置部移動手段を示す斜視図である。
図9】本実施形態の変形例1に係る電気泳動装置を制御する方法の主要な手順を示すフロー図である。
図10図10(A)は、変形例2において、電気泳動電圧の極性について一方向を選択した状態を示す斜視図である。図10(B)は、変形例2において、電気泳動電圧の極性について他方向を選択した状態を示す斜視図である。
図11】本実施形態の変形例2に係る電気泳動装置を制御する方法の主要な手順を示すフロー図である。
図12】変形例3において、第1端子と第2端子の間に整流子が設けられた構成を示す斜視図である。
図13図13(A)は、変形例4において、電気泳動電圧の極性について一方向を選択した状態を示す斜視図である。図13(B)は、変形例4において、電気泳動電圧の極性について他方向を選択した状態を示す斜視図である。
図14図14(A)は、変形例5において、電気泳動電圧の極性について一方向を選択した状態を示す斜視図である。図14(B)は、変形例5において、電気泳動電圧の極性について他方向を選択した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。
【0030】
図1(A)は、本実施の形態に係る電気泳動装置の例示的な構成を概略的に示す図面である。図1(B)は、本実施の形態に係る電気泳動装置に関連する細部の例示的な構成を概略的に示す図面である。
【0031】
本実施形態の電気泳動装置1は分析システムの一例であり、キャピラリー4の両端に一対の電極6,8が設けられた分析用具の一例としてのマイクロチップ2における一対の電極6,8に電圧を印加して、キャピラリー4内の試料を電気泳動させる。図1(a)、図1(b)及び図2を参照すると、電気泳動装置1は、制御装置10と、電圧印加部の一例としての電源装置20と、第1端子22と、第2端子24と、分析装置26と、設置部12と、変更手段の一例としての端子移動手段、具体的には端子回転部14(後述する図6参照)とを備える。なお、変更手段を「変更部」、端子移動手段を「端子移動部」と言い換えることもできる。
【0032】
電気泳動装置1は、キャピラリー電気泳動法を実施できる分析装置であって、この分析装置は、測定具の試料、例えばマイクロチップ2のキャピラリー4を泳動する試料40の測定又は分析をキャピラリー電気泳動法を用いて行うことができる。より具体的には、試料40が、マイクロチップ2のキャピラリー4内に電気泳動される。本開示の測定具の一例として、マイクロチップ2が示されている。マイクロチップ2は、泳動体44を含み十分に電流が流れる状態にある試料40を含む。試料40は、泳動体44を含む試料40、又は希釈液によって希釈された泳動液(液体状の泳動体44)の溶液を含む試料40を包含する。分析のために、試料40の希釈が必要な場合、試料40は、希釈されることができる。
【0033】
マイクロチップ2は、流路として働くキャピラリー4、導入槽、及び排出槽を有する。泳動体44は、導入槽、キャピラリー4、及び排出槽を満たし、分析対象の試料40は、導入槽に導入される。泳動液(泳動体44)は、キャピラリー電気泳動法においてバッファとして機能する。泳動液(泳動体44)の一例は、100mMりんご酸-アルギニンバッファ(pH5.0)+1.5%コンドロイチン硫酸Cナトリウムであり、試料40の一例は、血液である。マイクロチップ2は、ディスポーザブルタイプのチップであり、例えば1回又は特定の回数の分析を終えた後に廃棄されることが意図されている。マイクロチップ2は、例えば、シリカといった材料で形成される。
【0034】
キャピラリー4は、キャピラリー電気泳動法を用いた分析のための電気泳動を生じさせる試料を含む。キャピラリー電気泳動法の実現のために、キャピラリー4は、一方向に延在する管状の形状を有し、その寸法の一例を以下に示す。管状形状の断面は、例えば25μm~100μmの直径を有する円形、又は25μm~100μmの辺を有する矩形であることが好ましく、管状形状の長さは、例えば30mm程度であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0035】
排出槽は、キャピラリー4に対して、キャピラリー電気泳動の泳動方向における下流側に位置している。キャピラリー4を電気泳動した試料40及び泳動体44は、分析が終了したものとして、排出槽に溜まる。
【0036】
第1外側端子70a及び第2外側端子70bは、それぞれ、第1端子22及び第2端子24に接続されている。具体的には、第1端子22は陰極としての端子であり、第2端子24は陽極としての端子である。つまり、電源装置20は、第1端子22及び第2端子24に接続され、キャピラリー4内に電圧を印加する。第1端子22及び第2端子24は、例えば、断面の直径が0.8mm~1.0mmの銅材(Cu)からなる棒状の電極である。一例として、第1端子22は導入槽と電気的に接続された電極6に接触し、第2端子24は排出槽と電気的に接続された電極8に接触する。つまり、第1端子22及び第2端子24は、設置部12に設置されたマイクロチップ2の一対の電極6,8の一方と他方に各々接触する。これによってキャピラリー4に対して電圧を印加することを可能にする。この例示的な配置では、第1端子22及び第2端子24は、キャピラリー4に対して電圧を印加でき、試料40がマイクロチップ2のキャピラリー4に充填されて泳動できるように、導入槽及び排出槽は、それぞれ、キャピラリー4の一端及び他端に位置する。しかしながら、第1端子22及び第2端子24の配置は、これに限定されない。本開示では、後述する変更手段により、一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せを変更可能である。図1、後述する図6から図14では、簡単のため導入槽の位置に電極6が設けられ、排出槽の位置に電極8が設けられているものとする。
【0037】
なお、第1端子22及び第2端子24は、前記キャピラリー4に対して電圧が印加され、マイクロチップ2のキャピラリー4に充填された試料40を泳動できるのであれば、マイクロチップ2のいずれの箇所と接続してもよい。好ましい接続位置は、導入槽および排出槽のように、キャピラリー4を挟んだ位置である。また、マイクロチップ2がチップカートリッジ(図示せず)に取り付けられ、導入槽及び排出槽がチップカートリッジの2箇所の筒状導体部にそれぞれ電気的に接続され、第1端子22及び第2端子24が、チップカートリッジの側方から筒状導体部の外面に接続する構成であってもよい。
【0038】
ここで、図3から図5において、マイクロチップ2に相当する分析用具A1の例について説明する。分析用具A1は、第1ユニット211および第2ユニット212を備えている。分析用具A1は、第1ユニット211と第2ユニット212とが互いに分離した分離状態と、第1ユニット211と第2ユニット212とが互いに連結された連結状態と、をとる。図5は、連結状態にある分析用具A1を示している。
【0039】
第1ユニット211は、第1上基材111および第1下基材112からなる。第1上基材111および第1下基材112は、各々がたとえば略長矩形状の板状部材であり、互いに貼り合わされている。第1上基材111および第1下基材112は、例えば、ガラス、溶融シリカ、プラスチック等からなる。なお、本実施形態とは異なり、第1ユニット211が一体的に形成されていてもよい。
【0040】
第1ユニット211は、連結部131,132,133,134、試料採取部141、導入流路142、分析部143、導入流路144、入射凹部151および出射凹部152を有している。
【0041】
連結部131,132,133,134は、各々が第2ユニット212の適所と連結する部位であり、第1ユニット211と第2ユニット212との連結を各部において実現するためのものである。連結部131,132,133,134は、各々が図中上方に突出する凸状部分とされており、各々を図中上下方向に貫通する貫通孔が形成されている。
【0042】
試料採取部141は、分離状態において所定量の試料を採取し、且つ分析用具A1が連結状態となるまでこの所定量の試料を維持するための部位である。本実施形態においては、試料採取部141は、連結部131に繋がる微細流路であり、特に本実施形態においては、毛細管力を利用して、所定量の試料を試料採取部141に留まらせることが意図されている。
【0043】
試料採取部141のサイズは特に限定されないが、その一例を挙げると、その幅が100μm~1000μm、その深さが100μm~1000μm、その長さが1mm~20mmである。また、試料採取部141によって採取される試料の量は、0.01μL~20μLである。また、本実施形態においては、試料採取部141は、第1下基材112に形成された微細な溝を第1上基材111が塞ぐことによって設けられている。
【0044】
導入流路142は、試料採取部141から分析部143の一端を経由して連結部132へと繋がる流路である。導入流路142は、例えば希釈試料Smを分析部143および連結部131へと導入するための流路である。本実施形態においては、導入流路142は、分析用具A1の長手方向に対して直角である幅方向に沿う部分を有しており、この幅方向に沿う部分に分析部143が連結されている。導入流路142は、たとえば、第1上基材111に形成された屈曲状の溝を第1下基材112が塞ぐことによって設けられている。
【0045】
分析部143は、分析が行われる場であり、電気泳動法が採用された本実施形態においては、いわゆるキャピラリー管として機能する。つまり、分析部143は、図1におけるキャピラリー4に相当する。分析部143は、分析用具A1の長手方向に沿って直線状に延びている。分析部143の一端は、導入流路142に繋がっており、分析部143の他端は、導入流路144に繋がっている。
【0046】
分析部143のサイズは特に限定されないが、その一例を挙げると、その幅が25μm~100μm、その深さが25μm~100μm、その長さが5mm~150mmである。また、本実施形態においては、分析部143は、第1下基材112に形成された微細な溝を第1上基材111が塞ぐことによって設けられている。
【0047】
導入流路144は、途中部分に分析部143の他端が連結されており、一端が連結部132に繋がり、他端が連結部134に繋がる。導入流路144は、例えば泳動液Lmを分析部143および連結部132へと導入するための流路である。本実施形態においては、導入流路144は、第1上基材111に形成された屈曲状の溝を第1下基材112によって塞ぐことによって設けられている。
【0048】
入射凹部151は、電気泳動法による分析を行う際に、分析に供される光を入射させるためのものである。本実施形態においては、入射凹部151は、第1上基材111の図中上面から内部へと凹んでおり、平面視において、分析部143と重なっている。入射凹部151は、たとえば略円柱形状の凹部である。
【0049】
出射凹部152は、電気泳動法による分析を行う際に、分析に供される光を出射させるためのものである。本実施形態においては、出射凹部152は、第1下基材112の図中下面から内部へ凹んでおり、平面視において分析部143と重なっており、入射凹部151と互いの中心が一致している。出射凹部152は、たとえば略円錐形状の凹部である。
【0050】
第2ユニット212は、第2基材121を備えている。第2基材121は、例えば、ガラス、溶融シリカ、プラスチック等からなる。なお、本実施形態とは異なり、第2ユニット212が複数の部材の集合体によって形成されていてもよい。
【0051】
第2ユニット212は、貫通孔122、希釈液槽171、泳動液槽175、密閉部材172,173,176,177、筒状導体部181,185および電極用凹部182,186を有している。筒状導体部181,185は、図1における電極6,8に相当する。
【0052】
貫通孔122は、第2基材121を厚さ方向に貫通している。貫通孔122は、平面視において第1ユニット211の入射凹部151と重なっており、入射凹部151とともに一体的な空間を規定している。
【0053】
希釈液槽171は、第2ユニット212の長手方向一端寄りに設けられており、特定液体の一例としての上記した希釈液が封入された特定液体槽の一例に相当する。本実施形態においては、希釈液槽171は、第2基材121に形成された貫通孔を利用して構成されている。
【0054】
希釈液槽171は、密閉部材172および密閉部材173によって密閉されている。密閉部材172および密閉部材173は、第2基材121の表面に対して、接着などの密閉状態を維持しうる手法によって固定されている。密閉部材172および密閉部材173の具体的構成は特に限定されず、板状部材や膜状部材が適宜作用される。本実施形態においては、密閉部材172および密閉部材173として膜状部材が採用された場合を例に説明する。このような膜状部材としては、例えば樹脂層とアルミ層とが積層された、いわゆるラミネートフィルムが挙げられる。
【0055】
連結部161は、希釈液槽171の下方に設けられており、第1ユニット211の連結部131と連結する部位である。本実施形態においては、連結部161は、図中下方に突出しており、内部を図中上下方向に貫通する貫通孔が設けられている。本実施形態においては、連結部161の下端に密閉部材172が固定されている。
【0056】
泳動液槽175は、第2ユニット212の長手方向他端寄りに設けられている。本実施形態においては、泳動液槽175は、第2基材121に形成された貫通孔を利用して構成されている。
【0057】
泳動液槽175は、密閉部材176および密閉部材177によって密閉されている。密閉部材176および密閉部材177は、第2基材121の表面に対して、接着などの密閉状態を維持しうる手法によって固定されている。密閉部材176および密閉部材177の具体的構成は特に限定されず、板状部材や膜状部材が適宜作用される。本実施形態においては、密閉部材176および密閉部材177として膜状部材が採用された場合を例に説明する。このような膜状部材としては、例えば樹脂層とアルミ層とが積層された、いわゆるラミネートフィルムが挙げられる。
【0058】
連結部162は、泳動液槽175の下方に設けられており、第1ユニット211の連結部132と連結する部位である。本実施形態においては、連結部162は、図中下方に突出しており、内部を図中上下方向に貫通する貫通孔が設けられている。本実施形態においては、連結部162の下端に密閉部材176が固定されている。
【0059】
ここで、図4図5において、筒状導体部181、電極用凹部182および連結部163について説明する。筒状導体部181,185(導体部の一例)、電極用凹部182,186および連結部163,164は、それぞれ構成が略共通している。筒状導体部181は、第2基材121に形成された厚さ方向に貫通する貫通孔に設けられている。筒状導体部181は、導電性材料からなりたとえば金属からなる。筒状導体部181は、筒状であればその形状は特に限定されず、本実施形態においては、円筒形である場合を例に説明する。
【0060】
電極用凹部182は、第2基材121の幅方向一端面から内部に凹んでいる。電極用凹部182は、筒状導体部181の長手方向中央寄りの一部を収容している。一方、筒状導体部181の両端は、電極用凹部182を避けた第2基材121の内部に位置している。電極用凹部182の形状は特に限定されず、本実施形態においては、平面視三角形状とされている。
【0061】
筒状導体部181の内面は、電圧印加流路811を構成している。電圧印加流路811は、内部を流れる液体である希釈試料Smに対して電圧を印加するための流路である。筒状導体部181は、外面812を有している。筒状導体部181が、上述した電極用凹部182に収容されていることにより、外面812の一部は、外部に露出している。
【0062】
筒状導体部185の内面は、電圧印加流路851を構成している。電圧印加流路851は、内部を流れる液体である泳動液Lmに対して電圧を印加するための流路である。筒状導体部185は、外面852を有している。筒状導体部185が、上述した電極用凹部186に収容されていることにより、外面852の一部は、外部に露出している。
【0063】
連結部163は、第1ユニット211の連結部133と連結する部位である。本実施形態においては、連結部163は、図中下方に突出しており、貫通孔を有する。
【0064】
電気泳動を行う際には、例えば第1端子22を筒状導体部181(図1の電極6)に接触させ、第2端子24を筒状導体部185(図1の電極8)に接触させる。なお、本実施形態では、後述する変更手段により、一対の電極6,8に相当する筒状導体部181,185と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せを変更可能である。
【0065】
分析装置26は、例えば、吸光度の測定を実行するものであり、図1に示すように、光源装置30(発光デバイス28a、照射デバイス28b)、及び検出装置34(受光デバイス32a、光電変換デバイス32b)を含む。
【0066】
光源装置30は、分析対象に応じた波長の光を発生するように構成される。照射デバイス28bは、例えば、光ファイバーといった導波路デバイスを介して発光デバイス28aに結合されており、導波路デバイスは、発光デバイス28aからの光をキャピラリー4の一部に向けて照射光を照射する。発光デバイス28aは、吸光度測定に用いられる光を発生するように構成され、例えば、レーザ素子を含むことができる。発光デバイス28aは、例えば血液中のヘモグロビンA1cといったヘモグロビン種の濃度を分析する場合に、415nmの波長の光を発生することができ、しかしながら、発光デバイス28aの波長は、これに限定されない。検出装置34は、キャピラリー4からの光を受光して電気信号を生成する。受光デバイス32aは、例えば光ファイバーといった導波路デバイスを介して光電変換デバイス32bに接続される。検出装置34は、光電変換デバイス32bからの電気信号を処理する。
【0067】
制御装置10は、電気泳動装置1の各部の動作を制御して、電気泳動装置1による分析を実現するための一連の制御を行う。図2に示されるように、制御装置10は、CPU401(Central Processing Unit)、主記憶装置402、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)といった記憶装置403、インターフェース404、及び出力デバイス405、及びバス406を含む。このような制御装置10は、例えば、マイクロプロセッサといった処理装置を含むことができる。例えば、制御装置10は、装置外部の電源(例えば、家庭用コンセント)から電圧供給を受けるための電源ポートを備えることができる。
【0068】
図1を参照すると、電気泳動装置1により測定又は分析を行う場合、まず、導入ノズル46から導入槽へと泳動体44(泳動液)が導入される。この泳動液(泳動体44)は、導入槽、キャピラリー4、及び排出槽を満たす。試料容器42内の試料40(例えば、血液)が、導入ノズル46から、導入槽へと所定量だけ導入される。電源装置20を用いて第1端子22及び第2端子24に電圧を印加すると、この電圧の強さおよび極性の向きに起因する電気泳動によって、ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンA2といった特定成分がその電荷に応じて分離分画され始める。試料40に電圧が印加されている時間の経過に従って、例えば、特定成分が他の成分から明確に分離分画される。この分離分画された特定成分は、キャピラリー4を移動して、排出槽に向かって移動する。キャピラリー4の一部分は、光源装置30と検出装置34との間に位置するので、電気泳動によりキャピラリー4を移動する特定成分は、キャピラリー4の一部分を通過する。
【0069】
照射デバイス28bが、照射光をキャピラリー4の一部分に照射すると、照射された光の一部が特定成分によって吸収される。受光デバイス32aは、吸収されなかった光を透過光として検出する。検出装置34は、光電変換デバイス32bによって検知された光量(透過量の量)を示す信号を受け、照射光の光量及び透過光の光量に基づく吸光度測定の原理によって、試料40の特定成分の濃度が検出される。
【0070】
電気泳動装置1は、電気泳動電圧を生成するように構成された電源装置20と、順方向極性及び逆方向極性のいずれかを示す動作モードの指定を受けるように構成される入力デバイス90とを含む。電源装置20は、電気泳動電圧をキャピラリー4に印加するように構成された第1外側端子70a及び第2外側端子70bを含む。電源装置20は、第1外側端子70a及び第2外側端子70bの間に順方向極性(例えば、第1外側端子70aを電位が高い正極にし、第2外側端子70bを電位が低い負極にする)又は逆方向極性(例えば、第1外側端子70aを電位が低い負極にし、第2外側端子70bを電位が高い正極にする)で電気泳動電圧を印加することを選択可能である。この電気泳動装置1によれば、順方向極性及び逆方向極性を規定する動作モードを指定して、電気泳動の測定を行うことができる。すなわち、試料40に対して、順方向極性と逆方向極性の二つ極性方向の電圧印加のうちの一つの動作モードを指定した電気泳動を行うことができる。電気泳動装置1は、更に、キャピラリー4に光を照射するように設けられた光源装置30と、光源装置30に光学的に結合された検出装置34とを備える。
【0071】
図2は、電源装置20の構成の一例を概略的に示すブロック図である。電源装置20は、概略的には、キャピラリー4を有する測定具を用いる電気泳動装置1のために構成されており、キャピラリー電気泳動法に必要な電圧を発生するために数キロボルト、例えば1.5kV程度の電圧を生成する。電源装置20は、出力端子として第1外側端子70a及び入力端子として第2外側端子70bを備える。
【0072】
電源装置20は、電圧生成セクション50aを含む。電圧生成セクション50aは、高電圧生成回路53を含み、さらに、例えば、入力制御回路50、イネーブル回路52、出力保護回路58、出力電圧制御回路60、電流検出回路62、及び電圧検出回路64を含むことができる。高電圧生成回路53は、電気泳動のための電圧(以下、「電気泳動電圧」として参照する)を生成するように構成され、また本実施例では、生成回路としてインバータトランス回路54、及び増幅回路としてコッククロフトウォルトン回路56(Cockcroft-Walton circuit:CCW、以下、「CCW回路」と記す)を含むことができる。この電源装置20によれば、高電圧生成回路53は、電圧を生成する生成回路から提供された電圧を増幅回路において増幅することを可能にして、電気泳動測定用の電圧を生成する。なお、電源装置20については、特許第6856495号公報を参照できる。
【0073】
第1外側端子70a及び第2外側端子70bは、キャピラリー4に電気泳動電圧を印加するように構成されて、電源装置20に提供される。換言すれば、電源装置20は、第1外側端子70a及び第2外側端子70bを介してマイクロチップ2に接続される。また、電源装置20は、第2出力電極68、第3出力電極74、第2入力電極82、第3入力電極84、及び第4入力電極86を備えており、これらを介して、制御装置10に接続される。
【0074】
図1において、設置部12は、マイクロチップ2を設置する部位である。この設置部12は、マイクロチップ2の大きさに対応した凹部等を有し、マイクロチップ2を所定位置に設置可能とされている。また、設置部12は、例えば固定式とされている。
【0075】
図6において、端子回転部14は、第1端子22及び第2端子24を移動させる端子移動手段の一例である。第1端子22は、電源装置20の第1外側端子70aに接続されている。第2端子24は、電源装置20の第2外側端子70bに接続されている。また、端子移動手段は、一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せを変更する変更手段の一例である。この端子回転部14は、例えば第1端子22及び第2端子24を保持する例えば保持部材16を、モータ等の駆動部38により回転させる構成となっている。保持部材16は、例えば真直な棒状に構成され、両端に第1端子22と第2端子24をそれぞれ保持している。第1端子22と第2端子24の中央には、回転軸18が設けられている。駆動部38は、制御装置10により制御されて回転軸18を回転させることで保持部材16を回転させるようになっている。図6(A)、図6(B)に示すように、保持部材16が180°回転することで、第1端子22及び第2端子24の位置を入れ替えることが可能となっている。また、駆動部38は、制御装置10により制御されて、第1端子22及び第2端子24が一対の電極6,8に接触する方向及び離間するように上下方向に、保持部材16を往復動させることが可能とされている。
【0076】
なお、端子移動手段は端子回転部14に限られず、第1端子22と第2端子24をそれぞれ別々に移動させる構成であってもよい。この場合、マイクロチップ2において一対の電極6,8が非対称に配置されている場合にも対応できる。
【0077】
(作用)
本実施形態に係る電気泳動装置1は、上記のように構成されており、以下、図7のフロー図に沿ってその作用について説明する。ステップS101において、電気泳動装置の設置部12にマイクロチップ2を設置する。このとき、マイクロチップ2における一対の電極6,8の位置(マイクロチップ2の取付け向き)が所定の状態となるようにマイクロチップ2を設置する。ステップS102において、順方向極性及び逆方向極性のいずれか一方の指示を、入力デバイス90を介して受ける。
【0078】
ステップS103において、入力デバイス90を介して入力された指示に基づき、一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せの変更が必要かどうか判定する。変更が必要でない場合には、ステップS105において、定められた電気的接続の組合せで、それぞれの電極6,8と第1端子22及び第2端子24とを接続する(図6(A))。そして、ステップS106において、測定が開始される。測定では、マイクロチップ2の一対の電極6,8に電圧を印加し、キャピラリー4内の試料40を電気泳動させる。
【0079】
一方、ステップS103において、一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せの変更が必要な場合には、ステップS104Aにおいて、一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せが、入力された指示に基づいた組合せになるよう、端子回転部14が第1端子22及び第2端子24を移動させる(図6(B))。具体的には、端子回転部14の駆動部38が回転軸18を回転させることで、保持部材16を回転させ、保持部材16に保持された第1端子22及び第2端子24の位置を入れ替える。
【0080】
これにより、マイクロチップ2の一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せを変更することができる。一例として、この電気的接続状態が、第1端子22が電極6に接触し、第2端子24が電極8に接触する状態から、第1端子22が電極8に接触し、第2端子24が電極6に接触する状態へと変更される。このため、電源装置20により第1端子22及び第2端子24から一対の電極6,8を通じてマイクロチップ2に印加する電気泳動電圧の極性に関して、一方向及びその逆方向の双方を選択できる。
【0081】
端子移動手段は、端子回転部14のように保持部材16を回転させる構成でなくてもよい。端子移動手段が第1端子22及び第2端子24の位置を入れ替えることで、マイクロチップ2の一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せを変更することができる。この場合、マイクロチップ2において一対の電極6,8が非対称に配置されている場合にも対応できる。
【0082】
なお、端子回転部14が保持部材16を回転させる際には、第1端子22及び第2端子24を上昇させて一対の電極6,8から離し、回転後に第1端子22及び第2端子24を下降させて一対の電極6,8に接触させる。第1端子22及び第2端子24を一対の電極6,8から離す際には、第1端子22及び第2端子24を移動させてもよく、設置部12を移動させてもよい。また、ステップS101は、ステップS104Aの後に行われてもよい。つまり、第1端子22及び第2端子24の配置を変更してから、マイクロチップ2を設置部12に設置してもよい。
【0083】
(変形例1)
図8において、変形例1では、変更手段として、設置部12の位置を移動させる設置部移動手段36が設けられている。設置部移動手段36は、例えば設置部12を回転させて、一対の電極6,8の位置を入れ替える構成となっている。具体的には、設置部移動手段36は、マイクロチップ2における一対の電極6,8の間の電極6,8の中央を中心として設置部12を回転させる回転テーブルである。設置部移動手段36は、制御装置10により制御される例えばモータ等の駆動部48により回転駆動される。
【0084】
第1端子22は、電源装置20の第1外側端子70aに接続されている。第2端子24は、電源装置20の第2外側端子70bに接続されている。駆動部38は、制御装置10により制御されて、第1端子22及び第2端子24が一対の電極6,8に接触する方向及び離間する方向に、保持部材16を往復動させることが可能とされている。なお、第1端子22及び第2端子24は保持部材16に保持されているが、第1端子22及び第2端子24の位置は入れ替わらないようになっている。
【0085】
図9のフロー図に沿って、変形例1の作用、特にステップS104Bの作用について説明する。ステップS101、S102、S103、S105、S106については、上記実施形態(図7)と同様であるので説明を省略する。ステップS104Bは、ステップS103において、一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せの変更が必要な場合に行われるステップである。
【0086】
このステップS104Bにおいては、一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せが、入力された指示に基づいた組合せになるよう、設置部移動手段36が、設置部移動手段36により設置部12の位置を移動させる。具体的には、設置部移動手段36が設置部12を回転させて一対の電極6,8の位置を入れ替える。なお、設置部12を回転させる際には、第1端子22及び第2端子24を一対の電極6,8から離し、回転後に第1端子22及び第2端子24を一対の電極6,8に接触させる。これにより、マイクロチップ2の一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せを変更することができる。
【0087】
(変形例2)
図10(A)、図10(B)において、変形例2では、変更手段として、端子移動手段としての端子回転部14と、設置部移動手段36を有する。端子回転部14は、第1端子22と第2端子24の間隔を維持しつつ、その一方を移動させる。例えば、第1端子22及び第2端子24は保持部材16に保持されており、端子回転部14は、制御装置10により制御される駆動部38により、第1端子22を中心として保持部材16を180°回転させる。これにより、第1端子22は移動せず、第2端子24が元の位置から見て第1端子22の反対側に移動する。
【0088】
第1端子22は、電源装置20の第1外側端子70aに接続されている。第2端子24は、電源装置20の第2外側端子70bに接続されている。駆動部38は、制御装置10により制御されて、第1端子22及び第2端子24が一対の電極6,8に接触する方向及び離間する方向に、保持部材16を往復動させることが可能とされている。
【0089】
図11のフロー図に沿って、変形例2の作用、特にステップS104Cの作用について説明する。ステップS101、S102、S103、S105、S106については、上記実施形態(図7)と同様であるので説明を省略する。ステップS104C、ステップS103において、一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せの変更が必要な場合に行われるステップである。
【0090】
このステップS104Cにおいては、一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せが、入力された指示に基づいた組合せになるよう、端子回転部14が、第1端子22と第2端子24の間隔を維持しつつその一方を移動させると共に、設置部移動手段36がより設置部12の位置を移動させる。具体的には、設置部移動手段36は、例えばスライドテーブルであり、制御装置10により制御されて設置部12をマイクロチップ2の長手方向(一対の電極6,8を結ぶ方向)に移動させる。設置部移動手段36として、例えばボールねじやシリンダ装置を用いることができる。移動距離は、一対の電極6,8の中心間距離である。設置部移動手段36として、例えばボールねじやシリンダ装置を用いることができる。
【0091】
この変形例では、端子移動手段としての端子回転部14により、第1端子22と第2端子24の間隔を維持しつつその一方を移動させる(第1端子22を中心として保持部材16を180°回転させる)と共に、設置部移動手段36により設置部12の位置を移動させることで、一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との組合せを入れ替えることができる。なお、保持部材16を回転させ、設置部移動手段36により設置部12を移動させる際には、第1端子22及び第2端子24を一対の電極6,8から離し、保持部材16の回転及び設置部12の移動の後に第1端子22及び第2端子24を一対の電極6,8に接触させる。
【0092】
(変形例3)
図12において、変形例3では、変更手段として、第1端子22と第2端子24の間に設けられた整流子66を有する。この整流子66における電極の一方は、電源装置20の第1外側端子70aに接続され、他方の電極は電源装置20の第2外側端子70bに接続されている。整流子66は、第1端子22と第2端子24に接触した状態で、制御装置10により制御される駆動部48により回転駆動され、その位置によって第1端子22と第2端子24の極性を入れ替える。この変形例では、例えば、第1端子22が電極6に接触し、第2端子24が電極8に接触する状態を維持しつつ、第1端子22と第2端子24の間に設けられた整流子66により、一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せを変更することができる。
【0093】
(変形例4)
図13(A)、図13(B)において、変形例4では、変更手段として、転換器69を有する。この転換器69は、第1端子22及び第2端子24と電源装置20(図1)との間に設けられ、第1電機子91と第2電機子92を有している。例えば、第1電機子91は、電源装置20の第1外側端子70aに接続され、第2電機子92は電源装置20の第2外側端子70bに接続されている。また、第2電機子92は、枝部92A,92Bに分岐している。枝部92A,92Bは、マイクロチップ2の長手方向(一対の電極6,8を結ぶ方向)において、第1電機子91を挟むように配置されている。第1電機子91と枝部92Aの距離と、第1電機子91と枝部92Bの距離と、第1端子22と第2端子24の距離、電極6と8の距離は、互いに同等とされている。
【0094】
なお、第1電機子91は、第1端子22又は第2端子24に弾性的に接触可能に構成されている。第2電機子92も同様に、第1端子22又は第2端子24に弾性的に接触可能に構成されている。
【0095】
そして、転換器69は、図示しない駆動手段により、マイクロチップ2の長手方向(一対の電極6,8を結ぶ方向)にそれぞれ移動可能とされている。このとき、第1電機子91と第2電機子92は、一体的に移動してもよいし、別々に移動してもよい。
【0096】
この変形例では、第1端子22及び第2端子24と電源装置20(図1)との間に設けられた転換器69を有する。図13(A)においては、転換器69における第1電機子91が第1端子22に接触し、第2電機子92の枝部92Aが第2端子24に接触している。この状態から転換器69をマイクロチップ2の長手方向(一対の電極6,8を結ぶ方向)に移動させると、図13(B)に示すように、第1電機子91が第2端子24に接触し、第2電機子92の枝部92Bが第1端子22に接触した状態となる。この変形例では、このようにして、マイクロチップ2の一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との電気的接続の組合せを変更することができる。
【0097】
(変形例5)
図14(A)、図14(B)において、変形例5では、第1端子22及び第2端子24の一方が、他方の両側に対称に配置されている。具体的には、第1端子22は、電源装置20の第1外側端子70aに接続されている。第2端子24は、電源装置20の第2外側端子70bに接続されている。そして、第2端子24は、枝部24A,24Bに分岐している。この枝部24A,24Bが、マイクロチップ2の長手方向(一対の電極6,8を結ぶ方向)において、第1端子22の両側に対称に配置されている。枝部24Aと第1端子22の距離と、枝部24Bと第1端子22の距離と、電極6と8の距離は、互いに同等とされている。
【0098】
設置部移動手段36は、設置部12の位置を移動させる。具体的には、設置部移動手段36は、例えばスライドテーブルであり、制御装置10により制御されて設置部12をマイクロチップ2の長手方向(一対の電極6,8を結ぶ方向)に移動させる。設置部移動手段36として、例えばボールねじやシリンダ装置を用いることができる。また、一例として、設置部移動手段36は、設置部12を移動させる際に、設置部12を移動させて、第1端子22及び第2端子24を一対の電極6,8から離し、移動後に第1端子22及び第2端子24を一対の電極6,8に接触させる。なお、図示しない駆動部により、第1端子22及び第2端子24を移動させて、第1端子22及び第2端子24を一対の電極6,8から離したり、接触させたりしてもよい。
【0099】
また、この変形例では、変形例2と同様に、変更手段としての設置部移動手段36が設けられている。設置部移動手段36は、設置部12の位置を移動させ、一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との組合せを入れ替える。
【0100】
この変形例では、第1端子22及び第2端子24の一方(第2端子24)が、他方(第1端子22)の両側に対称に配置されている。設置部移動手段36が設置部12の位置を移動させることで、一対の電極6,8と、第1端子22及び第2端子24との組合せを入れ替えることができる。
【0101】
[他の実施形態]
以上、本開示の実施形態の一例について説明したが、本開示の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0102】
制御装置10、電源装置20、分析装置26の構成は一例であり、適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 電気泳動装置(分析システム)
2 マイクロチップ(分析用具)
4 キャピラリー
6 電極
8 電極
12 設置部
14 端子回転部(端子移動手段、変更手段)
20 電源装置(電圧印加部)
22 第1端子
24 第2端子
36 設置部移動手段
66 整流子
69 転換器
図1
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