(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073001
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】電極および薄膜形成装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240522BHJP
C23C 16/509 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H05H1/46 L
C23C16/509
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183948
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤元 高佳
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084AA13
2G084BB07
2G084BB27
2G084BB32
2G084BB35
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD12
2G084DD13
2G084DD22
2G084FF32
2G084FF39
4K030AA06
4K030AA14
4K030FA04
4K030KA01
4K030KA12
4K030KA15
4K030KA26
4K030KA30
(57)【要約】
【課題】高周波電力が印加される電極の各部において温度にムラが生じることを抑制することができる電極および薄膜形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】導電性を有するアンテナ部と、前記アンテナ部の片側の端部である被給電部から前記アンテナ部に高周波電力を印加する電力付与部と、前記アンテナ部に沿って冷媒が流れるように冷媒を供給する冷媒供給部と、を備えた電極であって、前記冷媒供給部は、前記アンテナ部の前記被給電部側から冷媒を供給する構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有するアンテナ部と、
前記アンテナ部の片側の端部である被給電部から前記アンテナ部に高周波電力を印加する電力付与部と、
前記アンテナ部に沿って冷媒が流れるように冷媒を供給する冷媒供給部と、を備えた電極であって、
前記冷媒供給部は、前記アンテナ部の前記被給電部側から冷媒を供給することを特徴とする電極。
【請求項2】
前記アンテナ部の内部には、冷媒が流れる第1の冷却路が形成され、
前記アンテナ部の外側には、前記アンテナ部の外周との間に空間を形成するように前記アンテナ部の外周を囲うことによって冷媒が流れる第2の冷却路を形成するカバー部が設けられており、
前記冷媒供給部は、前記第1の冷却路と前記第2の冷却路に冷媒を供給することを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記第2の冷却路の前記被給電部の近傍における断面積は、前記第2の冷却路の前記被給電部の近傍以外の部分における断面積よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の電極。
【請求項4】
前記アンテナ部には、前記被給電部の近傍において前記第1の冷却路と前記第2の冷却路を連結する第1の連結孔が形成され、
前記冷媒供給部は、前記第1の冷却路に冷媒を供給し、前記第1の冷却路に供給された冷媒が前記第1の連結孔を介して前記第2の冷却路に供給されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電極。
【請求項5】
第1の冷却路には、冷媒が流れる方向における前記第1の連結孔よりも下流側で冷媒の流れを妨げる流路抵抗部が設けられることを特徴とする請求項4に記載の電極。
【請求項6】
前記アンテナ部には、冷媒が流れる方向において前記第1の連結孔よりも下流側で前記第1の冷却路と前記第2の冷却路を連結する第2の連結孔が形成されることを特徴とする請求項4に記載の電極。
【請求項7】
前記冷媒供給部により供給する冷媒は、ガスであることを特徴とする請求項2に記載の電極。
【請求項8】
前記冷媒供給部は、前記第1の冷却路と前記第2の冷却路のそれぞれに対して個別に冷媒を供給しており、
前記冷媒供給部により前記第1の冷却路に供給する冷媒は、液体であり、
前記冷媒供給部により前記第2の冷却路に供給する冷媒は、ガスであることを特徴とする請求項2に記載の電極。
【請求項9】
基材を収容するメインチャンバと、
前記メインチャンバ内に薄膜の原料となる原料ガスを供給する原料ガス供給部と、
前記原料ガスをプラズマ処理するための電極と、を備える薄膜形成装置であって、
前記電極は、導電性を有するアンテナ部と、
前記アンテナ部の片側の端部である被給電部から前記アンテナ部に高周波電力を印加する電力付与部と、
前記アンテナ部に沿って冷媒が流れるように冷媒を供給する冷媒供給部と、を備え、
前記冷媒供給部は、前記アンテナ部の前記被給電部側から冷媒を供給することを特徴とする薄膜形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に薄膜を形成するための電極および薄膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL、太陽電池等の電子デバイスは水や酸素に弱いため、その表面を封止膜で覆って、耐久性を向上させている。このような封止膜は、下記特許文献1に示すような薄膜形成装置により形成されている。
【0003】
この薄膜形成装置は、
図7(a)に示すように帯状の基材910を収容するチャンバ920と、チャンバ920内で基材910をロールツーロールにより搬送する搬送部930と、チャンバ920内で放電を行う電極940と、薄膜(封止膜)の原料となる原料ガスをチャンバ920内に供給する原料ガス供給部950と、プラズマを形成するためのプラズマ形成ガスをチャンバ920内に供給するためのプラズマ形成ガス供給部960と、を備えている。
【0004】
そして、薄膜形成装置900は、原料ガス供給部950によるチャンバ920内への原料ガスの供給、およびプラズマ形成ガス供給部960によるチャンバ920内へのプラズマ形成ガスの供給を行い、電極940による放電を行う。これにより、プラズマ形成ガスがプラズマ化し、このプラズマと原料ガスが反応することによって、搬送部930により搬送される基材910上に薄膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記薄膜形成装置900の電極940は、
図7(b)に示すように導電性を有するアンテナ部941と、アンテナ部941に高周波電力を印加する電力付与部942を有し、電力付与部942により高周波電力をアンテナ部941に印加することによって放電を行っている。このとき、アンテナ部941の電力付与部942により高周波電力を印可された部分とその近傍が、その他の部分よりも高温になるため、電極940の各部における温度にムラが生じてしまっていた。これにより、電極940を用いた薄膜形成装置900によって基材上に薄膜を形成するときに、電極940から基材910に伝わる熱にもムラが生じ、基材910に皺が生じる問題があった。
【0007】
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、高周波電力が印加される電極の各部において温度にムラが生じることを抑制することができる電極および薄膜形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の電極は、導電性を有するアンテナ部と、前記アンテナ部の片側の端部である被給電部から前記アンテナ部に高周波電力を印加する電力付与部と、前記アンテナ部に沿って冷媒が流れるように冷媒を供給する冷媒供給部と、を備えた電極であって、前記冷媒供給部は、前記アンテナ部の前記被給電部側から冷媒を供給することを特徴としている。
【0009】
上記電極によれば、冷媒供給部は、電力付与部により高周波電力が印可される側のアンテナ部の片側の端部である被給電部側からアンテナ部に沿って冷媒が流れるように冷媒を供給している。すなわち、冷媒供給部は、電力供給部により高周波電力を印加されることによって他の部分よりも温度が高くなるアンテナ部の被給電部の近くからアンテナ部のもう一方の端部に向かって冷媒が流れるように冷媒を供給している。そのため、被給電部側以外の部分から冷媒を供給するよりも、被給電部とその近傍を冷却しやすくなる。これにより、電極の各部において温度にムラが生じることを抑制することができる。
【0010】
また、前記アンテナ部の内部には、冷媒が流れる第1の冷却路が形成され、前記アンテナ部の外側には、前記アンテナ部の外周との間に空間を形成するように前記アンテナ部の外周を囲うことによって冷媒が流れる第2の冷却路を形成するカバー部が設けられており、前記冷媒供給部は、前記第1の冷却路と前記第2の冷却路に冷媒を供給する構成にしてもよい。
【0011】
この構成によれば、カバー部によりアンテナ部の外周を囲うことによって、アンテナ部に異物が付着することを防ぐことができる。また、冷媒供給部により供給された冷媒が第1の冷却路と第2の冷却路を流れるため、アンテナ部を内外から冷却することができる。これにより、アンテナ部に異物が付着することを防ぎつつ、被給電部とその近傍をより冷却しやすくすることができる。
【0012】
また、前記第2の冷却路の前記被給電部の近傍における断面積は、前記第2の冷却路の前記被給電部の近傍以外の部分における断面積よりも大きい構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、被給電部の近傍において冷媒の流量が多くなるため、被給電部とその近傍をより冷却しやすくなる。
【0014】
また、前記アンテナ部には、前記被給電部の近傍において前記第1の冷却路と前記第2の冷却路を連結する第1の連結孔が形成され、前記冷媒供給部は、前記第1の冷却路に冷媒を供給し、前記第1の冷却路に供給された冷媒が前記第1の連結孔を介して前記第2の冷却路に供給される構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、冷媒供給部から第2の冷却路に直接冷媒を供給せずとも、第1の冷却路と第2の冷却路の両方に冷媒を供給することができる。
【0016】
また、第1の冷却路には、冷媒が流れる方向における前記第1の連結孔よりも下流側で冷媒の流れを妨げる流路抵抗部が設けられる構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、第1の連結孔を介して第1の冷却路から第2の冷却路に冷媒を供給しやすくなる。
【0018】
また、前記アンテナ部には、冷媒が流れる方向において前記第1の連結孔よりも下流側で前記第1の冷却路と前記第2の冷却路を連結する第2の連結孔が形成される構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、第1の連結孔により第1の冷却路から第2の冷却路に供給された冷媒の一部を、冷媒の流れる方向において第1の連結孔よりも下流側に設けられた第2の連結孔により第2の冷却路から第1の冷却路に戻すことができる。そのため、第2の冷却路で圧力が高くなることを抑制することができる。
【0020】
また、前記冷媒供給部により供給する冷媒は、ガスである構成としてもよい。
【0021】
この構成によれば、冷媒が液体であった場合と比べて、カバー部が破損した際に与える周囲への悪影響を防ぐことができる。
【0022】
また、前記冷媒供給部は、前記第1の冷却路と前記第2の冷却路のそれぞれに対して個別に冷媒を供給しており、前記冷媒供給部により前記第1の冷却路に供給する冷媒は、液体であり、前記冷媒供給部により前記第2の冷却路に供給する冷媒は、ガスである構成としてもよい。
【0023】
この構成によれば、冷媒供給部が、ガスよりも冷却能力が高い液体を第1の冷却路に供給し、冷媒が液体であった場合と比べてカバー部が破損した際に与える周囲への悪影響を防ぐことができるガスを第2の冷却路に供給している。これにより、冷却能力を維持しつつ、冷却カバー部が破損した際に与える周囲への悪影響を防ぐことができる。
【0024】
上記課題を解決するために本発明の薄膜形成装置は、基材を収容するメインチャンバと、前記メインチャンバ内に薄膜の原料となる原料ガスを供給する原料ガス供給部と、前記原料ガスをプラズマ処理するための電極と、を備える薄膜形成装置であって、前記電極は、導電性を有するアンテナ部と、前記アンテナ部の片側の端部である被給電部から前記アンテナ部に高周波電力を印加する電力付与部と、前記アンテナ部に沿って冷媒が流れるように冷媒を供給する冷媒供給部と、を備え、前記冷媒供給部は、前記アンテナ部の前記被給電部側から冷媒を供給することを特徴としている。
【0025】
上記薄膜形成装置によれば、冷媒供給部によって電力付与部により高周波電力が印可される側のアンテナ部の片側の端部である被給電部側からアンテナ部に沿って冷媒が流れるように冷媒を供給する電極を有している。すなわち、冷媒供給部によって電力供給部により高周波電力を印加されることによって他の部分よりも温度が高くなるアンテナ部の被給電部の近くからアンテナ部のもう一方の端部に向かって冷媒が流れるように冷媒を供給している電極を有している。そのため、電極の各部において温度にムラが生じることを抑制することができる。これにより、基材上に薄膜を形成するときに、電極から基材に伝わる熱にムラが生じることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の電極および薄膜形成装置によれば、高周波電力が印加される電極の各部において温度にムラが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態における薄膜形成装置を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の第一実施形態における電極を説明するための図である。
【
図3】本発明の第一実施形態における電極を説明するための図である。
【
図4】本発明の第二実施形態における電極を説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態における電極の1つのバリエーションを示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態における電極の1つのバリエーションを示す図である。
【
図7】従来の薄膜形成装置および電極を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第一実施形態〕
本発明の第一実施形態における電極および薄膜形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0029】
図1は、本実施形態における薄膜形成装置100を概略的に示す図である。
図2および
図3は、本実施形態における電極4を説明するための図であり、
図2は電極4を示す図であり、
図3(a)は電極の一部を拡大して示す図であり、
図3(b)は
図3(a)のA‐A矢視断面図である。
【0030】
本実施形態における薄膜形成装置100は、
図1に示すように基材11を搬送する搬送部1と、搬送部1を収容するメインチャンバ2と、薄膜を形成する成膜チャンバ3と、を有している。この薄膜形成装置100は、搬送部1により搬送される基材11の所定面に成膜チャンバ3により薄膜を形成する。
【0031】
本実施形態における基材Wは、一方向に延びる帯状の部材であり、たとえば、プラスチック、シリコン、紙、布、ガラス、金属等を材質として形成されている。また、基材Wは、カラーフィルター、バイオテンプレート、太陽電池や有機EL等のようなデバイスの構成部材であってもよい。この基材W上に薄膜を形成することによって、基材Wへの水分の浸入を効果的に防止することができる。すなわち、耐水性に優れた部材が形成される。
【0032】
本実施形態における薄膜は、基材11の表面を封止する封止膜であり、SiO2により構成される。この薄膜は、水分に対するバリア性を有している。また、薄膜は、成膜チャンバ3によりプラズマ形成ガスをプラズマ化してラジカルを発生させ、このラジカルと原料ガスを反応させることによって生成される成膜粒子が基材W上に堆積することで形成される。なお、本実施形態におけるプラズマ形成ガスは、O2(酸素)ガスである。また、本実施形態における原料ガスは、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)ガスである。
【0033】
本実施形態における搬送部1は、基材11を搬送するためのものであり、
図1に示すように基材11を巻き出す巻出ロール12と、基材11を巻き取る巻取ロール13と、巻出ロール12と巻取ロール13の間に配置され基材11を搬送するメインロール14と、を有している。この搬送部1が有する各々のロールは、円柱状に形成され、この円柱の中心軸を回転軸として回転する。
【0034】
巻出ロール12は、図示しない制御部により回転を駆動制御され、基材11の巻き出し量を調節しながら基材11の巻き出しを行う。なお、制御部は、たとえば汎用のコンピューター装置によって構成されている(以下の説明でも同様に扱う)。また、巻取ロール13は、巻出ロール12と同様に制御部により回転を駆動制御され、基材11に所定の張力を付与しながら基材11の巻き取りを行う。ここで、基材11に所定の張力を付与するとは、基材11に必要以上の張力がかからずに巻出ロール12から巻き出された基材11が巻取ロール13に巻き取られるまでに撓まないようにすることが可能な張力を基材11に付与することである。
【0035】
メインロール14は、基材11の姿勢を保ちつつ、上流側の巻出ロール12から巻き出された基材11を下流側の巻取ロール13に搬送するためのものである。このメインロール14は、巻出ロール12と巻取ロール13よりも大径の略円柱形状に形成され、巻出ロール12と巻取ロール13の間に配置されている。
【0036】
また、メインロール14の外周面は、周方向の曲率が一定の曲面となる形成されており、成膜チャンバ3と対向している。そして、メインロール14は、巻出ロール12および巻取ロール13の回転に応じて制御部により回転を駆動制御され、基材11がメインロール14の外周面に当接することによって基材11に所定の張力を付与しながら搬送する。これにより、基材11全体が張った状態で、基材11の所定面(以下、基材11の成膜面と呼ぶ)を成膜チャンバ3と対向させながら、基材11を搬送する。
【0037】
これら構成により、搬送部1は、基材11を張った状態で搬送することができるため、成膜チャンバ3により成膜を行うときに基材11がばたつくことを防ぐことができる。また、基材11上に形成される薄膜の膜厚精度が向上するとともに、基材11のばたつきによるパーティクルの発生を防ぐことができる。また、メインロール14の曲率半径を大きくすることにより、基材11がより平坦に近い状態で支持されながら成膜が行われるため、薄膜が形成された後の基材11に反りが生じることを防ぐことができる。
【0038】
メインチャンバ2は、メインロール14を収容し、チャンバ内の圧力を一定に保つためのものである。本実施形態におけるメインチャンバ2は、
図1に示すように断面が略五角形になるように形成されたケーシングであり、その内部に巻出ロール12、巻取ロール13、およびメインロール14が収容されている。すなわち、メインチャンバ2の内部には、搬送部1が収容されている。また、メインチャンバ2には、図示しない真空ポンプが接続されており、この真空ポンプを作動させることにより、メインチャンバ2内の圧力を制御できるようになっている。このメインチャンバ2内に搬送部1を設けることによって、基材11や薄膜が形成された後の基材11が大気に曝されることを防ぐことができる。
【0039】
成膜チャンバ3は、基材11上に薄膜を形成するためのものである。本実施形態では、
図1に示すように同じ構造の成膜チャンバ3がメインチャンバ2内に2つ設けられており、上流側から順に第1の成膜チャンバ3a、第2の成膜チャンバ3bが設けられている。以下の説明では、第1の成膜チャンバ3aと第2の成膜チャンバ3bを区別しない場合には、単に成膜チャンバ3と呼ぶ。
【0040】
これら第1の成膜チャンバ3と第2の成膜チャンバ3bは、
図1に示すようにメインロール14の外径側に間仕切り部31を設けることにより形成されている。具体的には、メインロール14の外径側には、略板状の3つの間仕切り部31がメインチャンバ2の内壁からメインロール14の外周面に向かって延びるように設けられていることによって、メインロール14の外周面と間仕切り部31とメインチャンバ2の壁面とで形成される成膜チャンバ3が2つ形成されている。これにより、メインロール14に沿って基材11が搬送されると、1つ目の間仕切り部31を通過した基材11が第1成膜チャンバ3aに搬送され、2つ目の間仕切り部31を通過した基材11が第2成膜チャンバ3bに搬送される。これにより、第1成膜チャンバ3aおよび第2成膜チャンバ3bのそれぞれにより基材11上に順次薄膜が積層して形成されるようになっている。
【0041】
また、各々の成膜チャンバ3には、図示しない真空ポンプが接続されており、この真空ポンプを作動させることによって、各々の成膜チャンバ3内を所定の圧力に設定することができるようになっている。本実施形態では、原料ガスを供給する前に所定の圧力になるまで各々の成膜チャンバ3を減圧する。
【0042】
そして、各々の成膜チャンバ3には、基材11上に薄膜を形成する処理を行うための成膜源として、プラズマ化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法)を用いた成膜源が設けられている。本実施形態における成膜源は、放電用の電極4と、プラズマを形成するためのプラズマ形成ガスを成膜チャンバ3内に供給するプラズマ形成ガス供給部7と、薄膜の原料となる原料ガスをメインチャンバ2内に供給する原料ガス供給部8のことである。
【0043】
電極4は、プラズマを形成するために放電を行うものである。本実施形態における電極4は、略U字状の誘導結合型の電極であり、
図2に示すように銅などの導電性を有する材料により構成されるアンテナ部41の一部を、石英などの誘電性を有する材料により構成されるカバー部42で覆うことによって形成され、成膜チャンバ3内のほぼ中央部に配置されている。この電極4は、アンテナ部41とカバー部42に加えて、
図2に示すようにアンテナ部41に高周波電力を印加する電力付与部5と、アンテナ部41に沿って冷媒が流れるように冷媒を供給する冷媒供給部6と、を有している。本実施形態における冷媒は、水である。なお、冷媒は、水系、不凍液系、アルコール系、フッ素系などの液体であればよく、たとえばイオン交換水であってもよい。
【0044】
アンテナ部41は、
図2に示すように2本の直線部41a、直線部41bと、直線部41aと直線部41bを折り返して繋げる折り返し部41cによって略U字状に構成されている。具体的に説明する。直線部41aは、基材11の長手方向と直交する基材11の幅方向(
図2におけるY軸方向)に位置するメインチャンバ2の壁面を外側から貫通してメインチャンバ2内に入り、貫通したメインチャンバ2の壁面と対面するメインチャンバ2の壁面を貫通するように延びている。直線部41bは、直線部41aと平行になるようにメインチャンバ2の壁面を貫通してメインチャンバ2内に入り、その壁面と対面するメインチャンバ2の壁面を貫通するように延びている。折り返し部41cは、直線部41aの端部と直線部41bの端部とを接続し、直線部41aと直線部41bとで略U字状の形状になるよう形成されている。すなわち、アンテナ部41は、略U字状に形成されるとともに、直線状に延びる直線部41aおよび直線部41bの一部を残してメインチャンバ2内に収容され、それ以外の部分がメインチャンバ2外に位置するよう形成されている。
【0045】
また、アンテナ部41は、
図2および
図3(b)に示すように中心に空洞を有する管状に形成されており、この空洞に冷媒が流れるようになっている。この空洞部を以下の説明では第1の冷却路43と呼ぶ。
【0046】
カバー部42は、アンテナ部41の外側に設けられた保護部材であり、本実施形態では、
図2に示すように2つ設けられている。以下の説明では、2つのカバー部42のそれぞれをカバー部42a、カバー部42bと呼び、区別しない場合には単にカバー部42と呼ぶ。そして、本実施形態では、
図2および
図3(b)に示すようにアンテナ部41の外周との間に空間を形成するように直線部41aの全周を囲うようカバー部42aが設けられ、直線部41bの全周を囲うようカバー部42bが設けられている。本実施形態では、冷媒がアンテナ部41とカバー部42の間の空間に流れるようになっている。この空間を以下の説明では第2の冷却路44と呼ぶ。また、カバー部42の両端部とアンテナ部41との間には、Oリングなどのシール部材Gが設けられている。これにより、第2の冷却路44から冷媒が漏れ出ることを防いでいる。
【0047】
電力付与部5は、一般的に用いられる高周波電源である。この電力付与部5は、アンテナ部41の片側の端部からアンテナ部41に対して高周波電力を印加するようになっており、本実施形態では、
図2に示すように直線部41aの折り返し部41cと接続されていない方の端部から高周波電力を印加している。そして、電力付与部5により高周波電力を印加されたアンテナ部41の周囲に電界が発生する。すなわち、アンテナ部41は放電を行う。これにより、プラズマ形成ガスがプラズマ化する。なお、以下の説明では、電力付与部5により高周波電力を印加されるアンテナ部41の片側の端部を被給電部45と呼ぶ。
【0048】
冷媒供給部6は、第1の冷却路43と第2の冷却路44に冷媒を供給するためのものであり、
図2に示すように冷媒を貯留するタンク61と、タンク61と第1の冷却路43を接続する供給路62と、を有している。本実施形態では、供給路62が被給電部45側の第1の冷却路43に接続されている。また、供給路62には図示しないポンプが設けられており、このポンプを駆動させることによって、タンク61内の冷媒を供給路62を介して被給電部45側から第1の冷却路43に供給する。
【0049】
また、第1の冷却路43と第2の冷却路44から冷媒を排出するための排出部63が設けられている。排出部63は、
図2に示すようにアンテナ部41の被給電部45とは別の端部側の第1の冷却路43に設けられており、この排出部63から冷媒を排出するようになっている。
【0050】
これら構成により、電極4はアンテナ部41を冷却しながら放電を行う。
【0051】
ここで、アンテナ部41には、
図3(a)および
図3(b)に示すように被給電部45の近傍において第1の冷却路43と第2の冷却路44を連結する第1の連結孔46が形成されている。この第1の連結孔46は、アンテナ部41の周方向に複数設けられている。これら第1の連結孔46を介することによって、冷媒供給部6により第1の冷却路43に供給された冷媒が第2の冷却路44に供給される。これにより、アンテナ部41を内外から冷却することができる。
【0052】
また、第2の冷却路44の被給電部45の近傍における断面積は、第2の冷却路44の前記被給電部の近傍以外の部分における断面積よりも大きくなっている。本実施形態では、
図3(a)に示すように被給電部45の近傍におけるアンテナ部41を被給電部45に向かって径が小さくなるテーパ形状になるよう形成することによって、第2の冷却路44の被給電部45の近傍における断面積を第2の冷却路44の前記被給電部の近傍以外の部分における断面積よりも大きくしている。
【0053】
具体的には、
図3(a)に示すように被給電部45の近傍におけるアンテナ部41の外周面を、アンテナ部41の冷媒が流れる方向における第1の連結孔46のすぐ下流側の部分から傾斜させ、この傾斜の開始位置におけるアンテナ部41の径が小さく、傾斜の終了位置に向かってアンテナ部41の径が大きくなるように形成している。なお、アンテナ部41の外周面の傾斜は、傾斜を開始した位置から所定の間隔を空けた位置で終了している。ここでいう所定の間隔とは、アンテナ部41の被給電部45から高周波電力を印加された状態において被給電部45とその近傍よりも比較的に低温となる部分までの間隔のことである。そして、アンテナ部41は、傾斜の終了位置から被給電部45とは反対側の端部にわたって径が一定の大きさになるよう形成されている。これにより、その部分の第2の冷却路44の断面積を第2の冷却路44の前記被給電部の近傍以外の部分における断面積よりも大きくすることができ、被給電部45の近傍における第2の冷却路44に流れる冷媒の量を多くすることができる。
【0054】
また、第1の冷却路43には、冷媒が流れる方向における第1の連結孔46よりも下流側で冷媒の流れを妨げる流路抵抗部47が設けられている。本実施形態における流路抵抗部47は、
図3(a)および
図3(b)に示すように冷媒が流れる方向と直交する方向におけるアンテナ部41の中心を通るようにアンテナ部41の内周面の一部からその一部と対向する部分に向かって延びるように形成された棒状のシャフトである。この流路抵抗部47を、第1の冷却路43の冷媒が流れる方向における第1の連結孔46よりも下流側に設けることによって、第1の冷却路43を流れる冷媒の流れが妨げられ、第1の連結孔46を介して第1の冷却路43から第2の冷却路44に冷媒が流れやすくなる。
【0055】
また、アンテナ部41には、冷媒が流れる方向において第1の連結孔46よりも下流側で第1の冷却路43と第2の冷却路44を連結する第2の連結孔48が形成されている。第2の連結孔48は、
図3(a)に示すように前述した被給電部45の近傍におけるアンテナ部41を厚み方向テーパ形状に形成するための傾斜の終了位置に形成され、アンテナ部41の周方向に複数設けられている。これら第2の連結孔48を介することによって、第2の冷却路44を流れる冷媒の一部が第1の冷却路43に供給される。すなわち、第1の連結孔46を介して第1の冷却路43から第2の冷却路44に供給された冷媒の一部が、第2の連結孔48を介して第2の冷却路44から第1の冷却路43に戻される。
【0056】
また、アンテナ部41には、冷媒が流れる方向において第2の連結孔48よりも下流側で第1の冷却路43と第2の冷却路44を連結する第3の連結孔49aが形成されている。第3の連結孔49aは、
図2に示すように冷媒が流れる方向において下流側に位置するカバー部42aの端部の近傍に形成され、アンテナ部41の周方向に複数設けられている。これら第3の連結孔49aを介することによって、第2の連結孔48を介して第2の冷却路44から第1の冷却路43に戻されなかった残りの冷媒が、第1の冷却路43に戻される。
【0057】
また、アンテナ部41には、冷媒が流れる方向において第3の連結孔49aよりも下流側で第1の冷却路43と第2の冷却路44を連結する第4の連結孔49bが形成されている。第4の連結孔49bは、
図2に示すように冷媒が流れる方向において上流側に位置するカバー部42bの端部の近傍に形成され、アンテナ部41の周方向に複数設けられている。これら第4の連結孔49bを介することによって、第1の冷却路43を流れる冷媒の一部が第1の冷却路44に供給される。すなわち、第2の連結孔48および第3の連結孔49aを介して第2の冷却路44から第1の冷却路43に戻された冷媒を含む第1の冷却路43に流れる冷媒の一部が、第2の冷却路44に再び供給される。
【0058】
また、アンテナ部41には、冷媒が流れる方向において第4の連結孔49bよりも下流側で第1の冷却路43と第2の冷却路44を連結する第5の連結孔49cが形成されている。第5の連結孔49cは、
図2に示すように冷媒が流れる方向において下流側に位置するカバー部42bの端部の近傍に形成され、アンテナ部41の周方向に複数設けられている。これら第5の連結孔49cを介することによって、第4の連結孔49bを介して第1の冷却路43から第2の冷却路44に供給された冷媒が、第1の冷却路43に再び戻される。これにより、アンテナ部41の被給電部45とは別の端部側の第1の冷却路43に設けられた排出部63により冷媒を排出することができる。
【0059】
プラズマ形成ガス供給部7は、プラズマを形成するためのプラズマ形成ガスを成膜チャンバ3内に供給するためのものであり、図示しないノズルにより成膜チャンバ3内にプラズマ形成ガスを供給する。ここで、電極4は、プラズマ形成ガス供給部7により成膜チャンバ3内にプラズマ形成ガスを供給したあとに放電を行う。これにより、プラズマ形成ガスがプラズマ化し、成膜チャンバ3内の電極4の各々の直線部41の周囲にプラズマ雰囲気が形成される。このプラズマ雰囲気内において、原料ガスと反応するラジカルが発生し、このラジカルと原料ガスが反応することによって、成膜粒子が生成される。
【0060】
原料ガス供給部8は、薄膜の原料となる原料ガスをメインチャンバ2内に供給するためのものであり、図示しないノズルによりメインロール14に搬送される基材11の成膜面と成膜チャンバ3との間に原料ガスを供給する。この供給された原料ガスとラジカルが反応することによって、成膜粒子が形成される。この成膜粒子が、基材11の成膜面に堆積することによって、薄膜が形成される。ここで、基材11が搬送部1により各々の成膜チャンバ3を経由するように搬送されるため、各々の成膜チャンバ3により生成された成膜粒子が基材11の成膜面に堆積し、所定の厚さの薄膜が形成される。
【0061】
これら構成により電極4および薄膜形成装置100は、高周波電力が印加される電極4の各部において温度にムラが生じることを抑制することができる。
【0062】
具体的に説明する。
図7(b)に示す従来の電極940では、アンテナ部941の電力付与部942により高周波電力を印可された部分とその近傍がその他の部分よりも高温になるため、電極940の各部における温度にムラが生じてしまっていた。そして、
図7(a)に示す従来の電極940を用いた薄膜形成装置900によって基材910の成膜面に薄膜を形成する場合、電極940から基材910に伝わる熱にもムラが生じ、基材910に皺が生じる可能性があった。
【0063】
これに対して本実施形態における電極4は、冷媒供給部6によって電力付与部5により高周波電力が印可される側のアンテナ部41の片側の端部である被給電部45側からアンテナ部41に沿って冷媒が流れるように冷媒を供給している。すなわち、冷媒供給部6は、電力供給部5により高周波電力を印加されることによって他の部分よりも温度が高くなるアンテナ部41の被給電部45の近くからアンテナ部41のもう一方の端部に向かって冷媒が流れるように冷媒を供給している。そのため、被給電部45側以外の部分から冷媒を供給するよりも、被給電部45とその近傍を冷却しやすくなる。これにより、電極4の各部において温度にムラが生じることを抑制することができる。
【0064】
本実施形態における薄膜形成装置100は、各部における温度にムラが生じることを抑制可能な電極4を用いて基材11に薄膜を形成しているため、電極4から基材11に伝わる熱にもムラが生じることを防ぐことができる。これにより、基材11に皺が生じることを防ぐことができる。
【0065】
また、本実施形態における電極4は、カバー部42によりアンテナ部41の外周を囲っているため、アンテナ部41に異物が付着することを防ぐことができる。また、カバー部42は、アンテナ部41の外周との間に冷媒が流れるための空間である第2の冷却路44を形成するように設けられているため、第1の冷却路43だけでなく第2の冷却路44にも冷媒を流すことができ、アンテナ部41を内外から冷却することができる。これにより、アンテナ部41に異物が付着することを防ぎつつ、被給電部45とその近傍をより冷却しやすくすることができる。また、カバー部42を設けることによって、プラズマがアンテナ部41に接することを防ぐことができる。これにより、アンテナ部41でアークが発生することを防ぎ、アンテナ部41は安定した放電を行うことができる。
【0066】
また、本実施形態における第2の冷却路44の被給電部45の近傍における断面積は、第2の冷却路44の前記被給電部の近傍以外の部分における断面積よりも大きくなっているため、被給電部45の近傍における冷媒の流量を多くすることができる。これにより、被給電部45とその近傍をより冷却しやすくなる。
【0067】
また、本実施形態では、第2の冷却路44の被給電部45の近傍における断面積を、第2の冷却路44の前記被給電部の近傍以外の部分における断面積よりも大きくするために、アンテナ部41の被給電部45の近傍における部分から傾斜させ、この傾斜の開始位置におけるアンテナ部41の径が小さく、傾斜の終了位置に向かってアンテナ部41の径が大きくなるようにアンテナ部41を形成している。このアンテナ部41の傾斜している部分は、傾斜していない部分よりも基材11と離れている。そのため、アンテナ部41の傾斜している部分の熱は、傾斜していない部分の熱よりも基材11へ伝わりにくくなっている。これにより、電極4から基材11に伝わる熱にムラが生じることを防ぐことができ、基材11に皺が生じることを防ぐことができる。
【0068】
また、本実施形態におけるアンテナ部41には、第1の連結孔46が形成されているため、冷媒供給部6から第2の冷却路44に直接冷媒を供給せずとも、第1の冷却路43と第2の冷却路44の両方に冷媒を供給することができる。これにより、タンク61と第2の連結路44を接続するための供給路62は不要になるため、電極4が大型化することを防ぐことができる。
【0069】
また、本実施形態における第1の冷却路43の冷媒が流れる方向における第1の連結孔46よりも下流側には、流路抵抗部47が設けられているため、第1の冷却路43を流れる冷媒の流れを妨げることができる。これにより、第1の冷却路43を流れる冷媒を、第1の連結孔46を介して第2の冷却路44に供給しやすくなる。
【0070】
また、本実施形態におけるアンテナ部41には、第2の連結孔48が形成されているため、第2の冷却路44で圧力が高くなることを防ぐことができる。具体的には、本実施形態における第2の冷却路44の被給電部45の近傍における断面積は、第2の冷却路44の前記被給電部の近傍以外の部分における断面積よりも大きくなっているため、第2の冷却路44の被給電部45の近傍における冷媒の容量は第2の冷却路44の前記被給電部の近傍以外の部分における冷媒の容量よりも多くなっている。すなわち、第2の冷却路44では、冷媒の容量が多い部分から少ない部分に冷媒が流れるようになっている。これにより、第2の連結孔48が形成されていない場合、第2の冷却路44の被給電部45の近傍における断面積よりも断面積が小さくなっている部分で冷媒の圧力が大きくなり、アンテナ部41とカバー部42が破損する可能性がある。
【0071】
これに対して本実施形態では、第2の連結孔48が、冷媒が流れる方向における第1の連結孔46の下流側であって、アンテナ部41をテーパ形状に形成するための傾斜の終了位置に形成されている。そのため、第2の冷却路44の断面積が大きい部分から断面積が小さい部分に冷媒が流入する前に、第2の連結孔48を介して冷媒の一部を第2の冷却路44から第1の冷却路43に戻すことができる。これにより、第2の冷却路44で圧力が高くなることを抑制することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、冷媒供給部6が、第1の冷却路43と第2の冷却路44に供給する冷媒として液体を用いている例を説明したが、冷媒としてガスを用いてもよい。この場合、冷媒が液体であった場合と比べて、カバー部42が破損した際に与える周囲への悪影響を防ぐことができる。
【0073】
具体的には、本実施形態のように電極4を薄膜形成装置100に用いる場合、生成した成膜粒子が電極4上に堆積して薄膜が形成されて薄膜の応力によってカバー部42が破損することがある。ここで、第2の冷却路44を流れる冷媒が液体だった場合、成膜チャンバ3内に液体が飛散して薄膜形成装置100が故障する可能性があった。これに対して、本実施形態における冷媒供給部6は、第1の冷却路43と第2の冷却路44に供給する冷媒としてガスを用いているため、カバー部42が破損したとしても冷媒が液体であった場合と比べて薄膜形成装置100を故障させるなどの周囲への悪影響を防ぐことができる。
【0074】
〔第二実施形態〕
次に本発明の第二実施形態における電極4および薄膜形成装置100について
図4を用いて説明する。本実施形態における電極4は、冷媒供給部6により第1の冷却路43と第2の冷却路44のそれぞれに対して個別に異なる冷媒を供給する点で第一実施形態と異なっている。なお、以下の説明では、第一実施形態と同様の点について具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0075】
図4は、本実施形態における電極4を説明するための図である。
【0076】
本実施形態における冷媒供給部6は、冷媒である液体を貯留するタンク64と、タンク64と第1の冷却路43を接続する供給路65と、冷媒であるガスを貯留するタンク66と、タンク66と第2の冷却路44を接続する供給路67と、を有している。なお、本実施形態では、タンク66と供給路67は、
図4に示すように2つずつ設けられており、そのそれぞれが冷媒が流れる方向において上流側に位置するカバー部42aとカバー部42bのそれぞれの端部側から冷媒であるガスを第2の冷却路44に供給するよう設けられている。
【0077】
そして、供給路65には図示しないポンプが設けられており、このポンプを駆動させることによって、タンク64から第1の冷却路43に液体を供給する。また、各々の供給路67には図示しないファンが設けられており、このファンを駆動させることによって、タンク66から第2の冷却路44にガスを供給する。
【0078】
なお、本実施形態におけるアンテナ部41には、第1の連結孔46、流路抵抗部47、第2の連結孔48、第3の連結孔49a、第4の連結孔49b、および第5の連結孔49cは設けず、第1の冷却路43には冷媒として液体のみがアンテナ部41に沿って流れ、第2の冷却路44には冷媒としてガスのみがアンテナ部41に沿って流れるようになっている。そして、本実施形態における薄膜形成装置100は、この構成の電極4を用いて基材11の成膜面に薄膜を形成する。
【0079】
このように上記実施形態における電極4および薄膜形成装置100は、電極4における冷却能力を維持しつつ、カバー部42が破損した際に与える周囲への悪影響を防ぐことができる。
【0080】
具体的に説明する。一般的にガスは液体よりも温度が高くなりやすくなっているため、冷媒としての冷却能力は液体よりも劣っている。そのため、第1の実施形態のようにアンテナ部41を冷却する冷媒としてガスのみを用いた場合、液体のみを用いる場合よりもアンテナ部41の冷却能力が低下する。一方で、アンテナ部41を冷却する冷媒として液体のみを用いてカバー部42が破損してしまった場合、ガスのみを用いる場合よりも周囲に与える悪影響が大きくなってしまう。
【0081】
これに対して本実施形態では、冷媒供給部6が、ガスよりも冷却能力が高い液体を第1の冷却路43に供給し、冷媒が液体であった場合と比べてカバー部42が破損した際に与える周囲への悪影響を防ぐことができるガスを第2の冷却路44に供給している。これにより、冷却能力を維持しつつ、冷却カバー部が破損した際に与える周囲への悪影響を防ぐことができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、薄膜形成装置100により形成する薄膜がSiO2により構成される例について説明したが、これに限らず、たとえばSiNやSiCNにより構成されてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、電極4が略U字状の誘導結合型の電極である例について説明したが、これに限らず、たとえば
図5に示すような直線状に形成された電極であってもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、カバー部42がアンテナ部41の一部を囲うように設けられている例について説明したが、少なくともカバー部42が少なくともアンテナ部41の成膜チャンバ3内に位置する部分を囲うように設けられていれば特に限定しない。たとえば、
図6に示すようにカバー部42がアンテナ部41の全周を覆うように設けられていてもよい。この場合、
図6に示すように第3の連結孔49a、第4の連結孔49b、および第5の連結孔49cを設けずに、アンテナ部41の被給電部45とは別の端部側の第2の冷却路44にも排出部63を設けるような構成としてもよい。
【0085】
また、上記第一実施形態では、流路抵抗部47が1本のシャフトである例について説明したが、これに限られない。たとえば、網状の部材であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
100 薄膜形成装置
1 搬送部
11 基材
12 巻出ロール
13 巻取ロール
14 メインロール
2 メインチャンバ
3 成膜チャンバ
3a 第1の成膜チャンバ
3b 第2の成膜チャンバ
31 間仕切り部
4 電極
41 アンテナ部
41a 直線部
41b 直線部
41c 折り返し部
42 カバー部
43 第1の冷却路
44 第2の冷却路
45 被給電部
46 第1の連結孔
47 流路抵抗部
48 第2の連結孔
49a 第3の連結孔
49b 第3の連結孔
49c 第3の連結孔
5 電力付与部
6 冷媒供給部
61 タンク
62 供給路
63 排出部
64 タンク
65 供給路
66 タンク
67 供給路
7 プラズマ形成ガス供給部
8 原料ガス供給部
G シール部材