(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073004
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】ジケトピロロピロール顔料微粒子
(51)【国際特許分類】
C09B 57/00 20060101AFI20240522BHJP
C09B 67/46 20060101ALI20240522BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20240522BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C09B57/00 Z
C09B67/46 A
C09B67/20 F
G02B5/20 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183953
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000180058
【氏名又は名称】山陽色素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 敬弘
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148BE13
2H148BE15
2H148BE22
2H148BG02
2H148BG06
2H148BH02
2H148BH06
(57)【要約】
【課題】位相差値が顕著に低いカラーフィルター用の硬化膜を作製することが可能なジケトピロロピロール顔料微粒子、位相差値が顕著に低いカラーフィルター用の硬化膜を作製することが可能な前記ジケトピロロピロール顔料微粒子を含む顔料分散体及び塗膜形成用組成物、並びに、位相差値が顕著に低いカラーフィルターを提供すること。
【解決手段】結晶化度が50%以下であり、かつX線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち2θ=24.5°±0.3°のピークに対応する面方向の結晶子サイズが140Åを超えることを特徴とするジケトピロロピロール顔料微粒子及び前記ジケトピロロピロール顔料微粒子及び溶媒を含む顔料分散体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化度が50%以下であり、かつX線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち2θ=24.5°±0.3°のピークに対応する面方向の結晶子サイズが140Åを超えることを特徴とするジケトピロロピロール顔料微粒子。
【請求項2】
請求項1に記載のジケトピロロピロール顔料微粒子及び溶媒を含む、顔料分散体。
【請求項3】
前記ジケトピロロピロール顔料微粒子を構成するジケトピロロピロール顔料が、式(I):
【化1】
で表される化合物である請求項2に記載の顔料分散体。
【請求項4】
さらに、顔料誘導体を含有する、請求項2又は3に記載の顔料分散体。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の顔料分散体を含有する塗膜形成用組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の塗膜形成用組成物を含有するカラーフィルター。
【請求項7】
請求項1に記載のジケトピロロピロール顔料微粒子を含有するカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用のジケトピロロピロール顔料微粒子に関する。また本発明は、前記ジケトピロロピロール顔料微粒子を用いた顔料分散体、塗膜形成用組成物及びカラーフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。また、モバイルディスプレイ(携帯電話、スマートフォン、タブレットPC)の普及率も高まっており、液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。最近では、自発光により視認性が高い有機ELディスプレイのような有機発光表示装置も、次世代画像表示装置として注目されている。
【0003】
前記液晶表示装置に用いられるカラーフィルターは、一般的に、透明基板と、透明基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように透明基板上に形成された遮光部とを有している。このような着色層の形成方法としては、顔料分散法、染色法、電着法、印刷法などが知られている。中でも、分光特性、耐久性、パターン形状及び精度等の観点から、平均的に優れた特性を有する顔料分散法が最も広範に採用されている。
【0004】
一方、液晶表示装置には、液晶セルや偏光板の屈折率異方性に起因する視野角依存性の問題点がある。この視野角依存性の問題は、液晶表示装置を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合とで視認される画像の色味やコントラストが変化する問題である。
この視野角依存性の問題を改善するため、従来、位相差フィルムを液晶表示装置に組み込む方法が広く用いられてきたが、液晶表示装置に用いられるカラーフィルターは、着色層の各色の着色パターンによって異なる位相差を有するため、上記の位相差フィルムを用いた場合、各色の着色パターンが有する位相差の差異は補償することができないという問題があり、視野角依存性の問題点を完全に解決することは困難であった。
中でも、赤色色材はその化学構造上結晶化しやすいものが多いことから、赤色の着色層は他の色の着色層と比べて厚み方向の位相差値が大きくなりやすいという問題があった。
また、従来から使用されている赤色色材を用いて、色再現域を広げるために、黄味や青味で高色濃度の赤の色度領域に含まれる赤色画素を作製する場合、顔料濃度の上昇によって、コントラストや輝度が低下したり、製版性の悪化を引き起こしたりするという問題があった。
【0005】
そこで、赤色色材及び特定の黄色色材と、特定の分散剤と、溶媒とを含有する色材分散液が提案されている(特許文献1)。この色材分散液は、色材分散安定性に優れ、位相差値が低減されながら、コントラストが向上した着色層を形成可能なカラーフィルター用色材分散液とされているが、位相差値の改善の程度はいまだ十分とはいえず、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、位相差値が顕著に低いカラーフィルター用の硬化膜を作製することが可能なジケトピロロピロール顔料微粒子、並びに、位相差値が顕著に低いカラーフィルター用の硬化膜を作製することが可能な前記ジケトピロロピロール顔料微粒子を含む顔料分散体及び塗膜形成用組成物を提供することを目的とすることにある。
また、本発明の課題は、位相差値が顕著に低いカラーフィルターを提供することを目的とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の態様は、結晶化度が50%以下であり、かつX線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち2θ=24.5°±0.3°のピークに対応する面方向の結晶子サイズが140Åを超えることを特徴とするジケトピロロピロール顔料微粒子に関する。
【0009】
本発明に係る第2の態様は、前記ジケトピロロピロール顔料微粒子及び溶媒を含む、顔料分散体に関する。
【0010】
前記ジケトピロロピロール顔料微粒子を構成するジケトピロロピロール顔料が、式(I):
【0011】
【0012】
で表される化合物であってもよい。
【0013】
前記顔料分散体は、さらに、顔料誘導体を含有してもよい。
【0014】
本発明の第3の態様は、前記顔料分散体を含有する塗膜形成用組成物に関する。
【0015】
本発明の第4の態様は、前記塗膜形成用組成物又は前記ジケトピロロピロール顔料微粒子を含有するカラーフィルターに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るジケトピロロピロール顔料微粒子を含む顔料分散体及び塗膜形成用組成物を用いて、カラーフィルターの硬化膜を作製することで、従来のカラーフィルターの硬化膜に比べて、位相差値、特に赤色の着色層における位相差値を顕著に低下させることが可能となる。
本発明に係るカラーフィルターは、従来のフィルターに比べて、位相差値が顕著に低いものであり、画像のコントラストを良化することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るジケトピロロピロール顔料微粒子、顔料分散体、塗膜形成用組成物及びカラーフィルターの実施形態について説明する。
【0018】
(ジケトピロロピロール顔料微粒子)
本発明の実施形態に係るジケトピロロピロール顔料微粒子(以下、本発明の顔料微粒子ともいう)は、結晶化度が50%以下であり、かつX線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち2θ=24.5°±0.3°のピークに対応する面方向の結晶子サイズが140Åを超えることを特徴とする。
【0019】
顔料は、同一化学構造であっても粒子の大きさ、形、結晶構造等が異なると、色、濃度、流動性等に著しい違いを生じることが知られている。
本発明の顔料微粒子では、ジケトピロロピロール顔料が前記特定の結晶化度及び特定の結晶子サイズを有することで、カラーフィルターの硬化膜を作製した場合に、従来のカラーフィルターの硬化膜に比べて、位相差値、特に赤色の着色層における位相差値を顕著に低下させることが可能となる。
【0020】
本発明において、ジケトピロロピロール顔料微粒子は、ジケトピロロピロール顔料(以下、DPP顔料ともいう)からなる微粒子である。
前記DPP顔料は、固体状で深みのある赤色を呈する顔料である。
本発明で使用するDPP顔料として、3,6-ジフェニル-2,5-ジヒドロ-ピロロ[3,4‐c]-ピロール-1,4-ジオン(CAS登録番号:54660-00-3)を基本骨格とするジケトピロロピロール化合物が挙げられる。
【0021】
前記DPP顔料としては、例えば、式(I):
【0022】
【0023】
で表される化合物が挙げられる。
また、前記式(I)において、2箇所に存在するBrは、それぞれ独立に、H、Cl、フェニル基、メチル基等に置換されていてもよい。
【0024】
前記DPP顔料は、市販品を使用してもよく、例えば、ピグメントレッド(Pigment Red)254、ピグメントレッド291、ピグメントレッド255、ピグメントレッド264、ピグメントレッド272等が挙げられる。
【0025】
本発明において、「微粒子」とは、平均粒子径が50nm以下であるDPP顔料の微粒子をいう。
前記平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(商品名:JEM-1011、日本電子(株)製)による5万倍及び10万倍の画像から、任意の微細化顔料粒子50個を選択し、画像中に示された計測尺をもとに各微細化顔料粒子の最大粒径を測定し、算術平均として求めることができる。
【0026】
本発明において、結晶化度(degree of crystallinity)とは、DPP顔料微粒子を構成する結晶部分及び無定形部分のうちの、結晶部分の割合をいう。
結晶化度の測定には、密度法、X線回折法、赤外法、NMR法、熱分析法等が知られているが、本発明において、結晶化度は、X線回折法によって測定される値をいう。
具体的には、下記の式によって求められる値である。
結晶化度(%)=100×(結晶質のピーク面積の総和)/(結晶質のピーク面積の総和+無定形部分のピーク面積の総和)
【0027】
本発明の顔料微粒子は、前記結晶化度が50%以下であり、本発明の効果が奏されやすい観点から、40%以下であることが好ましい。
前記範囲の結晶化度を有する顔料微粒子であることで、位相差値が顕著に低いカラーフィルター用の硬化膜を作製することが可能になる。
【0028】
DPP顔料微粒子において、本発明者らが検討したところ、X線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち2θ=24.5°±0.3°のピークに対応する面方向の結晶子サイズは、赤味の発色が強い。
前記結晶子サイズの上限値については、特に限定はないが、400Å以下であればよい。
【0029】
前記X線回折パターンは、顔料分野において一般的に使用されるX線回折法を用いればよく、例えば、測定領域(回折角:2θ)を5°~35°に設定し、X線出力を40kw、30mAに調整した条件で測定することができる。
【0030】
また、前記結晶格子面のうち2θ=24.5°±0.3°のピークに対応する面方向の結晶子サイズ(D)は、以下に示すシェラーの式を用いて、2θ=24.5°±0.3°の回折ピークの半値幅からの計算値として算出することができる。
【0031】
【0032】
なお、後述する実施例では、シェラー定数(K)=0.94、X線波長(λ)=1.54184Åとした。半値幅(β)は、ソフトウェア「ピークサーチ」(株式会社リガク社製)を用いた回折パターンの補正によって得られた半値幅の値を使用した。
【0033】
また、ブラッグ角(θ)は2θ=24.5°±0.3°の回折ピークの回折角(2θ)の半分の値を使用した。
【0034】
また、本発明の顔料微粒子は、CuKα線を用いた粉末X線回折測定において、回折角(2θ)=5~35°の範囲内で、27.8±0.3°に極大ピークを示すが、18.3±0.3°に極大ピークを示さない、α型の結晶型を有する。なお、DPP顔料類がα型の結晶変態を有することについては、例えば、特開平8-048908号公報、特開2008-024873号公報等に記載されている。
【0035】
本発明の顔料微粒子は、粒子原料の溶液から晶析等の方法(ボトムアップ法)により微粒子を析出させることで作製することができる。
前記方法としては、フロー方式、バッチ方式が挙げられる。
【0036】
ボトムアップ法とは、顔料を溶解する溶媒に顔料を溶解させた顔料溶液(良溶媒)を調整し、顔料を溶解しない溶媒(貧溶媒)と混合することで、顔料微粒子を析出させる方法である。
【0037】
前記良溶媒としては、DPP顔料を溶解できる溶媒であればよく、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が使用できる。
【0038】
前記貧溶媒としては、DPP顔料を溶解せず、良溶媒と相溶性を有する溶媒であればよく、例えば、水が使用できる。
【0039】
また、前記良溶媒には、DPP顔料の溶解性の観点から、塩基を使用する方が好ましい。塩基としては、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)、カリウムtert-ブトキシド等が好適に使用できる。
【0040】
フロー方式とは、マイクロリアクターを用いて行う方法であり、マイクロリアクターの流路中で顔料溶液と貧溶媒とを混ぜて顔料粒子の核を形成させ、次いで、この混合液を排出液(貧溶媒)中へと注いで、粒子の核同士を凝集させて顔料微粒子として析出させる方法である。
前記マイクロリアクターとしては、例えば、特許第4191770号に記載のものが使用される。
前記マイクロリアクター中の流路へ流す際の良溶媒と貧溶媒の流速については、析出した粒子により流路がつまらないように、マイクロリアクターの構成に応じて調整すればよい。
フロー方式における排出液としては、貧溶媒と同じ溶媒を使用すればよい。
【0041】
バッチ方式とは、貧溶媒中へ顔料溶液を滴下することで、顔料微粒子を析出させる方法をいう。
前記顔料溶液及び貧溶媒は、前記フロー方式で使用するものと同じであればよい。
【0042】
また、析出直後の混合液中では顔料微粒子が分散しているため、濾過やデカンテーションによって液体成分と分離し、次いで乾燥させることで、顔料微粒子の粉体を得ることができる。乾燥方法は特に限定されないが、真空乾燥や、温風乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。
【0043】
また、前記貧溶媒又は前記良溶媒は、分散剤又は顔料誘導体を含有してもよい。
前記分散剤、顔料誘導体は、前記貧溶媒、前記良溶媒のいずれにも含有されていてもよいし、いずれか一方に含有されていてもよい。
【0044】
分散剤としては特に限定されず、例えば、高分子分散剤、界面活性剤型分散剤等が挙げられる。これらの中でも、粘度安定性の観点から、高分子分散剤が好ましい。高分子分散剤には、油性高分子分散剤、水性高分子分散剤等がある。
【0045】
油性高分子分散剤としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、不飽和ポリアミド、燐酸エステル、ポリカルボン酸及びそのアミン塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩、ポリカルボン酸エステル、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、ポリシロキサン、変性ポリアクリレート等が挙げられる。
【0046】
水性高分子分散剤としては、例えば、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム等の水溶性高分子化合物;スチレン-アクリル酸樹脂、スチレン-メタクリル酸樹脂、スチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-マレイン酸エステル樹脂、メタクリル酸-メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸-アクリル酸エステル樹脂、イソブチレン-マレイン酸樹脂、ビニル-エステル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等のエチレン性二重結合含有樹脂;ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン等のアミン系樹脂;等が挙げられる。
【0047】
高分子分散剤は種々のものが市販されており、その具体例は以下の通りであるが、これらに限定されるわけではない。
日本ルーブリゾール株式会社製:ソルスパース(登録商標) 3000、9000、13240、17000、20000、24000、26000、27000、28000、32000、32500、38500、39000、55000、41000、ビックケミー・ジャパン株式会社製:Disperbyk(登録商標) 108、110、112、140、142、145、161、162、163、164、166、167、171、174、182、2000、2001、2050、2070、2150、BYK-LP N22956、BASF社製:EFKA(登録商標) 4401、4403、4406、4330、4340、4010、4015、4046、4047、4050、4055、4060、4080、5064、5207、5244、味の素ファインテクノ株式会社製:アジスパー(登録商標)-PB821(F)、PB822、PB880、川研ファインケミカル株式会社製:ヒノアクト(登録商標)T-8000、楠本化成株式会社製:ディスパロン(登録商標)PW-36、ディスパロン(登録商標)DA-325、375、7301等。
【0048】
高分子分散剤の分子量は、特に限定はないが、重量平均分子量が約5000~100000が好ましい。
【0049】
本発明の顔料微粒子は、高分子分散剤を用いて表面処理を行うのが好ましい。この場合、高分子分散剤は析出した顔料表面に素早く吸着して、微細な顔料粒子を形成し、且つこれらの粒子が再び凝集することを防ぐ作用を有するものである。
【0050】
また、前記高分子分散剤を用いる場合は、顔料微粒子の表面に高分子分散剤を素早く析出させて顔料微粒子の凝集を抑制するため、排出液は塩基を含有することが好ましい。前記塩基としては、水酸化アンモニウム、4級アンモニウム水酸化物(TMAH、TEAH等)等が挙げられる。例えば、前記排出液中に含まれる水酸化アンモニウム等の含有量については、特に限定はないが、DPP顔料微粒子の凝集抑制や再溶解の観点から、0.1~30重量%に調整すればよい。
【0051】
前記顔料誘導体は、前記顔料微粒子の粒子成長を制御する化合物であり、例えば、(i)顔料を母体骨格とし、側鎖に酸性基や塩基性基、芳香族基を置換基として導入した化合物、(ii)一般に色素と呼ばれていないナフタレン系、アントラキノン系、キノリン系等の芳香族多環化合物を母体骨格とし、側鎖に酸性基や塩基性基、芳香族基を置換基として導入した化合物、(iii)トリアジンを母体骨格とし、側鎖に酸性基や塩基性基、芳香族基を置換基として導入した化合物、等が挙げられる。(i)における母体骨格となる顔料としては、例えば、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノリン顔料、DPP顔料、ベンゾイミダゾロン顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。
前記顔料誘導体としては、具体的には、特許第6894641号に記載されるものが挙げられる。
【0052】
中でも、効果に優れる顔料誘導体としては、
【0053】
【0054】
で表される誘導体1、
【0055】
【0056】
で表される誘導体2、
【0057】
【0058】
で表される誘導体3、
【0059】
【0060】
で表される誘導体4等が挙げられる。
【0061】
前記良溶媒中の各成分の含有量については、DPP顔料が溶解し、かつ、貧溶媒と混合した際に顔料微粒子が析出するような含有量であれば特に限定はないが、例えば、
DPP顔料5~15重量%
塩基30~45重量%、
顔料誘導体0~5重量%、
溶媒40~60重量%
に調整することが挙げられる。
【0062】
良溶媒が塩基を含む場合、pH調整や顔料微粒子の析出を促進するために、貧溶媒は、酢酸等の酸を含有することが好ましい。
前記貧溶媒中の酢酸等の酸の含有量については、特に限定はないが、0~50重量%に調整することが挙げられる。
【0063】
(顔料分散体)
本発明に係る顔料分散体は、本発明の顔料微粒子及び溶媒を含むものである。
【0064】
顔料分散体に使用される溶媒としては、カラーフィルター用途の観点からは、有機溶媒が好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0065】
本発明に係る顔料分散体中におけるDPP顔料微粒子の含有量としては、特に限定はないが、本発明の効果を奏する観点から、5~70重量%であればよい。
【0066】
また、本発明に係る顔料分散体は、他の顔料を含んでもよい。他の顔料としては、例えば、DPP顔料の他、黄色、オレンジ、赤色等の有機顔料等が挙げられる。
この場合、本発明の顔料微粒子の割合は、求められる色相によって任意に変えることができるが、一般的には全有機顔料に対して、0.1重量%以上100重量%未満が好ましく、40重量%以上95重量%以下がより好ましい。
【0067】
前記溶媒の含有量としては、本発明に係る顔料分散体中において、DPP顔料微粒子等を含む固形分濃度が5~50重量%となるように添加することができる。
【0068】
また、本発明に係る顔料分散体には、顔料誘導体、分散剤等を含有してもよい。
前記顔料誘導体としては、前記ボトムアップ法で使用可能なものであればよく、特に限定はない。
前記分散剤としては、前記ボトムアップ法で使用可能なものであればよく、特に限定はない。
前記顔料誘導体の含有量としては、所望の色相に影響がない程度であれば、特に限定はないが、高コントラスト化と粘度安定性の観点からは、顔料と顔料誘導体の合計に対して5~35重量%が好ましく、10~25重量%がより好ましい。分散体中における顔料誘導体の含有量は、DPP顔料微粒子に含まれる顔料誘導体との合計量である。
前記分散剤の含有量としては、特に限定されないが、顔料の分散効果を得る観点から、顔料(顔料誘導体を含む。)100重量部に対し、好ましくは10~80重量部、より好ましくは20~60重量部であればよい。ただし、分散剤の最適な添加量は、使用する顔料の種類、溶媒の種類などの組み合わせ等により、適宜、調整するとよい。
【0069】
また、本発明に係る顔料分散体には、前記分散剤の他に、顔料等の分散性をより向上させ、ひいては、塗膜のコントラストをより向上させるために、塗膜形成用組成物に添加可能な樹脂を予め顔料分散体に添加することができる。本発明では、このような樹脂を分散樹脂と称する。本発明で使用可能な分散樹脂としては、後述するアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。分散樹脂は、塗膜形成用組成物に添加するアルカリ可溶性樹脂と同じものでも異なっていてもよい。
前記分散樹脂の含量は、顔料(顔料誘導体を含む。)100重量部に対し、好ましくは5~50重量部である。
【0070】
顔料分散体は、各種の混合機、分散機を使用してDPP顔料等を混合し、分散することによって、調製することができる。
この際、混練分散に続けて微分散処理を行うのが好ましいが、混練分散を省略することも可能である。
【0071】
具体的には、前述したような顔料分散体の構成成分を混合して予備分散を行った後に、ビーズ等の分散媒体をさらに添加して本分散を行い微分散させる。その後、必要に応じて、溶媒をさらに添加して希釈分散を行う方法等が挙げられる。希釈分散の後、必要に応じてフィルターを用いて濾過し、濾液を顔料分散体として用いてもよい。
【0072】
具体的には、予備分散では、ディスパー、ホモジナイザー等の分散機を用いて顔料等を分散させる。ディスパーを用いる場合は、500~2000rpmで10~60分間処理するのが好ましい。本分散では、ビーズ分散機等を用いて微分散させる。ビーズを用いる場合は、顔料分散体1重量に対して2~6倍重量を添加するのが好ましい。ビーズとしては、0.01~1mmの粒子径のガラスビーズ、ジルコニアビーズ等を用いることができる。本分散の処理は、ディスパーを用いる場合は、1500~2500rpmで1~12時間程度が好適である。ビーズ分散機としては、例えば、縦型若しくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機等が挙げられる。
【0073】
尚、本発明の顔料分散体を、カラーフィルターの製造に用いられる塗膜形成用組成物に適用する場合には、アルカリ性水溶液に可溶とすることが好ましい。
【0074】
(塗膜形成用組成物)
本発明の塗膜形成用組成物は、前述の本発明に係る顔料分散体及び塗膜形成成分を含む。このように、本発明に係る顔料分散体を含むことで、塗膜形成用組成物中においても、DPP顔料が分散状態を安定して維持することが可能になり、塗膜の際に成膜性が良好で、塗膜、ひいては、カラーフィルターの位相差値を従来よりも向上させることが可能になる。
【0075】
本発明の塗膜形成用組成物では、前述の顔料分散体を少なくとも1種を用いることができる。塗膜形成用組成物中における顔料分散体の含有量としては、塗膜形成用組成物の全固形分(重量)に対して、顔料(顔料誘導体を含む。)の含有量が5~70重量%であるのが好ましく、15~60重量%がより好ましい。顔料分散体の含有量がこの範囲内であると、色濃度が充分で優れた色特性を確保するのに有効である。
【0076】
前記塗膜形成成分としては、例えば、重合性成分、重合体、これらの混合物等が挙げられる。
重合性成分としては、現像(ネガ現像)により、パターニングを施すことが容易であることから、光重合性成分が好ましい。
使用可能な光重合性成分としては、光重合性化合物及び光重合開始剤を含む。このような光重合性化合物及び光重合開始剤は、例えば、特開2009-179789号公報に記載のものを用いることができる。その記載を参照すると概ね、以下の通りである。
即ち、このような光重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。光重合性化合物は、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
【0077】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
尚、これらの具体例は、特開2009-179789号公報に記載の通りであるが、脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0078】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な塗膜形成用組成物の性能設計にあわせて任意に設定できる。
例えば、次のような観点から選択される。感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
【0079】
また、塗膜形成用組成物中の他の成分(例えば、アルカリ可溶性樹脂などのバインダーポリマー、光重合開始剤、着色剤(顔料))との相溶性、分散性に対しても、付加重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。
また、基板等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。光重合性化合物である付加重合性化合物は、塗膜形成用組成物中の不揮発性成分に対して、好ましくは5~70重量%、より好ましくは10~60重量%含まれる。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。その他、光重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。
【0080】
前記光重合開始剤としても、特開2009-179789号公報に記載のものを用いることができる。
即ち、本発明に好適に用いることができる光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾイル系、キサントン系、活性ハロゲン化合物(トリアジン系、オキサジアゾール系、クマリン系)、アクリジン系、ビイミダゾール系、オキシムエステル系等である。
これらの具体例は、特開2009-179789号公報に記載の通りであるが、ベンゾフェノン系光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。
【0081】
光重合開始剤の塗膜形成用組成物中における含有量としては、塗膜形成用組成物の全固形分に対して、0.1~10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~5.0質量%である。光重合開始剤の含有量がこの範囲内であると、重合反応を良好に進行させて強度の良好な膜形成が可能である。
【0082】
前記重合体としては、例えば、熱可塑性ウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレン・マレイン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、カルド樹脂などが挙げられる。
前述のような塗膜形成成分としての重合体のうち、アルカリ領域の溶液に溶解性を示すアルカリ可溶性樹脂が好ましい。
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、現像性の観点からは、5000~50000が好ましい。
【0083】
本発明に係る塗膜形成用組成物においてアルカリ可溶性樹脂を含有すると、塗膜形成用組成物をフォトリソグラフィ工程におけるパターン形成に適用した際において、パターン形成性をより向上させることができる。
【0084】
このようなアルカリ可溶性樹脂としては、特開2009-179789号公報に記載のものを用いることができる。その記載を一部参照すると概ね、以下の通りである。
【0085】
即ち、本発明に用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、更に好ましくは、有機溶媒に可溶で弱アルカリ性水溶液により現像可能なものである。
【0086】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の好適なものとしては、特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸とを合わせた総称であり、以下も同様に(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの総称である。
(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。ここで、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
前記アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH2=CR5R6、CH2=C(R5)(COOR7)(ここで、R5は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表し、R6は炭素数6~10の芳香族炭化水素環を表し、R7は炭素数1~8のアルキル基又は炭素数6~12のアラルキル基を表す。)等を挙げることができる。
これら共重合可能な他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
アルカリ可溶性樹脂は、種々のものが市販されており、その具体例は以下の通りであるが、これらに限定されるわけではない。
昭和電工株式会社製:リポキシ(登録商標)SPCN-100、SPC-2000、
三菱ケミカル株式会社製:ダイヤナール(登録商標)NRシリーズ、
大阪有機化学工業株式会社製:ビスコートR-264、KSレジスト106、
株式会社ダイセル製:サイクロマー(登録商標)Pシリーズ、プラクセル(登録商標)CF200シリーズ、
ダイセル・オルネクス株式会社製:Ebecryl(登録商標)3800、
綜研化学株式会社製:フォレット(登録商標)ZAH110等。
【0088】
アルカリ可溶性樹脂の塗膜形成用組成物中における含有量としては、塗膜形成用組成物の全固形分中で、5~60重量%が好ましく、より好ましくは、10~50重量%である。塗膜形成用組成物中におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量は、顔料分散体に含まれるアルカリ可溶性樹脂との合計量である。
【0089】
本発明の塗膜形成用組成物は、前述の各成分と共に溶媒を用いることで、好適に調製することができる。
このような溶媒としては、エステル類、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル;3-オキシプロピオン酸メチル、3-オキシプロピオン酸エチルなどの3-オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-オキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-オキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等;エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等;ケトン類、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン;等が挙げられる。
溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶媒の塗膜形成用組成物中における含有量としては、顔料分散体中の溶媒の種類、含有量を考慮して、塗膜形成用組成物中の全固形分(不揮発成分)含量が5~50重量%となるように含まれるのが好ましい。
【0090】
本発明の塗膜形成用組成物には、必要に応じて、増感色素、エポキシ樹脂、フッ素系有機化合物、熱重合開始剤、熱重合成分、熱重合防止剤、充填剤、前述のアルカリ可溶性樹脂(分散樹脂)及び高分子分散剤以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの各種添加物を含有することができる。
【0091】
塗膜形成用組成物は、本発明に係る顔料分散体及び塗膜形成成分、並びに、前述した任意成分である、溶媒及び各種添加剤を所望の成分組成になるように調整して混合槽内で撹拌することで得ることができる。混合槽内での撹拌を、ディスパー等の分散機を用いて行うことで、塗膜形成用組成物中で顔料等を分散させることができる。得られた混合液は、必要に応じて濾過処理を行ってもよい。
【0092】
このようにして得られた塗膜形成用組成物は、ガラス等の基板上への優れた位相差値を有する塗膜の形成に好適に用いることができる。したがって、優れた位相差値を有するカラーフィルターの製造に好適に用いることができる。
【0093】
〔カラーフィルター〕
本発明の塗膜形成用組成物を基板上に塗布した後、必要に応じて、光硬化、現像を行い、塗膜を得ることによりカラーフィルターを製造することができる。
前記塗膜形成用組成物としては、本発明の塗膜形成用組成物であってもよいし、市販の塗膜形成用組成物に本発明の顔料微粒子を添加したものであってもよい。
【0094】
本発明においては、本発明の塗膜形成用組成物を基板に塗布する方法としては、特に限定はなく、スピンコート法、スリット法等が利用できる。
【0095】
基板上に本発明の塗膜形成用組成物による塗膜を形成する場合、該塗膜の厚み(プリベーク処理後)としては、一般に0.3~5.0μmであり、望ましくは0.5~4.0μm、最も望ましくは0.5~3.0μmである。
また、固体撮像素子用のカラーフィルターの場合であれば、塗膜の厚み(プリベーク処理後)は、0.5~5.0μmの範囲が好ましい。
【0096】
〔プリベーク〕
前述のようにして、基板上に本発明の塗膜形成用組成物の塗布膜が形成された後には、プリベークが行われる。
なお、必要によっては、プリベーク前に真空処理を施すこともできる。
真空乾燥の条件は、真空度が、通常、0.1~1.0torr(13~133Pa)、好ましくは0.2~0.5torr(27~67Pa)程度である。
また、プリベーク処理は、ホットプレート、オーブン等を用いて50~140℃の温度範囲で、好ましくは70~110℃程度であり、10~300秒の条件にて行なうことができる。なお、プリベーク処理には、高周波処理などを併用してもよい。高周波処理は単独でも使用可能である。
【0097】
プリベーク後、必要に応じて、パターン露光及び現像処理をした後に、通常、100℃~250℃の加熱処理(ポストベーク)を行なう。このポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱であり、200℃~250℃の加熱(ハードベーク)で行われることが好ましい。
このポストベークは、現像後の塗膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式或いはバッチ式で行うことができる。
【0098】
上記の工程を順次行うことで、本発明のカラーフィルターを製造することができる。
また、上記の工程を所望の色相数に合わせて各色毎(3色或いは4色)に順次繰り返し行なうことにより、複数色の着色された硬化膜(着色パターン)が形成されてなるカラーフィルターを作製することができる。
【実施例0099】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本願の発明はこれらの
実施例のみに限定されるものではない。
【0100】
実施例、比較例で使用した原料、装置は以下のものである。下記以外の原料については、市販品を用いた。
【0101】
・DPP顔料
C.I.ピグメントレッド291(CINIC Chemicals社製、Cinilex DPP Red MT-CF)
【0102】
・顔料誘導体1
水100重量部に塩化シアヌル18.4重量部と塩化シアヌルの1個の塩素原子と反応する量のオルタニル酸(2-アミノベンゼンスルホン酸)17.3重量部とを加え、10℃で1時間反応させた。得られた反応物に、この反応物の2個の塩素原子と反応する量の5-アミノ-2-ベンズイミダゾリノン29.8重量部を加え、85℃で1時間反応させた。得られた反応物を濾取し、得られた残渣を水洗した後、100℃の恒温槽に一晩静置して乾燥させて、顔料誘導体1 44.7重量部を得た。
【0103】
・顔料誘導体2
反応容器に硫酸(一級、95%)740重量部を入れ、15℃以下に冷却した。続いて、パラホルムアルデヒド(94%)4重量部、4-アミノフタルイミド20.3重量部の順に、20℃を超えないように加えた後、22.5℃に昇温した。22.5℃、170rpmにて1時間撹拌し、反応させた。反応液は褐色透明であった。15℃以下に冷却した後、C.I.ピグメントオレンジ73(CINIC Chemicals社製、Cinilex DPP Orange SJ1C)40.1重量部を20℃を超えないように加えた後、30℃に昇温した。30℃、200rpmにて3時間撹拌し、反応させた。反応液は濃赤紫色であった。反応液を氷水(純水:氷=1:1(重量比))8200重量部にゆっくり注いだ。30分撹拌した後、排出液を濾過し、純水で水洗し、中間体化合物の水ペースト得た。
ジアゾ化槽に中間体化合物の水ペースト685重量部(固形分13.5%)、純水3000重量部を投入し、60rpmにて一晩撹拌した。35%塩酸590重量部を添加し、5分以上撹拌後、氷を加えて液温を0~2.5℃に調整した。亜硝酸ソーダ100重量部を純水180重量部に溶解させて添加し、液温を0~2.5℃に保ちながら1時間撹拌した。スルファミン酸21重量部を純水160重量部に溶解させて添加し、液温を0~2.5℃に保ちながら30分撹拌した。この時のジアゾ化液のpHは0.88であった。
カップラー槽に純水6000重量部、30%苛性ソーダ482重量部を投入し、5分以上撹拌後、1-(3-スルホフェニル)-3-メチル-5(4H)-ピラゾロン400重量部を加えて10分以上撹拌した。酢酸ソーダ610重量部を60℃純水1200重量部に溶解させて添加し、30分以上撹拌後、液温を20℃に調整した。この時のpHは12.60であった。
次に、このカップラー槽に上記のジアゾ化液を加えた。昇温速度1℃/分で20℃まで昇温し、1時間撹拌後、昇温速度1℃/分で60℃まで昇温し、さらに1時間撹拌した。反応後のpHは4.62であった。35%塩酸でpH2.0以下に調整し、30分撹拌した。得られた反応物を濾取し、得られた残渣を水洗した後、80℃の恒温槽に一晩静置して乾燥させて、顔料誘導体2 860重量部を得た。
得られた顔料誘導体2は、バンタムミルにより粉砕して用いた。
【0104】
・顔料誘導体3
濃硫酸(98%)630重量部中にC.I.ピグメントレッド255(BASF社製、Irgazin Scaret L 3550HD):35.0重量部とパラホルムアルデヒド:4.50重量部および4-アミノフタルイミド:24.7重量部とを添加し、30℃で5時間反応させた。次に、この反応液を冷水:3Lに排出し、濾過および水洗を行うことにより、4-アミノフタルイミドメチル基1個を導入した4-アミノフタルイミドメチルジケトピロロピロール系顔料誘導体の水ペースト:400重量部(固形分:11.2%)を得た。
次に、水:90.0重量部にオルタニル酸:3.90重量部と炭酸ナトリウム:1.20重量部を加えて溶解させ、5℃以下に冷却した。ここへ、塩化シアヌル:4.20重量部を加え、5℃で1時間反応させた。次に、上記の4-アミノフタルイミドメチル基を1個導入したDPP系顔料誘導体の水ペースト:58.0重量部(固形分:11.2%)を加え、85℃で1時間反応させた。反応後、吸引濾過し、イオン交換水で洗浄した。得られた水ペースト:86.0重量部を100℃で20時間乾燥して、顔料誘導体3 8.03重量部を得た。
【0105】
・顔料誘導体4
C.I.ピグメントイエロー138(BASF社製、Paliotol Gelb K0961HD)20重量部と、98%硫酸、300重量部とを500mlセパラブルフラスコに入れ、120℃で5時間反応させてフタルイミドキノフタロン化合物のスルホン化物を得た。反応混合物を、撹拌しながら水3000部中に注ぎ、フタルイミドキノフタロン化合物のスルホン化物を析出させて、30分撹拌した後、濾過、水洗を3回繰り返した。得られたウェットケーキを1%希硫酸300重量部で洗浄後、濾過し水洗した。熱風乾燥機中で乾燥させ、54重量部の顔料誘導体4を得た。
【0106】
・分散剤「LP N22956」
BYK-LP N22956(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
【0107】
・分散樹脂「SPCN-100」
リポキシ(登録商標)SPCN-100(昭和電工株式会社製)
【0108】
・溶媒「25%TMAH」
「TMAH 25%」(昭和電工株式会社製)
【0109】
・マイクロリアクター
「ジグザグストライプ型マイクロリアクター」(マックエンジニアリング株式会社)
2つの導入口と、1つの排出口と、を有する。
【0110】
(実施例1:顔料微粒子1の製造)
マイクロリアクターを用いて以下の手順(フロー方式)で顔料微粒子を作製した。
DPP顔料30重量部と25%TMAH98.08重量部及びNMP121.92重量部を混合して、室温で2000rpmにて60分撹拌後、氷浴で5℃以下まで冷却して良溶媒を作製した。
次いで、氷浴で5℃以下に冷却した40%酢酸水溶液(貧溶媒)250重量部を準備し、氷浴で5℃以下に冷却した純水(排出液)2500重量部を準備した。
排出液を1000rpmにて撹拌しながら、マイクロリアクターの第1の導入口へ良溶媒を50mL/分の速度で送液を開始すると同時に、マイクロリアクターの第2の導入口へ貧溶媒を50mL/分の速度で送液を開始した。マイクロリアクターの流路を通過した混合液は、排出口から排出液へ排出された。
良溶媒及び貧溶媒の全量を送液し、排出口からの排出が終った後、排出液を1000rpmにて30分間撹拌して、顔料微粒子を析出させた。
析出した顔料微粒子を濾取し、水洗後、乾燥して、顔料微粒子1を得た。
【0111】
(実施例2:顔料微粒子2の製造)
貧溶媒として分散剤(LP N22956)11.51重量部及び40%酢酸水溶液238.49重量部の混合液を用い、かつ、排出液として1%アンモニア水(1%水酸化アンモニウム水溶液)2500重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、顔料微粒子2を得た。
【0112】
(実施例3:顔料微粒子3の製造)
貧溶媒として分散剤(LP N22956)の濃度を2倍にした混合液を用いた以外は、実施例2と同様にして、顔料微粒子3を得た。
【0113】
(実施例4:顔料微粒子4の製造)
DPP顔料28.50重量部、顔料誘導体1 1.50重量部、25%TMAH97.18重量部及びNMP122.82重量部を混合して、室温で2000rpmにて60分撹拌後、氷浴で5℃以下まで冷却して良溶媒を作製した。
この良溶媒を用いた以外は、実施例1と同様にして、顔料微粒子4を得た。
【0114】
(実施例5:顔料微粒子5の製造)
DPP顔料27.00重量部、顔料誘導体1 3.00重量部、25%TMAH96.28重量部及びNMP123.72重量部を混合して、室温で2000rpmにて60分撹拌後、氷浴で5℃以下まで冷却して良溶媒を作製した。
この良溶媒を用いた以外は、実施例4と同様にして、顔料微粒子5を得た。
【0115】
(実施例6:顔料微粒子6の製造)
DPP顔料27.00重量部、顔料誘導体1 1.50重量部、顔料誘導体2 1.50重量部、25%TMAH94.88重量部及びNMP125.12重量部を混合して、室温で2000rpmにて60分撹拌後、氷浴で5℃以下まで冷却して良溶媒を作製した。
この良溶媒を用いた以外は、実施例1と同様にして、顔料微粒子6を得た。
【0116】
(実施例7:顔料微粒子7の製造)
貧溶媒としてLP N22956 11.51重量部及び40%酢酸水溶液238.49重量部の混合液を用い、かつ、排出液として1%アンモニア水2500重量部を用いた以外は、実施例4と同様にして、顔料微粒子7を得た。
【0117】
(実施例8:顔料微粒子8の製造)
貧溶媒としてLP N22956の濃度を2倍にした混合液を用いた以外は、実施例7と同様にして、顔料微粒子8を得た。
【0118】
(実施例9:顔料微粒子9の製造)
以下の手順(バッチ方式)で顔料微粒子を作製した。
DPP顔料28.50重量部、顔料誘導体1 1.50重量部、25%TMAH97.18重量部及びNMP122.82重量部を混合して、室温で2000rpmにて60分撹拌後、氷浴で5℃以下まで冷却して良溶媒を作製した。
次に、氷浴で5℃に冷却した4%酢酸水溶液(排出液)2500重量部を準備した。
排出液を1000rpmにて撹拌しながら、排出液中へ良溶媒を50mL/分の速度で送液した。
良溶媒の全量を送液後、排出液を氷浴中で1000rpmにて30分撹拌して、顔料微粒子を析出させた。
析出した顔料微粒子を濾取し、水洗後、乾燥して、顔料微粒子9を得た。
【0119】
(実施例10:顔料微粒子10の製造)
良溶媒を送液中の排出液の撹拌条件を2000rpmにした以外は、実施例9と同様にして、顔料微粒子10を得た。
【0120】
(比較例1:比較顔料微粒子1の製造)
ソルトミリング法を用いて以下の手順で顔料微粒子を作製した。
双腕型混練機(モリヤマ製、5LニーダーΣ型、以下、ニーダーという)に、DPP顔料300重量部、芒硝3000重量部、エチレングリコール760重量部を投入して、ニーダー中の混練物の温度が40℃になるように温度コントロールをしながら7時間混練した。
次に、この混合物にLP N22956 115重量部を添加混合し、1時間混練した。
混練物をタンク内に移し、12000重量部の50~60℃の脱イオン水を投入し、撹拌装置で回転数200rpmにて30分間撹拌し、混練物を分散させた。
分散液を濾過し、脱イオン水で水洗した。水洗後の残渣を乾燥し、得られた乾燥ブロックを粉砕して、比較顔料微粒子1を得た。
【0121】
(比較例2:比較顔料微粒子2の製造)
DPP顔料300重量部の代わりに、DPP顔料を285重量部と、顔料誘導体1を15重量部使用した以外は、比較例1と同様にして、比較顔料微粒子2を得た。
【0122】
(比較例3:比較顔料微粒子3の製造)
以下の点が異なる以外は、比較例1と同様にして、比較顔料微粒子3を得た。
・DPP顔料300重量部の代わりに、DPP顔料を285重量部と、顔料誘導体1を15重量部使用した。
・7時間の混練後に「LP N22956の添加」及び「その後の1時間の混練」を実施しない。
・タンク内での撹拌は、200rpmにて15分間に変更し、この撹拌後、35%塩酸を用いて分散液のpHを2.3~2.5に調整し、さらに30分間撹拌した。
【0123】
(比較例4:比較顔料微粒子4の製造)
以下の点が異なる以外は、比較例1と同様にして、比較顔料微粒子4を得た。
・DPP顔料300重量部の代わりに、DPP顔料を270重量部と、顔料誘導体1を15重量部と、顔料誘導体2を15重量部使用した。
・7時間の混練後に「LP N22956の添加」及び「その後の1時間の混練」を実施しない。
・タンク内での撹拌は、200rpmにて15分間に変更し、この撹拌後、35%塩酸を用いて分散液のpHを2.3~2.5に調整し、さらに30分間撹拌した。
【0124】
(試験例1:顔料微粒子の物性)
顔料微粒子1~10及び比較顔料微粒子1~4について、株式会社リガク社製SmartLabを用いて以下の条件で粉末X線回折(XRD)測定を行い、結晶化度及び結晶子サイズを以下のようにして測定した。得られた結果を表1に示す。
(XRD測定条件)
ステップサイズ:0.01°
スキャンスピード:8°/分
測定領域(2θ):5°~35°
X線源:CuKα
X線出力:40kw 30mA
検出器:半導体検出器
入射スリット:1/4deg
入射側ソーラースリット:5deg
長手制限スリット:10mm
受光スリット1:15mm
受光スリット2:Open
受光側ソーラースリット:5deg
(結晶化度)
粉末X線回折装置の付属ソフトウェア(「SmartLab Studio II」)にて、ピーク分離による結晶化度算出法で結晶化度を算出した。なお、ピーク分離には対称擬Voigt関数を用いた。
(結晶子サイズ)
ソフトウェア「ピークサーチ」(株式会社リガク社製)を用いて、以下の条件でのX線回折パターンの補正を行い、補正データを基にシェラーの式による結晶子サイズを算出した。
(X線回折パターンの補正条件)
平滑化点数:99
バックグラウンド除去検索幅:0.01
バックグラウンド除去強度閾値:0.10
Kα2除去比率:0.50
なお、シェラーの式におけるシェラー定数Kは0.94、X線波長λは1.54184Åを用いた。
【0125】
【0126】
表1に示す結果より、ボトムアップ法で作製された顔料微粒子1~10は、いずれも結晶化度が50%以下であり、X線回折パターンにより算出される結晶格子面のうち2θ=24.5°±0.3°のピークに対応する面方向の結晶子サイズが140Åを超えるものであった。
これに対して、ソルトミリング法で作製された比較顔料微粒子1~4は、結晶化度が60%以上であった。
【0127】
(実施例11:顔料分散体の製造)
顔料微粒子1、4、5、6、9、10を用いて、顔料分散体を以下のようにして作製した。
すなわち、顔料微粒子 7.89重量部、
顔料誘導体3 0.38重量部、
顔料誘導体2 0.10重量部、
顔料誘導体4 1.14重量部、
分散剤(LP N22956)7.29重量部、
分散樹脂(SPCN-100)13.29重量部、
溶媒(PM)4.75重量部
溶媒(PMA)15.17重量部及びφ0.8mmジルコニアビーズ200重量部を容器に供し、ペイントシェイカーで30分間分散処理(前処理)を行った。
次いで、分散処理液にPMA9.38重量部を加えて希釈した。
φ0.8mmジルコニアビーズを除去したミルベース30重量部とφ0.1mmジルコニアビーズ120重量部とを別の容器に供し、ペイントシェイカーで60分間分散処理(本分散処理)を行った。
分散処理液にPMA10重量部を加えて希釈した後、φ0.1mmジルコニアビーズを除去して顔料分散体を回収した。
顔料微粒子1、4、5、6、9、10から作製した分散体をそれぞれ、顔料分散体1、4、5、6、9、10とした。
【0128】
(実施例12:顔料分散体の製造)
以下の材料を用いた以外は実施例11と同様にして、顔料分散体を作製した。
・顔料微粒子2、7を用いた。
・顔料微粒子 9.07重量部
・顔料誘導体3 0.38重量部
・顔料誘導体2 0.10重量部
・顔料誘導体4 1.14重量部
・分散剤(LP N22956)4.27重量部
・分散樹脂(SPCN-100)13.29重量部
・溶媒(PM)4.75重量部
・溶媒(PMA)17.01重量部
なお、前処理のPMA量は9.38重量部、本分散処理のPMA量は10.00重量部とし、顔料微粒子2、7から作製した分散体をそれぞれ、顔料分散体2、7とした。
【0129】
(実施例13:顔料分散体の製造)
以下の材料を用いた以外は実施例11と同様にして、顔料分散体を作製した。
・顔料微粒子3、8を用いた。
・顔料微粒子10.25重量部
・顔料誘導体3 0.38重量部
・顔料誘導体2 0.10重量部
・顔料誘導体4 1.14重量部
・分散剤(LP N22956)1.23重量部
・分散樹脂(SPCN-100)13.29重量部
・溶媒(PM)4.75重量部
・溶媒(PMA)18.87重量部
なお、前処理のPMA量は9.38重量部、本分散処理のPMA量は10.00重量部とし、顔料微粒子3、8から作製した分散体をそれぞれ、顔料分散体3、8とした。
【0130】
(比較例5:顔料分散体の製造)
比較顔料微粒子1、2を用いた以外は、実施例12と同様にして、比較顔料分散体1、2を作製した。
【0131】
(比較例6:顔料分散体の製造)
比較顔料微粒子3、4を用いた以外は、実施例11と同様にして、比較顔料分散体3、4を作製した。
【0132】
なお、顔料微粒子の表面処理に用いた分散剤と、分散処理に用いた分散剤の合計重量が同じになるようにした。
【0133】
(試験例2:硬化膜の位相差値)
顔料分散体1~10及び比較顔料分散体1~4をそれぞれ5μシリンジで濾過した後、その濾過液10.00重量部にSPCN-100 1.26重量部及びPMA0.74重量部を添加して混合して14種類の塗膜形成用組成物を作製した。
これらの塗膜形成用組成物を用い、以下の手順で硬化膜を作製した。
【0134】
(硬化膜の作製)
各塗膜形成用組成物を、スピンコーター(ミカサ株式会社製、スピンコーターMS-150A)を用いて、厚さ1.1mm、100mm角のガラス板に塗布した。この際、各塗膜形成用組成物について、色度x(後述するポストベーク後の値)が異なる3つの塗膜が形成されるように塗布した3枚の塗布板を作製した。即ち、スピンコーターの回転数を変化させて厚みを変え、3枚のうちの1枚の色度xが必ず0.6500より小さい値となるように、他の1枚の色度xが必ず0.6500より大きい値となるようにした。
これらの塗布板を90℃で2分30秒間乾燥した(プリベーク)後、230℃で30分間乾燥し(ポストベーク)、ガラス板上に形成された硬化膜を得た。
【0135】
各硬化膜が形成されたガラス板(塗布板)について、非接触膜厚計(フィルメトリクス株式会社製、F20-EXR)を用いて、膜厚及び屈折率を測定した。
次に、各塗布板について、位相差測定装置(KOBRA-WR、王子計測機器株式会社製)で膜厚及び屈折率を入力し、測定波長626.9nmの入射角が40°の位相差値(単位:nm)を測定した。3枚の塗布板の測定値から近似直線(検量線)を求め、色度xが0.6500の時の位相差値を各硬化膜の位相差値とした。
【0136】
【0137】
表2に示す結果より、顔料分散体1~10から作製された硬化膜は、いずれも位相差値の絶対値が12以下と低いのに対して、比較顔料分散体1~4から作製された硬化膜の位相差値の絶対値が7.1を超えており、位相差値の点で顕著な差があることがわかった。したがって、顔料分散体1~10から作製された硬化膜は、従来のカラーフィルターの硬化膜に比べて、位相差値、特に赤色の着色層における位相差値が顕著に低下したものであり、画像のコントラストを良化することが可能となることがわかった。