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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073006
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】動力伝達装置およびロボット
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/028 20120101AFI20240522BHJP
   F16H 1/32 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
F16H57/028
F16H1/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183958
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000107147
【氏名又は名称】ニデックドライブテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】奥田 俊平
(72)【発明者】
【氏名】杉下 健治
(72)【発明者】
【氏名】井原 大輔
【テーマコード(参考)】
3J027
3J063
【Fターム(参考)】
3J027FA12
3J027FB32
3J027GA01
3J027GB03
3J027GC02
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J063AA27
3J063AB12
3J063AB15
3J063AC01
3J063BA09
3J063XB01
3J063XB02
3J063XC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】動力伝達装置の駆動時に発生する騒音および振動を低減できる技術を提供する。
【解決手段】力軸と太陽ギアは、中心軸周りに入力回転速度で回転する。遊星ギアは、中心軸を中心とする第1径方向外側から太陽ギアに噛み合い、自転軸を中心として自転する。クランク軸は、遊星ギアに接続される固定部と、軸方向に柱状に延びる柱状部と、一部が柱状部よりも外側に配置される偏心部とを有し、遊星ギアの自転に伴い自転する。外歯歯車は、複数の偏心部が挿入される複数の挿入部と、外歯を有する。内歯歯車は、外歯歯車の外歯に第1径方向外側から噛み合う。キャリアは、複数のクランク軸を自転可能に支持する。キャリアは、内歯歯車に対する外歯歯車の揺動によって、中心軸周りに出力回転速度で回転する。第1要素は、遊星ギアに固定される。第1要素の振動の減衰率は、遊星ギアの振動の減衰率よりも高い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸の回転を減速して出力可能な動力伝達装置であって、
中心軸を中心として入力回転速度で回転可能な、前記入力軸と、
前記入力軸とともに前記中心軸を中心として前記入力回転速度で回転可能な、太陽ギアと、
前記太陽ギアの周囲に配置され、それぞれ、前記中心軸を中心とする第1径方向外側から前記太陽ギアに噛み合い、前記太陽ギアの回転に伴い自転軸を中心として自転可能な、複数の遊星ギアと、
それぞれ、前記遊星ギアに接続される固定部と、前記固定部から軸方向一方側へ柱状に延びる柱状部と、少なくとも一部が前記柱状部よりも前記自転軸を中心とする第2径方向の外側に配置される偏心部と、を有し、前記遊星ギアの自転に伴い前記自転軸を中心として自転可能な、複数のクランク軸と、
前記複数の偏心部が軸方向に挿入される複数の挿入部を有し、径方向外側面に形成された外歯を有する、外歯歯車と、
前記中心軸を中心とする環状であり、前記外歯に第1径方向外側から噛み合う、内歯歯車と、
前記複数のクランク軸をそれぞれ自転可能に支持する、キャリアと、
前記遊星ギアに固定される、第1要素と、
を有し、
前記内歯歯車と前記キャリアとの少なくとも一方は、前記内歯歯車に対する前記外歯歯車の揺動によって、前記中心軸を中心として出力回転速度で回転可能であり、
前記第1要素の振動の減衰率は、前記遊星ギアの振動の減衰率よりも高い、動力伝達装置。
【請求項2】
入力軸の回転を減速して出力可能な動力伝達装置であって、
中心軸を中心として入力回転速度で回転可能な、前記入力軸と、
前記入力軸とともに前記中心軸を中心として前記入力回転速度で回転可能な、太陽ギアと、
前記太陽ギアの周囲に配置され、それぞれ、前記中心軸を中心とする第1径方向外側から前記太陽ギアに噛み合い、前記太陽ギアの回転に伴い自転軸を中心として自転可能な、複数の遊星ギアと、
それぞれ、前記遊星ギアに接続される固定部と、前記固定部から軸方向一方側へ柱状に延びる柱状部と、少なくとも一部が前記柱状部よりも前記自転軸を中心とする第2径方向の外側に配置される偏心部と、を有し、前記遊星ギアの自転に伴い前記自転軸を中心として自転可能な、複数のクランク軸と、
前記複数の偏心部が軸方向に挿入される複数の挿入部を有し、径方向外側面に形成された外歯を有する、外歯歯車と、
前記中心軸を中心とする環状であり、前記外歯に第1径方向外側から噛み合う、内歯歯車と、
前記複数のクランク軸をそれぞれ自転可能に支持する、キャリアと、
を有し、
前記内歯歯車と前記キャリアとの少なくとも一方は、前記内歯歯車に対する前記外歯歯車の揺動によって、前記中心軸を中心として出力回転速度で回転可能であり、
前記遊星ギアは、前記遊星ギアの振動を抑制するための第1要素を含む、動力伝達装置。
【請求項3】
入力軸の回転を減速して出力可能な動力伝達装置であって、
中心軸を中心として入力回転速度で回転可能な、前記入力軸と、
前記入力軸とともに前記中心軸を中心として前記入力回転速度で回転可能な、太陽ギアと、
前記太陽ギアの周囲に配置され、それぞれ、前記中心軸を中心とする第1径方向外側から前記太陽ギアに噛み合い、前記太陽ギアの回転に伴い自転軸を中心として自転可能な、複数の遊星ギアと、
それぞれ、前記遊星ギアに接続される固定部と、前記固定部から軸方向一方側へ柱状に延びる柱状部と、少なくとも一部が前記柱状部よりも前記自転軸を中心とする第2径方向の外側に配置される偏心部と、を有し、前記遊星ギアの自転に伴い前記自転軸を中心として自転可能な、複数のクランク軸と、
前記複数の偏心部が軸方向に挿入される複数の挿入部を有し、径方向外側面に形成された外歯を有する、外歯歯車と、
前記中心軸を中心とする環状であり、前記外歯に第1径方向外側から噛み合う、内歯歯車と、
前記複数のクランク軸をそれぞれ自転可能に支持する、キャリアと、
前記遊星ギアに直接的に接触する、第1要素と、
を有し、
前記内歯歯車と前記キャリアとの少なくとも一方は、前記内歯歯車に対する前記外歯歯車の揺動によって、前記中心軸を中心として出力回転速度で回転可能であり、
前記第1要素は、前記クランク軸とは非接触であり、かつ、前記第1要素の振動の減衰率は、前記遊星ギアの振動の減衰率よりも高い、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の動力伝達装置であって、
前記第1要素は、前記遊星ギアの前記軸方向一方側の面および軸方向他方側の面のうち、少なくともいずれかの面に配置される、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項4に記載の動力伝達装置であって、
前記第1要素は、前記遊星ギアの前記軸方向一方側の面および前記軸方向他方側の面にそれぞれ配置される、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項4に記載の動力伝達装置であって、
前記第1要素は、前記遊星ギアの前記軸方向一方側の面および前記軸方向他方側の面のうち、前記軸方向他方側の面のみに配置される、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項4に記載の動力伝達装置であって、
前記遊星ギアにおける第2径方向の外端と前記第1要素における第2径方向の外端との距離は、前記遊星ギアにおける第2径方向の内端と前記第1要素における第2径方向の内端との距離よりも短い、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項6に記載の動力伝達装置であって、
前記遊星ギアは、軸方向他方側の面において、軸方向一方側へ凹む凹部を有し、
前記第1要素は、前記凹部に配置される、動力伝達装置。
【請求項9】
請求項4に記載の動力伝達装置であって、
前記遊星ギアは、軸方向の内側へ凹む凹部を有し、
前記第1要素は、前記凹部に配置される、動力伝達装置。
【請求項10】
請求項1または請求項3に記載の動力伝達装置であって、
前記遊星ギアは、軸方向に貫通する貫通孔を有し、
前記第1要素は、前記貫通孔に配置される、動力伝達装置。
【請求項11】
請求項10に記載の動力伝達装置であって、
前記第1要素は、前記貫通孔に圧入されることによって、前記遊星ギアに固定されている、動力伝達装置。
【請求項12】
請求項10に記載の動力伝達装置であって、
前記遊星ギアは、前記自転軸を中心とする第2周方向に互いに等間隔で設けられる、複数の前記貫通孔を有し、
前記第1要素は、前記複数の貫通孔のそれぞれに配置される、動力伝達装置。
【請求項13】
請求項2に記載の動力伝達装置であって、
前記第1要素と、前記遊星ギアとは単一部材である、動力伝達装置。
【請求項14】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
前記第1要素は、73.0重量%のMnと、20.0重量%のCuと、5.0重量%のNiと、2.0重量%のFeと、を含む合金により形成されている、動力伝達装置。
【請求項15】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
前記第1要素は、双晶型制振合金により形成されている、動力伝達装置。
【請求項16】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の動力伝達装置を有する、ロボット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置およびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、減速機等の動力伝達装置を用いた駆動装置が知られている。この種の動力伝達装置は、モータの回転を減速させつつトルクを増大させて、例えば、ロボットへ出力する。ロボットは、動力伝達装置から出力された動力で、部品の搬送等の作業を行う(特許文献1)。
【特許文献1】特開2021-189266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記公報には、駆動装置と、駆動装置が取り付けられた車体と、を備える搬送台車が開示されている。また、駆動装置は、モータと、減速機およびホイールを備える駆動ホイールと、を有する。減速機は、モータから入力される駆動回転を減速して、ホイールに出力して回転させることによって、搬送台車を走行させる。
【0004】
また、減速機およびホイールは、カバーに収納される。カバーは、吸音層と遮音層とが積層された構成を有する。これにより、駆動ホイールの駆動時に、減速機における騒音の発生源であるセンターギアとスパーギアとの噛み合い部分で発生した騒音を、カバーの外側に対して低減して、静音化することが可能となる。しかしながら、噛み合い部分からは、騒音のみでなく、振動も発生する。つまり、従来の構造においては、噛み合い部分における騒音や振動自体を低減できないという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、動力伝達装置の駆動時に発生する騒音および振動を低減できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の例示的な第1発明は、入力軸の回転を減速して出力可能な動力伝達装置であって、中心軸を中心として入力回転速度で回転可能な、前記入力軸と、前記入力軸とともに前記中心軸を中心として前記入力回転速度で回転可能な、太陽ギアと、前記太陽ギアの周囲に配置され、それぞれ、前記中心軸を中心とする第1径方向外側から前記太陽ギアに噛み合い、前記太陽ギアの回転に伴い自転軸を中心として自転可能な、複数の遊星ギアと、それぞれ、前記遊星ギアに接続される固定部と、前記固定部から軸方向一方側へ柱状に延びる柱状部と、少なくとも一部が前記柱状部よりも前記自転軸を中心とする第2径方向の外側に配置される偏心部と、を有し、前記遊星ギアの自転に伴い前記自転軸を中心として自転可能な、複数のクランク軸と、前記複数の偏心部が軸方向に挿入される複数の挿入部を有し、径方向外側面に形成された外歯を有する、外歯歯車と、前記中心軸を中心とする環状であり、前記外歯に第1径方向外側から噛み合う、内歯歯車と、前記複数のクランク軸をそれぞれ自転可能に支持する、キャリアと、前記遊星ギアに固定される、第1要素と、を有し、前記内歯歯車と前記キャリアとの少なくとも一方は、前記内歯歯車に対する前記外歯歯車の揺動によって、前記中心軸を中心として出力回転速度で回転可能であり、前記第1要素の振動の減衰率は、前記遊星ギアの振動の減衰率よりも高い。
【0007】
本願の例示的な第2発明は、入力軸の回転を減速して出力可能な動力伝達装置であって、中心軸を中心として入力回転速度で回転可能な、前記入力軸と、前記入力軸とともに前記中心軸を中心として前記入力回転速度で回転可能な、太陽ギアと、前記太陽ギアの周囲に配置され、それぞれ、前記中心軸を中心とする第1径方向外側から前記太陽ギアに噛み合い、前記太陽ギアの回転に伴い自転軸を中心として自転可能な、複数の遊星ギアと、それぞれ、前記遊星ギアに接続される固定部と、前記固定部から軸方向一方側へ柱状に延びる柱状部と、少なくとも一部が前記柱状部よりも前記自転軸を中心とする第2径方向の外側に配置される偏心部と、を有し、前記遊星ギアの自転に伴い前記自転軸を中心として自転可能な、複数のクランク軸と、前記複数の偏心部が軸方向に挿入される複数の挿入部を有し、径方向外側面に形成された外歯を有する、外歯歯車と、前記中心軸を中心とする環状であり、前記外歯に第1径方向外側から噛み合う、内歯歯車と、前記複数のクランク軸をそれぞれ自転可能に支持する、キャリアと、を有し、前記内歯歯車と前記キャリアとの少なくとも一方は、前記内歯歯車に対する前記外歯歯車の揺動によって、前記中心軸を中心として出力回転速度で回転可能であり、前記遊星ギアは、前記遊星ギアの振動を抑制するための第1要素を含む。
【0008】
本願の例示的な第3発明は、入力軸の回転を減速して出力可能な動力伝達装置であって、中心軸を中心として入力回転速度で回転可能な、前記入力軸と、前記入力軸とともに前記中心軸を中心として前記入力回転速度で回転可能な、太陽ギアと、前記太陽ギアの周囲に配置され、それぞれ、前記中心軸を中心とする第1径方向外側から前記太陽ギアに噛み合い、前記太陽ギアの回転に伴い自転軸を中心として自転可能な、複数の遊星ギアと、それぞれ、前記遊星ギアに接続される固定部と、前記固定部から軸方向一方側へ柱状に延びる柱状部と、少なくとも一部が前記柱状部よりも前記自転軸を中心とする第2径方向の外側に配置される偏心部と、を有し、前記遊星ギアの自転に伴い前記自転軸を中心として自転可能な、複数のクランク軸と、前記複数の偏心部が軸方向に挿入される複数の挿入部を有し、径方向外側面に形成された外歯を有する、外歯歯車と、前記中心軸を中心とする環状であり、前記外歯に第1径方向外側から噛み合う、内歯歯車と、前記複数のクランク軸をそれぞれ自転可能に支持する、キャリアと、前記遊星ギアに直接的に接触する、第1要素と、を有し、前記内歯歯車と前記キャリアとの少なくとも一方は、前記内歯歯車に対する前記外歯歯車の揺動によって、前記中心軸を中心として出力回転速度で回転可能であり、前記第1要素は、前記クランク軸とは非接触であり、かつ、前記第1要素の振動の減衰率は、前記遊星ギアの振動の減衰率よりも高い。
【発明の効果】
【0009】
本願の例示的な第1発明から第3発明によれば、動力伝達装置の駆動時に発生する騒音および振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ロボットの概要図である。
図2図2は、動力伝達装置の斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係る動力伝達装置の縦断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る太陽ギア、複数の遊星ギア、および複数のクランク軸の横断面図である。
図5図5は、第1実施形態に係るクランク軸、外歯歯車、軸受、内歯歯車、およびキャリアの横断面図である。
図6図6は、第1実施形態に係る入力軸、太陽ギア、遊星ギア、クランク軸、および第1要素の部分縦断面図である。
図7図7は、第1実施形態に係る遊星ギア、クランク軸、および第1要素の平面図である。
図8図8は、第1変形例に係る入力軸、太陽ギア、遊星ギア、クランク軸、および第1要素の部分縦断面図である。
図9図9は、第2実施形態に係る入力軸、太陽ギア、遊星ギア、クランク軸、および第1要素の部分縦断面図である。
図10図10は、第3実施形態に係る入力軸、太陽ギア、遊星ギア、クランク軸、および第1要素の部分縦断面図である。
図11図11は、第3実施形態に係る遊星ギア、クランク軸、および第1要素の平面図である。
図12図12は、第4実施形態に係る入力軸、太陽ギア、遊星ギア、およびクランク軸の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
<1.第1実施形態>
<1-1.ロボットについて>
図1は、第1実施形態に係る動力伝達装置1を搭載したロボット100の概要図である。ロボット100は、例えば、工業製品の製造ラインにおいて、部品の搬送、加工、組立等の作業を行う、いわゆる産業用ロボットである。図1に示すように、ロボット100は、動力伝達装置1を有する。これにより、後述するメカニズムによって、騒音や振動が抑制された動力伝達装置1を有するロボット100を実現できる。本実施形態においては、ロボット100は、ベースフレーム101、アーム102、モータ103、および動力伝達装置1を有する。
【0013】
アーム102は、ベースフレーム101に対して、回動可能に支持されている。モータ103および動力伝達装置1は、ベースフレーム101とアーム102との間の関節部に、組み込まれている。モータ103に駆動電流が供給されると、モータ103から回転運動が出力される。また、モータ103から出力される回転運動は、動力伝達装置1により減速されて、アーム102へ伝達される。これにより、ベースフレーム101に対してアーム102が、減速後の速さで回動する。
【0014】
<1-2.動力伝達装置の構成>
続いて、動力伝達装置1の全体の構造について、説明する。
【0015】
なお、以下では、後述する動力伝達装置の中心軸と平行な方向を「軸方向」、中心軸に直交する方向を「第1径方向」、中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「第1周方向」、とそれぞれ称する。また、後述する図3から図5において「第1径方向」を「r1」と表示し、図4および図5において「第1周方向」を「c1」と表示する。また、後述する遊星ギアおよびクランク軸の自転軸に直交する方向を「第2径方向」、自転軸を中心とする円弧に沿う方向を「第2周方向」、とそれぞれ称する。また、後述する図3図4図6図8から10,および図12において「第2径方向」を「r2」と表示し、図11において「第2周方向」を「c2」と表示する。
【0016】
また、以下では、後述する図3図6図8から10,および図12において、動力伝達装置の中心軸の方向、ならびに遊星ギアおよびクランク軸の自転軸の方向を左右方向とし、左側を「軸方向一方側」、右側を「軸方向他方側」として、各部の形状や位置関係を説明する。また、後述する図3図6図8から10,および図12において、「軸方向一方側」を「a1」、および「軸方向他方側」を「a2」と表示する。ただし、この左右方向の定義により、本発明に係る動力伝達装置およびロボットの製造時および使用時の向きを限定する意図はない。また、本願において「平行な方向」とは、幾何学的に厳密に平行な場合に限定されない。つまり、ある方向と略平行である方向が、発明の効果を奏する程度に略平行な関係であればよい。また、本願において「直交する方向」とは、幾何学的に厳密に直交する場合に限定されない。つまり、ある方向と略直交である方向が、発明の効果を奏する程度に略直交となる関係であればよい。
【0017】
図2は、動力伝達装置1の斜視図である。ただし、図2では、後述する第1要素200の図示が省略されている。図3は、動力伝達装置1の縦断面図である。モータ103は、水平方向(図3における左右方向)に延びる図示を省略した中心軸に沿って配置される。モータ103の中心軸と、動力伝達装置1の中心軸91とは、互いに一致するものとする。モータ103は、ステータを含む静止部と、ロータを含む回転部とを有する。ステータに駆動電流が供給されると、ロータを含む回転部は、中心軸91を中心として、減速前の回転速度である入力回転速度N1で回転する。
【0018】
動力伝達装置1は、モータ103から得られる回転運動を減速させて、アーム102へ伝達する。動力伝達装置1は、偏心揺動型減速機として構成されている。より具体的には、動力伝達装置1は、入力部である後述する入力軸20の回転を減速して、出力部である後述する出力軸95を回転可能である。すなわち、動力伝達装置1は、入力軸20の回転を減速して出力可能である。そして、入力軸20は、モータ103の回転部に接続される。
【0019】
図2および図3に示すように、動力伝達装置1は、入力軸20と、太陽ギア30と、複数の遊星ギア40と、複数のクランク軸50と、複数の軸受55と、複数の外歯歯車60と、複数の軸受651と、複数の軸受652と、内歯歯車70と、キャリア80と、複数の軸受85と、複数の第1要素200と、を有する。本実施形態では、動力伝達装置1は、入力軸20と、太陽ギア30と、3つの遊星ギア40と、3つのクランク軸50と、6つの軸受55と、2つの外歯歯車60と、3つの軸受651と、3つの軸受652と、内歯歯車70と、キャリア80と、2つの軸受85と、3つの第1要素200と、を有する。すなわち、動力伝達装置1は、入力軸20と、太陽ギア30と、複数の遊星ギア40と、複数のクランク軸50と、外歯歯車60と、内歯歯車70と、キャリア80と、第1要素200と、を有する。
【0020】
入力軸20は、中心軸91を中心として軸方向に延びる部材である。上記のとおり、入力軸20は、モータ103の回転部に対して、相対回転不能に固定される。これにより、入力軸20は、モータ103の回転部とともに、回転可能である。すなわち、入力軸20は、中心軸91を中心として入力回転速度N1で回転可能である。
【0021】
太陽ギア30は、中心軸91と略同軸に配置されたギアである。太陽ギア30は、入力軸20の周囲に、相対回転不能に固定される。これにより、モータ103を駆動させると、入力軸20および太陽ギア30は、中心軸91を中心として入力回転速度N1で回転する。すなわち、太陽ギア30は、入力軸20とともに中心軸91を中心として入力回転速度N1で回転可能である。ただし、太陽ギア30と入力軸20とは、単一部材であってもよい。
【0022】
図4は、図3のA-A位置から見た太陽ギア30、複数の遊星ギア40、および複数のクランク軸50の横断面図である。すなわち、図4は、図3のA-A位置から見た太陽ギア30、3つの遊星ギア40、および3つのクランク軸50の横断面図である。図の煩雑化を避けるため、図4においては、断面を示すハッチングが省略されている。図4に示すように、太陽ギア30の外側面には、複数の外歯301が形成されている。複数の外歯301はそれぞれ、第1径方向外側へ向かって突出する。また、複数の外歯301は、第1周方向に沿って、一定のピッチで配列される。
【0023】
遊星ギア40は、太陽ギア30の周囲に配置される。また、図4に示すように、本実施形態では、太陽ギア30の周囲に、3つの遊星ギア40が等間隔に配置されている。ただし、遊星ギア40の数は、2つであってもよく、4つ以上であってもよい。3つの遊星ギア40はそれぞれ、自転軸92に沿って配置される。自転軸92は、中心軸91と略平行である。また、遊星ギア40は、自転軸92を中心とする第2径方向に円板状に拡がる。また、各遊星ギア40は、外側面に複数の外歯401を有する。複数の外歯401はそれぞれ、第2径方向外側へ向かって突出する。
【0024】
そして、外歯401は、外歯301に、中心軸91を中心とする第1径方向外側から噛み合う。すなわち、複数の遊星ギア40はそれぞれ、中心軸91を中心とする第1径方向外側から太陽ギア30に噛み合う。これにより、太陽ギア30が中心軸91を中心として回転すると、各遊星ギア40は、太陽ギア30からの動力を受け、自転軸92を中心として太陽ギア30の回転方向とは逆方向に自転する。すなわち、複数の遊星ギア40はそれぞれ、太陽ギア30の回転に伴い自転可能である。
【0025】
ここで、本実施形態では、図4に示すように、各遊星ギア40の径は、太陽ギア30の径よりも大きい。また、1つの遊星ギア40が有する外歯401の数は、太陽ギア30が有する外歯301の数よりも多い。このため、各遊星ギア40は、太陽ギア30と噛み合うことにより、自転軸92を中心として、入力回転速度N1よりも遅い減速後の中間回転速度N2で回転する。ただし、動力伝達装置1が、本実施形態のように入力軸20の回転を減速して出力軸95を回転させるのではなく、入力軸20の回転を増速して出力軸95を回転させる場合は、各遊星ギア40の径を、太陽ギア30の径よりも小さくしてもよい。また、1つの遊星ギア40が有する外歯401の数を、太陽ギア30が有する外歯301の数よりも少なくしてもよい。そして、これにより、各遊星ギア40が、太陽ギア30と噛み合うことにより、自転軸92を中心として、入力回転速度N1よりも速い増速後の中間回転速度N2で回転するように構成してもよい。なお、3つの遊星ギア40のそれぞれには、貫通孔400が設けられている。各貫通孔400は、自転軸92に沿って遊星ギア40を軸方向に貫通する。さらに、図1に示すように、3つの遊星ギア40にはそれぞれ、第1要素200が固定されている。すなわち、第1要素200は、遊星ギア40に固定される。第1要素200の詳細な構成については、後述する。
【0026】
クランク軸50は、自転軸92に沿って延びる柱状の部材である。図4に示すように、本実施形態では、遊星ギア40毎に、1つのクランク軸50が設けられる。すなわち、動力伝達装置1は、合計3つのクランク軸50を有する。複数のクランク軸50はそれぞれ、固定部51と、柱状部52と、偏心部53と、を有する。
【0027】
固定部51は、クランク軸50のうち、軸方向他方側に位置する部位である。遊星ギア40は、貫通孔400を介して自転軸92の方向に沿って固定部51に挿入される。そして、遊星ギア40は、固定部51にスプライン結合される。すなわち、遊星ギア40は、固定部51に接続される。別の言い方をすれば、固定部51は、遊星ギア40に接続される。これにより、3つのクランク軸50はそれぞれ、遊星ギア40とともに、自転軸92を中心として中間回転速度N2で自転可能である。すなわち、クランク軸50は、遊星ギア40の自転に伴い、自転軸92を中心として自転可能である。ただし、遊星ギア40は、固定部51に、圧入、接着、溶着、または他の方法によって固定されてもよい。
【0028】
柱状部52は、クランク軸50のうち、固定部51よりも軸方向一方側において、自転軸92に沿って延びる柱状の部位である。すなわち、柱状部52は、固定部51から軸方向一方側へ柱状に延びる。柱状部52および偏心部53は、キャリア80の後述する空洞800に配置される。
【0029】
図3に示すように、キャリア80の内部における後述する空洞800に面する内壁801と、柱状部52の外周面との、第2径方向の間には、軸受55が介在する。本実施形態では、1つのクランク軸50に対して、2つの軸受55が、互いに軸方向に間隙を隔てて設けられる。より具体的には、柱状部52のうちの軸方向一方側の部位の外周面と内壁801との間、および柱状部52のうちの軸方向他方側の部位の外周面と内壁801との間に、それぞれ軸受55が設けられる。また、軸受55には、例えば、テーパローラベアリングが用いられる。ただし、軸受55には、他の種類の軸受が用いられてもよい。これにより、クランク軸50は、キャリア80に対して、自転軸92を中心として自転可能に支持される。
【0030】
偏心部53は、柱状部52から第2径方向の外側へ突出する部位である。すなわち、偏心部53の、少なくとも一部が、柱状部52よりも自転軸92を中心とする第2径方向の外側に配置される。本実施形態では、1つのクランク軸50に固定される2つの軸受55の軸方向の間において、2つの偏心部53が設けられる。以下では、2つの偏心部53のうち、軸方向一方側に位置するものを「第1偏心部531」と称し、軸方向他方側に位置するものを「第2偏心部532」と称することとする。1つのクランク軸50において、1つの第1偏心部531と、1つの第2偏心部532とが、互いに軸方向に並んで設けられる。また、上記のとおり、第1偏心部531と第2偏心部532はそれぞれ、キャリア80の後述する空洞800に配置される。
【0031】
第1偏心部531は、自転軸92と平行で、かつ、自転軸92から変位した第1偏心軸931に沿って円柱状に延びる部位である。動力伝達装置1において設けられる3つのクランク軸50のそれぞれの第1偏心部531は、互いに自転軸92に対して同じ方向に変位する。第2偏心部532は、自転軸92と平行で、かつ、自転軸92から変位した第2偏心軸932に沿って円柱状に延びる部位である。動力伝達装置1において設けられる3つのクランク軸50のそれぞれの第2偏心部532は、互いに自転軸92に対して同じ方向に変位する。また、軸方向に見て、第1偏心軸931および第2偏心軸932がそれぞれ変位する方向は、自転軸92を中心として、約180度離間している。すなわち、第1偏心部531と第2偏心部532とは、自転軸92から、互いに自転軸92に対して約180度異なる方向に偏心している。
【0032】
外歯歯車60は、キャリア80の後述するキャリア台部811と第2キャリア部82との軸方向の間に保持される部材である。本実施形態の外歯歯車60は、第1歯車部61と第2歯車部62とを含む。第1歯車部61は、第2歯車部62よりも軸方向一方側に位置する。第1歯車部61および第2歯車部62はそれぞれ、中心軸91を中心とする第1径方向に円板状に拡がる。第1歯車部61と第2歯車部62とは、互いに形状および大きさが略等しい。図5は、図3のB-B位置から見たクランク軸50、外歯歯車60(第1歯車部61)、軸受651、内歯歯車70、およびキャリア80の横断面図(ただし、僅かに斜め上方向から図示している)である。図の煩雑化を避けるため、図5においては、断面を示すハッチングが省略されている。
【0033】
図2および図5に示すように、第1歯車部61は、第1径方向の外側面に複数の外歯611を有する。第2歯車部62は、第1径方向の外側面に複数の外歯621を有する。すなわち、外歯歯車60は、径方向外側面に形成された外歯611,621を有する。また、複数の外歯611,621はそれぞれ、第1径方向の外側へ向かって突出する。
【0034】
また、第1歯車部61は、複数の挿入部610を有する。本実施形態では、第1歯車部61は、3つの挿入部610を有する。3つの挿入部610はそれぞれ、第1歯車部61を軸方向に貫通する。また、3つの挿入部610にはそれぞれ、クランク軸50の第1偏心部531が挿入される。第2歯車部62は、複数の挿入部620を有する。本実施形態では、第2歯車部62は、3つの挿入部620を有する。3つの挿入部620はそれぞれ、挿入部610の軸方向他方側の位置において、第2歯車部62を軸方向に貫通する。また、3つの挿入部620にはそれぞれ、クランク軸50の第2偏心部532が挿入される。すなわち、外歯歯車60は、複数の偏心部53が軸方向に挿入される複数の挿入部610,620を有する。
【0035】
ここで、第1偏心部531の外周面と、第1歯車部61における挿入部610に面する内壁との間には、軸受651が挿入される。軸受651には、例えば、ニードルベアリングが用いられる。これにより、第1偏心部531は、第1歯車部61に対して、クランク軸50の自転に伴い、自転軸92を中心として回転可能に支持される。また、第2偏心部532の外周面と、第2歯車部62における挿入部620に面する内壁との間には、軸受652が挿入される。軸受652には、例えば、ニードルベアリングが用いられる。これにより、第2偏心部532は、第2歯車部62に対して、クランク軸50の自転に伴い、自転軸92を中心として回転可能に支持される。
【0036】
上記のとおり、3つのクランク軸50のそれぞれの第1偏心部531は、自転軸92から変位した第1偏心軸931に沿って円柱状に延びる。また、3つのクランク軸50のそれぞれの第1偏心部531は、互いに自転軸92に対して同じ方向に変位する。このため、3つのクランク軸50がそれぞれ自転軸92を中心として自転すると、3つの第1偏心部531はそれぞれ、自転軸92を中心として偏心回転する。これにより、第1歯車部61は、内歯歯車70の後述する内歯71によって規定された円形空間内で、第1径方向に揺動する。また、3つのクランク軸50のそれぞれの第2偏心部532は、自転軸92から変位した第2偏心軸932に沿って円柱状に延びる。また、3つのクランク軸50のそれぞれの第2偏心部532は、互いに自転軸92に対して同じ方向に変位する。このため、3つのクランク軸50がそれぞれ自転軸92を中心として自転すると、3つの第2偏心部532はそれぞれ、自転軸92を中心として偏心回転する。これにより、第2歯車部62は、内歯歯車70の後述する内歯71によって規定された円形空間内で、第1径方向に揺動する。
【0037】
図2および図5に示すように、第1歯車部61は、複数の通過孔615を有する。本実施形態では、第1歯車部61は、3つの通過孔615を有する。3つの通過孔615はそれぞれ、第1歯車部61を軸方向に貫通する。また、通過孔615は、軸方向に見て、第1周方向に隣り合う挿入部610の間に設けられる。各通過孔615には、キャリア80の後述するキャリア柱部812が軸方向に挿入される。第2歯車部62は、複数の通過孔616を有する。本実施形態では、第2歯車部62は、3つの通過孔616を有する。3つの通過孔616はそれぞれ、通過孔615の軸方向他方側の位置において、第2歯車部62を軸方向に貫通する。また、通過孔616は、軸方向に見て、第1周方向に隣り合う挿入部620の間に設けられる。各通過孔616には、後述するキャリア柱部812が軸方向に挿入される。これにより、第1歯車部61および第2歯車部62はそれぞれ、中心軸91を中心として回転可能である。
【0038】
内歯歯車70は、中心軸91と略同軸に配置される。内歯歯車70は、中心軸91を中心とする環状である。内歯歯車70は、中心軸91を中心として円環状に拡がる。本実施形態の内歯歯車70は、ベースフレーム101に対して移動不能および回転不能に固定されている。これにより、内歯歯車70は、第1周方向、第1径方向、および軸方向の動きが制限される。
【0039】
また、図5に示すように、内歯歯車70の内側面には、複数の内歯71が第1周方向に形成されている。本実施形態では、内歯歯車70の内側面に、複数の内歯ピンが、第1周方向に一定のピッチで配置されることによって、複数の内歯71が第1周方向に一定のピッチで形成されている。ただし、複数の内歯71を形成する方法は、これに限定されない。また、複数の内歯71はそれぞれ、第1径方向内側へ向かって突出する。
【0040】
上記のとおり、第1歯車部61が第1径方向に揺動すると、中心軸91から揺動した方向に位置する第1歯車部61の外歯611が、内歯歯車70の内歯71と噛み合う。同様に、第2歯車部62が第1径方向に揺動すると、中心軸91から揺動した方向に位置する第2歯車部62の外歯621が、第1歯車部61よりも軸方向他方側において、内歯歯車70の内歯71と噛み合う。すなわち、内歯歯車70は、外歯611,621に、第1径方向外側から噛み合う。つまり、外歯611,621は、中心軸91を中心として揺動しながら、内歯歯車70と噛み合う。
【0041】
キャリア80は、中心軸91と同軸に配置された略円筒状の部材である。キャリア80は、第1キャリア部81と、第2キャリア部82と、固定ボルト83と、を有する。第1キャリア部81は、キャリア80における軸方向一方側に位置する部材である。第2キャリア部82は、キャリア80における軸方向他方側に位置する部材である。
【0042】
また、第1キャリア部81は、キャリア台部811と、複数のキャリア柱部812と、を有する。本実施形態では、第1キャリア部81は、キャリア台部811と、3つのキャリア柱部812と、を有する。キャリア台部811は、第1キャリア部81における軸方向一方側の位置において、中心軸91と同軸かつ略円筒状に延びる部位である。3つのキャリア柱部812はそれぞれ、キャリア台部811における軸方向他方側の面から、さらに軸方向他方側へ、中心軸91と平行かつ柱状に延びる。上記のとおり、3つのキャリア柱部812はそれぞれ、第1歯車部61の通過孔615と第2歯車部62の通過孔616とを貫通する。
【0043】
また、キャリア台部811は、中心軸91よりも第1径方向外側において、複数の貫通孔810を有する。本実施形態では、キャリア台部811は、3つの貫通孔810を有する。3つの貫通孔810はそれぞれ、キャリア台部811を軸方向に貫通する。また、3つの貫通孔810はそれぞれ、第1歯車部61の挿入部610、および第2歯車部62の挿入部620と、軸方向に重なる。
【0044】
また、第2キャリア部82は、中心軸91を中心とする円環板状である。第2キャリア部82は、第1キャリア部81に、固定ボルト83を用いたボルト止めによって固定される。また、第2キャリア部82は、中心軸91よりも第1径方向外側において、複数の貫通孔820を有する。本実施形態では、第2キャリア部82は、3つの貫通孔820を有する。3つの貫通孔820はそれぞれ、第2キャリア部82を軸方向に貫通する。また、3つの貫通孔820はそれぞれ、第1歯車部61の挿入部610、および第2歯車部62の挿入部620と、軸方向に重なる。
【0045】
貫通孔810と、貫通孔820と、第1歯車部61の挿入部610と、第2歯車部62の挿入部620と、によって、キャリア80の内部において3つの空洞800が、中心軸91を中心とする第1周方向に等間隔に形成される。3つの遊星ギア40はそれぞれ、クランク軸50に固定され、クランク軸50は、空洞800に挿入され、2つの軸受55を介して、キャリア80に対して、自転可能に支持される。すなわち、キャリア80は、複数のクランク軸50をそれぞれ自転可能に支持する。
【0046】
また、キャリア台部811の外周面と内歯歯車70の内周面との間、および第2キャリア部82の外周面と内歯歯車70の内周面との間には、それぞれ軸受85が挿入される。2つの軸受85はそれぞれ、中心軸91と同軸に配置される。また、本実施形態の軸受85には、ボールベアリングが用いられる。ただし、軸受85には、他の種類の軸受が用いられてもよい。2つの軸受85のうちの一方の内輪は、キャリア台部811の外周面に固定される。2つの軸受85のうちの一方の外輪は、内歯歯車70の内周面に固定される。2つの軸受85のうちの他方の内輪は、第2キャリア部82の外周面に固定される。2つの軸受85のうちの他方の外輪は、内歯歯車70の内周面に固定される。これにより、キャリア80は、内歯歯車70に対して、2つの軸受85を介して、中心軸91を中心として回転可能に支持される。また、キャリア80にそれぞれ軸受55を介して支持された、3つのクランク軸50と、3つのクランク軸50に固定された3つの遊星ギア40は、中心軸91を中心として公転可能に支持される。
【0047】
上記のとおり、3つのクランク軸50の各第1偏心部531が挿入される第1歯車部61が第1径方向に揺動すると、中心軸91から揺動した方向に位置する第1歯車部61の外歯611が、内歯歯車70の内歯71と噛み合う。また、3つのクランク軸50の各第2偏心部532が挿入される第2歯車部62が第1径方向に揺動すると、中心軸91から揺動した方向に位置する第2歯車部62の外歯621が、内歯歯車70の内歯71と噛み合う。また、第1偏心部531と第2偏心部532とは、自転軸92から、互いに自転軸92に対して約180度異なる方向に偏心している。このため、第1歯車部61の外歯611と第2歯車部62の外歯621は、互いに中心軸91と中心として約180度離間した箇所において、それぞれ内歯歯車70の内歯71と噛み合う。
【0048】
3つのクランク軸50がそれぞれ自転軸92を中心として中間回転速度N2で自転すると、第1歯車部61の揺動方向および第2歯車部62の揺動方向も変化する。このため、第1歯車部61の外歯611と内歯歯車70の内歯71との噛み合い位置、および第2歯車部62の外歯621と内歯歯車70の内歯71との噛み合い位置も、それぞれ変化する。ここで、内歯歯車70は、ロボット100のベースフレーム101に固定されており、回転しない。この結果、内歯歯車70およびベースフレーム101に対して、キャリア80が、中心軸91を中心として、中間回転速度N2よりも遅い減速後の出力回転速度N3で回転する。すなわち、キャリア80は、内歯歯車70に対する外歯歯車60の揺動によって、中心軸91を中心として出力回転速度N3で回転可能である。つまり、本実施形態においては、出力軸95は、キャリア80である。なお、他の実施形態として、キャリア80がベースフレーム101に固定され、内歯歯車70が中心軸91を中心として出力回転側で回転可能であってもよい。この場合、当該他の実施形態における出力軸95は、内歯歯車70である。
【0049】
<1-3.第1要素の詳細な構成>
続いて、第1要素200の詳細な構成について、説明する。図6は、第1実施形態に係る入力軸20、太陽ギア30、1つの遊星ギア40、1つのクランク軸50、および1つの第1要素200の部分縦断面図である。図7は、第1実施形態に係る1つの遊星ギア40、1つのクランク軸50、および1つの第1要素200を、軸方向他方側から見た平面図である。なお、図7では、理解容易のため、第1要素200にハッチングを施している。また、図7では、遊星ギア40の外歯401を、一部のみ図示している。
【0050】
第1要素200は、自転軸92を中心とする円環板状の部材である。第1要素200の材料には、制振合金が用いられる。一般に、制振合金には、(a)複合型,(b)強磁性型,(c)転位型,および(d)双晶型が存在する。(a)複合型には、Fe-C-Si合金の一種である片状黒鉛鋳鉄や、Al-Zn合金の一種であるCosmal-Z等が含まれる。(b)強磁性型には、Ni合金の一種であるTDニッケルや、Fe-Cr合金の一種である13%クロム鋼等が含まれる。(c)転位型には、Mg合金またはMg-Zr合金の一種であるK1X1合金(Mg-0.6Zr)や、Mg-Cu-Mn合金の一種であるMCM(Mg-4Cu-2Mn)等が含まれる。(d)双晶型には、Mg-Cu合金の一種であるソノストン(Mn-37Cu-4.25Al-3Fe-1.5Ni)や、Cu-Mn-Al合金の一種であるインクラミュートI(Cu-40Mn-2Al)等が含まれる。本実施形態では、第1要素200は、双晶型制振合金により形成されている。これにより、太陽ギア30と遊星ギア40との噛み合い部分から生じる騒音および振動を低減できる。また、第1要素200を形成する際の材料の自由度を向上できる。
【0051】
また、本実施形態では、第1要素200の材料には、マンガンベースの合金が用いられる。具体的には、第1要素200は、73.0重量%のMn(マンガン)と、20.0重量%のCu(銅)と、5.0重量%のNi(ニッケル)と、2.0重量%のFe(鉄)と、を含む合金により形成されている。これにより、太陽ギア30と遊星ギア40との噛み合い部分から生じる騒音および振動を低減できる。また、第1要素200を形成する際の材料の自由度を向上できる。ただし、第1要素200の材料には、鉄ベースの合金が用いられてもよい。第1要素200は、例えば、92.0重量%のFe(鉄)と、8.0重量%のAl(アルミニウム)と、を含む合金により形成されてもよい。また、第1要素200の材料には、合金以外の、鋳鉄の切削屑(鋳鉄チップ)を原材料とし、圧搾形成によって製造した、多孔質鋳鉄が用いられてもよい。また、第1要素200の材料には、合金以外の、弾性部材または防振ゴム等が用いられてもよい。なお、第1要素200は、円環以外の環状の部材であってもよく、孔を有さない板状の部材であってもよい。
【0052】
第1要素200が上記のような材料を用いて形成されることにより、第1要素200の振動の減衰率は、遊星ギア40の振動の減衰率よりも高い。なお、「振動の減衰率」とは、自由減衰振動の変位振幅レベル(Lx)の時間微分値の負数を示す。
【0053】
図6および図7に示すように、本実施形態では、各第1要素200は、複数の小孔250を有する。本実施形態では、各第1要素200は、3つの小孔250を有する。3つの小孔250はそれぞれ、第1要素200を軸方向に貫通する。また、各遊星ギア40には、複数のねじ穴450が設けられている。本実施形態では、各遊星ギア40には、3つのねじ穴450が設けられている。複数のねじ穴450はそれぞれ、遊星ギア40の軸方向他方側の面から、軸方向一方側へ向かって形成されている。各第1要素200は、3つの小孔250のそれぞれを貫通する3つのねじ451を、3つのねじ穴450に締結することにより、遊星ギア40の軸方向他方側の面に固定される。
【0054】
このように、遊星ギア40の付近に、振動の減衰率が遊星ギア40よりも高い第1要素200を設けることによって、遊星ギア40における主に太陽ギア30との噛み合い箇所から発生する振動や騒音を、第1要素200を用いて低減することができる。特に、本実施形態の構成では、動力伝達装置1における主な騒音および振動の発生源となる、太陽ギア30と遊星ギア40との噛み合い箇所から発生する振動や騒音を、第1要素200を用いて直ぐに低減することができるため、動力伝達装置1の各部に及ぼす影響を大幅に抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、遊星ギア40における第2径方向の外端と第1要素200における第2径方向の外端との距離Toは、遊星ギア40における第2径方向の内端と第1要素200における第2径方向の内端との距離Tiよりも短い。このように、遊星ギア40における、主に振動や騒音が発生する箇所である、太陽ギア30との噛み合い箇所により近い位置に第1要素200を配置することによって、振動や騒音をより低減することができる。
【0056】
また、本実施形態では、第1要素200は、遊星ギア40に直接的に接触する。これにより、遊星ギア40における太陽ギア30との噛み合い箇所から発生する振動や騒音を、さらに低減することができる。また、図7に示すように、第1要素200の内径Didは、クランク軸50の固定部51の外径Codよりも大きい。すなわち、第1要素200は、クランク軸50とは非接触である。このように、第1要素200の中心付近に、クランク軸50と接触しない程度の大きな穴を設けることによって、第1要素200を軽量化することができる。
【0057】
また、上記のとおり、本実施形態では、第1要素200は、遊星ギア40の軸方向一方側の面および軸方向他方側の面のうち、軸方向他方側の面のみに配置される。このように、第1要素200を、遊星ギア40における、クランク軸50の延伸する側とは反対側の、外側を向いている面に配置することによって、第1要素200を配置するスペースを十分に確保することができる。また、第1要素200および遊星ギア40を含む各部の組み立て時の作業性を向上できる。ただし、第1要素200が配置される位置は、これに限定されない。
【0058】
図8は、第1変形例に係る入力軸20A、太陽ギア30A、1つの遊星ギア40A、1つのクランク軸50A、および2つの第1要素200Aの部分縦断面図である。図8に示すように、第1変形例では、各遊星ギア40Aにおける、軸方向一方側の面および軸方向他方側の面のそれぞれに、第1要素200Aが固定されている。すなわち、第1変形例では、第1要素200Aは、遊星ギア40Aの軸方向一方側の面および軸方向他方側の面にそれぞれ配置される。これにより、遊星ギア40Aにおける太陽ギア30Aとの噛み合い箇所から発生する振動や騒音を、さらに低減することができる。このように、第1要素200Aは、遊星ギア40Aの軸方向一方側の面および軸方向他方側の面のうち、少なくともいずれかの面に配置されている。これにより、動力伝達装置1に構成される余剰空間に合わせて、第1要素200Aを配置できるため、スペースを有効活用できる。
【0059】
<2.第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置について説明する。なお、第2実施形態に係る動力伝達装置は、遊星ギア40Bおよび第1要素200Bの構造のみが、第1実施形態と異なるため、異なる点のみについて説明する。
【0060】
図9は、第2実施形態に係る入力軸20B、太陽ギア30B、1つの遊星ギア40B、1つのクランク軸50B、および1つの第1要素200Bの部分縦断面図である。第2実施形態に係る第1要素200Bは、自転軸92Bを中心とする円環板状の部材である。また、第2実施形態に係る第1要素200Bは、第1実施形態に係る第1要素200と同等の材料を用いて形成されている。図9に示すように、第2実施形態の各遊星ギア40Bは、軸方向他方側の面において、凹部260Bを有する。凹部260Bは、軸方向一方側へ凹む。すなわち、遊星ギア40Bは、軸方向他方側の面において、軸方向一方側へ凹む凹部260Bを有する。また、凹部260Bには、第1要素200Bが配置され、例えば、接着によって凹部260Bに固定される。すなわち、第1要素200Bは、凹部260Bに配置される。このように、遊星ギア40Bに凹部260Bを形成することによって、遊星ギア40Bを軽量化することができる。また、ねじ等を用いず、凹部260Bに第1要素200Bを嵌め込んで接着等によって固定する構成であるため、第1要素200Bを遊星ギア40Bに容易かつ安定して固定することができる。
【0061】
ただし、第1要素200Bが配置される位置は、これに限定されない。例えば、凹部260Bは、遊星ギア40Bにおける軸方向一方側の面から、軸方向他方側へ凹むように構成されていてもよい。そして、同様に、第1要素200Bは、凹部260Bにおいて接着によって固定されてもよい。すなわち、遊星ギア40Bは、軸方向の内側へ凹む凹部260Bを有し、第1要素200Bは、凹部260Bに配置されるように構成されていればよい。これにより、遊星ギア40Bを軽量化することができる。また、第1要素200Bを遊星ギア40Bに容易かつ安定して固定することができる。また、第1要素200Bは、ねじ等の部材によって遊星ギア40Bと固定されてもよい。
【0062】
<3.第3実施形態>
続いて、本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置について説明する。なお、第3実施形態に係る動力伝達装置は、遊星ギア40Cおよび第1要素200Cの構造のみが、第1実施形態および第2実施形態と異なるため、異なる点のみについて説明する。
【0063】
図10は、第3実施形態に係る入力軸20C、太陽ギア30C、1つの遊星ギア40C、1つのクランク軸50C、および複数の第1要素200Cの部分縦断面図である。図11は、第3実施形態に係る1つの遊星ギア40C、1つのクランク軸50C、および4つの第1要素200Cを、軸方向他方側から見た平面図である。なお、図11では、理解容易のため、第1要素200Cにハッチングを施している。また、図11では、遊星ギア40Cの外歯401Cを、一部のみ図示している。第3実施形態に係る第1要素200Cは、第1実施形態に係る第1要素200と同等の材料を用いて形成されている。
【0064】
図10および図11に示すように、第3実施形態の各遊星ギア40Cは、複数の貫通孔270Cを有する。本実施形態では、各遊星ギア40Cは、4つの貫通孔270Cを有する。4つの貫通孔270Cはそれぞれ、遊星ギア40Cを軸方向に貫通する。すなわち、遊星ギア40Cは、軸方向に貫通する貫通孔270Cを有する。また、4つの貫通孔270Cは、クランク軸50Cの自転軸92Cを中心とする第2周方向に互いに等間隔で設けられる。すなわち、複数の貫通孔270Cは、自転軸92Cを中心とする第2周方向に互いに等間隔で設けられる。
【0065】
また、各貫通孔270Cには、第1要素200Cが配置され、例えば、圧入によって固定される。すなわち、第1要素200Cは、貫通孔270Cに配置される。第1要素200Cは、複数の貫通孔270Cのそれぞれに配置される。また、第1要素200Cは、貫通孔270Cに圧入されることによって、遊星ギア40Cに固定されている。このように、遊星ギア40Cに貫通孔270Cを形成することによって、遊星ギア40Cを軽量化することができる。また、遊星ギア40Cと第1要素200Cの材料によっては、遊星ギア40Cの軸方向一方側の面と軸方向他方側の面とを繋ぐ貫通孔270Cに、第1要素200Cを配置する構成とすることによって、第1要素200Cの使用量を低減してコスト削減に繋げることができる。また、軸方向一方側の面の側から軸方向他方側の面の側に亘る領域において、第1要素200Cを配置することにより、振動や騒音をさらに低減することができる。また、圧入によって第1要素200Cを固定することによって、製造工程を簡略にできる。
【0066】
<4.第4実施形態>
続いて、本発明の第4実施形態に係る動力伝達装置について説明する。なお、第4実施形態に係る動力伝達装置は、遊星ギア40Dおよび第1要素200Dの構造のみが、第1実施形態から第3実施形態と異なるため、異なる点のみについて説明する。
【0067】
図12は、第4実施形態に係る入力軸20D、太陽ギア30D、1つの遊星ギア40D、および1つのクランク軸50Dの部分縦断面図である。図12に示すように、第4実施形態では、遊星ギア40Dとは別途、第1要素は設けられない。すなわち、第4実施形態に係る動力伝達装置は、入力軸20Dと、太陽ギア30Dと、複数の遊星ギア40Dと、複数のクランク軸50Dと、外歯歯車と、内歯歯車と、キャリアと、を有する。
【0068】
遊星ギア40Dは、第1実施形態に係る第1要素200と同一の材料を用いて形成される。すなわち、第4実施形態では、遊星ギア40Dは、仮想的に設けられる第1要素200Dと、同一の部材である。すなわち、第1要素200Dと、遊星ギア40Dとは、単一部材である。さらに換言すれば、遊星ギア40Dは、遊星ギア40Dの振動を抑制するための第1要素200Dを含む。これにより、遊星ギア40Dにおける太陽ギア30Dとの噛み合い箇所から発生する振動や騒音を、さらに低減することができる。また、動力伝達装置に含まれる部材数を低減できるため、動力伝達装置の製造工数を削減できる。
【0069】
<5.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0070】
上記の動力伝達装置1においては、キャリア80を、出力軸95およびロボット100のアーム102に対して固定し、内歯歯車70を、ロボット100のベースフレーム101に対して移動不能および回転不能に固定していた。しかしながら、キャリア80を、ロボット100のベースフレーム101に対して移動不能および回転不能に固定し、内歯歯車70を、出力軸95およびロボット100のアーム102に対して固定してもよい。そして、キャリア80に保持される外歯歯車60の揺動により、内歯歯車70を、中心軸91を中心として回転させてもよい。すなわち、内歯歯車70とキャリア80との少なくとも一方は、内歯歯車70に対する外歯歯車60の揺動によって、中心軸91を中心として出力回転速度N3で回転可能であればよい。
【0071】
また、動力伝達装置およびロボットの細部の形状については、上記の実施形態の各図に示された形状と相違していてもよい。
【0072】
<6.総括>
なお、本技術は、以下のような構成をとることが可能である。
(1):入力軸の回転を減速して出力可能な動力伝達装置であって、
中心軸を中心として入力回転速度で回転可能な、前記入力軸と、
前記入力軸とともに前記中心軸を中心として前記入力回転速度で回転可能な、太陽ギアと、
前記太陽ギアの周囲に配置され、それぞれ、前記中心軸を中心とする第1径方向外側から前記太陽ギアに噛み合い、前記太陽ギアの回転に伴い自転軸を中心として自転可能な、複数の遊星ギアと、
それぞれ、前記遊星ギアに接続される固定部と、前記固定部から軸方向一方側へ柱状に延びる柱状部と、少なくとも一部が前記柱状部よりも前記自転軸を中心とする第2径方向の外側に配置される偏心部と、を有し、前記遊星ギアの自転に伴い前記自転軸を中心として自転可能な、複数のクランク軸と、
前記複数の偏心部が軸方向に挿入される複数の挿入部を有し、径方向外側面に形成された外歯を有する、外歯歯車と、
前記中心軸を中心とする環状であり、前記外歯に第1径方向外側から噛み合う、内歯歯車と、
前記複数のクランク軸をそれぞれ自転可能に支持する、キャリアと、
前記遊星ギアに固定される、第1要素と、
を有し、
前記内歯歯車と前記キャリアとの少なくとも一方は、前記内歯歯車に対する前記外歯歯車の揺動によって、前記中心軸を中心として出力回転速度で回転可能であり、
前記第1要素の振動の減衰率は、前記遊星ギアの振動の減衰率よりも高い、動力伝達装置。
【0073】
(2):入力軸の回転を減速して出力可能な動力伝達装置であって、
中心軸を中心として入力回転速度で回転可能な、前記入力軸と、
前記入力軸とともに前記中心軸を中心として前記入力回転速度で回転可能な、太陽ギアと、
前記太陽ギアの周囲に配置され、それぞれ、前記中心軸を中心とする第1径方向外側から前記太陽ギアに噛み合い、前記太陽ギアの回転に伴い自転軸を中心として自転可能な、複数の遊星ギアと、
それぞれ、前記遊星ギアに接続される固定部と、前記固定部から軸方向一方側へ柱状に延びる柱状部と、少なくとも一部が前記柱状部よりも前記自転軸を中心とする第2径方向の外側に配置される偏心部と、を有し、前記遊星ギアの自転に伴い前記自転軸を中心として自転可能な、複数のクランク軸と、
前記複数の偏心部が軸方向に挿入される複数の挿入部を有し、径方向外側面に形成された外歯を有する、外歯歯車と、
前記中心軸を中心とする環状であり、前記外歯に第1径方向外側から噛み合う、内歯歯車と、
前記複数のクランク軸をそれぞれ自転可能に支持する、キャリアと、
を有し、
前記内歯歯車と前記キャリアとの少なくとも一方は、前記内歯歯車に対する前記外歯歯車の揺動によって、前記中心軸を中心として出力回転速度で回転可能であり、
前記遊星ギアは、前記遊星ギアの振動を抑制するための第1要素を含む、動力伝達装置。
【0074】
(3):入力軸の回転を減速して出力可能な動力伝達装置であって、
中心軸を中心として入力回転速度で回転可能な、前記入力軸と、
前記入力軸とともに前記中心軸を中心として前記入力回転速度で回転可能な、太陽ギアと、
前記太陽ギアの周囲に配置され、それぞれ、前記中心軸を中心とする第1径方向外側から前記太陽ギアに噛み合い、前記太陽ギアの回転に伴い自転軸を中心として自転可能な、複数の遊星ギアと、
それぞれ、前記遊星ギアに接続される固定部と、前記固定部から軸方向一方側へ柱状に延びる柱状部と、少なくとも一部が前記柱状部よりも前記自転軸を中心とする第2径方向の外側に配置される偏心部と、を有し、前記遊星ギアの自転に伴い前記自転軸を中心として自転可能な、複数のクランク軸と、
前記複数の偏心部が軸方向に挿入される複数の挿入部を有し、径方向外側面に形成された外歯を有する、外歯歯車と、
前記中心軸を中心とする環状であり、前記外歯に第1径方向外側から噛み合う、内歯歯車と、
前記複数のクランク軸をそれぞれ自転可能に支持する、キャリアと、
前記遊星ギアに直接的に接触する、第1要素と、
を有し、
前記内歯歯車と前記キャリアとの少なくとも一方は、前記内歯歯車に対する前記外歯歯車の揺動によって、前記中心軸を中心として出力回転速度で回転可能であり、
前記第1要素は、前記クランク軸とは非接触であり、かつ、前記第1要素の振動の減衰率は、前記遊星ギアの振動の減衰率よりも高い、動力伝達装置。
【0075】
(4):(1)または(3)に記載の動力伝達装置であって、
前記第1要素は、前記遊星ギアの前記軸方向一方側の面および軸方向他方側の面のうち、少なくともいずれかの面に配置される、動力伝達装置。
【0076】
(5):(4)に記載の動力伝達装置であって、
前記第1要素は、前記遊星ギアの前記軸方向一方側の面および前記軸方向他方側の面にそれぞれ配置される、動力伝達装置。
【0077】
(6):(4)に記載の動力伝達装置であって、
前記第1要素は、前記遊星ギアの前記軸方向一方側の面および前記軸方向他方側の面のうち、前記軸方向他方側の面のみに配置される、動力伝達装置。
【0078】
(7):(4)から(6)までのいずれか1つに記載の動力伝達装置であって、
前記遊星ギアにおける第2径方向の外端と前記第1要素における第2径方向の外端との距離は、前記遊星ギアにおける第2径方向の内端と前記第1要素における第2径方向の内端との距離よりも短い、動力伝達装置。
【0079】
(8):(6)に記載の動力伝達装置であって、
前記遊星ギアは、軸方向他方側の面において、軸方向一方側へ凹む凹部を有し、
前記第1要素は、前記凹部に配置される、動力伝達装置。
【0080】
(9):(4)から(6)までのいずれか1つに記載の動力伝達装置であって、
前記遊星ギアは、軸方向の内側へ凹む凹部を有し、
前記第1要素は、前記凹部に配置される、動力伝達装置。
【0081】
(10):(1)から(3)までのいずれか1つに記載の動力伝達装置であって、
前記遊星ギアは、軸方向に貫通する貫通孔を有し、
前記第1要素は、前記貫通孔に配置される、動力伝達装置。
【0082】
(11):(10)に記載の動力伝達装置であって、
前記第1要素は、前記貫通孔に圧入されることによって、前記遊星ギアに固定されている、動力伝達装置。
【0083】
(12):(10)または(11)に記載の動力伝達装置であって、
前記遊星ギアは、前記自転軸を中心とする第2周方向に互いに等間隔で設けられる、複数の前記貫通孔を有し、
前記第1要素は、前記複数の貫通孔のそれぞれに配置される、動力伝達装置。
【0084】
(13):(2)に記載の動力伝達装置であって、
前記第1要素と、前記遊星ギアとは単一部材である、動力伝達装置。
【0085】
(14):(1)から(13)までのいずれか1つに記載の動力伝達装置であって、
前記第1要素は、73.0重量%のMnと、20.0重量%のCuと、5.0重量%のNiと、2.0重量%のFeと、を含む合金により形成されている、動力伝達装置。
【0086】
(15):(1)から(14)までのいずれか1つに記載の動力伝達装置であって、
前記第1要素は、双晶型制振合金により形成されている、動力伝達装置。
【0087】
(16):(1)から(15)までのいずれか1つに記載の動力伝達装置を有する、ロボット。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本願は、動力伝達装置およびロボットに利用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 動力伝達装置
20,20B,20C,20D 入力軸
30,30B,30C,30D 太陽ギア
40,40B,40C,40D 遊星ギア
50,50B,50C,50D クランク軸
51 (クランク軸の)固定部
52 (クランク軸の)柱状部
53 (クランク軸の)偏心部
60 外歯歯車
70 内歯歯車
71 (内歯歯車の)内歯
80 キャリア
91 中心軸
92,92B,92C 自転軸
100 ロボット
103 モータ
200,200B,200C,200D 第1要素
260B (第1要素の)凹部
270C (第1要素の)貫通孔
301 (太陽ギアの)外歯
401,401C (遊星ギアの)外歯
610,620 (外歯歯車の)挿入部
611,621 (外歯歯車の)外歯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12