(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073019
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】硬質表面用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 3/37 20060101AFI20240522BHJP
C11D 3/02 20060101ALI20240522BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20240522BHJP
C11D 3/50 20060101ALI20240522BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20240522BHJP
C11D 1/74 20060101ALI20240522BHJP
C11D 1/722 20060101ALI20240522BHJP
B08B 3/04 20060101ALI20240522BHJP
C11D 1/835 20060101ALN20240522BHJP
【FI】
C11D3/37
C11D3/02
C11D1/62
C11D3/50
C11D3/48
C11D1/74
C11D1/722
B08B3/04
C11D1/835
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183988
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 理絵
(72)【発明者】
【氏名】川島 裕司
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
【Fターム(参考)】
3B201AA31
3B201AA46
3B201AB52
3B201BA08
3B201BB92
3B201BB94
4H003AB27
4H003AC08
4H003AC12
4H003AC23
4H003AE04
4H003DA05
4H003DA06
4H003DA08
4H003DA17
4H003EA19
4H003EB30
4H003EB32
4H003EB42
4H003ED02
4H003FA16
4H003FA26
4H003FA34
(57)【要約】
【課題】香料などの疎水性機能化剤を含有する硬質表面用洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液として基体に含侵させて、前記洗浄液を含侵させた基体を硬質表面に接触させて洗浄処理する場合に、硬質表面用洗浄剤組成物に含まれる疎水性機能化剤を硬質表面に効率的に移行させることができる、硬質表面用洗浄剤組成物、及び硬質表面の洗浄処理方法を提供する。
【解決手段】下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、及び水を含有する硬質表面用洗浄剤組成物であって、該洗浄剤組成物中の(a)成分のイオン等量と(b)成分のイオン等量との比(a)/(b)が0.25以上5.5以下である、硬質表面用洗浄剤組成物。
(a)成分:カチオン性基及びアニオン性基のいずれか一方を有するモノマー単位を50モル%以上100モル%以下含有し、重量平均分子量が4,000以上1,000,000以下であるイオン性高分子化合物
(b)成分:分子量が1000以下であり、(a)成分のイオン性高分子とは反対の電荷を有するイオン性界面活性剤
(c)成分:疎水性機能化剤
(d)成分:無機塩
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、及び水を含有する硬質表面用洗浄剤組成物であって、該洗浄剤組成物中の(a)成分のイオン等量と(b)成分のイオン等量との比(a)/(b)が0.25以上5.5以下である、硬質表面用洗浄剤組成物。
(a)成分:カチオン性基及びアニオン性基のいずれか一方を有するモノマー単位を50モル%以上100モル%以下含有し、重量平均分子量が4,000以上1,000,000以下であるイオン性高分子化合物
(b)成分:分子量が1000以下であり、(a)成分のイオン性高分子とは反対の電荷を有するイオン性界面活性剤
(c)成分:疎水性機能化剤
(d)成分:無機塩
【請求項2】
(a)成分がアニオン性基を有するモノマー単位を50モル%以上100モル%以下含有し、重量平均分子量が4,000以上1,000,000以下であるアニオン性高分子化合物(以下、(a1)成分という)であり、(b)成分がカチオン性界面活性剤(以下、(b1)成分という)である、請求項1に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a1)成分が、重量平均分子量10,000以上1,000,000以下であり、エーテル化度が0.5以上1.5以下のカルボキシメチルセルロース及びその塩から選ばれる1種以上である、請求項2に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項4】
(b1)成分が、下記一般式(b11)で表される化合物、及び下記一般式(b12)で表される化合物から選ばれる1種以上である、請求項2又は3に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【化1】
〔式中、R
1bは、炭素数8以上22以下の脂肪族炭化水素基であり、R
2bは、炭素数8以上22以下の脂肪族炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、R
3b及びR
4bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、X
-は陰イオンである。〕
【化2】
〔式中、R
5bは、炭素数8以上22以下の脂肪族炭化水素基であり、R
6b及びR
7bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、X
-は陰イオンである。〕
【請求項5】
(c)成分が、CLogPが2以上の疎水性機能化剤である、請求項1~4の何れか1項に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項6】
(c)成分が、香料、抗菌剤(但し、(b)成分に該当する化合物は除く)、及び酸化防止剤から選ばれる1種以上である、請求項1~5の何れか1項に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項7】
更に、下記(e)成分を含有する、請求項1~6の何れか1項に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
(e)成分:非イオン性界面活性剤
【請求項8】
(e)成分が、下記一般式(e1)で表される化合物である、請求項1~5の何れか1項に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
R1e(CO)mO-(AO)n-R2e (e1)
〔式中、R1eは炭素数9以上16以下の第1級脂肪族炭化水素基であり、R2eは水素原子又はメチル基であり、COはカルボニル基であり、mは0又は1の数であり、AO基はエチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる1種以上の基であり、nは平均付加モル数であって、6以上30以下の数である。〕
【請求項9】
全界面活性剤の含有量が2質量%以下である、請求項1~8の何れか1項に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項10】
居間、部屋、台所、浴室、及びトイレから選ばれる居住まわりの硬質表面用である、請求項1~9の何れか1項に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の硬質表面用洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液を基体に含侵させて、前記洗浄液を含侵させた基体を硬質表面に接触させて、硬質表面の汚れの除去と(c)成分の硬質表面への移行を同時に行う、硬質表面の洗浄処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面用洗浄剤組成物、及び硬質表面の洗浄処理方法に関する。より詳細には、硬質表面用洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液を含侵させた基体から、洗浄液に含まれる香料などの疎水性機能化剤を硬質表面に効率的に移行させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に居住空間の硬質床、すなわちセラミック床、プラスチック床、木質床といった床面の清掃では、掃除機ないし履き掃除による乾式清掃以外に、水拭きや洗剤拭きによる湿式清掃も行われる。居住空間の床面では、液体状の汚れ成分が付着し、付着後に乾燥することによって生じる汚れを乾式清掃で除去することは困難である。そのため、学校をはじめとする公共施設の他、ホテルや劇場のエントランスやロビーでは、美しく装飾された床を保つために湿式清掃が行われる。日本に比べて高温多湿な東南アジアでは、一般家庭でもモップとクリーナーを用いた湿式清掃(水拭き掃除)が、居住空間の床面の掃除の主流となっている。更に、最近では「掃除後に良い香りが持続すること」が清潔実感ポイントの1つとなっており、フロアクリーナーには掃除後の残香性が強く求められている。
【0003】
特許文献1は、界面活性剤濃度を低く維持しつつ、高濃度の非水溶性の香料化合物を安定に配合した床用液体洗浄剤組成物を開示されている。
特許文献2には、衣料用洗剤組成物中のカチオン性ポリマー、アニオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤の比率を注意深く制御することで、洗濯時の布地を柔らかくする効果を改善しつつ、香料又は封入香料の定着性をも向上させる技術が開示されている。
特許文献3には、カチオン性界面活性剤と、水溶性アニオン性ポリマーまたは水溶性両性ポリマー、及び高融点脂肪族化合物を含有し、使用時のコアセルベート現象を利用することで、改良されたコンディショニング効果を提供するコンディショニング組成物が開示されている。
特許文献4では、コアセルベーションシステムの活用により、香料カプセルなど特定カプセルの凝集を抑制することで、対象物への吸着性を向上させ知覚強度を高めた技術が開示されている。
特許文献5には、表面が多価の金属イオン及び/又はカチオン界面活性剤による被覆によってカチオン性に変性し、かつ粒径が10nm~100μmであるカチオン変性疎水性ポリマーの使用によって、前記ポリマーの木綿繊維への被覆性と保持性を高める技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-241353号公報
【特許文献2】特表2017-524048号公報
【特許文献3】特表2008-543952号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2017/273877号明細書
【特許文献5】特表2003-535986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
居間、部屋、台所、浴室、及びトイレ等から選ばれる居住まわりの硬質表面液体洗浄剤組成物は、嗜好性の高い香料に代表される疎水性機能化剤を配合して商品価値を高めることが行われる。例えば、居住まわりの床用洗浄剤の使用方法として、一般的な方法は床用洗浄剤を水で100倍程度に希釈した洗浄液をモップ等の基体に含侵させてから、床面を拭き掃除する方法である。そのため、前記洗浄液を含侵させた基体で床面を拭き掃除するときも香り立ちが高くなるように、床用洗浄剤には非水溶性の香料化合物を含む香料を高濃度で配合する必要があり、溶液安定性の低下を引き起こし易い傾向にあった。また、床用洗浄剤には、香料の可溶化(水溶液化)のために、多量の界面活性剤を配合する必要があるため、配合コストの増加や環境負荷を助長するという大きな問題があった。
しかしながら、上記した先行文献には前記記載の課題を解決する手段は何ら示されていない。
【0006】
従って、本発明の課題は、香料などの疎水性機能化剤を含有する硬質表面用洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液として基体に含侵させて、前記洗浄液を含侵させた基体を硬質表面に接触させて洗浄処理する場合に、硬質表面用洗浄剤組成物に含まれる疎水性機能化剤を硬質表面に効率的に移行させることができる、硬質表面用洗浄剤組成物、及び硬質表面の洗浄処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、及び水を含有する硬質表面用洗浄剤組成物であって、該洗浄剤組成物中の(a)成分のイオン等量と(b)成分のイオン等量との比(a)/(b)が0.25以上5.5以下である、硬質表面用洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:カチオン性基及びアニオン性基のいずれか一方を有するモノマー単位を50モル%以上100モル%以下含有し、重量平均分子量が4,000以上1,000,000以下であるイオン性高分子化合物
(b)成分:分子量が1000以下であり、(a)成分のイオン性高分子とは反対の電荷を有するイオン性界面活性剤
(c)成分:疎水性機能化剤
(d)成分:無機塩
【0008】
また、本発明は、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液を基体に含侵させて、前記洗浄液を含侵させた基体を硬質表面に接触させて、硬質表面の汚れの除去と(c)成分の硬質表面への移行を同時に行う、硬質表面の洗浄処理方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、香料などの疎水性機能化剤を含有する硬質表面用洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液として基体に含侵させて、前記洗浄液を含侵させた基体を硬質表面に接触させて洗浄処理する場合に、硬質表面用洗浄剤組成物に含まれる疎水性機能化剤を硬質表面に効率的に移行させることができる、硬質表面用洗浄剤組成物、及び硬質表面の洗浄処理方法が提供される。
【0010】
また本発明は、洗浄液に含まれる界面活性剤、及び疎水性機能化剤の含有量に依存することなく、疎水性機能化剤を硬質表面に効率的に移行させることができるため、硬質表面用洗浄剤組成物中の界面活性剤の含有量を少なくすることができ、配合コストや環境負荷を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物、及び硬質表面の洗浄処理方法が、香料などの疎水性機能化剤を含有する硬質表面用洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液として基体に含侵させて、前記洗浄液を含侵させた基体を硬質表面に接触させて洗浄処理する場合に、硬質表面用洗浄剤組成物に含まれる疎水性機能化剤を硬質表面に効率的に移行させることができる理由は必ずしも定かではないが以下のように推定される。
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物中において、(a)成分であるイオン性高分子化合物、及び(b)成分であるイオン性界面活性剤は、(d)成分である無機塩によって電荷遮蔽を受けることで安定に溶存状態を保っている。また本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を水で希釈して洗浄液を調製した際には、無機塩の濃度が低下することで(a)成分と(b)成分の両基剤間に静電相互作用が働き、疎水的な会合体(コアセルベート)を形成するが、この時コアセルベート内部には(c)成分である疎水性機能化剤が高濃度に取り込まれ、洗浄液中において疎水性機能化剤の局在化が生じる。この洗浄液を基体に含侵させ、硬質表面に接触させた場合、粒子状の疎水的な会合体であるコアセルベートが基体へ付着、脱離しやすいため、このコアセルベートを洗浄液から基体、基体から硬質表面へと移行させることで、コアセルベート内に含まれる疎水性機能化剤を効率的に硬質表面に移行させることができたものと推定される。
【0012】
[硬質表面用洗浄剤組成物]
<(a)成分>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、(a)成分として、カチオン性基及びアニオン性基のいずれか一方を有するモノマー単位を50モル%以上100モル%以下含有し、重量平均分子量が4,000以上1,000,000以下であるイオン性高分子化合物を含有する。
後述する(b)成分がカチオン性界面活性剤である場合、(a)成分は、アニオン性基を有するモノマー単位を50モル%以上100モル%以下含有し、重量平均分子量が4,000以上1,000,000以下であるアニオン性高分子化合物(以下、(a1)成分という)である。
また(b)成分がアニオン性界面活性剤である場合、(a)成分は、カチオン性基を有するモノマー単位を50モル%以上100モル%以下含有し、重量平均分子量が4,000以上1,000,000以下であるカチオン性高分子化合物(以下、(a2)成分という)である。
【0013】
(a1)成分のアニオン性高分子化合物は、アニオン性基を有するモノマー単位を含有する。
アニオン性基を有するモノマー単位としては、カルボキシル基、スルホ基、又はリン酸基から選ばれるアニオン性基を有するモノマー単位が挙げられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、スルホン酸、スチレンスルホン酸、メタクリロイルオキシアルキルスルホン酸、メタクリルアミドアルキルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルホスフェート、及びこれらの無水物や一部がアルキル基等により置換されてなるモノマー、並びにヒドロキシ基の一部にカルボキシメチル基が結合してなるグリコピラノース等の糖由来のモノマーから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0014】
(a1)成分のアニオン性高分子化合物は、全構成モノマー単位中、アニオン性基を有するモノマー単位を、コアセルベート形成および界面活性剤濃度低減の観点から、50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上、そして、100モル%以下含有する。(a1)成分のアニオン性高分子化合物は、全構成モノマー単位中、アニオン性基を有するモノマー単位が100モル%であってよい。
【0015】
(a1)成分のアニオン性高分子化合物は、ノニオン性基を有するモノマー単位を含有することができる。
ノニオン性基を有するモノマー単位としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルアルコール、スチレン、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ステアリル、グリコピラノース等の糖由来のモノマーから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0016】
(a1)成分のアニオン性高分子化合物は、全構成モノマー単位中、ノニオン性基を有するモノマー単位を、溶解性の観点から、好ましくは0モル%以上、そして、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは20モル%以下含有する。
【0017】
(a1)成分のアニオン性高分子化合物は、(a2)成分で後述するカチオン性基を有するモノマー単位を含有してよいが、その含有量は制限される。
(a1)成分のアニオン性高分子化合物は、全構成モノマー単位中、カチオン性基を有するモノマー単位の含有量は、コアセルベート形成の観点から、好ましくは30モル%以下、より好ましくは15モル%以下、更に好ましくは5モル%以下、より更に好ましくは1モル%以下である。(a1)成分のアニオン性高分子化合物は、好ましくはカチオン性基を有するモノマー単位を含有しない。
【0018】
(a1)成分のアニオン性高分子化合物の重量平均分子量は、コアセルベート形成および配合適性の観点から、4,000以上、好ましくは5,000以上、更に好ましくは10,000以上、より更に好ましくは50,000以上、より更に好ましくは100,000以上、そして、1,000,000以下、好ましくは500,000以下、更に好ましくは200,000以下である。
ここで、(a1)成分の重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準サンプルとして例えば下記条件のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたものである。
カラム:東ソー株式会社製TSK-GEL α-M、
溶離液:〔50mmol/L LiBr 1%CH3COOH/エタノール〕:水=3:7、
検出器:RI、
サンプル濃度:5mg/mL
【0019】
(a1)成分のアニオン性高分子化合物は、具体的には、アクリル酸ホモポリマー、メタクリル酸ホモポリマー、架橋型アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、アクリル酸/メタクリル酸コポリマー、アクリル酸/スルホン酸コポリマー、酢酸ビニル/マレイン酸コポリマー、ホスフィン酸/アクリル酸コポリマー、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸、カラギーナン、ペクチン、ヒアルロン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられ、コアセルベート形成の観点から、好ましくはカルボキシメチルセルロース、アクリル酸ホモポリマー、メタクリル酸ホモポリマー、架橋型アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸/メタクリル酸コポリマー、及びこれらの塩から選ばれる1種以上であり、より好ましくはカルボキシメチルセルロース、アクリル酸ホモポリマー、及びこれらの塩から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはカルボキシメチルセルロース、及びその塩から選ばれる1種以上である。塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0020】
(a1)成分のアニオン性高分子化合物が、カルボキシメチルセルロース、及びその塩から選ばれる1種以上である場合、重量平均分子量は、コアセルベート形成の観点から、好ましくは10,000以上、より好ましくは12,000以上、更に好ましくは15,000以上、より更に好ましくは50,000以上、より更に好ましくは100,000以上、そして、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、更に好ましくは200,000以下である。またエーテル化度(カルボキシメチル置換度)は、溶解性および界面活性剤濃度低減の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下である。
エーテル化度(カルボキシメチル置換度)の測定方法は以下の通りである。
試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを三角フラスコに加え、3時間振盪して、カルボキシメチル化セルロースの塩(CMC)をH-CMC(水素型カルボキシメチル化セルロース)に変換する。その絶乾H-CMCを1.5~2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。80%メタノール15mLでH-CMCを湿潤し、0.1N-NaOHを100mL加え、室温で3時間振盪する。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N-H2SO4で過剰のNaOHを逆滴定し、次式によってエーテル化度(カルボキシメチル置換度)(DS値)を算出する。
A=[(100×F’-0.1N-H2SO4(mL)×F)×0.1]/(H-CMCの絶乾質量(g))
カルボキシメチル置換度=0.162×A/(1-0.058×A)
F’:0.1N-H2SO4のファクター
F:0.1N-NaOHのファクター。
【0021】
(a2)成分のカチオン性高分子化合物は、カチオン性基を有するモノマー単位を含有する。
カチオン性基を有するモノマー単位としては、第四級アンモニウム基等のカチオン性基、又はカチオン性基にイオン化することができる第一級、第二級又は第三級アミノ基等の基を有するモノマー単位が挙げられ、より具体的には、アミン基若しくはアンモニウム基を有するモノマー単位や、ジアリル四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0022】
(a2)成分のカチオン性高分子化合物は、全構成モノマー単位中、カチオン性基を有するモノマー単位を、溶解性および界面活性剤濃度低減の観点から、50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上、そして、100モル%以下含有する。(a2)成分のカチオン性高分子化合物は、全構成モノマー単位中、カチオン性基を有するモノマー単位が100モル%であってよい。
【0023】
(a2)成分のカチオン性高分子化合物は、(a1)成分で記載したノニオン性基を有するモノマー単位を含有することができる。
(a2)成分のカチオン性高分子化合物は、全構成モノマー単位中、ノニオン性基を有するモノマー単位を、溶解性の観点から、好ましくは0モル%以上、そして、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは20モル%以下含有する。
【0024】
(a2)成分のカチオン性高分子化合物は、(a1)成分で記載したアニオン性基を有するモノマー単位を含有してよいが、その含有量は制限される。
(a2)成分のカチオン性高分子化合物は、全構成モノマー単位中、アニオン性基を有するモノマー単位の含有量は、コアセルベート形成の観点から、好ましくは30モル%以下、より好ましくは15モル%以下、更に好ましくは5モル%以下、より更に好ましくは1モル%以下である。(a2)成分のカチオン性高分子化合物は、好ましくはアニオン性基を有するモノマー単位を含有しない。
【0025】
(a2)成分のカチオン性高分子化合物の重量平均分子量は、コアセルベート形成および配合適性の観点から、4,000以上、好ましくは5,000以上、更に好ましくは10,000以上、より更に好ましくは100,000以上、より更に好ましくは300,000以上、より更に好ましくは600,000以上、そして、1,000,000以下、好ましくは900,000以下、更に好ましくは850,000以下である。
ここで、(a2)成分の重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準サンプルとして例えば下記条件のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたものである。
カラム:東ソー株式会社製TSK-GEL α-M、
溶離液:〔50mmol/L LiBr 1%CH3COOH/エタノール〕:水=3:7、
検出器:RI、
サンプル濃度:5mg/mL
【0026】
(a2)成分のカチオン性高分子化合物は、具体的には、カチオン化セルロース、カチオン性スターチ、カチオン性グアーガム、第四級アンモニウム側鎖を有するビニル系又は(メタ)アクリル系ポリマー又はコポリマー、四級化ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリレート/アミノアクリレートコポリマー、アミン置換ポリ(メタ)アクリレートクロスポリマー、ジアリル四級アンモニウム塩のポリマー又はコポリマー、及び四級化ポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0027】
カチオン化セルロースの具体例としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドをヒドロキシエチルセルロースに付加することにより得られる第四級アンモニウム塩のポリマー(ポリクオタニウム-10)、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリドコポリマー(ポリクオタニウム-4)、並びにヒドロキシエチルセルロースをトリメチルアンモニウム置換エポキシド及びラウリルジメチルアンモニウム置換エポキシドと反応させることにより得られる第四級アンモニウム塩のポリマー(ポリクオタニウム-67)が挙げられる。
第四級アンモニウム側鎖を有するビニル系又は(メタ)アクリル系ポリマー又はコポリマーの例としては、ポリ(2-メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド)(ポリクオタニウム-37)を挙げることができる。
四級化ポリビニルピロリドンの具体例としては、ビニルピロリドン(VP)及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルのコポリマーと硫酸ジエチルとから合成される第四級アンモニウム塩(ポリクオタニウム-11)が挙げられる。
(メタ)アクリレート/アミノアクリレートコポリマーの例としては、(アクリレーツ/アミノアクリレーツ/C10-30アルキルPEG-20イタコン酸)コポリマーを挙げることができる。
アミン置換ポリ(メタ)アクリレートクロスポリマーの例としては、ポリアクリレート-1 クロスポリマー、ポリクオタニウム-52を挙げることができる。
【0028】
(a2)成分のカチオン性高分子化合物は、コアセルベート形成の観点から、好ましくはカチオン化セルロース、カチオン性スターチ、カチオン性グアーガム、第四級アンモニウム側鎖を有するビニル系又は(メタ)アクリル系ポリマー又はコポリマー、及び(メタ)アクリレート/アミノアクリレートコポリマーから選ばれる1種以上であり、より好ましくはカチオン化セルロース、カチオン性スターチ、及びカチオン性グアーガムから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドをヒドロキシエチルセルロースに付加することにより得られるカチオン化ヒドロキシエチルセルロースである。
【0029】
<(b)成分>
本発明の(b)成分は、分子量が1000以下であり、(a)成分のイオン性高分子とは反対の電荷を有するイオン性界面活性剤である。
上記した(a)成分が(a1)成分である場合、(b)成分は、カチオン性界面活性剤(以下、(b1)成分という)である。
また(a)成分が(a2)成分である場合、(b)成分は、アニオン性界面活性剤(以下、(b2)成分という)である。
【0030】
(b1)成分のカチオン性界面活性剤としては、好ましくは下記一般式(b11)で表される化合物、及び下記一般式(b12)で表される化合物から選ばれる1種以上である。
【0031】
【0032】
〔式中、R1bは、炭素数8以上22以下の脂肪族炭化水素基であり、R2bは、炭素数8以上22以下の脂肪族炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、R3b及びR4bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、X-は陰イオンである。〕
【0033】
【0034】
〔式中、R5bは、炭素数8以上22以下の脂肪族炭化水素基であり、R6b及びR7bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、X-は陰イオンである。〕
【0035】
一般式(b11)において、R1bの炭素数は、コアセルベート形成の観点から、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上、そして、22以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。R1bは、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基が好ましい。
一般式(b11)において、R2bは、炭素数8以上22以下の脂肪族炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。
R2bが、炭素数8以上22以下の脂肪族炭化水素基である場合、R2bは、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下であり、アルキル基又はアルケニル基であり、好ましくはアルキル基である。
R2bは、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基である。
【0036】
一般式(b11)において、R3b及びR4bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。R3b及びR4bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基から選ばれる基であることが好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0037】
一般式(b11)において、X-は陰イオンである。陰イオンとしては、ハロゲンイオン、例えばクロルイオン、ブロモイオン及びヨウ素イオンが挙げられる。また、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン及びプロピル硫酸イオンが挙げられる。
【0038】
一般式(b11)の化合物の好ましい化合物としては、アルキル基の炭素数が8以上22以下であるN-アルキル-N,N,N-トリメチルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が8以上22以下であるN,N-ジアルキル-N,N-ジメチル-アンモニウム塩、アルキル基の炭素数が8以上22以下であるN,N-ジアルキル-N-エチル-N-メチルアンモニウム塩及びアルキル基の炭素数が8以上22以下であるN-アルキル-N,N-ジメチル-N-エチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0039】
一般式(b12)において、R5bは、炭素数8以上22以下の脂肪族炭化水素基である。R5bの炭素数は、コアセルベート形成の観点から、8以上、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、そして、22以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。R5bは、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基が好ましい。
【0040】
一般式(b12)において、R6b及びR7bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。R6b及びR7bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基から選ばれる基であることが好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0041】
一般式(b12)において、X-は陰イオンである。陰イオンとしては、ハロゲンイオン、例えばクロルイオン、ブロモイオン及びヨウ素イオンが挙げられる。また炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン及びプロピル硫酸イオンが挙げられる。
【0042】
一般式(b12)の化合物の具体例としては、N-オクチル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-デシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ドデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ドデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ヘキサデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ドデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩及びN-ヘキサデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0043】
(b2)成分のアニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩、アルキル又はアルケニル硫酸エステル塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸、リン酸モノ又はジエステル、スルホコハク酸エステル等が挙げられる。
アニオン界面活性剤のアルキル基又はアルケニル基は、例えば、炭素数8以上22以下である。アニオン界面活性剤のオキシアルキレン基の平均付加モル数は、例えば、0以上10以下である。
これらアニオン界面活性剤のアニオン性基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1~3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)が挙げられる。
これら界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
(b2)成分は、洗浄力の観点から、アルキル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル、アルカンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩がより好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩のアルキル基の炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、より更に好ましくは16以下であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下であり、オキシアルキレン基は、オキシエチレン基が好ましい。
【0045】
<(c)成分>
本発明の(c)成分は、疎水性機能化剤である。疎水性機能化剤は、硬質表面用洗浄剤組成物の用途・目的などを考慮してある特定の機能を当該組成物に付与する成分である。(c)成分について、疎水性とは、CLogPが2以上の機能化剤をいう。
本発明においてCLogPはPerkin Elmer社のChem Dio Draw Ultra ver.14.0のChemPropertyを用いて算出した計算値を用いる。なお、ClogPの値が大きい程、疎水性が高いことを表す。
【0046】
(c)成分のCLogPは、コアセルベートへの取り込みおよび溶解性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは2.8以上、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。
【0047】
(c)成分の疎水性機能化剤としては、香料、抗菌剤(但し、(b)成分に該当する化合物は除く)、及び酸化防止剤から選ばれる1種以上が挙げられ、基剤設計の容易性と安定性の観点から、香料が好ましい。
【0048】
香料は、天然香料でも合成香料でもよい。香料は、「香料の化学」(赤星亮一著,日本化学会編,産業化学シリーズ,昭和58年9月16日発行)や「合成香料 化学と商品知識」(印藤 元一著,化学工業日報社,1996年3月6日発行)や「香料と調香の実際知識」(中島 基貴著,産業図書(株),1995年6月21日発行)に記載の香料成分を1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
香料成分は具体的には、炭化水素系香料、アルコール系香料、エーテル系香料、アルデヒド系香料、ケトン系香料、エステル系香料、ラクトン系香料、環状ケトン系香料などを挙げることができる。
【0050】
〔炭化水素系香料〕
炭素系香料としては、α-ピネン(4.70)、β-ピネン(4.70)、カンフェン(4.70)、リモネン(4.35)、ターピネオール(2.63)、ターピノレン(4.35)、γ-ターピネン(4.35)などが挙げられる。( )内はCLogPの値を示す。
【0051】
〔アルコール系香料〕
アルコール系香料としては、3-オクタノール(2.72)、リナロール(2.75)、ゲラニオール(2.97)、ネロール(2.97)、シトロネロール(3.25)、ロジノール(3.25)、ミルセノール(3.03)、ラバンジュロール(2.64)、テトラヒドロリナロール(3.52)、ターピネオール(2.63)、l-メントール(3.23)、ボルネオール(3.10)、イソプレゴール(2.75)、ノポール(3.24)、p-t-ブチルシクロヘキサノール(3.11)、o-t-ブチルシクロヘキサノール(3.11)、アンブリノール(3.77)、ジメチルベンジルカルビノール(2.04)、オイゲノール(2.40)、ポリサントール(4.61)、フェニルヘキサノール(3.53)、ジヒドロミルセノール(3.03)などが挙げられる。( )内はCLogPの値を示す。
【0052】
〔エーテル系香料〕
エーテル系香料としては、ネロールオキサイド(2.82)、1,8-シネオール(2.83)、ローズオキサイド(3.17)、リメトール(3.28)メントフラン(3.91)、セドリルメチルエーテル(5.25)、メトキシシクロドデカン(5.34)、1-メチル-1-メトキシシクロドデカン(5.86)、アニソール(2.06)、アネトール(3.31)、ジヒドロアネトール(3.62)、メチルオイゲノール(2.87)、フェニルエチルイソアミルエーテル(3.90)、β-ナフチルメチルエーテル(3.24)、β-ナフチルエチルエーテル(3.77)、エストラゴール(3.13)などが挙げられる。( )内はCLogPの値を示す。
【0053】
〔アルデヒド系香料〕
アルデヒド系香料としては、ノニルアルデヒド(3.48)、デシルアルデヒド(4.01)、ウンデシルアルデヒド(4.54)、ドデシルアルデヒド(5.07)、トリデシルアルデヒド(5.60)、2,6-ノナジエノール(2.68)、シス-4-デセナール(3.52)、シトラール(2.95)、シトロネラール(3.26)、ボロナール(4.55)、ヘリオナール(2.37)などが挙げられる。( )内はCLogPの値を示す。
【0054】
〔ケトン系香料〕
ケトン系香料としては、エチルアミルケトン(2.31)、メチルヘキシルケトン(2.44)、メチルノニルケトン(4.02)、α-イオノン(3.71)、β-イオノン(3.77)、メチルイオノン(4.24)、α-イロン(4.23)、α-ダマスコン(3.82)、ジヒドロジャスモン(3.32)、シス-ジャスモン(2.83)、p-メチルアセトフェノン(2.08)、メチルナフチルケトン(2.76)、ベンゾフェノン(3.18)などが挙げられる。( )内はCLogPの値を示す。
【0055】
〔エステル系香料〕
エステル系香料としては、ギ酸リナリル(3.25)、ギ酸シトロネリル(3.75)、ギ酸ゲラニル(3.47)、酢酸イソアミル(2.17)、酢酸ゲラニル(3.92)、酢酸リナリル(3.70)、酢酸フェニルエチル(2.27)、酢酸スチラリル(2.27)、酢酸シンナミル(2.55)、プロピオン酸ゲラニル(4.44)、プロピオン酸リナリル(4.22)、イソ吉草酸シトロネリル(5.66)、イソ吉草酸ゲラニル(5.37)、桂皮酸エチル(2.99)、桂皮酸ベンジル(4.23)、桂皮酸シンナミル(4.84)、ジャスモン酸メチル(2.43)、ジヒドロジャスモン酸メチル(2.91)、フルテート(3.37)、シクロヘキシルサリチレート(4.37)などが挙げられる。( )内はCLogPの値を示す。
【0056】
〔ラクトン系香料、環状ケトン系香料、その他〕
その他の香料としては、γ-デカラクトン(2.36)、γ-ウンデカラクトン(2.89)、δ-デカラクトン(2.39)、ムスコン(6.42)、8-シクロヘキサデセン-1-オン(Symrise社製品名、グロバノン)(5.97)、9-シクロヘプタデセン-1-オン(Firmenich社製品名、シベトン)(7.09)、シクロペンタデカノン(5.90)、アンバーコア(3.97)、メチルジヒドロジャスモネート(2.91)、メントン(2.83)、カルボン(2.20)、ガラクソリッド(5.74)、ムスクケトン(3.87)などが挙げられる。( )内はCLogPの値を示す。
【0057】
〔天然香料〕
(c)成分として、CLogPが2以上の疎水性の香料を含む天然香料を用いることができる。天然香料としては、植物性や動物性の天然精油や天然抽出物が挙げられる。
これらのなかでも、植物精油が好ましく、例えば、シトラス系香料(オレンジ、レモン、ライム、ベルガモットなど)、ペチグレン、ネロリ、バニラ、マンダリン、ミント系香料(ペパーミント、スペアミントなど)、ラベンダー、ラバンジン、カモミル、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ロックローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、セダーウッド、ヒノキ、ベチバー、グアイヤックウッド、パチュリ、レモングラス、ラブダナム、ガルバナム、オリバナム、ガージャンバルサム、フェンネルなどが挙げられる。これらの天然香料にはCLogPが2以上の疎水性の香料が含まれる。
【0058】
抗菌剤としては、グルコン酸クロルヘキシジン(3.74)、塩酸ポリヘキサメチレンビグアニジン(2.01)、トリクロサン(5.53)、イソプロピルメチルフェノール(3.35)、トリクロロカルバニリド(5.47)などが挙げられる。( )内はCLogPの値を示す。
【0059】
酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン(5.43)、ブチルヒドロキシアニソール(3.40)、トコフェロール(12.05)、ノルジヒドログヤレチック酸(3.92)、2、2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(8.18)、ジラウリルチオジプロピオネート(12.62)、及びトリフェニルフォスファイト(5.73)などが挙げられる。( )内はCLogPの値を示す。
【0060】
<(d)成分>
本発明の(d)成分は、無機塩である。
無機塩としては、無機アルカリ金属塩、無機アルカリ土類金属塩及び第4周期第8族~12族元素の塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
(d)成分の塩としては、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、及び亜硫酸塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
(d)成分は、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、第4周期第8族~12族の元素としては、鉄、銅、亜鉛から選ばれる1種以上の塩を用いることができる。
(d)成分としては、コアセルベート形成の観点から、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、及び硫酸マグネシウムから選ばれる1種以上が好ましい。
【0061】
<組成等>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、(a)成分を、疎水性機能化剤の硬質表面への移行性、仕上がり性、及び配合適性の観点から、洗浄剤組成物中、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下含有する。
本発明において、(a)成分が(a1)成分のアニオン性高分子化合物である場合、(a1)成分の質量に関する規定は、酸換算した値を用いるものとする。また(a)成分が(a2)成分のカチオン性高分子化合物である場合、(a2)成分の質量に関する規定は、クロル塩換算した値を用いるものとする。
【0062】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、(b)成分を、疎水性機能化剤の硬質表面への移行性、洗浄力、及び仕上がり性の観点から、洗浄剤組成物中、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、更に好ましくは0.6質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下含有する。
また(b)成分が(b1)成分である場合、(b1)成分の質量に関する規定は、クロル塩に換算した値を用いるものとする。
また(b)成分が(b2)成分である場合、(b2)成分の質量に関する規定は、ナトリウム塩に換算した値を用いるものとする。
【0063】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物において、洗浄剤組成物中の(a)成分のイオン等量と(b)成分のイオン等量との比(a)/(b)は、疎水性機能化剤の硬質表面への移行性向上の観点から、0.25以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、より更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは0.6以上、より更に好ましくは0.7以上、より好ましくは1以上、そして、5.5以下、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。
本発明において、イオン等量とは、洗浄剤組成物中に含まれる(a)成分又は(b)成分のモル濃度に、(a)成分又は(b)成分の1分子中に含まれるイオンの価数を乗じたものである。また(a)成分のイオン等量と(b)成分のイオン等量との比(a)/(b)の詳細な算出方法は、例えば実施例に記載のものを用いることができる。
【0064】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、(c)成分を、(c)成分が香料である場合、香り立ちの観点から、洗浄剤組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、そして、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下含有する。
【0065】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物において、洗浄剤組成物中の(c)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(c)/(a)は、疎水性機能化剤の硬質表面への移行性と配合適性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.2以上、そして、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0066】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、(d)成分を、配合安定性の観点から、洗浄剤組成物中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、そして、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下含有する。
【0067】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物において、洗浄剤組成物中の(c)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(c)/(b)は、溶解性の観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、そして、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下である。
【0068】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、洗浄力の観点から、更に下記(e)成分を含有することができる。
(e)成分:非イオン性界面活性剤
【0069】
(e)成分の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油等のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤及び脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0070】
(e)成分は、洗浄力および仕上がり性の観点から、下記一般式(e1)で表される化合物が好ましい。
R1e(CO)mO-(AO)n-R2e (e1)
〔式中、R1eは炭素数9以上16以下の第1級脂肪族炭化水素基であり、R2eは水素原子又はメチル基であり、COはカルボニル基であり、mは0又は1の数であり、AO基はエチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる1種以上の基であり、nは平均付加モル数であって、6以上30以下の数である。〕
【0071】
一般式(e1)中、R1eは、洗浄力および仕上がり性の観点から、炭素数9以上、好ましくは12以上、そして、16以下、好ましくは14以下の第1級脂肪族炭化水素基、好ましくは第1級アルキル基又は第1級アルケニル基、より好ましくは第1級アルキル基である。
AO基は、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる1種以上の基であり、好ましくはエチレンオキシ基である。
nは平均付加モル数であって、コアセルベート形成の観点から、6以上、好ましくは10以上、更に好ましくは15以上、そして、洗浄力、香料溶解性および仕上がり性の観点から、30以下、好ましくは25以下、更に好ましくは20以下である。
【0072】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、(e)成分を、洗浄力と(c)成分の溶解性と仕上がり性の観点から、洗浄剤組成物中、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、更に好ましくは0.6質量%以上、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下含有する。
【0073】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物において、洗浄剤組成物中の(e)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(e)/(a)は、コアセルベート形成の観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.8以上、そして、好ましくは5以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.5以下である。
【0074】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物において、洗浄剤組成物中の(e)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(e)/(b)は、コアセルベート形成の観点から、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.8以上、そして、好ましくは4以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0075】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物中、全界面活性剤の含有量((b)成分、及び(e)成分を含む全界面活性剤の含有量)は、洗浄力の観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、仕上がり性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0076】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、水を含有する。すなわち、前記(a)~(e)成分、及び後述するその他の任意成分以外の残部が水である。本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、水を、洗浄剤組成物中、好ましくは90質量%以上、より好ましくは92質量%以上、更に好ましくは94質量%以上、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは96質量%以下含有する。水は、イオン交換水、滅菌イオン交換水等を使用することが好ましい。
【0077】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、その他の任意成分として、防腐剤、増粘剤、防錆剤、pH調整剤、色素等(但し、前記(a)~(e)成分に該当するものは除く)を含有することができる。
【0078】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、25℃におけるpHが、仕上がり性および金属製品損傷性の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、そして、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である。
【0079】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、25℃における粘度が、好ましくは3mPa・s以上、より好ましくは10mPa・s以上、そして、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは300mPa・s以下である。この粘度は、B型粘度計((株)東京計器製、VISCOMETERMODEL DVM-B)を用い、ローターNo.1、2又は3、回転数60r/min、測定時間60秒で測定されたものである。ローターはサンプルの粘度に適したものが選択されるが、測定可能な粘度領域が重なる場合であって、異なった数値が得られた場合は、No.2の数値を採用するものとする
【0080】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、居間、部屋、台所、浴室、及びトイレから選ばれる居住まわりの硬質表面(各種物品、床、壁、天井等)の洗浄に用いられる。
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物の対象とする硬質表面の材質は、木材、タイル、ガラス、ステンレス、プラスチック、及びセラミックから選ばれる1種以上である。
【0081】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、該洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液を基体に含侵させて、前記洗浄液を含侵させた基体を硬質表面に接触させて洗浄処理する方法に用いられる。
【0082】
[硬質表面の洗浄処理方法]
本発明は、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液(以下、本発明の洗浄液という)を基体に含侵させて、前記洗浄液を含侵させた基体を硬質表面に接触させて、硬質表面の汚れの除去と(c)成分の硬質表面への移行を同時に行う、硬質表面の洗浄処理方法を提供する。
本発明の硬質表面の洗浄処理方法は、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物に記載した事項を適宜適用することができる。
【0083】
本発明の洗浄液は、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を、水で、洗浄力および仕上がり性の観点から、好ましくは50倍以上、より好ましくは70倍以上、更に好ましくは90倍以上、そして、好ましくは200倍以下、より好ましくは150倍以下、更に好ましくは110倍以下で希釈して調製する。
【0084】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を水で希釈して、本発明の洗浄液を調製する際に使用する水の硬度は、洗浄性の観点から、ドイツ硬度で、好ましくは1°DH以上、より好ましくは5°DH以上、そして、好ましくは50°DH以下、より好ましくは20°DH以下、更に好ましくは10°DH以下である。
ここで、本明細書におけるドイツ硬度(°dH)とは、水中におけるカルシウム及びマグネシウムの濃度を、CaCO3換算濃度で1mg/L(ppm)=約0.056°dH(1°dH=17.8ppm)で表したものを指す。このドイツ硬度のためのカルシウム及びマグネシウムの濃度は、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を使用したキレート滴定法で求められる。
本明細書における水のドイツ硬度の具体的な測定方法を下記に示す。
<水のドイツ硬度の測定方法>
〔試薬〕
・0.01mol/l EDTA・2Na溶液:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの0.01mol/l水溶液(滴定用溶液、0.01 M EDTA-Na2、シグマアルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製)
・Universal BT指示薬(製品名:Universal BT(株)同仁化学研究所製)
・硬度測定用アンモニア緩衝液(塩化アンモニウム67.5gを28w/v%アンモニア水570mlに溶解し、イオン交換水で全量を1000mlとした溶液)
〔硬度の測定〕
(1)試料となる水20mlをホールピペットでコニカルビーカーに採取する。
(2)硬度測定用アンモニア緩衝液2ml添加する。
(3)Universal BT指示薬を0.5ml添加する。添加後の溶液が赤紫色であることを確認する。
(4)コニカルビーカーをよく振り混ぜながら、ビュレットから0.01mol/l EDTA・2Na溶液を滴下し、試料となる水が青色に変色した時点を滴定の終点とする。
(5)全硬度は下記の算出式で求める。
硬度(°dH)=T×0.01×F×56.0774×100/A
T:0.01mol/l EDTA・2Na溶液の滴定量(mL)
A:サンプル容量(20mL、試料となる水の容量)
F:0.01mol/l EDTA・2Na溶液のファクター
【0085】
本発明の洗浄液は、(a)成分を、疎水性機能化剤の硬質表面への移行性、仕上がり性、及び配合適性の観点から、洗浄液中、好ましくは10ppm以上、より好ましくは40ppm以上、更に好ましくは50ppm以上、そして、好ましくは600ppm以下、より好ましくは200ppm以下、更に好ましくは100ppm以下含有する。
【0086】
本発明の洗浄液は、(b)成分を、疎水性機能化剤の硬質表面への移行性、及び仕上がり性の観点から、洗浄液中、好ましくは10ppm以上、より好ましくは40ppm以上、更に好ましくは60ppm以上、そして、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは100ppm以下含有する。
【0087】
本発明の洗浄液は、(c)成分を、(c)成分が香料である場合、使用時の香り立ちの観点から、洗浄液中、好ましくは5ppm以上、より好ましくは20ppm以上、そして、好ましくは300ppm以下、より好ましくは120ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、より更に好ましくは50ppm以下含有する。
【0088】
本発明の洗浄液は、(d)成分を、配合安定性の観点から、洗浄液中、好ましくは25ppm以上、より好ましくは100ppm以上、更に好ましくは150ppm以上、そして、好ましくは800ppm以下、より好ましくは350ppm以下、更に好ましくは300ppm以下含有する。
【0089】
本発明の洗浄液は、(e)成分を含有する場合、(e)成分を、洗浄力、(c)成分の溶解性および仕上がり性の観点から、洗浄液中、好ましくは10ppm以上、より好ましくは40ppm以上、更に好ましくは60ppm以上、そして、好ましくは600ppm以下、より好ましくは200ppm以下、更に好ましくは150ppm以下含有する。
【0090】
本発明の洗浄液において、洗浄液中の(a)成分のイオン等量と(b)成分のイオン等量との比(a)/(b)、(c)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(c)/(a)、(c)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(c)/(b)、(e)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(e)/(a)、(e)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(e)/(b)は、それぞれ、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物で記載した範囲と同様である。
【0091】
本発明の洗浄液は、25℃におけるpHが、仕上がり性および金属製品低損傷性の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、そして、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である。
【0092】
硬質表面の洗浄処理方法では、本発明の洗浄液を基体に含侵させる。基体としては、可撓性を有し、本発明の洗浄液が含浸可能なものであり、使用時に十分な強度を有し、くず等の発生の無いものが用いられる。また無荷重下において後述の量の本発明の洗浄液を含浸し得る基体を用いることが好ましい。
【0093】
そのような基体としては、繊維状材料から構成される繊維構造体、例えば、各種紙、不織布、織布若しくは編布が挙げられる。これらの繊維構造体を構成する繊維状材料としては、例えば、セルロース系繊維、変性セルロース系繊維、合成繊維及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
また、樹脂中に気泡を分散させて得られる多孔質構造体(例えば、スポンジ状構造体)も上記基体として使用できる。
またこのような基体を用いた洗浄用具としては、モップ、シート、ブラシ、スポンジなどが挙げられる。
【0094】
本発明の洗浄液の基体の含侵率は、洗浄力および仕上がり性の観点から、基体質量〔即ち、未含浸状態(乾燥状態)の基体の質量基準〕あたり、好ましくは120質量%以上、より好ましくは150質量%以上、更に好ましくは200質量%以上、そして、好ましくは500質量%以下、より好ましくは400質量%以下、更に好ましくは300質量%以下である。
【0095】
硬質表面の洗浄処理方法では、本発明の洗浄液を含侵させた基体を硬質表面に接触させて、硬質表面の汚れの除去と(c)成分の硬質表面への移行を同時に行う。
対象とする硬質表面は、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物で記載した態様と同じである。
本発明の洗浄液を含侵させた基体の硬質表面への接触は、基体を硬質表面に接触させ、硬質表面に損傷を与えない範囲で外力を加えて、硬質表面の汚れを除去するとともに、本発明の洗浄液を硬質表面に移行させることで、(c)成分を硬質表面に残留させればよく、擦る、揉む、叩く、のいずれであってもよい。
本発明の洗浄液を含侵させた基体の硬質表面への接触後は、そのまま乾燥させればよく、別途水拭き(二度拭き)する必要はない。
【実施例0096】
(1)硬質表面用洗浄剤組成物の調製
下記配合成分を用いて、表1に示す硬質表面用洗浄剤組成物を調製し、以下の項目について評価を行った。表1の硬質表面用洗浄剤組成物は、適量のイオン交換水(80℃)に(a)成分を添加し溶解した後、(d)成分を添加し、更に(b)成分、(c)成分、(e)成分を添加することで調製した。
なお、表1中の配合成分の質量%は、全て有効分に基づく数値である。
【0097】
<配合成分>
<(a)成分>
・カルボキシメチルセルロース1:カルボキシメチルセルロース、(a1)成分、重量平均分子量17,000、エーテル化度0.65~0.75、サンローズAPP-84、日本製紙(株)製
・カルボキシメチルセルロース2:カルボキシメチルセルロース、(a1)成分、重量平均分子量126,000、エーテル化度0.65~0.75、サンローズF10MC、日本製紙(株)製
・カルボキシメチルセルロース3:カルボキシメチルセルロース、(a1)成分、重量平均分子量180,000、エーテル化度0.65~0.75、サンローズF100MC、日本製紙(株)製
・カルボキシメチルセルロース4:カルボキシメチルセルロース、(a1)成分、重量平均分子量420,000、エーテル化度0.55~0.65、サンローズF1000LC、日本製紙(株)製
・ポリアクリル酸:ポリアクリル酸ナトリウム、(a1)成分、ポリアクリル酸(重量平均分子量5,000、ポリアクリル酸5,000、富士フィルム和光純薬(株))を水で希釈し、pH調整(NaOH使用、pH7)によって中和し、ナトリウム塩として用いた。
・アクリル酸/マレイン酸共重合体:アクリル酸とマレイン酸の共重合体、(a1)成分、ポイズ520、アクリル酸/マレイン酸=70/30(モル比)、花王(株)製、重量平均分子量5,000
・カチオン化ヒドロキシエチルセルロース:カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、(a2)成分、重量平均分子量840,000、カチセロM-80、花王(株)製
【0098】
<(b)成分>
・トリメチルステアリルアンモニウムクロリド:一般式(b11)中、R1bが炭素数18のアルキル基、R2b、R3b及びR4bがメチル基、X-がクロルイオンである化合物、(b1)成分、コータミン86W、花王(株)製
・塩化ベンザルコニウム:一般式(b12)中、R5bが炭素数12~16のアルキル基、R6b及びR7bがメチル基、X-がクロルイオンである化合物、(b1)成分、サニゾールB-50、花王(株)製
・ラウレス硫酸ナトリウム:ポリオキシエチレン(2)ラウリルエ一テル硫酸ナトリウム(カッコ内はオキシエチレン基の平均付加モル数)、(b2)成分、エマール227-PH11(TH)、花王インダストリアル(タイランド)カンパニーリミテッド製
【0099】
<(c)成分>
・香料:γ-ウンデカラクトン、CLogP2.89、東京化成工業(株)製
<(d)成分>
・塩化ナトリウム:塩化ナトリウム、富士フィルム和光純薬(株)製
<(e)成分>
・ポリオキシエチレン(19)ラウリルエーテル:ポリオキシエチレン(19)ラウリルエーテル(カッコ内はオキシエチレン基の平均付加モル数)、エマルゲン147、花王(株)製
【0100】
表1中、硬質表面用洗浄剤組成物中の(a)成分のイオン等量と(b)成分のイオン等量との比(a)/(b)は、例えば(a)成分がカルボキシメチルセルロース(以下、CMCという)、(b)成分がトリメチルステアリルアンモニウムクロリド(以下、C18TMACという)の場合以下の方法により算出した。
CMCの化学式は、[C6H7O2(OH)3-A(OCH2COO-)A]x(Aはエーテル化度、xは重合度)であるので、CMCの分子量Mw(1)は、(162+57A)xとなる。
次に、CMCの硬質表面用洗浄剤組成物中のモル濃度([CMC]mol/L)は、硬質表面用洗浄剤組成物中のCMCの含有量をa質量%とすると、
[CMC]mol/L=10a/Mw(1)=10a/[(162+57A)x]となる。
そして、CMC1分子に含まれるカルボキシ基の数から、硬質表面用洗浄剤組成物中のCMCのイオン等量([COO-]mol/L)を算出すると、
[COO-]mol/L=[CMC]*x*A=10a*x*A/[(162+57A)x]=10aA/(162+57A)・・・式(1)となる。
またC18TMACの化学式は、C21H46ClNであるので、分子量Mw(2)=347となる。
次に、C18TMACの硬質表面用洗浄剤組成物中のモル濃度([C18TMAC]mol/L)は、硬質表面用洗浄剤組成物中のCMCの含有量をb質量%とすると、
[C18TMAC]mol/L=10b/347となる。
そして、C18TMACのイオンの価数は1であるから、硬質表面用洗浄剤組成物中のC18TMACのイオン等量([N+]mol/L)を算出すると、
[N+]mol/L=[C18TMAC]mol/L*1=10b/347・・・式(2)となる。
最後に、硬質表面用洗浄剤組成物中の(a)成分のイオン等量と(b)成分のイオン等量との比(a)/(b)は、以下の式に式(1)、式(2)を代入することで算出する。
(a)/(b)=[COO-]mol/L/[N+]mol/L
また実施例で用いた他の(a)成分、(b)成分についても上記と同じ方法で、イオン等量の比(a)/(b)を算出した。
【0101】
〔香料移行率の評価〕
表1中の各硬質表面用洗浄剤組成物を、5°DH硬度水で100倍に希釈した各洗浄液を調製した。
調製した各洗浄液を、モップ糸(SP水拭きモップSD替糸、株式会社テラモト製)1.4gに、モップ糸に対する各洗浄液の含侵率が250質量%となるように含侵させた。
タイルの平板に、ポリプロピレン基板(面積20mm×24mm、株式会社エンジニアリングテストサービス製)を貼り付け、各洗浄液を含侵させたモップ糸で、ポリプロピレン基板を往復3回清拭(1往復1秒、荷重は300~500gの間になるように調整)した。
清拭後のポリプロピレン基板を、タイルから取り外し、メタノール液に浸漬させ、ソニケーション(ブランソニック 卓上型超音波洗浄機2510、日本エマソン株式会社製、20分)により香料成分を抽出し、下記条件のガスクロマトグラフィー質量分析計(GCMS-QP2020 NX、株式会社島津製作所製)を用いて香料濃度(a)(μg/m2)を測定した。
【0102】
[ガスクロマトグラフィー質量分析条件]
<ガスクロマトグラフィー条件>
カラム:DB-WAX(Agilent、30m×0.25っm、膜厚 0.25μm)
注入口温度:250℃
注入法:スプリットレス
オーブン:40℃(5min)→10℃/minで昇温→240℃(10min)
キャリアガス:ヘリウム、圧力 107.8kPa、流速 1.92mL/min
<質量分析条件>
MS温度:200℃(インターフェイス)、200℃(イオン源温度)
イオン化方式:EI
取り込みモード:SIMモード
【0103】
上記の測定結果および想定実場面条件から、下記式より、香料の移行率を算出した。結果を表1に示す。
・想定実場面条件
清拭床面積(b):30m2
硬質表面用洗浄剤組成物 使用量(c):50g
各硬質表面用洗浄剤組成物中の香料含有量(d):表1に記載の香料含有量
香料移行率(%)=[{(a)×(b)}/{(c)×(d)}]×100
【0104】
【0105】
表1中、比較例3は、硬質表面用洗浄剤組成物の調製後に液相分離したため、正確な香料移行率の評価を行うことができず、「分離」と表記した。