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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073020
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】箱錠
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/10 20060101AFI20240522BHJP
   E05B 47/06 20060101ALI20240522BHJP
   E05C 1/16 20060101ALI20240522BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
E05B65/10 J
E05B47/06 B
E05C1/16 B
E05B49/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183995
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】有馬 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】阪本 直人
(72)【発明者】
【氏名】山水 修次
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA01
2E250FF36
(57)【要約】
【課題】非常時においても簡単な構造によってラッチの解錠を可能とする箱錠を提供する。
【解決手段】ケーシングと、ラッチを有し前記ケーシングに対して進退移動するラッチボルトと、ラッチが施錠位置となる初期位置から、ラッチボルトの進退移動方向と直交する中心軸を中心とする周方向の一方側に回転したときに、ラッチをケーシング内に引き込むラッチハブと、ラッチハブの回転経路に位置する第1位置と、回転経路から離れた第2位置との間を移動可能なロック部と、を有する。ラッチハブは、周方向の一方側に回転したときにラッチボルトに接するハブアーム部を有する。ロック部は、第1位置において初期位置にあるハブアーム部に接するロックアーム部を有する。ロックアーム部は、ハブアーム部から荷重が加わったときに、特定箇所において塑性変形する塑性変形部を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
ラッチを有し前記ケーシングに対して進退移動するラッチボルトと、
前記ラッチが施錠位置となる初期位置から、前記ラッチボルトの進退移動方向と直交する中心軸を中心とする周方向の一方側に回転したときに、前記ラッチを前記ケーシング内に引き込むラッチハブと、
前記ラッチハブの回転経路に位置する第1位置と、前記回転経路から離れた第2位置との間を移動可能なロック部と、
を有し、
前記ラッチハブは、前記周方向の一方側に回転したときに前記ラッチボルトに接するハブアーム部を有し、
前記ロック部は、前記第1位置において前記初期位置にある前記ハブアーム部に接するロックアーム部を有し、
前記ロックアーム部は、前記ハブアーム部から荷重が加わったときに、特定箇所において塑性変形する塑性変形部を有する、箱錠。
【請求項2】
前記塑性変形部は、前記ロックアーム部に形成された薄肉部を有する、
請求項1に記載の箱錠。
【請求項3】
前記ロックアーム部は、側面に切欠部を有し、
前記薄肉部は、前記切欠部の底部に臨んで設けられる、
請求項2に記載の箱錠。
【請求項4】
前記ロックアーム部は、前記ケーシングの厚さ方向に貫通する孔部を有し、
前記薄肉部は、前記ロックアーム部の長さ方向と前記厚さ方向とに直交する幅方向において前記孔部の両側に位置する、
請求項2に記載の箱錠。
【請求項5】
前記ロックアーム部は、
先端において前記ハブアーム部に接する第1部分と、
前記第1部分に対して後端側に配置された第2部分と、
を有し、
前記第2部分は、前記第1部分を前記後端側から支持する板バネ部を有し、
前記塑性変形部は、前記板バネ部である、
請求項1に記載の箱錠。
【請求項6】
前記ハブアーム部は、第1硬度を有し、
前記ロックアーム部は、前記第1硬度よりも小さい第2硬度を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の箱錠。
【請求項7】
前記ハブアーム部は、金属材で形成され、
前記ロックアーム部は、樹脂材で形成されている、
請求項6に記載の箱錠。
【請求項8】
前記ロック部を前記第1位置と前記第2位置との間において移動させる駆動部と、
前記ラッチの位置に応じた施錠信号及び解錠信号を無線通信によって受信可能な受信部と、
前記受信部が受信した前記施錠信号及び前記解錠信号の何れかに応じて前記駆動部を駆動する制御部と、
を備え、
前記ケーシングは、前記ラッチボルト、前記ラッチハブ、前記ロック部、前記駆動部、前記受信部及び前記制御部を内部に収容する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の箱錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、箱錠に関する。
【背景技術】
【0002】
錠装置としては、機械的に解錠、施錠を行う構造の他に、携帯型送信器を用いて発した無線発信信号によってドア内部の受信ユニットを作動させて解錠、施錠することが可能な電子式が知られている。
【0003】
電子式の錠装置においては、無線電波信号を送信するリモコンやドア内部に設置して電波を受信する受信ユニット等の電池が切れたり、電気的回線の不良、機構的な故障等の種々の原因によって、施錠状態のラッチの解錠ができない状態が生じることがある。
【0004】
特許文献1には、受け部へのロック部材の進退によって扉の施解錠を行う扉ロック装置と、電磁石による金属片の吸着と解放の切り替えによって扉の施解錠を行うマグネットロック装置とを併用し、ロック部材の進退を検知したときに、マグネットロック装置に解除信号を出力する扉ロックシステムが開示されている。特許文献1の扉ロックシステムにおいては、マグネットロック装置が故障等の種々の原因によって解錠ができない場合に電磁石に生じている磁力を強制的に解除して解錠可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-024329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された装置は、構造が複雑で大掛かりであり、設置に手間が掛かるという問題がある。特許文献1に記載された装置は、ロック部材の進退検知及びマグネットロック装置に解除信号を出力する際に電力が必要であるが、例えば、停電時には電力供給が遮断されるため解錠できなくなる。特許文献1に記載された装置は、進退検知装置及び解除信号出力装置の少なくとも何れか一方に故障が生じた場合に、解錠できなくなるという不具合が生じる。
【0007】
上記の問題は、電子式の錠装置に限られず、機械式の錠装置においても発生する可能性があり、場合によっては扉を破壊する事態になりかねない。
【0008】
本開示は、以上のような点を考慮してなされたもので、非常時においても簡単な構造によってラッチの解錠を可能とする箱錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は、ケーシングと、ラッチを有し前記ケーシングに対して進退移動するラッチボルトと、前記ラッチが施錠位置となる初期位置から、前記ラッチボルトの進退移動方向と直交する中心軸を中心とする周方向の一方側に回転したときに、前記ラッチを前記ケーシング内に引き込むラッチハブと、前記ラッチハブの回転経路に位置する第1位置と、前記回転経路から離れた第2位置との間を移動可能なロック部と、を有し、前記ラッチハブは、前記周方向の一方側に回転したときに前記ラッチボルトに接するハブアーム部を有し、前記ロック部は、前記第1位置において前記初期位置にある前記ハブアーム部に接するロックアーム部を有し、前記ロックアーム部は、前記ハブアーム部から荷重が加わったときに、特定箇所において塑性変形する塑性変形部を有する、箱錠である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の箱錠を取り付けたドアを示す斜視図である。
図2】本開示の第1実施形態の箱錠における内部構成を示す図である。
図3】本開示の第1実施形態の箱錠における内部構成を示す図である。
図4】第3アーム部の周辺を拡大した図である。
図5】本開示の第1実施形態の箱錠における内部構成を示す図である。
図6】本開示の第1実施形態の箱錠における内部構成を示す図である。
図7】本開示の第2実施形態の箱錠における第3アーム部周辺を示す図である。
図8】本開示の第3実施形態の箱錠における第3アーム部周辺を示す図である。
図9】本開示の第4実施形態の箱錠における第3アーム部周辺を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の箱錠の実施の形態を、図1から図9を参照して説明する。以下の実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺等を異ならせている。
【0012】
図1に示すように、ドア1には、既設の図示しない箱錠に替えて新設の箱錠100が着脱可能に取り付けられている。ドア1は、開き戸であって、既設の箱錠が取り付けられた状態においては手動の施錠機能を有さない。箱錠100は、ドア1の側面1aに設けられた凹部に挿入して取り付けられる。箱錠100は、ドア1に対して交換可能である。ドア1には、ハンドルレバー2が取り付けられている。ドア1は、ハンドルレバー2を操作したときに、ラッチ11がドア1の側面1aに対して出没する。ドア1を閉めた状態のときに、ラッチ11がドア1の側面1aから突出してドア枠5のストライカー3に挿入される。ラッチ11がドア枠5のストライカー3に挿入されたときに、ドア1を閉めた状態が維持される。
【0013】
[箱錠の第1実施形態]
図2に示すように、第1実施形態に係る箱錠100は、ケーシング30、ラッチボルト10、ラッチハブ20、ロック部40、駆動部52、受信部60、制御部70、電源部80及びフロント板31を備える。ケーシング30は、ラッチボルト10、ラッチハブ20、ロック部40、駆動部52、受信部60、制御部70及び電源部80を内部に収容する。
【0014】
ラッチボルト10は、ケーシング30に対して、図2における左右方向に進退移動自在に設けられている。以下の説明では、ラッチボルト10の進退移動方向を左右方向と呼ぶ。図2における上下方向を上下方向と呼ぶ。図2における左右方向と上下方向に直交する方向を厚さ方向と呼ぶ。
【0015】
ラッチボルト10は、左右方向に延びる軸状である。ラッチボルト10は、ラッチ11と係合部12と、押圧部13とを有する。ラッチ11は、ラッチボルト10における左側の先端に設けられている。ラッチ11は、ラッチボルト10が左側に移動したときに、フロント板31の開口部31aを介してフロント板31から突出した施錠位置となる。係合部12は、ラッチ11の右側に配置されている。係合部12の寸法は、フロント板31における開口部31aの寸法よりも大きい。係合部12は、ラッチボルト10が左側に移動したときに、右側からフロント板31に係合する。係合部12右側からフロント板31に係合することによって、フロント板31から突出するラッチ11の位置が規定される。
【0016】
押圧部13は、後述するラッチハブ20の第1アーム部21の右側に離れて配置される。第1アーム部21は、ハブアーム部に対応する。押圧部13は、右側に第1スプリング14が接している。第1スプリング14は、圧縮されたコイルバネである。第1スプリング14は、左側が押圧部13に接し、右側がケーシング30の側壁32に接している。押圧部13は、第1スプリング14の付勢力によって左側に付勢されている。第1スプリング14が押圧部13を左側に付勢することによって、ラッチボルト10は、左側に移動可能となる。
【0017】
ラッチハブ20は、厚さ方向に延びる中心軸Jを中心として回転する。ラッチハブ20は、第1アーム部21と第2アーム部22と軸嵌合部23とを有する。軸嵌合部23は、中心軸J方向に延び室内側に開口する円筒状である。軸嵌合部23には、図1に示したハンドルレバー2の軸2aが嵌合する。軸嵌合部23において軸2aが嵌合したハンドルレバー2を操作することによって、ラッチハブ20は、中心軸Jを中心として回転可能である。
【0018】
第1アーム部21は、軸嵌合部23から上側に延びている。第1アーム部21は、厚さ方向においてラッチボルト10と重なる位置に隙間を有する。第1アーム部21が有する隙間には、ラッチボルト10が挿通されている。第1アーム部21における隙間に挿通されたラッチボルト10は、第1アーム部21と干渉することなく左右方向に移動可能である。
【0019】
第2アーム部22は、軸嵌合部23から下側に延びている。第2アーム部22の左側は、スライダー34の端面と接している。スライダー34は、ケーシング30内において左右方向に移動自在に設けられている。スライダー34の左側は、第2スプリング24と接している。第2スプリング24は、圧縮されたコイルバネである。第2スプリング24は、右側がスライダー34に接し、左側がケーシング30の側壁33に接している。スライダー34は、第2スプリング24の付勢力によって右側に付勢されている。第2スプリング24がスライダー34を右側に付勢することによって、第2アーム部22は、反時計回り方向に移動可能となる。第2アーム部22が反時計回り方向に移動したときに、ラッチハブ20は、反時計回り方向に回転し、ケーシング30における側壁35に接して図2に示される初期位置となる。第1アーム部21は、初期位置において押圧部13から離れている。初期位置においては、ラッチ11が施錠位置となる。
【0020】
ラッチハブ20を初期位置から図2における時計回り方向に回転させると、第1アーム部21が中心軸Jを中心とする周方向の一方側に位置するラッチボルト10に接する。ラッチハブ20を時計回り方向に回転させると、第1アーム部21が押圧部13に接する。押圧部13は、左側から第1アーム部21に押圧されることによって、第1スプリング14の付勢力に抗して右側に移動する。押圧部13が右側に移動することによって、ラッチ11は右側に移動してケーシング30内に引き込まれ解錠される。ラッチ11がケーシング30内に引き込まれ解錠されたときに、ドア1を開くことができる。
【0021】
軸嵌合部23において軸2aが嵌合したハンドルレバー2を操作したときに、ラッチハブ20は、第2スプリング24の付勢力に抗して時計回り方向に回転する。ラッチハブ20が時計回り方向に回転したときに、第1アーム部21が押圧部13を押圧して右側に移動させる。押圧部13が第1スプリング14の付勢力に抗して右側に移動したときに、ラッチ11がケーシング30内に引き込まれドア1を開くことができる。手を離してハンドルレバー2の操作を解除したときに、ラッチハブ20は、第2スプリング24の付勢力によって反時計回り方向に回転しケーシング30における側壁35に接する。ラッチハブ20は、ケーシング30における側壁35に接したときに反時計回り方向の回転移動が規制される。
【0022】
ラッチハブ20が反時計回り方向に回転したときに、押圧部13への第1アーム部21の押圧が解除される。第1アーム部21の押圧が解除された押圧部13は、第1スプリング14の付勢力によって左側に移動する。押圧部13が左側に移動したときに、ラッチ11はフロント板31から突出した状態に復帰する。ラッチハブ20が側壁35に接して反時計回り方向の回転移動が規制され、ラッチ11がフロント板31から突出した初期位置に復帰する。
【0023】
ロック部40は、中心軸Jと平行な軸線J2を中心として回転移動可能である。ロック部40は、第3アーム部41と第4アーム部42と軸嵌合部43とを有する。第3アーム部41は、ロックアーム部に対応する。軸嵌合部43は、中心軸Jと平行な軸線J2方向に延び室内側に開口する窪み43aを有する円筒状である。
【0024】
ロック部40は、図3に示す第1位置P1と、図2に示す第2位置P2との間を回転移動可能である。第1位置P1において第3アーム部41は、軸嵌合部43から第1アーム部21に向けて下側に延びている。第1位置P1において第3アーム部41の先端は、第1アーム部21の回転経路に位置する。第1位置P1において第3アーム部41の先端は、初期位置にある第1アーム部21の時計回り方向側において接する。第3アーム部41の厚さ方向の位置は、第1アーム部21の厚さ方向の位置と同一である。第3アーム部41の厚さ方向の位置は、押圧部13と干渉しない位置である。第3アーム部41は、押圧部13と干渉することなく、第1位置P1と第2位置P2との間を回転移動可能である。
【0025】
ロック部40が第1位置P1にあり、第3アーム部41の先端が初期位置にある第1アーム部21の時計回り方向側における回転経路に位置したときに、第1アーム部21の時計回り方向の回転移動が規制される。第3アーム部41と接し、第1アーム部21の時計回り方向の回転移動が規制されたときに、ラッチ11がフロント板31から突出した状態が保持される。
【0026】
第2位置P2において第3アーム部41は、ケーシング30における側壁36に接する。第3アーム部41が側壁36に接したときに、ロック部40の反時計回り方向の回転移動が規制される。第3アーム部41は、側壁36に接したときに第1アーム部21の回転経路から離れる。第2位置P2は、ロック部40が第1アーム部21の回転経路から離れた位置である。
【0027】
第3アーム部41は、塑性変形部44を有する。第3アーム部41は、第1アーム部21の時計回り方向の回転移動に伴い、第1アーム部21から荷重が加わったときに、特定箇所において塑性変形が生じる。第3アーム部41は、第1アーム部21から荷重が加わったときに塑性変形部44において塑性変形する。第3アーム部41が塑性変形する荷重は、ロック部40が第1位置P1にあり、第3アーム部41の先端が初期位置にある状態において、ハンドルレバー2を時計回り方向に通常操作した際に第1アーム部21から加わる荷重よりも大きく、ハンドルレバー2の軸2aと軸嵌合部23の嵌合が破壊される荷重よりも小さい。第3アーム部41が樹脂製の場合、第3アーム部41が塑性変形する荷重は、一例として、50Kg以上、60Kg未満である。
【0028】
図4に示すように、第3アーム部41は、長さ方向の中途に他の箇所よりも幅方向の寸法が小さい薄肉部41Aを有する。幅方向は、第3アーム部41における長さ方向と厚さ方向とに直交する方向である。薄肉部41Aは、塑性変形部44を構成する。第3アーム部41は、ロック部40の回転方向における反時計回り側の側面に切欠部41Bを有する。切欠部41Bは、第3アーム部41の側面に幅方向に窪んで形成される。切欠部41Bは、第3アーム部41の側面から底部に向かうにつれて狭くなっている。切欠部41Bは、ロック部40が第1位置P1にあるときに、第1アーム部21の移動経路に臨む側に開口している。切欠部41Bは、第3アーム部41を厚さ方向に貫いている。薄肉部41Aは、切欠部41Bの底部に臨んで設けられる。
【0029】
第4アーム部42は、第3アーム部41よりも反時計回り側に配置されている。第1位置P1において第4アーム部42は、軸嵌合部43から下側に延びている。第1位置P1において第4アーム部42は、押圧部13よりも右側に位置する。第2位置P2において第4アーム部42は、軸嵌合部43から右側に延びている。第2位置P2において第4アーム部42は、ケーシング30における側壁37に接する。第4アーム部42が側壁37に接したときに、ロック部40の反時計回り方向の回転移動が規制される。第2位置P2においてロック部40は、第3アーム部41が側壁36に接し、第4アーム部42が側壁37に接することによって反時計回り方向の回転移動が規制される。
【0030】
駆動部52は、ロック部40を第1位置P1と第2位置P2との間において移動させる。駆動部52は、ロック部40を軸線J2を中心として、第1位置P1と第2位置P2との間において回転移動させるモータである。駆動部52は、直動アクチュエータである。駆動部52は、ソレノイド部52Aとプランジャー52Bとを有する。ソレノイド部52Aは、通電の有無に応じてプランジャー52Bを直線移動させる。プランジャー52Bは、中心軸Jと直交する左右方向に延びている。プランジャー52Bは、左右方向に直線移動可能である。駆動部52は、リンク機構部53を有する。リンク機構部53は、プランジャー52Bの先端と軸嵌合部43の外周面に接続されている。リンク機構部53は、プランジャー52Bの直線移動を軸線J2を中心とする軸嵌合部43の回転移動に変換する。
【0031】
受信部60は、施錠信号及び解錠信号を無線通信によって受信可能である。受信部60は、ラッチ11の位置に応じた施錠信号及び解錠信号を無線通信によって受信可能である。施錠信号は、ハンドルレバー2の操作を阻止してラッチ11がフロント板31から突出した状態を保持してドア1を施錠する信号である。解錠信号は、ラッチ11をケーシング30内に引き込むハンドルレバー2の操作を許容し、ラッチ11を用いたドア1の施錠を解錠可能とする信号である。
【0032】
受信部60において用いる無線通信の規格は、Bluetooth(登録商標)、Wi-fi、EnOcean及び赤外線等の光通信等の少なくとも一つを選択できる。受信部60は、受信した施錠信号及び解錠信号を制御部70に出力する。
【0033】
制御部70は、受信部60が受信して入力した施錠信号及び解錠信号の何れかに応じて駆動部52を駆動する。制御部70は、施錠信号が入力したときに駆動部52を制御して、ロック部40を第1位置P1に位置させる。制御部70は、解錠信号が入力したときに駆動部52を制御して、ロック部40を第2位置P2に位置させる。
【0034】
電源部80は、駆動部52、受信部60及び制御部70に電力を供給する。電源部80は、一例として電池である。電源部80は、ケーシング30に対して交換可能である。
【0035】
ドア1に対しては、既存の箱錠を箱錠100に交換して取り付ける。箱錠100が取り付けられたドア1に対しては、無線通信を用いて施錠信号を発信したときに、ロック部40が第1位置P1に位置する。ロック部40が第1位置P1に位置したときには、ラッチハブ20の時計回り方向の回転が阻止される。ラッチハブ20の時計回り方向の回転が阻止されたときには、ハンドルレバー2の操作が不能となる。ラッチハブ20の時計回り方向の回転が阻止されハンドルレバー2の操作が不能のときに、押圧部13の右側への移動が不能となるため、ラッチ11がフロント板31から突出した状態が保持されドア1は施錠される。
【0036】
無線通信を用いて解錠信号を発信したときに、ロック部40は第2位置P2に位置する。ロック部40が第2位置P2に位置したときに、ラッチハブ20の時計回り方向の回転が許容される。ラッチハブ20の時計回り方向の回転が許容されたときには、ハンドルレバー2を操作したときには、ラッチハブ20が時計回り方向に回転して押圧部13を右側に移動させる。押圧部13が右側に移動したときには、ラッチ11がケーシング30内に引き込まれ、ドア1に対する施錠が解錠されてドア1を開くことが可能になる。
【0037】
無線通信及び電源部80の少なくとも何れか一方のバッテリー容量がなくなる等の非常時には、第1位置P1にあるロック部40を回転させることができず解錠できない状態となる。
【0038】
第3アーム部41において、切欠部41Bが設けられることによって形成された薄肉部41Aは、曲げ強度が他の箇所よりも小さい。ロック部40が第1位置P1にあるときに、初期位置から時計回り方向に回転する第1アーム部21が第3アーム部41に荷重を付与する方向は、第3アーム部41の長さ方向と交差する方向であり、第3アーム部41において切欠部41Bが設けられた側に向く方向である。
【0039】
非常時においては、第3アーム部41に対して通常操作よりも強い力で衝撃を与えるために、ハンドルレバー2を例えば、複数回時計回り方向に回転させる。ハンドルレバー2の回転によって第1アーム部21から大きな荷重が加わった第3アーム部41は、図5に示すように、曲げ強度が小さい薄肉部41Aにおいて曲がりが生じ、薄肉部41Aよりも先端側が薄肉部41Aを起点として、切欠部41Bが設けられた反時計回り側に変形が始まる。大きな荷重の付与を続けることによって、図6に示すように、第3アーム部41は、塑性変形部44としての薄肉部41Aにおいて更に大きく曲がって塑性変形する。
【0040】
第1アーム部21の時計回り方向の回転を阻害しない状態まで、第3アーム部41において薄肉部41Aよりも先端側が塑性変形することによって、第1アーム部21に対する第3アーム部41のロックが解除される。第3アーム部41からのロックが解除された第1アーム部21は、時計回り方向への回転が可能となり、押圧部13を右側へ移動させることによってラッチ11がケーシング30内に引き込まれ、ドア1に対する施錠が解錠される。
【0041】
第3アーム部41が塑性変形した箱錠については、ドア1から取り外し、新設の箱錠100をドア1に装着することによって、ドア1の施解錠が可能になる。
【0042】
第1アーム部21は第1硬度を有し、第3アーム部41は第1硬度よりも小さい第2硬度を有することが好ましい。第3アーム部41の硬度が第1アーム部21の硬度よりも小さいことによって、第1アーム部21から荷重が加わったときに第3アーム部41が塑性変形しやすくなる。第1アーム部21は、例えば、ステンレス等の金属材で形成される。第3アーム部41は、例えば、ポリアセタール樹脂等の樹脂材で形成される。
【0043】
実施形態の箱錠100によれば、第1アーム部21から荷重が加わったときに、曲げ強度が他の箇所よりも小さく特定箇所において塑性変形する塑性変形部44を第3アーム部41が有しているため、通常操作よりも強い力でハンドルレバー2を回転させることによって、非常時においても簡単な構成によってラッチ11を解錠することができる。
【0044】
[箱錠の第2実施形態]
第2実施形態の箱錠100について、図7を参照して説明する。図7においては、図1から図6に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。第2実施形態の箱錠100は、第3アーム部41における塑性変形部44の構成が第1実施形態と異なっている。
【0045】
第2実施形態における第3アーム部41は、図7に示すように、長さ方向の中途に切欠部41Cを有する。切欠部41Cは、幅方向に間隔をあけて設けられている。切欠部41Cは、幅方向の両側の側面からそれぞれ窪んで設けられている。切欠部41Cは、第3アーム部41の側面から底部に向かうにつれて狭くなる円弧形状である。切欠部41Cは、第3アーム部41を厚さ方向に貫いている。幅方向において2つの切欠部41Cに挟まれて薄肉部41Aが形成されている。薄肉部41Aは、塑性変形部44を構成する。他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0046】
第2実施形態の箱錠100においては、非常時に第1アーム部21から大きな荷重が加わった第3アーム部41は、2つの切欠部41Cに挟まれ曲げ強度が小さい薄肉部41Aにおいて曲がりが生じ、薄肉部41Aよりも先端側が薄肉部41Aを起点として曲がって塑性変形する。薄肉部41Aよりも先端側が塑性変形することによって、第1アーム部21に対するロックが解除され第1アーム部21が時計回り方向に回転する。第1アーム部21が回転することによって、押圧部13が右側へ移動しラッチ11による施錠が解錠される。
【0047】
第2実施形態の箱錠100においては、第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、第3アーム部41における薄肉部41Aよりも先端側が薄肉部41Aを起点として、時計回り方向及び反時計回り方向の何れにも塑性変形することができる。
【0048】
[箱錠の第3実施形態]
第3実施形態の箱錠100について、図8を参照して説明する。図8においては、図1から図6に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。第3実施形態の箱錠100は、第3アーム部41における塑性変形部44の構成が第1実施形態と異なっている。
【0049】
第3実施形態における第3アーム部41は、図8に示すように、長さ方向の中途に孔部41Dを有する。孔部41Dは、第3アーム部41の長さ方向に延びる長円形状である。孔部41Dは、第3アーム部41を厚さ方向に貫通する。第3実施形態の薄肉部41Aは、孔部41Dを挟んだ幅方向の両側に位置する。孔部41Dを挟んだ幅方向の両側に位置する薄肉部41Aによって、塑性変形部44が形成される。孔部41Dを挟んだ幅方向の両側に位置する各薄肉部41Aの幅方向の寸法は、例えば、図4に示した薄肉部41Aにおける幅方向の寸法の1/2である。他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0050】
第3実施形態の箱錠100においては、非常時に第1アーム部21から大きな荷重が加わった第3アーム部41は、孔部41Dを挟んだ幅方向の両側に位置し、曲げ強度が小さい薄肉部41Aにおいて曲がりが生じ、薄肉部41Aよりも先端側が薄肉部41Aを起点として曲がって塑性変形する。薄肉部41Aよりも先端側が塑性変形することによって、第1アーム部21に対するロックが解除され第1アーム部21が時計回り方向に回転する。第1アーム部21が回転することによって、押圧部13が右側へ移動しラッチ11による施錠が解錠される。
【0051】
第3実施形態の箱錠100においては、第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、各薄肉部41Aの幅方向の寸法が小さくなるため、容易に塑性変形させることができる。
【0052】
[箱錠の第4実施形態]
第4実施形態の箱錠100について、図9を参照して説明する。図9においては、図1から図6に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。第4実施形態の箱錠100は、第3アーム部41における塑性変形部44の構成が第1実施形態と異なっている。
【0053】
第4実施形態における第3アーム部41は、図9に示すように、第1部分45と、第2部分46と、を有する。第1部分45は、第3アーム部41の長さ方向に延びる軸状である。第1部分45は、先端において第1アーム部21と接する。
【0054】
第2部分46は、第1部分45に対して第1アーム部21と逆側の後端側に配置されている。第2部分46は、軸嵌合部43の外周面から第1アーム部21に向けて直線状に延びる筒状である。第2部分46は、第3アーム部41の長さ方向に延びて貫通する貫通孔46aを有する。第2部分46は、板バネ部47を有する。板バネ部47は、第2部分46における内周面から内部空間に突出する。板バネ部47は、幅方向の両側から内部空間に突出する。
【0055】
第1部分45は、板バネ部47よりも先端側の貫通孔46aに嵌め合わされる。第1部分45は、後端側において板バネ部47に固定されている。板バネ部47は、第1部分45を後端側から支持する。板バネ部47は、塑性変形部44を構成する。他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0056】
第4実施形態の箱錠100においては、通常操作時にロック部40が第1位置P1にあり、第3アーム部41の先端が初期位置にある第1アーム部21の時計回り方向側における回転経路に位置したときに、第1アーム部21の時計回り方向の回転移動は、第1部分45が板バネ部47に後端側から支持されることによって規制される。第3アーム部41は、サスペンションとして機能する。
【0057】
第4実施形態の箱錠100において非常時に第1アーム部21から大きな荷重が加わった第3アーム部41は、第1部分45を介して板バネ部47に大きな荷重が加わることによって、板バネ部47が後端側に塑性変形し、例えば、第2部分46から破断する。板バネ部47が後端側に塑性変形することによって、第1部分45が貫通孔46aに沿って後端側に移動する。
【0058】
第3アーム部41における第1部分45が貫通孔46aに沿って後端側に移動することによって、第1アーム部21に対するロックが解除され第1アーム部21が時計回り方向に回転する。第1アーム部21が回転することによって、押圧部13が右側へ移動しラッチ11による施錠が解錠される。第4実施形態の箱錠100においては、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態について説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0060】
実施形態で説明した塑性変形部44を含む第3アーム部41の形状は一例であり、特定箇所において曲げ強度が他の箇所よりも小さく、非常時に第1アーム部21から大きな荷重が加わったときに塑性変形する形状であれば、他の構成であってもよい。
【0061】
実施形態では、ロック部40を第1位置P1と第2位置P2との間において移動させる駆動部52が直動アクチュエータである構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、駆動部52として、ねじりコイルバネを用いて軸嵌合部43を回転させる構成であってもよい。
【0062】
実施形態では、箱錠100に駆動部52と受信部60と制御部70と電源部80が設けられ、無線によって施錠と解錠とを切り替える構成を例示したが、この構成に限定されない。無線を用いない箱錠についても本開示を適用可能である。例えば、サムターンの軸が軸嵌合部43に嵌め合わされた箱錠において不具合が生じ、サムターンの摘まみを回転させても解錠できない非常時に本開示を適用することによって、解錠することが可能になる。
【符号の説明】
【0063】
10…ラッチボルト、11…ラッチ、20…ラッチハブ、21…第1アーム部、30…ケーシング、40…ロック部、41…第3アーム部、41A…薄肉部、41B、41C…切欠部、41D…孔部、44…塑性変形部、52…駆動部、60…受信部、70…制御部、80…電源部、100…箱錠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9