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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073032
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】電子機器付エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02F 7/00 20060101AFI20240522BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20240522BHJP
   F02B 77/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
F02F7/00 N
F01P5/06 503
F02B77/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184012
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 健介
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 泰
(72)【発明者】
【氏名】篠原 祐次
(72)【発明者】
【氏名】田頭 佑規
【テーマコード(参考)】
3G024
【Fターム(参考)】
3G024AA38
3G024AA73
3G024BA29
3G024CA23
3G024CA26
3G024DA02
3G024DA18
3G024EA13
3G024GA27
3G024HA03
3G024HA07
3G024HA13
3G024HA20
(57)【要約】
【課題】さらなる構造工夫により、ECUなどのエンジンに装着される電子機器の熱的負荷を無理なく軽減できるようにして、熱による悪影響が電子機器に及ばないようにすることが可能な電子機器付エンジンを提供する.。
【解決手段】エンジン用の電子機器22がシリンダブロック2の吸気側に、熱伝導を促進可能な固定機構6を用いて取付けられ、固定機構6は、シリンダブロック2と電子機器22とが面で接触する状態に構成されている電子機器付エンジン。固定機構6は、シリンダブロック2におけるシリンダ部2sに固定されるボルト7を用いて構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン用の電子機器がシリンダブロック又はシリンダヘッドの吸気側に、熱伝導を促進可能な固定機構を用いて取付けられている電子機器付エンジン。
【請求項2】
前記固定機構は、前記シリンダブロック又はシリンダヘッドと前記電子機器とが面で接触する状態に構成されている請求項1に記載の電子機器付エンジン。
【請求項3】
前記固定機構は、シリンダブロックにおけるシリンダ部に固定されるボルトを用いて構成されている請求項1に記載の電子機器付エンジン。
【請求項4】
前記ボルトは、前記シリンダ部のボス部に植設されるスタッドボルトであり、前記シリンダ部と前記電子機器との間に所定の空間部が形成されるように、前記電子機器におけるスタッドボルトが通される取付部と前記ボス部との間にカラ―が設けられている請求項3に記載の電子機器付エンジン。
【請求項5】
前記シリンダブロックの気筒配列方向での一端側に冷却ファンが設けられるとともに、前記冷却ファンによる冷却風を前記電子機器に案内する導風部材が設けられている請求項4に記載の電子機器付エンジン。
【請求項6】
前記電子機器は、エンジン制御用のECUである請求項1~5の何れか一項に記載の電子機器付エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECUなどの電子機器が付属されたエンジン、即ち、電子機器付エンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子制御エンジンにおいては、エンジン制御用のECU(エンジン用ECUであって、以下、単にECUと呼ぶ)は、配線の短縮化などの合理化の観点から、できるだけエンジン自体に設けられていると好都合である。例えば、特許文献1(図4を参照)において開示されるように、ECU(15)をシリンダブロック(21)の横側に配置することが開示されている。
【0003】
また、特許文献2においては、その図1~3において示されるように、ECU(40)はシリンダヘッド(3)の上に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-11786号公報
【特許文献2】特開2009-209699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ECUは電子機器(電子部品)であって、本来は熱的に脆弱なものであることから、エンジンから離して別置きとするのが望ましいが、前述(合理化など)のように、エンジンに装着されているのが実情である。
【0006】
そのため、ECUへの熱伝導を抑える構造としては、例えば、断熱材を介してシリンダブロックにボルト止めするなど、エンジン(エンジン本体)への取付部に工夫を施すことは行われている。しかしながら、ECUの耐熱温度には限界があるので、出力向上などによる熱的負荷の増大にも対応できるように、ECUの熱的環境を良くするには改善の余地が残されている。
【0007】
本発明の目的は、さらなる構造工夫により、ECUなどのエンジンに装着される電子機器の熱的負荷を無理なく軽減できるようにして、熱による悪影響が電子機器に及ばないようにすることが可能な電子機器付エンジンを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電子機器付エンジンにおいて、エンジン用の電子機器がシリンダブロック又はシリンダヘッドの吸気側に、熱伝導を促進可能な固定機構を用いて取付けられていることを特徴とする。
【0009】
この場合、前記固定機構は、前記シリンダブロック又はシリンダヘッドと前記電子機器とが面で接触する状態に構成されていると好都合である。また、前記固定機構は、シリンダブロックにおけるシリンダ部に固定されるボルトを用いて構成されているとさらに好都合である。
【0010】
本発明に関して、上述した構成(手段)以外の特徴構成や手段ついては、請求項4~6を参照のこと。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エンジンにおいては、常温の空気が供給される吸気側は、高温の排気ガスが流れる排気側に比べて比較的低温となるので、シリンダブロック又はシリンダヘッドの低温側となる吸気側にECU等の電子機器を配置することにより、エンジンからの熱影響を最小限度にすることが可能になる。
【0012】
そして、電子機器は、熱伝導を促進可能な固定機構で取付けられているので、電子機器において生じる熱を、固定機構を通してシリンダブロック又はシリンダヘッドに素早く逃がすことができる。電子機器から伝わって来た熱は、シリンダブロック又はシリンダヘッド内を流れる冷却水に吸熱され、迅速に排熱されるようになる。
【0013】
さらに、一般的にシリンダブロックやシリンダヘッドの横側には冷却ファンによる冷却風が流れているので、冷却水による水冷作用に加えて冷却風による空冷作用も受けるようになり、シリンダブロックやシリンダヘッドの横に電子機器を配置しながらも熱的負荷を最小限度に抑えることが可能になる。
【0014】
その結果、さらなる構造工夫により、ECUなどのエンジンに装着される電子機器の熱的負荷を無理なく軽減できるようにして、熱による悪影響が電子機器に及ばないようにすることが可能な電子機器付エンジンを提供することができる。
【0015】
なお、シリンダブロック又はシリンダヘッドと電子機器とが面で接触する固定機構とすれば、電子機器の熱をより素早く逃がすことができて好都合である。さらに、シリンダ部に固定されるボルトを用いて固定機構を構成すれば、ボルトからも電子機器の熱を逃がすことができてより好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ECUの取付構造及びその周辺構造を示す要部の拡大側面図
図2】(A)シリンダ部を流れる冷却水とECUなどを示す要部の横断面図、(B)シリンダ部の凹入部を示す要部の縦断面図
図3】ECU及びその取付構造を示す要部の縦断面図(吹き出し図付)
図4】ECUへの導風構造を示すシリンダブロック要部の横断面図
図5】ハーネス支持体を示し、(A)は一部の周囲構造を含む平面図、(B)は側面図、(C)は正面図
図6】エンジンの正面図
図7】エンジンの右側面図
図8】エンジンの平面図
図9】エンジンの背面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明による電子機器付エンジンの実施の形態を、農機、建機、発電機などの産業機器に適用されるコモンレール式の立形で直列3気筒ディーゼルエンジンの場合について、図面を参照しながら説明する。図6図9及びその他の各図において、クランク軸1の架設方向で冷却ファン16のある側を前、フライホイール17のある側を後、吸気マニホルド19のある側を右、排気マニホルド20のある側を左とする。
【0018】
図6図9に示されるように、ディーゼルエンジンEは、シリンダブロック2の上にシリンダヘッド14が組付けられ、シリンダヘッド14の上にヘッドカバー15が組付けられ、シリンダブロック2の下にはオイルパン18が組付けられている。シリンダブロック2は、上部のシリンダ部2sと下部のクランクケース部2hとを有している。
【0019】
シリンダブロック2の前及びオイルパン18の前部の上には調時伝動ケース10が組み付けられ、調時伝動ケース10の前に配置された冷却ファン(エンジン冷却ファン)16のファンプーリ(符記省略)や、クランクケース部2hにおいて前後に延びるクランク軸1の駆動プーリ(符記省略)などに跨って伝動ベルト11が巻き掛けられている。
【0020】
シリンダヘッド14の右側(横一方側)には吸気マニホルド19が組付けられ、左側(横他方側)には排気マニホルド20が組付けられている。3は、コモンレール式燃料噴射装置3aでもある燃料噴射装置で、コモンレール3bと、コモンレール3bに蓄圧された液体燃料を各気筒に噴射する燃料インジェクタ3cとを備えている。4は燃料圧送ポンプであり、燃料サプライポンプ4aでもある
【0021】
図1図3に示されるように、エンジンE用の電子機器22であるエンジンECU(以下、単にECUと呼ぶ)22が、固定機構6を用いてシリンダブロック2の吸気側(右側)で、かつ、シリンダ部2sの右横側に配置されている。ECU(ECUassyでもある)22は、シリンダブロック2の横側における吸気マニホルド19の直下となる部分に取付けられている。
【0022】
ECU22は、パワートランジスタなどの発熱電子体を有するECU基板(ECU電子基板)22Bを収容するECUケース22Aや、カプラーなどの接続端子22Cなどを備えて構成されている。接続端子22Cは、ECUケース22Aから右側方に(左右方向で反シリンダブロック側に)突出する状態でECUケース22Aに設けられている。
【0023】
ECUケース22Aは、側面視(図1を参照)で正方形に近い矩形を呈し、上下前後の各端部の計4箇所のECU取付部22aが固定機構6によってシリンダ部2sに(シリンダ側壁に)、左右方向長さが小となるように縦向き姿勢で取付けられている〔図2(A)を参照〕。シリンダ部2sとECUケース22Aとの左右間には、左右幅の狭い扁平な空間部21が形成されている。なお、図1においては図示を省略するが、例えば、ECU22の接続端子22Cにワイヤーハーネス23が接続されている(図7を参照)。
【0024】
図1図3に示されるように、ECU22は、その前後上下の4箇所(複数箇所)の固定機構6により、ECU取付部22aが、シリンダ部2sの右側壁に形成されたボス部2iに植設されているスタッドボルト7に、カラ―8を介してナット9で螺着されている。このECU22のシリンダ部2sへの取付構造は、ECU22とシリンダ部2sとの相対温度により、次のように構成されている。
【0025】
即ち、通電されての使用状態にあるECU22はかなりの高温(約摂氏100度)になり、本発明の対象となるエンジンのシリンダ部2sの吸気側の温度(摂氏70~80度)より高くなることが知見されている。つまり、エンジンの稼働状態においては、シリンダブロック2を用いてECU22を冷却することが可能な状態になっている。
【0026】
故に、固定機構6は、熱伝導性に優れる材料〔アルミ合金、鋼(例:SS400)など〕製のカラ―8を採用し、ボス部2iとECU取付部22aとの間が効率良く熱伝導される構造としてある。さらに、例えば円筒状に形成されたカラ―8の外径を一般的なものより大きくし、かつ、ボス部2iの右端面及びECU取付部22aとカラ―8とが面接触する状態に構成すれば、伝熱面積を大きくできるので好都合である。なお、カラ―8を介さず、ボス部2iとECU取付部22aとが広い面積でもって直接接触する構成としてもよい。また、図3の噴き出し図に示されるように、スタッドボルト7とECU取付部22aとの間の熱伝導性を改善させるべく、高伝導材製の充填材7Aを設けても良い。
【0027】
例えば、ボス部2iの材質は鋳鉄(例:FC250)で、ECU取付部22a(ECUケース22A)の材質はアルミ合金(例:ADC10や12)であり、ボス部2iとカラ―8との接触面積(4箇所の合計)は120~130(例:126.4)平方ミリメートルで、カラ―8とECU取付部22aとの接触面積(4箇所の合計)は110~120(例:112.4)平方ミリメートルに設定されている。
【0028】
これにより(上述により)4箇所の固定機構6において広い面積でボス部2iとECU取付部22aとが、カラ―8及びスタッドボルト7により熱伝導されるので、ECU22で発生する熱を素早くシリンダ部2sに逃がして、ECU22が必要以上に発熱することが抑制されるようになる。即ち、ECU22の取付構造を用いて、ECU22の熱をシリンダ部2sに効率良く伝え、ECU22を冷却させることが可能になっている。なお、カラ―8の装着により、空間部21の左右幅は冷却風wが通り易いもの(=所定の空間部21)に設定されている(図3を参照)。
【0029】
図2図4に示されるように、シリンダ部2sのシリンダ筒(シリンダバレル)32の右及び左のそれぞれに前後方向に延びる冷却水路33,34が形成され、これら右冷却水路33と左冷却水路34とは、各シリンダ筒32の前後において左右に延びるように形成されているボア間水路35〔図2(A)参照〕により連結されている。
【0030】
図2(A)に示されるように、冷却水mは、主に左右の冷却水路33,34(図3を参照)を前から後に向けて流れることでシリンダ部2sの冷却を行うが、特に、右冷却水路33を強く流れる冷却水mにより、シリンダ部2sの右側(吸気マニホルド側)がよく冷却されるようになっている。このシリンダ部2sの右側の強冷却作用により、シリンダ部2sの直ぐ右傍に配置されているECU22の冷却も可能となるように構成されている。
【0031】
即ち、ECU22にて生じた熱は、4箇所の固定機構6を通って素早くシリンダ部2sに伝導され、その伝導されて来た熱は冷却水mによって排熱される水冷作用が生じるので、冷却水mでシリンダ部2sのみならずECU22も冷却できるようになる効果が得られる。なお、より水冷作用を高めるべく、固定機構6の数を増やしたり、ボス部2iとECU取付部22aとの接触面積を増やすことは可能である。また、カラー8を省いて、ECU22とシリンダ部2sとを直接接触させる構成を採ることも可能である。
【0032】
図1図7に示されるように、ECU22の前部下方に、ワイヤーハーネス23の支持部材であるハーネス支持体Aが設けられている。ハーネス支持体Aは、前後上下に拡がる面を有する支持板部12と、左右上下に拡がる面を有して支持板部12の前端に続く連結板部24と、斜め前後及び上下に拡がる面を有して連結板部24の前端に続く導風部13とを備える板金部材である。
【0033】
図1図5に示されるように、ハーネス支持体Aは、シリンダ部2sから右向きに突設された縦リブ部2jの後面に連結板部24を複数カ所でボルト止めすることにより、シリンダ部2sに取付けられる板金部材である。取付片12aを有する支持板部12は、ECU22の前部下部を左右方向に覆っており、その右面に取付片12aを用いてワイヤーハーネス23が支持されている〔図5(B)参照〕。なお、29は、ワイヤーハーネス23を支持部材(結束バンドなどで図示省略)で止めるための溶接ナット、31は抜き孔である。
【0034】
平面視(図8を参照)でやや右の斜め前方に延びる導風部13は、ECU22の上下中央部の前方に位置しており(図1を参照)、連結板部24の上部と相まって、冷却ファン16の冷却風wをECU22、ECU22とハーネス支持体A(支持板部12)との間の隙間部28、及び空間部21に案内する導風部材dに構成されている〔図5(A)を参照〕。導風部材dは、冷却風wの流れ方向(前後方向視)で各凹入部10A,2kに対応する上下位置に設けられている(図6を参照)。連結板部24により、ワイヤーハーネス23の配策案内機能及び導風部材dによる導風機能が発揮される〔図5(A),(B)を参照〕。
【0035】
図1,3に示されるように、シリンダ部2sの右側前端部及び調時伝動ケース10の右側上下中央部に、冷却ファン16による冷却風wを後方へ導きやすくするためのシリンダの凹入部2k及び伝動ケースの凹入部10Aが形成されている。つまり、シリンダブロック2の気筒配列方向(前後方向)での一端側(前側)に冷却ファン16が設けられ、シリンダブロック2における冷却ファン16とECU22との間の部分に、冷却ファン16による冷却風wがECU22に及ぶことを促進可能な凹入部2k、10Aが形成されている。
【0036】
図6に示されるように、伝動ケースの凹入部10Aは、調時伝動ケース10におけるカム軸入力ギヤ(図示省略)を収容するカム軸入力ギヤ収容室10bの右横で、オイル注入部10aと臨時回転軸入力ギヤ収容室10cとの上下間の部位で、かつ、上下に隣合うボルト止め部10d、10eの上下間にて左に凹む箇所である。臨時回転軸入力ギヤ収容室10cは、臨時回転軸(図示省略)と一体回転するものであってカム軸入力ギヤと咬合する臨時回転軸入力ギヤ(図示省略)を収容する部分である。なお、図示は省略するが、臨時回転軸とは、PTO軸やガバナ軸、バランサ軸などである。
【0037】
シリンダの凹入部2kは、シリンダ部2sにおける燃料圧送ポンプ4を収容するポンプ装着箇所25と、臨時回転軸などを収容する箇所である嵌入部品収容部26との上下間において、カム軸収容室27に干渉しない範囲で左に大きく凹む箇所である〔図2(B)を参照〕。図4に示されるように、シリンダの凹入部2kにおける最も左に引っ込んだ凹み表面36は、ほぼ凹入部2kの全長(前後長)に匹敵する長さに設定されているが、図5(A)に示されるように、傾斜面であっても良い。
【0038】
冷却ファン16の回転により、エンジンの周囲、特にシリンダブロック2やシリンダヘッド14の左右では、これらシリンダブロック2やシリンダヘッド14の左右側壁(符記省略)に沿って前から後に向かって冷却風wが流れている。故に、シリンダ部2sの右側面に配置されているECU22にも冷却風wが流れて空冷作用を受けているが、より空冷作用が強化される工夫(凹入部2k,10Aや導風部材d)が採用されている。
【0039】
従って、冷却ファン16による冷却風wのうち、伝動ケースの凹入部10A及びシリンダの凹入部2kを通る冷却風wは、導風部13による案内作用により、導風部材dとシリンダの凹入部2kとの左右間の導風空間部30に導かれる。導風空間部30を通ることで後方左方に冷却風wの風向きが案内され、一部はECU22の右の隙間部28に入って後方に流れるとともに、一部はECU22の左の空間部21に入って後方に流れるようになる。なお、図5(A)は、各凹入部2k,10A及び導風部材dとにより、ECU22を冷却風wで風冷(空冷)させる概念図を含んでいる。
【0040】
このように、調時伝動ケース10及びシリンダ部2sそれぞれに凹入部10A,2kを形成し、かつ、ワイヤーハーネス23を支持するための部材であるハーネス支持体Aの形状工夫により、調時伝動ケース10に比べて左に凹んでいるシリンダ部2sの右傍にECU22を配置しながらも、冷却風wをECU22の周囲に集めて流すことができている。その結果、シリンダ部2sの右横にECU22を設けて、エンジンEとして右方に嵩張らないようにしながら、冷却風wで効率よくECU22を冷却させることができる。
【0041】
図4図5(A)に示されるように、導風部13の前後方向に対する傾き角度は10度(5~15度)で描いてあるが、それに限られない。また、シリンダの凹入部2kは、前後に平行な長い凹み表面36を有する構造(図4参照)でも、後に行くに従って左に直線的に寄る傾斜面状の凹入部2k〔図5(A)参照〕でも良く、さらに、凹面状や凸面状で左に寄るものであってもよい。
【0042】
従来、ECUは耐熱温度に限界があるとともに、エンジンケースC(シリンダブロック2やシリンダヘッド14など)に設けるに当たっては取付部のみで冷却するしかなかったので、耐熱性に不安を抱えながらエンジンケースCに設けるか、或いは、配線の複雑化や長大化を受け入れてエンジンとは別置きするかのどちらかであった。
それに対して、本発明においては、シリンダ部2s(又はシリンダヘッド14)の吸気側側面に、熱伝導を促進可能な固定機構6を用いて取付けてあり、固定機構6は、シリンダブロック2又はシリンダヘッド14に固定されるボルト7を用いて、ECU22と面で接触する状態に構成されたものである。
【0043】
このような構造工夫により、次の(1)~(6)の作用効果を得ることができる。
(1)ECU22を、冷却風wによる空冷作用に加えて、冷却水mによる水冷作用によっても冷却することができる
(2)ECU22を含めたエンジンの、正確にはシリンダ部2sのコンパクト化が図れる
(3)従来のECUの別置きスペースが不要になる
(4)ECU22をエンジン自体に配置できたので、配線の短縮化や簡素化ができる
(5)シリンダ部2sの横に配置のECU22が遮音壁になり、騒音低減効果が得られる
(6)シリンダ部2sを冷すための冷却水mでECU22も冷却可能になるという合理化構成が実現できている
【0044】
〔別実施形態〕
ECUなどの電子機器22を、シリンダブロック2における吸気マニホルド19の直下よりもやや下に設けてもよい。エンジン用の電子機器22としては、ECUのほか、燃料噴射インジェクタ、マイコン付イグニッションコイル、各種センサ類などが考えられる。
【符号の説明】
【0045】
2 シリンダブロック
2i ボス部
2s シリンダ部
6 固定機構
7 ボルト(スタッドボルト)
8 カラー
14 シリンダヘッド
16 冷却ファン
21 空間部
22 エンジン用の電子機器(ECU)
22a 取付部
d 導風部材
w 冷却風
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9