(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073038
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】パワーユニット
(51)【国際特許分類】
F16H 57/035 20120101AFI20240522BHJP
F16G 13/02 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
F16H57/035
F16G13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184019
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】宇佐 和敏
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA04
3J063AA06
3J063AB02
3J063AB25
3J063AC01
3J063BB41
3J063CB01
(57)【要約】
【課題】電動車両の車両サイズ及びパワーユニットのユニットサイズを小型化する。
【解決手段】パワーユニット(30)は、モータケース(32、39)の車幅方向一方側にギアケース(41)が設けられ、当該ギアケースの開口がギアケースカバー(51)に車幅方向外側から覆われている。パワーユニットには、モータケース側からギアケース側に突き出したモータ軸と、ギアケースカバーから車幅方向外側に突き出したドライブ軸と、モータ軸からドライブ軸に動力を伝達する動力伝達機構(70)と、が設けられている。ギアケースカバーの内側でモータ軸に出力ギア(63)が固定され、ギアケースカバーの外側でドライブ軸にドライブスプロケット(67)が固定されている。出力ギアよりもドライブスプロケットが車幅方向内側に位置付けられている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータケースの車幅方向一方側にギアケースが設けられ、当該ギアケースの開口がギアケースカバーに車幅方向外側から覆われたパワーユニットであって、
前記モータケース側から前記ギアケース側に突き出したモータ軸と、
前記ギアケースカバーから車幅方向外側に突き出したドライブ軸と、
前記モータ軸から前記ドライブ軸に動力を伝達する動力伝達機構と、を備え、
前記ギアケースカバーの内側で前記モータ軸に出力ギアが固定され、
前記ギアケースカバーの外側で前記ドライブ軸にドライブスプロケットが固定され、
前記出力ギアよりも前記ドライブスプロケットが車幅方向内側に位置付けられていることを特徴とするパワーユニット。
【請求項2】
上面視にて前記ギアケースと前記ギアケースカバーの合わせ面が後方に向かって車幅方向内側に傾斜して、
前記出力ギアよりも前記ドライブスプロケットが後方に位置付けられていることを特徴とする請求項1に記載のパワーユニット。
【請求項3】
前記動力伝達機構は、複数の中間ギアが設けられた複数の中間軸を有し、
前記ギアケースカバーの内側では、前記出力ギアが最も車幅方向外側に設置され、前記複数の中間ギアが動力伝達方向の下流に向かって車幅方向内側になるように設置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパワーユニット。
【請求項4】
前記ギアケースの外側面から前記モータケースの開口を覆う円筒カバーが膨出し、
前記複数の中間ギアのうち動力伝達方向の最上流の中間ギアが最も大径であり、
側面視にて前記最上流の中間ギアが前記円筒カバーに重なっていることを特徴とする請求項3に記載のパワーユニット。
【請求項5】
前記最上流の中間ギアが固定された中間軸よりも後方の中間軸及び前記ドライブ軸が前記円筒カバーの外周に沿って設置されていることを特徴とする請求項4に記載のパワーユニット。
【請求項6】
側面視にて前記モータ軸と前記ドライブ軸が同じ高さに位置付けられ、前記複数の中間軸が前記モータ軸及び前記ドライブ軸よりも上方に位置付けられていることを特徴とする請求項5に記載のパワーユニット。
【請求項7】
前記ドライブ軸にはドライブギアが設けられており、
後面視にて前記複数の中間ギアのうち動力伝達方向の下流側の中間ギア及び前記ドライブギアが前記円筒カバーに重なっていることを特徴とする請求項6に記載のパワーユニット。
【請求項8】
動力伝達方向の最下流の中間ギアよりも前記ドライブギアの歯数が少ないことを特徴とする請求項7に記載のパワーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両のパワーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動車両のパワーユニットとして電動モータからの動力を減速して後輪に伝えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のパワーユニットのギアケースには減速ギア列が収容されており、電動モータのモータ軸から減速ギア列を介してドライブ軸に動力が伝達されている。パワーユニットのドライブ軸がギアケースカバーから側方に突き出しており、ドライブ軸の先端にはドライブスプロケットが取り付けられている。後輪の車軸にはドリブンスプロケットが取り付けられており、ドライブスプロケットからドリブンスプロケットにドライブチェーンを介して動力が伝達されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電動車両では、ドライブチェーンのチェーンラインが車幅方向外側に張り出しているため、電動車両及びパワーユニットが大型化するという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、車両サイズ及びユニットサイズを小型化することができるパワーユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のパワーユニットは、モータケースの車幅方向一方側にギアケースが設けられ、当該ギアケースの開口がギアケースカバーに車幅方向外側から覆われたパワーユニットであって、前記モータケース側から前記ギアケース側に突き出したモータ軸と、前記ギアケースカバーから車幅方向外側に突き出したドライブ軸と、前記モータ軸から前記ドライブ軸に動力を伝達する動力伝達機構と、を備え、前記ギアケースカバーの内側で前記モータ軸に出力ギアが固定され、前記ギアケースカバーの外側で前記ドライブ軸にドライブスプロケットが固定され、前記出力ギアよりも前記ドライブスプロケットが車幅方向内側に位置付けられていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のパワーユニットによれば、出力ギア及びドライブスプロケットが車幅方向一方側に設けられることで動力伝達機構がコンパクトに形成される。また、ギアケースカバーの内側の出力ギアよりもギアケースカバーの外側のドライブスプロケットが車幅方向内側に位置付けられてドライブスプロケットの車幅方向外側への張り出しが抑えられる。パワーユニットのドライブスプロケットと駆動輪のドリブンスプロケットに巻き掛けられたドライブチェーンのチェーンラインが車幅方向内側に寄せられて電動車両及びパワーユニットが小型化される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例の車体フレーム及び車両後部の側面図である。
【
図4】本実施例のギアケースカバーを外したパワーユニットの斜視図である。
【
図5】本実施例の動力伝達機構及び電動モータの斜視図である。
【
図6】本実施例のギアケースカバーを外したパワーユニットの右側面図である。
【
図7】本実施例のギアケースカバーを外したパワーユニットの下面図である。
【
図8】本実施例のギアケースカバーを外したパワーユニットの後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のパワーユニットでは、モータケースの車幅方向一方側にギアケースが設けられ、当該ギアケースの開口がギアケースカバーに車幅方向外側から覆われている。モータケースからギアケース側にモータ軸が突き出し、ギアケースカバーから車幅方向外側にドライブ軸が突き出しており、動力伝達機構によってモータ軸からドライブ軸に動力が伝達されている。ギアケースカバーの内側で前記モータ軸に出力ギアが固定され、ギアケースカバーの外側でドライブ軸にドライブスプロケットが固定され、出力ギア及びドライブスプロケットが車幅方向一方側に設けられることで動力伝達機構がコンパクトに形成される。また、ギアケースカバーの内側の出力ギアよりもギアケースカバーの外側のドライブスプロケットが車幅方向内側に位置付けられてドライブスプロケットの車幅方向外側への張り出しが抑えられる。パワーユニットのドライブスプロケットと駆動輪のドリブンスプロケットに巻き掛けられたドライブチェーンのチェーンラインが車幅方向内側に寄せられて電動車両及びパワーユニットが小型化される。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例の電動車両について説明する。
図1は本実施例の車体フレーム及び車両後部の側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、電動車両の車体フレーム10にはパワーユニット30や電装系等の各種部品が搭載されている。車体フレーム10のヘッドパイプ11から後斜め下方にメインフレーム12が延びており、メインフレーム12の後部は下方に屈曲したボディフレーム13になっている。また、ヘッドパイプ11から下方にダウンフレーム14が延びており、ダウンフレーム14の下部には後方に屈曲したロアフレーム15が接続されている。このように、車体フレーム10はクレードル形状に形成されており、車体フレーム10の内側にブラケット(不図示)等を介してパワーユニット30が取り付けられている。
【0012】
ボディフレーム13の中間部にはスイングアーム17が揺動可能に支持されている。スイングアーム17はボディフレーム13から後方に向かって延びており、スイングアーム17の後端には後輪19が回転可能に支持されている。スイングアーム17の前側とリアクッション21の下部が三角形のクッションレバー22を介して連結されている。また、クッションレバー22とボディフレーム13がクッションロッド23を介して連結されている。スイングアーム17の揺動に伴ってリアクッション21が伸縮することで、路面の凹凸が吸収されて振動が抑えられると共に路面と後輪19の接地性が高められている。
【0013】
パワーユニット30のドライブ軸65にはドライブスプロケット67が固定され、後輪19の車軸18にはドリブンスプロケット24が固定されている。ドライブスプロケット67及びドリブンスプロケット24にドライブチェーン25が巻き掛けられており、パワーユニット30の電動モータ61(
図5参照)の動力がドライブチェーン25を介して後輪19に伝達されている。このような電動車両では、ドライブチェーンラインの車幅方向外側への張り出しによって車両サイズが大型化する。そこで、本実施例のパワーユニット30ではドライブスプロケット67が車幅方向内側に寄せられて、ドライブチェーンラインの張り出しが抑えられている。
【0014】
図2から
図5を参照してパワーユニットについて説明する。
図2は本実施例のパワーユニットの斜視図である。
図3は本実施例のパワーユニットの上面図である。
図4は本実施例のギアケースカバーを外したパワーユニットの斜視図である。
図5は本実施例の動力伝達機構の及び電動モータの斜視図である。
【0015】
図2及び
図3に示すように、パワーユニット30のユニットケースは、左側から右側に向かってギアケースカバー51、ギアケース41、左側モータケース39、右側モータケース32、モータケースカバー31の5つに分割されている。ギアケース41、左側モータケース39、右側モータケース32の内側に電動モータ61(
図5参照)が設置されており、ギアケースカバー51及びギアケース41の内側に複数のギア等から成る動力伝達機構70(
図4参照)が設置されている。このように、ギアケース41はギア用のケースとして使用されるだけでなく、電動モータ61用のケースとしても使用されている。
【0016】
右側モータケース32は、左側モータケース39の右側の開口を覆っている。右側モータケース32の上面前側には冷却水のOUTパイプ34が設けられ、右側モータケース32の下面後側には冷却水のINパイプ35が設けられている。右側モータケース32の外側面から右側にボックス状のハウジング36が膨出しており、ハウジング36の上面には電動モータ61のロータ角度検出用のレゾルバ37が設けられている。ハウジング36の上面後側が後斜め上方に突き出しており、ハウジング36の突出部分には三相線用のコネクタ38が設けられている。
【0017】
ギアケース41には、左側モータケース39の左側の開口を覆って、電動モータ61の左端側を収容する円筒カバー42が形成されている。円筒カバー42から後方にケースが張り出しており、この張り出し部43と円筒カバー42の中央を囲むように周壁44が形成されている(特に
図6参照)。このギアケース41の周壁44にギアケースカバー51が取り付けられて、動力伝達機構70の設置スペースが形成されている。このように、本実施例のパワーユニット30は、左側モータケース39の左側(車幅方向一方側)にギアケース41が設けられ、このギアケース41の周壁44の開口がギアケースカバー51に車幅方向外側から覆われている。
【0018】
ギアケースカバー51の側面の後側から中央下部までの領域が、ギアケースカバー51の側面の前側から中央上部までの領域よりも車幅方向内側に一段低くなっている。このギアケースカバー51の下段部53は平坦になっており、平坦面にはドライブスプロケット67が設置されている。ドライブスプロケット67はギアケースカバー51の上段部52よりも車幅方向内側に位置付けられている。上面視にてギアケース41とギアケースカバー51の合わせ面45が後方に向かって車幅方向内側に傾斜しており、ドライブスプロケット67が車幅方向内側に設置し易くなっている。
【0019】
図4及び
図5に示すように、ギアケース41の円筒カバー42の中央を貫通して、左側モータケース39側からギアケース41側に電動モータ61のモータ軸62が突き出している。モータ軸62の先端には出力ギア63が固定されている。モータ軸62の後方でギアケース41の張り出し部43にドライブ軸65が設置されており、ギアケースカバー51(
図2参照)から車幅方向外側にドライブ軸65が突き出している。ドライブ軸65の車幅方向内側にはドライブギア66が設けられており、ドライブ軸65の車幅方向外側の先端にはドライブスプロケット67が固定されている。
【0020】
出力ギア63はギアケースカバー51の内側でモータ軸62に固定され、ドライブスプロケット67はギアケースカバー51の外側でドライブ軸65に固定されている。より詳細には、ギアケースカバー51の上段部52(
図2参照)の内側に出力ギア63が収容され、ギアケースカバー51の下段部53(
図2参照)の外側にドライブスプロケット67が露出されている。ドライブチェーン25(
図1参照)のチェーンラインの車幅方向外側への張り出さないように、出力ギア63よりもドライブスプロケット67が車幅方向内側に位置付けられて、出力ギア63とドライブスプロケット67が車幅方向に位置ズレしている。
【0021】
ギアケース41及びギアケースカバー51の内側には、モータ軸62からドライブ軸65に動力を伝達する動力伝達機構70が収容されている。動力伝達機構70には、モータ軸62からドライブ軸65に向けて並んだ第1-第3の中間軸71-73が設けられている。第1の中間軸71には第1、第2の中間ギア74、75が設けられ、第2の中間軸72には第3、第4の中間ギア76、77が設けられ、第3の中間軸73には第5の中間ギア78が設けられている。モータ軸62、ドライブ軸65、第1-第3の中間軸71-73はベアリング69を介してギアケース41及びギアケースカバー51に支持されている。
【0022】
モータ軸62の出力ギア63には第1の中間ギア74が噛み合っており、出力ギア63から第1の中間ギア74に動力が伝達される。第1の中間ギア74の車幅方向内側には第2の中間ギア75が位置し、第1の中間軸71を介して第1の中間ギア74と第2の中間ギア75が一体的に回転される。第2の中間ギア75には第3の中間ギア76が噛み合っており、第2の中間ギア75から第3の中間ギア76に動力が伝達される。第3の中間ギア76の車幅方向内側には第4の中間ギア77が位置し、第2の中間軸72を介して第3の中間ギア76と第4の中間ギア77が一体的に回転される。
【0023】
第4の中間ギア77には第5の中間ギア78が噛み合っており、第4の中間ギア77から第5の中間ギア78に動力が伝達される。第5の中間ギア78にはドライブギア66が噛み合っており、第5の中間ギア78からドライブギア66に動力が伝達される。ドライブギア66の車幅方向外側にはドライブスプロケット67が位置しており、ドライブ軸65を介してドライブギア66とドライブスプロケット67が一体的に回転される。出力ギア63、第1-第5の中間ギア74-78、ドライブギア66から成るギア列を介して電動モータ61からドライブスプロケット67に動力が伝達されている。
【0024】
図6から
図8を参照して、パワーユニットの部品レイアウトについて詳細に説明する。
図6は本実施例のギアケースカバーを外したパワーユニットの右側面図である。
図7は本実施例のギアケースカバーを外したパワーユニットの下面図である。
図8は本実施例のギアケースカバーを外したパワーユニットの後面図である。
【0025】
図6に示すように、側面視にてモータ軸62とドライブ軸65が同じ高さに位置付けられ、動力伝達機構70の第1-第3の中間軸71-73がモータ軸62及びドライブ軸65よりも上方に位置付けられている。第1の中間軸71はモータ軸62の後斜め上方に位置し、第2の中間軸72は第1の中間軸71の後斜め上方に位置付している。第3の中間軸73は第2の中間軸72の後斜め下方に位置し、第3の中間軸73の下方にドライブ軸65が位置している。モータ軸62とドライブ軸65の上方に動力伝達機構70の設置スペースが確保されることで、動力伝達機構70の前後長が抑えられてパワーユニット30が小型化される。
【0026】
ギアケース41の外側面から円筒カバー42が膨出しており、側面視にて円筒カバー42上にはモータ軸62及び第1の中間軸71が位置している。第1の中間軸71には、複数の中間ギアのうち動力伝達方向の最上流の第1の中間ギア74が設けられている。第1の中間ギア74は最も大径に形成されており、側面視にて第1の中間ギア74の大部分が円筒カバー42に重なっている。第1の中間ギア74が円筒カバー42の側方に設置されることで、円筒カバー42よりも車幅方向で一段低い箇所に第3-第5の中間ギア76-78が設置されてドライブスプロケット67が車幅方向内側に設置し易くなっている。
【0027】
また、ギアケース41の円筒カバー42から後方に張り出し部43が広がっており、張り出し部43には円筒カバー42の外周に沿って第2、第3の中間軸72、73及びドライブ軸65が設置されている。第3-第5の中間ギア76-78、ドライブギア66(
図7参照)、ドライブスプロケット67(
図7参照)が円筒カバー42の周囲にコンパクトに設置されてパワーユニット30が小型化されている。なお、本実施例では、モータ軸62とドライブ軸65だけでなく、第1の中間軸71と第3の中間軸73も同じ高さになっているが、両軸が完全に同じ高さになっている必要はなく、両軸が略同じ高さと見做せる程度の誤差を含んでいてもよい。
【0028】
動力伝達機構70には、モータ軸62の真後ろにドライブ軸65を設置するために第5の中間ギア78が追加されている。動力伝達機構70のトータルの減速比を稼ぐためには、第5の中間ギア78よりもドライブギア66の歯数を増やすことが望ましいが、ドライブギア66の外径が大きくなってモータ軸62からドライブ軸65が遠ざけられる。そこで、本実施例では、第5の中間ギア78よりもドライブギア66の歯数を減らすことで、ドライブギア66の外径が小さくなってモータ軸62にドライブ軸65が近づけられてパワーユニット30が小型化されている。
【0029】
図7及び
図8に示すように、上面視にてギアケース41とギアケースカバー51の合わせ面45が後方に向かって車幅方向内側に傾斜している。合わせ面45よりも車幅方向外側には、出力ギア63、第1-第3の中間ギア74-76、ドライブスプロケット67が設置されている。合わせ面45よりも車幅方向内側には第4、第5の中間ギア77、78(
図5参照)、ドライブギア66が設置されている。合わせ面45からはみ出た出力ギア63、第1-第3の中間ギア74-76はギアケースカバー51の上段部52に収容され、合わせ面45からはみ出たドライブスプロケット67はギアケースカバー51の下段部53から露出される。
【0030】
合わせ面45が後方に向かって車幅方向内側に傾斜することで、ギアケースカバー51の前部よりも後部が一段低く形成されている。これにより、ギアケースカバー51の後部が車幅方向内側に寄せられて、ギアケースカバー51の外側のドライブスプロケット67が車幅方向内側に設置されている。ドライブスプロケット67は出力ギア63よりも車幅方向内側に位置付けられている。ドライブスプロケット67に掛けれたドライブチェーン25(
図1参照)のチェーンラインがギアケースカバー51の上端部よりも車幅方向内側に寄せられてパワーユニット30が小型化されている。
【0031】
ギアケースカバー51の内側では、出力ギア63が最も車幅方向外側に設置され、第1-第5の中間ギア74-78及びドライブギア66が動力伝達方向の下流に向かって車幅方向内側に設置されている。車幅方向において第1の中間ギア74は出力ギア63と同じ位置に設置され、第2、第3の中間ギア75、76が第1の中間ギア74よりも車幅方向内側に設置され、第4、第5の中間ギア77、78、ドライブギア66が第3の中間ギア76よりも車幅方向内側に設置されている。これにより、ドライブギア66と同軸のドライブスプロケット67が車幅方向内側に設置し易くなっている。
【0032】
後面視にてギアケースカバー51が外れた状態では、ほとんどのギアが目視可能になっている。後面視にて第1-第3の中間ギア74-76が円筒カバー42の外面よりも外側に設置され、第4、第5の中間ギア77、78及びドライブギア66が円筒カバー42の外面よりも車幅方向内側に設置されている。第4、第5の中間ギア77、78及びドライブギア66が円筒カバー42に重なっている。これにより、ドライブギア66と同軸のドライブスプロケット67が車幅方向内側に設置し易くなっている。また、動力伝達機構70の左右幅が抑えられてパワーユニット30が小型化される。
【0033】
以上、本実施例のパワーユニット30によれば、出力ギア63及びドライブスプロケット67が車幅方向一方側に設けられることで動力伝達機構70がコンパクトに形成される。また、ギアケースカバー51の内側の出力ギア63よりもギアケースカバー51の外側のドライブスプロケット67が車幅方向内側に位置付けられてドライブスプロケット67の車幅方向外側への張り出しが抑えられる。パワーユニット30のドライブスプロケット67と後輪19のドリブンスプロケット24に巻き掛けられたドライブチェーン25のチェーンラインが車幅方向内側に寄せられて電動車両及びパワーユニット30が小型化される。
【0034】
なお、本実施例では、動力伝達機構がギア列で構成されたが、動力伝達機構はモータ軸からドライブ軸に動力を伝達可能であればよい。
【0035】
また、本実施例では、上面視にてギアケースとギアケースカバーの合わせ面が後方に向かって車幅方向内側に傾斜しているが、出力ギアよりもドライブスプロケットが車幅方向内側に設置可能であれば合わせ面は傾斜していなくてもよい。
【0036】
また、本実施例では、動力伝達機構が3つの中間軸と5つの中間ギアを有しているが、動力伝達機構の中間軸及び中間ギアの個数、設置場所、大きさ等は特に限定されない。
【0037】
また、本実施例では、第5の中間ギアよりもドライブギアの歯数が少なく形成されているが、モータ軸の後方にドライブ軸が設置可能であれば第5の中間ギアよりもドライブギアの歯数が大きく形成されていてもよい。
【0038】
また、本実施例のパワーユニットは上記の鞍乗型の電動車両に限らず、他の鞍乗型の電動車両に採用されてもよい。なお、鞍乗型の電動車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する電動車両に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの電動車両も含んでいる。
【0039】
以上の通り、第1態様は、モータケース(左側モータケース39、右側モータケース32)の車幅方向一方側にギアケース(41)が設けられ、当該ギアケースの開口がギアケースカバー(51)に車幅方向外側から覆われたパワーユニット(30)であって、モータケース側からギアケース側に突き出したモータ軸(62)と、ギアケースカバーから車幅方向外側に突き出したドライブ軸(65)と、モータ軸からドライブ軸に動力を伝達する動力伝達機構(70)と、を備え、ギアケースカバーの内側でモータ軸に出力ギア(63)が固定され、ギアケースカバーの外側でドライブ軸にドライブスプロケット(67)が固定され、出力ギアよりもドライブスプロケットが車幅方向内側に位置付けられている。この構成によれば、出力ギア及びドライブスプロケットが車幅方向一方側に設けられることで動力伝達機構がコンパクトに形成される。また、ギアケースカバーの内側の出力ギアよりもギアケースカバーの外側のドライブスプロケットが車幅方向内側に位置付けられてドライブスプロケットの車幅方向外側への張り出しが抑えられる。パワーユニットのドライブスプロケットと駆動輪のドリブンスプロケットに巻き掛けられたドライブチェーンのチェーンラインが車幅方向内側に寄せられて電動車両及びパワーユニットが小型化される。
【0040】
第2態様は、第1態様において、上面視にてギアケースとギアケースカバーの合わせ面(45)が後方に向かって車幅方向内側に傾斜して、出力ギアよりもドライブスプロケットが後方に位置付けられている。この構成によれば、ギアケースカバーの後部が車幅方向内側に寄せられて、ギアケースカバーの外側のドライブスプロケットが車幅方向内側に設置し易くなっている。
【0041】
第3態様は、第1態様及び第2態様において、動力伝達機構は、複数の中間ギア(第1-第5の中間ギア74-78)が設けられた複数の中間軸(第1-第3の中間軸71-73)を有し、ギアケースカバーの内側では、出力ギアが最も車幅方向外側に設置され、複数の中間ギアが動力伝達方向の下流に向かって車幅方向内側になるように設置されている。この構成によれば、ドライブスプロケットが車幅方向内側に設置し易くなっている。
【0042】
第4態様は、第3態様において、ギアケースの外側面からモータケースの開口を覆う円筒カバー(42)が膨出し、複数の中間ギアのうち動力伝達方向の最上流の中間ギア(第1の中間ギア74)が最も大径であり、側面視にて最上流の中間ギアが円筒カバーに重なっている。この構成によれば、大径の中間ギアが円筒カバーの側方に設置されることで、大径の中間ギアの後方の中間ギアが円筒カバーよりも車幅方向で一段低い箇所に設置されてドライブスプロケットがより車幅方向内側に設置し易くなる。
【0043】
第5態様は、第3態様又は第4態様において、最上流の中間ギアが固定された中間軸よりも後方の中間軸(第2、第3の中間軸72、73)及びドライブ軸(65)が円筒カバーの外周に沿って設置されている。この構成によれば、一部の中間ギア及びドライブスプロケットが円筒カバーの周囲にコンパクトに設置されてパワーユニットが小型化される。
【0044】
第6態様は、第3態様から第5態様のいずれか1態様において、側面視にてモータ軸とドライブ軸が同じ高さに位置付けられ、複数の中間軸がモータ軸及びドライブ軸よりも上方に位置付けられている。この構成によれば、動力伝達機構の前後長が抑えられてパワーユニットが小型化される。
【0045】
第7態様は、第3態様から第6態様のいずれか1態様において、ドライブ軸にはドライブギア(66)が設けられており、後面視にて複数の中間ギアのうち動力伝達方向の下流側の中間ギア(第4、第5の中間ギア77、78)及びドライブギアが円筒カバーに重なっている。この構成によれば、ドライブギアと同軸のドライブスプロケットが車幅方向内側に設置し易くなっている。また、動力伝達機構の左右幅が抑えられてパワーユニットが小型化される。
【0046】
第8態様は、第3態様から第7態様のいずれか1態様において、動力伝達方向の最下流の中間ギア(第5の中間ギア78)よりもドライブギアの歯数が少ない。この構成によれば、ドライブ軸を後方に設置するために中間ギアが追加されても、ドライブギアが小径になる分だけドライブ軸がモータ軸に近づけられてパワーユニットが小型化される。
【0047】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0048】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。