(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073039
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
B66F9/24 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184021
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大滝 雄介
(72)【発明者】
【氏名】大高 一馬
(72)【発明者】
【氏名】小野川 英
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲平
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE03
3F333BA08
3F333FA09
3F333FA20
3F333FD02
3F333FD03
3F333FD06
(57)【要約】
【課題】フォークリフトが転倒することを抑制しつつ、スループットを向上させることができる走行制御装置を提供する。
【解決手段】フォークリフトの走行制御装置は、フォークに荷物が載置された際、荷物を含めたフォークリフトの重心位置を検出し、重心位置に基づいて上下方向におけるフォークの位置を示す揚高、進行方向におけるフォークの突出量を示すリーチ長、及びゼロモーメントポイントを安定領域内に位置させる加速度が関連付いた対応関係情報を取得し、揚高及びリーチ長を取得し、取得された揚高及びリーチ長に基づいて対応関係情報から許容加速度を取得し、許容加速度が最大加速度よりも小さい場合に、揚高及び最大加速度に基づいて対応関係情報から目標リーチ長を取得し、リーチ長が目標リーチ長となるように荷役装置を駆動し、リーチ長が目標リーチ長とされた際、許容加速度よりも大きい加速度でフォークリフトを加速させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と、
前記車両に設けられ、駆動されることで前記車両を走行させる駆動輪と、
前記車両に設けられ、前記車両と共に走行可能なストラドルレッグと、
前記ストラドルレッグに設けられ、駆動されることで、フォークが上下方向に昇降可能、かつ前記車両の進行方向に進退可能な荷役装置と、
を備えるフォークリフトの走行制御装置であって、
前記フォークに荷物が載置された際、前記荷物を含めた前記フォークリフトの重心位置を検出する重心位置検出部と、
前記重心位置に基づいて、前記上下方向における前記フォークの位置を示す揚高と、前記進行方向における前記フォークの突出量を示すリーチ長と、ゼロモーメントポイントを安定領域内に位置させる加速度とが互いに関連付いた対応関係情報を取得する対応関係情報取得部と、
前記フォークの前記揚高及び前記リーチ長を取得する荷役装置情報取得部と、
前記荷役装置情報取得部によって取得された前記揚高及び前記リーチ長に基づいて、前記対応関係情報から許容加速度を取得する許容加速度取得部と、
前記許容加速度が前記フォークリフトの最大加速度よりも小さい場合に、前記揚高及び前記最大加速度に基づいて、前記対応関係情報から目標リーチ長を取得する目標リーチ長取得部と、
前記フォークの前記リーチ長が前記目標リーチ長となるように前記荷役装置を駆動する荷役装置駆動部と、
前記フォークの前記リーチ長が前記目標リーチ長とされた際、前記許容加速度よりも大きい加速度で前記フォークリフトが加速するように前記駆動輪を駆動させる駆動輪制御部と、
を備える走行制御装置。
【請求項2】
前記フォークリフトは、前記フォークに前記荷物が載置されていない状態で荷役位置である目標位置に向かって走行し、
前記荷役装置情報取得部が取得する前記フォークの前記揚高及び前記リーチ長は、前記目標位置で前記フォークに前記荷物を積み込み可能な高さ及び突出量である請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
車両と、
前記車両に設けられ、駆動されることで前記車両を走行させる駆動輪と、
前記車両に設けられ、前記車両と共に走行可能なストラドルレッグと、
前記ストラドルレッグに設けられ、駆動されることで、フォークが上下方向に昇降可能、かつ前記車両の進行方向に進退可能な荷役装置と、
を備えるフォークリフトの走行制御装置であって、
前記フォークに荷物が載置された際、前記荷物を含めた前記フォークリフトの重心位置を検出する重心位置検出部と、
前記重心位置に基づいて、前記上下方向における前記フォークの位置を示す揚高と、前記進行方向における前記フォークの突出量を示すリーチ長と、ゼロモーメントポイントを安定領域内に位置させる加速度とが互いに関連付いた対応関係情報を取得する対応関係情報取得部と、
前記フォークリフトの前記重心位置が検出された際の前記フォークの前記揚高を取得する荷役装置情報取得部と、
前記荷役装置情報取得部によって取得された前記フォークの前記揚高、及び前記フォークリフトの最大加速度に基づいて、前記対応関係情報から目標リーチ長を取得する目標リーチ長取得部と、
前記フォークの前記リーチ長が前記目標リーチ長となるように前記荷役装置を駆動する荷役装置駆動部と、
前記フォークの前記揚高、及び前記目標リーチ長に基づいて、前記対応関係情報から許容加速度を取得する許容加速度取得部と、
前記フォークの前記リーチ長が前記目標リーチ長とされた際、前記フォークリフトが前記許容加速度で加速するように前記駆動輪を駆動させる駆動輪制御部と、
を備える走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、揚高検出器によって検出された揚高、及び荷重検出器によって検出された荷重に基づいて許容加速度を演算するフォークリフトの走行制御装置が開示されている。この走行制御装置では、許容加速度に基づいて実加速度を制御することでフォークリフトが転倒することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の走行制御装置では、実加速度が荷重に応じた許容加速度によって制約される。フォークリフトが稼働する物流施設等では、フォークリフトの加速度、すなわち、フォークリフトの移動速度が高いほどスループット(フォークリフトの荷捌き能力)が高い場合がある。したがって、フォークリフトが転倒することを抑制しつつ、スループットを向上させることができる技術が要求される。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、フォークリフトが転倒することを抑制しつつ、スループットを向上させることができる走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る移動制御装置は、車両と、前記車両に設けられ、駆動されることで前記車両を走行させる駆動輪と、前記車両に設けられ、前記車両と共に走行可能なストラドルレッグと、前記ストラドルレッグに設けられ、駆動されることで、フォークが上下方向に昇降可能、かつ前記車両の進行方向に進退可能な荷役装置と、を備えるフォークリフトの走行制御装置であって、前記フォークに荷物が載置された際、前記荷物を含めた前記フォークリフトの重心位置を検出する重心位置検出部と、前記重心位置に基づいて、前記上下方向における前記フォークの位置を示す揚高と、前記進行方向における前記フォークの突出量を示すリーチ長と、ゼロモーメントポイントを安定領域内に位置させる加速度とが互いに関連付いた対応関係情報を取得する対応関係情報取得部と、前記フォークの前記揚高及び前記リーチ長を取得する荷役装置情報取得部と、前記荷役装置情報取得部によって取得された前記揚高及び前記リーチ長に基づいて、前記対応関係情報から許容加速度を取得する許容加速度取得部と、前記許容加速度が前記フォークリフトの最大加速度よりも小さい場合に、前記揚高及び前記最大加速度に基づいて、前記対応関係情報から目標リーチ長を取得する目標リーチ長取得部と、前記フォークの前記リーチ長が前記目標リーチ長となるように前記荷役装置を駆動する荷役装置駆動部と、前記フォークの前記リーチ長が前記目標リーチ長とされた際、前記許容加速度よりも大きい加速度で前記フォークリフトが加速するように前記駆動輪を駆動させる駆動輪制御部と、を備える。
【0007】
また、本開示に係る走行制御装置は、車両と、前記車両に設けられ、駆動されることで前記車両を走行させる駆動輪と、前記車両に設けられ、前記車両と共に走行可能なストラドルレッグと、前記ストラドルレッグに設けられ、駆動されることで、フォークが上下方向に昇降可能、かつ前記車両の進行方向に進退可能な荷役装置と、を備えるフォークリフトの走行制御装置であって、前記フォークに荷物が載置された際、前記荷物を含めた前記フォークリフトの重心位置を検出する重心位置検出部と、前記重心位置に基づいて、前記上下方向における前記フォークの位置を示す揚高と、前記進行方向における前記フォークの突出量を示すリーチ長と、ゼロモーメントポイントを安定領域内に位置させる加速度とが互いに関連付いた対応関係情報を取得する対応関係情報取得部と、前記フォークリフトの前記重心位置が検出された際の前記フォークの前記揚高を取得する荷役装置情報取得部と、前記荷役装置情報取得部によって取得された前記フォークの前記揚高、及び前記フォークリフトの最大加速度に基づいて、前記対応関係情報から目標リーチ長を取得する目標リーチ長取得部と、前記フォークの前記リーチ長が前記目標リーチ長となるように前記荷役装置を駆動する荷役装置駆動部と、前記フォークの前記揚高、及び前記目標リーチ長に基づいて、前記対応関係情報から許容加速度を取得する許容加速度取得部と、前記フォークの前記リーチ長が前記目標リーチ長とされた際、前記フォークリフトが前記許容加速度で加速するように前記駆動輪を駆動させる駆動輪制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、フォークリフトが転倒することを抑制しつつ、スループットを向上させることができる走行制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る移動制御システムの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係るフォークリフトの構成を示す斜視図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係るゼロモーメントポイントを説明するための概念図である。
【
図4】本開示の第一実施形態に係る走行制御装置の機能ブロック図である。
【
図5】本開示の第一実施形態に係る安定領域及び許容領域を説明するための概念図である。
【
図6】本開示の第一実施形態に係る走行制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の第一実施形態に係る走行制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の第一実施形態に係る走行制御装置の動作における荷役制御ステップの一例を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の第二実施形態に係る走行制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の実施形態に係るコンピュータの構成を示すハードウェア構成図である。
【
図11】本開示のその他の実施形態に係る走行制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態に係る走行制御装置を備えた移動制御システムを図面に基づき説明する。
【0011】
<第一実施形態>
[移動制御システム]
移動制御システムは、移動体の移動を制御するシステムである。本実施形態における移動制御システムは、例えば、物流センターや倉庫等の物流施設で、荷物の積み込みや積み下ろし、搬送等の荷役作業を行う移動体としてのフォークリフトの移動を制御する。
【0012】
ここで、
図1に示すように、本実施形態におけるフォークリフト10は、物流施設LF内で荷物を所定の位置から目的の位置へ移動させる際に通路を通行する。通路は、対向し合う一対の壁体Wに挟まれており、一の方向に延びている。
【0013】
本実施形態における壁体Wには、例えば、荷物等が複数載置されたラック等を例示することができる。以下、通路の延びる上記一の方向を「通路延在方向D1」と称し、一対の壁体Wが対向し合う向きである通路の幅方向を「通路幅方向D2」と称する。本実施形態における通路延在方向D1と通路幅方向D2とは、互いに直交する方向である。
【0014】
移動制御システム1は、フォークリフト10と、走行制御装置20と、上位装置40とを備えている。
【0015】
(フォークリフト)
フォークリフト10は、物流施設LF内でパレットに載置された荷物を移動させる産業車両である。本実施形態におけるフォークリフト10は、上位装置40から受信する指令に従って自立走行する車両である。フォークリフト10は、例えば、リーチ型の無人フォークリフト(AGF:Automated Guided Forklift)である。
【0016】
図2に示すように、本実施形態におけるフォークリフト10は、車両11と、ストラドルレッグ12と、荷役装置13と、走行機構14と、重量センサ15と、自己位置センサ16とを備えている。
【0017】
(車両)
車両11は、フォークリフト10の本体部分であり、走行機構14によって物流施設LF内における路面Rを走行する。以下、説明の便宜上、この車両11が進行する方向(車両11が前進及び後退する方向)を「進行方向Ds」と称する。更に、この進行方向Dsの両側のうち、前進の側を「前方側Dsf」と称し、その反対側である後退の側を「後方側Dsb」と称する。
【0018】
また、この車両11の幅方向を「車幅方向Dw」と称する。更に、車幅方向Dwの両側のうち、車両11を後方側Dsbから見た時の右側を「一方側Dwr」と称し、その反対側(左側)を「他方側Dwl」と称する。
【0019】
(ストラドルレッグ)
ストラドルレッグ12は、車両11における後方側Dsbかつ下方側の部分に車両11と一体に設けられている。ストラドルレッグ12は、車両11から後方側Dsbに延びる一対の軸状の部材である。一対のストラドルレッグ12は、車幅方向Dwで互いに離間した状態で配置されている。
【0020】
以下、一対のストラドルレッグ12のうち、一方側Dwrに配置されたストラドルレッグ12を「右ストラドルレッグ121」と称し、その反対側(他方側Dwl)に配置されたストラドルレッグ12を「左ストラドルレッグ122」と称する。
【0021】
(荷役装置)
荷役装置13は、フォークリフト10中における荷物が載置される部分である。荷役装置13は、ストラドルレッグ12に設けられている。荷役装置13は、マスト131と、フォーク132とを有している。
【0022】
マスト131は、ストラドルレッグ12から鉛直方向に一致する上下方向Dvに延びるとともに、このストラドルレッグ12上で進行方向Dsに移動可能に設けられている。以下、説明の便宜上、上下方向Dvにおける下方側(重力が働く方向)を単に「下方側Dvd」と称し、その反対側(上方側)を単に「上方側Dvu」と称する。
【0023】
マスト131は、右ストラドルレッグ121及び左ストラドルレッグ122の双方に亘るように取り付けられており、右ストラドルレッグ121及び左ストラドルレッグ122のそれぞれから上方側Dvuに延びている。マスト131は、駆動されることで、これら右ストラドルレッグ121及び左ストラドルレッグ122の延びる方向に沿って進行方向Dsに進退する。具体的には、例えば、マスト131に設けられたリーチ機構(図示省略)が駆動されることによってマスト131の全体が進行方向Dsに移動される。
【0024】
また、マスト131は、駆動されることで、ストラドルレッグ12上で前方側Dsfに傾斜することができる。具体的には、例えば、マスト131に設けられたチルト機構(図示省略)が駆動されることによって、マスト131の全体が前方側Dsfに傾斜する。ここでいう「前方側Dsfに傾斜」とは、マスト131における上方側Dvuの端部が、マスト131における下方側Dvdの端部よりも前方側Dsfに配置された状態となるようにマスト131が傾斜する状態を意味している。
【0025】
フォーク132は、マスト131から後方側Dsbに延びた状態でマスト131に一対設けられている。一対のフォーク132は、車幅方向Dwで互いに離間した状態で配置されている。一対のフォーク132は、マスト131に対して上下方向Dvに移動可能に取り付けられている。一対のフォーク132は、マスト131が駆動されることで、このマスト131に沿って上下方向Dvに昇降する。具体的には、例えば、マスト131に設けられたリフト機構(図示省略)が駆動されることによって、フォーク132の全体が上下方向Dvに移動される。
【0026】
したがって、フォーク132は、マスト131がストラドルレッグ12上で上下方向Dvに移動するとともに、後方側Dsbに移動することで、例えば荷物が載置されたパレットのフォークポケット等に挿入される。フォーク132は、このフォークポケットに挿入されることで、パレット上にこのパレットと一体に載置された荷物をパレットごと持ち上げることができる。
【0027】
以下、説明の便宜上、パレット及びこのパレットに載置された荷物の両方をまとめて「荷物Lg」と称する(
図3参照)。また、フォーク132は、マスト131がストラドルレッグ12上で前方側Dsfに傾斜することで、荷物Lgが載置された状態でこの荷物Lgと共に水平面に対して傾いた状態となる。
【0028】
以下、マスト131が駆動されることで、マスト131がフォーク132と共に進行方向Dsに進退することを「リーチ動作」と称する。また、このリーチ動作のうち、マスト131が後方側Dsbに移動することを「リーチアウト」と称し、マスト131が前方側Dsfに移動することを「リーチイン」と称する。
【0029】
また、マスト131が駆動されることで、フォーク132が上下方向Dvに昇降することを「リフト動作」と称する。また、このリフト動作のうち、フォーク132が上方側Dvuに移動することを「リフトアップ」と称し、フォーク132が下方側Dvdに移動することを「リフトダウン」と称する。
【0030】
また、マスト131が駆動されることで、フォーク132が水平面に対して傾斜する動作を「チルト動作」と称する。このチルト動作のうち、フォーク132が水平面に対して前方側Dsfに傾斜することを「チルトアップ」と称し、フォーク132が前方側Dsfに傾いた状態から元の位置に戻ることを「チルトダウン」と称する。ここでいう「水平面に対して前方側Dsfに傾斜」とは、一対のフォーク132における後方側Dsbの端部が、一対のフォーク132における前方側Dsfの端部よりも上方側Dvuに配置された状態となるようにフォーク132が傾斜する状態を意味している。
【0031】
また、マスト131は、上下方向Dvにおけるフォーク132の位置を示す揚高と、進行方向Dsにおけるフォーク132の突出量を示すリーチ長とを走行制御装置20に送信する。上下方向Dvにおけるフォーク132の位置を示す揚高とは、フォーク132が最も下方側Dvdに配置された時の位置からの上下方向Dvの高さを意味する。また、進行方向Dsにおけるフォーク132の突出量とは、フォーク132が最も前方側Dsfに配置された時の位置からの進行方向Dsの突出量を意味する。
【0032】
(走行機構)
走行機構14は、車両11及びストラドルレッグ12を上下方向Dvにおける下方側Dvdから支持するとともに、これらを路面R上で移動可能にする。
図2及び
図3に示すように、本実施形態における走行機構14は、駆動輪141と、第一従動輪142と、第二従動輪143とを有している。
【0033】
駆動輪141は、車両11に設けられている。
図3に示すように、駆動輪141は、路面Rに当接しながら回転することができる駆動輪本体141aと、駆動輪本体141aを路面Rに当接させた状態で回転させる駆動モータ141bと、駆動輪本体141aの向きを転向させることができる操舵モータ141cとを有している。これら駆動モータ141b及び操舵モータ141cは、例えば、駆動輪本体141aに接続されている。
【0034】
駆動モータ141bは、走行制御装置20から送信された駆動の指示を示す信号に基づいて回転する。具体的には、駆動モータ141bは、走行制御装置20からトルク(回転速度)を示す信号を受信し、自身がこのトルクに基づいて回転することで駆動輪本体141aを回転させる。操舵モータ141cは、上下方向Dvに延びる第一回動軸線O1を中心に回動可能である。本実施形態における第一回動軸線O1は、例えば、駆動輪141の中心を貫くように上下方向Dvに延びている。操舵モータ141cは、例えば、走行制御装置20から送信された操舵の指示を示す信号に基づいて駆動輪本体141aを操舵する。
【0035】
具体的には、操舵モータ141cは、走行制御装置20から回転角を示す信号を受信することで、自身の姿勢をこの回転角にする。つまり、この操舵モータ141cが回動することによって、進行方向Dsに対する駆動輪本体141aの傾きが調整される結果、駆動輪本体141aの向きが転向される。
【0036】
第一従動輪142は、左ストラドルレッグ122における後方側Dsbの端部に設けられている。第一従動輪142は、例えば、路面Rに当接しながら回転することができる第一従動輪本体142aと、第一従動輪本体142aの向きを転向させることができる操舵モータ142bとを有している。操舵モータ142bは、例えば、第一従動輪本体142aに接続されている。操舵モータ142bは、上下方向Dvに延びる第二回動軸線O2を中心に回動可能である。本実施形態における第二回動軸線O2は、例えば、第一従動輪142の中心を貫くように上下方向Dvに延びている。操舵モータ142bは、例えば、走行制御装置20から送信された操舵の指示を示す信号に基づいて第一従動輪本体142aを操舵する。
【0037】
具体的には、操舵モータ142bは、走行制御装置20から回転角を示す信号を受信することで、自身の姿勢をこの回転角にする。つまり、この操舵モータ142bが回動することによって、進行方向Dsに対する第一従動輪本体142aの傾きが調整される結果、第一従動輪本体142aの向きが転向される。
【0038】
第二従動輪143は、右ストラドルレッグ121における後方側Dsbの端部に設けられている。第二従動輪143は、例えば、路面Rに当接しながら回転することができる第二従動輪本体143aと、第二従動輪本体143aの向きを転向させることができる操舵モータ143bとを有している。操舵モータ143bは、例えば、第二従動輪本体143aに接続されている。操舵モータ143bは、上下方向Dvに延びる第三回動軸線O3を中心に回動可能である。本実施形態における第三回動軸線O3は、例えば、第二従動輪143の中心を貫くように上下方向Dvに延びている。操舵モータ143bは、例えば、走行制御装置20から送信された操舵の指示を示す信号に基づいて第二従動輪本体143aを操舵する。
【0039】
具体的には、操舵モータ143bは、走行制御装置20から回転角を示す信号を受信することで、自身の姿勢をこの回転角にする。つまり、この操舵モータ143bが回動することによって、進行方向Dsに対する第二従動輪本体143aの傾きが調整される結果、第二従動輪本体143aの向きが転向される。
【0040】
ここで、本実施形態では、第一回動軸線O1と第二回動軸線O2とを結ぶ第一仮想線V1、第一回動軸線O1と第三回動軸線O3とを結ぶ第二仮想線V2、及び第二回動軸線O2と第三回動軸線O3とを結ぶ第三仮想線V3によって、上下方向Dvから見た際に仮想的な三角形が形成される。この三角形は、例えば、上下方向Dvから見た際に第一仮想線V1の長さと第二仮想線V2の長さとが等しい二等辺三角形状を成している。
【0041】
すなわち、通路延在方向D1と通路幅方向D2とからなる二次元平面座標系における第一回動軸線O1と第二回動軸線O2との間の距離(第一仮想線V1の長さ)と、第一回動軸線O1と第三回動軸線O3との間の距離(第二仮想線V2の長さ)とが等しい。本実施形態では、第二回動軸線O2と第三回動軸線O3との間の距離(第三仮想線V3の長さ)は、第一仮想線V1の長さ及び第二仮想線V2の長さよりも短い。
【0042】
(重量センサ)
重量センサ15は、フォーク132に荷物Lgが載置された際、この荷物Lgの重量を検出するセンサである。本実施形態における重量センサ15は、ロードセルである。重量センサ15は、自身に荷重がかけられることで、重量データを取得する。重量センサ15は、取得した重量データを示す信号を走行制御装置20に送信する。
【0043】
図2及び
図3に示すように、重量センサ15は、フォーク132に複数が設けられている。具体的には、一対のフォーク132のうち一方側Dwrに配置されたフォーク132に二つの重量センサ15が配置され、他方側Dwlに配置されたフォーク132に二つの重量センサ15が配置されている。
【0044】
各フォーク132に設けられたこれら重量センサ15は、各フォーク132上で進行方向Dsに互いに離間して配置されている。一方側Dwrに配置されたフォーク132に設けられた二つの重量センサ15の位置は、他方側Dwlに配置されたフォーク132に設けられた二つの重量センサ15の位置と進行方向Dsで揃っている。
【0045】
(自己位置センサ)
本実施形態における自己位置センサ16は、周囲にレーザ光を照射するとともに、周囲の対象物からの反射光を検出(受光)することで、対象物の位置及び姿勢を検出する。自己位置センサ16は、例えば、水平方向にレーザ光を走査する2D-LiDAR(Light Detection And Ranging)等のレーザスキャナである。自己位置センサ16は、例えば、車両11における上方側Dvuを向く面に設けられている。
【0046】
自己位置センサ16は、例えば、フォークリフト10が通路中を走行する際、水平方向にレーザ光を走査することで、一対の壁体Wの輪郭、及びフォークリフト10の輪郭を検出する。具体的には、自己位置センサ16は、複数のプロットによって壁体Wの輪郭、及びフォークリフト10の輪郭を示すデータを取得する。これら壁体Wの輪郭及びフォークリフト10の輪郭を示すデータの各プロットには、例えば、二次元平面座標系の座標が関連付いている。自己位置センサ16は、取得したデータを示す信号を走行制御装置20に送信する。
【0047】
(走行制御装置)
走行制御装置20は、フォークリフト10が物流施設LF内における目標位置Pに向かって走行する際、フォークリフト10の走行機構14を制御することで、移動体の移動速度(フォークリフト10の進行方向Dsへの加速度)を制御する。走行制御装置20は、例えば、フォークリフト10の車両11の内部に設けられている。
【0048】
ここでいう「目標位置P」には、例えば、フォークリフト10に予め指示されている走行経路中に配置された複数の地点や、通路中でフォークリフト10が荷物Lgの積み込み又は積み下ろしの荷役作業等を行うことができる位置等を例示することができる。目標位置Pは、例えば上位装置40によって予め設定されている。走行制御装置20は、この目標位置Pの位置を示す信号を上位装置40から受信する。
【0049】
図4に示すように、本実施形態における走行制御装置20は、荷役装置駆動部21と、荷物情報取得部22と、車両情報取得部23と、対応関係情報取得部24と、荷役装置情報取得部25と、許容加速度取得部26と、加速度判定部27と、目標リーチ長取得部28と、リーチ長判定部29と、自己位置取得部30と、自己位置判定部31と、駆動輪制御部32と、記憶部33とを備えている。
【0050】
(荷役装置駆動部)
荷役装置駆動部21は、荷役装置13のマスト131を駆動することで、荷役装置13に上述したリーチ動作、リフト動作、及びチルト動作をさせる。本実施形態における荷役装置駆動部21は、外部から受け付けたフォーク132の揚高、フォーク132のリーチ長、及びチルト動作の指示を示す信号に基づいて、荷役装置13のマスト131を駆動する。荷役装置駆動部21は、昇降制御部211と、進退制御部212と、傾動制御部213とを有している。
【0051】
昇降制御部211は、外部から受け付けたフォーク132の揚高に基づいて、リフト動作の指示を示す信号をマスト131に送信する。本実施形態における昇降制御部211は、リフトダウン指示部211aと、リフトアップ指示部211bとを有している。
【0052】
リフトダウン指示部211aは、受け付けた揚高となるまでフォーク132を下降させる(下方側Dvdへの移動)指示を示す信号をマスト131に送信する。マスト131は、リフトダウン指示部211aからの信号を受け付けた場合、フォーク132を下方側Dvdに移動させる。リフトダウン指示部211aは、マスト131がフォーク132を揚高の高さまで移動させた後、リフトダウンが完了した旨を示す信号を駆動輪制御部32に送る。
【0053】
リフトアップ指示部211bは、受け付けた揚高となるまでフォーク132を上昇させる(上方側Dvuへの移動)指示を示す信号をマスト131に送信する。マスト131は、リフトアップ指示部211bからの信号を受け付けた場合、フォーク132を上方側Dvuに移動させる。リフトアップ指示部211bは、マスト131がフォーク132を揚高の高さまで移動させた後、リフトアップが完了した旨を示す信号を駆動輪制御部32に送る。
【0054】
進退制御部212は、外部から受け付けたフォーク132のリーチ長に基づいて、リーチ動作の指示を示す信号をマスト131に送信する。本実施形態における進退制御部212は、リーチアウト指示部212aと、リーチイン指示部212bとを有している。
【0055】
リーチアウト指示部212aは、受け付けたリーチ長となるまでフォーク132を進出させる(マスト131の後方側Dsbへの移動)指示を示す信号をマスト131に送信する。マスト131は、リーチアウト指示部212aからの信号を受け付けた場合、フォーク132を後方側Dsbに移動させる。リーチアウト指示部212aは、マスト131がフォーク132をリーチ長となるまで移動させた後、リーチアウトが完了した旨を示す信号を駆動輪制御部32に送る。
【0056】
リーチイン指示部212bは、受け付けたリーチ長となるまでフォーク132を後退させる(マスト131の前方側Dsfへの移動)指示を示す信号をマスト131に送信する。マスト131は、リーチイン指示部212bからの信号を受け付けた場合、フォーク132を前方側Dsfに移動させる。リーチイン指示部212bは、マスト131がフォーク132をリーチ長となるまで移動させた後、リーチインが完了した旨を示す信号を駆動輪制御部32に送る。
【0057】
傾動制御部213は、チルト動作の指示を示す信号をマスト131に送信する。本実施形態における傾動制御部213は、チルトアップ指示部213aと、チルトダウン指示部213bとを有している。
【0058】
チルトアップ指示部213aは、マスト131を所定の角度傾動させる(マスト131の前方側Dsfへの傾斜)指示を示す信号をマスト131に送信する。マスト131は、チルトアップ指示部213aからの信号を受け付けた場合、フォーク132を水平面に対して前方側Dsfに傾斜させる。チルトアップ指示部213aは、マスト131が傾動した後、チルトアップが完了した旨を示す信号を荷物情報取得部22に送る。
【0059】
チルトダウン指示部213bは、傾動を元に戻す指示を示す信号をマスト131に送信する。マスト131は、チルトダウン指示部213bからの信号を受け付けた場合、フォーク132を水平面に対して平行な元の状態に戻す。チルトダウン指示部213bは、マスト131の傾動が元に戻された後、チルトダウンが完了した旨を示す信号を荷物情報取得部22に送る。
【0060】
(荷物情報取得部)
荷物情報取得部22は、荷役装置駆動部21が駆動されるとともにフォーク132に荷物Lgが載置された際、荷物情報を取得する。本実施形態における荷物情報は、荷物Lgの重量と、荷物Lgの重心位置CG1(
図3(a)参照)とを含む。荷物情報取得部22は、荷物荷重取得部221と、荷物重量演算部222と、荷物重心位置検出部223とを有している。
【0061】
荷物荷重取得部221は、フォーク132に載置された荷物Lgからフォーク132にかかる荷重を取得する。本実施形態における荷物荷重取得部221は、フォーク132に設けられた各重量センサ15から送信された重量データを受信する。荷物荷重取得部221は、取得した各重量センサ15が取得した重量を示す信号を荷物重量演算部222と、荷物重心位置検出部223とに送る。
【0062】
荷物重量演算部222は、荷物荷重取得部221から受け付けた各重量データを合計することで、荷物Lgの重量を取得する。すなわち、本実施形態における荷物重量演算部222は、フォーク132に設けられた四つの重量センサ15が取得した重量データに基づいて、荷物Lgの重量を取得する。荷物重量演算部222は、取得した荷物Lgの重量を示す信号を車両情報取得部23に送る。
【0063】
荷物重心位置検出部223は、フォーク132に載置された荷物Lgの重心位置CG1を検出する。
図3中に進行方向Dsにおける荷物Lgの重心位置CG1の一例を示す。荷物重心位置検出部223は、荷物荷重取得部221から受け付けた各重量データに基づいて荷物Lgの重心位置CG1を検出する。
【0064】
具体的には、荷物重心位置検出部223は、例えば、一対のフォーク132の荷重差に基づいて、車幅方向Dwにおける荷物Lgの重心位置CG1を検出する。また、荷物重心位置検出部223は、例えば、荷役装置駆動部21におけるチルトアップ指示部213aからチルトアップが完了した旨を示す信号を受け付けた際、各フォーク132に設けられた二つの重量センサ15にかかるチルトアップ前後の荷重の変化量に基づいて、進行方向Dsにおける荷物Lgの重心位置CG1を検出する。荷物重心位置検出部223は、検出した重心位置CG1を示す信号を車両情報取得部23に送る。
【0065】
(車両情報取得部)
車両情報取得部23は、荷役装置駆動部21が駆動されてフォーク132に荷物Lgが載置された際に車両情報を取得する。本実施形態における車両情報は、荷物Lgを含めたフォークリフト10の重量と、荷物Lgを含めたフォークリフト10の重心位置CGとを含む。車両情報取得部23は、重量演算部231と、重心位置検出部232とを有している。
【0066】
重量演算部231は、荷物情報取得部22の荷物重量演算部222から受け付けた荷物Lgの重量と、記憶部33によって予め記憶されているフォークリフト10の重量とを合計することで、荷物Lgを含めたフォークリフト10の全体の重量を取得する。
【0067】
重心位置検出部232は、荷物Lgを含めたフォークリフト10の全体の重心位置CGを検出する。重心位置検出部232は、荷物情報取得部22の荷物重心位置検出部223から受け付けた荷物Lgの重心位置CG1と、記憶部33によって予め記憶されているフォークリフト10の重心位置CG2とに基づいて、荷物Lgを含めたフォークリフト10の全体の重心位置CGを検出する。
【0068】
具体的には、重心位置検出部232は、重心位置CGを車幅方向Dw(X方向)、進行方向Ds(Y方向)、及び上下方向Dv(Z方向)で定義された三次元座標系の座標で取得する。なお、この三次元座標系における原点は、例えば、車両11中の所定位置に設定される。重心位置検出部232は、取得した重心位置CGを示す信号を対応関係情報取得部24に送る。
【0069】
(対応関係情報取得部)
対応関係情報取得部24は、車両情報取得部23の重心位置検出部232によって検出された重心位置CGに基づいて、対応関係情報を取得する。本実施形態における対応関係情報では、フォーク132の揚高と、フォーク132のリーチ長と、ゼロモーメントポイントZmpを安定領域R1内に位置させる加速度とが互いに関連付いている。
【0070】
ここで、フォークリフト10が走行中に加速した際、この加速する方向とは逆の方向にかかる慣性力の向きと大きさを示すベクトルFと、下方側Dvdにかかる重力の向きと大きさを示すベクトルGとの合力ベクトルF+Gを
図3中に概念的に示す。
【0071】
対応関係情報におけるゼロモーメントポイントZmp(Zero Moment Point)とは、この合力ベクトルF+Gの仮想的な延長線と、路面Rとの交点を意味している。
図3中では、フォークリフト10の進行方向Dsが通路延在方向D1に一致した場合、かつ、フォークリフト10が前方側Dsfに向かって加速しながら走行している場合を一例として示している。
【0072】
また、
図5に示すように、上記の安定領域R1とは、上方側Dvuから見た際に、第一仮想線V1、第二仮想線V2、及び第三仮想線V3によって形成される仮想的な三角形を路面Rに投影した場合に画定される三角形の領域を意味している。
【0073】
したがって、本実施形態における安定領域R1は、第一回動軸線O1と第二回動軸線O2と第三回動軸線O3とを路面R上で互いに直線(
図5中では二点鎖線で図示)でつなぐことで形成される領域である。つまり、本実施形態における安定領域R1は、長さが同一とされた二辺同士が交わる三角形の頂点が前方側Dsfを向くように配置されている。
【0074】
また、本実施形態では、安定領域R1中に、この安定領域R1と相似の関係にある三角形状(二等辺三角形)を成した許容領域R2が配置されている。許容領域R2の面積は、安定領域R1の面積よりも小さく、長さが同一とされた二辺同士が交わる三角形の頂点が前方側Dsfを向くように配置されている。
【0075】
以下、説明の便宜上、安定領域R1における長さが同一とされた二辺同士が交わる三角形の頂点を「A1」とし、許容領域R2における長さが同一とされた二辺同士が交わる三角形の頂点を「A2」とする。また、許容領域R2における頂点A2以外の三角形の頂点を「A3」とする。
【0076】
本実施形態における対応関係情報取得部24によって取得される対応関係情報は、例えば、下記式(i)及び(ii)によって表される。
α≧(L1-Yg-R・Kr)/(Zg+L・Kr) ・・・(i)
α≦(L2-Yg-R・Kr)/(Zg+L・Kr) ・・・(ii)
【0077】
ここで、式(i)及び(ii)のαは、ゼロモーメントポイントZmpを安定領域R1内に位置させる許容加速度であり、走行制御装置20の動作中で変数として扱われる。許容加速度αの単位は、Gであり、加速度を重力加速度で除した値である。
【0078】
式(i)のL1は、安定領域R1の頂点A1から許容領域R2の頂点A2までの進行方向Dsにおける距離であり、式(ii)のL2は、安定領域R1の頂点A1から許容領域R2の頂点A3までの進行方向Dsにおける距離である。
【0079】
なお、これらL1及びL2は、例えば、フォークリフト10が設計される段階で予め設定された定数である。これらL1及びL2は、例えば、記憶部33によって予め記憶されている。つまり、L1及びL2は、対応関係情報取得部24が記憶部33を参照することで、対応関係情報取得部24に取得される。
【0080】
また、式(i)及び(ii)のYgは、フォーク132が最も下方側Dvdかつ前方側Dsfに配置された時の荷物Lgを含めたフォークリフト10の重心位置CGの進行方向Ds(Y方向)における座標である。式(i)及び(ii)のZgは、フォーク132が最も下方側Dvdかつ前方側Dsfに配置された時の荷物Lgを含めたフォークリフト10の重心位置CGの上下方向Dv(Z方向)における座標である。すなわち、これらYg及びZgは、対応関係情報取得部24が車両情報取得部23の重心位置検出部232から受け付けた座標である。
【0081】
また、式(i)及び(ii)のRは、進行方向Dsにおけるフォーク132の突出量を示すリーチ長であり、Lは、上下方向Dvにおけるフォーク132の位置(高さ)を示す揚高である。これらR及びLは、走行制御装置20の動作中で変数として扱われる。
【0082】
また、式(i)及び(ii)のKrは、荷物Lgの重量によって決定される値(リーチ質量比)であり、例えば、以下の式によって表わされる。
Kr=Mr/M ・・・(iii)
【0083】
Mrは、荷物重量演算部222によって取得された荷物Lgの重量に、記憶部33によって予め記憶されている荷役装置13の重量を加えたものである。Mは、荷物重量演算部222によって取得された荷物Lgの重量に、記憶部33によって予め記憶されているフォークリフト10の重量を加えたものである。すなわち、Mは、荷物Lgを含めたフォークリフト10の全体の重量である。
【0084】
対応関係情報取得部24は、取得した上記対応関係情報を示す信号を許容加速度取得部26及び目標リーチ長取得部28に送る。
【0085】
(荷役装置情報取得部)
本実施形態における荷役装置情報取得部25は、フォークリフト10が走行している際、マスト131から送信されたフォーク132の揚高及びリーチ長を取得する。荷役装置情報取得部25は、取得したフォーク132の揚高及びリーチ長を示す信号を許容加速度取得部26に送る。また、荷役装置情報取得部25は、取得したフォーク132の揚高を示す信号を目標リーチ長取得部28に送る。
【0086】
(許容加速度取得部)
許容加速度取得部26は、荷役装置情報取得部25によって取得されたフォーク132の揚高及びリーチ長に基づいて、対応関係情報取得部24が取得した対応関係情報から許容加速度を取得する。
【0087】
具体的には、許容加速度取得部26は、対応関係情報取得部24から受け付けた上記式(i)及び(ii)で表される対応関係情報に、荷役装置情報取得部25から受け付けたフォーク132の揚高及びリーチ長を代入することで、加速度としての許容加速度を算出する。
【0088】
具体的には、許容加速度取得部26は、走行しているフォークリフト10の加速度が後方側Dsbにかかった際、上記式(i)が等式である場合を示した下記式(iv)によって許容加速度αを算出する。
α=(L1-Yg-R・Kr)/(Zg+L・Kr) ・・・(iv)
【0089】
また、許容加速度取得部26は、走行しているフォークリフト10の加速度が前方側Dsfにかかった際、上記式(ii)が等式である場合を示した下記式(v)によって許容加速度αを算出する。
α=(L2-Yg-R・Kr)/(Zg+L・Kr) ・・・(v)
【0090】
許容加速度取得部26は、算出した許容加速度を示す信号を加速度判定部27、目標リーチ長取得部28、及び自己位置判定部31のそれぞれに送る。
【0091】
(加速度判定部)
加速度判定部27は、許容加速度取得部26から受け付けた許容加速度の大きさが、フォークリフト10の最大加速度の大きさよりも小さいか否かを判定する(比較する)。ここでいう「フォークリフト10の最大加速度の大きさ」とは、例えば、フォーク132に荷物Lgが載置されていない状態で、駆動輪141が発生させることができるトルクのうち最大のトルクで駆動モータ141bが回転した時のフォークリフト10にかかる加速度の大きさを意味している。最大加速度は、定数(単位はG)である。最大加速度は、例えば記憶部33によって予め記憶されている。つまり、最大加速度は、加速度判定部27が記憶部33を参照することで取得される。
【0092】
加速度判定部27は、許容加速度の大きさが最大加速度の大きさよりも小さい場合に、「許容加速度が最大加速度未満である」と判定する。一方、加速度判定部27は、許容加速度の大きさが最大加速度の大きさ以上である場合に、「許容加速度が最大加速度以上である」と判定する。加速度判定部27は、判定結果を示す信号を目標リーチ長取得部28及び駆動輪制御部32に送る。
【0093】
(目標リーチ長取得部)
目標リーチ長取得部28は、「許容加速度が最大加速度未満である」ことを加速度判定部27から受け付けた判定結果が示した場合、許容加速度取得部26から受け付けた許容加速度に応じたフォーク132のリーチ長を対応関係情報が取得した対応関係情報から取得する。
【0094】
具体的には、目標リーチ長取得部28は、対応関係情報取得部24から受け付けた上記式(i)及び(ii)で表される対応関係情報に、荷役装置情報取得部25から受け付けたフォーク132の揚高と、許容加速度取得部26から受け付けた加速度とを代入することで、リーチ長としての目標リーチ長を算出する。
【0095】
目標リーチ長取得部28は、走行しているフォークリフト10の加速度が後方側Dsbにかかった際、上記式(iv)を式変形することで得られる下記式(vi)によって目標リーチ長Rを算出する。
R=(L1-Yg-α・(Zg+L・Kr))/Kr ・・・(vi)
【0096】
また、目標リーチ長取得部28は、走行しているフォークリフト10の加速度が後方側Dsbにかかった際、上記式(v)を式変形することで得られる下記式(vii)によって目標リーチ長Rを算出する。
R=(L2-Yg-α・(Zg+L・Kr))/Kr ・・・(vii)
【0097】
目標リーチ長取得部28は、算出した目標リーチ長を示す信号を荷役装置駆動部21に送る。
【0098】
(リーチ長判定部)
リーチ長判定部29は、荷役装置情報取得部25から受け付けたフォーク132のリーチ長が、目標リーチ長取得部28から受け付けた目標リーチ長に到達したか否かを判定する。具体的には、リーチ長判定部29は、フォーク132のリーチ長が、目標リーチ長に所定の閾値を加減した値の範囲に含まれているか否かを判定する。この所定の閾値は、例えば記憶部33によって予め記憶されている。
【0099】
リーチ長判定部29は、リーチ長がこの範囲に含まれている場合に、「目標リーチ長に到達した」と判定する。一方、リーチ長判定部29は、リーチ長がこの範囲に含まれていない場合に、「目標リーチ長に到達していない」と判定する。リーチ量判定部は、判定結果を示す信号を荷物情報取得部22、及び荷役装置情報取得部25に送る。
【0100】
(自己位置取得部)
自己位置取得部30は、自己位置センサ16から受信したデータに基づいて、フォークリフト10の位置を取得する。具体的には、自己位置取得部30は、記憶部33によって予め記憶されている走行経路のデータを参照することで、自己位置センサ16から受信したデータが示すフォークリフト10の位置が、走行経路中のどの位置にあたるかを示したデータを取得する。このデータは、例えば、二次元平面座標系の座標で表される。自己位置取得部30は、取得したデータを示す信号を自己位置判定部31に送る。
【0101】
(自己位置判定部)
自己位置判定部31は、自己位置取得部30から受け付けたデータに基づいて、フォークリフト10が目標位置Pに到達したか否かを判定する。具体的には、自己位置判定部31は、自己位置取得部30から受け付けたデータが示すフォークリフト10の位置(座標)が、記憶部33によって予め記憶されている目標位置Pの座標に対して所定の閾値範囲内に位置しているか否かを判定する。閾値範囲は、例えば、中心を目標位置Pにするとともに、ミリメートルオーダー(mm)の距離を半径とした円などで表される。
【0102】
したがって、自己位置判定部31は、フォークリフト10の位置が目標位置Pに対して所定の閾値範囲内に位置している場合、「目標位置に到達した」と判定する。一方、自己位置判定部31は、フォークリフト10の位置が目標位置Pに対して所定の閾値範囲外に位置している場合、「目標位置に到達していない」と判定する。この閾値範囲は、例えば、記憶部33によって予め記憶されている。自己位置判定部31は、この判定結果を示す信号を荷役装置情報取得部25に送る。
【0103】
ここで、上述した荷役装置情報取得部25は、自己位置判定部31からこの判定結果を受け付けるとともに、「目標位置に到達した」ことを判定結果が示した場合、マスト131から送信されたフォーク132の揚高及びリーチ長を取得する。
【0104】
また、自己位置判定部31は、許容加速度取得部26から受け付けた許容加速度に基づいて、フォークリフト10の停止可能位置が目標位置Pよりも手前であるか否かを判定する。ここでいう「停止可能位置」とは、自己位置取得部30から取得したフォークリフト10の位置からフォークリフト10に許容加速度が後方側Dsbにかかりながら走行し続けた場合に、停止することができる位置を意味している。また、ここでいう「手前」とは、目標位置Pよりもフォークリフト10側を意味する。なお、自己位置判定部31は、例えば、自己位置取得部30から取得した自己位置の座標と、目標位置Pの座標とに基づいて、二次元平面座標系における幾何学的距離を算出する。
【0105】
したがって、自己位置判定部31は、停止可能位置が目標位置Pよりも手前に位置している場合、「停止可能位置が手前である」と判定する。一方、自己位置判定部31は、停止可能位置が目標位置Pよりも手前に位置していない場合、「停止可能位置が手前でない」と判定する。自己位置判定部31は、この判定結果を示す信号を駆動輪制御部32に送る。
【0106】
(駆動輪制御部)
駆動輪制御部32は、進退制御部212からリーチアウトが完了した旨を示す信号、又はリーチインが完了した旨を示す信号を受け付けた場合であって、かつ、自己位置判定部31から受け付けた判定結果が「停止可能位置が手前である」ことを示した場合、複数のトルクを取得するとともに、取得した複数のトルクのうち一のトルクを用いて駆動輪141を駆動させる。本実施形態における駆動輪制御部32は、トルク取得部321と、トルク決定部322と、駆動輪駆動部323とを有している。
【0107】
トルク取得部321は、自己位置判定部31から受け付けた判定結果が「停止可能位置が手前である」ことを示した場合、加速トルクを取得する。ここでいう「加速トルク」とは、例えば、フォークリフト10に前方側Dsfへ向かう許容加速度がかかるように駆動輪141を回転させるためのトルクを意味している。トルク取得部321は、取得した加速トルクを示す信号をトルク決定部322に送る。
【0108】
また、トルク取得部321は、自己位置判定部31から受け付けた判定結果が「停止可能位置が手前でない」ことを示した場合、減速トルクを取得する。ここでいう「減速トルク」とは、例えば、フォークリフト10に後方側Dsbへ許容加速度がかかるように駆動輪141を回転させるためのトルクを意味している。トルク取得部321は、取得した減速トルクを示す信号をトルク決定部322に送る。
【0109】
また、トルク取得部321は、加速トルク又は減速トルクを取得した場合、又は、「許容加速度が最大加速度以上である」ことを加速度判定部27の判定結果が示した場合、上限トルクを取得する。ここでいう「上限トルク」とは、駆動輪141が発生させることができるトルクのうち最大のトルクを意味している。トルク取得部321は、取得した上限トルクを示す信号をトルク決定部322に送る。
【0110】
また、トルク取得部321は、上限トルクを取得した場合、指示トルクを取得する。ここでいう「指示トルク」とは、フォークリフト10の位置と目標位置Pとの差分や、この差分の微分値等を取得可能な走行制御装置20のPID制御部(図示省略)によって決定されるトルクを意味している。したがって、トルク取得部321は、このPID制御部から指示トルクを取得する。トルク取得部321は、取得した指示トルクを示す信号をトルク決定部322に送る。
【0111】
トルク決定部322は、トルク取得部321が取得した各トルクから駆動輪141の駆動に用いるトルクを決定する。具体的には、トルク決定部322は、加速トルク又は減速トルクの大きさと、上限トルクの大きさと、指示トルクの大きさとのうち、最も小さいものを駆動輪141の駆動に用いるトルクとして決定する。トルク決定部322は、決定した駆動に用いるトルクを示す信号を駆動輪駆動部323に送る。
【0112】
駆動輪駆動部323は、トルク決定部322から受け付けたトルクで駆動輪141を回転させる。具体的には、駆動輪駆動部323は、トルク決定部322から受け付けたトルクを示す信号を駆動輪141の駆動モータ141bに送信することで、駆動輪141を駆動させる。
【0113】
(走行制御装置の動作)
続いて、本実施形態における走行制御装置20の動作の一例について
図6を参照して説明する。
【0114】
荷役作業を行うことができる目標位置Pでフォークリフト10が荷役作業を行う際、荷役装置駆動部21は、荷役装置13を駆動する(ステップS1)。荷役装置駆動部21は、例えば、荷役装置13にリフト動作(リフトダウン又はリフトアップ)、リーチ動作のリーチアウト、リフト動作のリフトアップ、リーチ動作のリーチイン、リフト動作のリフトダウン、チルト動作のチルトアップ及びチルトダウンを順に実行させる。この際、リーチインでは、フォーク132が最も前方側Dsfに配置された状態となるようにマスト131が進行方向Dsに駆動される。また、リフトダウンでは、フォーク132が最も下方側Dvdに配置された状態となるようにマスト131が上下方向Dvに駆動される。
【0115】
荷役装置駆動部21が荷役装置13を駆動してフォーク132に荷物Lgが載置された際、荷物情報取得部22は、荷物情報を取得する(ステップS2)。具体的には、マスト131がチルトアップされる前に荷物情報取得部22の重心位置検出部232が車幅方向Dwにおける荷物Lgの重心位置CG1を検出し、マスト131がチルトアップされた際に重心位置検出部232が進行方向Dsにおける荷物Lgの重心位置CG1を検出する。
【0116】
次いで、車両情報取得部23は、車両情報としての荷物Lgを含めたフォークリフト10の重量及び重心位置CGを取得する(ステップS3)。次いで、対応関係情報取得部24は、対応関係情報を取得する(ステップS4)。
【0117】
以上説明したステップS1からステップS4の処理は、フォークリフト10の運転中(移動制御システム1の稼動中)に繰り返し実行される。
【0118】
続いて、対応関係情報が取得された後の走行制御装置20の動作の一例について
図7を参照して説明する。
【0119】
はじめに、駆動輪制御部32の駆動輪駆動部323は、駆動輪141を駆動することによってフォークリフト10を走行経路に沿って走行させる(ステップS10)。荷役装置情報取得部25は、フォークリフト10が走行している際、フォーク132の揚高及びリーチ長を取得する(ステップS11)。
【0120】
次いで、許容加速度取得部26は、荷役装置情報取得部25によって取得されたフォーク132の揚高及びリーチ長に基づいて、対応関係情報取得部24によって取得された対応関係情報から許容加速度を取得する(ステップS12)。
【0121】
次いで、加速度判定部27は、許容加速度取得部26によって取得された許容加速度の大きさが、フォークリフト10の最大加速度の大きさよりも小さいか否かを判定する(ステップS13)。加速度判定部27が「許容加速度が最大加速度以上である」と判定した場合(ステップS13:NO)、駆動輪制御部32のトルク取得部321は、上限トルクを取得する(ステップS14)。一方、加速度判定部27が「許容加速度が最大加速度未満である」と判定した場合(ステップS13:YES)、目標リーチ長取得部28は、取得された許容加速度に応じたフォーク132の目標リーチ長を対応関係情報から取得する(ステップS18)。
【0122】
ステップS18の処理に次いで、荷役制御ステップS20が実行される。
図8に示すように、荷役制御ステップS20では、はじめに、荷役装置駆動部21が目標リーチ長取得部28から目標リーチ長を受信する(ステップS21)。次いで、荷役装置駆動部21の進退制御部212は、目標リーチ長に基づいたリーチ動作の指示を示す信号を荷役装置13のマスト131に送信することで、マスト131を駆動する(ステップS22)。
【0123】
次いで、リーチ長判定部29は、フォーク132のリーチ長が目標リーチ長に到達したか否かを判定する(ステップS23)。リーチ長判定部29が「目標リーチ長に到達した」と判定した場合(ステップS23:YES)、荷役制御ステップS20を終了する。荷役制御ステップS20が終了した後、上述したステップS14が実行される。一方、リーチ長判定部29が「目標リーチ長に到達していない」と判定した場合(ステップS23:NO)、ステップS22の処理に戻る。
【0124】
図7に戻り、ステップS14の処理に次いで、トルク取得部321は、指示トルクを取得する(ステップS15)。次いで、駆動輪制御部32のトルク決定部322は、駆動トルクを決定する(ステップS16)。次いで、駆動輪制御部32の駆動輪駆動部323は、トルク決定部322によって決定された駆動トルクで駆動輪141を駆動する(ステップS17)。
【0125】
以上説明したステップS10からステップS18、及びステップS20の処理は、フォークリフト10の運転中(移動制御システム1の稼動中)に繰り返し実行される。
【0126】
(作用効果)
上記によれば、走行中のフォークリフト10の荷役装置13の揚高及びリーチ長に基づいて対応関係情報から許容加速度が取得される。さらに、取得された許容加速度の大きさが、最大加速度の大きさよりも小さい場合、リーチ長がこの許容加速度に応じた目標リーチ長に設定されるとともに、リーチ長を変化させる前である当初の許容加速度よりも大きい加速度でフォークリフト10が加速される。このため、フォーク132が突出していない場合と比較して、ゼロモーメントポイントZmpを進行方向Dsに移動させることでき、その結果、フォークリフト10をより大きい加速度で移動させることができる。したがって、フォークリフト10が転倒することを抑制しつつ、スループットを向上させることができる。
【0127】
<第二実施形態>
次に、本開示に係る走行制御装置20の動作の第二実施形態について
図8を参照して説明する。
【0128】
(走行制御装置の動作)
荷役作業を行うことができる目標位置Pでフォークリフト10が荷役作業を行う際、荷役装置駆動部21は、荷役装置13を駆動する(ステップS101)。具体的には、荷役装置駆動部21は、荷役装置13にリフト動作(リフトダウン又はリフトアップ)、リーチ動作のリーチアウト、リフト動作のリフトアップ、チルト動作のチルトアップ及びチルトダウンを順に実行させる。したがって、本実施形態におけるステップS101の処理では、荷役装置駆動部21によってリーチイン及びリフトダウンを実行されない。
【0129】
荷役装置駆動部21が荷役装置13を駆動してフォーク132に荷物Lgが載置された際、荷物情報取得部22は、荷物情報を取得する(ステップS102)。具体的には、マスト131がチルトアップされる前に荷物情報取得部22の重心位置検出部232が車幅方向Dwにおける荷物Lgの重心位置CG1を検出し、マスト131がチルトアップされた際に重心位置検出部232が進行方向Dsにおける荷物Lgの重心位置CG1を検出する。
【0130】
次いで、車両情報取得部23は、車両情報としての荷物Lgを含めたフォークリフト10の重量及び重心位置CGを取得する(ステップS103)。次いで、対応関係情報取得部24は、対応関係情報を取得する(ステップS104)。
【0131】
次いで、荷役装置情報取得部25は、フォーク132の揚高を取得する(ステップS105)。次いで、目標リーチ長取得部28は、荷役装置情報取得部25によって取得されたフォーク132の揚高、及び記憶部33によって予め記憶されているフォークリフト10の最大加速度に基づいて、対応関係情報取得部24が取得した対応関係情報から目標リーチ長を取得する(ステップS106)。
【0132】
次いで、荷役装置駆動部21は、荷役装置13を駆動する(ステップS107)。具体的には、荷役装置駆動部21の進退制御部212が荷役装置13にリーチインを実行させるとともに、荷役装置駆動部21の昇降制御部211が荷役装置13にリフトダウンを実行させる。この際、リーチインでは、フォーク132の位置が目標リーチ長となるようにマスト131が駆動される。
【0133】
次いで、リーチ長判定部29は、フォーク132のリーチ長が目標リーチ長に到達したか否かを判定する(ステップS108)。リーチ長判定部29が「目標リーチ長に到達した」と判定した場合(ステップS108:YES)、荷役装置情報取得部25は、フォーク132の揚高及びリーチ長を取得する(ステップS109)。この際、荷役装置情報取得部25によって取得されるフォーク132のリーチ長は、ステップS106で目標リーチ長取得部28によって取得された目標リーチ長である。一方、リーチ長判定部29が「目標リーチ長に到達していない」と判定した場合(ステップS108:NO)、ステップS107の処理に戻る。
【0134】
次いで、許容加速度取得部26は、荷役装置情報取得部25によって取得されたフォーク132の揚高及びリーチ長に基づいて、対応関係情報取得部24が取得した対応関係情報から許容加速度を取得する(ステップS110)。
【0135】
次いで、自己位置判定部31は、フォークリフト10の停止可能位置が次の目標位置Pよりも手前であるか否かを判定する(ステップS111)。自己位置判定部31が「停止可能位置が手前である」と判定した場合(ステップS111:YES)、トルク取得部321は、加速トルクを取得する(ステップS112)。一方、自己位置判定部31が「停止可能位置が手前でない」と判定した場合(ステップS111:NO)、トルク取得部321は、減速トルクを取得する(ステップS113)。ステップS27及びステップS28の処理を終えた場合、駆動輪制御部32のトルク取得部321は、上限トルクを取得する(ステップS114)。
【0136】
次いで、トルク取得部321は、指示トルクを取得する(ステップS115)。次いで、駆動輪制御部32のトルク決定部322は、駆動トルクを決定する(ステップS116)。次いで、駆動輪制御部32の駆動輪駆動部323は、トルク決定部322によって決定された駆動トルクで駆動輪141を駆動する(ステップS117)。
【0137】
以上説明したステップS101からステップS117の処理は、フォークリフト10の運転中(移動制御システム1の稼動中)に繰り返し実行される。
【0138】
(作用効果)
上記によれば、目標位置Pでフォークリフト10が荷役作業を行った際、フォーク132の揚高、及びフォークリフト10の最大加速度に基づいて、対応関係情報から目標リーチ長が取得される。さらに、フォーク132の突出量が目標リーチ長にされるとともに、フォーク132の揚高、及びこの目標リーチ長に基づいて、対応関係情報から許容加速度が取得され、この許容加速度でフォークリフト10が移動される。これにより、例えば、フォーク132を突出していない状態でフォークリフト10が走行する場合と比較して、より大きい加速度でフォークリフト10を次の目標位置Pに向かって移動させることができる。したがって、フォークリフト10が転倒することを抑制しつつ、スループットを向上させることができる。
【0139】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0140】
なお、
図10は、本実施形態に係るコンピュータ1100の構成を示すハードウェア構成図である。
コンピュータ1100は、プロセッサ1110、メインメモリ1120、ストレージ1130、インタフェース1140を備える。
【0141】
上述の走行制御装置20は、コンピュータ1100に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ1130に記憶されている。プロセッサ1110は、プログラムをストレージ1130から読み出してメインメモリ1120に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ1110は、プログラムに従って、上述した記憶部33に対応する記憶領域をメインメモリ1120に確保する。
【0142】
プログラムは、コンピュータ1100に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、又は他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。
【0143】
また、コンピュータ1100は、上記構成に加えて、又は上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ1110によって実現される機能の一部又は全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0144】
ストレージ1130の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ1130は、コンピュータ1100のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース1140又は通信回線を介してコンピュータ1100に接続される外部メディアであってもよい。
【0145】
また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ1100に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1100が当該プログラムをメインメモリ1120に展開し、上記処理を実行してもよい。上記実施形態では、ストレージ1130は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0146】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。更に、当該プログラムは、前述した機能をストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0147】
また、対応関係情報取得部24が取得する対応関係情報では、フォーク132の揚高と、フォーク132のリーチ長と、ゼロモーメントポイントZmpを安定領域R1内に位置させる旋回速度とが互いに関連付いてもよい。この場合、許容加速度取得部26は、荷役装置情報取得部25によって取得されたフォーク132の揚高及びリーチ長に基づいて、対応関係情報取得部24が取得した対応関係情報から許容旋回速度を取得する。
以下、
図11を参照して対応関係情報が取得された後の走行制御装置20の動作の一例について説明する。
【0148】
はじめに、駆動輪制御部32の駆動輪駆動部323は、駆動輪141を駆動することによってフォークリフト10を走行経路に沿って走行させる(ステップS10)。荷役装置情報取得部25は、フォークリフト10が走行している際、フォーク132の揚高及びリーチ長を取得する(ステップS11)。
【0149】
次いで、許容加速度取得部26は、荷役装置情報取得部25によって取得されたフォーク132の揚高及びリーチ長に基づいて、対応関係情報取得部24によって取得された対応関係情報から許容旋回速度を取得する(ステップS12´)。
【0150】
次いで、加速度判定部27は、許容加速度取得部26によって取得された許容旋回速度の大きさが、フォークリフト10の目標速度の大きさよりも小さいか否かを判定する(ステップS13´)。ここでいう「フォークリフト10の目標速度の大きさ」とは、例えば、フォーク132に荷物Lgが載置されていない状態で、駆動輪141が発生させることができるトルクのうち最大のトルクで駆動モータ141bが回転した時のフォークリフト10にかかる旋回速度の大きさを意味している。目標速度は、フォークリフト10の最大加速度の一例であり、例えば記憶部33によって予め記憶されている。
【0151】
加速度判定部27が「許容旋回速度が目標速度以上である」と判定した場合(ステップS13´:NO)、駆動輪制御部32のトルク取得部321は、指示速度を取得する(ステップS14´)。トルク取得部321は、許容旋回速度の大きさと、目標速度の大きさとのうち小さい方の速度を指示速度として取得する。
【0152】
一方、加速度判定部27が「許容旋回速度が目標速度未満である」と判定した場合(ステップS13´:YES)、目標リーチ長取得部28は、取得された許容旋回速度に応じたフォーク132の目標リーチ長を対応関係情報から取得する(ステップS18´)。ステップS18´の処理に次いで、上述した荷役制御ステップS20が実行される。
【0153】
ステップS14´の処理に次いで、駆動輪制御部32のトルク決定部322は、駆動トルクを決定する(ステップS15´)。トルク決定部322は、トルク取得部321によって取得された指示速度の標準偏差から駆動トルクを決定する。次いで、駆動輪制御部32の駆動輪駆動部323は、トルク決定部322によって決定された駆動トルクで駆動輪141を駆動する(ステップS16´)。
【0154】
以上説明した一連の処理は、フォークリフト10の運転中(移動制御システム1の稼動中)に繰り返し実行される。
【0155】
また、上記第一実施形態で説明した目標位置Pが、フォークリフト10が荷物Lgの積み込みを行うことができる位置である場合、荷物Lgが載置されていない状態で走行するフォークリフト10におけるフォーク132の揚高及びリーチ長は、荷物Lgを積み込み可能な高さ及び突出量であってもよい。これにより、例えば、目標位置Pで荷役装置13の駆動にかかる時間を短縮することができる。したがって、荷役作業にかかる時間を短縮させることができ、スループットをより向上させることができる。
【0156】
また、上記の各実施形態で説明される走行制御装置20の動作は、それぞれ独立した構成に留まることはなく、各実施形態に記載の動作を適宜組み合わせて走行制御装置20の動作を構成してもよい。
【0157】
<付記>
実施形態に記載の走行制御装置は、例えば以下のように把握される。
【0158】
(1)第1の態様に係る走行制御装置20は、車両11と、前記車両11に設けられ、駆動されることで前記車両11を走行させる駆動輪141と、前記車両11に設けられ、前記車両11と共に走行可能なストラドルレッグ12と、前記ストラドルレッグ12に設けられ、駆動されることで、フォーク132が上下方向Dvに昇降可能、かつ前記車両11の進行方向Dsに進退可能な荷役装置13と、を備えるフォークリフト10の走行制御装置20であって、前記フォーク132に荷物Lgが載置された際、前記荷物Lgを含めた前記フォークリフト10の重心位置CGを検出する重心位置検出部232と、前記重心位置CGに基づいて、前記上下方向Dvにおける前記フォーク132の位置を示す揚高と、前記進行方向Dsにおける前記フォーク132の突出量を示すリーチ長と、ゼロモーメントポイントZmpを安定領域R1内に位置させる加速度とが互いに関連付いた対応関係情報を取得する対応関係情報取得部24と、前記フォーク132の前記揚高及び前記リーチ長を取得する荷役装置情報取得部25と、前記荷役装置情報取得部25によって取得された前記揚高及び前記リーチ長に基づいて、前記対応関係情報から許容加速度を取得する許容加速度取得部26と、前記許容加速度が前記フォークリフト10の最大加速度よりも小さい場合に、前記揚高及び前記最大加速度に基づいて、前記対応関係情報から目標リーチ長を取得する目標リーチ長取得部28と、前記フォーク132の前記リーチ長が前記目標リーチ長となるように前記荷役装置13を駆動する荷役装置駆動部21と、前記フォーク132の前記リーチ長が前記目標リーチ長とされた際、前記許容加速度よりも大きい加速度で前記フォークリフト10が加速するように前記駆動輪141を駆動させる駆動輪制御部32と、を備える。
【0159】
これにより、走行中のフォークリフト10の荷役装置13の揚高及びリーチ長に基づいて許容加速度が取得され、許容加速度の大きさが最大加速度の大きさよりも小さい場合、この最大加速度に応じた揚高及びリーチ長に設定されることで、リーチ長を変化させる前である当初の許容加速度よりも大きい加速度でフォークリフト10が加速される。したがって、フォークリフト10をより大きい加速度で移動させることができる。
【0160】
(2)第2の態様に係る走行制御装置20は、(1)の走行制御装置20であって、前記フォークリフト10は、前記フォーク132に前記荷物Lgが載置されていない状態で荷役位置である目標位置Pに向かって走行し、前記荷役装置情報取得部25が取得する前記フォーク132の前記揚高及び前記リーチ長は、前記目標位置Pで前記フォーク132に前記荷物Lgを積み込み可能な高さ及び突出量である。
【0161】
これにより、目標位置Pで荷役装置13の駆動にかかる時間を短縮することができる。したがって、荷役作業にかかる時間を短縮させることができ、スループットをより向上させることができる。
【0162】
(3)第3の態様に係る走行制御装置20は、車両11と、前記車両11に設けられ、駆動されることで前記車両11を走行させる駆動輪141と、前記車両11に設けられ、前記車両11と共に走行可能なストラドルレッグ12と、前記ストラドルレッグ12に設けられ、駆動されることで、フォーク132が上下方向Dvに昇降可能、かつ前記車両11の進行方向Dsに進退可能な荷役装置13と、を備えるフォークリフト10の走行制御装置20であって、前記フォーク132に荷物Lgが載置された際、前記荷物Lgを含めた前記フォークリフト10の重心位置CGを検出する重心位置検出部232と、前記重心位置CGに基づいて、前記上下方向Dvにおける前記フォーク132の位置を示す揚高と、前記進行方向Dsにおける前記フォーク132の突出量を示すリーチ長と、ゼロモーメントポイントZmpを安定領域R1内に位置させる加速度とが互いに関連付いた対応関係情報を取得する対応関係情報取得部24と、前記フォークリフト10の前記重心位置CGが検出された際の前記フォーク132の前記揚高を取得する荷役装置情報取得部25と、前記荷役装置情報取得部25によって取得された前記フォーク132の前記揚高、及び前記フォークリフト10の最大加速度に基づいて、前記対応関係情報から目標リーチ長を取得する目標リーチ長取得部28と、前記フォーク132の前記リーチ長が前記目標リーチ長となるように前記荷役装置13を駆動する荷役装置駆動部21と、前記フォーク132の前記揚高、及び前記目標リーチ長に基づいて、前記対応関係情報から許容加速度を取得する許容加速度取得部26と、前記フォーク132の前記リーチ長が前記目標リーチ長とされた際、前記フォークリフト10が前記許容加速度で加速するように前記駆動輪141を駆動させる駆動輪制御部32と、を備える。
【0163】
これにより、例えば、フォークリフト10が荷役作業を行った際、フォーク132の揚高、及びフォークリフト10の最大加速度に基づいて、目標リーチ長が取得される。さらに、フォーク132の突出量が目標リーチ長にされるとともに、フォーク132の揚高及びこの目標リーチ長に基づいて、許容加速度が取得され、この許容加速度でフォークリフト10が移動される。したがって、例えば、フォーク132を突出させない状態でフォークリフト10が走行する場合と比較して、より大きい加速度でフォークリフト10を移動させることができる。
【符号の説明】
【0164】
1…移動制御システム 10…フォークリフト 11…車両 12…ストラドルレッグ 13…荷役装置 14…走行機構 15…重量センサ 16…自己位置センサ 20…走行制御装置 21…荷役装置駆動部 22…荷物情報取得部 23…車両情報取得部 24…対応関係情報取得部 25…荷役装置情報取得部 26…許容加速度取得部 27…加速度判定部 28…目標リーチ長取得部 29…リーチ長判定部 30…自己位置取得部 31…自己位置判定部 32…駆動輪制御部 321…トルク取得部 322…トルク決定部 323…駆動輪駆動部 33…記憶部 40…上位装置 121…右ストラドルレッグ 122…左ストラドルレッグ 131…マスト 132…フォーク 141…駆動輪 141a…駆動輪本体 141b…駆動モータ 141c,142b,143b…操舵モータ 142…第一従動輪 142a…第一従動輪本体 143…第二従動輪 143a…第二従動輪本体 211…昇降制御部 211a…リフトダウン指示部 211b…リフトアップ指示部 212…進退制御部 212a…リーチアウト指示部 212b…リーチイン指示部 213…傾動制御部 213a…チルトアップ指示部 213b…チルトダウン指示部 221…荷物荷重取得部 222…荷物重量演算部 223…荷物重心位置検出部 231…重量演算部 232…重心位置検出部 1100…コンピュータ 1110…プロセッサ 1120…メインメモリ 1130…ストレージ 1140…インタフェース D1…通路延在方向 D2…通路幅方向 Ds…進行方向 Dsb…後方側 Dsf…前方側 Dv…上下方向 Dvd…下方側 Dvu…上方側 Dw…車幅方向 Dwl…他方側 Dwr…一方側 Lg…荷物 O1…第一回動軸線 O2…第二回動軸線 O3…第三回動軸線 P…目標位置 R…路面 R1…安定領域 R2…許容領域 V1…第一仮想線 V2…第二仮想線 V3…第三仮想線 W…壁体 Zmp…ゼロモーメントポイント