(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073045
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】低温エナメル
(51)【国際特許分類】
C03B 19/00 20060101AFI20240522BHJP
G04B 19/06 20060101ALI20240522BHJP
C03C 8/10 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C03B19/00 Z
G04B19/06 Z
C03C8/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184033
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】722013748
【氏名又は名称】田中 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑輔
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA09
4G062BB01
4G062DA05
4G062DA06
4G062DB01
4G062DC01
4G062DD04
4G062DD05
4G062DD06
4G062DE01
4G062DF01
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4G062EA10
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4G062EB03
4G062EB04
4G062EC01
4G062EC02
4G062EC03
4G062EC04
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4G062EE01
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4G062EG01
4G062FA01
4G062FA10
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4G062FD01
4G062FE01
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
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4G062GE01
4G062HH01
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4G062HH07
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4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM12
4G062NN34
(57)【要約】
【課題】文字盤、針、ムーブントに低温による燃焼で薄く、パーツの反り、ひび割れが無く歩留まりの良いエナメル装飾を施された時計を提供する。
【解決手段】酸化鉛(PbO)、二酸化ケイ素、シリカ、無水ケイ酸(SiO
2)、酸化カリウム(K
2O)または四ホウ酸ナトリウム(Na
2B
4O
7)を主成分とした鉛ガラスを、固定した銅材や真鍮材などに置き、鉛ガラスを燃焼し、鉛ガラスが軟化しだしたら棒で延ばす。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕いた鉛ガラスを地金の上に載置し、前記鉛ガラスを500度以上800度以下に加熱して軟化させ、軟化させた前記鉛ガラスを棒で前記地金の上に伸ばすことを特徴とするエナメル装飾方法。
【請求項2】
前記鉛ガラスの組成は、二酸化ケイ素、シリカまたは無水ケイ酸が35wt%~65wt%であり、酸化カリウムまたは四ホウ酸ナトリウムが7wt%~20wt%であり、酸化鉛が10wt%~58wt%であることを特徴とする請求項1に記載のエナメル装飾方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の装飾としてのエナメル製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のエナメル技術としてエナメル文字盤がある。ガラス+粘土・長石を粉末にした物(釉薬)を電気炉、窯で800度~1200度の熱で焼成を繰り返し製造する物がある。(高温焼成エナメルやグラン・フー、七宝という呼び名が使われている。)特許文献1にそのような焼却炉の例を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の時計の装飾に使用するエナメル製造技術によれば、焼成をする前に釉薬を地金に塗り、800度~1200度で焼成を繰り返すとグラデーションの少ない他の色をはっきりと主張する綺麗な文字盤が出来る。しかし800度~1200度で焼成を繰り返す為、地金が反りやすくひび割れし易く歩留まりが悪い。時計の落下などでエナメル装飾にひび割れが生じた際の修理でも高温で焼成する為難しい。厚みを増やさなければいけない為、時計の厚みが増してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
砕いた鉛ガラスを地金の上に載置し、前記鉛ガラスを500度以上800度以下に加熱して軟化させ、軟化させた前記鉛ガラスを棒で前記地金の上に伸ばす
【発明の効果】
【0006】
本発明は500度~800度による一度の焼成で、手作業でガラス材を伸ばして製造することが可能な為、薄く、反りのない流動的な模様のあるエナメル装飾を施すことができ、その加工に要する手間とコストを削減できる。
【0007】
また、500度~800度による短時間の低温燃焼で薄く製造することが可能な為、今まで地金の反り、厚みにより出来なかった時計の針、機械(ムーブメント)に装飾することも可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】エナメル盤で用いる製造法を示す指図である。
【
図2】エナメル盤で用いる製造法を示す指図である。
【
図3】エナメル盤で用いる製造法を示す指図である。
【
図4】エナメル盤で用いる製造法を示す指図である。
【
図5】エナメル盤で用いる製造法を示す指図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るエナメル装飾方法の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1~6に本実施形態のエナメル製造方法の概略図及び写真を示す。
次のステップで行う。
1. 地金1をロウ付け台などの耐火素材2の上に治具3で固定する。
治具3は500度~800度の熱に耐えられる物質、構造であれば何でもよい。
図1参照
地金1としては、銅材や真鍮材が良いが、金、銀、ステンレスなどの500度~800度の熱に耐えられる物質であれば何でもよい。
2. 砕いたサイズ約0.5mm以上の鉛ガラス4を地金1に乗せる。
図2参照。
鉛ガラス4は、組成として、二酸化ケイ素、シリカまたは無水ケイ酸(SiO
2)と、酸化カリウム(K
2O)または四ホウ酸ナトリウム(Na
2B
4O
7)と、酸化鉛(PbO)と、を有している。その他の化合物を混ぜて着色してもよい。
二酸化ケイ素、シリカまたは無水ケイ酸の下限は35wt%が良く、47.5wt%が更に良く、60wt%が最も良い。二酸化ケイ素、シリカまたは無水ケイ酸の上限は65wt%が良く、62.5wt%が更に良く、60wt%が最も良い。尚、二酸化ケイ素、シリカ、無水ケイ酸はそれぞれのみが単独で入っていても良いし、混ざっていても良い。
酸化カリウムまたは四ホウ酸ナトリウム(Na
2B
4O
7)の下限は7wt%が良く、11.5wt%が更に良く、16wt%が最も良い。酸化カリウムまたは四ホウ酸ナトリウム(Na
2B
4O
7)の上限は20wt%が良く、18wt%が更に良く、16wt%が最も良い。尚酸化カリウム、四ホウ酸ナトリウムはそれぞれのみが単独で入っていても良いし、混ざっていても良い。
酸化鉛の下限は10wt%が良く、17wt%が更に良く、24wt%が最も良い。酸化鉛の上限は58wt%が良く、41wt%が更に良く、24wt%が最も良い。
3. 地金1に乗せた鉛ガラス4を加熱する。最低温度は500度が良いが、更には530度が良く、更には550度が良い。または、最高温度は800度が良いが、更
には750度が良く、更には700度が良い。
加熱はガスバーナーで行うが他の方法でも良い。
図3参照。
軟化点は約550度以上である。
4. 軟化した鉛ガラス4を棒5で伸ばす。
棒5は500度以上の温度に耐えられる物であれば何でも良い。
図4参照。
5.室温20度以上で触れる温度になるまで冷ます。
図5参照。
6.触れる温度になり、エナメルにひび割れ、反りが無ければ完成。
図6に完成したエナメル盤の写真を示す。
【0010】
本発明はガスバーナーによる500度~800度による一度の焼成で、手作業で鉛ガラスを棒で伸ばして製造することが可能な為、既存の腕時計に使用されている約厚さ1mmのエナメル文字盤に比べ、厚さ0.3mmで反りのない流動的な模様のあるエナメル装飾を施すことができる。よって時計のムーブメント、針にも装飾することが可能になった。
既存のエナメル製造での歩留まりは約20%だが本発明のエナメル製造技術では歩留まりが80%にまで向上する為、その加工に要する手間とコストを削減できる。
【符号の説明】
【0011】
1 地金
2 耐火素材
3 治具
4 鉛ガラス
5 棒