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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073048
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/58 20060101AFI20240522BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B65D75/58
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184038
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】松永 直也
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AB26
3E067AC01
3E067BA07A
3E067BB01A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067BC07A
3E067CA04
3E067CA07
3E067CA24
3E067EA06
3E067EA17
3E067EA33
3E067EA35
3E067EA37
3E067EA38
3E067EB11
3E067EB30
3E067EE02
3E067EE59
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA01
3E086AD06
3E086AD23
3E086AD24
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA26
3E086BB01
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086BB62
3E086BB71
3E086CA12
3E086CA13
(57)【要約】
【課題】本発明に係る包装容器によれば、ストローの突刺しを可能としつつ、環境負荷を低減した蓋材を用いて容易に製造できる包装容器を提供することができる。
【解決手段】本発明に係る包装容器は、開口部と、開口部の開口周縁から外側C2に広がるフランジ部とを有する容器本体と、蓋材2と、オーバーキャップと、を備え、蓋材2は、少なくとも紙層23と、紙層23よりも蓋材2の厚さ方向の裏面側に形成されフランジ部にシールされるシーラント層25と、を有する積層構造に形成され、開口部を閉塞する閉塞部26と、閉塞部26の外周縁から外側に突出するタブ部27と、タブ部27においてフランジ部の外縁に沿う線状に形成され、厚さ方向に向かって凹む折罫線部28と、を有し、オーバーキャップは、蓋材2を厚さ方向の表面側から覆い、フランジ部に係止する係止部を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と、前記開口部の開口周縁から外側に広がるフランジ部とを有する容器本体と、
蓋材と、
オーバーキャップと、を備え、
前記蓋材は、
少なくとも紙層と、前記紙層よりも前記蓋材の厚さ方向の裏面側に形成され前記フランジ部にシールされるシーラント層と、を有する積層構造に形成され、
前記開口部を閉塞する閉塞部と、
前記閉塞部の外周縁から外側に突出するタブ部と、
前記タブ部において前記フランジ部の外縁に対向して形成され、前記厚さ方向に向かって凹む折罫線部と、を有し、
前記オーバーキャップは、前記蓋材を前記厚さ方向の表面側から覆い、前記フランジ部に係止する係止部を備える
包装容器。
【請求項2】
前記折罫線部は、前記蓋材の表面から前記裏面側に凹んで形成される
請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記折罫線部の線幅は、1mm以上である
請求項1または請求項2に記載の包装容器。
【請求項4】
前記蓋材は、前記紙層よりも前記表面側に設けられた印刷層及びポリエチレンテレフタレート層と、前記紙層よりも前記裏面側に設けられたガスバリア層と、をさらに有する積層構造に形成される
請求項1または請求項2に記載の包装容器。
【請求項5】
前記折罫線部において最も凹んだ頂点部は、前記フランジ部の前記外周縁から1mm以上3mm以下の位置に配置される
請求項1または請求項2に記載の包装容器。
【請求項6】
前記蓋材の表面または裏面から前記折罫線部において最も凹んだ頂点部までの前記厚さ方向の高さは、前記蓋材の全体厚さに対して10~40パーセントの範囲に設定される
請求項1または請求項2に記載の包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料用密封容器において、例えばインスタントコーヒー、ジュース、日本酒、または乳飲料などを容器本体に充填し、容器本体のフランジ部にヒートシールでシールして密封する蓋材が知られている。この蓋材は、使用時にシール部から剥離して飲んだり分別廃棄することのできるように、ヒートシール性と易剥離性(イージーピール性)を必要とするとともに、上部からストローを突き刺して飲むことのできるストロー突刺し性を必要とする。
【0003】
このストロー突刺し性を有する蓋材として、例えば金属であるアルミニウム箔を含む金属層にシーラント層が積層された蓋材が知られている。しかし、金属層を含む蓋材は、使用後の焼却処理において、金属が焼却炉を傷めたり、焼却効率を低下させたりする問題があった。また、焼却後の焼却灰を埋立て処分する際に、雨水等との反応によって有害ガスが発生し、環境に悪影響を与える虞があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、上記の問題源である金属材料を含まない蓋材が記載されている。特許文献1には、金属材料の代替として紙を中間層とし、片面に、2軸延伸ポリプロピレンフィルムが接着され、もう一方の面に、ポリエチレンテレフタレートフィルムが接着されて基材層を形成し、基材層に、シーラント層が施されていることを特徴とする蓋材が記載されている。
【0005】
ところで、飲料用密封容器には、上述した蓋材に加えて、蓋材の保護や埃よけ等の衛生性の観点、ストローの刺しやすさの観点から、貫通孔を設けたオーバーキャップ(被せ蓋)が設けられたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-136918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように紙を中間層に用いた蓋材は、総厚が従来の金属を含む蓋材の総厚よりも厚くなる傾向がある。そのため、フランジ部にヒートシールで蓋材をシールされた容器本体に対して、充填機を用いてオーバーキャップの嵌合作業を行うと、蓋材の厚みが原因でうまく嵌合させることができなかった。
【0008】
また、蓋材に用いられる紙は、環境に配慮した製品の製造の観点や、薄い紙の製造にコストや時間がかかるといったことから、従来よりも薄くすることが難しかった。さらに、蓋材に用いられる紙には強度上薄さに限界があり、上述の問題を解決するのが難しかった。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、ストローの突刺しを可能としつつ、環境負荷を低減した蓋材を用いて容易に製造できる包装容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る包装容器は、開口部と、前記開口部の開口周縁から外側に広がるフランジ部とを有する容器本体と、蓋材と、オーバーキャップと、を備え前記蓋材は、少なくとも紙層と、前記紙層よりも前記蓋材の厚さ方向の裏面側に形成され前記フランジ部にシールされるシーラント層と、を有する積層構造に形成され、前記開口部を閉塞する閉塞部と、前記閉塞部の外周縁から外側に突出するタブ部と、前記タブ部において前記フランジ部の外縁に沿う線状に形成され、前記厚さ方向に向かって凹む折罫線部と、を有し、前記オーバーキャップは、前記蓋材を前記厚さ方向の表面側から覆い、前記フランジ部に係止する係止部を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る包装容器によれば、ストローの突刺しを可能としつつ、環境負荷を低減した蓋材を用いて容易に製造できる包装容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る蓋付きカップを示す斜視図である。
図2】同蓋付きカップの蓋材の構成を示す平面図である。
図3図2中に示された同蓋材のF-F線に沿う断面図である。
図4】同蓋材がシールされた容器本体にオーバーキャップが取り付けられる前の状態を示す図である。
図5】同蓋材がシールされた容器本体にオーバーキャップが取り付けられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
本発明の実施形態について、図1から図5を参照して説明する。また、以下で説明する実施形態や変形例において、相互に対応する構成については同一の符号を付し、重複部分については説明を省略する場合がある。さらに、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る蓋付きカップ10を示す斜視図である。
蓋付きカップ10は、本実施形態では、使用者が上部に設けられた蓋材2にストローを突き刺すことで、ストローを通して内部に充填された液体の内容物を吸引可能となるように構成されている。また、蓋付きカップ10は、使用後に使用者または清掃などの作業者によって蓋材2を容器本体1から剥離させて分別することができるように構成されている。
【0015】
[蓋付きカップ(包装容器)10]
蓋付きカップ(包装容器)10は、容器本体1と、蓋材2と、オーバーキャップ3と、を備えている。ここで、以下の蓋付きカップ10の説明において、蓋付きカップ10が地面に載置される側を下側A2、蓋材2が設けられる側を上側A1とする。下側A2と上側A1とを向く方向は、上下方向Aとする。蓋付きカップ10は、容器本体1と、蓋材2と、オーバーキャップ3とを上下方向Aに沿って下側A2から上側A1に向かってこの順に備えている。また、蓋付きカップ10は、上下方向Aに沿う中心軸Oを有する。
【0016】
[容器本体1]
容器本体1は、図1に示すように、例えばポリスチレン樹脂を射出成型してなるカップ状容器である。容器本体1は、カップ本体部11とフランジ部12とを備える。
【0017】
カップ本体部11は、中心軸Oを中心とした有底の略円筒形状である。カップ本体部11は、上側A1に開口部11aを有し、下側A2に底部11bを備える。底部11bは、中心軸Oに直交する円形の板状部材である。カップ本体部11の外形は、上側A1に向けて拡径している。容器本体1は、カップ本体部11の内部に液体の内容物を収容可能である。
【0018】
フランジ部12は、中心軸Oを中心として、中心軸Oに直交する面内に円環状に形成される。ここで、上下方向Aに直交するフランジ部12の径方向において、中心軸Oを向く側を内側C1とし、内側C1と反対側を外側C2とする。フランジ部12は、カップ本体部11の開口部11aの開口部周縁11cの全周に外側C2に広がって配設されている。フランジ部12の上側A1の表面12aは平坦に形成されている。
【0019】
フランジ部12の上側A1の表面12aは、後述の蓋材2とシールされる面である。表面12aは、カップ本体部11の底部11bと略平行な面である。また、容器本体1を紙製のカップとしてもよい。紙製のカップの場合、内表面をポリエチレンで構成し、蓋材のシーラント層の材質もポリエチレン系の樹脂を選択すればよい。表面12aの外周であるフランジ部12の外縁12c(図2参照)の直径L1の大きさは開口部周縁11cの直径よりも大きく、例えば約75mmに形成される。
【0020】
フランジ部12の径方向における幅は、フランジ部12の全周で略一致しており、蓋材2をシールするのに十分な幅である。カップ本体部11の底部11bからフランジ部12の表面12aまでの上下方向Aの高さは、フランジ部12の全周で略一致する。
【0021】
[蓋材2]
図2は、蓋材2の構成を示す平面図である。図3は、図2中に示された蓋材2のF-F線に沿う断面図である。ここで図3においては、説明の便宜上、蓋材2の構成を見やすくするため、各構造の寸法を変えて図示している。
【0022】
蓋材2は、図2及び図3に示すように、紙層23とシーラント層25とを有する積層構造に形成され、カップ本体部11の開口部11aとフランジ部12とを覆う形状を有する。蓋材2が容器本体1にシールされたとき、蓋材2の厚さ方向は、上下方向Aと一致する。また、厚さ方向の表面側及び裏面側は、それぞれ上下方向Aの上側A1及び下側A2と一致する。そのため、厚さ方向は上下方向Aともいい、表面側及び裏面側は、それぞれ上側A1及び下側A2ともいう。さらに、蓋材2が容器本体1にシールされたとき、蓋材2の面内方向はフランジ部12の表面12aと平行である。蓋材2の上下方向A(厚さ方向)の全体厚さH1は、本実施形態では、約160μmとなるように形成される。
【0023】
蓋材2は、表面保護層21と、印刷層22と、第一接着層20pと、紙層23と、第二接着層20qと、ガスバリア層24と、第三接着層20rと、シーラント層25と、を備える。蓋材2は、金属層を備えていない。
【0024】
表面保護層21は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いて形成される。表面保護層21の表面は、蓋材2の表面2aである。なお、表面保護層21は、PETフィルムに限定されず、耐熱性や耐水性を有し、種々の環境下や種々の輸送条件にも耐えることが可能な材料を用いるのが好ましい。
【0025】
印刷層22は、表面保護層21の下側A2に配置される。印刷層22は、例えば後述する紙層23の上側A1の表面に印刷可能な紙用の印刷インキを用いる。印刷層22は、印刷インキを用いて、公知のグラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法などで形成される。
【0026】
第一接着層20pは、脂肪族エステル系接着剤からなっており、塗布量は約15g/mである。なお、第一接着層20pは、接着剤の代わりに接着性樹脂を用いてもよい。
【0027】
紙層23は、第一接着層20pを介して印刷層22及び表面保護層21の下側A2に配置される。紙層23は、坪量が約81.4g/mの紙からなる。紙層23の紙の種類としては、耐水紙を好適に用いることができる。ただし、紙の種類は、特に限定されず、上質紙、中質紙、晒しクラフト紙などの薄葉紙、コート紙、ノーコート紙等を用いてもよい。
【0028】
第二接着層20qは、第一接着層20pと同様に、脂肪族エステル系接着剤からなっており、塗布量は約15g/mである。なお、第二接着層20qは、接着剤の代わりに接着性樹脂を用いてもよい。
【0029】
ガスバリア層24は、第二接着層20qを介して紙層23の下側A2に配置される。ガスバリア層24は、酸素透過度1~1000cm/m・24h・MPaの単層または積層のフィルムからなる。蓋付きカップ(包装容器)10には、内容物の品質劣化を防止するため、優れた酸素バリア性が求められる。そのため、開口部11aを密封する蓋材2に使用にする材料においても、優れた酸素バリア性が求められる。
【0030】
ガスバリア層24は、酸化珪素蒸着層を下側A2に有し、上下方向Aの厚み(高さ)が12μmの透明バリアフィルム(凸版印刷株式会社製、商品名:GL-RD)を好適に用いることができる。ただし、ガスバリア層24の材料はこれに限定されない。例えば、ガスバリア層24は、単層のフィルムとして、エチレン・ビニルアルコール共重合フィルム、ナイロンフィルム、PETフィルム、ポリアクリロニトリル(PAN)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリメチルペンテン-1(TPX)フィルムなどを用いることができる。また、ガスバリア層24は、積層のフィルムとして、酸化珪素蒸着フィルム、酸化アルミニウム蒸着フィルム、アルミニウム蒸着フィルムなどを用いることができる。
【0031】
第三接着層20rは、第一接着層20pと同様に、脂肪族エステル系接着剤からなっており、塗布量は約8.7g/mである。なお、第三接着層20rは、接着剤の代わりに接着性樹脂を用いてもよい。
【0032】
シーラント層25は、第三接着層20rを介して表面保護層21、印刷層22、紙層23及びガスバリア層24よりも上下方向Aの下側A2に配置される。シーラント層25の裏面は、蓋材2の裏面2bである。蓋材2は、シーラント層25が容器本体1のフランジ部12にシールされることによって容器本体1に取り付けられる。シーラント層25は、フランジ部12の表面12aの表層と同一の材料が用いられ、例えばポリスチレン樹脂からなっている。なお、シーラント層25の材料の種類は、フランジ部12の表面12aの表層と同一の材料であるのが好ましく、表面12aの表層の材料に応じて適宜選定される。
【0033】
また、蓋材2は、図2及び図3に示すように、閉塞部26と、タブ部27と、折罫線部28とを備える。
【0034】
閉塞部26は、カップ本体部11の開口部11aを閉塞する部分である。閉塞部26は、タブ部27との境界線Kを除き、中心軸Oを中心として略円形に形成されている。蓋材2は、閉塞部26の周縁部において容器本体1のフランジ部12とシールされている。
【0035】
タブ部27は、蓋付きカップ10において、蓋材2を剥離除去するために設けられる。タブ部27は、閉塞部26との境界線Kよりも外側C2に設けられ、容器本体1にシールされた外側C2に設けられている。タブ部27は、境界線Kから外側C2に突出する。タブ部27は、境界線Kから外側C2に突出するにつれて、徐々に幅が小さくなる略三角形状に形成されている。タブ部27において、最も外側C2に突出した先端は、タブ部27の頂点P1とする。
【0036】
ここで、閉塞部26と、タブ部27との境界線Kについて説明する。境界線Kは、図2に示すように、平面視において、中心軸Oとタブ部27の頂点P1とを結んだ点線Kaと、外縁12cと、が交わる交点P3を通る外縁12cがなす円の接線である。境界線Kは、閉塞部26の外周縁26cの一部である。
【0037】
境界線Kを除く閉塞部26の外周縁26cが形成する円の直径L2は、フランジ部12の表面12aの直径L1よりも若干大きく、例えば約76mmである。この構成により、閉塞部26は、フランジ部12の表面12aに対して、十分にシールすることができる。
【0038】
折罫線部28は、タブ部27に形成されている。折罫線部28は、例えば罫線刃を用いて形成される。タブ部27には、罫線刃を上側A1から入れることによって、蓋材2の表面2aから下側A2に凹む凹部28aと、凹部28aによって凹んだ分だけ裏面2bから下側A2に膨らんだ凸部28bとが形成される。この凹部28aと、凸部28bとによって折罫線部28が形成される。
【0039】
凹部28aにおいて蓋材2の表面2aから、表面2aから下側A2に最も凹んだ頂点P2までの上下方向Aの高さ(深さ)H2は、約40~45μmとなるように形成される。約40~45μmの高さH2は、全体厚さH1の約160μmに対して約25~30パーセントの範囲である。換言すると、折罫線部28の凹部28aの高さH2は、蓋材2の全体厚さH1に対して約25~30パーセントの範囲に設定される。ただし、本実施形態に限定されず、折罫線部28の凹部28aの高さH2は、蓋材2の全体厚さH1に対して10~40パーセントに設定されるのが好ましい。
【0040】
折罫線部28は、タブ部27においてフランジ部12の外縁12cに対向して形成されている。具体的には、折罫線部28は、フランジ部12の外縁12cに沿う境界線Kと略平行に形成され、外縁12cに対向する。折罫線部28は、本実施形態では、直線状に形成される。
【0041】
また、折罫線部28の凹部28aの頂点P2は、平面視して、フランジ部12の外縁12c(交点P3)から径方向の外側C2に1mmの位置に配置される。このとき、フランジ部12の外縁12c(交点P3)から凹部28aの頂点P2までを第一長さW1とする。また、凹部28aの頂点P2から、さらに外側C2に配置されたタブ部27の頂点P1までを第二長さW2とする。第一長さW1を1mmに設定した場合、第二長さW2は、12mmとなる。なお、第一長さW1は、1mm以上3mm以下に設定されるのが好ましい。第一長さW1を1mm以上3mm以下に設定した場合、第二長さW2は、10mm以上12mm以下となるように形成される。
【0042】
折罫線部28の線幅W3は、約1mmになるように形成される。折罫線部28の線幅W3は特に限定されないが、線幅W3は、1mm以上であるのが好ましい。
【0043】
[オーバーキャップ(被せ蓋)3]
オーバーキャップ(被せ蓋)3は、図1に示すように、容器本体1及び蓋材2よりも上側A1に設けられる。オーバーキャップ3は、容器本体1にシールされた蓋材2を上下方向Aの上側A1から覆う。オーバーキャップ3は、円板部30と係止部31とを備える。円板部30は、オーバーキャップ3を容器本体1にとりつけたとき、上下方向Aからみて蓋材2に重なり、蓋材2を覆う部分である。円板部30は、蓋材2を保護する。係止部31は、円板部30の外周縁の全周において下側A2に折り曲げられて形成される。オーバーキャップ(被せ蓋)3は、係止部31によってフランジ部12に係止され、容器本体1に嵌合される。なお、係止部31は、フランジ部12に蓋材2がシールされた状態で、フランジ部12に係合可能となるように寸法を調整されている。なお、係止部31の構成は上述に限定されず、容器本体1のフランジ部12に係止できればよく、従来公知の構成を用いることができる。
【0044】
また、オーバーキャップ3の円板部30には、ストローの刺しやすさの観点から、上下方向Aに貫通する貫通孔3hが形成されている。
【0045】
次に、蓋付きカップ(包装容器)10の作用について説明する。
図4は、蓋材2がシールされた容器本体1にオーバーキャップ3が取り付けられる前の状態を示す図である。図5は、蓋材2がシールされた容器本体1にオーバーキャップ3が取り付けられた状態を示す図である。
【0046】
図4に示すように、蓋付きカップ10の容器本体1に取り付けられた蓋材2の閉塞部26は、容器本体1の上側A1の開口部11aを覆う。そして、オーバーキャップ3は、図5に示すように、例えば充填機等を用いて、従来と同様に容器本体1に取り付けられた蓋材2の上側A1から取り付けられる。なお、オーバーキャップ3は、作業者の手によって手作業で取り付けられてもよい。
【0047】
すると、オーバーキャップ3の係止部31が、下側A2に移動されるとともに蓋材2のタブ部27が、係止部31によって下側A2に押される。タブ部27には、折罫線部28が設けられている。そのため、タブ部27は、容易に下側A2に折れ曲がり、オーバーキャップ3の係止部31が、容器本体1との間に蓋材2を挟んだ状態でフランジ部12に係止することができる。
【0048】
本実施形態では、蓋付きカップ10の蓋材2が、容器本体1のフランジ部12の外縁12cに対向して形成され、上下方向Aに向かって凹む折罫線部28を備えている。作業者は、充填機等を用いてオーバーキャップ3を容器本体1に嵌合させる際に、蓋材2のタブ部27が、折罫線部28によって容易に折り曲げられる。そのため、オーバーキャップ3が、容器本体1に対して、間に蓋材2を挟んだ状態で取り付けることができる。
【0049】
また、本実施形態では、折罫線部28は、直線状に形成される。そのため、作業者は、蓋材2に対して罫線刃を用いた折罫線部28の加工をしやすく、容易に蓋材2を製造することができる。
【0050】
また、本実施形態では、折罫線部28は、蓋材2の表面2aから下側A2に凹んで形成される。この構成により、折罫線部28は、表面2aに凹部28aを形成し、裏面2bに凸部28bを備える。そのため、オーバーキャップ3の係止部31は、凸部28bに当たることなく、好適に蓋材2のタブ部27を折り曲げることができる。
【0051】
また、本実施形態では、蓋材2は、金属層を備えず、表面保護層21と、印刷層22と、第一接着層20pと、紙層23と、第二接着層20qと、ガスバリア層24と、第三接着層20rと、シーラント層25と、を備える。この構成によれば、蓋材2は、金属層を備えずとも紙層23を備えるため、蓋材2自体の強度を保ちつつ、蓋材2にストロー突刺し性を与えることができる。また、この構成によれば、蓋材2は、下側A2にシーラント層25を備えるため、蓋材2にヒートシール性を与えることができる。
【0052】
また、蓋材2は、金属層を備えていない。そのため、作業者は、使用後の蓋付きカップ10について、容器本体1から蓋材2を剥離して分別作業を行う際に金属層の鋭利部分によって受傷するのを防止できる。
【0053】
また、本実施形態では、蓋材2の表面2aから折罫線部28において最も凹んだ頂点P2までの上下方向Aの高さH2は、蓋材2の全体厚さH1に対して10~40パーセントの範囲に設定される。例えば、高さH2が、蓋材2の全体厚さH1に対して10パーセント未満である場合、タブ部27の折り曲げが不十分でオーバーキャップ3が容器本体1にうまく取り付けられず製品不良が発生する虞がある。また、例えば、高さH2が、蓋材2の全体厚さH1に対して40パーセントより大きい場合、折罫線部28の強度が低下し、オーバーキャップ3が容器本体1に取付ける際にタブ部27が切り落とされてしまう虞がある。本実施形態では、高さH2を蓋材2の全体厚さH1に対して10~40パーセントの範囲に設定することで、上述したような虞を削減することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態及び以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0055】
(変形例)
例えば、上述した実施形態では、折罫線部28は、蓋材2の表面2aから下側A2に凹んで形成される。しかしながら、本発明に係る蓋材2の折罫線部28は、上述の構成に限定されない。例えば、折罫線部28は、蓋材2の裏面2bから上側A1に凹んで形成されてもよい。この場合は、折罫線部28は、裏面2bに凹部28aを形成し、表面2aに凸部28bを備える。この場合においても、オーバーキャップ3は、容器本体1に対して、間に蓋材2を挟んだ状態で取り付けることができる。
【0056】
また、例えば、上述した実施形態では、折罫線部28は、一続きに形成されているが、折罫線部28は、点線状に形成されていてもよい。また、折罫線部28は、直線状でなくてもよい。折罫線部28は、外縁12cに沿って曲線状に形成されていてもよい。
【0057】
さらに、折罫線部28の個数は特に限定されない。折罫線部28は、2本以上複数形成されていてもよい。
【0058】
(実験)
以下に、上述した蓋付きカップ10の蓋材2の実施例と比較例とを製作し、実験を行った。なお、本実験に用いる蓋付きカップ10の容器本体1及びオーバーキャップ3については、実施例及び比較例において変更されず、同様の構成である。
【0059】
蓋材2の実施例のサンプル及び比較例のサンプルについての条件について、表1に示す。
今回は、蓋材2として、実施例1~4のサンプルと、比較例1~4のサンプルとを用いて実験を行った。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例1~4のうち、実施例1~3は、蓋材2のタブ部27に形成した折罫線部28の配置位置が異なっている。実施例1では、第一長さW1が1mm(すなわち第二長さW2が12mm)になるように形成されている。実施例2では、第一長さW1が2mm(すなわち第二長さW2が11mm)になるように形成されている。実施例3のサンプルは、第一長さW1が3mm(すなわち第二長さW2が10mm)になるように形成されている。また、実施例4のサンプルでは、第一長さW1は実施例3と同様であるが、折罫線部28が蓋材2の裏面2bから上側A1に凹んで形成され、裏面2bに凹部28aを形成している。なお、実施例1~4において、線幅W3は、実施形態と同様に1mmになるように形成されている。
【0062】
上述の実施例に対して、まず比較例1のサンプルは、折罫線部28の線幅W3が異なっている。比較例1では、線幅W3は、実施例1~4よりも狭く、線幅W3が0.5mmになるように形成されている。また、比較例2では、実施例1~4に対して折罫線部28の配置位置がさらに外側C2に設けられており、第一長さW1が4mm(すなわち第二長さW2が9mm)になるように形成されている。また、比較例3は、比較例2と対称的に、実施例1~4に対して折罫線部28の配置位置がさらに内側C1に設けられており、第一長さW1が0mm(すなわち第二長さW2が13mm)になるように形成されている。比較例3では、折罫線部28は、フランジ部12の外縁12c(すなわち境界線K)に重なる位置に形成されている。さらに、比較例4のサンプルは、蓋材2に折罫線部28を備えていない従来公知の蓋材である。
【0063】
上述の実施例1から実施例4及び比較例1から比較例4の各蓋材のサンプルを用いて実験を行った。なお、実験は、1回目(n1)、及び2回目(n2)の2回実施した。実験結果については、表1に示している。今回は、それぞれ実施例及び比較例の蓋材2のサンプルを容器本体1のフランジ部12にシールして取り付けた状態で、オーバーキャップ3が容器本体1及び蓋材2の上側A1から取り付ける(係止部31がフランジ部12に係止する)ことができるかどうかの実験を行った。
【0064】
表中の実験結果について、◎は、オーバーキャップ3が容器本体1に問題なく取り付けられたことを示す。〇は、若干の違和感があるが、オーバーキャップ3が容器本体1に問題なく取り付けられたことを示す。△は、オーバーキャップ3が容器本体1に取り付けづらいがなんとか取り付けることができたことを示す。×は、オーバーキャップ3が容器本体1に取り付けできなかったことを示す。
【0065】
表1に示すように、実施例1から実施例3は、1回目も2回目も、◎であった。また、実施例4は、1回目も2回目も、〇であった。
【0066】
実施例に対して、比較例1は、1回目も2回目も、△であった。また、比較例2は、1回目は△であり、2回目は×であった。また、比較例3は、1回目は×であり、2回目は〇であった。また、比較例4は、1回目も2回目も、×であった。
【0067】
実施例1~3の結果に示すように、折罫線部28の第一長さW1が1~3mm(すなわち第二長さW2が10~12mm)のとき、オーバーキャップ3は問題なく容器本体1に取り付けられることが分かった。また、実施例4に示すように、例えば、折罫線部28の凹部28aを裏面2bに形成したとしても、若干の違和感があるが、オーバーキャップ3は問題なく容器本体1に取り付けられることが分かった。この結果から、実施例4のように、折罫線部28の凹部28aを裏面2bに形成しても問題なくオーバーキャップ3を容器本体1に取付可能である。しかし、折罫線部28は、凹部28aを表面2aに形成される方が、より好適にタブ部27を折り曲げやすくすることができると考察できる。
【0068】
また、比較例1の結果に示すように、折罫線部28の線幅W1が実施例の線幅W1の1mmよりも狭く、0.5mmである場合は、オーバーキャップ3が容器本体1に取り付けづらいことが分かった。そのため、折罫線部28の線幅W1は、1mmに形成されていることが好ましいと考察できる。
【0069】
また、比較例2の結果に示すように、折罫線部28の第一長さW1が実施例の第一長さW1~3mmよりも広く(長く)、4mmである場合は、実験結果は、1回目は△であり、2回目は×であった。また、比較例3の結果に示すように、折罫線部28の第一長さW1が実施例の第一長さW1~3mmよりも狭く(短く)、0mmである場合は、実験結果は、1回目は×であり、2回目は〇であった。以上から、折罫線部28の第一長さW1は、1~3mmに形成されていることが好ましく、1mmよりも短くしたり、3mmよりも長くしたりした場合は、蓋付きカップ10の製造不良を起こしてしまう虞があることが考えられる。
【0070】
また、比較例4の結果に示すように、蓋材2が折罫線部28を有さない場合は、オーバーキャップ3が容器本体1に取り付けられないことが分かった。この結果から、折罫線部28無しでは、蓋材2がオーバーキャップ3を容器本体1に取り付ける動作を妨げてしまうが、折罫線部28を設けることで、蓋材2のタブ部27を折り曲げやすくして、オーバーキャップ3を容器本体1に取り付けて、容易に蓋付きカップ10を製造することができると考察できる。
【0071】
いずれの上記形態においても、本発明に係る包装容器によれば、ストローの突刺しを可能としつつ、環境負荷を低減した蓋材を用いて容易に製造できる包装容器を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る包装容器によれば、ストローの突刺しを可能としつつ、環境負荷を低減した蓋材を用いて容易に製造できる包装容器を提供することができるので産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 蓋付きカップ(包装容器)
1 容器本体
11 カップ本体部
11a 開口部
12 フランジ部
12c 外縁
2 蓋材
21 表面保護層
22 印刷層
23 紙層
24 ガスバリア層
25 シーラント層
26 閉塞部
27 タブ部
28 折罫線部
28a 凹部
28b 凸部
3 オーバーキャップ
30 円板部
31 係止部
H1 全体厚さ
H2 高さ(深さ)
K 境界線
O 中心軸
W1 第一長さ
W2 第二長さ
W3 線幅
図1
図2
図3
図4
図5