(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073049
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】輸送装置及びがい管ユニットの輸送方法
(51)【国際特許分類】
H01B 17/26 20060101AFI20240522BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01B17/26 Z
H01F27/00 120
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184040
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 成将
(72)【発明者】
【氏名】今西 晋
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 一輝
【テーマコード(参考)】
5E059
5G331
【Fターム(参考)】
5E059KK01
5E059KK06
5E059KK08
5G331AA07
5G331AA08
5G331BB21
5G331BB24
5G331BB32
5G331CA02
5G331CA04
5G331CA05
5G331DA01
5G331FA10
(57)【要約】
【課題】がい管本体に絶縁性媒体を封入した状態でがい管ユニットを安全に輸送でき、施工現場での設置作業を容易化できる輸送装置及びがい管ユニットの輸送方法を提供する。
【解決手段】輸送装置は、がい管本体内に絶縁性媒体が封入されたがい管ユニットを輸送するための輸送装置であって、がい管ユニットを水平状態で固定可能な架台と、がい管本体に接続され、がい管本体との間で絶縁性媒体を流出入可能な液体タンクと、を備える。架台は、架台ベースと、がい管ユニットの先端部を固定する先端側固定部と、がい管ユニットの後端部を固定する後端側固定部と、を有する。液体タンクは、当該液体タンクの液体貯留空間の最下面の鉛直方向の高さが、固定するがい管ユニットの水平状態におけるがい管本体内の液体貯留空間の最上面の鉛直方向の高さよりも高くなるように、架台に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がい管本体内に絶縁性媒体が封入されたがい管ユニットを輸送するための輸送装置であって、
前記がい管ユニットを水平状態で固定可能な架台と、
前記がい管本体に接続され、前記がい管本体との間で前記絶縁性媒体を流出入可能な液体タンクと、を備え、
前記架台は、
架台ベースと、
前記架台ベースに対して垂直に取り付けられ、前記がい管ユニットの先端部を固定する先端側固定部と、
前記架台ベースに対して垂直に取り付けられ、前記がい管ユニットの後端部を固定する後端側固定部と、を有し、
前記液体タンクは、当該液体タンクの液体貯留空間の最下面の鉛直方向の高さが、固定する前記がい管ユニットの水平状態における前記がい管本体内の液体貯留空間の最上面の鉛直方向の高さよりも高くなるように、前記架台に配置されている、
輸送装置。
【請求項2】
前記後端側固定部は、
前記がい管本体の周面に取り付けられる後端部固定枠と、前記がい管ユニットの軸方向と直交する水平面内の回転軸の周りに、前記後端部固定枠を回転可能に支持する後端側支持体と、を有する、
請求項1に記載の輸送装置。
【請求項3】
前記架台ベースは、前記がい管本体から漏出した前記絶縁性媒体を貯留可能である、
請求項1に記載の輸送装置。
【請求項4】
前記がい管ユニットにおける前記先端部と前記後端部の間の中間部を支持する中間固定部を備え、
前記中間固定部は、
前記がい管本体の周面に取り付けられる中間部支持枠と、
前記中間部支持枠の高さを調整可能な高さ調整部と、を有する、
請求項1に記載の輸送装置。
【請求項5】
前記中間部支持枠は、前記がい管本体の周面形状に適合可能な形状を有する、
請求項4に記載の輸送装置。
【請求項6】
前記液体タンクは、ワンタッチカプラーを介して、前記がい管本体と接続される、
請求項1に記載の輸送装置。
【請求項7】
前記先端側固定部は、前記がい管ユニットの上部金具の周面に取り付けられる先端部固定枠を有し、
前記先端部固定枠は,前記上部金具の周面と多点接触する、
請求項1に記載の輸送装置。
【請求項8】
請求項1に記載の輸送装置の前記架台に前記がい管ユニットを固定する工程と、
前記がい管本体と前記液体タンクとを接続する工程と、
前記輸送装置に固定した状態で前記がい管ユニットを目的地まで輸送する工程と、を含む、
がい管ユニットの輸送方法。
【請求項9】
請求項2に記載の輸送装置の前記架台に前記がい管ユニットを垂直状態で固定する工程と、
前記回転軸を中心に前記がい管ユニットを回転させて水平状態に移行させる工程と、
前記がい管本体と前記液体タンクとを接続する工程と、
前記輸送装置に固定した状態で前記がい管ユニットを目的地まで輸送する工程と、を含む、
がい管ユニットの輸送方法。
【請求項10】
前記がい管本体内に前記絶縁性媒体が満充填された状態で輸送する、
請求項8又は9に記載のがい管ユニットの輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がい管ユニットを輸送するための輸送装置及びがい管ユニットの輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力ケーブルの終端に設けられるケーブル終端接続部として、がい管により気中絶縁を行う気中終端接続部が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1等に開示のプレハブ形の気中終端接続部では、一般に、がい管内に絶縁油(例えばシリコーンオイル)等の絶縁性媒体が封入される。
【0003】
大型の終端接続部は、垂直に立てて輸送することが難しいため、通常、横倒しにして水平状態で輸送される(例えば、特許文献2参照)。がい管内に絶縁性媒体が封入される終端接続部の場合、終端接続部を水平状態にして施工現場まで輸送した後、施工現場で絶縁性媒体の封入(以下、「油填」と称する)が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-261948号公報
【特許文献2】特開平10-275531号公報
【特許文献3】特許第5606252号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】昭和電線レビュー「66/77kVダイレクトモールド貫通ブッシングの開発・実用化」Vol.56、No.1(2006)15~19頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、施工現場での油填は時間がかかる上、がい管内への異物混入等のリスクを避けるためにクリーンルームを設営する必要があり、工期が長くなってしまう。また、絶縁性媒体が指定可燃物である場合、指定数量の関係で、ドラム缶の状態で絶縁性媒体を施工現場まで大量に輸送することも難しい。また、施工現場で油填作業を行うために、施工現場にギアポンプ等の機材が必要であった。
【0007】
一方、施工現場での設置作業を容易化するために、工場にて油填してから終端接続部を輸送することも考えられる。しかしながら、絶縁性媒体の熱膨張によるがい管の破損を防止するために、絶縁性媒体をがい管に満充填することはできない。そのため、輸送中に、がい管内で絶縁性媒体の液面振動が生じ、ハンマー作用によって安定性が低下する上、絶縁性媒体の漏出が生じる虞もある。
【0008】
本開示の目的は、がい管本体に絶縁性媒体を封入した状態でがい管ユニットを施工現場等の目的地まで安全に輸送でき、施工現場での設置作業を容易化できる輸送装置及びがい管ユニットの輸送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る輸送装置は、
がい管本体内に絶縁性媒体が封入されたがい管ユニットを輸送するための輸送装置であって、
前記がい管ユニットを水平状態で固定可能な架台と、
前記がい管本体に接続され、前記がい管本体との間で前記絶縁性媒体を流出入可能な液体タンクと、を備え、
前記架台は、
架台ベースと、
前記架台ベースに対して垂直に取り付けられ、前記がい管ユニットの先端部を固定する先端側固定部と、
前記架台ベースに対して垂直に取り付けられ、前記がい管ユニットの後端部を固定する後端側固定部と、を有し、
前記液体タンクは、当該液体タンクの液体貯留空間の最下面の鉛直方向の高さが、固定する前記がい管ユニットの水平状態における前記がい管本体内の液体貯留空間の最上面の鉛直方向の高さよりも高くなるように、前記架台に配置されている。
【0010】
本開示に係るがい管ユニットの輸送方法は、
上記の輸送装置の前記架台に前記がい管ユニットを固定する工程と、
前記がい管本体と前記液体タンクとを接続する工程と、
前記輸送装置に固定した状態で前記がい管ユニットを目的地まで輸送する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、がい管本体に絶縁性媒体を封入した状態でがい管ユニットを施工現場等の目的地まで安全に輸送でき、施工現場での設置作業を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、がい管ユニットの一例であるケーブル終端接続部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る輸送装置を示す側面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る輸送装置の架台を示す斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、輸送装置にケーブル終端接続部を固定する工程を示す図である。である。
【
図4B】
図4Bは、輸送装置にケーブル終端接続部を固定する工程を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、輸送装置にケーブル終端接続部を固定する工程を示す図である。
【
図4D】
図4Dは、輸送装置にケーブル終端接続部を固定する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、がい管ユニットの一例であるケーブル終端接続部500を示す断面図である。ケーブル終端接続部500は、ケーブル端末部(図示略)の終端に設けられるがい管ユニットであり、後述する輸送装置1によって施工現場等の目的地まで輸送される。
【0015】
図1に示すように、ケーブル終端接続部500は、がい管510、固定金具541、端末取付金具542、及び導体引出棒544等を備える。以下において、導体引出棒544が引き出される側を「先端側」、ケーブル端末部(図示略)が装着される側を「後端側」として説明する。
【0016】
がい管510は、外周面に笠部511aが形成されているがい管本体511と、がい管本体511の先端側を密閉する上部金具512と、絶縁ユニット520と、電界緩和部530と、絶縁性媒体543と、を有する。がい管本体511は、例えば、磁器がい管であってもよいし、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)からなる筒体の外側に、シリコーンゴム等の高分子絶縁材料からなるポリマー被覆体を一体的に形成したポリマーがい管(複合がい管とも呼ばれる)であってもよい。
【0017】
絶縁ユニット520は、軸方向に延在する内部導体521と、内部導体521の外周面に配置される絶縁筒522と、絶縁筒522の外周面に形成される遮へい部523と、を有し、終端接続部500の補強絶縁部として機能する。内部導体521及び絶縁筒522は、モールド成型により一体的に形成される。
【0018】
内部導体521は、例えば銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性材料で形成される。内部導体521の後端側の内周面は、絶縁筒522から露出しており、ケーブル導体(図示略)を電気的に接続するための導体挿入部521aが設けられている。内部導体521の先端側の端部は、絶縁筒522を貫通して、導体引出棒544に接続されている。
【0019】
絶縁筒522は、機械的強度の高い硬質プラスチック樹脂材料(例えば、エポキシ樹脂やFRP)で形成される。絶縁筒522の後端側には、ケーブル端末部(図示略)を受け入れるコーン状の端末挿入部522aが設けられている。端末挿入部522aは、内部導体521の導体挿入部521aに連通する。導体挿入部521a及び端末挿入部522aにより、ケーブル端末部が装着されるケーブル受容部524が形成される。
【0020】
遮へい部523は、例えば、絶縁筒522の外周面に、導電性塗料を塗布することにより形成される。遮へい部523を設けることにより、内部導体521と遮へい部523との間で電界が集中することなく、絶縁筒522の内部電界が均一化され、電気特性の安定化が図られる。
【0021】
電界緩和部530は、先端側の絶縁部531と、後端側の導電部532と、を有する円筒状の弾性体にて形成される。絶縁部531は、後端側が導電部532と同心状に連設され、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)等の絶縁性ゴム材料で円筒状に形成される。導電部532は、例えば、半導電性のEPゴム等の半導電性ゴム材料で円筒状に形成される。絶縁部531と導電部532は、モールド成型により一体的に形成される。なお、電界緩和部530は、絶縁ユニット520の先端側の小径部分の外周面に、導電部532の内周面と遮へい部523が導通するように重なり、かつ、遮へい部523の先端が導電部532の内周面からはみ出ないように配置される。
【0022】
固定金具541は、絶縁ユニット520を貫通させるための開口を有するフランジ状の部材である。固定金具541は、がい管本体511の後端側に配置され、例えば、ボルト止めにより、がい管本体511の後端部に一体的に設けられた下部金具513と締結される。また、固定金具541の後端側には、支持がいし545が配置され、例えば、ボルト止めにより締結される。
【0023】
端末取付金具542は、絶縁ユニット520の後端部の外周面に配置される有底円筒状の部材である。端末取付金具542の底部542aには、ケーブル端末部(図示略)を挿入するための開口542bが設けられている。端末取付金具542は、固定金具541の後端側に配置され、例えば、ボルト止めにより、固定金具541及び絶縁ユニット520と締結される。
【0024】
固定金具541及び端末取付金具542の内径は、絶縁ユニット520の後端部の外径と略同径である。固定金具541と絶縁ユニット520との間には、Oリング等のシール部材(図示略)が配置されている。固定金具541と絶縁ユニット520の間にシール部材を介在させることにより、がい管本体511の内部を気密または液密に保持して絶縁性媒体543が漏出するのを防止できるとともに、がい管本体511に発生する曲げ応力を緩和することができる。シール部材は、軸方向において所定間隔で複数設けられるのが好ましい。
【0025】
絶縁性媒体543は、がい管本体511と絶縁ユニット520との間の空間に封入され、ケーブル終端接続部500の主絶縁部として機能する。絶縁性媒体543は、例えば、シリコーンオイル等の絶縁油で形成される。
【0026】
絶縁性媒体543は、例えば、固定金具541に設けられた流路(図示略)を介して、がい管510の内部(がい管本体511の内部)に注入される。固定金具541に設けられた流路には、絶縁性媒体543の流出入を可能とする液体ホース547が接続される(
図2参照)。液体ホース547は、可とう性のあるフレキシブルホースなどの高圧ホースが好ましい。液体ホース547の一端には、ワンタッチカプラー546が設けられ、油填及び抜油用のホース(例えば、液体タンク20の液体ホース22)を容易に着脱できるようになっている。
【0027】
導体引出棒544の後端側の端部は、絶縁ユニット520の内部導体521に接続され、先端側の端部は、がい管510の上部金具512を貫通して外部に引き出されている。導体引出棒544は、例えば、適切な導体接続部材を介して、絶縁ユニット520の内部導体521と連結される。また、導体引出棒544のがい管本体511内に配置される部分は、ケーブルの様な可とう性を有した導体でもよい。
【0028】
図2は、実施の形態に係る輸送装置1を示す側面図である。
図3は、輸送装置1の架台10を示す斜視図である。
図2では、がい管ユニットの一例であるケーブル終端接続部500を輸送装置1に固定した状態を示している。輸送装置1に固定するに際し、ケーブル終端接続部500には、ケーブル端末部が接続されておらず、絶縁ユニット520の後端部には、内部に埃等が入らないように蓋が取り付けられている。
【0029】
輸送装置1には、がい管本体511内に絶縁性媒体543が封入されているケーブル終端接続部500(がい管ユニットの一例)を、横倒しにした水平状態で目的地(例えば施工現場)まで安全に輸送することができるように、いくつかの特徴的な構成が採用されている。
【0030】
図2に示すように、輸送装置1は、架台10、液体タンク20及び中間固定部30等を備える。
【0031】
架台10は、
図3に示すように、架台ベース11、先端側固定部12、後端側固定部13及びタンク保持部14等を有し、ケーブル終端接続部500を水平状態で固定可能となっている。
【0032】
架台ベース11は、鉛直方向から見て長方形状を有し、水平状態で設置され、先端側固定部12、後端側固定部13及びタンク保持部14を支持する。架台ベース11は、ケーブル終端接続部500のがい管本体511から漏出した絶縁性媒体543を貯留可能な凹部111を有し、いわゆるオイルパンとして機能する。
【0033】
架台ベース11は、一部材で構成されてもよいし、複数の部材で構成されてもよい。本実施の形態では、架台ベース11は、3つのベース部材11A~11Cを連結した連結体で構成されている。この場合、ケーブル終端接続部500の長さ(がい管510の長さ)に応じて架台ベース11の長さを容易に調整することができる。また、架台ベース11を分解することにより、架台10の保管スペースの小型化を図ることができる。なお、架台ベース11を構成するベース部材の数は、3つに限定されず、適宜変更可能である。
【0034】
架台ベース11を複数のベース部材からなる連結体で構成する場合、連結部分に形成される仕切壁112の高さは、長手方向に延びる架台ベース11の側壁113よりも低いことが好ましい。この場合、漏出した絶縁性媒体543が、まず漏出箇所に対応する部分のベース部材(11A~11Cのいずれか)の凹部111に貯留され、仕切壁112の高さ以上に貯留した場合でも、隣り合うベース部材の凹部111間を容易に移動でき、貯留可能な容量が増大する。また、仕切壁112は、架台ベース11の補強材として機能する。
【0035】
先端側固定部12は、架台ベース11に対して垂直に取り付けられ、ケーブル終端接続部500の先端部、具体的には、がい管510の上部金具512を固定する。先端側固定部12は、上部金具512を固定する先端部固定枠121、及び、架台ベース11に立設され先端部固定枠121を支持する先端側支持体122を有する。
【0036】
先端部固定枠121は、下側固定枠121A及び上側固定枠121Bを有する。下側固定枠121A及び上側固定枠121Bはそれぞれ、例えば、略U字形状を有し、下側固定枠121Aと上側固定枠121Bを合わせた場合に略四角形状を有する。下側固定枠121A及び上側固定枠121Bは、先端側支持体122に、例えば、ボルト締結により固定される。下側固定枠121Aにケーブル終端接続部500の先端部を載置した状態で、上側固定枠121Bを上方から被せて挟持することにより、先端部固定枠121にケーブル終端接続部500の先端部が固定される。
【0037】
また、下側固定枠121A及び上側固定枠121Bは、それぞれ、略U字形状の底辺部に、略V字形状の押さえ部123を有している。ケーブル終端接続部500の先端部(具体的には、実施の形態では円盤状の上部金具512の外周部分)と押さえ部123とが多点接触することにより、ケーブル終端接続部500の軸ずれを容易に吸収でき、安定した姿勢で、ケーブル終端接続部500を保持することができる。
【0038】
後端側固定部13は、架台ベース11に対して垂直に取り付けられ、ケーブル終端接続部500の後端部、具体的には、実施の形態では、がい管510の後端側に配置された固定金具541を固定する。後端側固定部13は、固定金具541を固定する後端部固定枠131、及び、架台ベース11に立設され後端部固定枠131を支持する後端側支持体132を有する。
【0039】
後端部固定枠131は、矩形状の枠体であり、例えば、ボルト止めにより、ケーブル終端接続部500の固定金具541に強固に固定される。また、後端部固定枠131は、水平面内においてケーブル終端接続部500の軸方向(がい管510の軸方向)と直交する回転軸を有する。後端部固定枠131は、後端側支持体132に、回転軸の軸受となるベアリング133を介して取り付けられており、回転軸周りに回転可能となっている。
【0040】
タンク保持部14は、架台ベース11に対して垂直に取り付けられた支持体の上部で液体タンク20を保持する。タンク保持部14の高さは、架台10にケーブル終端接続部500を水平状態で固定したときに、液体タンク20の鉛直方向の高さが、ケーブル終端接続部500の鉛直方向の高さよりも高くなるように設定される。「液体タンク20の鉛直方向の高さ」とは、タンク本体21内の液体貯留空間の最下面の鉛直方向の高さである。また、「ケーブル終端接続部500の鉛直方向の高さ」とは、水平状態におけるがい管本体511内の液体貯留空間の最上面の鉛直方向の高さである。
【0041】
液体タンク20は、タンク本体21及び液体ホース22を有する。また、液体ホース22の先端には、ワンタッチカプラー23が装着されている。タンク本体21は、架台10のタンク保持部14に固定され、液体ホース22、547を介してがい管510と接続され、絶縁性媒体543を流出入可能となっている。
【0042】
タンク本体21には、絶縁性媒体543が適切な量で封入される。具体的には、タンク本体21の容積及び貯留される絶縁性媒体543の容量は、がい管本体511内に絶縁性媒体543が満充填された状態において、絶縁性媒体543が熱収縮したときに収縮量に相当する絶縁性媒体543を補充でき、かつ、絶縁性媒体543が熱膨張したときの膨張量に相当する絶縁性媒体543を受容できるように設定される。実施の形態では、タンク本体21内部の約半分の高さまで絶縁性媒体543が充填されている。
【0043】
周囲の温度環境により絶縁性媒体543が収縮した場合には、収縮量に相当する絶縁性媒体543が液体タンク20からがい管510に流入し、絶縁性媒体543が膨張した場合には、膨張量に相当する絶縁性媒体543ががい管本体511から液体タンク20に流入する。タンク本体21内の液体貯留空間の最下面の鉛直方向の高さが、水平状態のがい管本体511内の液体貯留空間の最上面の鉛直方向の高さよりも高くなっていることにより、がい管本体511内は常に絶縁性媒体543で満充填された状態で保持される。
【0044】
中間固定部30は、ケーブル終端接続部500(がい管ユニット)における先端部と後端部の間の中間部を支持する。本実施の形態では、2つの中間固定部30が設けられている。なお、中間固定部30の数は、ケーブル終端接続部500の長さ(がい管510の長さ)に応じて適宜変更可能である。
【0045】
中間固定部30は、がい管本体511を支持する中間部支持枠31、及び、架台ベース11に対して垂直に固定され中間部支持枠31の高さを調整する高さ調整部32を有する。
【0046】
中間部支持枠31は、下側に配置される下側支持枠31Aと、上側に配置される上側支持枠31Bを有する。なお、
図3では、上側支持枠31Bが省略されている。下側支持枠31A及び上側支持枠31Bは、高さ調整部32に固定される。下側支持枠31Aにケーブル終端接続部500の中間部を載置した状態で、上側支持枠31Bを上方から被せて挟持することにより、中間部支持枠31にケーブル終端接続部500の中間部が固定される。
【0047】
下側支持枠31A及び上側支持枠31Bは、それぞれ、枠本体311及びがい管受け部312を有する。がい管受け部312は、がい管本体511の周面形状、すなわち、笠部511aの凹凸形状に適合可能な形状を有し、がい管本体511の周面を固定する。具体的には、がい管受け部312は、笠部511aの間の凹部に入り込こんでがい管本体511を支持可能な円弧形状を有する。本実施の形態では、下側支持枠31A及び上側支持枠31Bに、それぞれ、3つのがい管受け部312が設けられている。なお、がい管受け部312の数は、適宜変更可能である。
【0048】
高さ調整部32は、架台10と中間部支持枠31の間に介在し、中間部支持枠31の高さを調整する。高さ調整部32は、例えば、パンタグラフ型ジャッキで構成される。高さ調整部32により、中間部支持枠31の高さを容易に調整でき、がい管本体511の周面に中間部支持枠31を適切な状態で取り付けることができる。
【0049】
図4A~
図4Dは、輸送装置1にがい管ユニットの一例であるケーブル終端接続部500を固定する工程の一例を示す図である。
【0050】
輸送装置1にケーブル終端接続部500を固定するに際して、架台10の上側固定枠121B、及び、中間固定部30の上側支持枠31Bは取り外されている。また、後端部固定枠131の矩形状の開口部分は、鉛直方向を向いている。また、液体タンク20とがい管本体511内が接続されていない状態で、絶縁性媒体543をがい管本体511内に満充填した場合、絶縁性媒体543の熱膨張によってがい管本体511を破損するおそれがあるため、がい管本体511内には適量の絶縁性媒体543が封入されている。適量とは、ケーブル終端接続部500の通常運転時と同様、がい管本体511内に絶縁性媒体543を満充填しない状態であり、
図4Aの輸送装置1に取り付ける段階では、がい管本体511の全長に対して6~9割の高さまで絶縁性媒体543を封入するのが好ましい。
【0051】
まず、
図4Aに示すように、ケーブル終端接続部500の固定金具541及び上部金具512に取り付けられたアイボルト548に、玉掛け用のスリング549を取り付ける。クレーン等によりスリング549を吊り上げてケーブル終端接続部500を鉛直上方に持ち上げ、輸送装置1又はケーブル終端接続部500を移動させて、架台10の後端部固定枠131とケーブル終端接続部500の位置合わせを行う。
【0052】
次に、
図4Bに示すように、スリング549を吊り下ろしてケーブル終端接続部500を後端部固定枠131に挿通し、後端部固定枠131に固定金具541を固定する。
【0053】
次に、
図4Cに示すように、クレーンを移動させながら、さらにスリング549を吊り下ろす。ケーブル終端接続部500は、後端部固定枠131とともに、ベアリング133を介して回転軸周りに回転する。
【0054】
図4Dに示すように、さらにスリング549を吊り下ろし、ケーブル終端接続部500の先端部を架台10の下側固定枠121Aに載置する。下側固定枠121Aの上部に上側固定枠121Bを取り付け、下側固定枠121A及び上側固定枠121Bによって、ケーブル終端接続部500の先端部を挟持して固定する。また、中間固定部30の高さ調整部32を調整して、下側支持枠31Aをがい管本体511に当接させる。上側支持枠31Bを取り付け、下側支持枠31A及び上側支持枠31Bによって、ケーブル終端接続部500の中間部を挟持して固定する。
【0055】
このようにして、
図2のように、架台10にケーブル終端接続部500が水平状態で固定される。この状態で、ワンタッチカプラー546に、別途用意したドラム管(図示略)を接続して、がい管本体511内に絶縁性媒体543を満充填する。言い換えれば、
図4Aの状態では絶縁性媒体543は6~9割充填されていたが、残りの空洞部分を埋めて満タンにするために絶縁性媒体543を補充する。満充填後、ワンタッチカプラー23、546を介して、液体ホース22、547を接続する。これにより、架台10に固定したケーブル終端接続部500のがい管本体511内と、タンク本体21内が接続され、がい管本体511内の絶縁性媒体543は常に満充填された状態で保持される。
【0056】
上述したように、本実施の形態に係る輸送装置1及び輸送方法は、以下の特徴事項を単独で、又は、適宜組み合わせて備えている。
【0057】
すなわち、輸送装置1は、がい管本体511内に絶縁性媒体543が封入されたケーブル終端接続部500(がい管ユニット)を輸送するための輸送装置であって、ケーブル終端接続部500を水平状態で固定可能な架台10と、がい管本体511に接続されがい管本体511との間で絶縁性媒体543を流出入可能な液体タンク20と、を備える。架台10は、架台ベース11と、架台ベース11に対して垂直に取り付けられケーブル終端接続部500の先端部を固定する先端側固定部12と、架台ベース11に垂直に取り付けられケーブル終端接続部500の後端部を固定する後端側固定部13と、を有する。液体タンク20は、タンク本体21内の液体貯留空間の最下面の鉛直方向の高さが、水平状態におけるがい管本体511内の液体貯留空間の最上面の鉛直方向の高さよりも高くなるように、架台10に配置されている。
【0058】
また、実施の形態に係るケーブル終端接続部500(がい管ユニット)の輸送方法は、輸送装置1の架台10にケーブル終端接続部500を固定する工程(
図4A、
図4B参照)と、がい管本体511と液体タンク21とを接続する工程(
図2参照)と、輸送装置1に固定した状態でケーブル終端接続部500を目的地まで輸送する工程と、を含む。
【0059】
輸送装置1及び輸送方法によれば、がい管本体511内に絶縁性媒体543が常に満充填された状態で保持されるので、輸送中に液面振動が生じない。したがって、がい管本体511内に絶縁性媒体543を封入した状態でケーブル終端接続部500(がい管ユニット)を施工現場等の目的地まで安全に輸送でき、施工現場での設置作業を容易化することができる。なお、施工現場では、固定金具541に設けられた流路(図示略)を介して所定量の絶縁性媒体543をがい管本体511内から排出して、ケーブル終端接続部500(がい管ユニット)の通常運転時に必要な量の絶縁性媒体543にすればよい。具体的には、がい管本体511の全長に対して6~9割の高さまで絶縁性媒体543が封入された状態になるまで絶縁性媒体543を排出すればよい。したがって、施工現場で多大な時間を要していた油填作業を現地で行う必要がなくなり、施工現場における施工時間を大幅に短縮することができる。また、従来、施工現場で油填作業を行うために必要だったギアポンプ等の機材を、施工現場に持ち込まなくてもよく、現地で使用する施工機材を削減することができる。
【0060】
また、輸送装置1において、後端側固定部13は、がい管本体511の周面に取り付けられる後端部固定枠131と、ケーブル終端接続部500(がい管ユニット)の軸方向と直交する水平面内の回転軸の周りに後端部固定枠131を回転可能に支持する後端側支持体132と、を有する。
【0061】
また、実施の形態に係るケーブル終端接続部500(がい管ユニット)の輸送方法は、輸送装置1の架台10にケーブル終端接続部500を垂直状態で固定する工程(
図4A、
図4B参照)と、回転軸を中心にケーブル終端接続部500を回転させて水平状態に移行させる工程(
図4C、
図4D参照)と、がい管本体511と液体タンク20とを接続する工程(
図2参照)と、輸送装置1に固定した状態でケーブル終端接続部500を目的地まで輸送する工程と、を含む。
【0062】
輸送装置1及び輸送方法によれば、ケーブル終端接続部500(がい管ユニット)を水平状態で輸送した後、施工現場にて、ケーブル終端接続部500を容易に回転させて垂直状態に移行させることができる。したがって、がい管本体511内に絶縁性媒体543を封入した状態でケーブル終端接続部500を目的地(例えば施工現場)まで安全に輸送でき、施工現場での設置作業をさらに容易化することができる。なお、施工現場では、固定金具541に設けられた流路(図示略)を介して所定量の絶縁性媒体543をがい管本体511内から排出して、ケーブル終端接続部500(がい管ユニット)の通常運転時に必要な量の絶縁性媒体543にすればよい。具体的には、がい管本体511の全長に対して6~9割の高さまで絶縁性媒体543が封入された状態になるまで絶縁性媒体543を排出すればよい。したがって、施工現場で多大な時間を要していた油填作業を現地で行う必要がなくなり、施工現場における施工時間を大幅に短縮することができる。また、従来、施工現場で油填作業を行うために必要だったギアポンプ等の機材を、施工現場に持ち込まなくてもよく、現地で使用する施工機材を削減することができる。
【0063】
また、輸送装置1において、架台ベース11は、がい管本体511から漏出した絶縁性媒体543を貯留可能である。これにより、万が一、がい管本体511から絶縁性媒体543が漏出しても、架台ベース11の凹部111に貯留されるので、外部に漏油被害が拡大するのを防止できる。
【0064】
また、輸送装置1は、ケーブル終端接続部500(がい管ユニット)における先端部と後端部の間の中間部を支持する中間固定部30を備え、中間固定部30は、がい管本体511の周面に取り付けられる中間部支持枠31と、中間部支持枠31の高さを調整可能な高さ調整部32と、を有する。これにより、中間部支持枠31の高さを適宜調整して、ケーブル終端接続部500の中間部を適切な状態で支持することができ、ケーブル終端接続部500を安定した姿勢で輸送することができる。
【0065】
また、輸送装置1において、中間部支持枠31は、がい管本体511の周面形状に適合可能な形状を有する。これにより、ケーブル終端接続部500の中間部をより適切な状態で支持することができ、ケーブル終端接続部500を安定した姿勢で輸送することができる。
【0066】
また、輸送装置1において、液体タンク20は、ワンタッチカプラー23を介して、がい管本体511と接続される。これにより、絶縁性媒体543の油填及び抜油作業が容易化され、作業時間を短縮することができる。
【0067】
また、輸送装置1において、先端側固定部12は、ケーブル終端接続部500(がい管ユニット)の上部金具512の周面に取り付けられる先端部固定枠121を有し、先端部固定枠121は,上部金具512の周面と多点接触する。これにより、ケーブル終端接続部500の軸ずれを容易に吸収でき、安定した姿勢で保持することができる。
【0068】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0069】
例えば、前述の実施の形態では、本発明に係る輸送装置に固定するがい管ユニットが、ケーブル終端接続部である例について説明したが、これに限定されず、例えば、がい管ユニットは、機器用ブッシング(「機器用貫通ブッシング」とも呼ばれる)であってもよい。機器用ブッシングの機器側は油絶縁及び又はガス絶縁に対応可能な既知の形状を有し、変圧器用又はGIS(ガス絶縁開閉装置)用として使用することができる。
【0070】
機器用ブッシングの場合は、がい管本体511内に配置される絶縁ユニットの絶縁筒の後端側が、ケーブル受容部524のようなケーブル受容口の構造ではなく、機器内の油絶縁及び又はガス絶縁に耐え得るヘッド部を有する。ヘッド部は、先端側から後端側に向かって縮径する(言い換えれば、取り付ける機器の内部方向に向かって縮径する)部分を含む既知の形状で形成される(例えば、非特許文献1の
図1の貫通ブッシングの機器側形状や、特許文献3の
図1のフランジ部より下側の構造参照)。
【0071】
すなわち、本発明に係る輸送装置に固定するがい管ユニットが機器用ブッシングの場合、内部導体の後端側にはケーブル導体を接続するための導体挿入部を有さず、棒状の内部導体が絶縁筒の後端側のヘッド部から貫通して突出する構造となる。突出した内部導体の後端部は、棒状のままでもよいし、部分放電対策のためのシールド形状を有していてもよい。また、ヘッド部を電界緩和するための遮へい金具は適宜設けてもよい。
【0072】
また、がい管ユニットがケーブル終端接続部500である場合、輸送装置1の後端側固定部13の後端部固定枠131は、ケーブル終端接続部500の固定金具541に固定するが、がい管ユニットが機器用ブッシングの場合、後端部固定枠131には機器用ブッシングの当該位置に設けられる(すなわち、がい管本体511の後端部に一体的に設けられた下部金具513と締結される)、フランジに固定される。このフランジを機器に固定することにより、機器に機器用ブッシングが固定される。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 輸送装置
10 架台
11 架台ベース
12 先端側固定部
13 後端側固定部
14 タンク保持部
20 液体タンク
21 タンク本体
22 液体ホース
23 ワンタッチカプラー
30 中間固定部