(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073053
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】回路基板用ソケット
(51)【国際特許分類】
H01R 33/76 20060101AFI20240522BHJP
G01R 1/067 20060101ALI20240522BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01R33/76 505B
G01R1/067 C
G01R1/073 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184044
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000177690
【氏名又は名称】山一電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小海 邦仁
(72)【発明者】
【氏名】三輪 浩一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 智博
【テーマコード(参考)】
2G011
5E024
【Fターム(参考)】
2G011AA02
2G011AA08
2G011AA14
2G011AA16
2G011AB01
2G011AB03
2G011AB04
2G011AB07
2G011AC14
2G011AE01
2G011AE22
2G011AF02
2G011AF06
5E024CA18
5E024CA19
5E024CB04
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、弾性接触子に作用する反力による誤接触などを防止できる回路基板用ソケットを提供することを目的とする。
【解決手段】回路基板用ソケットであって、回路基板用ソケットであって、複数の接触子と、前記複数の接触子のそれぞれを固定保持する接触子固定基板と、前記接触子固定基板と接続し、前記複数の接触子をそれぞれ通す複数の貫通孔を有した弾性接触子押さえ基板と、前記弾性接触子押さえ基板に対して、前記接触子固定基板と反対の側に配置され、前記複数の接触子のそれぞれと接触する複数の弾性接触子と、を備え、前記弾性接触子は、当該弾性接触子の弾性力が作用する方向で前記弾性接触子押さえ基板と接触することを特徴とする回路基板用ソケット。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板用ソケットであって、
複数の接触子と、
前記複数の接触子のそれぞれを固定保持する接触子固定基板と、
前記接触子固定基板と接続し、前記複数の接触子をそれぞれ通す複数の貫通孔を有した弾性接触子押さえ基板と、
前記弾性接触子押さえ基板に対して、前記接触子固定基板と反対の側に配置され、前記複数の接触子のそれぞれと接触する複数の弾性接触子と、
を備え、
前記弾性接触子は、当該弾性接触子の弾性力が作用する方向で前記弾性接触子押さえ基板と接触することを特徴とする回路基板用ソケット。
【請求項2】
前記弾性接触子押さえ基板における前記複数の接触子の配列に対応した領域と、前記接触子固定基板との間に空間部を設けることを特徴とする請求項1に記載の回路基板用ソケット。
【請求項3】
前記弾性接触子をそれぞれ含む複数の孔を有した弾性接触子収容部材をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の回路基板用ソケット。
【請求項4】
前記弾性接触子は、コイルスプリングであり、前記接触子と少なくとも2つの接触部で接触することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の回路基板用ソケット。
【請求項5】
前記少なくとも2つの接触部のそれぞれは、前記接触子と、少なくとも2か所で接触することを特徴とする請求項4に記載の回路基板用ソケット。
【請求項6】
前記接触子は、前記少なくとも2つの接触部のうち前記接触子の先端より遠い側の接触部において前記コイルスプリングと接触する断面形状を有することを特徴とする、請求項4に記載の回路基板用ソケット。
【請求項7】
前記接触子が、先端部分に縦方向断面において凸状をなす曲面部を有することにより、前記少なくとも2つの接触部の少なくとも1つの接触部おいて、前記コイルスプリングと接触することを特徴とする請求項4に記載の回路基板用ソケット。
【請求項8】
前記接触子が、少なくとも一つの凸部を有することにより、前記少なくとも2つの接触部の少なくとも1つの接触部おいて、コイルスプリングと接触することを特徴とする請求項4に記載の回路基板用ソケット。
【請求項9】
前記接触子の先端が、二つに分かれつつねじれた形状を形成することにより、前記少なくとも2つの接触部の少なくとも1つの接触部おいて、前記コイルスプリングと接触することを特徴とする請求項4に記載の回路基板用ソケット。
【請求項10】
回路基板用ソケットであって、
複数の接触子と、
前記複数の接触子のそれぞれを固定保持する接触子固定基板と、
前記複数の接触子の下部を弾性変形してなる複数の接触子弾性部と、
前記接触子固定基板と接続し、前記複数の接触子をそれぞれ通す複数の貫通孔を有した接触子弾性部押さえ基板と、
を備え、
前記接触子弾性部は、前記接触子弾性部押さえ基板に対して、前記接触子固定基板と反対の側に配置され、当該接触子弾性部の弾性力が作用する方向で前記接触子弾性部押さえ基板と接触することを特徴とする回路基板用ソケット。
【請求項11】
前記複数の接触子弾性部の下部をそれぞれ収容する複数の収容部を有した接触子弾性部収容部材をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の回路基板用ソケット。
【請求項12】
前記接触子弾性部押さえ基板における前記複数の接触子の配列に対応した領域と、前記接触子固定基板との間に空間部を設けることを特徴とする請求項10または11に記載の回路基板用ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板用ソケットに関し、より詳細には、回路基板に搭載された際に、回路基板とソケットの接触子とを弾性を持たせて接続させる回路基板用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置等の電子部品を回路基板へ実装する方法として、はんだ付けにより基板に固定する方法と基板電極へ弾性部材を接触させて固定する方法がある。後者の実装方法は、電子部品側の接点を回路基板に弾性力で押し当てて、電子部品と回路基板との電気的導通を実現している。そして、ソケットを介して電子部品と回路基板とを接続する形態では、ソケットにおける接触子が弾性によって回路基板に接して良好な接触を図るものである。
【0003】
特許文献1には、接触子としてのコンタクトピン15が、ICソケット11のソケット本体13における与圧プレート26に挿通されつつ圧入孔13aに圧入されることが記載されている。そして、コンタクトピン15は、ICパッケージ12の半田ボール12bに接触時に、その位置が変位しない構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような、特許文献1では、仮に、ICパッケージ12(電子部品)と回路基板との電気的導通を実現するため、コンタクトピン15(接触子)を基板電極へ弾性部材を接触させて固定しようとすると、それに伴う弾性力が接触子を介して、与圧プレート26(基板)に作用し、基板が変形するおそれがある。この変形が大きい場合、基板の変形によって接触子位置が変位し、本来接触すべきではないICパッケージ12(電子部品)の領域に接触子が接触してしまうという問題(誤接触)を引き起こす恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構成で、弾性接触子に作用する反力による誤接触などを防止できる回路基板用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
回路基板用ソケットであって、複数の接触子と、前記複数の接触子のそれぞれを固定保持する接触子固定基板と、前記接触子固定基板と接続し、前記複数の接触子をそれぞれ通す複数の貫通孔を有した弾性接触子押さえ基板と、前記弾性接触子押さえ基板に対して、前記接触子固定基板と反対の側に配置され、前記複数の接触子のそれぞれと接触する複数の弾性接触子と、を備え、前記弾性接触子は、当該弾性接触子の弾性力が作用する方向で前記弾性接触子押さえ基板と接触することを特徴とする回路基板用ソケット。
【0008】
回路基板用ソケットであって、複数の接触子と、前記複数の接触子のそれぞれを固定保持する接触子固定基板と、前記複数の接触子の下部を弾性変形してなる複数の接触子弾性部と、前記接触子固定基板と接続し、前記複数の接触子をそれぞれ通す複数の貫通孔を有した接触子弾性部押さえ基板と、を備え、前記接触子弾性部は、前記接触子弾性部押さえ基板に対して、前記接触子固定基板と反対の側に配置され、当該接触子弾性部の弾性力が作用する方向で前記接触子弾性部押さえ基板と接触することを特徴とする回路基板用ソケット。
【発明の効果】
【0009】
以上の形態によれば、回路基板用ソケットにおいて、簡易な構成で、弾性接触子に作用する反力による接触子と電子デバイスとの誤接触等を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る回路基板用ソケットと回路基板を結合した全体斜視図を表す。
【
図3】
図3(a)は、比較のために従来の接触子固定基板を用いている挿入実装を示す断面図であり、
図3(b)は、比較のために従来の接触子固定基板を用いている挿入実装で回路基板へ弾性部材を接触させて固定するように変更した場合の問題点を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の回路基板用ソケットの接触子の配列に沿った断面の一部を示す図であり、
図4(a)は、接触子がプリント回路基板に接触する前の状態を示しており、
図4(b)は、接触子がプリント回路基板に接触した後の状態を示している。
【
図5】
図5は、本発明の他の実施形態に係る回路基板用ソケットの側面断面図を表すものであり、
図5(a)は、回路基板と接触する前の状態にある、本発明の他の実施形態に係る回路基板用ソケットの側面断面図であり、
図5(b)は、回路基板と接触後の状態を表す、本発明の他の実施形態に係る回路基板用ソケットの側面断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る接触子とコンタクトスプリングの2か所での接触を示す図であり、
図6(a)は接触子の配列に沿った一面の概略図を示しており、
図6(b)は、接触子の配列に沿った他面の概略図を示しており、
図6(c)は、VIc線方向における拡大断面図を示しており、
図6(d)は、VId線方向における拡大断面図を示している。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る接触子とコンタクトスプリングの2か所での接触を示す図であり、
図7(a)は接触子の配列に沿った一面の概略図を示しており、
図7(b)は、接触子の配列に沿った他面の概略図を示しており、
図7(c)は、VIIc線方向における拡大断面図を示しており、
図7(d)は、VIId線方向における拡大断面図を示している。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る接触子とコンタクトスプリングの2か所での接触を示す図であり、
図8(a)は接触子の配列に沿った一面の概略図を示しており、
図8(b)は、接触子の配列に沿った他面の概略図を示しており、
図8(c)は、VIIIc線方向における拡大断面図を示しており、
図8(d)は、VIIId線方向における拡大断面図を示している。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る接触子とコンタクトスプリングの2か所での接触を示す図であり、
図9(a)は接触子の配列に沿った一面の概略図を示しており、
図9(b)は、接触子の配列に沿った他面の概略図を示しており、
図9(c)は、IXc線方向における拡大断面図を示しており、
図9(d)は、IXd線方向における拡大断面図を示している。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る接触子とコンタクトスプリングの2か所での接触を示す図であり、
図10(a)は接触子の配列に沿った一面の概略図を示しており、
図10(b)は、接触子の配列に沿った他面の概略図を示しており、
図10(c)は、Xc線方向における拡大断面図を示しており、
図10(d)は、Xd線方向における拡大断面図を示している。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る接触子とコンタクトスプリングが1か所または2か所で接触する場合の、挿入損失特性を示すグラフであり、
図11(a)は、従来の接触子とコンタクトスプリングが1か所で接触する場合の挿入損失特性を示しており、
図11(b)は、接触子とコンタクトスプリングが2か所で接触する場合の挿入損失特性を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
(実施形態1)
<回路基板用ソケットの概要>
図1は、本発明の一実施形態に係る回路基板用ソケットの外観を回路基板に装着した状態で示す斜視図である。
図1において、回路基板用ソケット10は接触子固定基板12を備え、その4つの周囲側面が回路基板用ソケット10の外郭を成す。回路基板用ソケット10は、接触子固定基板12の下側に弾性接触子収容部材16を配し、この基板16を介して、回路基板2と接続している。接触子固定基板12の上側には、カバー9がその一部が接触子固定基板12によって固定されるように設けられる。そして、電子デバイスを誘い込むガイド8がカバー9の内側にあり、カバー9の内部に電子デバイス(不図示)が装着されて、電子デバイスは回路基板用ソケット10と電気的に接続する。
【0013】
また、スライダー7の上面には接触子11の上端部分が配置され、電子デバイスの電気接点と接続することができる。
図1には、図の簡略化のために一列のみ表示されているが、実際には、スライダー7の全面に接触子11の上端部分が出ている。接触子固定基板12の下側には、
図2にて詳細が後述されるように、弾性接触子押さえ基板14が設けられる。
【0014】
<回路基板用ソケットの詳細構成>
図2は、
図1に示した回路基板用ソケットの分解斜視図であり、電子デバイス1および回路基板2それぞれとの位置関係も示している。
【0015】
回路基板用ソケット10は、接触子固定基板12、弾性接触子押さえ基板14および弾性接触子収容部材16の3層の基板を有して構成される。そして、接触子11は、その上方部分(上端部を除く)が接触子固定基板12によって固定した状態で保持される。この接触子11は、
図3に示すように、複数の接触子が一方向に配列される。本実施形態の回路基板用ソケットでは、図の簡略化のために、接触子の配列を二列のみ示している。接触子固定基板12によって保持された接触子11のそれぞれは、弾性接触子押さえ基板14の対応する貫通孔18(
図4参照)を通るよう配置される。さらに、接触子11は、それぞれの下端部が、弾性接触子収容部材16の対応する孔内に配置された弾性接触子15と接触するよう配置される。
【0016】
以上の配置構成において、接触子11個々の上端部は、回路基板用ソケット10に装着される電子デバイス1のリード(不図示)と電気的接触を可能とし、接触子11個々の下端部は、弾性接触子15と電気的接触を可能とする。そして、後述されるように、弾性接触子15は回路基板2の所定の接続部と電気的接触が可能となり、これにより、電子デバイス1と回路基板2との電気的導通が可能となる。また、接触子11は接触子固定基板12によって支持されることで、接触子上端部の接触高さが一定に管理でき、電子デバイス1のリードと接触子11の安定した接触が可能となる。なお、本実施形態において、弾性接触子15として、コイルスプリングを例示したが、この形態に限定されない。
【0017】
上で説明した構成の回路基板用ソケットは、基板電極へ弾性部材を接触させて固定する方法の一種である。すなわち、回路基板用ソケットでは、接触子11は接触子固定基板12によって固定されるとともに、弾性接触子15が回路基板2に接触するときの回路基板2からの反力が接触子固定基板12に作用し得る接触構成である。このような構成では、反力によって接触子固定基板12が変形し、ソケットに装着される電子デバイスに対して誤接触等を生じるおそれがある。これに対し、本発明の実施形態は、上述したように、接触子固定基板12と弾性接触子収容部材16との間に、弾性接触子押さえ基板14を設け、弾性接触子15が、弾性接触子押さえ基板14の下端と接触する。すると、弾性接触子押さえ基板14が、弾性接触子15が回路基板2に接触するときの回路基板2からの反力を受け持ち、接触子固定基板12に直接この反力が及ぼされることを防止する。さらに、この弾性接触子押さえ基板14と接触子固定基板12との間に空間を設けることにより、上記反力を、接触子11を固定、保持する接触子固定基板12に及ぼさないようにする。以下、この形態について、詳細に説明する。
【0018】
変形を防止する本実施形態のソケット構造を説明する前に、弾性接触子による反力によって接触子固定基板が変形することについて、説明する。
図3(a)および(b)は、比較例に係るソケット構造を示す断面図である。
【0019】
図3(a)に示されるように、比較例に係るソケット構造では、接触子31は、接触子固定基板33に圧入固定されている。そして、接触子31の上端部は、電子デバイス5の外部接点32を挟み込むように配置され、これにより、電子デバイス5と接触子31との電気的接続が可能となる。
【0020】
一方、
図3(b)に示されるように、接触子31の下端部は弾性接触子34(弾性接触子収容部材は不図示)と接続し、弾性接触子34は回路基板6と接触するとともに、弾性接触子収容部材と回路基板6が接続することに伴い、弾性接触子34による反力が接触子31を介して、接触子31が固定されている接触子固定基板33に作用する。この弾性接触子34による反力によって、
図3(b)に示すように、接触子固定基板33が電子デバイス5の方向へと変形する。その結果、接触子31の上端の位置ずれが生じ、電子デバイス5に誤接触し、電気的接触不良や電子デバイス5の損傷等が生じ得る。なお、接触子固定基板33の変形は簡易に示しており、接触子31の配列が3つの接触子31によって構成される例で、その配列において中央の接触子31の部分が最も大きく変形することを示している。
【0021】
<実施形態に係る接触子固定基板の変形防止構造>
図4(a)および(b)は、
図2に示した3つの基板12、14、16の接触子11の配列に沿った断面の一部を示す図であり、接触子11の配列の内2つの接触子のみを示している。
【0022】
図4(a)および(b)に示すように、回路基板用ソケット10は、接触子固定基板12、弾性接触子押さえ基板14および弾性接触子収容部材16の3層の基板を有している。弾性接触子15は、弾性接触子押さえ基板14に対して、接触子固定基板12と反対の側に配置され、弾性接触子15の弾性力が作用する方向で前記弾性接触子押さえ基板と接触する。接触子11は、その上方部分が接触子固定基板12の対応する孔に設けられた接触子-基板固定部13によって固定されるとともに、弾性接触子押さえ基板14とその貫通孔18を介して相対的に自由に移動可能に配置される。また、接触子11の下端部は、弾性接触子収容部材16の孔内の弾性接触子15における接触子-弾性接触子接触部17で接触する。以上のとおり、接触子11は、接触子固定基板12に固定される一方、弾性接触子押さえ基板14と弾性接触子収容部材16には固定されていない。また、弾性接触子15の上端は、貫通孔18の径より大きいサイズであり、これにより、弾性接触子15の上端は弾性接触子押さえ基板14の下面と接する。ただし、本発明はこれに限定されず、弾性接触子15の上部テーパ部が貫通孔18に入り込んで、テーパ部が弾性接触子押さえ基板14と接触しても良い。また、弾性接触子押さえ基板14の下部に弾性接触子15の上部を受け入れる凹部が形成され、この凹部内で弾性接触子15の上部が性接触子押さえ基板14と接触しても良い。さらには、弾性接触子押さえ基板14の下部に弾性接触子15の上部と接触するための凸部が形成され、この凸部で弾性接触子15の上部が弾性接触子押さえ基板14と接触しても良い。
【0023】
図4(a)は、本実施形態の回路基板用ソケット10が回路基板2(の接続部2a)に接続する前の状態を示しており、この状態では、弾性接触子15は拡張状態にあって回路基板用ソケット10の下方に飛び出している。これに対し、
図4(b)は、回路基板用ソケット10が回路基板2(の接続部2a)に接続したときの状態を示しており、この状態では、弾性接触子15は回路基板2(の接続部2a)との接続によって収縮状態にある。そして、弾性接触子15はその収縮状態によって回路基板2からの反力を、弾性接触子15の上端を介して弾性接触子押さえ基板14に作用する。
【0024】
本実施形態は、上記反力に対して、弾性接触子押さえ基板14の上部に空間部19を設けることにより、接触子固定基板12の変形を防止する。詳細には、弾性接触子押さえ基板14上部の接触子11の配列範囲に対応した範囲の領域に凹部を設ける。この凹部が接触子固定基板12と弾性接触子押さえ基板14との間に空間部19を形成する。これにより、弾性接触子15による反力によって弾性接触子押さえ基板14が接触子固定基板12の方へ変形したとしても、この変形は接触子固定基板12に及ばないようにすることができる。結果として、電子デバイス1に対する、接触子11の誤接触や、電子デバイス1の損傷を防止することが可能となる。また、貫通孔内に圧力の受け部を設ける構造よりも簡素な構造なので、接触子を高密度に配列することができる。なお、本実施形態では、弾性接触子押さえ基板14上部の接触子11の配列範囲に対応した範囲の領域に凹部を設けているが、これに限定されるわけではなく、接触子固定基板12側に凹部が設けられても良い。
【0025】
なお、この空間部19のサイズは、弾性接触子15による反力によって弾性接触子押さえ基板14が接触子固定基板12方向へ変形したとしても、接触子固定基板12と弾性接触子押さえ基板14が互いに接触することがないサイズであるように定められる。
【0026】
(実施形態2)
<他の実施形態に係る回路基板用ソケットの概要>
以下、他の実施形態に係る回路基板用ソケット20について説明をする。回路基板用ソケット20は、接触子21、接触子固定基板22、接触子弾性部押さえ基板24、接触子弾性部25、接触子弾性部収容部材26から構成される。接触子固定基板22は接触子21を固定するための接触子-基板固定部23を備える。接触子21の下部には、接触子21と連続して、接触子21の一部分として接触子弾性部25が設けられている。接触子弾性部収容部材26は、接触子弾性部25を受け入れるよう形成された収容部27を備える。また、接触子弾性部25の上端は接触子弾性部押さえ基板24の下端と接触する。すると、接触子弾性部押さえ基板24が、接触子弾性部25が回路基板4に接触するときの回路基板4からの反力を受け持ち、接触子固定基板22に直接この反力が及ぼされることを防止する。さらに、接触子弾性部押さえ基板24と接触子固定基板22との間に空間を設けることにより、上記反力を、接触子21を固定、保持する接触子固定基板22に及ぼさないようにする。なお、前述の回路基板用ソケット10と重複する箇所については、説明を省略する。
【0027】
<他の実施形態に係る回路基板用ソケットの詳細構成>
図5は、本発明の他の実施形態に係る回路基板用ソケット20の断面図であり、前述の回路基板用ソケット10と異なる回路基板用ソケット20の詳細な構成を示している。
図5(a)は、回路基板4(の接続部4a)と接触する前の状態にある、本発明の他の実施形態に係る回路基板用ソケット20の側面断面図であり、この状態では、接触子弾性部25は拡張状態にあって回路基板用ソケット10の下方に飛び出している。これに対し、
図5(b)は、回路基板4(の接続部4a)に接続したときの状態を示しており、この状態では、接触子弾性部25は回路基板4(の接続部4a)との接続によって収縮状態にある。そして、接触子弾性部25はその収縮状態によって回路基板4(の接続部4a)からの反力を、接触子弾性部25の上端部を介して接触子弾性部押さえ基板24に作用する。すなわち、接触子弾性部25は、接触子弾性部押さえ基板24に対して、接触子固定基板22と反対の側に配置され、接触子弾性部25の弾性力が作用する方向で接触子弾性部押さえ基板24と接触する。
【0028】
本実施形態においては、前述の回路基板用ソケット10とは異なり、接触子21自体が弾性接触子を兼ねており、接触子21の下部である接触子弾性部25が
図5(a)のように、弾性変形され、つるまきバネ形状に形成されていることで、
図5(b)のように、接触子弾性部25が収縮状態になると、接触子弾性部25の反力により接触子21が回路基板4(の接続部4a)へと押し付けられ、接触子21と回路基板4が電気的に接続される。このとき、接触子弾性部25の下部は接触子弾性部収容部材26に設けられた収容部27にはまり込み収容され、下方への移動が制限されることで、回路基板4(の接続部4a)へと押し付けられた接触子21が、回路基板4(の接続部4a)から離れないため、電気的に接続が解除されることがない。また、回路基板4(の接続部4a)へと押し付けられた接触子21が、下端以外で回路基板4と接触することについても防止することができる。接触子弾性部25は、弾性のある形状であれば特に限定されない。例えば、バネ形状でも良く、具体的には、つるまきバネ形状や弓バネ形状でも良い。
【0029】
本実施形態は、上記反力に対して、接触子弾性部押さえ基板24の上部に空間部29を設けることにより、接触子固定基板22の変形を防止する。詳細には、接触子弾性部押さえ基板24上部の接触子21の配列範囲に対応した範囲の領域に凹部を設ける。この凹部が接触子固定基板22と接触子弾性部押さえ基板24との間に空間部29が形成される。これにより、接触子弾性部25による反力によって接触子弾性部押さえ基板24が接触子固定基板22の方へ変形したとしても、この変形は接触子固定基板22に及ばないようにすることができる。結果として、電子デバイス3に対する、接触子21の誤接触や、電子デバイス3の損傷を防止することが可能となる。ここで、本実施形態では、接触子弾性部押さえ基板24上部の接触子21の配列範囲に対応した範囲の領域に凹部を設けているが、これに限定されるわけではなく、接触子固定基板22側に凹部が設けられても良い。
【0030】
なお、この空間部29のサイズは、接触子弾性部25による反力によって接触子弾性部押さえ基板24が接触子固定基板22方向へ変形したとしても、接触子固定基板22と接触子弾性部押さえ基板24が互いに接触することがないサイズであるように定められる。
【0031】
<接触子とコンタクトスプリングの2か所の接触部>
図6~10は、本発明の他の実施形態に係る接触子と弾性接触子(コンタクトスプリング)が2か所で接触部を有する場合を示す図であり、
図6(a)~
図10(a)は、接触子の配列に沿った一面の概略図を示しており、
図6(b)~
図10(b)は、接触子の配列に沿った他面の概略図を示している。
図6(c)~
図10(c)は、それぞれ、VIc~Xc線方向における拡大断面図を示しており、
図6(d)~
図10(d)は、それぞれ、VId~Xd線方向における拡大断面図を示している。なお、
図6~
図10の共通する部分については
図6について代表して説明し、それ以外については説明を省略する。
【0032】
図6(a)及び(b)に示すように、本実施形態では、接触子41と弾性接触子45が弾性接触子45の上部と下部でそれぞれ接触部48、49を有している。
図6(c)に示されるように、接触子41は弾性接触子45との接触部48においては、二つに分かれた接触子41をそれぞれ2か所で点接触させている。これにより接触子41は、接触部48で弾性接触子45と確実に接触する。それに対して、
図6(d)に示すように、接触部49においては、先が二つに分かれた接触子はそれぞれ断面が半円形状を成しており、円弧の部分が弾性接触子45に点接触するようになっている。なお、接触子41と弾性接触子45との接触部48での接触は、接触における荷重が水平方向にかかるようになっており、接触部48において弾性接触子45の反力が接触子41を上方に押し上げることがない。これにより、接触部48において弾性接触子45の反力が接触子41を上方に押し上げることで、接触子固定基板(図示せず)を変形させることを防止している。また、
図6(a)に示されるように、接触子41は、弾性接触子45の直径に対応した幅を有している。すなわち、
図6(c)に示されるように、接触子41は、少なくとも2つの接触部48,49のうち接触子41の先端より遠い側の接触部48において弾性接触子45と接触する断面形状を有している。これにより、接触部48において、接触子41が確実に弾性接触子45と接触する。なお、本実施形態において、接触子41は、テーパをつけることで、このような構成を実現している。
【0033】
このように、接触子41と弾性接触子45が弾性接触子45の上部と下部でそれぞれ接触部48、49を有していると、接触部が一つの場合に比べて、スタブの発生を抑制することができ、次項で説明するように、電子デバイスから回路基板へと入力される信号の挿入損失特性を改善することができる。
【0034】
図7(c)に示されるように接触子51が接触部58辺りの位置では、3本に分かれており、そのうちの1本がその先端部分に、縦方向断面において凸状をなす曲面部52を有し、該曲面部52が弾性接触子55に点接触している。この曲面部52により、接触子51は、接触部58で、弾性接触子55と確実に接触する。
【0035】
図8(c)に示されるように、接触子61が弾性接触子65と接触部68で、接触子61の長さ方向に点接触するように、二つに分かれた接触子61の片方が長さ方向に接触子の一部を湾曲させた凸部62を有している。この凸部62により、接触子61は、接触部68で、弾性接触子65と確実に接触する。
【0036】
図9(c)に示されるように、接触子71が弾性接触子75と接触部78で、接触子71の長さ方向に点接触するように、二つに分かれた接触子71の両方が長さ方向に接触子の一部を湾曲させた凸部72,73を有している。一方、
図9(a)及び(d)に示されるように、接触部79においては、接触子71の先端は二つに分かれつつねじれた形状を有している。これにより、単に二つに分かれた場合と比較して、接触子71の先端がより強い力で弾性接触子75に押し当てられることから、接触部79における接触子71と弾性接触子75の確実な接触をもたらす。
【0037】
図10(c)に示されるように、接触子81は接触部88辺りの位置では三つに分かれており、かつ、断面が半円形となっている。そして、接触子81の三つに分かれたうちの一本が接触部88で弾性接触子85と点接触する。
【0038】
なお、
図7(d)~
図8(d)、及び、
図10(d)に示されるように、接触部59~69、及び、89については
図6(d)と同様である。
【0039】
このように、接触子と弾性接触子の接触部での接点を複数設けることで、及び、接触子を弾性接触子に強く押し当てることで、接触子と弾性接触子の高い導通、及び、確実な導通を確保することができ、より、スタブの発生を押さえることができる。なお、本実施形態では、接触子と弾性接触子の接触部は2か所を例示したが、接触部が3か所以上であっても良い。
【0040】
<接触子とコンタクトスプリングの接触箇所数の違いによる挿入損失の違い>
図11は、本発明の実施形態に係る接触子とコンタクトスプリングが1か所または2か所で接触部を有する場合の、電子デバイスからの入力信号に対する挿入損失特性を示すグラフであり、
図11(a)は、従来の接触子とコンタクトスプリングが1か所で接触部を有する場合の挿入損失特性を示しており、縦軸が挿入損失(dB)を、横軸が周波数(Hz)を表している。
図11(b)は、本発明の実施形態に係る接触子とコンタクトスプリングが2か所で接触部を有する場合の挿入損失特性を示しており、縦軸が挿入損失(dB)を、横軸が周波数(Hz)を表している。なお、本実施形態では、Sパラメータ測定シミュレーションを行っており、入力信号の周波数は4回の各ステップ全てで、1箇所接触では2GHz付近で挿入損失が落ち込んでいるが、2箇所接触では5GHz付近での挿入損失の落ち込みが確認されている。
【0041】
図11(a)を見ると、4回の各ステップで、入力信号に対して、周波数が2GHzの前後で急激に挿入損失が生じているのが分かる。従来の接触子とコンタクトスプリングが一か所で接触部を有する場合には、接点部より上部にバネ部が存在しているため、この部分がスタブになり接点部から信号が流れて自由端で反射して接点部へ戻り本来の信号に悪影響を与える。これが挿入損失の増加要因と考えられる。
【0042】
これに対し、
図11(b)を見ると、この、周波数が2GHzの前後での挿入損失が解消されている。そして、周波数が4GHzまでは、スムーズな波形となっており、スタブの発生を抑制することができ、挿入損失特性が改善されているのが分かる。
【0043】
このような構成により、概ねスタブの無い状態(信号劣化要因の無い状態)を作る事ができるため挿入損失の改善に繋がる。
【符号の説明】
【0044】
1、3、5 電子デバイス
2、4、6 回路基板
7 スライダー
8 ガイド
9 カバー
10 回路基板用ソケット
11 接触子
12 接触子固定基板
13 接触子-基板固定部
14 弾性接触子押さえ基板
15 弾性接触子
16 弾性接触子収容部材
17 接触子-弾性接触子接触部
18 貫通孔
19、29 空間部
20 回路基板用ソケット
21 接触子
22 接触子固定基板
23 接触子-基板固定部
24 接触子弾性部押さえ基板
25 接触子弾性部
26 接触子弾性部収容部材
27 収容部
31 接触子
32 外部接点
33 接触子固定基板
34 弾性接触子
41、51、61、71、81 接触子
45、55、65、75、85 弾性接触子
48、58、68、78、88 接触部
49、59、69、79、89 接触部
52 凸状をなす曲面部
62、72、73 凸部