(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073059
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】充電器
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20240522BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20240522BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H02J7/02 B
H02J7/04 A
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184052
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】大北 祐司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 圭二
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 慎司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雅博
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503DA04
5G503EA08
5G503GB03
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】交流電源からブレーカを介して入力される交流電流を直流電流に変換して蓄電装置に流す充電器において、交流電流を測定する電流センサが故障しても、ブレーカをトリップさせずに蓄電装置に継続して電流を流す充電器を提供する。
【解決手段】充電器は、電流センサSi1により測定される第1交流電流と電流センサSi2により測定される第2交流電流との差が閾値以下である場合、ブレーカBrの遮断容量IBrに対応する直流電流を上限として蓄電装置Psから要求される電流が変換回路Cnvから蓄電装置Psへ流れるように変換回路Cnvの動作を制御し、差が閾値より大きい状態が所定時間t継続すると、ブレーカBrの遮断容量より小さい制限電流に対応する直流電流を上限として蓄電装置Psから要求される電流が変換回路Cnvから蓄電装置Psへ流れるように変換回路Cnvの動作を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーカと蓄電装置との間に接続される充電器であって、
交流電源から前記ブレーカを介して前記充電器に流れる三相交流電流のうちの第1交流電流を測定する第1電流センサと、
前記三相交流電流のうちの第2交流電流を測定する第2電流センサと、
前記三相交流電流を直流電流に変換して前記蓄電装置へ流す変換回路と、
前記変換回路の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1電流センサにより測定される第1交流電流と前記第2電流センサにより測定される第2交流電流との第1差が閾値以下である場合、前記ブレーカの遮断容量に対応する直流電流を上限として前記蓄電装置から要求される電流が前記変換回路から前記蓄電装置へ流れるように前記変換回路の動作を制御し、
前記第1差が前記閾値より大きい状態が所定時間継続すると、前記ブレーカの遮断容量より小さい制限電流に対応する直流電流を上限として前記蓄電装置から要求される電流が前記変換回路から前記蓄電装置へ流れるように前記変換回路の動作を制御する
ことを特徴とする充電器。
【請求項2】
請求項1に記載の充電器であって、
前記三相交流電流のうちの第3交流電流を測定する第3電流センサを備え、
前記制御部は、
前記第1差、前記第2電流センサにより測定される第2交流電流と前記第3電流センサにより測定される第3交流電流との第2差、及び前記第1電流センサにより測定される第1交流電流と前記第3電流センサにより測定される第3交流電流との第3差の何れも前記閾値以下である場合、前記ブレーカの遮断容量に対応する直流電流を上限として前記蓄電装置から要求される電流が前記変換回路から前記蓄電装置へ流れるように前記変換回路の動作を制御し、
前記第1乃至第3差の少なくとも1つが前記閾値より大きい状態が前記所定時間継続すると、前記制限電流に対応する直流電流を上限として前記蓄電装置から要求される電流が前記変換回路から前記蓄電装置へ流れるように前記変換回路の動作を制御する
ことを特徴とする充電器。
【請求項3】
請求項1に記載の充電器であって、
前記制御部は、前記第1差が前記閾値より大きい状態が前記所定時間継続すると、前記第1及び第2電流センサの一方が故障している旨を報知部によりユーザに報知する
ことを特徴とする充電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源からブレーカを介して入力される交流電力を直流電力に変換して蓄電装置に供給する充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
充電器として、ブレーカに流れる電流がブレーカの遮断容量(定格遮断電流)を超える状態が一定時間継続してブレーカがトリップ(遮断)しないように、電流センサにより測定される充電器の入力電流に基づいて、充電器の動作を制御するものがある。関連する技術として、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記充電器では、電流センサの故障を起因とする充電器の誤動作により入力電流が意図せずに増加する場合、ブレーカの遮断容量を超える電流が一定時間以上ブレーカに流れてブレーカがトリップし蓄電装置への電力供給が停止してしまうおそれがある。
【0005】
本発明の一側面に係る目的は、電流センサの故障時において、蓄電装置への継続的な電力供給を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一つの形態である充電器は、ブレーカと蓄電装置との間に接続される充電器であって、交流電源から前記ブレーカを介して前記充電器に流れる三相交流電流のうちの第1交流電流を測定する第1電流センサと、前記三相交流電流のうちの第2交流電流を測定する第2電流センサと、前記三相交流電流を直流電流に変換して前記蓄電装置へ流す変換回路と、前記変換回路の動作を制御する制御部とを備える。
【0007】
前記制御部は、前記第1電流センサにより測定される第1交流電流と前記第2電流センサにより測定される第2交流電流との第1差が閾値以下である場合、前記ブレーカの遮断容量に対応する直流電流を上限として前記蓄電装置から要求される電流が前記変換回路から前記蓄電装置へ流れるように前記変換回路の動作を制御し、前記第1差が前記閾値より大きい状態が所定時間継続すると、前記ブレーカの遮断容量より小さい制限電流に対応する直流電流を上限として前記蓄電装置から要求される電流が前記変換回路から前記蓄電装置へ流れるように前記変換回路の動作を制御する。
【0008】
これにより、第1差が閾値より大きい状態が所定時間継続した場合、すなわち、第1及び第2電流センサの一方が故障していると判断される場合、第1及び第2交流電流をブレーカの遮断容量より小さい制限電流に制限することができる。そのため、第1及び第2電流センサの一方の故障を起因とする制御部の誤動作により第1及び第2交流電流が意図せずに増加しても、ブレーカの遮断容量より大きい第1及び第2交流電流がブレーカに流れてブレーカがトリップすることを抑制することができ、蓄電装置への電力供給を継続させることができる。
【0009】
また、上記充電器は、前記三相交流電流のうちの第3交流電流を測定する第3電流センサを備え、前記制御部は、前記第1差、前記第2電流センサにより測定される第2交流電流と前記第3電流センサにより測定される第3交流電流との第2差、及び前記第1電流センサにより測定される第1交流電流と前記第3電流センサにより測定される第3交流電流との第3差の何れも前記閾値以下である場合、前記ブレーカの遮断容量に対応する直流電流を上限として前記蓄電装置から要求される電流が前記変換回路から前記蓄電装置へ流れるように前記変換回路の動作を制御し、前記第1乃至第3差の少なくとも1つが前記閾値より大きい状態が前記所定時間継続すると、前記制限電流に対応する直流電流を上限として前記蓄電装置から要求される電流が前記変換回路から前記蓄電装置へ流れるように前記変換回路の動作を制御するように構成してもよい。
【0010】
これにより、第1乃至第3電流センサの少なくとも1つが故障していても、ブレーカがトリップすることを抑制することができ、蓄電装置への電力供給を継続させることができる。
【0011】
また、前記制御部は、前記第1差が前記閾値より大きい状態が前記所定時間継続すると、前記第1及び第2電流センサの一方が故障している旨を報知部によりユーザに報知するように構成してもよい。
【0012】
これにより、第1及び第2電流センサの一方が故障している場合、第1及び第2電流センサの一方が故障している旨をユーザに報知することができるため、充電器の早期回復を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、交流電源からブレーカを介して入力される交流電流を直流電流に変換して蓄電装置に流す充電器において、入力される交流電流を測定する電流センサが故障しても、ブレーカをトリップさせずに蓄電装置に継続して電流を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】変換回路及び蓄電装置の一例を示す図である。
【
図3】制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】電流センサにより測定される電流の一例を示す図である。
【
図5】実施形態の充電器の変形例1を示す図である。
【
図6】実施形態の充電器の変形例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0016】
【0017】
図1に示す充電器Chは、交流電源PacからブレーカBrを介して入力される交流電力を直流電力に変換して蓄電装置Psに供給する。
【0018】
交流電源Pacは、例えば、三相(R相、S相、T相)3線式の系統電源とする。交流電源PacからブレーカBrを介して充電器Chへ交流電力が供給されているとき、交流電源PacからブレーカBrを介して充電器Chへ流れる三相交流電流のうちの第1交流電流がR相に流れ、第2交流電流がT相に流れ、第3交流電流がS相に流れるものとする。なお、交流電源Pacの配電方式は、単相3線式などを採用してもよく、三相3線式に限定されない。
【0019】
ブレーカBrは、交流電源Pacと充電器Chとの間に接続され、第1~第3交流電流のうちの少なくとも1つの交流電流の最大値がブレーカBrの遮断容量IBrを超える状態が一定時間継続すると、交流電源Pacと充電器Chとを電気的に遮断(トリップ)し、交流電源Pacから充電器Chへの電力供給を停止させる。交流電源Pacから充電器Chへの電力供給が停止すると、充電器Chから蓄電装置Psへの電力供給も停止する。
【0020】
蓄電装置Psは、例えば、フォークリフトなどの産業車両や電気自動車などの車両に搭載され、産業車両や車両に搭載される負荷に電力を供給する。
【0021】
充電器Chは、変換回路Cnv、電流センサSi1(第1電流センサ)、電流センサSi2(第2電流センサ)、及び制御部Cntcを備える。
【0022】
変換回路Cnvは、交流電源PacからブレーカBrを介して入力される三相交流電流(第1~第3交流電流)を直流電流に変換して蓄電装置Psへ流す。
【0023】
電流センサSi1は、例えば、ホール素子により構成され、R相に流れる第1交流電流を測定し、その測定した第1交流電流を制御部Cntcに送る。
【0024】
電流センサSi2は、例えば、ホール素子により構成され、T相に流れる第2交流電流を測定し、その測定した第2交流電流を制御部Cntcに送る。なお、電流センサSi1、Si2により測定される交流電流は、第1及び第2交流電流に限定されない。例えば、電流センサSi1によりR相に流れる第1交流電流が測定されるとともに、電流センサSi2によりS相に流れる第3交流電流が測定されてもよい。また、電流センサSi1によりS相に流れる第3交流電流が測定されるとともに、電流センサSi2によりT相に流れる第2交流電流が測定されてもよい。
【0025】
制御部Cntcは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、または、プログラマブルなデバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device))などにより構成される。
【0026】
<電流センサSi1、Si2の故障判断>
制御部Cntcは、電流センサSi1により測定される第1交流電流と電流センサSi2により測定される第2交流電流との差ΔI1(第1差)が閾値ΔIth以下である場合、電流センサSi1、Si2が何れも故障していない(電流センサSi1、Si2が何れも正常である)と判断する。
【0027】
また、制御部Cntcは、差ΔI1が閾値ΔIthより大きい状態が所定時間t継続する場合、電流センサSi1、Si2の一方が故障していると判断する。
【0028】
なお、差ΔI1及び所定時間tは、例えば、バッテリBの充電開始時における三相交流電流の単位時間あたりの増加率や電流センサSi1、Si2における測定誤差などが考慮されて予め求められる値とし、実験やシミュレーションにより求められる値とする。
【0029】
<電流センサSi1、Si2が故障していないときの変換回路Cnvの動作制御>
制御部Cntcは、差ΔI1が閾値ΔIth以下である場合で、かつ、電流センサSi1により測定される第1交流電流の最大値I1及び電流センサSi2により測定される第2交流電流の最大値I2がブレーカBrの遮断容量IBrより小さい場合、蓄電装置Psから送られてくる電流指令値に対応する直流電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0030】
例えば、制御部Cntcは、差ΔI1が閾値ΔIth以下である場合で、かつ、最大値I1、I2がブレーカBrの遮断容量IBrより小さい場合において、電流指令値が一定であると、スイッチSWの駆動信号のデューティ比を一定にすることで三相交流電流の最大値を一定にさせ、充電器Chから蓄電装置Psに流れる直流電流を一定にさせる。
【0031】
また、制御部Cntcは、差ΔI1が閾値ΔIth以下である場合で、かつ、最大値I1、I2がブレーカBrの遮断容量IBrより小さい場合において、電流指令値が上昇すると、電流指令値の上昇に伴ってスイッチSWの駆動信号のデューティ比を増加させることで三相交流電流の最大値を上昇させ、変換回路Cnvから蓄電装置Psに流れる直流電流を上昇させる。
【0032】
また、制御部Cntcは、差ΔI1が閾値ΔIth以下である場合で、かつ、最大値I1、I2がブレーカBrの遮断容量IBrより小さい場合において、電流指令値が低下すると、電流指令値の低下に伴ってスイッチSWの駆動信号のデューティ比を減少させることで三相交流電流の最大値を低下させ、変換回路Cnvから蓄電装置Psに流れる直流電流を低下させる。
【0033】
すなわち、制御部Cntcは、電流センサSi1、Si2が故障していない場合で、かつ、ブレーカBrに流れる三相交流電流の最大値がブレーカBrの遮断容量IBrより小さい場合、蓄電装置Psから要求される電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0034】
また、制御部Cntcは、差ΔI1が閾値ΔIth以下である場合で、かつ、電流センサSi1により測定される第1交流電流の最大値I1または電流センサSi2により測定される第2交流電流の最大値I2がブレーカBrの遮断容量IBr以上である場合、三相交流電流の最大値がブレーカBrの遮断容量IBrと等しいまたは略等しいときの電流指令値に対応する直流電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0035】
すなわち、制御部Cntcは、電流センサSi1、Si2が故障していない場合で、かつ、ブレーカBrに流れる三相交流電流の最大値がブレーカBrの遮断容量IBr以上である場合、遮断容量IBrに対応する直流電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0036】
このように、制御部Cntcは、電流センサSi1、Si2が故障していない場合、ブレーカBrの遮断容量IBrに対応する直流電流を上限として蓄電装置Psから要求される電流が変換回路Cnvから蓄電装置Psへ流れるように変換回路Cnvの動作を制御する。これにより、ブレーカBrがトリップすることを抑制することができる。
【0037】
<電流センサSi1、Si2の一方が故障しているときの変換回路Cnvの動作制御>
制御部Cntcは、差ΔI1が閾値ΔIthより大きい状態が所定時間t継続する場合で、かつ、電流センサSi1により測定される第1交流電流の最大値I1または電流センサSi2により測定される第2交流電流の最大値I2が制限電流ILiより小さい場合、蓄電装置Psから送られてくる電流指令値に対応する直流電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。なお、制限電流ILiは、ブレーカBrの遮断容量IBrより小さい値とする。例えば、制限電流ILiは、ブレーカBrの遮断容量IBrに対して所定の割合(80[%]など)の値とする。
【0038】
例えば、制御部Cntcは、差ΔI1が閾値ΔIthより大きい状態が所定時間t継続する場合で、かつ、最大値I1、I2が制限電流ILiより小さい場合において、電流指令値が一定であると、スイッチSWの駆動信号のデューティ比を一定にすることで三相交流電流の最大値を一定にさせ、充電器Chから蓄電装置Psに流れる直流電流を一定にさせる。
【0039】
また、制御部Cntcは、差ΔI1が閾値ΔIthより大きい状態が所定時間t継続する場合で、かつ、最大値I1、I2が制限電流ILiより小さい場合において、電流指令値が上昇すると、電流指令値の上昇に伴ってスイッチSWの駆動信号のデューティ比を増加させることで三相交流電流の最大値を上昇させ、変換回路Cnvから蓄電装置Psに流れる直流電流を上昇させる。
【0040】
また、制御部Cntcは、差ΔI1が閾値ΔIthより大きい状態が所定時間t継続する場合で、かつ、最大値I1、I2が制限電流ILiより小さい場合において、電流指令値が低下すると、電流指令値の低下に伴ってスイッチSWの駆動信号のデューティ比を減少させることで三相交流電流の最大値を低下させ、変換回路Cnvから蓄電装置Psに流れる直流電流を低下させる。
【0041】
すなわち、制御部Cntcは、電流センサSi1、Si2の一方が故障している場合で、かつ、ブレーカBrに流れる三相交流電流の最大値が制限電流ILiより小さい場合、蓄電装置Psから要求される電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0042】
また、制御部Cntcは、差ΔI1が閾値ΔIthより大きい状態が所定時間t継続する場合で、かつ、電流センサSi1により測定される第1交流電流の最大値I1または電流センサSi2により測定される第2交流電流の最大値I2が制限電流ILi以上である場合、三相交流電流の最大値が制限電流ILiと等しいまたは略等しいときの電流指令値に対応する直流電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0043】
すなわち、制御部Cntcは、電流センサSi1、Si2の一方が故障している場合で、かつ、ブレーカBrに流れる三相交流電流の最大値が制限電流ILi以上である場合、制限電流ILiに対応する直流電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0044】
このように、制御部Cntcは、電流センサSi1、Si2の一方が故障している場合、制限電流ILiに対応する直流電流を上限として蓄電装置Psから要求される電流が変換回路Cnvから蓄電装置Psへ流れるように変換回路Cnvの動作を制御する。これにより、三相交流電流の最大値が制限電流ILiを超えることを抑制することができるため、電流センサSi1、Si2の一方の故障を起因とする制御部Cntcの誤動作により三相交流電流の最大値が意図せずに増加しても、三相交流電流の最大値がブレーカBrの遮断容量IBrを超えることを抑制することができ、ブレーカBrがトリップすることを抑制することができる。
【0045】
図2は、変換回路Cnv及び蓄電装置Psの一例を示す図である。
【0046】
変換回路Cnvは、ダイオードD1~D8と、コンデンサC1、C2と、トランスTrと、スイッチSWと、インダクタLとを備える。なお、
図2においてスイッチSWは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)により構成されているが、MOSFETに限定されない。また、変換回路Cnvは、
図2に示す回路構成に限定されず、例えば、コンデンサC2の後段に昇圧回路や降圧回路が設けられていてもよい。
【0047】
ダイオードD1のアノード端子とダイオードD2のカソード端子との接続点が交流電源PacのR相に接続され、ダイオードD3のアノード端子とダイオードD4のカソード端子との接続点が交流電源PacのS相に接続され、ダイオードD5のアノード端子とダイオードD6のカソード端子との接続点が交流電源PacのT相に接続されている。ダイオードD1、D3、D5のそれぞれのカソード端子がコンデンサC1の一方の端子に接続され、ダイオードD2、D4、D6のそれぞれのアノード端子がコンデンサC1の他方の端子に接続されている。
【0048】
また、トランスTrの1次コイルLpの一方の端子がコンデンサC1の一方の端子に接続され、1次コイルLpの他方の端子がスイッチSWのドレイン端子に接続され、スイッチSWのソース端子がコンデンサC1の他方の端子に接続されている。トランスTrの2次コイルLsの一方の端子がダイオードD7のアノード端子に接続され、ダイオードD7、D8のそれぞれのカソード端子がインダクタLを介してコンデンサC2の一方の端子に接続されている。また、2次コイルLsの他方の端子がダイオードD8のアノード端子及びコンデンサC2の他方の端子に接続されている。
【0049】
変換回路Cnvに入力される三相交流電力は、ダイオードD1~D6により整流された後、コンデンサC1により平滑される。また、スイッチSWが繰り返しオン、オフすることにより、平滑された電力がトランスTrの1次コイルLpから2次コイルLsに伝わり、ダイオードD7、D8により整流された後、コンデンサC2により平滑される。すなわち、ダイオードD1~D6からなる整流回路、コンデンサC1からなる平滑回路、並びに、スイッチSW、トランスTr、ダイオードD7、D8、インダクタL、及びコンデンサC2からなるフォワードコンバータにより、三相交流電力が直流電力に変換される。なお、フォワードコンバータを、フライバックコンバータまたはフルブリッジコンバータなどに替えてもよい。
【0050】
蓄電装置Psは、バッテリBと、電圧センサSvbと、電流センサSibと、制御部Cntbとを備える。
【0051】
バッテリBは、例えば、リチウムイオン電池などの充放電可能な二次電池により構成される。なお、不図示の充電ケーブルを介して充電器Chと蓄電装置Psとが互いに接続されると、バッテリBのプラス端子が変換回路CnvのコンデンサC2の一方の端子に接続され、バッテリBのマイナス端子がコンデンサC2の他方の端子に接続され、変換回路CnvからバッテリBに電力供給可能な状態になる。この状態において、変換回路CnvからバッテリBに電力が供給されると、バッテリBが充電され、バッテリBの充電率(バッテリBの満充電容量に対する残容量の割合)や電圧が増加する。
【0052】
電圧センサSvbは、例えば、分圧抵抗などにより構成され、バッテリBの電圧を測定し、その測定した電圧を制御部Cntbに送る。
【0053】
電流センサSibは、例えば、ホール素子などにより構成され、変換回路CnvからバッテリBに流れる電流を測定し、その測定した電流を制御部Cntbに送る。
【0054】
制御部Cntbは、例えば、CPUまたはプログラマブルなデバイスなどにより構成される。なお、不図示の充電ケーブルを介して充電器Chと蓄電装置Psとが互いに接続されると、制御部Cntbと制御部Cntcとの間で通信可能な状態になる。
【0055】
また、制御部Cntbは、電圧センサSvbにより測定される電圧及び電流センサSibにより測定される電流に基づく電流指令値を制御部Cntcに送信する。例えば、制御部Cntbは、バッテリBの充電開始時から電圧センサSvbにより測定される電圧が所定電圧に上昇するまで、予め決められた一定の電流指令値を制御部Cntcに送信する。また、制御部Cntbは、電圧センサSvbにより測定される電圧が所定電圧まで上昇した後、電圧センサSvbにより測定される電圧を所定電圧に一致させたまま電流センサSibにより測定される電流が充電終了電流まで徐々に低下するように電流指令値を徐々に低下させる。
【0056】
図3は、制御部Cntcの動作の一例を示すフローチャートである。
【0057】
まず、制御部Cntcは、蓄電装置Psの制御部Cntbから送られてくるバッテリBの充電開始指示を受信すると(ステップS1:Yes)、変換回路Cnvの動作制御を開始させるとともに、電流センサSi1により測定される第1交流電流と電流センサSi2により測定される第2交流電流との差ΔIを算出する(ステップS2)。
【0058】
次に、制御部Cntcは、差ΔIが閾値ΔIth以下であると判断すると(ステップS3:Yes)、制御部Cntbから送られてくるバッテリBの充電終了指示を受信するまで、三相交流電流の最大値がブレーカBrの遮断容量IBrと等しいまたは略等しいときの電流指令値に対応する直流電流を上限として、電流指令値に対応する直流電流が変換回路CnvからバッテリBに流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する(ステップS4、ステップS5:No)。
【0059】
一方、制御部Cntcは、差ΔIが閾値ΔIthより大きいと判断してから所定時間tが経過するまで差ΔIが閾値ΔIthより大きい状態のままであると(ステップS3:No、ステップS6:Yes)、バッテリBの充電終了指示を受信するまで、三相交流電流の最大値が制限電流ILiに対応する直流電流を上限として、電流指令値に対応する直流電流が変換回路CnvからバッテリBに流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する(ステップS7、ステップS8:No)。
【0060】
そして、制御部Cntcは、バッテリBの充電終了指示を受信すると(ステップS5:YesまたはステップS8:Yes)、変換回路Cnvの動作制御を停止させる。
【0061】
図4は、電流センサSi1、Si2により測定される電流の一例を示す図である。なお、
図4(a)及び
図4(b)に示す二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は電流を示している。また、
図4(a)及び
図4(b)に示す実線は、バッテリBの充電開始時Tsから充電終了時Teまでの間において、故障していない電流センサSi1により測定される第1交流電流の最大値I1を示している。また、
図4(a)に示す破線は、バッテリBの充電開始時Tsから充電終了時Teまでの間において、故障していない電流センサSi2により測定される第2交流電流の最大値I2を示している。また、
図4(b)に示す破線は、バッテリBの充電開始時Tsから充電終了時Teまでの間において、故障している電流センサSi2により測定される第2交流電流の最大値I2を示している。
【0062】
図4(a)に示す例では、バッテリBの充電開始時Tsから充電終了時Teまでの間において、最大値I1と最大値I2とが互いに略同じ値であり、最大値I1と最大値I2との差ΔIは閾値ΔIth以下になる。そのため、制御部Cntcは、充電開始時Tsから充電終了時Teまでの間において、三相交流電流の最大値がブレーカBrの遮断容量IBrを超えないように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0063】
一方、
図4(b)に示す例では、バッテリBの充電開始後、時刻T1において、差ΔIが閾値ΔIthより大きくなり、時刻T1から所定時間t経過後の時刻T2まで差ΔIが閾値ΔIthより大きい状態が続く。そのため、制御部Cntcは、時刻T2から充電終了時Teまでの間において、三相交流電流の最大値が制限電流ILiを超えないように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0064】
実施形態の充電器Chによれば、電流センサSi1、Si2の一方が故障していると判断すると、三相交流電流の最大値をブレーカBrの遮断容量IBrより小さい制限電流ILi以下に制限することができるため、電流センサSi1、Si2の一方の故障を起因とする制御部Cntcの誤動作により三相交流電流の最大値が意図せずに増加しても、三相交流電流の最大値がブレーカBrの遮断容量IBrを超えることを抑制することができる。これにより、電流センサSi1、Si2の一方が故障していても、ブレーカBrのトリップを抑制することができるため、バッテリBへの電力供給が停止することを抑制することができ、バッテリBの充電を継続させることができる。
【0065】
また、実施形態の充電器Chによれば、電流センサSi1、Si2の一方が故障していると判断するときのみ三相交流電流の最大値を制限電流ILi以下に制限し、それ以外のときは三相交流電流の最大値をブレーカBrの遮断容量IBr以下に制限することができるため、電流センサSi1、Si2が故障しているか否かに関わらず、常に三相交流電流の最大値を制限電流ILi以下に制限する場合に比べて、バッテリBへ流れる直流電流が電流指令値より小さい値に制限されてしまう頻度を低減することができ、バッテリBが満充電状態になるまでにかかる時間を短くすることができる。
【0066】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0067】
<変形例1>
図5は、実施形態の充電器の変形例1を示す図である。なお、
図5において、
図1に示す構成と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
図5に示す充電器Chにおいて、
図1に示す充電器Chと異なる点は、S相に流れる第3交流電流を測定する電流センサSi3(第3電流センサ)をさらに備えている点である。なお、電流センサSi3は、例えば、ホール素子により構成される。
【0069】
<電流センサSi1~Si3の故障判断>
制御部Cntcは、電流センサSi1により測定される第1交流電流と電流センサSi2により測定される第2交流電流との差ΔI1(第1差)を求める。また、制御部Cntcは、電流センサSi2により測定される第2交流電流と電流センサSi3により測定される第3交流電流との差ΔI2(第2差)を求める。また、制御部Cntcは、電流センサSi1により測定される第1交流電流と電流センサSi3により測定される第3交流電流との差ΔI3(第3差)を求める。
【0070】
また、制御部Cntcは、差ΔI1~差ΔI3の何れも閾値ΔIth以下である場合、電流センサSi1~Si3が何れも故障していないと判断する。
【0071】
また、制御部Cntcは、差ΔI1~差ΔI3の少なくとも1つが閾値ΔIthより大きい状態が所定時間t継続する場合、電流センサSi1~Si3の少なくとも1つが故障していると判断する。
【0072】
<電流センサSi1~Si3が故障していないときの変換回路Cnvの動作制御>
制御部Cntcは、差ΔI1~差ΔI3の何れも閾値ΔIth以下である場合で、かつ、電流センサSi1により測定される第1交流電流の最大値I1、電流センサSi2により測定される第2交流電流の最大値I2、及び電流センサSi3により測定される第3交流電流の最大値I3が何れもブレーカBrの遮断容量IBrより小さい場合、蓄電装置Psから送られてくる電流指令値に対応する直流電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0073】
すなわち、制御部Cntcは、電流センサSi1~Si3が故障していない場合で、かつ、ブレーカBrに流れる三相交流電流の最大値がブレーカBrの遮断容量IBrより小さい場合、蓄電装置Psから要求される電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0074】
また、制御部Cntcは、差ΔI1~差ΔI3の何れも閾値ΔIth以下である場合で、かつ、電流センサSi1により測定される第1交流電流の最大値I1、電流センサSi2により測定される第2交流電流の最大値I2、及び電流センサSi3により測定される第3交流電流の最大値I3のうちの少なくとも1つがブレーカBrの遮断容量IBr以上である場合、三相交流電流の最大値がブレーカBrの遮断容量IBrと等しいまたは略等しいときの電流指令値に対応する直流電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0075】
すなわち、制御部Cntcは、電流センサSi1~Si3が故障していない場合で、かつ、ブレーカBrに流れる三相交流電流の最大値がブレーカBrの遮断容量IBr以上である場合、遮断容量IBrに対応する直流電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0076】
このように、
図5に示す制御部Cntcは、電流センサSi1~Si3が故障していない場合、ブレーカBrの遮断容量IBrに対応する直流電流を上限として蓄電装置Psから要求される電流が変換回路Cnvから蓄電装置Psへ流れるように変換回路Cnvの動作を制御する。これにより、ブレーカBrがトリップすることを抑制することができる。
【0077】
<電流センサSi1~Si3のうちの少なくとも1つが故障しているときの変換回路Cnvの動作制御>
制御部Cntcは、差ΔI1~差ΔI3の少なくとも1つが閾値ΔIthより大きい状態が所定時間t継続する場合で、かつ、電流センサSi1により測定される第1交流電流の最大値I1、電流センサSi2により測定される第2交流電流の最大値I2、及び電流センサSi3により測定される第3交流電流の最大値I3が何れも制限電流ILiより小さい場合、蓄電装置Psから送られてくる電流指令値に対応する直流電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0078】
すなわち、制御部Cntcは、電流センサSi1~Si3の少なくとも1つが故障している場合で、かつ、ブレーカBrに流れる三相交流電流の最大値が制限電流ILiより小さい場合、蓄電装置Psから要求される電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0079】
また、制御部Cntcは、差ΔI1~差ΔI3の少なくとも1つが閾値ΔIthより大きい状態が所定時間t継続する場合で、かつ、電流センサSi1により測定される第1交流電流の最大値I1、電流センサSi2により測定される第2交流電流の最大値I2、及び電流センサSi3により測定される第3交流電流の最大値I3のうちの少なくとも1つが制限電流ILi以上である場合、三相交流電流の最大値が制限電流ILiと等しいまたは略等しいときの電流指令値に対応する直流電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0080】
すなわち、制御部Cntcは、電流センサSi1~Si3の少なくとも1つが故障している場合で、かつ、ブレーカBrに流れる三相交流電流の最大値が制限電流ILi以上である場合、制限電流ILiに対応する直流電流が蓄電装置Psへ流れるように、変換回路Cnvの動作を制御する。
【0081】
このように、
図5に示す制御部Cntcは、電流センサSi1~Si3の少なくとも1つが故障している場合、制限電流ILiに対応する直流電流を上限として蓄電装置Psから要求される電流が変換回路Cnvから蓄電装置Psへ流れるように変換回路Cnvの動作を制御する。これにより、三相交流電流の最大値が制限電流ILiを超えることを抑制することができるため、電流センサSi1~Si3の少なくとも1つの故障を起因とする制御部Cntcの誤動作により三相交流電流の最大値が意図せずに増加しても、三相交流電流の最大値がブレーカBrの遮断容量IBrを超えることを抑制することができ、ブレーカBrがトリップすることを抑制することができる。
【0082】
<変形例2>
図6は、実施形態の充電器の変形例2を示す図である。なお、
図6において、
図1に示す構成と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0083】
図6に示す充電器Chにおいて、
図1に示す充電器Chと異なる点は、電流センサSi1、Si2の一方が故障している旨をユーザに報知する報知部Infをさらに備えている点である。
【0084】
報知部Infは、例えば、スピーカ、ディスプレイ、ライトなどにより構成される。
【0085】
制御部Cntcは、電流センサSi1、Si2の一方が故障していると判断すると、その旨を報知部Infによりユーザに報知する。
【0086】
図6に示す充電器Chによれば、
図1に示す充電器Chと同様に、電流センサSi1、Si2の一方が故障していても、ブレーカBrのトリップを抑制することができるため、バッテリBへの電力供給が停止することを抑制することができ、バッテリBの充電を継続させることができる。
【0087】
また、
図6に示す充電器Chによれば、電流センサSi1、Si2の一方が故障していると判断すると、電流センサSi1、Si2の一方が故障している旨をユーザに報知することができるため、充電器Chの早期回復を図ることができる。
【0088】
なお、報知部Infは、
図5に示す充電器Chに備えられていてもよい。この場合、制御部Cntcは、電流センサSi1~Si3の少なくとも1つが故障していると判断すると、その旨を報知部Infによりユーザに報知する。
【符号の説明】
【0089】
Pac 交流電源
Br ブレーカ
Ch 充電器
Ps 蓄電装置
Si1 電流センサ
Si2 電流センサ
Si3 電流センサ
Cnv 変換回路
Cntc 制御部
Inf 報知部
B バッテリ
Sib 電流センサ
Svb 電圧センサ
Cntb 制御部