(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073061
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】検出装置および検出システム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/50 20060101AFI20240522BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240522BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20240522BHJP
G01S 13/34 20060101ALN20240522BHJP
【FI】
G01S13/50
A61B5/11 110
A61B5/0245
G01S13/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184055
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】FCLコンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】江端 員好
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
5J070
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA14
4C017AC20
4C017AC40
4C017BB12
4C017BC01
4C017BC11
4C017BC16
4C038VA04
4C038VB32
4C038VC20
5J070AB17
5J070AB24
5J070AC06
5J070AC20
5J070AD05
5J070AE09
5J070AF03
5J070AH31
5J070AH35
5J070AH40
5J070AK22
5J070BA01
5J070BD01
(57)【要約】
【課題】検出精度を向上させることが可能な検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置100は、第1電磁波を第1範囲51aに送信し、前記第1範囲において反射した第1電磁波を受信する第1センサと、第2電磁波を前記第1範囲と異なる第2範囲51bに送信し、前記第2範囲において反射した第2電磁波を受信する第2センサと、前記第1センサが出力する第1信号と前記第2センサが出力する第2信号とに基づき、前記第1電磁波および前記第2電磁波を反射した対象物に関する情報を算出する処理部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電磁波を第1範囲に送信し、前記第1範囲において反射した第1電磁波を受信する第1センサと、
第2電磁波を前記第1範囲と異なる第2範囲に送信し、前記第2範囲において反射した第2電磁波を受信する第2センサと、
前記第1センサが出力する第1信号と前記第2センサが出力する第2信号とに基づき、前記第1電磁波および前記第2電磁波を反射した対象物に関する情報を算出する処理部と、
を備える検出装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記第1信号をフーリエ変換した第3信号と、前記第2信号をフーリエ変換した第4信号と、に基づき、前記情報を算出する請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記第3信号の周波数スペクトルと前記第4信号の周波数スペクトルとを比較し、比較結果に基づき、前記情報を算出する請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記第1信号と前記第2信号との差に基づき、前記情報を算出する請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記第1電磁波を送信する第1送信アンテナと、前記反射された第1電磁波を受信する第1受信アンテナと、前記第2電磁波を送信する第2送信アンテナと、前記反射された第2電磁波を受信する第2受信アンテナと、を搭載する基体と、
前記基体の振動を検出する第3センサと、
を備え、
前記処理部は、前記第3センサが出力する第5信号に基づき前記情報を算出する請求項1から4のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の検出装置を備え、空間内の生体に対して前記第1電磁波および前記第2電磁波を送信する検出システムであって、
前記第1範囲が前記第2範囲より前記生体の心臓の近くになるように、前記検出装置を取り付ける取り付け部材と、
を備える検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置および検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭乗する搭乗者等の生体に関する情報を検出する装置が知られている。生体に関する情報を検出するセンサとして、レーダーセンサを用いる場合に、レーダーセンサの出力信号と振動センサの出力信号とを用い生体に関する情報を検出することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/075467号
【特許文献2】特表2020-531063号公報
【特許文献3】特開2022-25732号公報
【特許文献4】特開2020-74805号公報
【特許文献5】特開2017-131445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、レーダーセンサを用いて車両等の乗り物に搭乗する搭乗者等に関する情報を検出する場合、レーダーセンサの出力信号と車両等に設けられた振動センサの出力信号とを併用することにより、車両等の振動に起因するノイズを一定程度除去することができる。しかしながら、この方法では、車両等の振動を検出することはできても、車両等の振動の影響を受ける搭乗者等の振動を正確に検出することはできない。このため、ノイズを十分に除去することができず、搭乗者等に関する情報の検出精度が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1電磁波を第1範囲に送信し、前記第1範囲において反射した第1電磁波を受信する第1センサと、第2電磁波を前記第1範囲と異なる第2範囲に送信し、前記第2範囲において反射した第2電磁波を受信する第2センサと、前記第1センサが出力する第1信号と前記第2センサが出力する第2信号とに基づき、前記第1電磁波および前記第2電磁波を反射した対象物に関する情報を算出する処理部と、を備える検出装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1に係る検出装置のブロック図である。
【
図3】実施例1に係る検出装置を使用するときの図である。
【
図4】信号S1aおよびS1bの例を示す時間に対する電圧を示す図である。
【
図5】信号S1aおよびS1bの例を示す時間に対する電圧を示す図である。
【
図6】信号S1aのスペクトルおよびフィルタの通過特性を示す図である。
【
図7】実施例1における処理部が行う処理の機能ブロック図である。
【
図8】信号S3a、S3bおよびS3cのスペクトルを示す図である。
【
図9】実施例1における処理部が行う処理の機能ブロック図の別の例である。
【
図10】検出装置を車両に取り付ける例を示す図である。
【
図11】検出装置を車両に取り付ける例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ミリ波レーダーなどを用い、生体情報を検出するレーダーセンサは、生体に接触せずに生体情報を検出できるため、身体にケーブルまたはセンサ等を装着しなくてもよく、身体への負担が小さい。しかし、例えば、自動車、列車および飛行機などの乗り物内のような振動が多い環境において、レーダーセンサを用いて生体情報を検出するような場合、生体振動以外の例えば乗り物に起因する振動による影響が大きい。このため、レーダーセンサを用いて搭乗者の生体振動を検出しようとしても、搭乗者が乗り物の振動により振動する。これにより、搭乗者の生体とレーダーセンサとの距離が乗り物の振動により変化してしまう。このため、生体振動の検出が難しい。特許文献1、2のように、振動センサなどで生体振動以外の振動を検出する場合、振動センサが検出する振動と、レーダーセンサが検出する振動とは異なっており、レーダーセンサの出力信号から生体振動以外の信号を精度よく取り除くことは難しい。
【0010】
以下の実施例では、レーダーセンサを複数設け、複数のレーダーセンサが生体の異なる範囲の振動を検出し、複数のレーダーセンサから出力される信号に基づき、生体情報を算出する。これにより、生体振動以外の振動を精度よく取り除くことができる。
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施例を説明する。
【実施例0012】
図1は、実施例1に係る検出装置のブロック図である。検出装置100は、レーダーセンサ部11a、11b、振動センサ部11cおよび処理部30を備えている。レーダーセンサ部11a(および11b)は、送信用のアンテナ12a(および12b)、受信用のアンテナ13a(および13b)、高周波回路16a(および16b)、増幅器18a(および18b)、フィルタ20a(および20b)並びにA/D(Analog/Digital)変換器22a(および22b)を備えている。振動センサ部11cは、センサ21およびA/D変換器22cを備えている。
【0013】
レーダーセンサ部11a(および11b)において、高周波回路16a(および16b)は、発振器14a(および14b)並びにミキサ15a(および15b)を備えている。なお、高周波回路16a(および16b)は、他に増幅器などを備えるが説明を省略する。アンテナ12a(および12b)は、発振器14aが生成した信号56a(および56b)を送信する。信号56aおよび56bは、電磁波であり、例えばマイクロ波またはミリ波である。信号56aおよび56bの周波数は、例えば10GHz~120GHzであり、一例として24GHz付近である。アンテナ13a(および13b)は、信号56a(および56b)が生体に照射され、反射された信号58a(および58b)を受信する。ミキサ15a(および15b)は、信号56aと58a(および56bと58b)とをミキシングし、変換された信号を出力する。ミキサ15a(および15b)が出力する信号S0a(およびS0b)の周波数は、信号56a(および56b)の周波数と58a(および58b)の周波数との差に相当する。これにより、信号S0a(およびS0b)は、信号56a(および56b)が照射された範囲の動きに相当するアナログ信号となる。
【0014】
増幅器18a(および18b)は、信号S0a(およびS0b)を増幅する。フィルタ20a(および20b)は、ローパスフィルタであり、増幅された信号S0a(およびS0b)内のうち、例えば、生体振動の信号より周波数の高い信号を濾過する。フィルタ20aおよび20bは、アナログフィルタであり、抑圧すべき周波数の信号を完全に取り除くことはできない。しかし、フィルタ20aおよび20bを設けることで、A/D変換器22aおよび22bにおける繰り返しノイズを抑制できる。また、信号S1aおよびS1bにおいて、周波数帯域を制限しておくことで、処理部30の処理の負荷が低減される。フィルタ20aおよび20bは、デジタルフィルタでもよい。A/D変換器22a(および22b)は、フィルタリングされた信号S0a(およびS0b)をデジタル信号である信号S1a(およびS1b)に変換する。
【0015】
レーダーセンサ部11aと11bとの構成はほぼ同じであることが好ましい。すなわち、信号56aと56bとの出力電力は実質的に同じであり、アンテナ12aからフィルタ20aまでの信号のゲインと、アンテナ12bからフィルタ20bまでの信号のゲインと、は実質的に同じであることが好ましい。レーダーセンサ部11aと11bとでゲインが異なる場合には、予めゲインの違いをキャリブレーションしておくことが好ましい。
【0016】
センサ21は、振動センサであり、例えば基板の振動を検出し、信号S0cを出力する。A/D変換器22cは、信号S0cをデジタル信号である信号S1cに変換する。センサ21とA/D変換器22cとの間には、増幅器およびフィルタの少なくとも一方が設けられていてもよい。
【0017】
処理部30は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはマイクロコンピュータ等のプロセッサであり、ソフトウエアと協働し、検出の処理を実行する。メモリ24は、不揮発性メモリまたは揮発性メモリであり、検出を行うための設定条件、情報を算出する途中のデータおよびプログラム等を記憶する。出力装置26は、処理部30の処理の結果を外部装置に出力する。外部装置は、例えば画像を表示する表示装置、音を出力する音声装置、処理部30とは別のプロセッサである。外部装置は、処理部30と同じプロセッサ内の上位のアプリケーションでもよい。
【0018】
図2は、実施例1に係る検出装置の平面図である。基板10の表面の法線方向をZ方向、基板10の辺方向をX方向およびY方向とする。
図2に示すように、検出装置100では、基板10にアンテナ12a、13a、12b、13bおよびセンサ21が設けられている。アンテナ12a、13a、12bおよび13bは、例えば各々Y方向に配列する4個のアンテナを有している。アンテナ12a、13a、12bおよび13bは、各々1個でもよいし、各々アレイ状に配置されたアンテナでもよい。アンテナを複数配置することで、アンテナの指向性を高めることができる。アンテナとしては、例えばパッチアンテナを用いることができる。
【0019】
センサ21は、例えば加速度計であり、基板10の振動を検出する。高周波回路16aおよび16b、増幅器18aおよび18b、フィルタ20aおよび20b、A/D変換器22a、22bおよび22c、処理部30、メモリ24および出力装置26は、基板10の表(+Z)側または裏(-Z)側に設けられていてもよい。
【0020】
図3は、実施例1に係る検出装置を使用するときの図である。
図3では、人体等の生体50と心臓52を頭の方から見た断面を図示している。アンテナ12aおよび13aは、基板10の+Z面より-X側に傾斜している。これにより、アンテナ12aが送信する信号56aの中心線54aは、Z方向より-X側に傾く。よって、信号56aは、生体50のうち心臓52のある-X側の範囲51a(左胸)に照射される。アンテナ13aは、範囲51aにおいて反射された信号58aを受信する。アンテナ12bおよび13bは、基板10の+Z面より+X側に傾斜している。これにより、アンテナ12bが送信する信号56bの中心線54bは、Z方向より+X側に傾く。よって、信号56bは、生体50のうち心臓52のある+X側の範囲51b(右胸)に照射される。アンテナ13bは、範囲51bにおいて反射された信号58bを受信する。なお、アンテナ12a、13a、12bおよび13bを傾斜させなくても、アンテナ12a、13a、12bおよび13bを基板10の主平面に実装し、各々のアンテナとして複数のアンテナパターンを適宜配置することより、所望の指向性を得ることができる。
【0021】
図1のように、信号56aと58aとをミキシングすることで、高周波回路16aから出力される信号S0aは、生体50の範囲51aの動きに関する情報となる。範囲51aは心臓52に近いため、信号S0aは、心拍の振動を含む信号となる。信号56bと58bとをミキシングすることで、高周波回路16bから出力される信号S0bは、生体50の範囲51bの動きに関する情報となる。範囲51bは心臓52から遠いため、信号S0bは心拍の振動を含まない、または心拍の振動の小さい信号となる。
【0022】
信号56aと56bとの周波数は同じでもよいが、信号58aがアンテナ13bにより受信され、信号58bがアンテナ13aにより受信されるなどして混信が生じる可能性がある場合は、信号56aと56bとの周波数を、振動の周波数以上異ならせることが好ましい。具体的には、信号56aと56bとの周波数は、数十MHz以上離れていることが好ましい。
【0023】
図4(a)および
図4(b)は、信号S1aおよびS1bの例を示す時間に対する電圧を示す図である。
図4(a)と
図4(b)とは、同じ期間T1の信号を示している。信号S1aおよびS1bでは、フィルタ20aおよび20bにより、生体振動より周波数の高い信号が抑圧されている。
図4(a)に示すように、信号S1aには、信号40と41とが含まれる。信号40は、主に心拍の振動に関する信号である。信号41は、主に心拍以外の生体50(例えば呼吸など)の振動および生体以外(例えば車両など)の振動である。
図4(b)に示すように、信号S1bには、信号40はほとんど含まれず、ほとんどが信号41である。
【0024】
図5(a)および
図5(b)は、信号S1aおよびS1bの例を示す時間に対する電圧を示す図である。
図5(a)および
図5(b)は、
図4(a)および
図4(b)に比べ、アンテナの指向性が低い場合の例である。
図5(a)に示すように、
図4(a)と同様に、信号S1aには、心拍の振動に関する信号40と心拍以外の振動に関する信号41が含まれる。
図5(b)に示すように、信号S1bには、信号41以外に、心拍の振動と心拍以外の振動に関する信号40aが含まれる。このように、アンテナの指向性が低い場合には、信号S1bに心拍の振動に関する信号が含まれる場合もある。
【0025】
図6は、信号S1aのスペクトルおよびフィルタ20aの通過特性を示す図である。信号S1aのスペクトルは信号S1aをフーリエ変換した後の信号に相当する。縦方向に伸びる直線の横軸の位置はスペクトルの周波数を示し、縦方向の高さは周波数スペクトルの強度を示す。信号42aは太実線、信号43aは太点線、信号44aは細実線を用い示している。フィルタ20aの通過特性45は、横軸は周波数であり、縦軸はフィルタ20aによる減衰量に対応する。すなわち、通過特性45が小さい周波数の信号では、フィルタ20aにより信号の減衰量が大きいことを示している。フィルタ20aとしてアナログフィルタを用いる例である。アナログフィルタでは、遮断周波数における急峻性が低いため、10Hz以上の周波数の信号も通過し、周波数が高くなると減衰量が大きくなる。
【0026】
信号42aは心拍の振動に関する信号である。信号43aは呼吸の振動に関する信号である。信号44aは、生体以外の振動に関する信号であり、例えば乗り物の振動に関する信号である。信号44aの例としては、乗り物が自動車または列車の場合にはサスペンションなどのバネの固有振動、航空機の場合には空気がバネのように動作する振動、および/または、クッション内のスプリング等の固有振動である。
【0027】
信号42aおよび43aには、各々基本波と高調波が含まれる。このため、信号42aおよび43aの周波数スペクトルにおけるピークは各々複数存在する。心拍の振動の周波数は、例えば1Hz~4Hzである。高調波も含めると、信号42aの周波数は、例えば1Hz~15Hzである。呼吸の振動の周波数は、例えば0.3Hz~3Hzである。高調波も含めると、信号43aの周波数は0.3Hz~10Hzである。フィルタ20aにより、10Hzより高い、すなわち生体信号に関係のない周波数の信号44aが抑圧される。このため、周波数が高くなるほど、信号44aの周波数スペクトルが小さくなる。
【0028】
図7は、実施例1における処理部30が行う処理の機能ブロック図である。帯域制限部31a、31bおよび31cは、それぞれ信号S1a、S1bおよびS1cのうち生体振動の周波数帯域以外の周波数帯域を制限する。信号42aおよび43aの周波数帯域は例えば0.3Hz~15Hzである。そこで、帯域制限部31a、31bおよび31cは、信号S1a、S1bおよびS1cから例えば0.2Hz~20Hzの周波数帯域以外の周波数帯域の信号を取り除く。これにより、帯域制限部31a、31bおよび31cから出力される信号S2a、S2bおよびS2cは、ほとんど生体振動の周波数帯域の信号となる。このように、以降の処理に用いない周波数帯域を制限することで、以降の処理の負荷を軽減することができる。帯域制限部31a、31bおよび31cは、設けなくてもよい。
【0029】
フーリエ変換部32a、32bおよび32cは、信号S2a、S2bおよびS2cをそれぞれフーリエ変換する。フーリエ変換した信号をそれぞれ信号S3a、S3bおよびS3cとして出力する。フーリエ変換の演算は例えばFFT(Fast Fourier Transform)法を用いる。
【0030】
図8(a)、
図8(b)および
図8(c)は、それぞれ信号S3a、S3bおよびS3cのスペクトルを示す図である。縦方向に伸びる直線の横軸の位置はスペクトルの周波数を示し、縦方向の高さは周波数スペクトルの強度を示す。信号42aおよび42bは太実線、信号43aおよび43bは太点線、信号44a、44bおよび44cは細実線を用い示している。
【0031】
図8(a)に示すように、帯域制限部31aは、
図3において心臓52に近い範囲51aからの信号S1aから帯域46以外の信号を取り除く。このため、
図6の信号S1aに対し信号S3aはほとんど帯域46内の周波数を有する信号となる。
【0032】
図8(b)に示すように、帯域制限部31bは、
図3において心臓52から遠い範囲51bからの信号S1bから帯域46以外の信号を取り除く。このため、信号S3bはほとんど帯域46内の周波数を有する信号となる。信号S3bでは、信号S3aに比べ心拍の振動に関する信号42bが低い。これは、
図4(b)および
図5(b)のように、信号S1bには心拍の振動に関する信号40がほとんど含まれていないためである。信号S3bには、呼吸の振動に関する信号43bおよび生体以外の振動に関する信号44bは、信号S3aと同程度含まれている。
【0033】
図8(a)と
図8(b)とを比較すると、呼吸に関する信号43aと43bとは、ほぼ同じ周波数および強度を有する。これは、
図3のように、範囲51aおよび51bがそれぞれ生体50の左胸および右胸に相当するため、範囲51aと51bとでは呼吸の振動がほとんど同じであるためである。生体以外の振動に関する信号44aと44bとは、ほぼ同じ周波数および強度を有する。これは、生体50に伝わる乗り物の振動はほぼ同じであり、範囲51aおよび51bの振動をほぼ同じ構成のレーダーセンサ部11aおよび11bを用い検出しているためである。
【0034】
図8(c)に示すように、帯域制限部31cは、信号S1cから帯域46以外の信号を取り除く。このため、信号S3cは帯域46以外の信号をほとんど含まない信号となる。信号S3cは、ほとんど生体以外の振動に関する信号44cであり、生体50の振動に関する信号はほとんど含まない。
【0035】
図8(c)の信号44cの周波数および強度は、
図8(a)および
図8(b)の信号44aおよび44bの強度と異なる。これは、生体50に伝わる振動の強度と基板10に伝わる振動の強度とが同じでないためである。
【0036】
差分抽出部34aは、信号S3aと信号S3bとの差分を抽出し、信号S3aとS3bの両方に存在する信号を除去する。例えば、
図8(a)の中で強度の大きい信号を順に信号A1、A2、A3、A4およびA5とする。
図8(b)の中で強度の大きい信号を順に信号B1、B2、B3およびB4とする。差分抽出部34aは、強度の最も大きい信号A1とB1の周波数が同じであれば、信号S3aから信号A1を除去する。次に、差分抽出部34aは、信号A2とB2の周波数が同じであれば、信号S3aから信号A2を除去する。差分抽出部34aは、同様に、信号S3aから信号A3を除去する。信号A4とB4の周波数は一致しない。このため、差分抽出部34aは、信号S3aから信号A4は除去しない。次に、差分抽出部34aは、信号A5とB4の周波数が同じであれば、信号S3aから信号A5を除去する。このように処理することで、信号S3aから信号43aおよび44aが取り除かれる。差分抽出部34aは、処理された信号を信号S4aとして出力する。差分抽出部34aは、信号S3bの周波数スペクトルのうち強度が所定値以上の周波数と一致する周波数を有する周波数スペクトルを信号S3aから除去してもよい。また、差分抽出部34aは、強度が所定値以下の周波数スペクトルを差分抽出前に信号S3aおよび信号S3bの少なくとも一方から除去してもよい。
【0037】
差分抽出部34aは、信号S3aに加え信号S3cを用い、信号44aを取り除いてもよい。これにより、信号44aの除去をより適切に行うことができる。
【0038】
心拍抽出部35は、信号S4aから時間軸の波形を合成して、期間T1の心拍の振動の波形を生成する。心拍抽出部35は、生成された波形を信号S6aとして出力する。
【0039】
心拍検出表示部33は、出力装置26に心拍抽出部35において、心拍の振動の波形を合成できたかを出力させる。例えば、出力装置26がディスプレイの場合、心拍検出表示部33は出力装置26に心拍数などを表示させる。出力装置26がライトまたはスピーカの場合、心拍検出表示部33は、心拍に同期したライトの点滅または音の出力を行う。心拍抽出部35が心拍の振動の波形を合成できない場合、範囲51aが心臓52の位置から外れている可能性がある。出力装置26が心拍を検出できなかったことを示した場合、ユーザは基板10の取り付け位置を変えるなどして、心拍が検出できるように、基板10の取り付け位置を調整できる。
【0040】
差分抽出部34bは、信号S3bと信号S3cとの差分を抽出し、信号S3bとS3cの両方に存在する信号を除去する。これにより、
図8(b)の中で信号44bを除去できる。信号S3bに信号42bが含まれる場合には、心拍抽出部35から信号S4aを受信し、信号S4aを用いて信号S3bから信号42bを取り除いてもよい。差分抽出部34bは、処理された信号を信号S4bとして出力する。
【0041】
帯域制限部37は、信号S4bに信号42bが含まれる場合、信号42bが取り除かれるように帯域制限する。例えば、
図8(b)において、周波数が1Hz以上の信号を取り除くことで、信号42bを除去できる。帯域制限部37は、処理された信号を信号S5bとして出力する。帯域制限部37は設けられていなくてもよい。
【0042】
呼吸抽出部38は、信号S5bから時間軸の波形を合成して、期間T1の呼吸の振動の波形を生成する。呼吸抽出部38は、生成された波形を信号S6bとして出力する。生体信号解析部36は、信号S6aおよびS6bを解析する。出力部39は、解析結果を出力する。
【0043】
生体信号解析部36は、フーリエ変換部32a、32b、32c、差分抽出部34a、34b、心拍抽出部35、帯域制限部37、呼吸抽出部38および出力部39が動作する期間を同期させる信号S7を出力する。フーリエ変換部32a、32bおよび32cは、同期信号に基づきフーリエ変換する。このため、信号S1a、S1bおよびS1cをフーリエ変換する期間は実質的に同じとなる。フーリエ変換の期間は、例えば
図4(a)から
図5(b)の期間T1である。
【0044】
図9は、実施例1における処理部30が行う処理の機能ブロック図の別の例である。
図9に示すように、この例では、センサ21が設けられておらず、信号S1cは処理部30に入力されない。差分抽出部34cは、帯域制限部31aの出力する信号S2aと帯域制限部31bの出力する信号S2bとの差分処理を行う。差分抽出部34cは、例えば信号S2aからS2bを差し引く、これにより、例えば
図4(a)の波形から
図4(b)の波形が差し引かれる。よって、差分抽出部34cが出力する信号S2dは、主に心拍の振動に関する信号となる。フーリエ変換部32は、信号S2dをフーリエ変換し信号S3dを出力する。心拍抽出部35、生体信号解析部36および出力部39の処理は
図7と同じであり、説明を省略する。
【0045】
図9のように、差分抽出部34cは、フーリエ変換の前に、信号S2aと信号S2bとの差分を抽出し、フーリエ変換部32は、差分抽出された信号S2dをフーリエ変換してもよい。これにより、信号43aおよび44aの除去を適切に行うことができる。
【0046】
図10(a)から
図11(b)は、検出装置100を車両に取り付ける例を示す図である。
図10(a)に示すように、車両内にシート60およびハンドル62が設けられている。検出システムは、検出装置100と取り付け部材64とを備えている。検出装置100は、取り付け部材64によりシート60に取り付けられている。検出装置100は、空間内の生体50に対し信号56aおよび56bを照射する。信号56aは生体50のうち背中の心臓52の近くに照射され、信号56bは生体50のうち心臓52から離れた背中に照射される。
【0047】
図10(b)に示すように、検出装置100は、取り付け部材64によりシートベルト65に取り付けられている。検出装置100は、人間が首から下げたカードホルダに取り付けられていてもよい。信号56aは生体50のうち心臓52の近くの胸に照射され、信号56bは生体50のうち心臓52から離れた胸に照射される。
【0048】
図11(a)に示すように、検出装置100は、取り付け部材64によりハンドル62近くのダッシュボードまたはコンソールに取り付けられている。信号56aは生体50のうち心臓52の近くの胸に照射され、信号56bは生体50のうち心臓52から離れた胸に照射される。
【0049】
図11(b)に示すように、検出装置100は、取り付け部材64により天井66またはサンバイザーに取り付けられている。信号56aは生体50のうち心臓52の近くの胸に照射され、信号56bは生体50のうち心臓52から離れた胸に照射される。
【0050】
図10(a)および
図10(b)では、検出装置100を生体50の近くに装着できるため、金属等による信号56aおよび56bの反射を抑制できる。また、搭乗者はシートのほぼ同じ位置に着座するため、信号56aおよび56bの照射方向の調整を行わなくてもよい。
【0051】
実施例1によれば、
図1および
図3のように、レーダーセンサ部11a(第1センサ)は、信号56a(第1電磁波)を生体50の範囲51a(第1範囲)に送信し、範囲51aにおいて反射した信号58aを受信する。レーダーセンサ部11b(第2センサ)は、信号56b(第2電磁波)を生体50の範囲51b(第1範囲と異なる第2範囲)に送信し、範囲51bにおいて反射した信号58bを受信する。処理部30(算出部)は、レーダーセンサ部11aが出力する信号S1a(第1信号)とレーダーセンサ部11bが出力する信号S1b(第2信号)とに基づき、生体50に関する情報(例えば心拍に関する情報)を算出する。このように、レーダーセンサ部11aと11bの信号を用いることで、乗り物等の振動に起因するノイズを取り除き、生体50に関する情報を算出することができる。
【0052】
範囲51aを範囲51bより心臓52に近くすることで、
図4(a)から
図5(b)のように、信号S1bに含まれる心拍の振動に関する信号40は、信号S1aより小さくなる。よって、信号S1aとS1bとを用いることで、処理部30は、生体50の心拍に関する情報を算出できる。範囲51aを左胸、範囲51bを右胸とすることで、心拍の振動以外の振動は、範囲51aと51bとでほぼ同じとなる。よって、処理部30は、生体50の心拍に関する情報を精度よく算出できる。範囲51bは、首または腹部などでもよい。また、範囲51aを動脈のある部分とし、範囲51bを動脈のない部分とすることで、処理部30は、生体の脈拍に関する情報を算出することができる。範囲51aと51bにおける心拍または脈拍以外の振動をほぼ同じとする観点から範囲51aと51bとは近い位置であることが好ましい。生体50の異なる範囲における心拍、脈拍および呼吸等の振動は異なると考えられる。よって、範囲51aと51bが生体50の異なる範囲であれば、処理部30は、生体50に関する例えば心拍、脈拍または呼吸に関する情報を算出できる。なお、実施例1では、人の生体50を例に説明したが、ペット等の生体でもよい。
【0053】
図7のように、処理部30は、信号S1aをフーリエ変換した信号S3a(第3信号)と、信号S1bをフーリエ変換した信号S3b(第4信号)と、に基づき、生体50に関する情報を算出する。
図8(a)および
図8(b)のように、処理部30は、例えば信号S3aの周波数スペクトルの周波数と信号S3bの周波数スペクトルの周波数を比較し、比較結果に基づき、生体50に関する情報を算出する。より具体的には、信号S3bの周波数スペクトルの周波数と信号S3aの周波数スペクトルの周波数とが略一致する場合には、信号S3aから周波数が略一致した周波数スペクトルを取り除く。これにより、信号S3aと信号S3bにおいて共通の周波数を有する信号を取り除くことができる。
【0054】
図9のように、処理部30は、フーリエ変換する前の信号S2aとS2bに基づき、生体50に関する情報を算出してもよい。処理部30は、例えば信号S2aと信号S2bとの差に基づき、生体50に関する信号を算出してもよい。
【0055】
フーリエ変換部32aが信号S2aをフーリエ変換する第1期間と、フーリエ変換部32bが信号S2bをフーリエ変換する第2期間と、は実質的に同じ期間である。すなわち、
図4(a)の期間T1と
図4(b)の期間T1の開始時刻は実時間において実質的に同じ時刻であり、終了時刻は実時間において実質的に同じ時刻である。これにより、生体50に関する情報の算出精度を向上させることができる。なお、第1期間と第2期間とが実質的に同じとは、処理部30の処理において、誤差が生じない程度に同じことを意味する。
【0056】
アンテナ12a(第1送信アンテナ)、13a(第1受信アンテナ)、12b(第2送信アンテナ)および13b(第2受信アンテナ)は、基板10(基体)に搭載されている。センサ21(第3センサ)は、基板10の振動を検出する。処理部30は、センサ21が出力する信号S1c(第5信号)に基づき生体50に関する情報を算出する。これにより、生体50に関する情報の算出精度を向上できる。センサ21を用いた処理は、補助的な処理であり、センサ21を用いた処理は行わなくてもよい。すなわち、
図1および
図7において、振動センサ部11c、帯域制限部31cおよびフーリエ変換部32cは設けなくてもよい。
【0057】
図7において、処理部30は、呼吸の振動に関する情報を算出しているが、呼吸の振動に関する情報を算出しなくてもよい。すなわち、差分抽出部34b、帯域制限部37および呼吸抽出部38を設けなくてもよい。
【0058】
心拍検出表示部33は、生体に関する情報を算出できたか否かを出力する。これにより、ユーザは、範囲51aおよび51bが適切か否かを知ることができる。範囲51aおよび51bが適切でない場合、範囲51aおよび51bを調整できる。心拍検出表示部33は設けなくてもよい。
【0059】
実施例1では、ドプラー方式により生体50に関する情報を検出している。FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式など他の方式を用い生体50に関する情報を検出してもよい。また、信号56aおよび56bが照射される対象物は、生体以外でもよく、処理部30は、信号56aおよび56bを反射した対象物に関する情報を算出すればよい。
【0060】
図10(a)から
図11(b)のように、取り付け部材64は、範囲51aが範囲51bより心臓52の近くになるように,検出装置100を取り付ける。これにより、処理部30は、心拍に関する情報を精度よく算出できる。取り付け部材64は、検出装置を乗り物に取り付ける。これにより、乗り物の振動があっても生体50に関する情報を精度よく算出できる。
図10(a)から
図11(b)は、乗り物として自動車等の車両を例に説明したが、乗り物は、電車または飛行機でもよい。乗り物の搭乗者は運転者でもよいし乗客でもよい。乗り物の安全運航の観点から、運転者の生体情報を管理することがある。例えば、運転者の健康状態のうち、例えば精神状態、眠気、不整脈または心停止などを管理し、運転者が深刻な状態の場合には、警告、通知または運航の自動停止を行うことで、深刻な事故を未然に防ぐことができる。このような場合、運転者の生体に関する情報を算出することが好ましい。
【0061】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。
10 基板、12a、12b、13a、13b アンテナ、16a、16b 高周波回路、20a、20b フィルタ、30 処理部、50 生体、51a、51b 範囲、52 心臓、40、41、42a、42b、43a、43b、44a、44b、44c、56a、56b、58a、58b 信号、取り付け部材64