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特開2024-73062遮水構造、遮水構造に用いられる管部材ユニット及び遮水構造の構築工法
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  • 特開-遮水構造、遮水構造に用いられる管部材ユニット及び遮水構造の構築工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073062
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】遮水構造、遮水構造に用いられる管部材ユニット及び遮水構造の構築工法
(51)【国際特許分類】
   B09B 1/00 20060101AFI20240522BHJP
   E02B 3/18 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B09B1/00 F ZAB
E02B3/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184057
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】日向 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】新木 光昭
(72)【発明者】
【氏名】片桐 涼
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA46
4D004BB04
4D004BB05
4D004DA03
4D004DA20
(57)【要約】
【課題】工事現場での作業を簡易にできるようにしながら、合成樹脂板と凹部の内外を貫通して設置される管部材との接合部分及び合成樹脂板と遮水シートの接合部分の水密性の維持の信頼性を高めることができる遮水構造、遮水構造に用いられる管部材ユニット及び遮水構造の構築工法を提供すること。
【解決手段】地面に形成された凹部Dに、遮水シート1と保護材2とを備えた遮水層を敷設するとともに、凹部Dの内外を貫通する管部材3を設置するようにし、管部材3には、管部材3が貫通する、第一の合成樹脂板41と、第一の合成樹脂板41より外周形状が小さな第二の合成樹脂板42とが、それぞれ一体に接合され、第一の合成樹脂板41と下層遮水シート11が接合され、第二の合成樹脂板42と上層遮水シート12が接合される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に形成された凹部に、遮水シートと保護材とを備えた遮水層を敷設するとともに、前記凹部の内外を貫通する管部材を設置するようにした遮水構造であって、
前記管部材には、前記管部材が貫通する、第一の合成樹脂板と、前記第一の合成樹脂板より外周形状が小さな第二の合成樹脂板とが、それぞれ一体に接合されてなり、
前記第一の合成樹脂板が前記凹部の外部側の位置に、前記第二の合成樹脂板が前記凹部の内部側の位置に設けられ、
前記第一の合成樹脂板と前記遮水層を構成する下層遮水シートが接合され、
前記第二の合成樹脂板と前記遮水層を構成する上層遮水シートが接合されてなる
ことを特徴とする遮水構造。
【請求項2】
前記第一の合成樹脂板と前記第二の合成樹脂板とが、前記管部材の外周側の箇所で、接合部材により接合されてなることを特徴とする請求項1に記載の遮水構造。
【請求項3】
前記第一の合成樹脂板及び第二の合成樹脂板の各曲げ弾性率が、850MPa以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮水構造。
【請求項4】
地面に形成された凹部に、遮水シートと保護材とを備えた遮水層を敷設するとともに、前記凹部の内外を貫通する管部材を設置するようにした遮水構造に用いられる管部材ユニットであって、
前記管部材には、前記管部材が貫通する、第一の合成樹脂板と、前記第一の合成樹脂板より外周形状が小さな第二の合成樹脂板とが、それぞれ一体に接合されてなる
ことを特徴とする遮水構造に用いられる管部材ユニット。
【請求項5】
前記第一の合成樹脂板と前記第二の合成樹脂板とが、前記管部材の外周側の箇所で、接合部材により接合されてなることを特徴とする請求項4に記載の遮水構造に用いられる管部材ユニット。
【請求項6】
前記第一の合成樹脂板及び第二の合成樹脂板の各曲げ弾性率が、850MPa以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載の遮水構造に用いられる管部材ユニット。
【請求項7】
地面に形成された凹部に、遮水シートと保護材とを備えた遮水層を敷設するとともに、前記凹部の内外を貫通する管部材を設置するようにした遮水構造の構築方法であって、
(1)請求項4~6のいずれか一項に記載の管部材ユニットを、前記第一の合成樹脂板が前記凹部の外部側の位置に、前記第二の合成樹脂板が前記凹部の内部側の位置に、前記管部材が前記凹部の内外を貫通する位置に設置する工程
(2)前記第一の合成樹脂板と前記遮水層を構成する下層遮水シートを接合する工程
(3)前記第二の合成樹脂板と前記遮水層を構成する上層遮水シートを接合する工程
を有してなることを特徴とする遮水構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を埋立処分する廃棄物処分場等に適用される遮水構造、遮水構造に用いられる管部材ユニット及び遮水構造の構築工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、廃棄物を埋立処分する廃棄物処分場においては、地面に形成された凹部の全面、すなわち、側壁部及び底部に、遮水シートと保護材とを備えた遮水層を敷設するとともに、凹部の内外を貫通する管部材を設置するようにして、凹部に溜まった水を外部に排出するようにしている。
そして、廃棄物処分場では、凹部に溜まった水が凹部の内外を貫通して設置された管部材によって構成される排水管以外の部分から漏洩しない構造とすることが求められており、このため、一般的には、2枚の遮水シートを用いた二重遮水構造を採られている。
この場合、特に漏洩のおそれがある部分として、遮水シートと凹部の内外を貫通して設置される管部材との接合部分が挙げられ、この部分の水密性を高めることが要請されていた。
【0003】
上記要請に応えるものとして、
(1)管部材を2枚の遮水シート片に貫通させ、遮水シート片と管部材を熱溶融させた樹脂で接合し、遮水シート片と管部材とで形成される空間に遮水材を充填する方法(特許文献1)
(2)管部材を遮水シートよりも剛性の高い1枚の遮水板に貫通させ、遮水板と管部材を熱溶融させた樹脂で接合し、遮水板に遮水シートを接合する方法(特許文献2)
等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5419137号公報
【特許文献2】特許第6527477号公報
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2で開示された方法には、それぞれ以下の問題点があった。
(1)特許文献1に開示された方法の問題点
・遮水シート片と管部材を熱溶融させた樹脂で直接溶着して接合することが難しい。
・遮水シート片と管部材とで形成される空間に遮水材を充填する作業が工事現場での作業となり、手数と時間がかかる。
(2)特許文献2に開示された方法の問題点
・遮水板が1枚のため、遮水板と管部材との接合部分が一箇所となり、二重遮水構造を採らない部分が生じるため、その部分における水密性の維持の信頼性が低い。
・管部材の上方位置において、遮水板に下層保護マット、下層遮水シート、中層保護マット、上層遮水シート及び上層保護マットがこの順で積層、接合されているが、中層保護マットが障害となり、遮水板に上層遮水シートを接合することが難しく、水密性の維持の信頼性が低い。
・管部材の下方位置において、遮水板に下層遮水シート、上層遮水シート及び上層保護マットがこの順で積層、接合されているが、下層保護マット及び中層保護マットは配置されていない。このため、管部材の下方位置は保護マットによる保護が弱く、損傷を受けやすく、水密性の維持の信頼性が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記特許文献1及び2で開示された方法が有する問題点に鑑み、工事現場での作業を簡易にできるようにしながら、合成樹脂板と凹部の内外を貫通して設置される管部材との接合部分及び合成樹脂板と遮水シートの接合部分の水密性の維持の信頼性を高めることができる遮水構造、遮水構造に用いられる管部材ユニット及び遮水構造の構築工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の遮水構造は、
地面に形成された凹部に、遮水シートと保護材とを備えた遮水層を敷設するとともに、前記凹部の内外を貫通する管部材を設置するようにした遮水構造であって、
前記管部材には、前記管部材が貫通する、第一の合成樹脂板と、前記第一の合成樹脂板より外周形状が小さな第二の合成樹脂板とが、それぞれ一体に接合されてなり、
前記第一の合成樹脂板が前記凹部の外部側の位置に、前記第二の合成樹脂板が前記凹部の内部側の位置に設けられ、
前記第一の合成樹脂板と前記遮水層を構成する下層遮水シートが接合され、
前記第二の合成樹脂板と前記遮水層を構成する上層遮水シートが接合されてなる
ことを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記第一の合成樹脂板と前記第二の合成樹脂板のそれぞれが、前記管部材の外周側の箇所で、接合部材により接合されてなるようにすることができる。
【0009】
また、前記第一の合成樹脂板及び第二の合成樹脂板の各曲げ弾性率が、850MPa以上であることができる。
【0010】
また、同じ目的を達成するため、本発明の遮水構造に用いられる管部材ユニットは、
地面に形成された凹部に、遮水シートと保護材とを備えた遮水層を敷設するとともに、前記凹部の内外を貫通する管部材を設置するようにした遮水構造に用いられる管部材ユニットであって、
前記管部材には、前記管部材が貫通する、第一の合成樹脂板と、前記第一の合成樹脂板より外周形状が小さな第二の合成樹脂板とが、それぞれ一体に接合されてなる
ことを特徴とする。
【0011】
この場合において、前記第一の合成樹脂板と前記第二の合成樹脂板のそれぞれが、前記管部材の外周側の箇所で、接合部材により接合されてなるようにすることができる。
【0012】
また、前記第一の合成樹脂板及び第二の合成樹脂板の各曲げ弾性率が、850MPa以上であることができる。
【0013】
また、同じ目的を達成するため、本発明の遮水構造の構築方法は、
地面に形成された凹部に、遮水シートと保護材とを備えた遮水層を敷設するとともに、前記凹部の内外を貫通する管部材を設置するようにした遮水構造の構築方法であって、
(1)前記管部材ユニットを、前記第一の合成樹脂板が前記凹部の外部側の位置に、前記第二の合成樹脂板が前記凹部の内部側の位置に、前記管部材が前記凹部の内外を貫通する位置に設置する工程
(2)前記第一の合成樹脂板と前記遮水層を構成する下層遮水シートを接合する工程
(3)前記第二の合成樹脂板と前記遮水層を構成する上層遮水シートを接合する工程
を有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の遮水構造、遮水構造に用いられる管部材ユニット及び遮水構造の構築工法によれば、管部材に、管部材が貫通する、第一の合成樹脂板と、第一の合成樹脂板より外周形状が小さな第二の合成樹脂板とが、それぞれ一体に接合されてなる管部材ユニットを用いることにより、合成樹脂板と管部材との接合部分が少なくとも二箇所となる。これにより、工事現場での作業を簡易にできるようにしながら、合成樹脂板と凹部の内外を貫通して設置される管部材との接合部分の水密性の維持の信頼性を高めることができる。管部材の周囲の遮水シートが敷設されていない箇所において、第一の合成樹脂板及び第二の合成樹脂板による二重遮水構造とすることができる。
また、第一の合成樹脂板及び第二の合成樹脂板がそれぞれ遮水シートと保護材とを備えた遮水層と接合することで、工事現場での作業を簡易にできるようにしながら、シートの水密性の維持の信頼性を高めることができる。これにより、管部材、合成樹脂板及び遮水層の接合が強く、水密性が高い遮水構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の遮水構造の一実施形態を示す説明図である。
図2】本発明の遮水構造に用いられる管部材ユニットの一実施形態を示す説明図である。
図3】同管部材ユニットの製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の遮水構造、遮水構造に用いられる管部材ユニット及び遮水構造の構築工法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1図2に、本発明の遮水構造の一実施形態を示す。
この遮水構造は、例えば、廃棄物を埋立処分する廃棄物処分場として用いられる地面に形成された凹部Dに、遮水シート1と保護材2とを備えた遮水層を敷設するとともに、凹部Dの内外を貫通する管部材3を設置するようにした遮水構造であって、管部材3には、管部材3が貫通する、第一の合成樹脂板41と、第一の合成樹脂板41より外周形状が小さな第二の合成樹脂板42とが、それぞれ一体に接合されてなり、第一の合成樹脂板41が凹部Dの外部側の位置に、第二の合成樹脂板42が凹部Dの内部側の位置に設けられ、第一の合成樹脂板41と遮水層を構成する遮水シート1のうちの下層遮水シート11が接合され、第二の合成樹脂板42と遮水層を構成する遮水シート1のうちの上層遮水シート12が接合されるようにしている。
【0018】
ここで、管部材3は、その一端が凹部D内に露出するように凹部Dの底部Bの近傍の側壁部Wに埋設されている。そして、凹部Dに溜まった水を、凹部Dの内外を貫通する管部材3によって構成される排水管から外部に排出するようにしている。
【0019】
管部材3は、断面円形のポリエチレン樹脂やポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂製の管部材を用いることができる。特に高密度ポリエチレン樹脂が好ましい。具体的には、耐圧性及び耐久性に優れたガラス繊維強化ポリエチレン製の管部材(例えば、タキロンシーアイシビル社製ガラス繊維強化ポリエチレン管「内圧用ダイプラハウエル管HSPE」(商品名))を好適に用いることができる。
【0020】
第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42は、円形の貫通孔を有する平板部材である。第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42の貫通孔には管部材3が貫通している。第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42は、凹部Dの底部Bの近傍の側壁部Wの一部を形成するように配置され、本実施形態では、第一の合成樹脂板41の下端が凹部Dの底部Bに略達するようにしているが、第一の合成樹脂板41の下端が凹部Dの底
部Bより上方に位置していてもよい。また、本実施形態では、第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42は、略正方形に形成されているが、第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42の形状はこれに限定されるものではない。第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42の大きさ及び厚さは、管部材3の直径等に応じて適宜設定される。一例を挙げると、管部材3の内径(口径)が400mmの場合、正方形の第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42の一辺の長さは、それぞれ1000~2000mm及び600~1500mm程度で、かつ、貫通孔42aの中心から第二の合成樹脂板42の外周の各辺までの寸法(距離)が、貫通孔41aの中心から第一の合成樹脂板41の外周の各辺までの寸法(距離)よりそれぞれ50mm以上、好ましくは、200mm以上、より好ましくは、300mm程度小さく(最も小さく設定する場合で、700mm程度小さく)設定することができる。ちなみに、本実施形態では、一片の長さがそれぞれ1660mm及び1060mm程度に設定している。換言すると、第二の合成樹脂板42の一辺の長さは、第一の合成樹脂板41の一辺の長さの30~94%が好ましく、45~85%がより好ましく、50~70%がさらに好ましい。下限値未満では第二の合成樹脂板42が小さすぎるため、第二の合成樹脂板42と上層遮水シート12の接合に時間がかかる。上限値を越えると第一の合成樹脂板41と下層遮水シート11の接合代が小さくなるため、第一の合成樹脂板41と下層遮水シート11の接合が困難となる。また、充分な接合代が確保できにくくなるため、接合部が剥がれやすくなる。
また、第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42の厚さは、20~50mm程度(本実施形態では、40mm程度)に設定することができる。
【0021】
第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42には、熱可塑性オレフィン樹脂やポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂製の平板部材を好適に用いることができる。特に高密度ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0022】
第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42に用いる熱可塑性樹脂製の平板部材の物性値について説明する。下記の物性値を有することにより、合成樹脂板が充分な強度を有し、さらに施工がしやすい。
(1)曲げ弾性率(JIS K7171)
850~2000MPaが好ましく、1000~1700MPaがより好ましく、1200~1400MPaがさらに好ましい。
(2)シャルピー衝撃強さ(JIS K7111)
5~100kJ/mが好ましく、10~50kJ/mがより好ましく、15~30kJ/mがさらに好ましい。
(3)デュロメータ硬さ(タイプD)(JIS K7215)
50~80が好ましく、60~70がより好ましい。
(4)引張降伏応力(JIS K7161)
15~35MPaが好ましく、20~30MPaがより好ましい。
【0023】
第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42には、具体的には、高強度で耐久性に優れた高密度ポリエチレン(HDPE)製の平板部材(例えば、プライムポリマー社製高密度ポリエチレン(HDPE)押出部材「HI-ZEX(HDPE) 7800M」(商品名)(表1に諸元値を示す。))を好適に用いることができる。
【0024】
【表1】
【0025】
管部材3と第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42の接合部51、52は、第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42の貫通孔の周縁と管部材3の外周面とを全周に亘って接合している。接合部51は、第一の合成樹脂板41の両面に、接合部52は、第二の合成樹脂板42の一方の面に形成されている。接合部51、52は、熱可塑性樹脂の融着材で形成されている。接合部51、52の接合強度を高めるために、接合部51、52を構成する熱可塑性樹脂は、管部材3と第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42の少なくとも一方を構成する熱可塑性樹脂と同じであることが好ましく、管部材3、第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42並びに接合部51、52が同一の熱可塑性樹脂で形成されていることがより好ましい。
【0026】
管部材3と第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42とからなる管部材ユニットの製造工程について、図3を用いて説明する。
この製造工程、すなわち、管部材3に第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42を一体に接合する作業は、好ましくは、工場や作業所等の廃棄物処分場の工事現場以外の場所において行うようにし、製造した管部材ユニットを、廃棄物処分場に持ち込むようにする。
【0027】
第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42を用意する。
この第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42には、予め中心に円形の貫通孔41a、42aと、その周囲に接合部材6を挿通するための複数(本実施形態においては、8個。)の小孔41b、42bとを形成するようにする。
貫通孔41a、42a及び小孔41b、42bは、ホールソー、ボール盤(ドリル)、ジグソー(ノコギリ)、ヒートカッター、レーザーカッター等の公知の方法で形成する。例えば、直径100mm未満の孔をあける場合は、電動ドリル(ホールソー)を用いてあけ、直径100mm以上の孔の場合は、大型の切削加工機を用いてあけ、さらに直径700mm以上の大きな孔の場合は、レシプロソー(動力ノコギリ)等を用いてあける。
【0028】
管部材3を第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42の貫通孔41a、42aに挿通し、第一の合成樹脂板41を所定の位置で仮固定し、溶融した熱可塑性樹脂を加熱押出機(図示省略)によって棒状に押し出した融着材を、第一の合成樹脂板41の両面の貫
通孔41aの周縁に沿って配置していく。融着材が冷却固化することで接合部51が形成されて、管部材3と第一の合成樹脂板41が接合される。
【0029】
第一の合成樹脂板41と第二の合成樹脂板42を、接合部材6を用いて管部材3の外周側の箇所で接合する。
本実施形態では、接合部材6にボルト・ナットを使用し、管部材3と接合されていない第二の合成樹脂板42側から小孔42bにボルトを挿通し、ナットで固定した後、ボルトを第一の合成樹脂板41の小孔41bに挿通し、ダブルナットで固定することで、第一の合成樹脂板41と第二の合成樹脂板42の間にナット1個分の20~30mm程度の間隙が形成されるようにして、第一の合成樹脂板41と第二の合成樹脂板42を接合する。
【0030】
溶融した熱可塑性樹脂を加熱押出機(図示省略)によって棒状に押し出した融着材を、第二の合成樹脂板42の一方の面(第一の合成樹脂板41の反対側の面)の貫通孔42aの周縁に沿って配置していく。融着材が冷却固化することで接合部52が形成されて、管部材3と第二の合成樹脂板42が接合される。
【0031】
溶融した熱可塑性樹脂を加熱押出機(図示省略)によって棒状に押し出した融着材を、接合部材6の周囲に配置していく。融着材が冷却固化することで接合部材6を挿通した小孔41b、42bの水密性を確保する。
【0032】
ここで、管部材3に第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42を接合する角度、すなわち、管部材3の管軸と第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42がなす角度θは、凹部Dの底部Bの近傍の側壁部Wの設計斜度に合わせて設定するようにする。
そして、第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42に形成する貫通孔41a、42aの形状を、角度θが90°の場合は、真円形状に、角度θが90°より小さくなるに応じて、必要に応じて、楕円形状にすることができる。
【0033】
また、本実施形態においては、管部材3と第一の合成樹脂板41の接合部51が、第二の合成樹脂板42と干渉しないように、また、管部材3と第一の合成樹脂板41の接合部51及び管部材3と第二の合成樹脂板42の接合部52の一方が破断した場合に、他方にその影響が及ばないように、第一の合成樹脂板41と第二の合成樹脂板42の間に間隙が形成されるようにして、第一の合成樹脂板41と第二の合成樹脂板42を接合するようにしたが、管部材3と第一の合成樹脂板41の接合部51の余盛りを小さくすることで、接合部51が第二の合成樹脂板42と干渉しないようにして、第一の合成樹脂板41と第二の合成樹脂板42の間に間隙を形成することなく、第一の合成樹脂板41と第二の合成樹脂板42を接合するようにしてもよい。
【0034】
また、必要に応じて、接合部51、52及び小孔41b、42bの水密性(遮水性)の検査を行い、水密性の検査をパスした管部材ユニットを廃棄物処分場の工事現場に持ち込むようにする。
【0035】
次に、上記製造工程によって製造した、管部材3と第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42とからなる管部材ユニットを用いた遮水構造の構築工法について、図1を用いて説明する。
この遮水構造の構築工法は、以下の工程を有してなる。
(1)管部材ユニットを、第一の合成樹脂板41が凹部Dの底部Bの近傍の側壁部Wの外部側の位置に、第二の合成樹脂板42が凹部Dの底部Bの近傍の側壁部Wの内部側の位置に、管部材3が凹部Dの底部Bの近傍の側壁部Wの内外を貫通する位置に設置する工程
ここで、管部材ユニットは、例えば、特許文献2に開示されているように、コンクリートを打設することで所定位置に設置するようにする。
(2)第一の合成樹脂板41と、遮水シート1と保護材2とを備えた遮水層を構成する下層遮水シート11を接合する工程
(3)第二の合成樹脂板42と、遮水シート1と保護材2とを備えた遮水層を構成する上層遮水シート12を接合する工程
【0036】
ここで、遮水シート1と保護材2とを備えた遮水層は、凹部Dの全面、すなわち、側壁部W及び底部Bに敷設されるが、本実施形態では、下層保護材21、下層遮水シート11、中層保護材22、上層遮水シート12及び上層保護材23で構成され、この順で敷設される。
具体的には、工程(2)において、下層保護材21を、第一の合成樹脂板41の位置を除く凹部Dの底部B及び側壁部Wの全面を覆い、第一の合成樹脂板41との間に不陸が生じないように敷設する。次に第一の合成樹脂板41の上面に下層遮水シート11を接合する。
工程(3)において、中層保護材22を、第二の合成樹脂板42の位置を除く第一の合成樹脂板41及び下層遮水シート1の全面を覆い、第二の合成樹脂板42との間に不陸が生じないように敷設する。次に第二の合成樹脂板42の上面に上層遮水シート12を接合する。
工程(3)の後、上層保護材23を、管部材3の凹部D側の開口部を除く露出部並びに第二の合成樹脂板42及び上層遮水シート12の全面を覆うように敷設する。
なお、遮水シート1及び保護材2は、可撓性を有している。
【0037】
下層遮水シート11及び上層遮水シート12には、管部材3が挿通される矩形状の孔が形成されており、この孔の周縁が、全周に亘って、第一の合成樹脂板41又は第二の合成樹脂板42の表面に接合部71、72によってそれぞれ接合されている。接合部71、72は、例えば、ポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂からなる融着材で形成されている。接合部71、72と第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42の接合強度を高めるためには、接合部71、72を構成する熱可塑性樹脂は、第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42を構成する熱可塑性樹脂と同一の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0038】
下層保護材21及び中層保護材22は、第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42の外周縁に当接するように敷設する。
上層保護材23は、管部材3の外周面に装着されるバンド31によって、管部材3に固定される。
上下層で隣り合う遮水シート1及び保護材2、例えば、上層保護材23と上層遮水シート12は、融着材等によって接合するようにしてもよい。また、中層保護材22に貫通孔(図示省略)を設けて、下層遮水シート11と上層遮水シート12を融着材等によって接合してもよい。
【0039】
遮水シート1は、接合部71、72を構成する熱可塑性樹脂と融着が可能なゴム又は熱可塑性樹脂で形成される。具体的には、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、サーモプラスチックエラストマー(TPE)等が用いられる。遮水シート1の厚さは、例えば、0.5~3.0mm程度である。
【0040】
保護材2は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂で形成されている。保護材2の形態は、不織布、織布、発泡体、不織布と樹脂シートの貼り合わせ材、不織布と発泡体の貼り合わせ材、発泡体と樹脂シートの貼り合わせ材等である。保護材2の厚さは、例えば、3~20mm程度である。
【0041】
ところで、本実施形態において、管部材3の周囲の遮水シート1(下層遮水シート11及び上層遮水シート12)及び保護材2(下層保護材21、中層保護材22及び上層保護材23)は、切れ目のない1枚の部材として説明したが、遮水シート1及び保護材2は、2枚又は2枚以上の部材を適宜箇所で接合して敷設することができる。例えば、2枚の部材からなる遮水シート1(下層遮水シート11及び上層遮水シート12)を管部材3の管軸を含む水平面の箇所で接合して敷設することにより、遮水シート1(下層遮水シート11及び上層遮水シート12)を管部材3と干渉することなく円滑に敷設することができる。
【0042】
この遮水構造、遮水構造に用いられる管部材ユニット及び遮水構造の構築工法は、以下の作用効果を奏する。
(1)管部材3と第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42とからなる管部材ユニットを、工場や作業所等の廃棄物処分場の工事現場以外の場所において行うようにし、製造した管部材ユニットを、廃棄物処分場に持ち込むようにすることにより、工事現場での作業を簡易にできる。
(2)管部材3の周囲の遮水シート1(下層遮水シート11及び上層遮水シート12)が敷設されていない箇所(第二の合成樹脂板42における、管部材3との接合部52から上層遮水シート12との接合部72までに相当する部分)において、第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42による二重遮水構造とすることができ、水密性の維持の信頼性を向上することができる。
(3)上層の第二の合成樹脂板42を、下層の第一の合成樹脂板41より外周形状を小さくすることにより、第一の合成樹脂板41と下層遮水シート11の接合作業、第二の合成樹脂板42と上層遮水シート12の接合作業を、順に円滑に行うことができる。
(4)下層保護材21及び中層保護材22を、第一の合成樹脂板41及び第二の合成樹脂板42の外周縁に当接するように敷設することにより、第一の合成樹脂板41と下層保護材21、第二の合成樹脂板42と中層保護材22の間に不陸が生じず、第一の合成樹脂板41と下層遮水シート11の接合作業、第二の合成樹脂板42と上層遮水シート12の接合作業を、円滑に行うことができる。また、接合後の遮水シート1が剥がれにくくなり、水密性の維持の信頼性を向上することができる。さらに、上層保護材23を敷設する第二の合成樹脂板42と上層遮水シート12に不陸の発生も抑制される。
(5)凹部Dの全面、すなわち、側壁部W及び底部Bの全面に、下層保護材21、下層遮水シート11、中層保護材22、上層遮水シート12及び上層保護材23を、この順で敷設することによって、管部材3の上方及び下方に位置する遮水層の保護を強化でき、水密性の維持の信頼性を向上することができる。
【0043】
以上、本発明の遮水構造、遮水構造に用いられる管部材ユニット及び遮水構造の構築工法について、その一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の遮水構造、遮水構造に用いられる管部材ユニット及び遮水構造の構築工法は、工事現場での作業を簡易にできるようにしながら、合成樹脂板と凹部の内外を貫通して設置される管部材との接合部分及び合成樹脂板と遮水シートの接合部分の水密性の維持の信頼性を高めることができることから、廃棄物を埋立処分する廃棄物処分場等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 遮水シート
11 下層遮水シート
12 上層遮水シート
2 保護材
21 下層保護材
22 中層保護材
23 上層保護材
3 管部材
31 バンド
41 第一の合成樹脂板
41a 貫通孔
41b 小孔
42 第二の合成樹脂板
42a 貫通孔
42b 小孔
51 接合部
52 接合部
6 接合部材
71 接合部
72 接合部
D 凹部
B 底部
W 側壁部
図1
図2
図3