(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073066
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】車載用反射防止フィルム及びこれを用いた表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240522BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240522BHJP
【FI】
G02B5/02 C
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184063
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】314017635
【氏名又は名称】株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清 章訓
(72)【発明者】
【氏名】堀野 友博
(72)【発明者】
【氏名】小林 多恵子
【テーマコード(参考)】
2H042
4F100
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA04
2H042BA12
2H042BA20
4F100AA20C
4F100AG00A
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK25B
4F100AT00A
4F100CA23B
4F100CA23C
4F100DD07
4F100EH46
4F100EJ54
4F100GB32
4F100JB14B
4F100JN01A
4F100JN02
4F100JN06
4F100JN06C
4F100JN30B
(57)【要約】
【課題】車載用途の表示装置に適した光学特性を有する車載用反射防止フィルム及びこれを用いた表示装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る反射防止フィルムは、透明基材上に防眩層及び低反射層を備え、表面の算術平均粗さRaが0.08~0.15μmであり、内部ヘイズが15~40%であり、外部ヘイズが5~13%であり、SCI反射率が0.8~1.2%である。これらの条件を同時に満足することにより、周囲の映り込みが少なく、反射光の眩しさとギラツキが抑制された反射防止フィルムを得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に防眩層及び低反射層を備え、
表面の算術平均粗さRaが0.08~0.15μmであり、
内部ヘイズが15~40%であり、外部ヘイズが5~13%であり、
SCI反射率が0.8~1.2%である、車載用反射防止フィルム。
【請求項2】
2.0mm幅の光学くしを用いて測定した反射像鮮明度が2~50%である、請求項1に記載の車載用反射防止フィルム。
【請求項3】
0.5mm幅の光学くしを用いて測定した透過像鮮明度が30~70%である、請求項1に記載の車載用反射防止フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の車載用反射防止フィルムを備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用反射防止フィルム及びこれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の最表面には、防眩性(AG)フィルムや低反射(LR)フィルム等の光学フィルムが設けられる。防眩性フィルムは、フィラーを含有する防眩層を有し、フィラーにより防眩層表面に形成される凹凸により反射光を拡散させ、外光の映り込みを低減する。低反射フィルムは、低反射層と基材フィルムの界面で反射する光と、低反射層の表面で反射する光とを干渉によって打ち消すことにより、外光の反射を低減する。また、両者を組み合わせて、防眩層の表面に低反射層を積層した構成を有する防眩性低反射(AGLR)フィルムも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両には、センターインフォメーションディスプレイ(CID)やメータクラスタパネル(MCP)等の表示装置が複数搭載されている。車載の表示装置には、安全性に関わる情報を表示する場合があるため、外光の映り込みが少ないこと、反射光が眩しくないこと、ギラツキが抑制されていること、表示画像が鮮明であることが要求される。しかしながら、従来の光学フィルムは、車載用途の表示装置に求められるこれらの要件を十分に満たしておらず、改良の余地があった。
【0005】
それ故に、本発明は、車載用途の表示装置に適した光学特性を有する車載用反射防止フィルム及びこれを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車載用反射防止フィルムは、透明基材上に防眩層及び低反射層を備え、表面の算術平均粗さRaが0.08~0.15μmであり、内部ヘイズが15~40%であり、外部ヘイズが5~13%であり、SCI反射率が0.8~1.2%であるものである。
【0007】
また、本発明に係る表示装置は、上記の車載用反射防止フィルムを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車載用途の表示装置に適した光学特性を有する車載用反射防止フィルム及びこれを用いた表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る車載用反射防止フィルムを模式的に示す断面図
【
図2】実施例及び比較例における外光の映り込みの評価方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係る車載用反射防止フィルムを模式的に示す断面図である。
【0011】
車載用反射防止フィルム10(以下、単に「反射防止フィルム」という)は、透明基材1と、透明基材1の一方面側に積層される防眩層2と、防眩層2上に積層される低反射層3とを備える。
【0012】
透明基材1は、反射防止フィルム10の基体となるフィルムであり、可視光線の透過性に優れた材料により形成される。透明基材1の形成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンコポリマー、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等の透明樹脂や無機ガラスを利用できる。透明基材1の厚みは、特に限定されないが、10~200μmとすることが好ましい。
【0013】
透明基材1の表面には、防眩層2との密着性を向上させるために、表面改質処理を施しても良い。表面改質処理としては、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理、界面活性剤やシランカップリング剤等の塗布、Si蒸着等を例示できる。
【0014】
防眩層2は、フィラーを含有し、フィラーによって表面に形成される微細な凹凸により外光を散乱させて、外光の映り込みを低減する。防眩層2は、バインダー樹脂と、フィラーとを含有する塗工液を透明基材1に塗布し、塗膜を硬化させることによって形成される。
【0015】
バインダー樹脂としては、電離放射線または紫外線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型樹脂を使用でき、例えば、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを使用できる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。
【0016】
単官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
2官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0019】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0020】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0021】
上述した活性エネルギー線硬化性樹脂は1種を用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上述した活性エネルギー線硬化性樹脂は、塗工液中でモノマーであっても良いし、一部が重合したオリゴマーであっても良い。
【0022】
また、活性エネルギー線硬化型樹脂としては、上述したラジカル重合性官能基を有する化合物の他に、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等のカチオン重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーを単独でまたは混合して使用することができる。モノマーとしては、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや各種脂環式エポキシ等のエポキシ系化合物、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル等のオキセタン化合物を例示できる。
【0023】
上述した樹脂材料は、光重合開始剤の添加を条件として、紫外線の照射により硬化させることができる。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のラジカル重合開始剤、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物等のカチオン重合開始剤を単独でまたは混合して使用できる。
【0024】
フィラーは、主として、防眩層2の表面に微細な凹凸を形成し、外光を拡散させる機能を付与する材料である。フィラーとしては、有機微粒子及び無機微粒子の一方または両方を使用することができる。
【0025】
有機微粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等の透光性樹脂材料からなる樹脂粒子を使用できる。屈折率や樹脂粒子の分散を調整するために、材質(屈折率)の異なる2種類以上の樹脂粒子を混合して使用しても良い。
【0026】
光学機能層の基材樹脂に添加する無機微粒子は、平均粒径が10~200nmのナノ粒子であることが好ましい。
【0027】
無機微粒子としては、シリカ微粒子や、金属酸化物微粒子、各種の鉱物微粒子等を使用することができる。シリカ微粒子としては、例えば、コロイダルシリカや(メタ)アクリロイル基等の反応性官能基で表面修飾されたシリカ微粒子等を使用することができる。金属酸化物微粒子としては、例えば、アルミナや酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタニア、ジルコニア等を使用することができる。鉱物微粒子としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト等を使用することができる。鉱物微粒子は、天然物及び合成物(置換体、誘導体を含む)のいずれであっても良く、両者の混合物を使用しても良い。好物微粒子は、防眩層形成用の塗工液の粘性を増加させ、樹脂粒子及び無機微粒子の沈降を抑制して、光学機能層の表面の凹凸形状を調整する機能を有する。鉱物微粒子の中でも、層状有機粘土がより好ましい。層状有機粘土とは、膨潤性粘土の層間に有機オニウムイオンを導入したものをいう。有機オニウムイオンは、膨潤性粘土の陽イオン交換性を利用して有機化することができるものであれば制限されない。鉱物微粒子として、層状有機粘土鉱物を用いる場合、上述した合成スメクタイトを好適に使用できる。
【0028】
また、防眩層形成用の塗工液には、レベリング剤を添加しても良い。レベリング剤は、乾燥過程の塗膜の表面に配向して、塗膜の表面張力を均一化し、塗膜の表面欠陥を低減させる機能を有する。
【0029】
更に、光学機能層形成用の樹脂組成物には、適宜有機溶剤を添加しても良い。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジアセトンアルコール等のケトンアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、N-メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、水等のうち、1種類または2種類以上を混合して使用できる。
【0030】
低反射層3は、低反射層3の表面で反射する光を、低反射層3及び防眩層2の界面で反射する光との干渉で打ち消すことにより、反射防止フィルム10の表面反射を低減する光学機能層である。低反射層3は、バインダー樹脂と、必要に応じて添加される低屈折率微粒子とを含有する塗工液を防眩層2の表面に塗布し、塗膜を硬化させることにより形成することができる
【0031】
低反射層3の形成に用いるバインダー樹脂は、特に限定されず、防眩層2の材料として例示した化合物を使用することができる。
【0032】
低屈折率微粒子としては、例えば、LiF、MgF、3NaF・AlFまたはAlF(いずれも、屈折率1.4)、もしくはNa3AlF6(氷晶石、屈折率1.33)等の微粒子や、内部に空隙を有するシリカ微粒子を好適に使用することができる。内部に空隙を有するシリカ微粒子は、空隙の部分を空気の屈折率(約1)とすることができるので、低反射層3の低屈折率化に遊離である。具体的には、多孔質シリカ粒子、シェル(殻)構造のシリカ粒子を用いることができる。
【0033】
尚、低反射層3を形成するための塗工液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、例えば、防眩層2の材料として例示したものを使用することができる。また、添加剤としては、例えば消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、光増感剤等が挙げられる。
【0034】
また、低反射層形成用の塗工液の塗膜を紫外線照射により硬化させる場合は、塗工液に光重合開始剤が添加される。光重合開始剤としては、防眩層2の材料として例示したものを使用することができる。
【0035】
本発明に係る反射防止フィルム10は、以下の条件を同時に満足する。
(1)算術平均粗さRaが0.08~0.15μm
(2)内部ヘイズが15~40%、かつ、外部ヘイズが5~13%
(3)SCI反射率が0.8~1.2%
【0036】
算術平均粗さRaは、反射防止フィルム10の表面粗さの指標であり、上記の範囲内である場合、外光の映り込みを低減すると共に、内部ヘイズ、外部ヘイズ及びSCI反射率を上記範囲内に制御することができる。算術平均粗さRaが0.08μm未満の場合、表面が平滑であることから、外光の像の映り込みが強くなる。また、算術平均粗さRaが0.08μm未満の場合、正反射光が強くなり防眩性が低下する。一方、算術平均粗さRaが0.15μmを超える場合、SCI反射率の上限値を1.2%以下とすることができず、防眩性が低下する。また、算術平均粗さRaが0.15μmを超える場合、表面が粗くなることにより耐ギラツキ性が悪化する。
【0037】
内部ヘイズ及び外部ヘイズは、主に、反射防止フィルム10を表示パネルの前面に設けた場合のギラツキ性に影響するパラメータである。内部ヘイズ及び外部ヘイズが上記の範囲内である場合、高精細な表示パネル(例えば300ppi以上)に用いた場合においても良好な耐ギラツキ性(ギラツキが少ない)が得られる。内部ヘイズが15%未満の場合、透過光の内部拡散が弱くなるため、耐ギラツキ性が悪化する。一方、内部ヘイズが40%を超えると、透過光の内部拡散が強くなり、鮮明な表示画像が得られなくなる。また、外部ヘイズが5%未満の場合、表面が平滑であることにより、耐ギラツキ性は向上するが、防眩性が低下し、外光の映り込みが増加する。一方、外部ヘイズが13%を超える場合、表面が粗いことにより、耐ギラツキ性が悪化する。
【0038】
SCI反射率は、SCI(Specular Component Include)方式で測定した、正反射光を含む全ての反射光の反射率である。SCI反射率が0.8%未満の場合、表面粗さが小さいため、外光の映り込みが強くなる。一方、SCI反射率が1.2%を超える場合、反射光の眩しさが強くなり、表示画像の視認性が低下する。
【0039】
本発明によれば、上記条件を同時に満足することにより、周囲の映り込みが少なく、反射光の眩しさが低減され(防眩性に優れ)、300ppi以上の高精細な表示パネルに用いた場合でもギラツキが抑制された反射防止フィルムを実現することができる。
【0040】
また、本発明に係る反射防止フィルム10は、上記条件を同時に満足することに加えて、JIS K 7374:2007に準拠し、2.0mm幅の光学くしを用いて測定した反射像鮮明度が2~50%であることが好ましい。反射像鮮明度が50%を超える場合、外光の映り込みが強くなるため好ましくない。反射像鮮明度は低いほど良いが、2%以上が実用的な値である。
【0041】
また、本発明に係る反射防止フィルム10は、上記条件を同時に満足することに加えて、JIS K 7374:2007に準拠し、0.5mm幅の光学くしを用いて測定した透過像鮮明度が30~70%であることが好ましい。透過像鮮明度が30%未満の場合、反射防止フィルム10を透過した像がぼやけ、鮮明な画像が得られなくなるため好ましくない。一方、透過像鮮明度が70%を超える場合、表面粗さが小さいことにより、外光の映り込みが強くなると共に、防眩性が低下するため好ましくない。
【0042】
尚、本発明に係る反射防止フィルム10は、典型的には、有機ELパネルや液晶パネル等の表示パネルの最表面に設けられ、表示パネルと共に表示装置を構成する。反射防止フィルムと表示パネルとの間には、タッチパネルが設けられる場合もある。ただし、反射防止フィルム10の積層位置は、所望の光学特性を発揮できる限り、特に限定されない。また、反射防止フィルム10の低反射層3上に、帯電防止層、防汚層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層等の光学機能層を1層以上設けても良い。
【実施例0043】
以下、実施形態に係る反射防止フィルムを具体的に実施した実施例を説明する。
【0044】
(実施例1、比較例2~4)
透明基材として、厚み40μmのTACフィルムを使用した。バインダー樹脂、フィラー、光重合開始剤及び溶剤を含有する防眩層形成用塗工液を調整した。透明基材上に防眩層形成用塗工液を硬化後の膜厚が5μmとなるように塗布し、乾燥させた後、紫外線照射により塗膜を重合硬化させ、防眩層を形成した。次に、防眩層上に、バインダー樹脂及び内部に空隙を有するシリカ微粒子(粒径75nm)を含有する低反射層形成用塗工液を調整した。防眩層上に低反射層形成用塗工液を硬化後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、乾燥させた後、紫外線照射により塗膜を重合硬化させ、低反射層を形成した。尚、実施例1及び比較例2~4において、フィラーの粒径及び添加量を異ならせることにより、表1に示す算術平均粗さRaを有する反射防止フィルムを得た。
【0045】
(比較例1)
透明基材として、厚み40μmのTACフィルムを使用した。バインダー樹脂、光重合開始剤及び溶剤を含有するハードコート層形成用塗工液を調整した。透明基材上にハードコート層形成用塗工液を硬化後の膜厚が5μmとなるように塗布し、乾燥させた後、紫外線照射により塗膜を重合硬化させ、ハードコート層を形成した。次に、防眩層上に実施例1で用いたものと同じ低反射層形成用塗工液を硬化後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、乾燥させた後、紫外線照射により塗膜を重合硬化させ、低反射層を形成した。
【0046】
実施例及び比較例で用いた防眩層形成用塗工液及び低反射層形成用塗工液の組成は次の通りである。
【0047】
実施例1及び比較例1~4に係る反射防止フィルムを用いて、算術平均粗さRa、ヘイズ(全ヘイズ、内部ヘイズ、外部ヘイズ)、SCI反射率Y、反射像鮮明度、透過像鮮明度を測定した。
【0048】
[算術平均粗さRa]
実施例1及び比較例1~4に係る反射防止フィルムの表面形状を、非接触表面・層断面形状計測システム(測定装置:バートスキャンR3300FL-Lite-AC、解析ソフトウェア:VertScan4、株式会社菱化システム製)を用いて光干渉方式により測定し、解析ソフトウェアVS-Viewerを用い、測定領域全体のデータに基づいて算術平均粗さRaを算出した。
【0049】
なお、VS-Viewerの断面プロファイル(マルチライン)における解析条件で平均的な凹凸が生成される。断面プロファイル(マルチライン)で設定した測定カーソル6点の断面プロファイルから求められる算術平均粗さRaの平均値を、本発明の凹凸の算術平均粗さRaと定義する。
【0050】
より詳細には、装置の測定ソフトウェアを用いて以下の条件により測定を行い、表面凹凸の測定結果である画像ファイルを取得した。
・光学条件
カメラ:ソニー社製 HR-50 1/3インチ
対物レンズ: 10XDI(10倍)
結像レンズ(鏡筒):0.5倍
ズームレンズ:1倍
光源/波長フィルタ:520nm
NDフィルタ:不使用
A-Stop(開口絞り):不使用(全開)
F-Stop(視野絞り):不使用(全開)
・測定条件
測定デバイス:ピエゾ
測定モード:Phase
スキャン速度:4μm/sec
スキャンレンジ:-10~10μm
有効ピクセル数:50%
測定領域:704.192μm×938.923μm
【0051】
取得した画像ファイルを、装置の解析ソフトウェアを用いて以下の条件で解析を行った。
・解析条件(VS-Viewer6)
面補正:4次
Sフィルタ:自動
Lフィルタ:不使用
・粒子解析条件(VS-Viewer6)
解析種類:突解析
画像補正:なし
高さ閾値:0.1μm
粒子整形:なし
【0052】
[Raの算出方法]
面補正(4次)及びSフィルタを適用した取得画像において、測定カーソルを縦方向(X方向)の200μm、500μm及び800μmの位置と、横方向(Y方向)の200μm、400μm及び600μmの位置に設定した。VS-Viewerの断面プロファイルにて自動的に算出される、各カーソル位置(X方向に平行な断面3カ所及びY方向に平行な断面3カ所の合計6カ所)のRa値を取得し、取得した値の平均値(算術平均)を測定結果とした。
【0053】
[ヘイズ]
ヘイズは、JIS K 7136:2000に準拠し、ヘイズメーター(NDH-4000、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
【0054】
[SCI反射率Y]
SCI反射率Yは、JIS Z 8722に準拠し、分光測色計(CM-2600d、コニカミノルタジャパン株式会社製)を用いて測定した。測定条件は、測定径/照明径をφ8mm/φ11mm、観察条件を10°視野、観察光源をD65とした。測定径(8mm)で測定した場合、塗布ムラにより反射率が相対的に高い部分と低い部分とを1つの視野内に収めることができるため、平均的なSCI反射率の測定値を得ることができる。また、10°視野は、50cmの距離で直径8.8cmの範囲を視認することに相当するが、車載用途の場合、近い距離で画像表示装置の比較的広い面積を視認することが多いため、10°視野での測定が適している。D65は、国際照明委員会で定義された欧州/北欧の平均的な正午の光であり、外光に近い波長分布を持っているため測定に適する。
【0055】
[反射像鮮明度(写像性)]
反射像鮮明度は、JIS K 7374:2007に準拠し、写像性測定器(ICM-1T、スガ試験器株式会社製)を用いて、45度、光学くし幅2.0mmで測定した。
【0056】
[透過像鮮明度]
透過像鮮明度は、JIS K 7374:2007に準拠し、写像性測定器(ICM-1T、スガ試験器株式会社製)を用いて、光学くし幅0.5mmで測定した。
【0057】
実施例1及び比較例1~4に係る反射防止フィルムについて、外光の映り込みの有無と、耐ギラツキ性とを評価した。評価方法は次の通りである。
【0058】
[外光の映り込み]
図2は、実施例及び比較例における外光の映り込みの評価方法を示す図である。
【0059】
実施例1及び比較例1~4に係る反射防止フィルムを黒色アクリル板に粘着剤を介して重ね合わせ、反射防止フィルム付黒色アクリル板の反射防止フィルム面に垂直な直線に対して15度の角度で入射した蛍光灯の光の反射光を目視にて確認し、蛍光灯の像の認識可否で判定した。外光の映り込みの有無を100人の評価者の目視判定により評価した。評価結果は蛍光灯の像の映り込みを感じなかった人が70人以上の場合を「○」、30人以上70人未満の場合を「△」、30人未満の場合を「×」とした。
【0060】
[耐ギラツキ性]
耐ギラツキ性は、各実施例及び各比較例の光学積層体を透明な粘着層を介して液晶モニター(高精細IGZO液晶パネルLQ079L1SX02、7.9インチ、326ppi、SHARP社製)の画面表面に貼り合わせた後、液晶モニターを緑色表示状態にし、暗室下で画面表面の中心から垂直に50cm離れた場所より液晶モニターを見た場合のギラツキの有無を100人の評価者の目視判定により評価した。評価結果は、ギラツキを感じなかった人が70人以上の場合を「○」、30人以上70人未満の場合を「△」、30人未満の場合を「×」とした。
【0061】
表1に、実施例1及び比較例1~4に係る反射防止フィルムの測定値と評価結果を併せて示す。
【0062】
【0063】
実施例1に係る反射防止パネルは、算術平均粗さ、内部ヘイズ、外部ヘイズ及びSCI反射率が上述した範囲内であることにより、外光の映り込みがなく、反射光による眩しさが抑制され、326ppiの高精細な表示パネルに用いた場合でもギラツキが抑制されていた。また、透過像鮮明度が上述した範囲内であることによって、表示パネルの表示画像がぼやけず、鮮明な画像として視認できることが確認された。
【0064】
これに対して、比較例1に係る反射防止フィルムは、防眩層の代わりにハードコート層を設けたため、ギラツキはなかったが、表面が平滑であることによって、外光の映り込みが強く、防眩性が悪かった。
【0065】
比較例2及び3に係る反射防止フィルムは、算術平均粗さが上述した下限値未満であるため、表面が平滑であり、外光の映り込みを抑制することができなかった。また、内部ヘイズが上述した下限値を大きく下回ったことにより、実施例1と比べて耐ギラツキ性が悪化した。
【0066】
比較例4に係る反射防止フィルムは、算術平均粗さが上述した上限値を超えるため、表面粗さが大きくなり、外光の映り込みはなかったが、耐ギラツキ性が悪化した。また、SCI反射率も上述した上限値を超えるため、防眩性も不十分であった。
【0067】
以上より、本発明に係る反射防止フィルムは、外光の映り込みが少なく、反射光の眩しさとギラツキが抑制されていることから、画像表示装置に用いる光学フィルムとして好適であり、特に、安全に関わる情報等を表示する車載表示装置の反射防止フィルムに適した光学特性を有することが確認された。