(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073067
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
B60Q 5/00 20060101AFI20240522BHJP
B60R 19/48 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B60Q5/00 680A
B60Q5/00 620C
B60R19/48 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184064
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大介
(72)【発明者】
【氏名】杉山 陽一
(72)【発明者】
【氏名】江指 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】林 暁彦
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でありながら、計測位置におけるホーンの音量を高くできる車両前部構造を提供する。
【解決手段】車両前部構造は、車両10の前端に配されるバンパカバー14と、前記バンパカバー14に設けられるグリル開口18と、前記グリル開口18の後方に配置される熱交換器25と、前記熱交換器25と前記バンパカバー14との間に固定されるホーン28と、前記グリル開口18を通過した風を前記熱交換器に導くために、前記バンパカバー14と前記熱交換器25との間に配されたダクト30と、を備え、前記ホーン28の上端は、前記グリル開口18の上端より上方に位置しており、前記ダクト30は、前記ホーン28の上側において前記熱交換器25から前記バンパカバー14に向かって延びる上壁34を含み、前記上壁34は、その前端がその後端より下に位置するように傾斜している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前端に配されるバンパカバーと、
前記バンパカバーに設けられるグリル開口と、
前記グリル開口の後方に配置される熱交換器と、
前記熱交換器と前記バンパカバーとの間に固定されるホーンと、
前記グリル開口を通過した風を前記熱交換器に導くために、前記バンパカバーと前記熱交換器との間に配されたダクトと、
を備え、
前記ホーンの上端は、前記グリル開口の上端より上方に位置しており、
前記ダクトは、前記ホーンの上側において前記熱交換器から前記バンパカバーに向かって延びる上壁を含み、
前記上壁は、その前端がその後端より下に位置するように傾斜している、
ことを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両前部構造であって、
前記上壁の前端は、前記グリル開口の上端近傍において、前記バンパカバーに近接または接触している、ことを特徴とする車両前部構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両前部構造であって、
前記ダクトは、さらに、前記熱交換器の車幅方向両側から前記バンパカバーに向かって延びる一対の側壁を含み、
前記上壁の前端が前記側壁の前端より車両前方に位置するように、前記上壁は、前記側壁に対して庇状に飛び出ている、
ことを特徴とする車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、バンパカバーの背後にホーンが配置された車両前部構造を開示する。
【背景技術】
【0002】
通常、車両の前部、かつ、フードの下側には、動力源(例えば、エンジンやモータ等)またはエネルギ源(例えばバッテリ等)が配置されるパワーユニット室が設けられている。このパワーユニット室には、ホーンが固定配置される。ホーンは、車両の前方に位置する、他の道路使用者に警報するための装置である。かかるホーンの警報音は、車両から規定の基準距離だけ前方となる計測位置において計測される音量が、基準値範囲内であることが法規で定められている。
【0003】
ここで、ホーンからの音は、通常、グリル開口を通じて車外に放出される。そのため、ホーンの正面にグリル開口が位置しない、あるいは、ホーンとグリル開口との間に他部材が存在する場合、計測位置における音量が低下する。
【0004】
特許文献1では、バンパカバーとホーンとの間にグリルインナーと呼ばれる他部材が介在する構造が開示されている。特許文献1では、このグリルインナーに、ホーンからバンパカバーに向かって拡径しながら延びるメガホン部材を埋め込んでいる。かかる構成とすることで、ホーンからの音が、グリルインナーで阻害されることなく、ある程度効率的に、計測位置に伝達される。結果として、計測位置における音量を高く保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、ホーンの音を伝達するために、メガホンという専用部材を用意している。そのため、部品点数の増加やコストの増加という別の問題を招く。また、特許文献1では、ホーンは、グリル開口より上側に位置している。そのため、メガホンを利用したとしても、ホーンの音を、グリル開口に効率的に導くことは難しかった。結果として、特許文献1では、計測位置におけるホーンの音量を十分に高くすることが難しかった。
【0007】
そこで、本明細書では、簡易な構成でありながら、計測位置におけるホーンの音量を高くできる車両前部構造を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する車両前部構造は、車両の前端に配されるバンパカバーと、前記バンパカバーに設けられるグリル開口と、前記グリル開口の後方に配置される熱交換器と、前記熱交換器と前記バンパカバーとの間に固定されるホーンと、前記グリル開口を通過した風を前記熱交換器に導くために、前記バンパカバーと前記熱交換器との間に配されたダクトと、を備え、前記ホーンの上端は、前記グリル開口の上端より上方に位置しており、前記ダクトは、前記ホーンの上側において前記熱交換器から前記バンパカバーに向かって延びる上壁を含み、前記上壁は、その前端がその後端より下に位置するように傾斜している、ことを特徴とする。
【0009】
この場合、前記上壁の前端は、前記グリル開口の上端近傍において、前記バンパカバーに近接または接触してもよい。
【0010】
また、前記ダクトは、さらに、前記熱交換器の車幅方向両側から前記バンパカバーに向かって延びる一対の側壁を含み、前記上壁の前端が前記側壁の前端より車両前方に位置するように、前記上壁は、前記側壁に対して庇状に飛び出ていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本明細書で開示する技術によれば、ホーンからの音が上壁によりグリル開口に導かれるため、簡易な構成でありながら、計測位置におけるホーンの音量を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】本例におけるホーンからの音の進行方向を示す模式図である。
【
図5】比較例の車両における、ホーンからの音の進行方向を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して車両前部構造について説明する。
図1は、車両10の正面図であり、
図2は、
図1のA-A断面図である。なお、各図において、Up,Fr,Rhは、それぞれ、車両10の上方、前方、右側方を示している。
【0014】
車両10の前端面は、バンパカバー14で覆われている。バンパカバー14は、車両10の外側から視認できる意匠パネルである。このバンパカバー14には、風を通過させるためのグリル開口18が、設けられている。グリル開口18には、グリル部材19が配置される。グリル部材19は、グリル開口18を複数の小孔に区分けする柵状、格子状、または、網状の部材である。
【0015】
また、バンパカバー14の上端と、ウインドシールド13と、の間には、フード12が配されている。このフード12の下側には、動力源(例えばエンジンやモータ等)またはエネルギ源(例えばバッテリ等)が収容されるパワーユニット室16が設けられている。
【0016】
図2に示す通り、バンパカバー14の背後には、バンパリーンフォース40が、配置されている。バンパリーンフォース40は、車幅方向に長尺な骨格部材である。本例では、バンパリーンフォース40を、グリル開口18と同じ高さ位置に設けている。また、バンパリーンフォース40とバンパカバー14との間には、衝突時の衝撃を吸収するアブソーバ42が配置されている。
【0017】
パワーユニット室16には、さらに、熱交換器25であるラジエータ22およびコンデンサ24が設けられている。これら熱交換器25は、バンパリーンフォース40より車両後方において、ラジエータサポート26によって支持されている。本例において、コンデンサ24およびラジエータ22は、車両10前後に並んでいる。また、コンデンサ24およびラジエータ22は、少なくともその一部が、グリル開口18と対向する位置に設けられている。
【0018】
熱交換器25とバンパカバー14との間には、グリル開口18を通過した風を熱交換器25に導くためのダクト30が配置されている。
図3は、ダクト30の概略的な斜視図である。
図3に示す通り、ダクト30は、一対の側壁32と、上壁34と、を含む。側壁32は、熱交換器25の車幅方向両端から車両前方に延びる壁である。かかる側壁32は、例えば、その前端が、バンパリーンフォース40に近接又は当接する。
【0019】
上壁34は、一対の側壁32の上端同士を連結する壁である。かかる上壁34は、例えば、その前端が、バンパカバー14に近接又は当接する。別の見方をすると、上壁34は、その前端が、側壁32の前端よりも車両前方に位置するように、側壁32に対して庇状に張り出している。また、
図2、
図3に示す通り、本例において、上壁34は、グリル開口18の上端よりも上側に位置している。また、上壁34は、車両前方に進むにつれて下方に進むように傾斜した傾斜部36を有する。かかる傾斜部36を設ける理由については後述する。
【0020】
パワーユニット室16には、さらに、ホーン28が配置されている。ホーン28は、車両10の前方に位置する、他の道路使用者に警報するための装置である。このホーン28は、図示しないブラケットを介してラジエータサポート26に対して固定されている。
図2に示す通り、ダクト30の上壁34は、このホーン28の上側に位置している。また、
図1および
図2に示すように、本例において、ホーン28は、その上端が、グリル開口18の上端より上側となる高さに配置されている。より具体的には、ホーン28は、車両前方から見たときに、その半分以上が、バンパカバー14で覆われて見えない位置に配されている。別の言い方をすれば、本例では、ホーン28の位置を考慮することなく、グリル開口18を含む、車両前面を自由にデザインしている。その結果、本例によれば、車両10の意匠性が向上する。
【0021】
ただし、こうした配置にした場合、ホーン28からの音が、効率的に、車外に伝わらないおそれがある。そして、この場合、ホーン28の保安基準を満たせないおそれがあった。すなわち、ホーン28に関しては、車両から所定距離だけ前方に位置する計測位置において、基準値範囲内の音量が確保できることが保安基準として規定されている。しかし、グリル開口18が、ホーン28の真正面に位置しない場合、ホーン28からの音がバンパカバー14で遮られ、計測位置における音量が不十分となるおそれがある。
【0022】
本例は、こうした問題を解決するために、ダクト30の上壁34に傾斜部36を設けている。傾斜部36は、
図2に示す通り、前下がりに傾斜しており、当該傾斜部36の前端は、グリル開口18の上端近傍において、バンパカバー14に近接または接触している。かかる構成とすることで、ホーン28から出力された音が、グリル開口18に導かれ、さらに、当該グリル開口18から車外に効率的に伝達される。
【0023】
これについて
図4および
図5を参照して説明する。
図4は、本例における、ホーン28からの音の進行方向を示す模式図である。また、
図5は、比較例の車両10における、ホーン28からの音の進行方向を示す模式図である。
【0024】
比較例では、ダクト30の上壁34は、傾斜することなく、ほぼ水平方向に延びている。ここで、ホーン28から出力されることは、通常、全方位に広がる。そのため、ホーン28の正面にグリル開口18が位置しない場合、音の多くは、バンパカバー14または上壁34に衝突する。バンパカバー14に衝突した音のうち、一部は、反射してグリル開口18の外側に出るが、バンパカバー14に衝突した音の多くは、パワーユニット室16内で徐々に減衰していく。また、水平方向に延びる上壁34に衝突した音も、その多くは、グリル開口18に到達することなく、パワーユニット室16内で徐々に減衰していく。結果として、
図5に示す比較例では、車外に出ていく音が少なく、計測位置における音量を高く保つことが難しかった。
【0025】
一方、本例では、ホーン28から出力された音は、グリル開口18から車外に出る、あるいは、ダクト30の上壁34に衝突する。ダクト30の上壁34に衝突した音の多くは、反射して、あるいは、上壁34を伝わって、グリル開口18に向かう。結果として、本例によれば、ホーン28から出力された音の多くが、グリル開口18を通じて車外に伝達される。その結果、計測位置における音量を高く保つことができる。
【0026】
また、通常、パワーユニット室16には、動力源やバッテリなどの発熱体が配置されるため、ホーン28周辺の温度は、大きく変動する。そして、周辺温度の変化に伴い、ホーン28から出力される音のピーク周波数も変化する。また、通常、高周波数の音は、低周波数の音に比べて減衰しやすい。そのため、ホーン28から出力される音のピーク周波数が変化すると、全体としての減衰度合いも変化し、計測位置における音量が低下する場合がある。本例では、多くの音を車外に伝達できるため、温度変化に伴いピーク周波数が変化したとしても、計測位置における音量を高く保つことができる。
【0027】
また、本例は、ダクト30の上壁34を利用して、ホーン28の音をグリル開口18に導いている。ここで、上壁34は、走行風を熱交換器25に導くために通常の車両に当然に配置される部材である。かかる部材を利用して音をグリル開口18に導くことで、部品点数の増加を抑え、車両全体としてのコストや重量の増加を防止できる。さらに、本例では、上壁34の前端をバンパカバー14に近接または接触させている。換言すれば、上壁34の前端とバンパカバー14との間に大きな隙間を設けていない。かかる構成とすることで両者の隙間からパワーユニット室16の奥側に戻る音を低減できる。結果として、計測位置における音量をより確実に高く保つことができる。
【0028】
なお、これまで説明した構成は一例であり、ホーン28の上側に上壁34が配され、当該上壁34の一部が、グリル開口18の上端近傍に向かって前下がりに傾斜しているのであれば、その他の構成は、適宜変更されてもよい。例えば、ホーン28の配置や、ダクト30の詳細な形状等は、適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10 車両、12 フード、13 ウインドシールド、14 バンパカバー、16 パワーユニット室、18 グリル開口、19 グリル部材、22 ラジエータ、24 コンデンサ、25 熱交換器、26 ラジエータサポート、28 ホーン、30 ダクト、32 側壁、34 上壁、36 傾斜部、40 バンパリーンフォース、42 アブソーバ。