(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073068
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】電気集塵装置、および、電気集塵装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B03C 3/68 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
B03C3/68 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184067
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田岡 智浩
(72)【発明者】
【氏名】永倉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】中野 飛翔
【テーマコード(参考)】
4D054
【Fターム(参考)】
4D054CA12
4D054CA20
4D054CB10
4D054EA30
(57)【要約】
【課題】設計の自由度を高めつつ、ガスに含まれる可燃性ガスの着火を抑えることができる電気集塵装置、および、電気集塵装置の制御方法を提供すること。
【解決手段】本開示に係る電気集塵装置は、ガスが流動する本体部と、前記本体部に設けられた放電極と、前記放電極に電圧を供給する電源部と、前記電源部と前記放電極とを接続する電源ケーブルと、前記電源ケーブルの途中位置に設けられた接地開閉器と、大気に連通する連通部と、前記電源ケーブル及び前記接地開閉器が設けられた空洞部とを有し、前記本体部に接続されたダクトと、前記ダクトへ不活性ガスまたは空気を供給する供給部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが流動する本体部と、
前記本体部に設けられた放電極と、
前記放電極に電圧を供給する電源部と、
前記電源部と前記放電極とを接続する電源ケーブルと、
前記電源ケーブルの途中位置に設けられた接地開閉器と、
大気に連通する連通部と、前記電源ケーブル及び前記接地開閉器が設けられた空洞部とを有し、前記本体部に接続されたダクトと、
前記ダクトへ不活性ガスまたは空気を供給する供給部と、
を備える、
電気集塵装置。
【請求項2】
前記供給部は、前記本体部に対するガスの供給が停止したことを条件に、前記ダクトの前記空洞部への不活性ガスまたは空気の供給を開始する、
請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記ダクトの前記空洞部の可燃性ガスの濃度を検知する検知部をさらに備え、
前記供給部は、前記ダクトの前記空洞部への不活性ガスまたは空気の供給を開始してから前記検知部により検知された可燃性ガスの濃度が第1閾値以下に達したことを条件に、不活性ガスまたは空気の供給を停止する、
請求項2に記載の電気集塵装置。
【請求項4】
前記可燃性ガスは、一酸化炭素を含み、
前記供給部は、前記ダクトの前記空洞部への不活性ガスまたは空気の供給を開始してから前記検知部により検知された一酸化炭素の濃度が第2閾値以下に達したことを条件に、不活性ガスまたは空気の供給を停止する、
請求項3に記載の電気集塵装置。
【請求項5】
前記供給部は、前記ダクトの前記空洞部への不活性ガスまたは空気の供給を開始してから所定時間が経過したことを条件に、不活性ガスまたは空気の供給を停止する、
請求項2に記載の電気集塵装置。
【請求項6】
前記ダクトの前記空洞部への不活性ガスまたは空気の供給時における可燃性ガスの希釈度合いの時間経過を示す予測モデルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記供給部は、前記記憶部に記憶された前記予測モデルを参照して、前記ダクトの前記空洞部への不活性ガスまたは空気の供給を開始してから前記ダクトの前記空洞部における前記可燃性ガスの濃度が第3閾値以下に低下するまでの所要時間を前記所定時間として設定する、
請求項5に記載の電気集塵装置。
【請求項7】
前記連通部は、前記ダクトにおける前記接地開閉器に対応する位置に設けられる、
請求項1から6のいずれか1項に記載の電気集塵装置。
【請求項8】
電気集塵装置の制御方法であって、
前記電気集塵装置は、
ガスが流動する本体部を備え、
前記制御方法は、
前記本体部にガスを流動させる工程と、
前記本体部に設けられた放電極に電圧を印加する工程と、
前記本体部に接続され、大気に連通する連通部を有するダクトへ不活性ガスまたは空気を供給する工程と、
を含む、
電気集塵装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気集塵装置、および、電気集塵装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本体部を流動するガスに含まれる粉塵を電極に静電吸着させて収集する電気集塵装置が広く知られている。例えば、特許文献1に記載の装置では、電極に対する電圧の供給の有無を切り替える接地開閉器が保護ダクトの内部に設けられている。そして、保護ダクトの内部に不活性ガスを充填することで、本体部から保護ダクトの内部にガスが流出したとしても、ガスに含まれる可燃性ガスが接地開閉器の動作に伴って着火することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明においては、保護ダクトの内部に不活性ガスを気密状に封止することが必要となり、電気集塵装置の設計の自由度を高める上でなお改善の余地を残していた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、設計の自由度を高めつつ、ガスに含まれる可燃性ガスの着火を抑えることができる電気集塵装置、および、電気集塵装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のある態様の電気集塵装置は、ガスが流動する本体部と、前記本体部に設けられた放電極と、前記放電極に電圧を供給する電源部と、前記電源部と前記放電極とを接続する電源ケーブルと、前記電源ケーブルの途中位置に設けられた接地開閉器と、大気に連通する連通部と、前記電源ケーブル及び前記接地開閉器が設けられた空洞部とを有し、前記本体部に接続されたダクトと、前記ダクトへ不活性ガスまたは空気を供給する供給部と、を備える。
【0007】
本発明のある態様の電気集塵装置の制御方法において、前記電気集塵装置は、ガスが流動する本体部を備え、前記制御方法は、前記本体部にガスを流動させる工程と、前記本体部に設けられた放電極に電圧を印加する工程と、前記本体部に接続され、大気に連通する連通部を有するダクトへ不活性ガスまたは空気を供給する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、設計の自由度を高めつつ、ガスに含まれる可燃性ガスの着火を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る電気集塵装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】可燃性ガス及び一酸化炭素の濃度の時間変化の一例を示す模式図である。
【
図3】接地開閉器を開操作する際の処理内容を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る電気集塵装置の概略構成を示す模式図である。
【
図5】可燃性ガスの濃度の時間変化の一例を示す模式図である。
【
図6】接地開閉器を開操作する際の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
以下、電気集塵装置の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、電気集塵装置10の本体部11は、筒状のダクト12に接続されている。ダクト12は、長手方向の途中部分が直角に屈曲している。ダクト12の第1端部は本体部11に接続され、ダクト12の第2端部は電源部13に接続されている。本体部11とダクト12との間にはパッキン14が設けられており、本体部11の内部とダクト12の空洞部12Aとは気密状に隔離されている。
【0012】
本体部11の内部には放電極11Aが設けられている。放電極11Aは、平板状をなす複数の電極が互いに連結されて構成されている。複数の電極は、ガスの流動方向と交差する方向に並列して配置されており、隣り合う電極の間の空間域をガスが流動する。本体部11の内部には、ガスの流速を検知する流速センサ15が設けられている。
【0013】
ダクト12の空洞部12Aには電源ケーブル16が設けられている。電源ケーブル16は、ダクト12の一端側から他端側にかけて延びている。電源ケーブル16の第1端部は、パッキン14を介して放電極11Aに接続されている。電源ケーブル16の第2端部は、電源部13に接続されている。電源部13は、高圧電源装置であって、電源ケーブル16を介して放電極11Aに高圧の電力を供給する。
【0014】
電源ケーブル16の途中位置には、接地開閉器17が設けられている。接地開閉器17は、閉操作された場合には、電源部13と放電極11Aとを電源ケーブル16を介して電力供給可能に接続し、開操作された場合には、電源部13から放電極11Aへの電源ケーブル16を介した電力の供給を遮断する。
【0015】
ダクト12における電源部13との接続部位の近傍には、ダクト12の空洞部12Aを大気に連通させる連通部18が設けられている。すなわち、連通部18は、ダクト12における接地開閉器17に対応する位置に設けられており、連通部18と接地開閉器17とは近接して配置されている。ダクト12の空洞部12Aには、例えば、パッキン14の劣化等に起因して、本体部11からダクト12の空洞部12Aに流出したガスに含まれる可燃性ガスの濃度を検知する濃度センサ19が設けられている。濃度センサ19は、ガスの成分ごとにガスの濃度を検知可能に構成されている。濃度センサ19は、例えば、可燃性ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を検知可能に構成されている。
【0016】
ダクト12における本体部11との接続部位の近傍には、ダクト12の空洞部12Aに不活性ガスまたは空気を供給する供給ユニット19Aの供給口が開口している。供給ユニット19Aは、例えば、不活性ガスまたは空気を貯留するタンクと、タンクに貯留された不活性ガスまたは空気をダクト12の空洞部12Aに加圧して供給する加圧ポンプとを備える。供給ユニット19Aは、制御装置20からの制御信号に基づいて、不活性ガスまたは空気の供給を制御する。
【0017】
制御装置20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部:circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め制御装置20のHDDやフラッシュメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能なコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されており、コンピュータ読み取り可能な記録媒体がドライブ装置に装着されることで制御装置20のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0018】
制御装置20は、例えば、供給部21を備える。
【0019】
供給部21は、供給ユニット19Aの制御を通じて、ダクト12の空洞部12Aのガスに含まれる可燃性ガスを希釈するように不活性ガスまたは空気を供給する。
【0020】
供給部21は、例えば、本体部11に対するガスの供給が停止したことを条件に、ダクト12の空洞部12Aへの不活性ガスまたは空気の供給を開始する。供給部21は、例えば、流速センサ15から入力されるセンサ信号に基づいて、本体部11に対するガスの供給が停止したことを検知する。供給部21は、例えば、ダクト12の空洞部12Aの可燃性ガスの濃度が過剰になった場合など、本体部11に対するガスの供給が停止したこととは別の条件に基づいて、ダクト12の空洞部12Aへの不活性ガスまたは空気の供給を開始してもよい。
【0021】
供給部21は、ダクト12の空洞部12Aへの不活性ガスまたは空気の供給を開始してから濃度センサ19により検知された可燃性ガスの濃度が第1閾値以下に達したことを条件に、不活性ガスまたは空気の供給を停止する。供給部21は、例えば、ダクト12の空洞部12Aへの不活性ガスまたは空気の供給を開始してから濃度センサ19により検知された一酸化炭素の濃度が第2閾値以下に達したことを条件に、不活性ガスまたは空気の供給を停止する。
【0022】
図2は、ダクト12への不活性ガスまたは空気の供給を開始してからの可燃性ガス及び一酸化炭素の濃度の時間変化の一例を示す模式図である。
図2に示す例では、可燃性ガス及び一酸化炭素のいずれについても、ダクト12への不活性ガスまたは空気の供給を開始してからの時間の経過に伴って、可燃性ガス及び一酸化炭素の濃度が次第に減少する。ダクト12への不活性ガスまたは空気の供給を開始してから可燃性ガスの濃度が第1閾値Xaまで減少するまでの所要時間を時間T1とするとき、時間T1に対応する一酸化炭素の濃度が第2閾値Xbに相当する。すなわち、第2閾値Xbは、第1閾値Xaよりも小さい値である。なお、上述した説明では、可燃性ガスの濃度が第1閾値Xaまで減少するまでの所要時間と、一酸化炭素の濃度が第2閾値Xbまで減少するまでの所要時間とが共通である場合を例に挙げて説明したが、これらの所要時間が互いに異なってもよい。
【0023】
次に、本実施形態に係る供給部21が実行する接地開閉器17の操作処理について、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。
図3に示すフローチャートは、例えば、電気集塵装置10の稼働時において所定の周期で繰り返し実行される。
【0024】
図3に示すように、供給部21は、まず、流速センサ15から入力されるセンサ信号に基づいて、本体部11へのガスの流動が停止したか否かを判定する(ステップS10)。
【0025】
供給部21は、先のステップS10において本体部11へのガスの流動が停止していないと判定した場合(ステップS10=NO)、本体部11へのガスの流動が停止するまでステップS10の処理を繰り返す。
【0026】
一方、供給部21は、先のステップS10において本体部11へのガスの流動が停止したと判定した場合(ステップS10=YES)、ダクト12への不活性ガスまたは空気の供給を開始する(ステップS11)。
【0027】
次に、供給部21は、濃度センサ19から入力されるセンサ信号に基づいて、ダクト12の空洞部12Aにおける可燃性ガスの濃度を検知する(ステップS12)。
【0028】
次に、供給部21は、先のステップS12において検知された可燃性ガスの濃度が第1閾値以下であるか否かを判定する(ステップS13)。この場合、供給部21は、可燃性ガスの濃度の判定に代えて、または、加えて、可燃性ガスに含まれる一酸化炭素の濃度の判定を行ってもよい。
【0029】
供給部21は、先のステップS13において検知された可燃性ガスの濃度が第1閾値よりも大きいと判定したときには(ステップS13=NO)、その処理をステップS11に戻し、可燃性ガスの濃度が第1閾値以下となるまで、ステップS11~ステップS13の処理を繰り返す。
【0030】
一方、供給部21は、先のステップS13において検知された可燃性ガスの濃度が第1閾値以下であると判定したときには(ステップS13=YES)、ダクト12への不活性ガスまたは空気の供給を停止する(ステップS14)。
【0031】
その後、供給部21は、操作者による接地開閉器17の開操作を許容した上で(ステップS15)、
図3に示すフローチャートを終了する。
【0032】
本実施形態においては、電気集塵装置10は、装置の稼働を停止して本体部11へのガスの流動を停止してからダクト12の空洞部12Aへ不活性ガスまたは空気を供給する。そして、電気集塵装置10は、ダクト12の空洞部12Aの可燃性ガスの濃度が第1閾値以下まで低下したことを条件に、不活性ガスまたは空気の供給を停止する。その後、電気集塵装置10は、操作者による接地開閉器17の操作を許容する。すなわち、本実施形態においては、ダクト12の空洞部12Aにおける可燃性ガスの濃度が十分に低下したことを条件に、操作者による接地開閉器17の操作が可能となる。したがって、接地開閉器17の操作に伴って、ダクト12の空洞部12Aにおける可燃性ガスが着火することが抑えられる。また、本実施形態においては、大気に連通する連通部18がダクト12に設けられており、必ずしも、ダクト12の空洞部12Aが気密状に封止される必要はない。したがって、電気集塵装置10の設計の自由度が高められる。
【0033】
また、本実施形態においては、連通部18は、ダクト12における接地開閉器17に対応する位置に設けられている。そのため、ダクト12の空洞部12Aにおける接地開閉器17の周囲から可燃性ガスが連通部18を通じてダクト12の外部に好適に放出される。したがって、接地開閉器17の操作に伴って、ダクト12の空洞部12Aの可燃性ガスが着火することがより一層好適に抑えられる。
【0034】
また、本実施形態においては、供給ユニット19Aは、ダクト12における本体部11との接続部位の近傍に設けられ、連通部18は、ダクト12における電源部13との接続部位の近傍に設けられる。そのため、供給ユニット19Aからダクト12の空洞部12Aに供給された不活性ガスまたは空気は、ダクト12の一端側から他端側にかけて流動し、連通部18を通じてダクト12の外部に放出される。すなわち、供給ユニット19Aからダクト12の空洞部12Aに供給された不活性ガスまたは空気は、ダクト12の空洞部12Aの全域に拡散し、ダクト12の空洞部12Aに滞留していた可燃性ガスを不活性ガスまたは空気とともに連通部18を通じてダクト12の外部に放出される。したがって、ダクト12の空洞部12Aにおける可燃性ガスの濃度がより一層好適に抑えられ、接地開閉器17の操作に伴って、ダクト12の空洞部12Aにおける可燃性ガスが着火することが抑えられる。
【0035】
[第2実施形態]
第2実施形態以降では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0036】
図4に示すように、本実施形態に係る電気集塵装置10Aの制御装置20Aは、供給部21に加え、ダクト12の空洞部12Aへの不活性ガスまたは空気の供給時における可燃性ガスの希釈度合いの時間経過を示す予測モデル22を記憶する記憶部23を備える。供給部21は、ダクト12の空洞部12Aへの不活性ガスまたは空気の供給を開始してから所定時間が経過したことを条件に、不活性ガスまたは空気の供給を停止する。供給部21は、例えば、記憶部23に記憶された予測モデル22を参照して、ダクト12の空洞部12Aへの不活性ガスまたは空気の供給を開始してからダクト12の空洞部12Aにおける可燃性ガスの濃度が第3閾値以下に低下するまでの所要時間を所定時間として設定する。
【0037】
図5は、予測モデル22により示される、ダクト12の空洞部12Aへの不活性ガスまたは空気の供給時における可燃性ガスの希釈度合いの時間経過の一例を示す模式図である。
図5に示す例では、可燃性ガスの濃度は、ダクト12の空洞部12Aへの不活性または空気の供給に伴って次第に減少する。この例では、ダクト12の空洞部12Aへの不活性ガスまたは空気の供給の開始時における可燃性ガスの濃度をX1とし、可燃性ガスの着火が抑えられる基準値となる可燃性ガスの濃度の閾値をXcとする。Xcは、第3閾値に相当する。この場合、X1に対応する経過時間はT2であり、Xcに対応する経過時間はT3である。そして、T2とT3との時間差Txが所定時間に相当する。
【0038】
次に、本実施形態に係る供給部21が実行する接地開閉器17の操作処理について、
図6に示すフローチャートを参照して説明する。
図5に示すフローチャートは、例えば、電気集塵装置10の稼働時において所定の周期で繰り返し実行される。
【0039】
図6に示すように、供給部21は、まず、流速センサ15から入力されるセンサ信号に基づいて、本体部11へのガスの流動が停止したか否かを判定する(ステップS20)。
【0040】
供給部21は、先のステップS20において本体部11へのガスの流動が停止していないと判定した場合(ステップS20=NO)、本体部11へのガスの流動が停止するまでステップS20の処理を繰り返す。
【0041】
一方、供給部21は、先のステップS20において本体部11へのガスの流動が停止したと判定した場合(ステップS20=YES)、ダクト12への不活性ガスまたは空気の供給を開始する(ステップS21)。
【0042】
次に、供給部21は、記憶部に記憶された予測モデルを参照して、所定時間を設定する(ステップS22)。
【0043】
次に、供給部21は、不活性ガスまたは空気の供給を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS23)。
【0044】
供給部21は、先のステップS23において不活性ガスまたは空気の供給を開始してから所定時間が経過していないと判定したときには(ステップS23=NO)、その処理をステップS21に戻し、所定時間が経過するまで、ステップS21~ステップS23の処理を繰り返す。
【0045】
一方、供給部21は、先のステップS23において不活性ガスまたは空気の供給を開始してから所定時間が経過したと判定したときには(ステップS23=YES)、ダクト12への不活性ガスまたは空気の供給を停止する(ステップS24)。
【0046】
その後、供給部21は、操作者による接地開閉器17の開操作を許容した上で(ステップS25)、
図6に示すフローチャートを終了する。
【0047】
本実施形態においては、電気集塵装置10の稼働が停止して本体部11へのガスの流動が停止してからダクト12の空洞部12Aへ不活性ガスまたは空気が供給され、不活性ガスまたは空気の供給が開始してから所定時間が経過したことを条件に、不活性ガスまたは空気の供給を停止する。その後、操作者による接地開閉器17の操作を許容する。すなわち、本実施形態においては、ダクト12の空洞部12Aにおける可燃性ガスの濃度が十分に低下したことを条件に、操作者による接地開閉器17の操作が可能となる。したがって、接地開閉器17の操作に伴って、ダクト12の空洞部12Aにおける可燃性ガスが着火することが抑えられる。また、本実施形態においては、大気に連通する連通部18がダクト12に設けられており、必ずしも、ダクト12の空洞部12Aが気密状に封止される必要はない。したがって、電気集塵装置10の設計の自由度が高められる。
【0048】
なお、上記各実施形態は、以下のような形態にて実施することもできる。
【0049】
上記各実施形態においては、電気集塵装置10の稼働が停止した場合に供給部21が不活性ガスまたは空気の供給を行う態様を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、電気集塵装置10を稼働させるときに供給部21が不活性ガスまたは空気の供給を行う態様に適用してもよい。電気集塵装置10を稼働させるとき又は稼働中においても、ダクト12内においてスパークが起こる可能性があるため、このように、供給部21が連続的に不活性ガスまたは空気の供給を行うようにすることが効果的である。また、例えば、供給部21は、電気集塵装置10の稼働が開始することを条件に、ダクト12の空洞部12Aへの不活性ガスまたは空気の供給を行ってもよい。すなわち、電気集塵装置10の稼働が開始するときに、ダクト12の空洞部12Aへの不活性ガスまたは空気の供給を開始する。そして、ダクト12の空洞部12Aの可燃性ガスの濃度が第1閾値以下となっていることを確認した後、接地開閉器17の閉操作を行い、電源部13から放電極11Aへの電源ケーブル16を介した電力の供給を行う。このような態様により、接地開閉器17の操作に伴って、ダクト12の空洞部12Aにおける可燃性ガスが着火することが抑えられる。
【0050】
上記各実施形態において、供給部21は、ダクト12の空洞部12Aへの不活性ガスまたは空気の供給時に、濃度センサ19により検知される可燃性ガスの濃度に関する情報を定期的に取得し、濃度センサ19の検知信号に基づいて、ダクト12の空洞部12Aにおける可燃性ガスの濃度が所定の閾値以下となるように、ダクト12の空洞部12Aへの不活性ガスまたは空気の供給を制御してもよい。
【0051】
[付記]
上記実施形態から把握できる技術的思想を以下に記載する。
【0052】
〔付記1〕
ガスが流動する本体部と、
前記本体部に設けられた放電極と、
前記放電極に電圧を供給する電源部と、
前記電源部と前記放電極とを接続する電源ケーブルと、
前記電源ケーブルの途中位置に設けられた接地開閉器と、
大気に連通する連通部と、前記電源ケーブル及び前記接地開閉器が設けられた空洞部とを有し、前記本体部に接続されたダクトと、
前記ダクトへ不活性ガスまたは空気を供給する供給部と、
を備える、
電気集塵装置。
【0053】
〔付記2〕
前記供給部は、前記本体部に対するガスの供給が停止したことを条件に、前記ダクトの前記空洞部への不活性ガスまたは空気の供給を開始する、
付記1に記載の電気集塵装置。
【0054】
〔付記3〕
前記ダクトの前記空洞部の可燃性ガスの濃度を検知する検知部をさらに備え、
前記供給部は、前記ダクトの前記空洞部への不活性ガスまたは空気の供給を開始してから前記検知部により検知された可燃性ガスの濃度が第1閾値以下に達したことを条件に、不活性ガスまたは空気の供給を停止する、
付記1または付記2に記載の電気集塵装置
【0055】
〔付記4〕
前記可燃性ガスは、一酸化炭素を含み、
前記供給部は、前記ダクトの前記空洞部への不活性ガスまたは空気の供給を開始してから前記検知部により検知された一酸化炭素の濃度が第2閾値以下に達したことを条件に、不活性ガスまたは空気の供給を停止する、
付記3に記載の電気集塵装置。
【0056】
〔付記5〕
前記供給部は、前記ダクトの前記空洞部への不活性ガスまたは空気の供給を開始してから所定時間が経過したことを条件に、不活性ガスまたは空気の供給を停止する、
付記1から付記4のいずれか一つに記載の電気集塵装置
【0057】
〔付記6〕
前記ダクトの前記空洞部への不活性ガスまたは空気の供給時における可燃性ガスの希釈度合いの時間経過を示す予測モデルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記供給部は、前記記憶部に記憶された前記予測モデルを参照して、前記ダクトの前記空洞部への不活性ガスまたは空気の供給を開始してから前記ダクトの前記空洞部における前記可燃性ガスの濃度が第3閾値以下に低下するまでの所要時間を前記所定時間として設定する、
付記5に記載の電気集塵装置
【0058】
〔付記7〕
前記連通部は、前記ダクトにおける前記接地開閉器に対応する位置に設けられる、
付記1から6のいずれか一つに記載の電気集塵装置。
【0059】
〔付記8〕
電気集塵装置の制御方法であって、
前記電気集塵装置は、
ガスが流動する本体部を備え、
前記制御方法は、
前記本体部にガスを流動させる工程と、
前記本体部に設けられた放電極に電圧を印加する工程と、
前記本体部に接続され、大気に連通する連通部を有するダクトへ不活性ガスまたは空気を供給する工程と、
を含む、
電気集塵装置の制御方法。
【0060】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0061】
10…電気集塵装置、11…本体部、11A…放電極、12…ダクト、12A…空洞部、13…電源部、14…パッキン、15…流速センサ、16…電源ケーブル、17…接地開閉器、18…連通部、19…濃度センサ、20…制御装置、21…供給部。