(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073078
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】通信装置、無線通信システム及び送信ランク切替方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/0413 20170101AFI20240522BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20240522BHJP
H04W 24/10 20090101ALI20240522BHJP
H04W 72/044 20230101ALI20240522BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H04B7/0413
H04W16/28 130
H04W24/10
H04W72/04 130
H04B7/06 956
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184081
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和人
(72)【発明者】
【氏名】実川 大介
(72)【発明者】
【氏名】細川 晋
(72)【発明者】
【氏名】江崎 孝斗
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA11
5K067DD11
5K067DD43
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE10
5K067KK03
(57)【要約】
【課題】通信環境に応じて適切な送信ランクを決定できる通信装置等を提供する。
【解決手段】MIMOデータ伝送方式を用いて端末装置と通信する通信装置は、推定部と、調整部と、選択部とを有する。推定部は、前記通信装置と前記端末装置との間の無線伝搬路の受信SIRを推定する。調整部は、伝送誤りの発生状態に基づく送信ランク毎のSIRオフセット値を取得する。選択部は、推定部にて推定された受信SIR及び、調整部にて取得された送信ランク毎のSIRオフセット値に基づき、送信ランクを切り替える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MIMO(Multi Input Multi Output)データ伝送方式を用いて端末装置と通信する通信装置であって、
前記通信装置と前記端末装置との間の無線伝搬路の受信SIR(Signal to Interference Ratio)を推定する推定部と、
伝送誤りの発生状態に基づく送信ランク毎のSIRオフセット値を取得する調整部と、
前記推定部にて推定された前記受信SIR及び、前記調整部にて取得された前記送信ランク毎のSIRオフセット値に基づき、前記送信ランクを切り替える選択部と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記推定部は、
前記端末装置から受信するチャネル品質情報に基づき前記受信SIRを推定し、
前記選択部は、
前記端末装置から受信する前記チャネル品質情報の信頼性が低いと判定された場合に、前記推定部にて推定された前記受信SIR及び、前記調整部にて取得された前記送信ランク毎のSIRオフセット値に基づき、前記送信ランクを切り替えることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記選択部は、
前記送信ランクを切り替えて変更後の送信ランクを前記端末装置への下りリンク物理チャネルに設定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記選択部は、
前記送信ランクを切り替えて変更後の送信ランクを前記端末装置からの上りリンク物理チャネルに設定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記選択部は、
前記SIRオフセット値で前記受信SIRを補正し、補正後の受信SIRが閾値を超えたか否かを判定する第1の判定部と、
前記第1の判定部にて補正後の受信SIRが閾値を超えた場合に前記送信ランクを上げる決定部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記選択部は、
一定時間間隔でサンプリングした2個のSIRオフセット値の変動幅が閾値未満であるか否かを判定する第1の判定部と、
前記第1の判定部にて前記2個のSIRオフセット値の変動幅が閾値未満である場合に前記送信ランクを上げる決定部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記選択部は、
現在の送信ランクに対するSIRオフセット値と、前記現在の送信ランクの1ランク下の送信ランクに対するSIRオフセット値との差分が閾値を超えたか否かを判定する第2の判定部と、
前記第2の判定部にて前記差分が前記閾値を超えた場合に前記送信ランクを下げる決定部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記選択部は、
現在の送信ランクに変更後の一定回数のデータ伝送において一定の割合で伝送誤りが発生したか否かを判定する第3の判定部と、
前記第3の判定部にて変更後の一定回数のデータ伝送において一定の割合で伝送誤りが発生した場合に前記送信ランクを下げる決定部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項9】
前記選択部は、
前記送信ランクを切り替える際に、変更前の送信ランクに対するSIRオフセット値と変更後の送信ランクに対するSIRオフセット値とを重み付け加算した結果を前記変更後の送信ランクに対するSIRオフセット値に置き換える更新部を有することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項10】
前記受信SIRの推定値を前記SIRオフセット値で補正し、補正後の前記受信SIRに対応する変調符号化方式を選択する第2の選択部と、
前記第2の選択部にて選択された変調符号化方式及び前記選択部にて切り替えられた前記送信ランクに基づき、前記端末装置との間の物理チャネルを制御する制御部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項11】
端末装置と、MIMO(Multi Input Multi Output)データ伝送方式を用いて端末装置と通信する通信装置とを有する無線通信システムであって、
前記通信装置は、
前記通信装置と前記端末装置との間の無線伝搬路の受信SIR(Signal to Interference Ratio)を推定する推定部と、
伝送誤りの発生状態に基づく送信ランク毎のSIRオフセット値を取得する調整部と、
前記推定部にて推定された前記受信SIR及び、前記調整部にて取得された前記送信ランク毎のSIRオフセット値に基づき、前記送信ランクを切り替える選択部と、
を有し、
前記選択部は、
前記送信ランクを切り替えて変更後の送信ランクを前記端末装置への下りリンク物理チャネルに設定することを特徴とする無線通信システム。
【請求項12】
MIMO(Multi Input Multi Output)データ伝送方式を用いて端末装置と通信する通信装置が、
前記通信装置と前記端末装置との間の無線伝搬路の受信SIR(Signal to Interference Ratio)を推定し、
伝送誤りの発生状態に基づく送信ランク毎のSIRオフセット値を取得し、
推定された前記受信SIR及び、取得された前記送信ランク毎のSIRオフセット値に基づき、前記送信ランクを切り替える
処理を実行することを特徴とする送信ランク切替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、無線通信システム及び送信ランク切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、5G(5
th Generation)のNR(New Radio)では、DL(Down Link)の送信形式を最適化する制御が広く知られている。
図10は、DL送信設定処理に関わる無線通信システムの処理動作の一例を示すシーケンス図である。
図10に示す無線通信システム100は、BS(Base Station)101と、UE(User Equipment)102とを有し、BS101は、MIMO(Multi Input Multi Output)データ伝送方式を用いて、UE102と通信する。BS101は、例えば、CU(Central Unit)やDU(Distributed Unit)を含む基地局装置である。UE102は、BS101と無線で通信する、例えば、スマートフォン等の移動局である。
【0003】
BS101は、CSI-RS(Channel State Information Reference Signal)をUE102に送信する(ステップS101)。CSI-RSは、DL固有の基準信号である。
【0004】
UE102は、BS101から受信したCSI-RSに基づき生成したCSIを、PUCCH(Physical Uplink Control Channel)を使用してBS101に送信する(ステップS102)。尚、CSIは、RI(Rank Indicator)及びCQI(Channel Quality Indicator)を含む。RIは、MIMOにおいて同時に送信するレイヤ(空間ストリーム)の数を示す送信ランクの指標である。CQIは、好適な変調符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)を示すチャネル品質指標である。
【0005】
BS101は、CSIを受信した場合、受信したCSI内のRIに基づき、DLの送信ランクを決定する(ステップS103)。
【0006】
BS101は、受信したCSI内のCQIに基づき、Outer-Loop制御方式を用いてDLのMCSを決定する(ステップS104)。尚、Outer-Loop制御方式として、BS101は、CQIと受信SIR(Signal to Interference Ratio)とを対応付けるSIR変換テーブルを参照し、受信したCSI内のCQIに対応した受信SIRに変換する。更に、BS101は、伝送誤り率の目標値と直近の伝送誤り率とに基づき、SIRオフセット値を更新する。更に、BS101は、更新後のSIRオフセット値を用いて受信SIRを補正する。BS101は、受信SIRとMCSとを対応付けるMCS変換テーブルを参照し、補正後の受信SIRに対応するDLのMCSを決定する。
【0007】
BS101は、決定されたDLの送信ランク及び、決定されたDLのMCSに基づき、PDSCH(Physical Downlink Shared Channel)をUE102に設定する(ステップS105)。尚、PDSCHは、BS101とUE102との間の下りリンクでデータパケットを送受信するために使用する物理チャネルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2020-519096号公報
【特許文献2】特表2020-522930号公報
【特許文献3】特表2020-533886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、BS101においてCSIの受信が常に正確に行われるとは限らず、CSIの内容の信頼性が低い状況も懸念される。
【0010】
BS101は、CSIの信頼性が低い場合でも、Outer-Loop制御方式を使用して適切なDLのMCSを決定できる。
【0011】
しかしながら、BS101は、UE102から報告されるCSIの信頼性が低い場合、MIMOの送信ランクを決定する制御を通信環境に応じて適切に実行するのは困難である。また、BS101は、UE102から報告されるCSIの信頼性が低い場合に顕著であるが、信頼性が低い場合であるか否かに関係なく、RIを使用せずに、MIMOの送信ランクを決定する制御を通信環境に応じて適切に実行するのは困難である。
【0012】
一つの側面では、通信環境に応じて適切な送信ランクを決定できる通信装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一つの態様の通信装置は、MIMO(Multi Input Multi Output)データ伝送方式を用いて端末装置と通信する。通信装置は、推定部と、調整部と、選択部とを有する。推定部は、前記通信装置と前記端末装置との間の無線伝搬路の受信SIR(Signal to Interference Ratio)を推定する。調整部は、伝送誤りの発生状態に基づく送信ランク毎のSIRオフセット値を取得する。選択部は、前記推定部にて推定された前記受信SIR及び、前記調整部にて取得された前記送信ランク毎のSIRオフセット値に基づき、前記送信ランクを切り替える。
【発明の効果】
【0014】
一つの側面によれば、通信環境に応じて適切な送信ランクを決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施例の無線通信システムの一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、CUのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、CUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1の選択部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、設定処理に関わるCUの処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1の決定処理に関わるCUの処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2の決定処理に関わるCUの処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、切替処理に関わるCUの処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9A】
図9Aは、比較例の送信ランクの変更推移の一例を示す説明図である。
【
図9B】
図9Bは、SIRオフセット値の重み付けなしの場合の比較例の送信ランクの変更推移の一例を示す説明図である。
【
図9C】
図9Cは、SIRオフセット値の重み付けありの場合の本実施例の送信ランクの変更推移の一例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、DL送信設定処理に関わる無線通信システムの処理動作の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本願の開示する通信装置等の実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例0017】
図1は、本実施例の無線通信システム1の一例を示す説明図である。
図1に示す無線通信システム1は、5Gの無線通信システムである。無線通信システム1は、複数のUE(User Equipment)2と、BS(Base Station)3と、コアネットワーク4とを有する。BS3は、MIMO(Multi Input Multi Output)データ伝送方式を用いて、UE2と無線で通信する基地局装置である。BS3は、複数のRU(Radio Unit)5と、CU(Central Unit)6とを有する。CU6は、DU(Distributed Unit)の機能も含む。尚、CU6は、RU5をまとめて1つの通信装置としても良い。
【0018】
CU6は、コアネットワーク4と有線で通信すると共に、複数のRU5と有線で通信する。CU6は、BS3における主要なベースバンド信号処理を実行すると共に、RI選択に関する処理を実行する通信装置である。
【0019】
RU5は、RU5のエリア内を移動するUE2と無線で通信する。RU5は、BS3における無線送受信処理や一部のベースバンド信号処理を実行する通信ユニットである。
【0020】
UE2は、BS3内のRU5と無線で通信する、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の端末装置である。UE2は、PUCCH(Physical Uplink Control Channel)を使用してRU5経由でCSI(Channel State Information)をCU6に報告する。CSIは、RI(Rank Indicator)及びCQI(Channel Quality Indicator)を含む。RIは、MIMOにおいて同時に送信するレイヤ(空間ストリーム)の数を示す送信ランクの指標である。CQIは、好適な変調符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)を示すチャネル品質指標である。
【0021】
図2は、CU6のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すCU6は、通信インタフェース11と、メモリ12と、プロセッサ13とを有する。通信インタフェース11は、コアネットワーク4やRU5との間で通信するインタフェースである。プロセッサ13は、CU6全体を制御する。メモリ12は、各種情報を記憶する。メモリ12は、例えば、MIMOの送信ランク毎の受信SIRオフセット値、決定されたDLのMIMOの送信ランク、決定されたDLのMCS等の情報を格納する。プロセッサ13は、例えば、DLのMIMOの送信ランク及びDLのMCSを含むベースバンド信号処理を実行する。
【0022】
図3は、CU6の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すCU6は、第1の生成部21と、第2の生成部22と、マッピング部23と、デマッピング部24と、を有する。CU6は、ACK復調部25と、復調部26と、調整部27と、推定部28とを有する。更に、CU6は、判定部29と、第1の選択部30と、第2の選択部31と、制御部32とを有する。
【0023】
第1の生成部21は、下りリンクのPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)を生成する。第2の生成部22は、下りリンクのCSI-RS(Channel State Information Reference signal)を生成する。マッピング部23は、各DL物理チャネルの送信信号を周波数領域のDL送信信号にマッピングする。デマッピング部24は、周波数領域のUL受信信号から各UL物理チャネルのUL受信信号を抽出する。
【0024】
ACK復調部25は、UL制御信号を復調し、PDSCHのHARQ-ACK(Hybrid Automatic Repeat Request Acknowledgement)を抽出する。尚、HARQ-ACKは、UE2においてPDSCHが正常に受信できたか否かをUE2が報告する送達確認信号である。復調部26は、UL制御信号を復調し、UE2から報告されたCSIを抽出する。CSIは、例えば、RI及びCQIを含む。
【0025】
推定部28は、CSIから導出した受信SIR(Signal to Interference Ratio)をSIRオフセット値で補正する。具体的には、推定部28は、CQIと受信SIRとを対応付けるSIR変換テーブルを参照し、受信したCSI内のCQIに対応した受信SIRに変換する。調整部27は、HARQ-ACK、例えば、伝送誤り率の目標値と直近の伝送誤り率とに基づき、(数1)を用いて受信SIRのSIRオフセット値を調整する。
【0026】
【0027】
推定部28は、調整部27で調整後のSIRオフセット値を用いて受信SIRを補正する。具体的には、推定部28は、(調整後のSIRオフセット値+補正前の受信SIR)を用いて補正後の受信SIRを得る。
【0028】
判定部29は、UE2が報告するCSIの信頼性が低いか否かを判定する。UE2が報告するCSIの信頼性が低い場合とは、例えば、UE2から報告されるCSIの値が一定時間変化しない場合、CSIを一定時間受信できない場合(無送信と判定)や、CSIの復号誤りが複数回、例えば、2、3回継続している場合等である。尚、一定時間は、例えば、静止状態のUE2においても常識的にCSIが変化すると予測される時間を基準にして決定される時間である。また、UE2が報告するCSIの信頼性が低い場合とは、上りリンクのSRS(Sounding Reference Signal)による品質測定結果が変化しているにも関わらず、CSIの値が変化していない場合としても良い。
【0029】
第1の選択部30は、CSIの信頼性の判定結果に応じて、通常のランク選択、または受信SIRの推定値及びSIRオフセット値に基づくランク選択を実行する。第1の選択部30は、UE2が報告するCSIの信頼性が低くない場合、CSI内のRIに基づき送信ランクを選択する通常のランク選択を実行する。また、第1の選択部30は、UE2が報告するCSIの信頼性が低い場合、受信SIRの推定値及びSIRオフセット値に基づくランク選択を実行する。
【0030】
第2の選択部31は、選択した送信ランクの受信SIRに基づきMCSを選択する。第2の選択部31は、受信したCSI内のCQIに基づき、Outer-Loop制御方式を用いてDLのMCSを決定する。尚、Outer-Loop制御方式としては、推定部28は、CQIと受信SIRとを対応付けるSIR変換テーブルを参照し、受信したCSI内のCQIに対応した受信SIRに変換する。更に、調整部27は、伝送誤り率の目標値と直近の伝送誤り率とに基づき、SIRオフセット値を更新する。更に、調整部27は、更新後のSIRオフセット値で受信SIRを補正する。第2の選択部31は、受信SIRとMCSとを対応付けるMCS変換テーブルを参照し、補正後の受信SIRに対応するDLのMCSを選択する。
【0031】
制御部32は、第1の選択部30にて選択された送信ランク及び第2の選択部31にて選択されたMCSをPDSCHの新規送信に対して設定する。
【0032】
CU6は、CSIの信頼性が低いと判定した場合、受信SIRの推定値と、伝送誤りの発生状態に基づく送信ランク毎のSIRオフセット値とに基づいて、MCS及び送信ランクを選択、すなわち切り替える。
【0033】
図4は、第1の選択部30の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4に示す第1の選択部30は、第1の判定部51と、第2の判定部52と、第3の判定部53と、決定部54と、更新部55と、を有する。第1の判定部51は、SIRオフセット値で受信SIRを補正し、補正後の受信SIRが上位の送信ランクの閾値を超えたか否かを判定する。尚、上位の送信ランクの閾値は、例えば、受信SIRをMCSに変換するMCS変換テーブルを参照した場合のMCSが最高となる付近の受信SIR値に相当する。決定部54は、第1の判定部51にて補正後の受信SIRが閾値を超えた場合に送信ランクを上げるように送信ランクを決定して変更する。
【0034】
第2の判定部52は、現在の送信ランクに対するSIRオフセット値と、現在の送信ランクの1ランク下の送信ランクに対するSIRオフセット値との差分が閾値を超えたか否かを判定する。尚、差分の閾値は、例えば、比較する2個の送信ランクのスループットが同等となる程度の差分に相当する値である。決定部54は、第2の判定部52にて差分が閾値を超えた場合に送信ランクを下げるように送信ランクを決定して変更する。
【0035】
第3の判定部53は、現在の送信ランクに変更後の一定回数のデータ伝送において一定の割合で伝送誤りが発生したか否かを判定する。決定部54は、第3の判定部53にて変更後の一定回数のデータ伝送において一定の割合で伝送誤りが発生した場合に送信ランクを下げるように送信ランクを決定して変更する。尚、一定の回数及び割合は、例えば、典型的な通信環境が模擬された計算機シミュレーション等で最適化した数値である。
【0036】
更新部55は、送信ランクを変更する際に、変更前の送信ランクに対するSIRオフセット値と変更後の送信ランクに対するSIRオフセット値とを重み付け加算した結果を、変更後の送信ランクに対するSIRオフセット値に置き換えて更新する。
【0037】
第1の選択部30は、各送信ランクの通信環境を示唆するデータ(送信ランク毎のSIRオフセット値、伝送誤りの発生状態)に基づいて送信ランクを選択する。その結果、UE2から報告されるCSIの信頼性が低い場合でも、DLの送信ランクの制御を通信環境に応じて適切に行うことができる。
【0038】
次に本実施例の無線通信システム1の動作について説明する。
図5は、設定処理に関わるCU6の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図5においてCU6内の調整部27は、前回送信時のHARQ-ACKによる伝送誤り状態に基づき、前回送信時の送信ランクに対するSIRオフセット値を更新する(ステップS11)。CU6内の判定部29は、UE2から報告されたCSIの信頼性が低いか否かを判定する(ステップS12)。
【0039】
CU6内の第1の選択部30は、CSIの信頼性が低い場合(ステップS12:Yes)、補正後の受信SIRが最低の送信ランクの閾値未満である否かを判定する(ステップS13)。尚、最低の送信ランクの閾値は、例えば、受信SIRをMCSに変換するMCS変換テーブルを参照した場合のMCSが最低となる付近の受信SIR値に相当する。
【0040】
第1の選択部30は、補正後の受信SIRが最低の送信ランクの閾値未満でない場合(ステップS13:No)、送信ランクを下げる方向に決定する
図6に示す第1の決定処理を実行する(ステップS14)。
【0041】
第1の選択部30は、第1の決定処理を実行した後、送信ランクを上げる方向に決定する
図7に示す第2の決定処理を実行する(ステップS15)。更に、第1の選択部30は、第2の決定処理を実行した後、
図8に示す切替処理を実行する(ステップS16)。
【0042】
第2の選択部31は、切替処理を実行した後、決定した送信ランクに対するSIRオフセット値を用いて受信SIRを補正し、補正後の受信SIRに基づき、MCSを選択し(ステップS17)、
図5に示す処理動作を終了する。
【0043】
第1の選択部30は、CSIの信頼性が低くない場合(ステップS12:No)、CSI内のRIに基づき送信ランクを選択し(ステップS18)、切替処理を実行するステップS16の処理に移行する。
【0044】
第1の選択部30は、補正後の受信SIRが最低の送信ランクの閾値未満の場合(ステップS13:Yes)、最低の送信ランクに決定し(ステップS19)、切替処理を実行するステップS16の処理に移行する。
【0045】
図6は、第1の決定処理に関わるCU6の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図6においてCU6内の第1の選択部30は、現在の送信ランクが最低の送信ランク以外であるか否かを判定する(ステップS21)。
【0046】
第1の選択部30は、現在の送信ランクが最低の送信ランク以外である場合(ステップS21:Yes)、送信ランクを変更する余地があるものと判断する。そして、第1の選択部30内の第3の判定部53は、前回の送信ランク変更後の一定回数の送信の一定の割合を超えて伝送誤りが発生したか否かを判定する(ステップS22)。第1の選択部30内の決定部54は、前回の送信ランク変更後の一定回数の送信の一定の割合を超えて伝送誤りが発生した場合(ステップS22:Yes)、現在の送信ランクを下げるランクダウンを決定し(ステップS25)、
図6に示す処理動作を終了する。その結果、送信ランクを上げる試行を行った後で、その現在の送信ランクが通信環境に適していないものと判断し、送信ランクを下げることで伝送誤りの頻発を抑制できる。
【0047】
第2の判定部52は、一定の割合を超えて伝送誤りが発生したのでない場合(ステップS22:No)、現在の送信ランクのSIRオフセット値と1ランク下の送信ランクのSIRオフセット値との差分が閾値を超えたか否かを判定する(ステップS23)。
【0048】
決定部54は、差分が閾値を超えた場合(ステップS23:Yes)、補正後の受信SIRに関して1ランク下よりも現在の送信ランクの方が著しく低いものと判断する。そして、決定部54は、現在の送信ランクのSIRオフセット値と1ランク下の送信ランクのSIRオフセット値との差分が閾値を超えた場合、前回の送信ランク変更から一定時間を経過したか否かを判定する(ステップS24)。
【0049】
決定部54は、前回の送信ランク変更から一定時間を経過した場合(ステップS24:Yes)、現在の送信ランクを下げるランクダウンを決定するステップS25の処理に移行する。尚、ステップS24に設定する一定時間は、例えば、Outer-Loop制御方式で選択されるMCSが収束されるまでの時間である。
【0050】
第1の選択部30は、現在の送信ランクが最低の送信ランク以外でない場合(ステップS21:No)、すなわち、現在の送信ランクが最低の送信ランクの場合、
図6に示す第1の決定処理を終了する。
【0051】
第2の判定部52は、現在の送信ランクのSIRオフセット値と1ランク下の送信ランクのSIRオフセット値との差分が閾値を超えたのでない場合(ステップS23:No)、
図6に示す第1の決定処理を終了する。
【0052】
決定部54は、前回の送信ランク変更から一定時間を経過したのでない場合(ステップS24:No)、頻繁に送信ランクダウンが起きるような事態を回避し、
図6に示す第1の決定処理を終了する。
【0053】
第1の選択部30は、前回の送信ランク変更後の一定回数の送信の一定の割合を超えて伝送誤りが発生した場合、送信ランクを下げる。その結果、送信ランクを上げる試行を行った後で、現在の送信ランクが通信環境に適していないものと判断し、送信ランクを下げることで伝送誤りの頻発を抑制できる。
【0054】
第1の選択部30は、現在の送信ランクのSIRオフセット値と1ランク下の送信ランクのSIRオフセット値との差分が閾値を超えた場合、補正後の受信SIRに関して1ランク下よりも現在の送信ランクの方が著しく低いものと判断する。そして、第1の選択部30は、前回の送信ランク変更から一定時間を経過した場合に送信ランクを下げる。その結果、現在の送信ランクでの伝送速度の方が劣るものと判断し、送信ランクを下げることで伝送速度を改善できる。しかも、送信ランクが頻繁に変更される過程で伝送誤りの頻発を回避できる。
【0055】
尚、説明の便宜上、
図6では、前回の送信ランク変更後の一定回数の送信の伝送誤り率が閾値を超えたか否かを判定するステップS22の処理がなくても良い。この場合、ステップS21にて現在の送信ランクが最低の送信ランク以外である場合、ステップS23の処理を実行しても良い。
【0056】
図7は、第2の決定処理に関わるCU6の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図7においてCU6内の第1の選択部30は、前段のステップS14の第1の決定処理で送信ランクのランクダウン決定済みであるか否かを判定する(ステップS31)。
【0057】
第1の選択部30は、ランクダウン決定済みでない場合(ステップS31:No)、現在の送信ランクが最高の送信ランク以外であるか否かを判定する(ステップS32)。第1の選択部30内の第1の判定部51は、現在の送信ランクが最高の送信ランク以外の場合(ステップS32:Yes)、現在の送信ランクを変更する余地があるものと判断する。そして、第1の判定部51は、補正後の受信SIRが現在よりも上位の送信ランクの閾値を超えたか否かを判定する(ステップS33)。尚、上位の送信ランクの閾値は、例えば、受信SIRをMCSに変換するMCS変換テーブルを参照した場合のMCSが最高となる付近の受信SIR値に相当する。
【0058】
第1の判定部51は、補正後の受信SIRが現在よりも上位の送信ランクの閾値を超えた場合(ステップS33:Yes)、現在の送信ランクを上げる余地があると判断する。その結果、現在の送信ランクに対する受信SIRが十分高く、現在の送信ランクで達成可能な伝送速度の上限に近いため、送信ランクを上げる試行を行う価値があるとみなすことができる。そして、第1の判定部51は、補正後の受信SIRが現在よりも上位の送信ランクの閾値を超えた場合、一定時間間隔でサンプリングした2個のSIRオフセット値の変動幅が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS34)。尚、変動幅の閾値は、例えば、MCS変換テーブル内のMCS間のSIRの差分程度の値である。また、ステップS34の一定時間間隔は、例えば、ステップS35の一定時間として送信ランクをランクアップする試行が容易に行えるようにランクダウンを禁止する禁止時間と比較して短めに設定し、その時間よりも短めの時間間隔とする。
【0059】
決定部54は、サンプリングした2個のSIRオフセット値の変動幅が閾値未満の場合(ステップS34:Yes)、送信毎に行われるSIRオフセット値の調整が収束してSIRオフセット値が実際の通信環境を反映した状態になったものと判断する。そして、決定部54は、補正後の受信SIRが現在よりも上位の送信ランクの閾値を超えたか否かを判定するステップS33の判定確度が高いものとみなす。そして、決定部54は、サンプリングした2個のSIRオフセット値の変動幅が閾値未満の場合、前回の送信ランク変更から一定時間を経過したか否かを判定する(ステップS35)。尚、ステップS35の一定時間は、例えば、送信ランクをランクアップする試行が容易に行えるようにランクダウンを禁止する禁止時間と比較して短めに設定する時間である。
【0060】
決定部54は、前回の送信ランク変更から一定時間を経過した場合(ステップS35:Yes)、現在の送信ランクを上げるランクアップと決定し(ステップS36)、
図7に示す第2の決定処理を終了する。
【0061】
第1の選択部30は、ランクダウン決定済みの場合(ステップS31:Yes)、送信ランクをアップする余地はないものと判断し、
図7に示す第2の決定処理を終了する。
【0062】
第1の選択部30は、現在の送信ランクが最高の送信ランク以外でない場合(ステップS32:No)、現在の送信ランクを最高の送信ランクであるために送信ランクを上げる余地がないものと判断し、
図7に示す第2の決定処理を終了する。
【0063】
第1の選択部30は、補正後の受信SIRが現在よりも上位の送信ランクの閾値を超えたのでない場合(ステップS33:No)、現在の送信ランクを上げる余地がないと判断し、
図7に示す第2の決定処理を終了する。
【0064】
第1の選択部30は、一定時間間隔でサンプリングした2個のSIRオフセット値の変動幅が閾値未満でない場合(ステップS34:No)、現在の送信ランクを上げる余地がないと判断し、
図7に示す第2の決定処理を終了する。
【0065】
第1の選択部30は、前回の送信ランク変更から一定時間を経過したのでない場合(ステップS35:No)、ランク変更の頻発を回避すべく、
図7に示す第2の決定処理を終了する。
【0066】
第1の選択部30は、補正後の受信SIRが現在よりも上位の送信ランクの閾値を超え、サンプリングした2個のSIRオフセット値の変動幅が閾値未満、かつ、前回の送信ランク変更から一定時間を経過した場合、現在の送信ランクを上げる。その結果、現在の送信ランクに対する受信SIRが十分高く、現在の送信ランクで達成可能な伝送速度の上限に近いため、送信ランクを上げる試行を実行する価値があるものと判断できる。しかも、送信ランクが頻繁に変更される過程で伝送誤りの頻発を回避できる。
【0067】
図8は、切替処理に関わるCU6の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図8においてCU6内の第1の選択部30は、送信ランク変更決定済みであるか否かを判定する(ステップS41)。
【0068】
第1の選択部30は、送信ランク変更決定済みである場合(ステップS41:Yes)、第1の決定処理又は第2の決定処理で送信ランクが決定済みであると判断し、次回送信が新規送信であるか否かを判定する(ステップS42)。
【0069】
第1の選択部30は、次回送信が新規送信である場合(ステップS42:Yes)、次回新規送信に変更後の送信ランクを適用する(ステップS43)。その結果、リトライ再送が完了してから送信ランクの変更を適用することで初回送信と再送送信とで送信ランクが異なる状況を回避できる。
【0070】
第1の選択部30内の更新部55は、変更前の送信ランクのSIRオフセット値と変更後の送信ランクのSIRオフセット値とを重み付け加算し、その加算結果を変更後の送信ランクのSIRオフセット値として置き換えて更新する(ステップS44)。そして、更新部55は、
図8に示す切替処理を終了する。尚、重み付け加算結果は、例えば、平均値でも良く、変更前の送信ランクのSIRオフセット値と変更後の送信ランクのSIRオフセット値とを1:0、あるいは0:1の比率で重み付けしても良く、適宜変更可能である。例えば、更新部55は、変更前の送信ランクに対するSIRオフセット値と変更後の送信ランクに対するSIRオフセット値との平均値を変更後の送信ランクに対するSIRオフセット値に置き換えても良い。その結果、過去の通信環境を反映していたSIRオフセット値に対して送信ランクは異なるものの変更直前までの通信環境を反映したSIRオフセット値との重み付け加算をとる。その結果、現在と異なる過去の通信環境を引きずりすぎないようにし、より適切な送信ランクの選択が可能になる。
【0071】
第1の選択部30は、送信ランク変更が決定済みでない場合(ステップS41:No)、又は、次回送信が新規送信でない場合(ステップS42:No)、送信ランクを切り替えないものと判断し、
図8に示す切替処理を終了する。
【0072】
第1の選択部30は、変更前の送信ランクのSIRオフセット値と変更後の送信ランクのSIRオフセット値とを重み付け加算し、その加算結果を現在ランクのSIRオフセット値として置き換える。つまり、過去の通信環境を反映していたSIRオフセット値に対して送信ランクは異なるものの変更直前までの通信環境を反映したSIRオフセット値との重み付け加算を採用する。その結果、現在と異なる過去の通信環境を引きずりすぎないようにし、より適切な送信ランクの選択が可能になる。
【0073】
図9Aは、比較例の送信ランクの変更推移の一例を示す説明図である。比較例のBSのCUでは、CSI内のRIに基づき、送信ランクを切り替える。
図9Aに示す変更推移は、横軸を時間、縦軸を送信ランクとする。例えば、0~400未満の時間は送信ランク“4”、400~800未満の時間は送信ランク“2”、800~1200未満の時間は送信ランク“4”、1200~1600未満の時間は送信ランク“2”に変更する。つまり、400時間及び1200時間のタイミングで通信環境が劣化、800時間のタイミングで通信環境が良くなることで、
図9Aに示す変更推移で送信ランクを変更する。
【0074】
図9Bは、SIRオフセット値の重み付けなしの場合の比較例の送信ランクの変更推移の一例を示す説明図である。
図9Bの変更推移では、ステップS44のSIRオフセット値の重み付けなしの比較例の第1の選択部30を採用した場合である。SIRオフセット値は対応する送信ランクが選択された場合に更新される。つまり、ある送信ランクの選択頻度が低い場合に対応するSIRオフセット値が実環境から乖離することで、送信ランクを下げる条件を満たす場合がある。尚、下げる条件とは、現在の送信ランクのSIRオフセット値と、現在の送信ランクの1ランク下の送信ランクのSIRオフセット値との差分が大きい場合である。400以降の時間において、送信ランク1に下げる条件と送信ランク2に上げる条件を交互に満たすことにより、通信環境に応じた送信ランクを選択できない状態に陥っている。
【0075】
図9Cは、SIRオフセット値の重み付けありの場合の本実施例の送信ランクの変更推移の一例を示す説明図である。
図9Cに示す変更推移は、ステップS44のSIRオフセット値の重み付けありの第1の選択部30を採用した場合である。例えば、0~400未満の時間で送信ランクを“2”、“3”、“4”、“3”、“4”及び“3”の順に段階的に変更する。更に、400~800未満の時間で送信ランクを“3”、“2”、“1”及び“2”の順に段階的に変更する。更に、800~1200未満の時間で送信ランクを“3”及び“4”の順に段階的に変更する。更に、1200~1600未満の時間で送信ランクを“4”、“3”、“2”、“1”及び“2”の順に段階的に変更する。選択頻度の低い送信ランクに対応するSIRオフセット値が実環境から乖離することに起因して、送信ランクを下げる条件と送信ランクを上げる条件を交互に満たすような事態を回避できる。その結果、比較例に比較して、第1の選択部30は、送信ランクを段階的に変更することで、通信環境に応じて適切な送信ランクを選択できる。
【0076】
本実施例のCU6は、推定部28にて推定された受信SIR及び、調整部27にて取得された送信ランク毎のSIRオフセット値に基づき、送信ランクを切り替える。その結果、通信環境に応じて適切な送信ランクを決定できる。
【0077】
CU6は、UE2から受信するCSIの信頼性が低いと判定された場合に、推定された受信SIR及び、取得された送信ランク毎のSIRオフセット値に基づき、送信ランクを切り替える。その結果、UE2から受信するCSIの信頼性が低い場合でも、通信環境に応じて適切な送信ランクを決定できる。
【0078】
CU6は、送信ランクを切り替えて変更後の送信ランクをUE2へのPDSCHに設定する。その結果、最適なPDSCHを確保できる。
【0079】
CU6は、SIRオフセット値で受信SIRを補正し、補正後の受信SIRが閾値を超えたか否かを判定し、補正後の受信SIRが閾値を超えた場合に送信ランクを上げる。その結果、現在の送信ランクに対する受信SIRが十分高いため、送信ランクを上げることで最適な通信環境を実現できる。
【0080】
CU6は、一定時間間隔でサンプリングした2個のSIRオフセット値の変動幅が閾値未満であるか否かを判定し、2個のSIRオフセット値の変動幅が閾値未満である場合に送信ランクを上げる。その結果、送信毎に行われるSIRオフセット値の調整が収束してSIRオフセット値が実際の通信環境を反映した状態になったものと判断できる。
【0081】
CU6は、現在の送信ランクに対するSIRオフセット値と、現在の送信ランクの1ランク下の送信ランクに対するSIRオフセット値との差分が閾値を超えた場合に送信ランクを下げる。その結果、補正後の受信SIRに関して1ランク下よりも現在の送信ランクの方が著しく低いものと判断し、最適な通信環境を実現できる。
【0082】
CU6は、現在の送信ランクに変更後の一定回数のデータ伝送において一定の割合で伝送誤りが発生した場合に送信ランクを下げる。その結果、送信ランクを上げる試行を行った後で、現在の送信ランクが通信環境に適していないものと判断し、送信ランクを下げることで伝送誤りの頻発を抑制できる。
【0083】
CU6は、送信ランクを切り替える際に、変更前の送信ランクに対するSIRオフセット値と変更後の送信ランクに対するSIRオフセット値とを重み付け加算した結果を変更後の送信ランクに対するSIRオフセット値に置き換える。その結果、現在と異なる過去の通信環境を引きずりすぎないようにし、より適切な送信ランクの選択が可能になる。
【0084】
CU6は、受信SIRをSIRオフセット値で補正し、補正後の受信SIRに対応するMCSを選択し、選択されたMCS及び切り替えられた送信ランクに基づき、UE2との間の物理チャネルを制御することで、UE2との間の最適な通信環境を実現できる。
【0085】
尚、
図5に示す設定処理では、第1の決定処理を実行した後、第2の決定処理を実行する場合を例示したが、第2の決定処理を実行した後、第1の決定処理を実行しても良い。
【0086】
尚、CU6は、DLの受信SIR及びSIRオフセット値に基づき、DLの送信ランクを選択し、選択したDLの送信ランクをPDSCHに設定する場合を例示した。しかしながら、CU6は、DLの場合と同様の手法によって、ULの受信SIR及びSIRオフセット値に基づき、ULの送信ランクを選択し、選択したULの送信ランクをPUSCHに設定しても良く、適宜変更可能である。その結果、最適なPUSCHを確保できる。DLの場合と異なる点は、UE2から送信されたULの参照信号を用いてULの受信SIRを推定し、PUSCHの復号に成功したか否かに応じてPUSCHの送信ランクに対応するSIRオフセット値を更新する点である。