(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073089
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理方法、プログラム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240522BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240522BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
A61B6/03 360D
A61B6/03 360C
A61B5/055 380
A61B5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184095
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 岳人
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
4C117
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093DA02
4C093FA44
4C093FF22
4C093FF23
4C093FF30
4C093FF46
4C093FG04
4C096AC04
4C096AD14
4C096AD24
4C096DB06
4C096DC28
4C096DC30
4C096DC37
4C096DD08
4C117XB09
4C117XE44
4C117XE45
4C117XE46
4C117XG14
4C117XK05
4C117XK13
4C117XK18
4C117XK19
4C117XK20
4C117XK22
4C117XR07
4C117XR08
4C117XR09
4C117XR10
(57)【要約】
【課題】シミュレーションの実施に用いる注目格子を容易に特定すること。
【解決手段】実施形態の医用情報処理装置は、対象臓器を含む医用画像データを取得する画像データ取得部と、前記医用画像データと対応付けられた、前記対象臓器に関する格子点群データを取得する格子点群データ取得部と、前記医用画像データを表示させる表示制御部と、前記医用画像データの表示条件に基づいて、前記格子点群データに含まれる注目格子を特定する特定部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象臓器を含む医用画像データを取得する画像データ取得部と、
前記医用画像データと対応付けられた、前記対象臓器に関する格子点群データを取得する格子点群データ取得部と、
前記医用画像データを表示させる表示制御部と、
前記医用画像データの表示条件に基づいて、前記格子点群データに含まれる注目格子を特定する特定部と
を備える、医用情報処理装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記医用画像データの表示範囲に関する表示条件に基づいて、前記注目格子を特定する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記表示範囲に関する表示条件は、表示された前記医用画像データの表示角度と、スライス方向の位置とを含む、請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記表示範囲に関する表示条件と、治療デバイスのサイズとに基づいて、前記注目格子を特定する、請求項3に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記表示範囲に関する表示条件は、表示された前記医用画像データの中心位置を含む、請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記表示範囲に関する表示条件は、表示された前記医用画像データの拡大率を含む、請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記特定部は、前記医用画像データの表示色に関する表示条件に基づいて、前記注目格子を特定する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記医用画像データに基づく複数の画像を表示させ、
前記特定部は、表示されている前記複数の画像の中から注目画像を選択し、選択した前記注目画像の表示条件に基づいて前記注目格子を特定する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
特定された前記注目格子を計算条件として物理シミュレーションを実施する処理部を更に備える、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
対象臓器を含む医用画像データを取得し、
前記医用画像データと対応付けられた、前記対象臓器に関する格子点群データを取得し、
前記医用画像データを表示させ、
前記医用画像データの表示条件に基づいて、前記格子点群データに含まれる注目格子を特定する
ことを含む、医用情報処理方法。
【請求項11】
対象臓器を含む医用画像データを取得し、
前記医用画像データと対応付けられた、前記対象臓器に関する格子点群データを取得し、
前記医用画像データを表示させ、
前記医用画像データの表示条件に基づいて、前記格子点群データに含まれる注目格子を特定する
各処理をコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項12】
対象物を含む画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データと対応付けられた、前記対象物に関する格子点群データを取得する格子点群データ取得部と、
前記画像データを表示させる表示制御部と、
前記画像データの表示条件に基づいて、前記格子点群データに含まれる注目格子を特定する特定部と
を備える、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理方法、プログラム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な用途において、臓器等の対象物に関する格子点群データを用いた物理シミュレーションが実施されている。例えば、治療前において、治療の対象となる対象臓器に関する格子点群データを用いて物理シミュレーションを実施することにより、治療後における対象臓器の状態を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-111958号公報
【特許文献2】特開2017-12428号公報
【特許文献3】特開2022-73363号公報
【特許文献4】特開2020-183315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、物理シミュレーションの実施に用いる注目格子を容易に特定することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の医用情報処理装置は、取得部と、格子点群データ取得部と、表示制御部と、特定部とを備える。取得部は、対象臓器を含む医用画像データを取得する。格子点群データ取得部は、前記医用画像データと対応付けられた、前記対象臓器に関する格子点群データを取得する。表示制御部は、前記医用画像データを表示させる。特定部は、前記医用画像データの表示条件に基づいて、前記格子点群データに含まれる注目格子を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る医用情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る医用情報処理装置の処理回路による処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3A】
図3Aは、実施形態に係る格子点群データの一例を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、実施形態に係る格子点群データの一例を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、実施形態に係る格子点群データの一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、実施形態に係る僧帽弁の構造を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態に係るメッシュ編集機能について説明するための図である。
【
図5C】
図5Cは、実施形態に係るメッシュ編集機能について説明するための図である。
【
図5D】
図5Dは、実施形態に係るメッシュ編集機能について説明するための図である。
【
図6A】
図6Aは、実施形態に係る3次元のメッシュと2次元画像とを重ね合わせた表示例である。
【
図6B】
図6Bは、実施形態に係る3次元のメッシュと2次元画像とを重ね合わせた表示例である。
【
図6C】
図6Cは、実施形態に係る3次元のメッシュと2次元画像とを重ね合わせた表示例である。
【
図7A】
図7Aは、実施形態に係る表示条件の設定画面の一例を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、実施形態に係る表示条件の設定画面の一例を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、実施形態に係る注目格子の特定について説明するための図である。
【
図9B】
図9Bは、実施形態に係る注目格子の特定について説明するための図である。
【
図9C】
図9Cは、実施形態に係る注目格子の特定について説明するための図である。
【
図9D】
図9Dは、実施形態に係る注目格子の特定について説明するための図である。
【
図11A】
図11Aは、実施形態に係る物理シミュレーションの結果の表示例である。
【
図11B】
図11Bは、実施形態に係る物理シミュレーションの結果の表示例である。
【
図11C】
図11Cは、実施形態に係る物理シミュレーションの結果の表示例である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る注目格子の特定について説明するための図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る注目格子の特定について説明するための図である。
【
図14A】
図14Aは、実施形態に係る注目格子の特定について説明するための図である。
【
図14B】
図14Bは、実施形態に係る注目格子の特定について説明するための図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら、医用情報処理装置、医用情報処理方法、プログラム及び情報処理装置の実施形態について詳細に説明する。
【0008】
本実施形態では、医用情報処理装置20を含んだ医用情報処理システム1を例として説明する。例えば、医用情報処理システム1は、
図1に示すように、医用画像診断装置10、医用情報処理装置20及び画像保管装置30を有する。
図1は、実施形態に係る医用情報処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。医用画像診断装置10、医用情報処理装置20及び画像保管装置30は、ネットワークNWを介して相互に接続される。
【0009】
ネットワークNWを介して接続可能であれば、医用情報処理システム1に含まれる各装置が設置される場所は任意である。例えば、画像保管装置30は、医用画像診断装置10及び医用情報処理装置20が設置されている病院とは異なる病院、或いは他の施設内に設置されていてもよい。即ち、ネットワークNWは、施設内で閉じたローカルネットワークにより構成されてもよいし、インターネットを介したネットワークであってもよい。
【0010】
医用画像診断装置10は、被検体を撮像して医用画像データを収集する装置である。なお、本明細書において扱う各種データは、典型的にはデジタルデータである。医用画像診断装置10は、例えば、X線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission computed Tomography)装置等の医用モダリティである。なお、
図1においては単一の医用画像診断装置10を示すが、医用情報処理システム1は、複数の医用画像診断装置10を含んでもよい。また、医用情報処理システム1は、複数種類の医用画像診断装置10を含んでもよい。例えば、医用情報処理システム1は、医用画像診断装置10として、X線CT装置とMRI装置とを含んでもよい。
【0011】
画像保管装置30は、医用画像診断装置10によって収集された医用画像データを保管する画像データベースである。例えば、画像保管装置30は、任意の記憶装置を装置内又は装置外に備え、ネットワークNWを介して医用画像診断装置10から取得した医用画像データを、データベースの形態で管理する。例えば、画像保管装置30は、PACS(Picture Archiving and Communication System)のサーバである。画像保管装置30は、医用情報処理システム1とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0012】
医用情報処理装置20は、医用画像診断装置10によって収集された医用画像データを取得し、後述する各種の処理を行なう装置である。例えば、医用情報処理装置20は、
図1に示すように、通信インタフェース21、入力インタフェース22、ディスプレイ23、メモリ24及び処理回路25を備える。
【0013】
通信インタフェース21は、医用情報処理装置20と、ネットワークNWを介して接続された他の装置との間で送受信される各種データの伝送及び通信を制御する。具体的には、通信インタフェース21は、処理回路25に接続されており、他の装置から受信したデータを処理回路25に送信、又は、処理回路25から受信したデータを他の装置に送信する。例えば、通信インタフェース21は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0014】
入力インタフェース22は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路25に出力する。例えば、入力インタフェース22は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インタフェース22は、医用情報処理装置20本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インタフェース22は、モーションキャプチャによりユーザからの入力操作を受け付ける回路であっても構わない。一例を挙げると、入力インタフェース22は、トラッカーを介して取得した信号やユーザについて収集された画像を処理することにより、ユーザの体動や視線等を入力操作として受け付けることができる。また、入力インタフェース22は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用情報処理装置20とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路25へ出力する電気信号の処理回路も、入力インタフェース22の例に含まれる。
【0015】
ディスプレイ23は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ23は、デスクトップ型でもよいし、医用情報処理装置20本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。ディスプレイ23における表示の制御については後述する。
【0016】
メモリ24は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ24は、医用画像データを記憶する。また、メモリ24は、医用情報処理装置20に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。
【0017】
処理回路25は、制御機能25a、画像データ取得機能25b、格子点群データ取得機能25c、表示制御機能25d、特定機能25e及び処理機能25fを実行することで、医用情報処理装置20全体の動作を制御する。画像データ取得機能25bは、画像データ取得部の一例である。格子点群データ取得機能25cは、格子点群データ取得部の一例である。表示制御機能25dは、表示制御部の一例である。特定機能25eは、特定部の一例である。処理機能25fは、処理部の一例である。
【0018】
例えば、処理回路25は、制御機能25aに対応するプログラムをメモリ24から読み出して実行することにより、入力インタフェース22を介してユーザから受け付けた各種の入力操作に基づいて、画像データ取得機能25b、格子点群データ取得機能25c、表示制御機能25d、特定機能25e及び処理機能25fといった各種の機能を制御する。
【0019】
また、処理回路25は、画像データ取得機能25bに対応するプログラムをメモリ24から読み出して実行することにより、対象臓器を含む医用画像データを取得する。また、処理回路25は、格子点群データ取得機能25cに対応するプログラムをメモリ24から読み出して実行することにより、前記医用画像データと対応付けられた前記対象臓器に関する格子点群データを取得する。また、処理回路25は、表示制御機能25dに対応するプログラムをメモリ24から読み出して実行することにより、前記医用画像データを表示させる。また、処理回路25は、特定機能25eに対応するプログラムをメモリ24から読み出して実行することにより、前記医用画像データの表示条件に基づいて、前記格子点群データに含まれる注目格子を特定する。また、処理回路25は、処理機能25fに対応するプログラムをメモリ24から読み出して実行することにより、特定された前記注目格子を計算条件として物理シミュレーションを実施する。画像データ取得機能25b、格子点群データ取得機能25c、表示制御機能25d、特定機能25e及び処理機能25fによる処理の詳細については後述する。
【0020】
図1に示す医用情報処理装置20においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ24へ記憶されている。処理回路25は、メモリ24からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路25は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0021】
なお、
図1においては単一の処理回路25にて、制御機能25a、画像データ取得機能25b、格子点群データ取得機能25c、表示制御機能25d、特定機能25e及び処理機能25fが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路25を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路25が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0022】
また、処理回路25は、ネットワークNWを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路25は、メモリ24から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、医用情報処理装置20とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、
図1に示す各機能を実現する。
【0023】
以上、医用情報処理装置20を含んだ医用情報処理システム1の構成例について説明した。かかる構成の下、医用情報処理装置20における処理回路25は、物理シミュレーションの実施に用いる注目格子を容易に特定する。以下、
図2のフローチャートに沿って、処理回路25が行なう処理について説明する。
図2は、実施形態に係る医用情報処理装置20の処理回路25による処理の一例を示すフローチャートである。
【0024】
まず、画像データ取得機能25bは、対象臓器を含む医用画像データを取得する(ステップS1)。画像データ取得機能25bは、医用画像診断装置10によって撮像された医用画像データをネットワークNWを介して受信し、メモリ24に記憶させる。ここで、画像データ取得機能25bは、医用画像診断装置10から直接的に医用画像データを取得してもよいし、画像保管装置30等の他の装置を介して医用画像データを取得してもよい。
【0025】
画像データ取得機能25bが取得する医用画像データは、撮像範囲に対象臓器を含み、対象臓器の形態情報が格納されている種類の画像であれば、どのような種類の画像であってもよい。例えば、画像データ取得機能25bは、対象臓器を含む医用画像データとして、X線画像データ、CT画像データ、超音波画像データ、MRI画像データ、PET画像データ、SPECT画像データ等を取得することができる。なお、対象臓器を含む医用画像データは、3次元画像であってもよいし、2次元画像であってもよい。また、画像データ取得機能25bは、対象臓器を含む医用画像データとして、2次元画像を時間方向に複数撮像した時系列の複数の2次元画像(3次元画像)を取得してもよい。また、画像データ取得機能25bは、対象臓器を含む医用画像データとして、3次元画像を時間方向に複数撮像した時系列の複数の3次元画像(4次元画像)を取得してもよい。
【0026】
一例を挙げると、画像データ取得機能25bは、入力インタフェース22を介してユーザから受け付けた指示をトリガとして、医用画像データの取得を行なう。或いは、画像データ取得機能25bは、画像保管装置30を監視しておき、画像保管装置30に新しく医用画像データが格納されたことをトリガとして、当該医用画像データの取得を行なってもよい。或いは、画像データ取得機能25bは、画像保管装置30に新しく格納された医用画像データが、所定の条件を満足するか否かを判定し、満足する場合に当該医用画像データの取得を行なってもよい。例えば、画像データ取得機能25bは、所定の臓器を含む医用画像データが画像保管装置30に新しく格納されたことをトリガとして、当該医用画像データの取得を行なってもよい。
【0027】
なお、以下の
図2に沿った説明では、医用画像データとして、3次元画像であるCT画像データを取得するケースについて説明する。また、以下の
図2に沿った説明では、一例として、僧帽弁の弁膜症患者が被検体であり、当該被検体の僧帽弁を対象臓器として処理を行なうケースについて説明する。この場合、画像データ取得機能25bは、ステップS1において、被検体の僧帽弁を含むCT画像データを取得する。更に、ステップS2~ステップS7では、CT画像から得られる治療前の僧房弁の形態情報から、経皮的僧帽弁クリップ術(MitraClipとも呼ばれる)治療後の僧房弁の形態情報及び血行動態情報をシミュレーションする状況を例にして説明する。勿論、実施形態はこれに限定されるものではなく、医用画像データの種類、対象臓器、シミュレーションの目的等については種々の変形が可能である。
【0028】
次に、格子点群データ取得機能25cは、ステップS1で取得された医用画像データと対応付けられた、対象臓器に関する格子点群データを取得する(ステップS2)。格子点群データは、例えば、複数の格子点それぞれの位置座標を含むデータである。格子点群データは、複数の格子点それぞれの位置座標のみのデータであってもよいし、複数の格子点を3次元空間に配置した3次元画像であってもよい。このような3次元画像の例としては、CT画像データに対して複数の格子点それぞれの位置座標を対応付けたデータ、隣接する格子点を直線又は曲線で接続したメッシュ等が挙げられる。格子点群データの一例を
図3A及び
図3Bに示す。
図3A及び
図3Bでは、格子点群データをメッシュの形態で図示している。
【0029】
格子点群データの生成方法について特に限定されるものではないが、一例として、ステップS1で取得した医用画像データから生成することが可能である。具体的には、格子点群データ取得機能25cは、CT画像データから、僧帽弁の解剖構造を示す僧帽弁領域を特定し、特定した僧帽弁領域から既存技術を用いて格子点群データを生成することができる。例えば、格子点群データ取得機能25cは、CT画像データのうちの僧帽弁領域からVR(Volume Rendering)画像を生成し、VR画像上に一定の間隔で格子点を配置することで、格子点群データを生成する。
【0030】
例えば、格子点群データ取得機能25cは、CT画像データ上において、僧帽弁を示す画素の座標情報を取得することにより、僧帽弁領域を特定する。一例を挙げると、表示制御機能25dは、CT画像データに基づくMPR(Multi Planar Reconstruction)画像等の表示用画像をディスプレイ23に表示させる。そして、格子点群データ取得機能25cは、ディスプレイ23の表示を参照したユーザから、僧帽弁領域の位置を指定する入力操作を入力インタフェース22を介して受け付けることにより、僧帽弁領域を特定する。即ち、僧帽弁領域の特定は、手動で行われてもよい。
【0031】
別の例を挙げると、格子点群データ取得機能25cは、既知の領域抽出技術により、CT画像データに描出される解剖学的構造に基づいて僧帽弁領域を特定してもよい。既知の領域抽出技術としては、CT値等の画素値に基づく判別分析法(大津の二値化法とも呼ばれる)、領域拡張法、スネーク法、グラフカット法、ミーンシフト法等を例示することができる。
【0032】
その他、格子点群データ取得機能25cは、任意の方法で僧帽弁領域を特定することができる。例えば、格子点群データ取得機能25cは、深層学習等の機械学習技術により僧帽弁領域を特定することもできる。例えば、格子点群データ取得機能25cは、事前に準備された学習用データに基づいて構築される僧帽弁領域の形状モデルを用いて、僧帽弁領域を特定してもよい。
【0033】
上述の通り、医用画像データに基づいて格子点群データを取得した場合、医用画像データに対する格子点群データの位置関係は既知であることから、格子点群データ取得機能25cは、医用画像データと格子点群データとを対応付けることができる。或いは、格子点群データ取得機能25cは、医用画像データと対応付けられた状態の格子点群データを生成してもよい。
【0034】
医用画像データに基づいて格子点群データを取得する例について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、格子点群データ取得機能25cは、僧帽弁の一般的な形状を示す僧帽弁モデルを、被検体の情報(年齢、疾患の種類等)に応じて変形させ、変形後の僧帽弁モデルから格子点群データを生成してもよい。また、例えば、格子点群データ取得機能25cは、僧帽弁モデルを、ステップS1で取得された医用画像データに基づいて変形させ、変形後の僧帽弁モデルから格子点群データを生成してもよい。この場合、格子点群データ取得機能25cは、例えばパターンマッチング等の任意の手法で、医用画像データと格子点群データとの対応付けを行なうことができる。
【0035】
僧房弁に関する格子点群データの一例を
図4Aに示す。また、一般的な僧帽弁の構造を
図4Bに示す。
図4Aでは、僧帽弁の前尖に対応した前尖領域を19列9行の格子点群で示し、僧帽弁の後尖に対応した後尖領域を25列9行の格子点群で示している。勿論、
図4Aは一例であり、格子点群データの具体的な構成(格子点の数、配置、配列等)について特に限定されるものではなく、適宜変更することとして構わない。
【0036】
図4Aでは、前尖領域と後尖領域との境界であって行方向の一端を原点とし、行方向の座標を「x」、列方向の座標を「y」として、各格子点に対して識別子(x,y)を付与している。この場合、識別子(8,0)は前交連部を示し、識別子(8,18)は後交連部を示す。また、前尖領域と後尖領域とにおける最も外側に位置する部位(
図4Aにおいてx座標が「0」となる位置)を弁輪部と称する。また、前尖領域と後尖領域とにおける最も内側に位置する部位(
図4Aにおいてx座標が「8」となる位置)を弁先端部と称す。
【0037】
次に、表示制御機能25dは、表示条件を設定し(ステップS3)、設定した表示条件で医用画像データを表示させる(ステップS4)。表示条件の例としては、表示する画像の中心位置や角度といった表示範囲に関する条件、ウィンドウレベル(Window level:WL)やウィンドウ幅(Window Width:WW)といった表示色に関する条件を挙げることができる。
【0038】
表示条件の設定及び医用画像データの表示例について、
図5Aを用いて説明する。
図5Aは、例えば、表示制御機能25dによる制御のもとでディスプレイ23に表示される表示画面である。
図5Aの表示画面はあくまで一例であり、後述する各種の機能については適宜変更・省略が可能である。
【0039】
図3の領域301は、各種機能に対応するアイコンやボタンが配置されたメニューバーである。ユーザは、領域301に配置されたアイコンをマウス等の入力インタフェース22によって操作することにより、当該機能を起動することができる。
【0040】
アイコン301aは、領域302の表示・非表示を切り替えるボタンである。即ち、アイコン301aが選択されることにより、表示制御機能25dは、サムネイル画像を表示させる領域302の表示・非表示を切り替える。例えば、領域302が表示された状態でアイコン301aが押下されると、表示制御機能25dは、領域302を非表示とする。ここで、表示制御機能25dは、非表示となった領域302の大きさに合わせて、領域303や領域304を拡大することとしてもよい。
【0041】
アイコン301bは、領域303の表示形態を変更するボタンである。例えば、表示制御機能25dは、アイコン301bに対する操作に応じて、領域303の分割数を変更する。例えば、
図5Aでは、領域303に対して、2行2列の4つの画像表示領域(301a~301d)が設定されている。表示制御機能25dは、アイコン301bに対する操作に応じて、領域303における画像表示領域の行又は列の数を変更することができる。
【0042】
また、アイコン301bに対する操作に応じて、領域303における各画像表示領域の大きさを変更可能としてもよい。例えば、予めいくつかのパターンの画像表示領域の分割数や大きさのセットが、プリセットとして登録される。表示制御機能25dは、アイコン301bが押下されると、予め登録されたセットを選択するためのインタフェースを表示させ、当該インタフェースに対する選択操作を受け付けることで、領域303の表示形態を設定する。表示制御機能25dは、新たなプリセットの登録をユーザから受け付けるためのインタフェースを表示させることもできる。
【0043】
アイコン301c~301gは、マウスの操作系を割り当てる機能のボタン群であり、例えば、各アイコンが選択されることにより、表示制御機能25dは、マウスの左クリック及びドラッグの操作系を、選択されたアイコンに対応した操作系に割り当てるように制御する。
【0044】
例えば、アイコン301cは、画像をスライス方向に連続的に表示させるブラウズ操作系を、マウスの左クリック及びドラッグの操作系に割り当てるためのボタンである。アイコン301cが選択され、また、マウスの左クリック及びドラッグ操作が行われた際、表示制御機能25dは、領域303の画像表示領域のうちクリックされた領域に表示されているスライス画像を、クリック位置及び/又はドラッグ方向に基づいて、当該領域におけるスライス方向に連続的に切り替える。
【0045】
アイコン301dは、画像の表示色(CT画像データでは、例えば、WLやWWなど)を変更する操作系を、マウスの左クリック及びドラッグの操作系に割り当てるためのボタンである。アイコン301dが選択され、また、マウスの左クリック及びドラッグ操作が行われた際、表示制御機能25dは、領域303の画像表示領域のうちクリックされた領域に表示されている画像の表示色を、クリック位置及び/又はドラッグ方向に基づいて変更する。
【0046】
アイコン301eは、画像を平行移動させるための操作系を、マウスの左クリック及びドラッグの操作系に割り当てるためのボタンである。アイコン301eが選択され、また、マウスの左クリック及びドラッグ操作が行われた際、表示制御機能25dは、領域303の画像表示領域のうちクリックされた領域に表示されているスライス画像の表示位置を、クリック位置及び/又はドラッグ方向に基づいて変更する。
【0047】
アイコン301fは、画像の拡大率を変更する操作系を、マウスの左クリック及びドラッグの操作系に割り当てるためのボタンである。アイコン301fが選択され、また、マウスの左クリック及びドラッグ操作が行われた際、表示制御機能25dは、領域303の画像表示領域のうちクリックされた領域に表示されているスライス画像の拡大率を、クリック位置及び/又はドラッグ方向に基づいて変更する。
【0048】
アイコン301gは、画像を回転させる操作系等をマウスの左クリック及びドラッグの操作系に割り当てるためのボタンである。アイコン301fが選択され、また、マウスの左クリック及びドラッグ操作が行われた際、表示制御機能25dは、領域303の画像表示領域のうちクリックされた領域に表示されているスライス画像の表示角度(画面上における上側下側などの方向)を、クリック位置及び/又はドラッグ方向に基づいて変更する。
【0049】
なお、上記した機能を割り当てる操作は、マウスの左クリック及びドラッグの操作系に限られるものではない。例えば、右クリック及びドラッグの操作系や、マウスホイールクリック及びドラッグの操作系、右と左との同時クリック及びドラッグの操作系に、上記した機能が割り当てられてもよい。
【0050】
また、マウスを動かす量(ドラッグの操作量)に対する、ブラウズ操作の際のスライス送りのスピード又は量や、拡大率の変更量、平行移動の移動量、表示色の変化量、回転量を設定できるようにしてもよい。また、当該アイコンを選択する際のマウス操作に応じて割り当てを変更するようにしてもよい。例えば、左クリックで当該アイコンを選択した場合は左クリックの操作系に当該アイコンに対応する操作系を割り当て、右クリックで当該アイコンを選択した場合は右クリックの操作系に当該アイコンに対応する操作系を割り当て、右と左との同時クリックで当該アイコンを選択した場合は右と左との同時クリックの操作系に当該アイコンに対応する操作系を割り当て、マウスホイールクリックで当該アイコンを選択した場合はマウスホイールクリックの操作系に当該アイコンに対応する操作系を割り当てるように制御してもよい。
【0051】
アイコン301h~301nは、各種図形の描画及び計測機能に対するアイコンであり、当該アイコンが選択されることにより、表示制御機能25dは、各種図形の描画及び計測機能を実行可能とするように制御する。
【0052】
アイコン301hは、ルーラー機能を示す。アイコン301hを選択することにより、例えばマウスの左クリックがルーラー機能に割り当てられる。ルーラー機能は、左クリックによって画像表示領域上の2点が選択されることにより、当該2点間の距離を算出し表示する機能である。例えば、画像表示領域上の2点が選択された際、表示制御機能25d
は、画像上に直線を描画し、当該直線の長さを計測して表示する。なお、直線の始点及び終点の位置や色、太さ、計測値のフォントなどの表示形態は、ユーザ操作により調整できる。ルーラー機能により算出される距離は、拡大率に基づいて算出した実空間における距離であってもよいし、画面上の距離であってもよいし、2点間に存在する画素数であってもよい。
【0053】
アイコン301iは、角度算出機能を示す。アイコン301iを選択することにより、例えばマウスの左クリックが角度算出機能に割り当てられる。角度算出機能は、左クリックによって画像表示領域上の3点が選択されることにより、当該3点がなす鋭角又は鈍角の角度を算出し表示する機能である。3点がなす角度は最大で3か所存在するが、全ての位置における鋭角又は鈍角の角度を算出してもよいし、各点を設定する順に基づいて角度を算出する位置を決定してもよい。例えば、2点目の位置における鋭角又は鈍角の角を算出することとしてもよい。例えば、画像表示領域上の3点が選択された際、表示制御機能25dは、画像上に2本の直線を描画し、当該2本の直線がなす鋭角又は鈍角の角度を計測して表示する。なお、2つの直線それぞれの始点及び終点の位置や色、太さ、計測値のフォントなどの表示形態は、ユーザ操作により調整できる。
【0054】
アイコン301jは、楕円表示機能を示す。アイコン301jを選択することにより、例えばマウスの左クリックが楕円表示機能に割り当てられる。楕円表示機能は、左クリックによって画像表示領域上の2点が選択されることにより、当該2点を焦点とする楕円を描画する機能である。また、楕円表示機能は、描画された楕円の周長や内部の面積や内部の画素値の統計量(平均値や最大値、最小値等)を算出して表示する機能である。なお、楕円の描画方法はどのような方法であってもよい。例えば、楕円の中心を指定し、その後に長軸と短軸とを設定するように促してもよい。また、楕円の中心位置や長径、短径、色、太さ、計測値のフォントなどの表示形態は、ユーザ操作により調整できる。
【0055】
アイコン301kは、矢印表示機能を示す。アイコン301kを選択することにより、例えばマウスの左クリックが矢印表示機能に割り当てられる。矢印表示機能は、左クリックによって画像表示領域上の2点が選択されることにより矢印の始点及び終点を設定し、始点から終点までを結ぶ直線と始点から終点の方向を示す印とを組み合わせた矢印を表示する機能である。矢印の始点及び終点の位置や色、太さ、先端部の形態などの表示形態は、ユーザ操作により調整できる。
【0056】
アイコン301lは、文字列表示機能を示す。アイコン301lを選択することにより、例えばマウスの左クリックが文字列表示機能に割り当てられる。文字列表示機能は、左クリックによって画像表示領域上の1点が選択されることにより、当該1点の周囲に文字列を設定する領域を設定し、ユーザによる入力インタフェース22(キーボード等)の操作に対応する文字列を当該領域に表示する。なお、表示する文字列のフォントやサイズや色などの条件を設定できるようにしてもよい。なお、文字列を表示する位置や、文字列のフォント、フォントサイズ、フォントの色、背景の色などの表示形態はユーザ操作により調整できる。
【0057】
アイコン301mは、閉曲線描画機能を示す。アイコン301mを選択することにより、例えばマウスの左クリックが閉曲線描画機能に割り当てられる。閉曲線描画機能は、例えば左クリックによって画像表示領域上の任意の数の点(点群)が選択されることにより、当該点群を通る閉曲線を算出して描画する機能である。点群から閉曲線を算出する方法としては、既知の手法を用いることができる。例えば、スプライン補間処理を用いることにより、点群から閉曲線を算出することができる。また、閉曲線描画機能は、描画した閉曲線の周長や閉曲線の内部の面積や内部の画素値の統計量(平均値や最大値、最小値等)を算出し、表示する機能である。閉曲線の中心位置や色や太さ、計測値のフォントなどの表示形態はユーザ操作により調整できる。その他、予め定める形(円、楕円、長方形、正方形、三角形等)を設定可能として当該形の各辺の長さや2つの辺のなす角度や直径や長径及び短径等を調整できるようにしてもよいし、フリーフォームの形状を描画できるようにしてもよい。
【0058】
アイコン301nは、開曲線描画機能を示す。アイコン301nを選択することにより、例えばマウスの左クリックが開曲線描画機能に割り当てられる。開曲線描画機能は、左クリックによって画像表示領域上の任意の数の点(点群)が選択されることにより、当該点群を通る開曲線を算出して描画する機能である。点群から開曲線を算出する方法としては、既知の手法を用いることができる。なお、開曲線の中心位置や色、太さ、計測値のフォントなどの表示形態はユーザ操作により調整できる。また、開曲線描画機能は、描画した開曲線に関する統計量(周長や面積等)を算出し、表示する機能である。その他、3次元図形(球、楕円球、直方体、三角錐等)を設定できるようにしてその表面積や体積などを算出し表示するよう制御してもよいし、フリーフォームの形状を描画できるようにしてもよい。
【0059】
アイコン301oは、リファレンスライン表示機能を示す。例えば、アイコン301oに含まれるチェックボックスを左クリックしてチェック又はその取り消しをすることにより、画像表示領域のうち対象となる領域(例えば、
図5Aでは領域303b、領域303c及び領域303d)において、他の領域に表示されている断面に対応する位置を示す線(リファレンスライン)の表示・非表示を切り替える。例えば、
図5Aの領域303cに示すリファレンスライン301o1は、領域303dに表示されているスライス画像の断面位置を示している。リファレンスラインについては、画像表示領域上において、その表示位置や複数のリファレンスラインの交差位置をユーザの指示に基づいて変更できるようにしてもよい。この時、対応する画像表示領域上に表示されている画像の断面位置は、変更後のリファレンスラインに対応する位置に変更される。
【0060】
アイコン301pは、3次元画像に対して2次元画像を重ねて表示する機能を示す。ここで、3次元画像とは、VR画像やSR(Surface Rendering)画像といったレンダリング画像、或いは、3次元で生成された格子点群データであってもよい。このような3次元の格子点群データは、上述のステップS2において生成される。
図5Aでは、3次元の格子点群データの例として、領域303aに、僧帽弁に関するメッシュを示している。
【0061】
より具体的には、アイコン301pに含まれるチェックボックスが左クリックによりチェックされた際、表示制御機能25dは、メッシュ等の3次元画像に対して、2次元画像を3次元的な位置を対応付けて表示させる。例えば、表示制御機能25dは、CT画像データ(ボリュームデータ)における3次元のメッシュの位置と、当該CT画像データにおけ2次元画像の位置との位置関係に基づいて、3次元のメッシュに対する2次元画像の位置を特定する。そして、表示制御機能25dは、3次元のメッシュの特定した位置に2次元画像を配置することで、
図5Aの領域303aに示す重ね合せの画像を表示させる。
【0062】
画像を重ねる際、表示制御機能25dは、
図6Aに示す通り、観察方向に対して2次元画像より手前に位置するメッシュは表示させ、2次元画像より奥に位置するメッシュは表示させないように制御してもよい。また、メッシュ及び2次元画像の表示角度については、
図6B及び
図6Cに示す通り、適宜回転可能としてもよい。例えば、領域303aにおいてマウスの左クリック及びドラッグ操作が行われた際、表示制御機能25dは、クリック位置及び/又はドラッグ方向に基づいて、領域303aに表示されたメッシュ及び2次元画像の表示角度を回転させる。また、アイコン301pに含まれるチェックボックスを更に左クリックしてチェックが取り消された際、2次元画像は非表示となる。
【0063】
3次元画像に対して重ねて表示する2次元画像(
図5Aの領域303aに示す2次元画像)は、例えば、領域303の画像表示領域(領域303b~303d)に表示されている画像の中から選択される。3次元画像に対して重ねて表示する2次元画像は、領域303b~303dに表示されている3つの画像の全てであってもよいし、ユーザにより選択された1又は2つの画像であってもよい。例えば、領域303b~303dのいずれかの領域上で右クリックが行なわれた際にコンテキストメニューを表示し、当該コンテキストメニューに対するユーザの操作に応じて、3次元画像に対して重ねて表示する2次元画像が選択される。また、領域303b~303dの中から、3次元画像に対して重ねて表示する2次元画像を表示する領域を予め定めておいてもよい。
【0064】
アイコン301qは、メッシュ編集機能を示す。アイコン301qを選択することにより、例えば領域303aに表示されているメッシュを編集することが可能となる。即ち、メッシュ編集機能では、上述のステップS2において生成された格子点群データの編集を行なうことができる。なお、アイコン301qが選択されていない時、メッシュ編集機能は動作しない。
【0065】
例えば、
図5Aでは、領域303aに、僧帽弁に関するメッシュの全体像が表示されている。ここで、領域303b~303dの各画像表示領域に対しては、例えば
図5B~
図5Dに示すように、メッシュとの交点を示すマークが表示される。即ち、
図5B~
図5Dでは、画像表示領域に表示された2次元画像と、メッシュの格子点を接続する直線乃至は曲線との交点を示すマークを表示している。より具体的には、
図5B~
図5Dでは、領域303b、領域303c及び領域303dの各画像表示領域において、メッシュ全体のうち前尖に対応する部分との交点を四角形のマークで示し、後尖に対応する部分との交点を三角形のマークで示している。
【0066】
例えば、メッシュは、複数の格子点と、隣接する格子点を接続する複数の直線とから構成される。表示制御機能25dは、メッシュを構成する複数の直線について、領域303b~303dの各画像表示領域に表示された画像の断面位置での断面を求める。例えば
図4Aに示したように、前尖領域を19列9行の格子点群で示し、後尖領域を25列9行の格子点群で示したメッシュの場合、その断面は、最大で18個のマーク(
図5B~
図5Dに示した、前尖領域の断面を示す9つの四角形のマークと、後尖領域の断面を示す9つの三角形のマーク)で表現される。即ち、18行の格子点群を有するメッシュの場合において、当該18行の全てと交差するように2次元画像が配置される場合には18個のマークが表示され、当該18行の一部のみと交差するように2次元画像が配置される場合には1~17個のマークが表示され、当該18行のいずれとも交差しないように2次元画像が配置される場合にはマークは表示されないこととなる。
【0067】
例えば、ユーザは、領域303b~303dの各画像表示領域上に表示されているメッシュの断面を左クリック及びドラッグで移動させることにより、当該移動量に応じてメッシュの形状を修正することができる。なお、
図5B~
図5Dに示したメッシュの断面を示すマークの形状や色、数などの表示形態は、ユーザ操作により調整できる。
【0068】
図5Aに戻って説明を続ける。アイコン301rは、Undo(元に戻す)機能を示す。アイコン301rを選択することにより、領域303における表示が、直前の操作を実施する前の状態まで戻される。例えば、表示制御機能25dは、操作を実施する度、領域303における表示条件を記憶しておくことにより、本機能を実現できる。また、表示制御機能25dは、直前の操作前の状態に戻すだけでなく、過去操作後の表示条件を所定の数だけ記憶しておき、当該複数の表示条件をユーザに提示し、ユーザが任意の表示条件を指定することにより、指定された表示条件の状態に戻すようにしてもよい。この時、表示制御機能25dは、時系列に沿って、一つの操作を実施する度に表示条件を記憶するようにしてもよいし、特定の条件を満たす操作を実施した場合にのみ表示条件を記憶するようにしてもよい。例えば、表示制御機能25dは、特定の画像表示領域(例えば領域303b)の表示形態が変化する操作を実施した場合にのみ表示条件を記憶するようにしてもよい。このような特定の条件は、予め設定される。
【0069】
アイコン301sは、Redo(やり直し)機能を示す。領域303における表示をアイコン301rのUndo機能を用いて直前の操作を実施する前の状態まで戻した際、アイコン301sを選択することにより、当該Undo機能による操作を取り消し、Undo機能を実施する前の状態に戻す。
【0070】
アイコン301tは、リセット機能を示す。アイコン301tを選択することにより、領域303における表示条件が予め設定する条件に戻される。当該予め設定する条件はどのような条件でもよいが、一例としては、起動時の条件とすることができる。即ち、
図5Aの表示画面を表示する表示制御機能25dの機能が起動した際、まずは、予め設定する条件での表示が行なわれ、その後、ユーザから受け付けた操作に応じて様々に表示が変更される。アイコン301tが選択された際、表示制御機能25dは、予め設定する起動時の条件での表示に戻す。
【0071】
アイコン301uは、VR画像やSR画像といったレンダリング画像、MPR画像等の2次元画像に対して重畳表示する領域の表示条件を設定する設定画面を表示するためのボタンである。具体的には、例えばステップS2において、ステップS1で取得された医用画像データに含まれる解剖学的構造(各弁葉、各心房、各心室、石灰化など)の位置情報が特定される。これらの各種の解剖学的構造を示す領域をVR画像やMPR画像に重畳表示させるに当たり、例えばユーザがマウス操作によってアイコン301uを選択すると、VR画像やMPR画像に重畳表示させる領域(解剖学的構造を示す領域)の表示条件を設定するための設定画面が表示される。
【0072】
図7A及び
図7Bは、実施形態に係る表示条件の設定画面の一例を示す図である。例えば、設定画面は、
図7Aに示すように、「Priority」、「色」、「透過度」、「VR」、「MPR」、「Mesh」、「名前」に関する設定項目を含む。
【0073】
「Priority」は、指定される領域(右の「名前」のコンボボックスから指定)の表示優先順位が設定される。例えば、設定画面の上に指定される領域ほど、表示優先順位が高いことを示し、画像上の同一座標において複数の領域が対応する場合は優先順位の高い領域が表示される。
【0074】
「色」は、対応する領域(右の「名前」のコンボボックスから指定)に対して、VR画像やMPR画像に重畳表示する際に割り当てる色が設定される。例えば、「色」には、色のサンプルが表示される。例えば、ユーザが、サンプルの色を示す領域を選択すると、表示制御機能25dは、
図7Bに示すように、カラーマップや、RGB値の入力ボックスを表示させる。ユーザは、カラーマップからの色選択、或いは、RGB値の入力によって、対象となる領域に任意の色を割り当てることができる。
【0075】
「透過度」は、対応する領域(右の「領域名」のコンボボックスから指定)に対して、VR画像やMPR画像に重畳表示する際の透過度が設定される。例えば、「透過度」は、スライダーバーにより0~99%まで1%刻みで指定でき、0%の場合は一切透過しない(つまり背景の画像は見えない)状態で重畳表示される。なお、
図7A及び
図7Bには図示していないが、彩度や明度等の表示条件を設定できるようにしてもよいし、色の変わりにテクスチャなどを設定できるようにしてもよい。また、図示しない「連動」チェックボックスを選択することにより、全ての透過度を一緒に設定できることとしてもよい。より具体的には、「連動」チェックボックスが選択された際、全ての透過度を一緒の値に設定するように制御してもよいし、「連動」チェックボックスが選択された時点の各領域に対応する透過度の値の関係性を維持したまま、全体的に透過度を上げる又は下げるように制御してもよい。
【0076】
「VR」は、VR画像上に表示する領域を指定するためのチェックボックスである。また、「MPR」は、MPR画像上に表示する領域を指定するためのチェックボックスである。なお、
図7A及び
図7Bには図示していないが、「VR」、「MPR」或いは「Mesh」の全てのチェックボックスに対するチェックやチェック解除を同時に実施できるボタンが更に設けられてもよい。
【0077】
「Mesh」は、VR画像やMPR画像に重畳表示する領域の表示形態をマスク形式にするかメッシュ形式にするかを指定するためのチェックボックスである。具体的には、メッシュ形式の場合、表示制御機能25dは、例えば
図5Aの領域303aに示したように、ステップS2で取得したメッシュを表示させる。一方で、マスク形式の場合、表示制御機能25dは、例えばVR画像やSR画像、MPR画像といった画像を表示させる。なお、メッシュ形式にした場合、「透過度」が0%の場合でも背景の画像がメッシュの隙間から見えることとなる。一方で、マスク形式にし、「透過度」が0%の場合には、背景の画像は見えないこととなる。
【0078】
「名前」は、設定した優先順位や表示条件で表示する領域が設定される。例えば、ユーザは、「名前」の列に配置されたコンボボックスによって領域を指定する。なお、複数のコンボボックスに同じ領域が設定できないように制御してもよい。例えば、あるコンボボックスに既に他のコンボボックスで設定されている領域を指定した場合、指定できないように制御したり、既存のコンボボックスの設定を解除したりしてもよい。或いは、複数のコンボボックスに同じ領域を設定することを可能としつつ、優先順の高い設定を優先して使用するように制御してもよい。なお、
図7Aでは、石灰化領域(Calcification Area)、大動脈弁のLCC(Left Coronary Cusp)、RCC(Right Coronary Cusp)及びNCC(Non Coronary Cusp)を、VR画像、MPR画像及びメッシュ上に表示するように設定している。
【0079】
「Close」は、本設定画面を非表示にするボタンであり、「Reset」は設定状態を初期状態に戻すためのボタンである。なお、本設定画面により設定する表示条件を各領域に反映させるタイミングは、各条件を設定した直後に設定した条件を反映させてよいし、「Close」ボタン選択後に一斉に反映させてもよい。
【0080】
アイコン301vは、シミュレーションモードを開始するためのボタンである。シミュレーションモードについては後述する。
【0081】
領域302は、指定された条件を満たす画像を表すアイコンを表示する。例えば、ユーザは、不図示のインタフェースを用いて、被検体の氏名、被検体ID、生年月日、体重などの被検体に関する情報や、画像のモダリティの種類、撮像装置名、撮像日、撮像条件、再構成条件などの画像に関する情報などを指定する。画像データ取得機能25bは、ユーザによって指定された上記条件を満たすボリュームデータを医用画像診断装置10又は画像保管装置30から取得する。例えば、画像データ取得機能25bは、画像のDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)のヘッダ、PACS、電子カルテ、RIS(Radiology Information System)、HIS(Hospital Information System)などから、指定された条件に関する情報を取得し、取得した条件とユーザによって指定された条件とを比較して、ユーザによって指定された条件を満たすボリュームデータを取得する。なお、以下では、所定の1名の被検体の1つの4次元CT画像データが指定された例について説明するが、複数名の被検体の画像や、異なる種類のモダリティ(例えば、CT画像データと超音波画像データ等)が指定されてもよい。
【0082】
表示制御機能25dは、例えば、指定された条件を満たす画像を表すアイコンとして、サムネイルを表示させる。具体的には、表示制御機能25dは、画像データ取得機能25bによって取得されたボリュームデータからサムネイル画像を生成して、生成したサムネイル画像を領域302に表示させる。例えば、表示制御機能25dは、ボリュームデータにおける代表的な断面の2次元画像を領域302の大きさに合わせて縮小してサムネイル画像を生成することができる。
【0083】
指定された条件を満たす画像を表すアイコンとしてサムネイルについて説明したが、表示制御機能25dは、サムネイル画像に代えて又は加えて、種々のアイコンを領域302に表示させることができる。例えば、表示制御機能25dは、取得されたボリュームデータを示す文字列や記号、或いは、予め用意されメモリ24に保管された各種図形や画像、シェーマ像などを、領域302に表示させてもよい。さらに、表示制御機能25dは、上記したサムネイル画像やアイコンと共に、ボリュームデータの基本的な情報(撮像日、スライス枚数、再構成関数等)を並べて表示することもできる。かかる場合には、例えば、表示制御機能25dは、画像のDICOMヘッダ、PACS、電子カルテ、RIS、HISなどからこれらの情報を取得して、サムネイル画像やアイコンに対応付けて表示させる。なお、表示する基本的な情報は予め定めておいてもよいし、ユーザが指定できるようにしてもよい。
【0084】
例えば、ユーザは、領域302に表示されたサムネイル等のアイコンを、領域303にドラッグアンドドロップする。この操作に応じて、表示制御機能25dは、選択されたサムネイル画像に対応するボリュームデータから表示する画像を生成し、生成した画像を領域302に表示させる。ここで、ドラッグアンドドロップした際に既に領域303に画像が表示されている場合、表示制御機能25dは、不図示の確認画面(例えば、画像保存を促す表示など)をユーザに表示する。そして、表示制御機能25dは、確認画面に対し肯定する操作をユーザから受け付けた後、既に表示されている画像を領域303から除いて、ドラッグアンドドロップされたアイコンに対応する画像を表示させる。
【0085】
領域303に画像を表示する際、表示制御機能25dは、予め定める表示条件に基づいて画像を表示させる。ここで、表示条件は、領域303に含まれる複数の表示領域において表示する画像の割り当て(例えば、
図5Aに示す領域303a~303dのどの領域にどのような画像を表示するか)、断面画像を表示する場合における断面位置、拡大率、WLやWWなどである。表示制御機能25dは、領域303に画像を表示させる際、上記した表示条件を取得し、取得した表示条件に基づいて画像を生成し、生成した画像を領域303に表示させる。
【0086】
なお、上記した表示条件は、あくまでも一例であり、どのような条件が設定されてもよい。また、表示条件は、ユーザによって任意に変更できるようにしてもよい。かかる場合には、例えば、表示制御機能25dは、表示条件を設定するためのGUIを表示させ、ユーザによる表示条件の指定を受け付ける。
【0087】
上述した通り、領域303は画像表示領域であり、各種画像を表示する。例えば、
図5Aは、画像読み込み時の各領域における初期配置であり、領域303a~領域303dの4つの領域が設定されている。
【0088】
図5Aにおいて、領域303aには、僧帽弁の3次元画像が表示されている。より具体的には、領域303aには、ステップS2で取得された、僧帽弁の3次元のメッシュが表示されている。例えば
図7A及び
図7Bに示した「Mesh」のチェックボックスがチェックされている場合、表示制御機能25dは、
図5Aに示す通りメッシュを表示させる。一方でチェックが解除されている場合、表示制御機能25dは、
図5Aに示すメッシュに代えて、又は他の領域(領域303b~領域303d)において、僧帽弁のVR画像やSR画像等を表示させる。
【0089】
また、
図5Aにおいて、領域303b~領域303dには、僧帽弁を含む2次元画像が表示されている。例えば、表示制御機能25dは、僧帽弁を基準として設定されるMPR画像を領域303b~領域303dに表示させる。一例を挙げると、表示制御機能25dは、ステップS2で特定された僧帽弁領域から、僧帽弁のAnnulus面に垂直で心尖部を通る面を特定し、特定した面を基準面として3方向のMPR画像を生成して、領域303b~領域303dにそれぞれ表示させる。僧帽弁のAnnulus面は、例えば、
図4に示した弁輪部で構成される閉曲線から算出される最小二乗平面である。
【0090】
勿論、
図5Aの表示は一例であり、領域303の表示については様々な変形が可能である。例えば、表示制御機能25dは、ユーザが指定する任意断面の画像や、任意の種類の画像を領域303に表示してもよい。一例を挙げると、表示制御機能25dは、VR画像、SR画像、MIP(Maximum Intensity Projection)画像、MinIP(Minimum Intensity Projection)画像といった既知の種類の画像を生成して領域303に表示してもよい。
【0091】
また、領域303の画像の表示条件は、上述した領域301及び領域302の各種機能を用いて、適宜変更することができる。例えば、表示制御機能25dは、領域303の画像について、ユーザの指示に基づいて観察断面の変更やスライス送り(ブラウズ)、拡大率や中心位置(平行移動)、WLやWWなどを変更して表示できる。
【0092】
また、表示制御機能25dは、各領域上に、予め設定された情報、又は、ユーザが指定する情報を重ねて表示してもよい。例えば、表示制御機能25dは、領域303a~領域303dの各画像表示領域のうちの所定の位置に、被検体の氏名、被検体ID、生年月日、体重などの被検体に関する情報や、画像のモダリティの種類、撮像装置名、撮像日、撮像条件、再構成条件等の画像に関する情報等を表示する。例えば、表示制御機能25dは、上述した被検体に関する情報及び画像に関する情報のうちユーザが指定する情報を、画像のDICOMヘッダ、PACS、電子カルテ、RIS、HIS等から取得して、領域303a~領域303dの各画像表示領域に表示させる。
【0093】
また、
図5Aにおいて、領域303dには、シネ表示用のコントローラ305が表示されている。コントローラ305には、再生ボタン、ストップボタン、速度上昇ボタン、速度低下ボタン、開始画像へ戻るボタン、最終画像へ進むボタン、1つ後の心位相の画像へ進むボタン、1つ前の心位相の画像へ進むボタンなどが設定されており、ユーザがマウスクリックなどの操作により指定することによって、各種ボタンに割り当てられた機能が実行されるように制御する。なお、シネ表示時における表示順は、サムネイルの選択順序に基づいて決定してもよいし、DICOMヘッダなどから得られる撮像日時順や、R-R間隔に基づいて設定される心位相の順に基づいて決定してもよい。また、シネ表示中に画像に対してユーザが何らかの指示を与えている場合(スライス送り、平行移動、拡大率変更、会長変更、各種計測機能による計測など)は、当該コントローラは非表示としてもよい。
【0094】
図5Aにおいて、領域304は、計測結果の表示領域である。例えば、ステップS2においてCT画像データから僧帽弁領域等の注目領域が特定され、各注目領域に基づいて当該注目領域の特徴(計測項目)を示す値(計測値)が算出される。領域304aは、計測結果をグラフ表示する領域である。また、領域304bは、計測結果として、各種計測項目名と計測値との関係を示すリストを表示する領域である。計測項目の例としては、前尖長(AntValveLength)、後尖長(PostValveLength)、交連部間距離(Inter commissual Diameter)、弁輪周長(Annulus circumference)、弁輪面積(Annulus Area)、D型弁輪周長(D-shaped Annulus circumference)、弁口周長(Orifice circumference)、弁口面積(Orifice Area)、最小弁口周長(MinOrificeLength)、最小弁口面積(MinOrificeArea)等を挙げることができる。
【0095】
図5Aでは、領域304aの表示例として、縦軸を計測値とし、横軸を心位相(Phase)とした折れ線グラフを示している。しかしながら、領域304aに表示させるグラフはこれに限定されるものではない。例えば、横軸を任意の方向の断面位置として、計測値と断面位置との関係を示す折れ線グラフを表示させてもよい。折れ線グラフは、任意の一つの弁葉について且つ複数の計測項目について表示してもよい。また、複数の弁葉について複数の計測項目をグラフ表示するため、複数のグラフを表示してもよい。また、単一の計測項目について、各弁葉との関係を同一のグラフ内に表示してもよい。また、折れ線グラフではなく、例えばレーダーチャートにより、任意の位相における弁葉の特徴を表現してもよい。
【0096】
領域304aに表示するグラフの形態は、領域304bに表示しているリストの左のチェックボックスを選択することにより、各計測項目に適した形態に変化させるように制御してもよい。計測項目とグラフの形態との関係は、予め設定しておくことができる。また、グラフの色や太さなどの表示形態は、ユーザが設定できるようにしてもよいし、
図7A及び
図7Bに示した設定画面で設定される弁葉等の各領域の表示形態に合わせて変更してもよい。また、表示する計測項目の種類を設定できるようにしてもよい。また、領域304bにおける各計測項目の横のチェックボックスを選択した際に、当該計測項目における計測位置に対応する画像上の位置や断面を、領域303に表示するように制御してもよい。アイコン304cが選択された際、表示制御機能25dは、各種の計測結果をメモリ24に記憶させる。例えば、アイコン304cが選択された際、表示制御機能25dは、各種計測項目における計測値と、位相又はスライスとの関係を示す表を、CSV(Comma Separated Values)等の形式で、メモリ24のうちのユーザが指定する記憶領域に対してファイル出力する。
【0097】
次に、特定機能25eは、ステップS3で設定された医用画像データの表示条件に基づいて、格子点群データに含まれる注目格子を特定する(ステップS5)。ステップS5の処理は、例えば、アイコン301vのボタンが選択され、シミュレーションモードに移行したことをトリガとして開始される。以下、アイコン301vのボタンが選択された後の処理について、
図8Aを用いて説明する。
図8Aは、シミュレーションモードにおける表示例である。
【0098】
例えば、
図5Aにおいてアイコン301vが選択された際、表示制御機能25dは、領域304に代えて、
図8Aの領域400を表示させる。領域400における領域400aには、「Simulation」及び「Measurement」の2のタブが示されており、
図8では、「Simulation」のタブが選択されている。
【0099】
なお、
図5A及び
図8Aにおいては、一例として、領域304より領域400を大きく示している。これにより、
図8Aの領域303は、
図5Aの領域303より小さくなっている。なお、
図8Aにおいて領域400aの「Measurement」が選択された場合、表示制御機能25dは、領域400に代えて、計測値やそのグラフを含む領域304を再度表示させる。ここで、表示制御機能25dは、「Simulation」が選択される直前の領域304の状態(例えば、表示している計測項目や軸の幅などのグラフの状態)を記録しておき、「Measurement」が選択された際、記録していた状態の領域304をそのまま表示させてもよい。なお、「Simulation」や「Measurement」の切り替えが行なわれても、領域303における画像表示状態(例えば、断面位置、拡大率、WW、WL、表示角度など)は変化しない。「Simulation」が選択されてから「Measurement」が選択されるまでの間にユーザ操作によって領域303における画像表示状態が変化した場合、新しい画像表示状態に基づいて、計測値やグラフの表示を更新してもよい。
【0100】
例えば、領域303b~303dに示すように複数の画像が表示されている場合、特定機能25eは、まず、表示されている複数の画像の中から、表示条件を参照する注目画像(ActivePlaneとも記載する)を選択する。以下、領域303bに表示されている画像I1が注目画像として選択されているケースについて説明する。なお、画像I1は、ステップS1で取得したCT画像データに基づくMPR画像(断面画像)である。
図8Aに示すように、表示制御機能25dは、注目画像として選択されている画像I1又は画像I1の表示されている領域303bを、例えば色付きの枠や他の領域よりも太い枠で囲うことにより、強調表示してもよい。注目画像は、ユーザの指示に基づいて選択されてもよいし、領域303b~303dのうち予め設定された画像表示領域に表示された画像が自動で選択されてもよい。
【0101】
特定機能25eは、注目画像である画像I1の表示条件に基づいて、注目格子を特定する。例えば、特定機能25eは、画像I1の表示範囲に関する表示条件に基づいて注目格子を特定する。表示範囲に関する表示条件の例としては、例えば、画像I1の表示角度、画像I1の中心位置(スライス方向の位置、及び、画像I1に平行な平面上での位置)、拡大率などを挙げることができる。
【0102】
図9Aを用いてより具体的に説明する。
図9Aは、説明のため、僧帽弁に関するメッシュを楕円及び直線で示した簡略図である。より具体的には、
図9Aにおいて、楕円と直線との交点は、格子点を示す。また、
図9Aの楕円及び直線は、格子点を接続した線(直線乃至は曲線)に対応する。例えば、
図9Aの楕円は格子点を列方向に接続した線であり、直線は格子点を行方向に接続した線である。また、
図9Aでは、前尖領域を実線で示し、後尖領域を破線で示す。領域303bの画像I1に僧帽弁が現れている場合、
図9Aに示す通り、画像I1の断面位置は僧帽弁と交差することになる。なお、
図9Aでは、行方向の座標を「X」、列方向の座標を「Y」とし、各格子に識別子(X,Y)を付与して説明を行なう。
【0103】
例えば、まず、特定機能25eは、治療デバイスのサイズを設定する。治療デバイスは、例えば、経皮的僧帽弁クリップ術において僧帽弁に対して留置されるクリップ(MitraClipデバイス)である。治療デバイスのサイズは、例えばユーザにより指定される。一例を挙げると、ユーザは、
図8Aの領域400bの「A」及び「B」の欄を入力することにより、クリップのサイズを指定する。例えば、「A」は、クリップのピンチ部分(僧帽弁に対して留置された際、僧帽弁に接触する部分)の長さを示し、「B」は当該ピンチ部分の幅方向の寸法を示す。
【0104】
ユーザは、「A」及び「B」の値をそれぞれ入力してもよいし、複数のプリセット値からいずれかを選択してもよい。例えば、
図8Aの領域400bには、4つのプリセット値「NT」、「NTW」、「XT」、「XTW」が表示されている。例えば、「NT」がユーザにより選択された場合、特定機能25eは、「A=9,B=4」の値を自動で設定する。また、「NTW」がユーザにより選択された場合、特定機能25eは、「A=9,B=6」の値を自動で設定する。また、「XT」がユーザにより選択された場合、特定機能25eは、「A=12,B=4」の値を自動で設定する。また、「XTW」がユーザにより選択された場合、特定機能25eは、「A=12,B=6」の値を自動で設定する。
【0105】
なお、治療デバイスのサイズを指定する方法について特に限定されるものではない。例えば、特定機能25eは、被検体に関する条件や、弁に関する条件等に基づいて、治療デバイスのサイズを特定してもよい。例えば、特定機能25eは、ステップS2で特定された僧帽弁領域の大きさに基づいて、治療デバイスのサイズを自動的に特定することができる。この場合、被検体に関する条件又は弁に関する条件と、治療デバイスのサイズ(治療デバイスの種類、型番等であってもよい)との対応関係を予め定義しておいてもよい。
【0106】
次に、特定機能25eは、治療デバイスの留置位置を設定する。
図9Aに示した僧帽弁に関するメッシュの各行において、注目画像である画像I1の表示条件と、治療デバイスのサイズとにより定められる範囲に基づいて当該留置位置を設定する。例えば、特定機能25eは、
図9Bに示すように、前尖の弁先端部から弁輪部の方向に向かって、画像I1の断面位置に沿って治療デバイスの長さ「A」と断面位置を中心とする治療デバイスの幅「B」とで表される範囲を設定する。後尖についても同様に、特定機能25eは、後尖の弁先端部から弁輪部の方向に向かって、画像I1の断面位置に沿って治療デバイスの長さ「A」と治療デバイスの幅「B」とで表される範囲を設定する。なお、
図9Bでは、クリップのようなEdge-to-Edgeのデバイスを想定しているため、前尖と後尖とに矩形の範囲が設定されている。当該矩形の範囲は、治療デバイスにより前尖と後尖とが接合される領域として、後述する推定処理に使用される。
【0107】
そして、特定機能25eは、
図9Bで特定した範囲に基づいて、注目格子を特定する。即ち、特定機能25eは、画像I1の断面位置に関する表示条件(表示角度、及び、スライス方向の位置)と、治療デバイスのサイズとに基づいて、注目格子を特定することができる。
【0108】
例えば、特定機能25eは、特定した範囲内に位置する全ての格子点を、注目格子の候補として特定する。
図9Bの場合、例えば、識別子(X,Y)が(4,3)、(3,3)、(2,3)、(4,4)、(3,4)、(2,4)となる前尖の格子、及び、識別子(X,Y)が(4,13)、(3,13)、(2,13)、(4,14)、(3,14)となる後尖の格子が、注目格子の候補として特定される。これら注目格子の候補は、注目画像の画像表示条件に依存する。例えば、領域303b~303dのうち注目画像を表示させる画像表示領域が変更されたり、スライス送り(ブラウズ)の操作が行われたりした場合、注目格子の候補は、変更後の注目画像の画像表示条件に応じて順次更新される。そして、特定機能25eは、ユーザが400cの「Yes」ボタンを押下した時点における注目格子の候補を、注目格子として特定する。
【0109】
特定された注目格子の格子点IDは、領域400cの「Anterior」及び「Posterior」の欄に表示される。或いは、注目格子の候補の格子点IDを、「Anterior」及び「Posterior」の欄に表示することとしてもよい。この場合、注目画像の画像表示条件が変更されるごとに、「Anterior」及び「Posterior」の欄の表示は順次更新される。
【0110】
或いは、特定機能25eは、「Anterior」及び「Posterior」の欄への格子点IDの入力をユーザから受け付けることにより、注目格子を特定してもよい。例えば、表示制御機能25dは、マウスカーソルが
図8Aの領域303aに表示されたメッシュにオーバーレイした時、マウスカーソルの位置に対応する格子点の格子点IDを表示する。ユーザは、表示された格子点IDを参照しながら、「Anterior」及び「Posterior」の欄への格子点IDの入力を行なうことができる。なお、マウスカーソルの位置に応じた格子点IDの表示は、領域400aにおける「Simulation」が選択されている時のみとし、「Measurement」が選択されている時には行なわないこととしてもよい。
【0111】
なお、
図8Aの領域400dは、結果保存名の設定を受け付ける。領域400dの初期値として、「Sim_+CaseID_+#」を表示しておいてもよい。ここで、「Sim_」の部分には、例えば、データの種類を識別するために使用されるプリフィックス番号が入力される。また、「CaseID」の部分には、例えば、症例ごとにプリセットされたIDのうち、シミュレーションを実行した症例に対応したIDが入力される。「#」は本症例に対するシミュレーションが実行された結果数に応じてインクリメントされる。なお、例えば「Anterior」及び「Posterior」の欄に数値以外が入力されている等、
図8Aの領域400b~400dにおける設定の書式が異なっていたり空欄だったりする場合、再設定を促すメッセージを表示させてもよい。
【0112】
図9Bでは、画像I1及び治療デバイスのサイズに基づいて特定した範囲内に位置する全ての格子点を注目格子として特定する例について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、特定機能25eは、特定した範囲に最も近い各列の格子点を、注目格子として特定してもよい。
【0113】
また、
図9Bでは、治療デバイスのサイズに基づいて範囲の寸法を決定する例を示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、注目画像である画像I1がユーザの指定に基づく幅のスラブMIP画像である場合、特定機能25eは、
図9Bに示した幅「B」に代えてスラブMIP画像の幅を採用した範囲を特定し、特定した範囲に基づいて注目格子を特定してもよい。
【0114】
その他、注目格子の設定方法や、設定できる治療デバイスの種類は、上述した例に限定されるものではない。例えば、弁置換術における人工弁デバイスを用いる場合、特定機能25eは、表示角度の異なる複数の2次元画像を、注目画像として選択する。例えば、特定機能25eは、
図9Cに示す画像I2及び画像I3を注目画像として選択する。次に、特定機能25eは、画像I2と画像I3との交点の位置を中心とし、人工弁デバイスのサイズにより決定される半径「z」の円を特定する。半径「z」については、注目画像における拡大率に基づいて設定してもよい。また、人工弁デバイスのサイズは、上述した通り、ユーザが設定することができる。
【0115】
そして、特定機能25eは、特定した半径「z」の円に基づいて、注目格子を特定する。例えば、特定機能25eは、
図9Dの丸のマークで示すように、特定した円の円周の位置に最も近い各列の格子点を、注目格子として特定する。具体的には、
図9Dでは、識別子(X,Y)が(2,0)、(2,1)、(2,2)、(1,3)、(1,4)、(1,5)、(1,6)、(1,7)、(1,8)、(1,9)、(2,10)、(2,11)、(2,12)、(2,13)、(2,14)、(2,15)、(2,16)、(2,17)、(2,18)、(2,19)となる格子が、注目格子として特定される。別の例を挙げると、特定機能25eは、特定した円の円周を中心として一定の幅を有する範囲内に含まれる格子点を、注目格子として特定してもよい。
【0116】
注目画像を複数設定する場合、表示制御機能25dは、当該設定に応じた表示を行なってもよい。例えば、
図8Aでは、注目画像として選択された1つの画像I1を強調表示する例について説明したが、表示制御機能25dは、注目画像として選択された複数の画像を強調表示してもよい。この時、表示制御機能25dは、各画像が選択された順序を識別できるよう、画像ごとに表示条件を変えてもよい(例えば、選択された各画像の枠の色を変える等)。
【0117】
注目格子を特定する方法については、種々の変形が可能である。例えば、特定機能25eは、注目画像の中心位置に基づいて、注目格子を特定することもできる。一例を挙げると、特定機能25eは、注目画像の中心位置に対応した格子点を特定し、特定した格子点から一定範囲に含まれる格子点を、注目格子として特定することができる。
【0118】
また、特定機能25eは、注目画像の中心位置及び拡大率に基づいて、注目格子を特定することができる。一例を挙げると、特定機能25eは、注目画像の中心位置に対応した格子点を特定し、特定した格子点から、注目画像の拡大率に応じたサイズの範囲に含まれる格子点を、注目格子として特定することができる。例えば、特定機能25eは、拡大率が大きいほど範囲を小さく設定し、当該範囲に含まれる格子点を、注目格子として特定する。
【0119】
また、特定機能25eは、WWやWL等の表示色に関する表示条件に基づいて、注目格子を特定することができる。例えば、各種の臓器を視認しやすいWW及びWLは臓器ごとに概ね決まっていることから、特定機能25eは、WW及びWLの値と、各種臓器との対応関係を事前に設定しておく。例えば、特定機能25eは、僧帽弁を観察する時にユーザが手動で設定したWW及びWLの値を記録しておき、その平均値を、臓器「僧帽弁」に対応付けて記録する。これにより、特定機能25eは、表示条件として設定されたWW及びWLの値に基づいて観察対象の臓器を特定し、医用画像データから観察対象の臓器の位置を特定して、特定した臓器の位置に基づく注目格子を特定することができる。
【0120】
特定された注目格子については、領域303a~303d等の画像表示領域上で強調表示してもよい。例えば、表示制御機能25dは、メッシュにおいて注目格子の色を変更したり、VR画像やMPR画像等において注目格子に対応する位置の色を変更したりして、注目格子を強調表示する。
【0121】
また、表示制御機能25dは、
図10に示すように、特定された注目格子に基づいて後述のステップS7で実行される推定処理に対応する印を表示してもよい。
図10では、3次元のメッシュに対して、位置D1及び複数の直線D2を示している。位置D1は、経皮的僧帽弁クリップ術においてクリップが留置される位置(クリップ位置)を示す。また、複数の直線D2は、クリップにより接合される格子点の関係を示している。ここで、位置D1及び直線D2は、特定された注目格子に基づいて決定される。例えば、位置D1は、注目格子を接続した多角形の領域である。また、直線D2は、注目格子のうち前尖の格子と後尖の格子と接続したものである。例えば、
図8Aの領域400cにおける「VR View」の隣のアイコン(
図8B及び
図8Cに示したアイコン)が選択されることにより、複数の直線D2の表示/非表示が切り替えられる。
【0122】
また、表示制御機能25dは、特定された注目格子の位置に基づいて、3次元のメッシュに対して模擬デバイス(例えば、クリップの形状を示す3Dモデル等)を表示してもよい。
【0123】
また、表示制御機能25dは、特定された注目格子を、例えば領域303b~303dに表示されるMPR画像上に強調表示させてもよい。例えば、
図8Aの領域400cにおける「MPR View」の隣のアイコン(
図8B及び
図8Cに示したアイコン)が選択されることにより、表示制御機能25dは、MPR画像上で注目格子を強調表示するか否か切り替える。
【0124】
例えば、特定された注目格子の位置を含むMPR画像が領域303b~303dに表示され、且つ、
図8Cに示したアイコンが選択されている場合、表示制御機能25dは、注目格子を示すマークやその接続線をMPR画像上に強調表示させる。例えば、表示制御機能25dは、注目格子以外の格子点の表示を省略して注目格子のみを表示させることにより、注目格子を強調表示する。或いは、表示制御機能25dは、注目格子以外の格子点とは色や大きさの異なるマークによって注目格子を表示させることにより、注目格子を強調表示する。或いは、表示制御機能25dは、注目格子の接続線とMPR画像との交点を示すマークやその接続線を、MPR画像上に表示させてもよい。また、
図8Cに示したアイコンが選択された場合でも、注目格子の位置を含むMPR画像が領域303b~303dに表示されていない場合、表示制御機能25dは、MPR画像上での注目格子の強調表示を行なわなくてよい。
【0125】
次に、特定機能25eは、注目格子を特定する処理を完了するか否か判定する(ステップS6)。例えば、特定機能25eは、注目格子を特定する処理を完了するか否かを入力するGUIに対するユーザからの操作を受け付ける。ここで、注目格子を特定する処理を完了しない場合(ステップS6否定)、再度ステップS3に移行して、ステップS3~S6の処理が繰り返される。即ち、医用画像データの表示条件が変更され、変更後の表示条件で医用画像データが表示され、表示された医用画像データの表示条件に基づいて注目格子が再度特定される。なお、ステップS6の判定を、注目格子を特定する処理を完了するか否かの判定として説明したが、ステップS7の処理を開始するか否かの判定に置換してもよい。
【0126】
次に、処理機能25fは、特定機能25eにより特定された注目格子を計算条件として、物理シミュレーションを実施する(ステップS7)。例えば、処理機能25fは、ステップS2で特定された格子点群データと、ステップS5で特定された注目格子と、予め定める物理シミュレーション用の各種パラメータ(境界条件を含む)とに基づいて、物理シミュレーションを実施する。
【0127】
処理機能25fによる物理シミュレーションは、例えば、
図8Aのアイコン400eが選択されたことをトリガとして開始される。なお、物理シミュレーションが正常に終了せず、処理機能25fが備えるシミュレーションエンジンからエラーが返ってきた場合、表示制御機能25dは、エラーに合わせたメッセージを表示してもよい。例えば、シミュレーションエンジンはエラーコードを出力し、表示制御機能25dは、当該エラーコードに基づくメッセージを生成して表示させる。また、例えば、シミュレーションエンジンはエラーに合わせたメッセージを出力し、表示制御機能25dは、当該メッセージを表示させる。
【0128】
以下、僧帽弁を対象臓器として治療前に取得された医用画像データから、僧帽弁に関する格子点群データが取得されたケースについて説明する。この場合、処理機能25fは、例えば、注目格子に対応する位置に、ユーザが指定した種類のEdge-to-Edgeデバイスを留置する治療が行われた後の僧帽弁の形状を推定する。当該推定には、既知の手法を用いることができる。既知の手法の例には、例えば、有限要素法、有限差分法、イマースバウンダリー法などが含まれる。より具体的には、ステップS5で特定した注目格子には、治療デバイスに基づくパラメータが設定される。例えば、処理機能25fは、注目格子に対して仮想的なばねを設定し、当該ばねのばね定数を変化させながら、形状の変化を推定する。そして、前尖と後尖とが接合した時点でばね定数の変化を止める。ばね定数を変化させた際の形状は、注目格子だけでなく他の格子点にも設定される数学又は物理モデルを適用することにより推定できる。
【0129】
上述した処理機能25fの処理は一例であり、物体の動作や流体に関する情報を推定することができれば、どのような手法を用いてもよい。例えば、深層学習等の機械学習技術を用いて事前に準備された学習用データを学習することで構築された形状モデルから、対象領域の治療後の形状を推定してもよい。推定はどのような方法を用いてもよいが、ステップS5で特定された注目格子に対して他の格子とは異なるパラメータ、又は、異なる数学又は物理モデルを適用できる方式である必要がある。当該推定に用いるパラメータはどのようなパラメータを用いてもよく、治療デバイスに基づくパラメータだけでなく、腱索の位置や数や張力などの解剖構造に基づくパラメータや、血流分布のような流体パラメータを設定してもよい。各種パラメータは予め設定しておいてもよいし、特許文献4に記載の方法を用いて特定してもよい。
【0130】
物理シミュレーションとして治療後の形状を推定する例について説明したが、形状のみならず、治療後の流体の状態や力の推定を行なってもよい。流体は、例えば血流である。血流の状態の例としては、順流量、逆流量、血流場等を挙げることができる。また、力の例としては、弁葉に係る血流による圧力分布、腱索の張力等を挙げることができる。
【0131】
図11Aに、物理シミュレーションの結果表示の一例を示す。領域400fは、シミュレーション結果(Result)のリストである。即ち、一度計算したシミュレーションの結果は保存される。リスト表示されたシミュレーション結果のうちチェックボックスがチェックされた結果については、領域400gや400hに表示させることができる。そのシミュレーション結果をもたらした「ClipSize」や「position」、「Name」等の領域400bや400cに対応するシミュレーション条件については、領域400b、領域400c又は領域400dに表示してもよい。領域400fのリストは、「Name」、「EROA」、「RVol」といった項目のうち選択された項目に応じて、値の昇順または降順などの基準で並べ替えを行なってもよい。なお、
図11Aの領域400fには、2つのシミュレーション結果「Sim_Case1_Rightside」及び「Sim_Case1_Rightside」が表示されている。これらシミュレーション結果の名前は、アイコン400eが選択された際、領域400dに入力されていた名前(結果保存名)に対応する。「EROA」及び「RVol」については後述する。
【0132】
領域400fのリストに含まれるシミュレーション結果は適宜削除可能としてもよい。例えば、右クリックでコンテキストメニューを表示し、コンテキストメニューから任意の結果を削除可能としてもよい。また、図示しない削除用のボタンを設け、ユーザが削除したい結果を選択してから削除用のボタンを選択した時に、当該選択された結果を削除してもよい。また、物理シミュレーションが異常なく終了した時には、領域400fのリストに結果を追加して、対応するチェックボックスにチェックを入れるとともに、領域400gや400hに結果を表示する。
【0133】
また、
図11Aの領域303aには、治療前における僧帽弁の形状を示すメッシュが表示されている。領域303aのメッシュにおいては、
図10と同様、クリップ位置やクリップにより接合される格子点の関係を表示させてもよい。
【0134】
また、
図11Aの領域400gには、物理シミュレーションにより推定された、治療後における僧帽弁の形状を示すメッシュが表示されている。領域400gのメッシュに対しては、領域301に示した各種アイコンによる機能が適用可能である。例えば、領域400gのメッシュについて、ユーザは、アイコン301dの機能による表示色の変更や、アイコン301eの機能による平行移動、アイコン301fの機能による拡大率の変更、アイコン301gの機能による表示角度の変更などを行なうことができる。なお、
図11Aでは、領域303a及び領域400gにメッシュを表示させているが、ユーザからの指示に応じて、VR画像等に置換してもよい。
【0135】
また、
図11Aの領域400hの表には、物理シミュレーション結果に基づく値、及び、当該値に基づく「MR-Grade」が表示されている。「MR-Grade」は、僧帽弁閉鎖不全症の程度を示す。例えば、「MR-Grade」は、僧帽弁閉鎖不全症の程度に応じて、「Mild」、「lower-Moderate」、「upper-Moderate」、「Severe」の4段階に区分される。
【0136】
領域400hの表に示される「EROA(有効逆流弁口面積)」は、例えば、領域303a及び領域400gに示すメッシュの形状から計測される値である。例えば、
図11Aにおいて、治療前「Current(pre-TEER)」は、領域303aに表示されているメッシュ(ステップS2で取得された格子点群データ)に基づいて算出される値であり、算出結果として「EROA=0.5」が表示されている例を示している。一方、シミュレーションされた治療後「Simulated(post-TEER)」はステップS7においてシミュレーションで推定される値であり、推定結果として「EROA<0.1」が表示されている例を示している。これにより、「EROA」に基づく「MR-Grade」である「MR-Grade(EROA)」は、治療前では「Severe」であったのに対し、治療後には「Mild」まで改善している。即ち、「EROA」の観点から、例えば
図10に示した位置D1に計画通りクリップを留置することで、十分な治療効果が得られると推定できる。
【0137】
また、「RVol( 血液逆流量)」は、例えば、領域303a及び領域400gに示すメッシュの形状を用いた流体解析等の物理シミュレーションにより算出される。例えば、
図11Aにおいて、治療前「Current(pre-TEER)」は、領域303aに表示されているメッシュ(ステップS2で取得された格子点群データ)の形状を用いた物理シミュレーションで推定される値であり、算出結果として「RVol=70」が表示されている例を示している。一方、シミュレーションされた治療後「Simulated(post-TEER)」はステップS7においてシミュレーションで推定されたメッシュの形状を用いた物理シミュレーションで推定される値であり、推定結果として「RVol<15」が表示されている例を示している。これにより、「RVol」に基づく「MR-Grade」である「MR-Grade(RVol)」は、治療前では「Severe」であったのに対し、治療後には「Mild」まで改善している。即ち、「RVol」の観点から、例えば
図10に示した位置D1に計画通りクリップを留置することで、十分な治療効果が得られると推定できる。
【0138】
「EROA」や「RVol」といった値に対する「MR-Grade」の判定基準(閾値)については、例えば
図11Bに示すようなUIを用いて設定可能としてもよい。例えば、
図11Bでは、「EROA<0.2」の範囲が「Mild」、「0.2≦EROA<0.3」の範囲が「lower-Moderate」、「0.3≦EROA<0.4」の範囲が「upper-Moderate」、「0.4≦EROA」の範囲が「Severe」となるように設定されている。また、「RVol<30」の範囲が「Mild」、「30≦RVol<45」の範囲が「lower-Moderate」、「45≦RVol<60」の範囲が「upper-Moderate」、「60≦RVol」の範囲が「Severe」となるように設定されている。
図11Bの値を初期設定とし、ユーザから閾値の変更を受け付けることとしてもよい。例えば、
図11Bに表示されている閾値を左クリックする操作が行われた後、キーボードを介して値の入力を受け付けることにより、閾値をキーボード入力された値に置換してもよい。また、例えば、閾値を左クリックする操作が行われた後、マウスのホイールを回転させる操作を受け付けることにより、ホイールの回転量及び回転方向に応じて閾値を増減させてもよい。また、例えば、閾値の近傍にアイコン(図示せず)を表示させておき、アイコンに対する操作に応じて値を増減させてもよい。また、変更された閾値については保存しておき、次回以降の物理シミュレーションで使用してもよい。
【0139】
なお、「<」、「>」は不等号である。例えば、「x1<x2」は、「x1」が「x2」より小さく、且つ、「x1」と「x2」とが等しくないことを示す。また、「x1>x2」は、「x1」が「x2」より大きく、且つ、「x1」と「x2」とが等しくないことを示す。また、「≦」、「≧」は等号付き不等号である。例えば、「x1≦x2」は、「x1」が「x2」より小さいか、或いは「x1」と「x2」とが等しいことを示す。また、「x1≧x2」は、「x1」が「x2」より大きいか、或いは「x1」と「x2」とが等しいことを示す。
【0140】
図11Bの「Highlight」のチェックボックスにチェックされた際、設定された条件を満たす値や「MR-Grade」の文字を、例えば文字色を変える等して強調表示する。
図11A及び
図11Bでは、「0.4≦EROA」の範囲及び「60≦RVol」の範囲(即ち、「Severe」に該当する範囲)が強調表示の対象として設定されている。
【0141】
なお、不等号や等号付き不等号といった記号の変更を受け付ける際、各閾値の左右が「≦」及び「<」の組み合わせのみ選択可能となるように制御してもよい。例えば、
図11Bでは、EROAに基づく「MR-Grade」の設定で、「0.4」を閾値とし、「upper-Moderate<0.4≦Severe」の関係が設定されている。ここで記号を変更する際、「upper-Moderate≦0.4<Severe」と変更するのであれば特に問題は生じないが、「upper-Moderate≦0.4≦Severe」や「upper-Moderate<0.4<Severe」といった変更を行なうと、「upper-Moderate」や「Severe」といった区分ごとの数値範囲に重複乃至は漏れが生じる。また、記号の向きについては変更できないようにしてもよい。例えば、「upper-Moderate<0.4≦Severe」の関係が設定されている場合に、「upper-Moderate<0.4>Severe」や「upper-Moderate<0.4≧Severe」」といった変更を行なうと区分ごとの数値範囲に重複が生じる。従って、このような設定については受け付けない、或いはこのような設定がなされた時にはユーザに修正を促す表示を行なってもよい。例えば、一方が「<」ならもう一方は「≦」を自動設定し、一方が「≦」ならもう一方は「<」を自動設定してもよい。また、任意の数値を入力可能としてよいが、「<」又は「≦」の関係が崩れる値は設定できないように設定してもよい。即ち、不等号又は等号付き不等号により規定される数値の大小関係が矛盾しないように制御してもよい。例えば、
図11Bでは、「EROA」に基づく「Mild」と「lower-Moderate」との閾値が「0.2」であり、「lower-Moderate」と「upper-Moderate」との閾値が「0.3」に設定されている。ここで、「Mild」と「lower-Moderate」との閾値「0.2」を変更する際、変更可能な数値範囲を「<0.3」とするように制御してもよい。或いは、「0.3≦」の値が入力された際、値の変更を促すメッセージを表示させてもよい。
【0142】
表示制御機能25dは、例えば領域400aの「Measurement」が選択された際、領域400の一部又は全部を、計測結果を表示する領域304で置換してもよい。表示例を
図11Cに示す。
図11Cでは、領域400のうちの領域400g及び領域400hを残して領域304を表示させている。また、
図11Cでは、領域304の中に、治療前の計測結果を示す領域304dと、シミュレーションされた治療後の計測結果を示す領域304eとを表示させている。
【0143】
例えば、表示制御機能25dは、領域304dにおいて、領域303aに表示されている治療前のメッシュの形状に基づく各種の計測値を、各種計測項目名に対応付けてリスト表示する。また、表示制御機能25dは、領域304eにおいて、領域400gに表示されているシミュレーションされた治療後のメッシュの形状に基づく各種の計測値を、各種計測項目名に対応付けてリスト表示する。ここで、表示条件(例えば心位相など)が変更された場合、領域304d及び領域304eの各種計測値は、変更後の表示条件に従って更新される。
【0144】
但し、領域304eに表示されるシミュレーション結果に基づく計測値については、全位相分のデータが生成されていないケースも想定される。例えば、シネ送りに関するコントローラ305が操作され、データが生成されていない位相の表示を行なう指示が入力された場合、「シミュレーション結果が存在しない」旨の表示を行なってもよい。なお、シミュレーション結果に基づく計測値に関し、
図8Aの「VR view」及び「MPR View」に対応する表示は行なわなくてよい。
【0145】
領域304eに表示する計測値については、シミュレーションが完了し次第計測してもよいし、シミュレーションが完了した後、ユーザの指示があった時や一定時間の経過後に計測してもよい。例えば、シミュレーションが完了した時点では領域400に示したシミュレーション結果の表示を優先し、ユーザがシミュレーション結果を確認した後、計測を開始してもよい。
【0146】
上述した通り、画像データ取得機能25bは、対象臓器を含む医用画像データを取得する。また、格子点群データ取得機能25cは、前記医用画像データと対応付けられた、前記対象臓器に関する格子点群データを取得する。また、表示制御機能25dは、前記医用画像データを表示させる。また、特定機能25eは、前記医用画像データの表示条件に基づいて、前記格子点群データに含まれる注目格子を特定する。これにより、ユーザは、後述するシミュレーションの実施に用いる注目格子を容易に特定することができる。
【0147】
注目格子を特定する他の方法として、対象臓器に関する格子点群データ(例えばメッシュ)を表示させ、ユーザから注目格子を指定する操作を受け付けることが考えられる。しかしながら、このような操作はユーザにとって煩雑であり、また、各格子点と実際の臓器における構造との対応関係が表示されていないため、直感的な操作を行なうことが難しかった。これに対し、上述の医用情報処理装置20の処理によれば、ユーザは、医用画像データを参照しつつ、その表示条件を調整することによって注目格子を特定することができる。即ち、上述の医用情報処理装置20の処理において、ユーザは、簡易且つ直感的な操作により、注目格子を容易に特定することができる。
【0148】
上述した実施形態では、対象臓器が弁である例について説明したが、対象臓器の種類について特に限定されるものではない。例えば、被検体の血管や肺、肝臓等を対象臓器として、
図2の各ステップの処理を行なうこともできる。一例を挙げると、
図2の各ステップの処理により、冠動脈のカテーテル治療におけるカテーテルの留置位置に対応する注目格子を特定し、カテーテル治療後の冠動脈の状態を推定する物理シミュレーションを実施することができる。また、一例を挙げると、
図2の各ステップの処理により、肺や肝臓の切除領域に対応する注目格子を特定し、切除後の肺や肝臓の状態を推定する物理シミュレーションを実施することができる。
【0149】
また、
図9Bでは、表示された医用画像データの断面位置に関する表示条件と、治療デバイスの大きさとに基づいて、前尖及び後尖のそれぞれに対して範囲を1つずつ定めて、当該範囲の内部に位置する格子点群を注目格子として特定する例について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。
【0150】
例えば、特定機能25eは、表示条件に基づいて範囲を複数定めて、複数の範囲のそれぞれに基づいて、ステップS7において異なる又は同一の推定条件(境界条件)を設定するための注目格子を複数設定してもよい。例えば、特定機能25eは、
図12に示すように、表示条件と治療デバイスの大きさとに基づいて設定される範囲において、クリップ位置を意味する範囲E11及び範囲E12より内側(弁先端側)の範囲E21及び範囲E22に格子点が含まれる場合、当該格子点を第2の注目格子として特定してもよい。なお、
図12では、識別子(X,Y)が(4,5)となる格子点が範囲E21に含まれ、(4,12)となる格子点が範囲E22に含まれ、これらの格子点が第2の注目格子として特定される。
【0151】
図12では、同一の表示条件を用いて異なる複数の注目格子を特定する方法について説明したが、異なる複数の表示条件及び治療デバイスの条件を用いて、異なる複数の注目格子を特定してもよい。例えば、
図13では、画像I4の表示条件に基づいて範囲E31及び範囲E32が設定され、これら範囲内の格子点が第1の注目格子として特定される。また、
図13では、画像I5の表示条件に基づいて範囲E41及び範囲E42が設定され、これら範囲内の格子点が第2の注目格子として特定される。
図13の処理は、例えば、クリップを2つ留置する場合に適用される。即ち、第1の注目格子の位置に対して第1のクリップを留置し、第2の注目格子の位置に対して第2のクリップを留置する治療を行なった後の弁の状態を推定する物理シミュレーションを実施することができる。なお、第1の注目格子と第2の注目格子とで格子点の重複がある場合、エラーメッセージが出力されるように制御してもよい。格子点の重複は、2つのクリップの干渉に相当するためである。
【0152】
また、特定機能25eは、
図2のステップS5において、ステップS3で設定された表示条件が注目格子を特定することに適さない条件である場合、修正を促す表示を行なってもよい。例えば、
図14Aに示すように、注目画像の断面位置が弁口(弁先端部に囲まれる領域)を通過しない場合や、
図14Bに示すように、弁口は通過しているものの前尖及び後尖のいずれか一方の領域のみを通過している場合は、クリックを留置する位置としては不適切であるため、修正を促す表示を行なってもよい。このような不適切な条件については、例えば治療デバイスの種類や臓器ごとに、事前に設定しておくことができる。なお、注目画像の断面位置が弁口を通過するか否かは、断面位置が弁先端部を通過するかどうかを判定することにより、判定できる。
【0153】
図1では、制御機能25a、画像データ取得機能25b、格子点群データ取得機能25c、表示制御機能25d、特定機能25e、処理機能25fといった各種の機能が医用情報処理装置20の処理回路25により実現されるものとして説明したが、これらの機能は複数の装置に適宜分散されてもよい。例えば、処理機能25fは、医用情報処理装置20と異なる第2の医用情報処理装置が備える処理回路により実現されてもよい。この場合、医用情報処理装置20は、注目格子を特定し、特定した注目格子を第2の医用情報処理装置に対して通知する。第2の医用情報処理装置では、通知された注目格子を計算条件とした物理シミュレーションが実施される。また、処理回路25の各機能は、例えば医用画像診断装置10のコンソール装置が備える処理回路により実現されてもよい。言い換えると、医用画像診断装置10と医用情報処理装置20とは統合されてもよい。
【0154】
また、上述した実施形態では、医用画像データの例として、時系列の複数のCT画像データ(4次元画像)について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、単一の位相について収集されたCT画像データ(3次元画像)に基づいて、
図2の各ステップの処理を行なうことが可能である。なお、3次元画像の場合、例えばコントローラ305を用いたシネ送り等の一部機能が省略される。
【0155】
また、医用画像データとして2次元画像を取得し、
図2の各ステップの処理を行なうこともできる。この場合、ステップS2で取得される格子点群データは、ある平面上における複数の格子点それぞれの位置座標を含むデータとなる。また、ステップS7では、ある平面上での2次元シミュレーションが実施される。
【0156】
また、ステップS1において医用画像データを取得するものとして説明したが、医用画像データ以外の画像データを取得する場合においても、ステップS2~S7の処理を同様に実行可能である。以下、この点について、
図15を用いて説明する。
図15は、実施形態に係る情報処理システム2の構成の一例を示すブロック図である。
【0157】
図2に示す通り、情報処理システム2は、カメラ40と、情報処理装置50とを備える。カメラ40は、例えば光学カメラである。この場合、カメラ40は、被検体の体表面の画像データを撮像し、情報処理装置50に対して送信することができる。カメラ40により撮像される画像データは、被検体が有する疾患の治療等を目的で撮像されたものであってもよいし、例えばスポーツ科学の観点から、特段の疾患を有しない被検体を対象として撮像されたものであってもよい。
【0158】
例えば、情報処理装置50は、
図15に示すように、通信インタフェース51、入力インタフェース52、ディスプレイ53、メモリ54及び処理回路55を備える。通信インタフェース51、入力インタフェース52、ディスプレイ53及びメモリ54については、
図1に示した通信インタフェース21、入力インタフェース22、ディスプレイ23及びメモリ24と同様にして構成することができる。また、処理回路55は、制御機能55a、画像データ取得機能55b、格子点群データ取得機能55c、表示制御機能55d、特定機能55e及び処理機能55fを実行する。
【0159】
制御機能55aは、制御機能25aと同様の機能である。画像データ取得機能55bは、画像データ取得機能25bと同様の機能であり、また、画像データ取得部の一例である。画像データ取得機能25bは、ネットワークNWを介して、カメラ40により撮像された対象物を含む画像データを取得する。例えば、カメラ40は、被検体における特定の筋肉や、上腕や下肢といった部位を対象物として、画像データを撮像する。画像データ取得機能25bは、カメラ40から直接的に画像データを取得してもよいし、画像保管装置30のような保管装置に保管された画像データを取得してもよい。
【0160】
格子点群データ取得機能55cは、格子点群データ取得機能25cと同様の機能であり、また、格子点群データ取得部の一例である。例えば、格子点群データ取得機能55cは、被検体の体表面の画像データに基づいて、体表面に対応する曲面状に複数の格子点を配置した格子点群データを取得する。表示制御機能55dは、表示制御機能25dと同様の機能であり、また、表示制御部の一例である。特定機能55eは、特定機能25eと同様の機能であり、また、特定部の一例である。処理機能55fは、処理機能25fと同様の機能であり、また、処理部の一例である。
【0161】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0162】
また、
図1においては、単一のメモリ24が処理回路25の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数のメモリ24を分散して配置し、処理回路25は、個別のメモリ24から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ24にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
図15のメモリ54及び処理回路55についても同様である。
【0163】
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0164】
また、上述した実施形態で説明した医用情報処理方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0165】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、シミュレーションの実施に用いる注目格子を容易に特定することができる。
【0166】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0167】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
(付記1)
対象臓器を含む医用画像データを取得する画像データ取得部と、
前記医用画像データと対応付けられた、前記対象臓器に関する格子点群データを取得する格子点群データ取得部と、
前記医用画像データを表示させる表示制御部と、
前記医用画像データの表示条件に基づいて、前記格子点群データに含まれる注目格子を特定する特定部と
を備える、医用情報処理装置。
(付記2)
前記特定部は、前記医用画像データの表示範囲に関する表示条件に基づいて、前記注目格子を特定してもよい。
(付記3)
前記表示範囲に関する表示条件は、表示された前記医用画像データの表示角度と、スライス方向の位置とを含んでもよい。
(付記4)
前記特定部は、前記表示範囲に関する表示条件と、治療デバイスのサイズとに基づいて、前記注目格子を特定してもよい。
(付記5)
前記表示範囲に関する表示条件は、表示された前記医用画像データの中心位置を含んでもよい。
(付記6)
前記表示範囲に関する表示条件は、表示された前記医用画像データの拡大率を含んでもよい。
(付記7)
前記特定部は、前記医用画像データの表示色に関する表示条件に基づいて、前記注目格子を特定してもよい。
(付記8)
前記表示制御部は、前記医用画像データに基づく複数の画像を表示させ、
前記特定部は、表示されている前記複数の画像の中から注目画像を選択し、選択した前記注目画像の表示条件に基づいて前記注目格子を特定してもよい。
(付記9)
特定された前記注目格子を計算条件として物理シミュレーションを実施する処理部を更に備えてもよい。
(付記10)
対象臓器を含む医用画像データを取得し、
前記医用画像データと対応付けられた、前記対象臓器に関する格子点群データを取得し、
前記医用画像データを表示させ、
前記医用画像データの表示条件に基づいて、前記格子点群データに含まれる注目格子を特定する
ことを含む、医用情報処理方法。
(付記11)
対象臓器を含む医用画像データを取得し、
前記医用画像データと対応付けられた、前記対象臓器に関する格子点群データを取得し、
前記医用画像データを表示させ、
前記医用画像データの表示条件に基づいて、前記格子点群データに含まれる注目格子を特定する
各処理をコンピュータに実行させる、プログラム。
(付記12)
対象物を含む画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データと対応付けられた、前記対象物に関する格子点群データを取得する格子点群データ取得部と、
前記画像データを表示させる表示制御部と、
前記画像データの表示条件に基づいて、前記格子点群データに含まれる注目格子を特定する特定部と
を備える、情報処理装置。
【符号の説明】
【0168】
1 医用情報処理システム
10 医用画像診断装置
20 医用情報処理装置
25 処理回路
25a 制御機能
25b 画像データ取得機能
25c 格子点群データ取得機能
25d 表示制御機能
25e 特定機能
25f 処理機能
2 情報処理システム
40 カメラ
50 情報処理装置
55 処理回路
55a 制御機能
55b 画像データ取得機能
55c 格子点群データ取得機能
55d 表示制御機能
55e 特定機能
55f 処理機能