(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073093
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】情報提供装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0201 20230101AFI20240522BHJP
【FI】
G06Q30/0201
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184104
(22)【出願日】2022-11-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】507027896
【氏名又は名称】株式会社ファンくる
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】山口 敬人
(72)【発明者】
【氏名】徳田 修治
(72)【発明者】
【氏名】黒木 勝巳
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB01
5L049BB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】顧客の再来店意思または推奨意思に対する評価因子の寄与度を高精度に数値化する。
【解決手段】分析プログラムは、対象店舗への再来店意思又は他者推奨意思に関する評価データを取得する調査データ取得手段、再来店意思又は他者推奨意思の評価値を目的変数とし、評価データにおける評価項目の評価値を説明変数として多変量解析を行い、説明変数の目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段及び解析結果を情報端末に表示させる分析結果出力手段を備える。評価データは、目的変数に対応するレベル1の評価項目、目的変数を説明するレベル2の評価項目及びレベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目を含む。多変量解析手段は、レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、レベル3の評価項目を説明変数とする第1の多変量解析と、レベル1の評価項目を目的変数とし、レベル2の評価項目を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象店舗についての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思または他者推奨意思に関する評価項目の評価値を含む評価データを取得する調査データ取得手段と、
前記評価データに基づいて再来店意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける評価項目の評価値を説明変数として多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、
前記多変量解析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力手段と、を備え、
前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目を含み、
前記多変量解析手段が、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目を目的変数とし、前記レベル2の評価項目を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とする情報提供装置。
【請求項2】
前記分析結果出力手段は、前記説明変数の時系列変化と、前記再来店意思または他者推奨意思の評価値の時系列変化とを、前記情報端末に同時に表示させる、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記説明変数の時系列変化が、前記レベル2の評価項目の評価値の時系列変化である、請求項2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記レベル2の評価項目の評価値として、フィット感についての評価項目の評価値を含む、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記多変量解析手段が、前記レベル2の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1-1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第1-2の多変量解析と、を実行する第1次の多変量解析と、
前記第1次の多変量解析で用いた前記レベル2の説明変数から特定の説明変数を除いたものを目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第2-1の多変量解析と、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2-2の多変量解析と、を実行する第2次の多変量解析と、を実行し、
前記第1次の多変量解析における各説明変数の寄与度と前記第2次の多変量解析における各説明変数の寄与度との差分値を出力する機能をさらに備える、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項6】
前記多変量解析手段が、前記レベル3の評価項目の評価値を因子分析することで共通因子を抽出し、抽出した共通因子を前記レベル2の説明変数とし、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とする多変量解析を実行する因子分析多変量解析機能を備え、
前記分析結果出力手段が、前記因子分析多変量解析機能に基づき前記レベル1の目的変数を説明する前記レベル2の説明変数およびその寄与度と、前記レベル2の説明変数を説明する前記レベル3の説明変数およびその寄与度と、を前記情報端末にツリー構造で表示させる機能をさらに備える、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項7】
前記レベル3の評価項目が、前記レベル2の評価項目の下位概念の評価項目である、請求項1ないし6のいずれかに記載の情報提供装置。
【請求項8】
対象店舗についての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思または他者推奨意思に関する評価項目の評価値を含む評価データを取得する工程、
前記評価データに基づいて再来店意思または他者推奨意思の評価値を算出する工程、
前記再来店意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける評価項目の評価値を説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析工程、
前記多変量解析工程における分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させること、を含み、
前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目の評価値と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目の評価値と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目の評価値を含み、
前記多変量解析工程において、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とする情報提供方法。
【請求項9】
コンピューターに、
対象店舗についての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思または他者推奨意思に関する評価項目の評価値を含む評価データを取得する手段と、
前記評価データに基づいて再来店意思または他者推奨意思の評価値を算出する手段と、
前記再来店意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける評価項目の評価値を説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、
前記多変量解析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる手段と、を実行させるプログラムであって、
前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目の評価値と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目の評価値と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目の評価値を含み、
前記多変量解析手段が、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象店舗に対して顧客の再来店意思または推奨意思に寄与する情報を提供するための情報提供装置、方法およびプログラムに関する。なお、本発明における対象店舗には、物理的な店舗(リアル店舗)のみならず仮想空間上の店舗も含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来、モニター調査の調査結果や店内アンケートを集計することで、対象店舗に対する顧客の評価を分析し、対象店舗のサービス改善に活用することが行われている。また、特許文献1では、対象店舗に対する顧客の心理状態(たとえば、満足度が高いまたは低い)を示す表示を、対象店舗の地図情報に重畳して表示する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来の方法では、調査結果やアンケート結果を単に集計したものを表示しており、どの要因が、顧客の再来店意思(または推奨意思)にどの程度寄与しているかを把握することはできなかった。
【0005】
本発明は、顧客の再来店意思または推奨意思に対する評価因子の寄与度を高精度に数値化することができる情報提供装置、方法およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
サービス業において、再来店率を向上させるためにオペレーション品質改善施策を指南することが行われているが、店舗のオペレーション品質や来店客の期待内容に応じた提案になっておらず、改善効果が限定的であるという課題がある。このような課題が生じることの背景には、店舗のオペレーション品質や来店客の期待内容は、店舗の取り扱い内容、店舗側の改善取組の状況、来店客セグメントなどに応じて変化することにあるとの仮説を発明者は立てた。そして、再来店に効果があると期待される評価要素を因子分析した上で、来店客の評価を統計的に有意な数を収集し、時間軸での変化を統計分析(その収集された母数に応じて、重回帰分析・共分散構造分析等を使い分ける)することにより、再来店率を向上させるために有効な打ち手を提案することに資する情報提供装置およびプログラムを発明した。
【0007】
本発明に係る情報提供装置は、対象店舗についての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思または他者推奨意思に関する評価項目の評価値を含む評価データを取得する調査データ取得手段と、前記評価データに基づいて再来店意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける評価項目の評価値を説明変数として多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、前記多変量解析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力手段と、を備え、前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目を含み、前記多変量解析手段が、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目を目的変数とし、前記レベル2の評価項目を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とする。
上記情報提供装置において、前記分析結果出力手段は、前記説明変数の時系列変化と、前記再来店意思または他者推奨意思の評価値の時系列変化とを、前記情報端末に同時に表示させる構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記説明変数の時系列変化が、前記レベル2の評価項目の評価値の時系列変化である構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記レベル2の評価項目の評価値として、フィット感についての評価項目の評価値を含む構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記多変量解析手段が、前記レベル2の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1-1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第1-2の多変量解析と、を実行する第1次の多変量解析と、前記第1次の多変量解析で用いた前記レベル2の説明変数から特定の説明変数を除いたものを目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第2-1の多変量解析と、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2-2の多変量解析と、を実行する第2次の多変量解析と、を実行し、前記第1次の多変量解析における各説明変数の寄与度と前記第2次の多変量解析における各説明変数の寄与度との差分値を出力する機能をさらに備える構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記多変量解析手段が、前記レベル3の評価項目の評価値を因子分析することで共通因子を抽出し、抽出した共通因子を前記レベル2の説明変数とし、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とする多変量解析を実行する因子分析多変量解析機能を備え、前記分析結果出力手段が、前記因子分析多変量解析機能に基づき前記レベル1の目的変数を説明する前記レベル2の説明変数およびその寄与度と、前記レベル2の説明変数を説明する前記レベル3の説明変数およびその寄与度と、を前記情報端末にツリー構造で表示させる機能をさらに備える構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記レベル3の評価項目が、前記レベル2の評価項目の下位概念の評価項目である構成とすることができる。
【0008】
本発明の情報提供方法は、対象店舗についての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思または他者推奨意思に関する評価項目の評価値を含む評価データを取得する工程、前記評価データに基づいて再来店意思または他者推奨意思の評価値を算出する工程、前記再来店意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける評価項目の評価値を説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析工程、前記多変量解析工程における分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させること、を含み、前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目の評価値と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目の評価値と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目の評価値を含み、前記多変量解析工程において、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とする。
本発明のプログラムは、コンピューターに、対象店舗についての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思または他者推奨意思に関する評価項目の評価値を含む評価データを取得する手段と、前記評価データに基づいて再来店意思または他者推奨意思の評価値を算出する手段と、前記再来店意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける評価項目の評価値を説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、前記多変量解析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる手段と、を実行させるプログラムであって、前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目の評価値と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目の評価値と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目の評価値を含み、前記多変量解析手段が、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、顧客の再来店意思または推奨意思に対する評価因子の寄与度を高精度に数値化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る情報提供システムの構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る情報提供装置の機能を説明する図である。
【
図3】本実施形態のモニター調査による調査票の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態のアンケート調査による調査票の一例を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る多変量解析手段を説明する図である。
【
図6】特定の飲食店における再来店意思に対する各説明変数の寄与度を示す分析結果を示す図である。
【
図7】特定の美容院における再来店意思に対する各説明変数の寄与度を示す分析結果を示す図である。
【
図8】特定の飲食店における再来店意思に対する、フィット感を含む各説明変数の寄与度を示す分析結果を示す図である。
【
図9】特定の美容院における再来店意思に対する、フィット感を含む各説明変数の寄与度を示す分析結果を示す図である。
【
図10】時系列に沿った、再来店意思に対する各評価因子の寄与度の推移を示すグラフである。
【
図11】第2実施形態に係る比較分析機能を説明する図であり、(A)は第1次の重回帰分析結果を示す図であり、(B)は第2次の重回帰分析結果を示す図である。
【
図12】第3実施形態に係る第1の関係パス図を説明する図である。
【
図13】第3実施形態に係る第2の関係パス図(因子分析パス図)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
第1実施形態の情報提供システム1は、特定屋号の店舗における評価因子の時系列変化を分析することにより、時系列における再来店意思または推奨意思に影響を及ぼす評価因子の変遷を明らかにすることを可能とするものであり、以下に説明する構成を備えている。
【0012】
図1は、本実施形態に係る情報提供システムの構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る情報提供システム1は、サーバーとして機能する情報提供装置10と、管理用クライアントとして機能する管理用情報端末20と、来店者が利用する情報端末30と、調査データ収集装置40と、インターネット50とから構成されている。なお、
図1に示す例では、情報提供装置10、管理用情報端末20および調査データ収集装置40を各1台例示しているが、この構成に限定されず、各2台以上の構成とすることができる。
【0013】
情報提供装置10は、たとえばPCサーバーであり、演算部11と、分析プログラム121を記憶している記憶部12と、情報端末30および調査データ収集装置40との通信を可能とする通信部13とを有している。
管理用情報端末20は、情報提供装置10および調査データ収集装置40へのデータ入力操作や分析プログラム121および調査データ収集プログラム141の実行操作をするための情報端末であり、たとえばパーソナルコンピュータである。後述の分析プログラム121を実行することにより、管理用情報端末20の表示装置に各種分析結果(たとえば、
図6~13)を出力することが可能である。
情報端末30は、来店者が利用する情報端末であり、調査データをデータベース122に入力するために利用される。
図1の例では、スマートフォンである情報端末30を開示しているがこれに限定されず、パソコンやタブレット等のウェブブラウザが起動する任意の情報端末により構成することができる。
調査データ収集装置40は、たとえばPCサーバーであり、演算部41と、データベース122および入力プログラム123を記憶している記憶部42と、情報提供装置10および情報端末30との通信を可能とする通信部13とを有している。入力プログラム123は、データベース122に、情報端末30から調査データを入力することを可能とするためのウェブページを提供する調査データ入力手段を備えている。
本実施形態では、調査データの取得は、入力プログラム123により情報端末30からウェブブラウザを用いて店舗利用者がアンケートに回答する形態で入力する構成を採用したが、紙媒体などの別の手段により来店者から収集した調査データを加工して管理用情報端末20からデータベース122にアップロードする構成を採用してもよい。
【0014】
図2に示すように、情報提供装置10の演算部11は、記憶部12に記憶した分析プログラム121を実行することで、(1)調査データ取得手段と、(2)多変量解析手段と、(3)分析結果出力手段と、を実現する。以下、これらの各手段について説明する。
【0015】
(1)調査データ取得手段
調査データ取得手段は、多変量解析手段で用いる調査データを記憶部12に記憶するための手段である。本実施形態においては、データベース122から調査データを取得するためのクエリを入力する画面を管理用情報端末20に提供する。本実施形態における調査データは、店舗の利用者からの回答に基づく顧客満足度に関するデータであり、モニター調査データとアンケート調査データの2種類のデータからなる。
【0016】
本実施形態におけるモニター調査は、モニター(調査員)が実際に店舗のサービスを利用し、自身の経験に基づき所定の設問に回答をする形式の調査である。モニター調査は、調査員に報酬が支払われることから、設問数を多くすることができる。反面、アンケート調査と比べると、N数によっては、モニター調査のみで信頼度のある多変量解析を行うことは難しい場合がある。
【0017】
本実施形態におけるアンケート調査は、所定の評価項目を有する店内アンケートであり、設問数はモニター調査と比べると半分以下であり、多変量解析を行うのに適した質問で構成されている。反面、モニター調査と比べるとN数を多くとることができる(たとえば、1店舗単月で100件以上収集可能である)ので、統計分析を行うのに適している。アンケート調査は、N数が多いことから、性別、年代、地域などの属性で分類した顧客セグメント別の評価傾向を把握することが可能である。
本実施形態では、モニター調査データとアンケート調査データを併用することも可能であり、業態別の総合満足度に対する主要評価項目の影響度の強さを統計分析することを可能としながら、モニター調査により具体的業務レベルでの課題把握を可能としている。
【0018】
各調査票に記載する評価項目としては、QSCA(Quality Service Cleanliness Atmosphere)に関する項目とすることが例示される。飲食ジャンルの対象店舗については、「接客」、「提供スピード」、「料理」、「清潔感」、「空間・雰囲気」および「コストパフォーマンス」などの項目が例示される。また、美容ジャンルの対象店舗については、「接客」、「カウンセリング」、「技術」、「清潔感」、「雰囲気」および「コストパフォーマンス」などの項目が例示される。
いずれの業種においても、再来店意思との回帰を演算するために必要な設問を設ける。また、対象店舗の利用を他者に推奨したいかという他者推奨意思との回帰を演算するための設問を設けてもよい。
なお、上述した項目は一例であり、対象店舗の業種(ジャンル)や規模、季節などに応じて、数十の項目とすることができる。
【0019】
図3は、本実施形態のモニター調査による調査票の一例を示す図である。
属性情報の各項目には、モニター調査を行う調査員の属性情報を入力する。なお、モニター調査員の年齢、性別、居住地等の情報は予め登録されているので、調査票には記入しない。
レベル1質問は、推奨意思と再来店意思からなる。レベル1質問は、後述の重回帰分析の目的変数となる。レベル1質問の評価は、たとえば、0~10点の多段階評価とする。レベル2質問は、目的変数であるレベル1質問に影響を及ぼす因子である。レベル3質問は、レベル2質問を従属変数として重回帰分析をする場合の説明変数である。ここで、レベル2質問とレベル3質問は、上位概念と下位概念の関係にある。たとえば、レベル2質問の小分類Aにおける「接客に対する評価」の下位概念が、レベル3質問の小分類Aにおける「挨拶についての評価」および「料理提供対応についての評価」となる。ただし、レベル2質問の全ての小分類について、レベル3質問が設けられている訳ではない。また、レベル2質問に相当するその他の質問として、フィット感についての評価もある。フィット感についての質問は、たとえば、「当店はあなたの好みに合っていると感じますか?」といった質問に対する多段階評価とする。本実施形態では、フィット感についての質問を説明するレベル3質問を設けていないが、レベル3質問を設けてもよい。
【0020】
図4は、本実施形態のアンケート調査による調査票の一例を示す図である。
属性情報の各項目には、アンケート回答者の属性情報を入力する。アンケート回答者は、モニター調査の調査員のように登録された回答者ではないため、年代、性別等の情報も入力してもらう。
レベル1質問は、モニター調査と同じであり、推奨意思と再来店意思の項目からなる。アンケート調査は、回答者である来店者の負担を軽減するため、観測変数となる質問は少なく設定されており、本実施形態では、レベル2質問およびレベル2チェックから構成している。ここで、レベル2質問とレベル2チェックは、小分類において対応関係にある。たとえば、レベル2質問の小分類Aにおける「接客に対する評価」に対応するレベル2チェックは、「接客について不満足な点(複数選択)」である。別の観点からは、レベル2チェックは、多段階評価で行っていたレベル3質問を、2段階評価に置き換えたものと説明することもできる。アンケート調査においても、レベル2質問に相当するその他の質問として、フィット感についての評価がある。
【0021】
本実施形態におけるフィット感とは、個人の対象への選好、ある個人甲がある選択肢 a よりも選択肢 b をより好ましく感じている、効用 a よりも効用 b が大きいといった、甲が持つ選好構造を変数化したものである。調査対象の空間・雰囲気に対する居心地もしくは調和を説明変数として、ライフスタイル要因や準拠集団効果などを内包した変数として位置づける。モニター調査およびアンケート調査の回答者の趣向性を汲みしたフィット感を評価項目に含めることにより、フィット感とクラスター化された顧客属性との相関関係を出力可能とする機能を後述の多変量解析手段に設けてもよい。
【0022】
(2)多変量解析手段
本実施形態の多変量解析手段は、推奨意思と再来店意思のスコア(以下、「再来店意思スコア」という)に各評価項目がどのように影響を与えているかを重回帰分析により分析する。ここで、回帰分析とは、結果を示す数値(目的変数)と要因になる数値(説明変数)の関係を明らかにする統計手法であり、重回帰分析では、目的変数を説明する際に、どの説明変数が、どの程度結果を左右しているのかを数値化して将来の予測を行う統計手法のことをいう。
重回帰分析により説明変数の影響の大きさを数値化することにより、サービスの改善方法の立案がしやすくなる。また、予想される説明変数の変化に伴う目的変数の変化の未来予測をすることが可能となる。
【0023】
本実施形態では、取り組みにより改善が可能な評価因子を説明変数に設定し、立地や外観といった取り組みによる改善が困難な評価因子は説明変数に設定していない。具体的には、飲食店の説明変数として「接客」、「料理」、「清潔感」、「空間・雰囲気」、「コストパフォーマンス」、「フィット感」等を設定し、当該説明変数に係る評価項目と再来店意思スコアを算出するための評価項目を設問とするモニター調査およびアンケート調査を実施した。
図6は、対象店舗が飲食店である場合における、再来店意思スコア(目的変数)に対する各説明変数の寄与度を、重回帰分析により算出した結果の一例を示す図である。ここで、VIF(Variance Inflation Factor:分散拡大要因)とは、重回帰分析における多重共線性を評価する際の指標である。多重共線性とは、説明変数間に高い関連性があることであり、VIFの値が大きい場合には、その変数を分析から除いた方がよいと考えられている。ここで、決定係数(R
2)とは、重回帰分析によって求められた目的変数の予測値が、実際の目的変数の値とどのくらい一致しているかを表している指標である。一般には、決定係数が1に近いほど説明力が高いとされる。
【0024】
図5は、本実施形態に係る多変量解析手段を説明する図である。
本実施形態の多変量解析手段は、(a)レベル2とレベル3の重回帰分析、(b)レベル3の評価因子の単相関、(c)レベル1とレベル2の重回帰分析、および、(d)レベル2の評価因子の単相関、を分析する。本実施形態では、階層化された重回帰分析を行うことにより、推奨意思または再来店意思に与えるレベル2の評価因子の影響(寄与度)の説明力を高めることができる。換言すれば、レベル3の評価因子を説明変数とし、レベル1の評価項目の評価値を目的変数として重回帰分析すると、どの評価因子が支配的であるかを正確に把握できない場合があるが、本実施形態では中間概念にあたるレベル2の評価因子を設けることにより、この問題を解決している。
【0025】
(a)の分析は、レベル2の評価項目を目的変数(中間目的変数)とし、レベル3の評価項目を説明変数とする第1の重回帰分析である。この分析により、レベル2の評価項目(中間目的変数)に影響を及ぼしているレベル3の評価項目(評価因子)を把握することができる。たとえば、
図3においては、料理の味についての評価(B-1)、料理の品揃えについての評価(B-2)および料理の量についての評価(B-3)のそれぞれが、料理についての評価(B)に与える影響(寄与度)を数値化することができる。
(b)の分析は、レベル3の評価因子間の相関関係を数値化する。たとえば、
図3においては、単相関分析法により、料理の品揃えについての評価(B-2)と料理の量についての評価(B-3)の間に高い相関関係が認められる場合には、一方の評価が上がると他方の評価も上がることが分かる。
(c)の分析は、レベル1の評価項目を目的変数とし、レベル2の評価項目を説明変数とする第2の重回帰分析である。この分析により、レベル1の評価項目に影響を及ぼしているレベル2の評価項目(評価因子)を把握することができる。たとえば、
図3においては、接客に対する評価(A)、料理についての評価(B)、清潔感に対する評価(C)、空間・雰囲気に対する評価(D)およびコストパフォーマンスに対する評価(E)のそれぞれが、推奨意思または再来店意思に与える影響(寄与度)を数値化することができる。
(d)の分析は、レベル2の評価因子間の相関関係を数値化する。たとえば、
図3においては、単相関分析法により、料理についての評価(B)とコストパフォーマンスに対する評価(E)の間に高い相関関係が認められる場合には、一方の評価が上がると他方の評価も上がることが分かる。
【0026】
図6は、特定の飲食店におけるレベル1の再来店意思を目的変数とした場合のレベル2の各説明変数(評価因子)の寄与度を示す分析結果を示す図である。
図6に示す例においては、「コストパフォーマンス」が最も再来店意思に対する寄与度が高いことがわかり、次に「接客」の寄与度が高いことがわかる。また、各説明変数のVIFも大きな数値となっていないことから、多重共線性の問題は生じていないことがわかる。また、
図6において、決定係数R
2は.711と大きいため、説明力が高い分析であることがわかる。
【0027】
また、本実施形態では、美容院のレベル2の説明変数(評価因子)として「接客」、「カウンセリング」、「技術」、「清潔感」、「雰囲気」、「コストパフォーマンス」を設定し、レベル2の評価因子についての質問およびレベル2の下位概念にあたるレベル3の評価項目を設問とするモニター調査を実施した。
図7は、対象店舗が美容院である場合における、顧客の再来店意思(目的変数)に対するレベル2の各説明変数(評価因子)の寄与度を、重回帰分析により算出した結果の一例を示す図である。
図7に示す例では、「接客」、「技術」および「コストパフォーマンス」が、再来店意思に対する寄与度が高いことがわかる。また、各説明変数のVIFも大きな数値となっていないことから、多重共線性の問題は生じていないことがわかる。
図7においては、決定係数R
2は.502であることから、十分な説明力がある分析であるといえる。
【0028】
図8は、
図6に示す飲食店の重回帰分析結果に、フィット感をレベル2の説明変数(評価因子)に追加した重回帰分析結果を示す図である。
図8に示すように、フィット感をレベル2の説明変数に加えることにより、決定係数(R
2)が.760に向上しており、また各説明変数のVIFも大きな数値となっていないことから、説明力を向上させることができたことが分かる。
【0029】
図9は、
図7に示す美容院の重回帰分析結果に、フィット感をレベル2の説明変数(評価因子)に追加した重回帰分析結果を示す図である。
図9に示すように、フィット感をレベル2の説明変数に加えることにより、決定係数(R
2)が0632に向上しており、また各説明変数のVIFも大きな数値となっていないことから、説明力を向上させることができたことが分かる。
【0030】
(3)分析結果出力手段
本実施形態の分析結果出力手段は、
図6~
図9に示すように、ある一時点における重回帰分析結果を表示することができるだけでなく、重回帰分析結果を時系列に沿って並べたグラフを管理用情報端末20に表示させるためのコマンドを出力する。再来店意思に寄与する目的変数は、取り組みによる改善に応じて動的に変化する。たとえば、顧客の求める品質のモデルとして知られる狩野モデルでは、品質の要素を「当たり前品質」、「一元的品質」、「魅力品質」、「無関心品質」および「逆品質」に分類しているが、飲食店や美容院においては「清潔感」は「当たり前品質」に該当し、清潔感の評価が悪い場合には再来店意思に影響するが、清潔感の表が良い場合には、更に清潔感を改善しても再来店意思にはプラスの影響は生じない。「当たり前品質」が満たされると、それ以外の説明変数の改善が再来店意思に影響を及ぼす。ある説明変数の改善が、他の説明変数に及ぼすという関係の変化は店舗毎に異なるため、重回帰分析結果を時系列で観察することが再来店意思の改善には資する。本実施形態の分析結果出力手段は、重回帰分析結果を時系列で表示することで、お客様の重視点の変化を見える化する。
【0031】
図10は、重回帰分析により得られた再来店意思に対するレベル2の説明変数(各評価因子)の寄与度を、時系列に沿って並べたグラフの一例である。
図10に示す例は、特定に飲食店における3ヶ月毎の推移を集計したものであり、評価因子は「A接客」、「B料理」、「C清潔感」、「D空間・雰囲気」、「Eコストパフォーマンス」である。棒グラフは再来店意思スコアであり、顧客が再来店したいとの回答を数値化したものである。
【0032】
図10に示す例では、2021年7-9月期に、「C清潔感」が再来店意思スコアに関して2番目に高い寄与度を示し、「D空間・雰囲気」が最も低い寄与度となっている。これに対して、2021年10-12月期および2022年1-3月期では、「C清潔感」の寄与度は最も低くなっており、「D空間・雰囲気」の寄与度が上昇するのと共に、再来店意思スコアが上昇している。このことから、当該店舗における改善の取り組みの結果、「C清潔感」が当たり前品質を満たすものとなり、再来店意思スコアを向上させるためには、「D空間・雰囲気」の改善が効果的であることが分かる。
【0033】
このように、分析結果出力手段は、店舗改善の取り組みに伴い変化する各評価因子の再来店意思スコアに対する寄与度の推移を可視化して提供することで、店舗改善の取り組みを効率的に行うための知見を与えることができる。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る情報提供システム1は、目的変数および評価因子を階層化して多変量解析を行うことにより、単一の重回帰分析では十分な説明力が得られなかった目的変数に対する各評価因子の影響(寄与度)の説明力を高めることが可能である。
また、レベル2の評価因子にフィット感を追加して重回帰分析を行うことにより、再来店意思スコアに寄与する各評価因子を高精度に分析することが可能である。
【0035】
また、本実施形態に係る情報提供装置10では時系列に沿って得られた各評価因子および再来店意思スコアに基づいて、再来店意思スコアに対する各評価因子の寄与度の推移を求めることが可能である。具体的には、
図10に示すように、レベル2の評価因子を一定期間固定化して各評価因子の寄与度の推移を求めることにより、対象店舗における改善項目の推移を明示的に示すことが可能となる。これにより、対象店舗の取り扱い内容、改善取り組みの状況、外部環境(顧客セグメントや季節など)に応じて、再来店意思スコアに寄与する評価因子がどのように変わるかの情報を可視化して提供することができる。たとえば、対象店舗が取り組んだ改善の内容とリンクさせて、再来店意思スコアに対する各評価因子の寄与度の推移を可視化することで、対象店舗の取り組んだ改善が、どのように再来店意思に寄与しているかを可視化して提供することができる。
【0036】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る情報提供システム1は、サーバーとして機能する情報提供装置10と、管理用クライアントとして機能する管理用情報端末20と、来店者が利用する情報端末30と、調査データ収集装置40と、インターネット50とを備えており、ハードウェア構成は、第1実施形態と同じである。第2実施形態は、情報提供装置10で実行される分析プログラム121の多変量解析手段が、比較分析機能を備える点で、第1実施形態と相違する。
【0037】
第2実施形態の比較分析機能は、第1次の評価因子群をレベル2の説明変数とする第1次の重回帰分析と、第1次の評価因子群から特定の評価因子を除いたものをレベル2の説明変数とする第2次の重回帰分析とを行い、両者の差分値を出力する機能を有している。第2実施形態は、飲食店におけるモニター調査に基づく多変量解析に関するものであり、第1実施形態と同様に、レベル2の質問を説明変数とする重回帰分析に加え、レベル3の質問を説明変数とする重回帰分析も行っているが、後者については説明を省略する。
【0038】
図11(A)は第1次の重回帰分析結果を示す図であり、(B)は第2次の重回帰分析結果を示す図である。
図11(A)に示すように、第1次の重回帰分析では、再来店意思を目的変数とし、「接客」、「提供速度」、「料理」、「清潔感」、「空間・雰囲気」および「コストパフォーマンス」を説明変数としている。第1次の重回帰分析からは、「コストパフォーマンス」の寄与度が最も高いことが分かる。ここで、比較分析機能は、特定の評価因子との関連性が高い他の評価因子を単相関分析により算出する機能も有しており、
図11においては「コストパフォーマンス」との関連性が高い「料理」についての関連性スコア「.638」と「接客」についての関連性スコア「.520」が表示されている。
【0039】
図11(B)に示すように、第2次の重回帰分析では、再来店意思を目的変数とし、第1次の重回帰分析の説明変数から「コストパフォーマンス」を除いたものを説明変数としている。また、第2次の重回帰分析では、第1次の重回帰分析における各説明変数の寄与度との差分値を表示することができる。
第2次の重回帰分析の結果から、「コストパフォーマンス」を評価因子から除いた際に、「料理」の上昇幅が「+0.141」と最も大きく、「料理」が「コストパフォーマンス」に与える影響が最も大きいことが第2次の重回帰分析からも分かる。
【0040】
以上に説明した第2実施形態に係る情報提供システム1は、第1次の評価因子群を説明変数とする第1次の重回帰分析と、第1次の評価因子群から特定の評価因子を除いたものを説明変数とする第2次の重回帰分析とを行い、両者の差分値を出力する機能を有しているので、特定の評価因子を除いた場合に効果的な改善の分析が容易となる。
なお、本実施形態に係る情報提供装置10においても、
図10に示すような、時系列に沿って得られた再来店意思スコアに対する各評価因子の寄与度の推移を出力することは可能である。
【0041】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る情報提供システム1は、サーバーとして機能する情報提供装置10と、管理用クライアントとして機能する管理用情報端末20と、来店者が利用する情報端末30と、調査データ収集装置40と、インターネット50とを備えており、ハードウェア構成は、第1実施形態と同じである。第3実施形態は、情報提供装置10で実行される分析プログラム121の多変量解析手段が、因子分析パス図を作成可能である点で、第1実施形態と相違する。
【0042】
第3実施形態の比較分析機能は、スーパーマーケットにおけるモニター調査に基づく多変量解析に関するものであり、第1実施形態と同様に、レベル2の質問を説明変数とする重回帰分析に加え、レベル3の質問を説明変数とする重回帰分析も行っている。
図12は、第3実施形態に係る第1の関係パス図を説明する図である。第1の関係パス図は、
図5と同様の階層構造であり、「再来店意思」をレベル1の評価項目とし、「利便性」から「お得感」までをレベル2の評価項目とし、レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目として「立地」、「営業時間」などの評価項目が示されている。なお、
図12においては、レベル2およびレベル3の評価因子の寄与度の数値は図示省略しているが、第1の関係パス図と共に、各評価因子の寄与度の数値を表示させてもよい。
【0043】
図13は、第3実施形態に係る第2の関係パス図(因子分析パス図)を説明する図である。因子分析パス図は、レベル3の評価項目に対する回答を因子分析することにより潜在変数である共通因子を導出し、導出した共通因子をレベル2の説明変数とすることにより作成される。たとえば、レベル2の「ワクワク感」の評価因子は、レベル2の「商品の品揃え」に従属するレベル3の「差別化」、「選ぶ楽しみ」、「欠品」および「青果」に加え、レベル2の「商品の品質」に従属するレベル3の「青果」およびレベル2の「雰囲気」に従属するレベル3の「居心地」および「活気」の共通因子であり、当該共通因子に発明者等が「ワクワク感」と命名したものである。
なお、レベル2の評価因子は、導出された潜在変数のみから構成される訳ではなく、共通因子として抜き出された評価因子を除いた後に残ったレベル3の評価因子と従属先となるレベル2の評価因子が第1の関係パス図と同じになる場合もある(たとえば、
図12と
図13において、レベル2の「接客」とそれに従属する評価因子は同一である。)。
【0044】
以上に説明した第3実施形態に係る情報提供システム1は、第1の関係パス図に加え、第2の関係パス図(因子分析パス図)を作成する機能を有しているので、レベル1の目的変数に支配的な影響を与える因子を多面的に分析した結果を見える化することが可能となる。第3実施形態によれば、モニター調査およびアンケート調査の調査票の設問構造にはまらない説明変数の観点からも、目的変数に支配的な影響を与える因子を分析することが可能である。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0046】
たとえば、上述した実施形態では、多変量解析のうち重回帰分析を用いて、各評価因子の、再来店意思スコアに対する寄与度を求める構成を例示したが、この構成に限定されず、主成分分析、因子分析、コレスポンデンス分析、多次元尺度構成法、クラスター分析、パス解析、分散分析、コンジョイント分析、回帰分析、ロジスティクス回帰分析などを用いてもよい。
【0047】
また、上述した実施形態に加えて、情報提供装置10は、顧客セグメントや利用シーン(日常利用や記念日利用など)、季節、天候などの条件情報も収集することで、これら条件情報を説明変数として、再来店意思に寄与する評価因子を分析する構成とすることもできる。
また、上述した実施形態では、飲食店および美容院を対象とした調査データを用いた例を説明したが、本発明はそれ以外の業種に適用することも可能であり、たとえば、宿泊業、飲食サービス業、娯楽業、理美容や公衆浴場など生活関連サービス業、教養・技能教授業、金融業、保険業、小売業、情報通信業、物品賃貸業、専門サービス業(士業等)、広告業、不動産業、運輸業などに適用することも可能である。
【0048】
さらに、上述した実施形態では、対象店舗の各評価因子および再来店意思スコアに基づいて、対象店舗の再来店意思に寄与する要因を特定する構成を例示したが、この構成に加えて、対象店舗以外の店舗の情報を用いて、対象店舗の再来店意思に寄与する評価因子を特定する構成とすることもできる。たとえば、情報提供装置10は、対象店舗以外の様々な店舗の各評価因子および再来店意思スコアをデータベースに蓄積しておき、ジャンルや規模などの特徴が一致する店舗のうち、各評価因子および再来店意思スコアが近似する(たとえば、差が一定範囲内となる)店舗での再来店意思に対する各評価因子の寄与度を、対象店舗の分析結果として提供する構成とすることもできる。また、情報提供装置10は、対象店舗以外の様々な店舗で行われた店舗改善の取り組み情報と、各評価因子および再来店意思スコアの推移とをデータベースに蓄積しておき、たとえば、ジャンルや規模などの特徴が一致する店舗のうち、各評価因子および再来店意思データが近似する(たとえば、差が一定範囲内となる)店舗での店舗改善の取り組みと、店舗改善の取り組みによる各評価因子の寄与度および再来店意思スコアの推移から、どのような取り組みを行うことで、再来店意思にどのような変化が生じるかを示す情報を提供する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1…情報提供システム
10…情報提供装置
20…管理用情報端末
30…情報端末
40…調査データ収集装置
50…インターネット
【手続補正書】
【提出日】2023-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
対象店舗についての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思または他者推奨意思に関する評価項目の評価値を含む評価データを取得する工程、
前記評価データに基づいて再来店意思または他者推奨意思の評価値を算出する工程、
前記再来店意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける評価項目の評価値を説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析工程、をコンピューターが実行する情報提供方法であって、
前記多変量解析工程における分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させること、を含み、
前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目の評価値と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目の評価値と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目の評価値を含み、
前記多変量解析工程において、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とする情報提供方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の情報提供方法は、対象店舗についての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思または他者推奨意思に関する評価項目の評価値を含む評価データを取得する工程、前記評価データに基づいて再来店意思または他者推奨意思の評価値を算出する工程、前記再来店意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける評価項目の評価値を説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析工程、をコンピューターが実行する情報提供方法であって、前記多変量解析工程における分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させること、を含み、前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目の評価値と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目の評価値と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目の評価値を含み、前記多変量解析工程において、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とする。
本発明のプログラムは、コンピューターに、対象店舗についての評価項目の評価値を含む評価データであって、再来店意思または他者推奨意思に関する評価項目の評価値を含む評価データを取得する手段と、前記評価データに基づいて再来店意思または他者推奨意思の評価値を算出する手段と、前記再来店意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける評価項目の評価値を説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、前記多変量解析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる手段と、を実行させるプログラムであって、前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目の評価値と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目の評価値と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目の評価値を含み、前記多変量解析手段が、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とする。