(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073100
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】半導体封止用の樹脂組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20240522BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20240522BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K9/04
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184116
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504005035
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】溝畑 賢
(72)【発明者】
【氏名】猪野 陽佳
(72)【発明者】
【氏名】前 英雄
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】野上 修
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD071
4J002CD131
4J002DE146
4J002EX037
4J002FB096
4J002FB146
4J002FB236
4J002FD010
4J002FD090
4J002FD130
4J002FD150
4J002FD160
4J002GJ00
4J002GQ01
4M109AA01
4M109BA01
4M109BA04
4M109CA21
4M109CA22
4M109EA02
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB07
4M109EB08
4M109EB09
4M109EB12
4M109EB16
4M109EB17
4M109EB18
4M109EB19
4M109EC06
(57)【要約】
【課題】成形時において流動性が高く成形性に優れるとともに、硬化時において熱伝導率が高く放熱性に優れた封止用樹脂組成物、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体封止用の樹脂組成物であって、エポキシ樹脂と、表面処理されたアルミナフィラーと、を含み、前記表面処理されたアルミナフィラーは、カルボキシ基とヒドロキシ基とを有するヒドロキシ酸化合物が付着したアルミナフィラーである、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体封止用の樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂と、
表面処理されたアルミナフィラーと、を含み、
前記表面処理されたアルミナフィラーは、カルボキシ基とヒドロキシ基とを有するヒドロキシ酸化合物が付着したアルミナフィラーである、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記ヒドロキシ酸化合物は、式(1)で表される芳香族ヒドロキシ酸化合物もしくは脂肪族ヒドロキシ酸化合物、またはこれらの組み合わせであり、
【化1】
式(1)において、Rは、独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~3のアルキル基、カルボキシ基、またはヒドロキシ基である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記芳香族ヒドロキシ酸化合物は、没食子酸、フロログルシノールカルボン酸、およびサリチル酸から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記脂肪族ヒドロキシ酸化合物は、酒石酸、乳酸、ヒドロキシ酢酸、およびリンゴ酸から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
シランカップリング剤をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記表面処理されたアルミナフィラーは、前記ヒドロキシ酸化合物が付着したアルミナフィラーに、シランカップリング剤が付着したアルミナフィラーである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記シランカップリング剤は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、および2-イソシアネートエチルトリメトキシシランから選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の樹脂組成物を製造する方法であって、
アルミナフィラーを、カルボキシ基とヒドロキシ基とを有するヒドロキシ酸化合物で処理して、表面処理されたアルミナフィラーを得る工程と、
前記表面処理されたアルミナフィラーとエポキシ樹脂とを混合する工程と、
を含む、方法。
【請求項9】
表面処理されたアルミナフィラーとエポキシ樹脂とを混合する前記工程が、前記表面処理されたアルミナフィラーとエポキシ樹脂とシランカップリング剤とを混合する工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アルミナフィラーを、カルボキシ基とヒドロキシ基とを有するヒドロキシ酸化合物で処理して、表面処理されたアルミナフィラーを得る前記工程の後に、
前記表面処理されたアルミナフィラーを、シランカップリング剤で処理する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用の樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IC等の発熱性半導体の高機能化と高速化の進展に伴い、それが搭載された電子機器の発熱量が増大しており、半導体封止材においても高い放熱特性が求められている。樹脂組成物の熱伝導性を向上させるためには、窒化アルミニウムや窒化ホウ素、アルミナ、結晶性シリカなどの無機フィラーを充填することが一般的である。中でも、熱伝導性、化学的な安定性、コストのバランスに優れているアルミナは、放熱フィラーとして最も多く使用されている。
【0003】
しかしながら、樹脂に配合する無機フィラーの充填量が多くなると、樹脂組成物の粘度が上昇して成形性が悪くなり、その結果、封止時に未充填が生じたり、生産性が低下するといった問題が生じる。さらに、無機フィラーとしてアルミナのようなモース硬度の高い材料を用いると、封止時にワイヤを変形させるという問題が生じる。これらの問題を解決するためには、無機フィラーを高充填した樹脂組成物の粘度を低下させる必要があった。
このような課題を解決するために、無機フィラーをシランカップリング剤で表面処理する技術が提案されている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、無機フィラーを高充填した場合に、樹脂組成物の著しい増粘現象が生じるため、樹脂組成物の成形性や得られる電子機器の信頼性において改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みなされたものであり、特定の表面処理剤で処理したアルミナフィラーを用いることにより、高熱伝導性を維持しつつ、流動性が良好なものとして、封止時のワイヤ変形および未充填を抑制できる封止用樹脂組成物、ならびに当該封止用樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
本発明によれば、以下に示す半導体封止用の樹脂組成物およびその製造方法が提供される。
[1]半導体封止用の樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂と、
表面処理されたアルミナフィラーと、を含み、
前記表面処理されたアルミナフィラーは、カルボキシ基とヒドロキシ基とを有するヒドロキシ酸化合物が付着したアルミナフィラーである、
樹脂組成物。
[2]前記ヒドロキシ酸化合物は、式(1)で表される芳香族ヒドロキシ酸化合物もしくは脂肪族ヒドロキシ酸化合物、またはこれらの組み合わせであり、
【化1】
式(1)において、Rは、独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~3のアルキル基、カルボキシ基、またはヒドロキシ基である、項目[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記芳香族ヒドロキシ酸化合物は、没食子酸、フロログルシノールカルボン酸、およびサリチル酸から選択される少なくとも1つである、項目[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記脂肪族ヒドロキシ酸化合物は、酒石酸、乳酸、ヒドロキシ酢酸、およびリンゴ酸から選択される少なくとも1つである、項目[2]に記載の樹脂組成物。
[5]シランカップリング剤をさらに含む、項目[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前記表面処理されたアルミナフィラーは、前記ヒドロキシ酸化合物が付着したアルミナフィラーに、シランカップリング剤が付着したアルミナフィラーである、項目[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]前記シランカップリング剤は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、および2-イソシアネートエチルトリメトキシシランから選択される少なくとも1種である、項目[5]または[6]に記載の樹脂組成物。
[8]項目[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物を製造する方法であって、
アルミナフィラーを、カルボキシ基とヒドロキシ基とを有するヒドロキシ酸化合物で処理して、表面処理されたアルミナフィラーを得る工程と、
前記表面処理されたアルミナフィラーとエポキシ樹脂とを混合する工程と、
を含む、方法。
[9]表面処理されたアルミナフィラーとエポキシ樹脂とを混合する前記工程が、前記表面処理されたアルミナフィラーとエポキシ樹脂とシランカップリング剤とを混合する工程を含む、項目[8]に記載の方法。
[10]アルミナフィラーを、カルボキシ基とヒドロキシ基とを有するヒドロキシ酸化合物で処理して、表面処理されたアルミナフィラーを得る前記工程の後に、
前記表面処理されたアルミナフィラーを、シランカップリング剤で処理する工程をさらに含む、項目[8]または[9]に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、封止時において流動性が高く成形性に優れるとともに、硬化時において熱伝導率が高く放熱性に優れる封止用樹脂組成物、およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の樹脂組成物を用いて製造される、両面封止型の電子装置の一例について、断面構造を示した図である。
【
図2】本実施形態の樹脂組成物を用いて製造される、片面封止型の電子装置の一例について、断面構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、「a以上b以下」のことを表す。例えば、「5~90質量%」とは「5質量%以上90質量%以下」を意味する。
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の樹脂組成物は、基板上に搭載された半導体を封止するための封止材として用いられる封止材であり、エポキシ樹脂と表面処理されたアルミナフィラーとを含む。本実施形態の樹脂組成物に用いられるアルミナフィラーは、カルボキシ基とヒドロキシ基とを有するヒドロキシ酸化合物が付着したアルミナフィラーであり、換言すると、カルボキシ基とヒドロキシ基とを有するヒドロキシ酸化合物を用いた表面処理が施されたアルミナフィラーである。
【0012】
本実施形態の樹脂組成物は、ヒドロキシ酸化合物で表面処理されたアルミナフィラーを含むことにより、封止時における高い流動性と、得られる硬化物の高い熱伝導性とを両立して備える。
【0013】
以下、本実施形態の樹脂組成物に用いられる成分について説明する。
【0014】
(エポキシ樹脂)
本実施形態の樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、アルコキシナフタレン骨格含有フェノールアラルキルエポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、溶融粘度を最適範囲に維持することができ、成形性が良好であり、低コストであることから、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ当量としては、90~300であることが好ましい。エポキシ当量が小さすぎると、硬化剤との反応性が低下する傾向がある。また、エポキシ当量が大きすぎると、樹脂組成物の硬化物の強度が低下する傾向がある。
【0015】
エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全量に対して、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、封止工程において流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。また、樹脂組成物全体の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、樹脂組成物全量に対して、22質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、樹脂組成物のガラス転移温度の低下が少ない。
【0016】
(アルミナフィラー)
本実施形態の樹脂組成物に配合されるアルミナフィラーは、カルボキシ基とヒドロキシ基とを有するヒドロキシ酸化合物が付着したアルミナフィラーであり、換言すると、カルボキシ基とヒドロキシ基とを有するヒドロキシ酸化合物(本明細書中、「第一表面処理剤」と称する)を用いた表面処理が施されたアルミナフィラー(本明細書中、「第一表面処理アルミナフィラー」と称する)である。
【0017】
一実施形態において、第一表面処理フィラーの製造に用いられるアルミナフィラーは、レーザー解析散乱法により測定した場合の50%体積累積粒径D50が、10~50μmの第一のアルミナフィラーを含む。
【0018】
好ましい実施形態において、アルミナフィラーは、上記第一のアルミナフィラーに加え、50%体積累積粒径D50が0.1μm以上10μm未満である第二のアルミナフィラーを含む。
【0019】
アルミナフィラーの50%体積累積粒径D50が0.1μm未満である場合、得られる樹脂組成物の粘度が非常に高くなるため、充填性、封止工程における作業性が悪化する。また、アルミナフィラーの50%体積累積粒径D50が0.1μm未満である場合、得られる樹脂組成物の硬化物の弾性率が下がり、結果として得られるパッケージの反りが生じる。一方、アルミナフィラーの50%体積累積粒径D50が50μmを超える場合、充填不良が発生するおそれがある。また充填できたとしても充填時にボイドを巻き込むため、不適切である。アルミナフィラーとして、上記の第一および第二のアルミナフィラーを組み合わせて用いることにより、得られる樹脂組成物は、充填性と封止工程における作業性とを両立して備え得る。
【0020】
アルミナフィラーの表面処理のために用いられる、カルボキシ基とヒドロキシ基とを有するヒドロキシ酸化合物(第一表面処理剤)としては、例えば、芳香族ヒドロキシ酸化合物、および脂肪族ヒドロキシ酸化合物が挙げられる。芳香族ヒドロキシ酸化合物としては、式(1)で表される芳香族ヒドロキシ酸化合物を用いることが好ましい。
【0021】
【0022】
ここで、式(1)において、Rは、独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~3のアルキル基、カルボキシ基、またはヒドロキシ基である。
【0023】
式(1)で表される芳香族ヒドロキシ酸化合物の具体例としては、モノヒドロキシ安息香酸(サリチル酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸)、ジヒドロキシ安息香酸(2-ピロカテク酸等)、トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸、フロログルシノールカルボン等)、4-メチルサリチル酸等が挙げられる。これらの中でも、没食子酸、フロログルシノールカルボン酸、およびサリチル酸を用いることが好ましい。
【0024】
脂肪族ヒドロキシ酸化合物としては、例えば、ヒドロキシ酢酸、乳酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。中でも、酒石酸、乳酸、ヒドロキシ酢酸、およびリンゴ酸が好ましく用いられる。
【0025】
カルボキシ基とヒドロキシ基とを有するヒドロキシ酸化合物(第一表面処理剤)が付着したアルミナフィラー(第一表面処理アルミナフィラー)は、未処理のアルミナフィラーを、上述の第一の表面処理剤を用いる表面処理に供することにより得ることができる。
より具体的には、まず、上記の第一の表面処理剤を溶媒に混合して、第一の表面処理剤溶液を調製する。第一表面処理剤溶液中の第一の表面処理剤の濃度は、0.0005~0.05mol/Lである。第一表面処理剤溶液中の第一の表面処理剤の濃度の下限値は、0.0005mol/L以上であり、好ましくは0.001mol/L以上であり、より好ましくは0.005mol/L以上である。これにより、得られる第一表面処理アルミナフィラーの熱伝導率を向上させることができる。一方、第一表面処理剤溶液中の第一の表面処理剤の濃度の上限値は、0.05mol/L以下であり、好ましくは0.02mol/L以下、より好ましくは0.01mol/L以下である。
また第一表面処理剤溶液のpHは、5~9である。このような第一表面処理剤を用いて、アルミナフィラーを処理することにより、アルミナフィラーの表面に第一表面処理剤であるヒドロキシ酸化合物を首尾よく付着させることができる。これにより、得られる第一表面処理アルミナフィラーは、樹脂成分に対して良好ななじみ性を有し、このようなアルミナフィラーは樹脂組成物中で均一に分散して存在し得る。
第一表面処理溶液は、必要に応じて、トリエタノールアミンを含んでもよい。これにより、後に説明する第二の表面処理剤を用いる表面処理を、収率良く実施することができる。
【0026】
続いて、第一表面処理剤溶液中に、未処理のアルミナフィラーを投入する。なお、未処理のアルミナフィラーは、粉末状のものをそのまま用いてもよいし、あるいは所定の分散溶媒に分散させた分散媒(未処理アルミナフィラー分散液)として、第一表面処理溶液中に導入してもよい。未処理アルミナフィラー分散液を用いる場合、アルミナフィラーの分散媒としては、水またはアルコール系溶媒を用いることが好ましい。
好ましくは、粉末状の未処理のアルミナフィラーを、第一表面処理溶液中に投入する手法が用いられる。第一表面処理剤溶液と粉末状の未処理のアルミナフィラーとの混合割合は、適宜変更可能であるが、例えば、未処理のアルミナフィラー1kgに対し、200~1000mlの第一表面処理溶液が使用される。
【0027】
続いて、第一表面処理剤溶液と未処理のアルミナフィラーとの混合溶液を攪拌する。攪拌操作としては、公知の方法が使用できるが、例えば、混合溶液を含む容器を、約2~20時間程度回転させる方法を用いてもよい。攪拌は、例えば、50~100℃程度の温度、好ましくは、70~95℃の温度で実施される。加熱撹拌時間は、例えば、1~10時間実施される。
【0028】
第一表面処理剤溶液に用いる溶媒としては、第一表面処理剤を溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、水、またはヒドロキシ基等の水溶性基を有する有機溶媒を使用することができ、具体的には、水、またはアルコール系溶媒を用いることができる。また溶媒は、25℃、大気圧下で揮発し難いものを使用してもよく、例えば、沸点が50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上のものがよい。溶媒は、1またな二以上を含む混合溶媒であってもよい。この中でも、第一表面処理剤の溶解性、不揮発性の観点から、水、1-メトキシ-2-プロパノール、エタノール等が好適に使用される。
【0029】
一表面処理剤溶液と未処理のアルミナフィラーとの混合溶液を攪拌した後、必要に応じて、混合溶液を濾過してもよく、濾過後の濾残物を洗浄してもよい。洗浄液としては、水や使用した溶媒などを用いることができる。
【0030】
その後、混合溶液中、あるいは濾残物中に残存する溶媒を除去する。溶媒を除去する方法は、公知の手段を使用できるが、減圧乾燥、加熱乾燥などが用いられる。
【0031】
このように、第一表面処理剤で表面処理する工程は、室温での乾燥処理、室温かつ減圧下での乾燥処理、25℃~50℃かつ減圧下での乾燥処理、および90℃以上かつ常圧下での乾燥処理のいずれかを含むことができる。
【0032】
上記の方法により、第一表面処理アルミナフィラーを得ることができる。この第一表面処理アルミナフィラーは、アルミナフィラーに、第一表面処理剤であるヒドロキシ酸化合物が付着した構造を有する。
【0033】
第一表面処理アルミナフィラーにおいて、第一表面処理剤は、アルミナフィラーの表面に、化学的、物理的、あるいはその両方によって付着(結合)している。すなわち第一表面処理アルミナフィラーは、その表面の少なくとも一部が第一表面処理剤からなる有機層によって被覆された状態となる。
ここで、第一表面処理アルミナフィラーにおいて、第一表面処理剤が、ヒドロキシ基がアルミナフィラーの表面に付着していると推察される。
【0034】
好ましい実施形態において、第一表面処理アルミナフィラーは、さらなる表面処理(第二表面処理)に供されてもよい。第二の表面処理に用いられる表面処理剤(本明細書中、「第二表面処理剤」と称する)としては、シランカップリング剤が用いられる。シランカップリング剤としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、および2-イソシアネートエチルトリメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシランを用いることが好ましい。中でも、シランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、および2-イソシアネートエチルトリメトキシシランが好ましく、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランを用いることがさらに好ましい。これにより、封止時における高い流動性を達成することができる。
【0035】
第一表面処理アルミナフィラーを、第二表面処理剤で処理して、第二表面処理アルミナフィラーを得る方法としては、乾式処理が好ましく用いられる。具体的には、乾燥処理後の第一表面処理アルミナフィラーを、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等のミキサー中で撹拌しながら、第二表面処理剤としてのシランカップリング剤を、液滴下あるいはスプレー噴霧にて加え、その後、一定時間高速強撹拌する。その後、撹拌を続けながら、70℃から200℃の温度にて、加熱乾燥する。ここで、第二表面処理剤としてのシランカップリング剤は、所定の溶媒に溶解させた第二表面処理剤溶液として使用することが好ましい。第二表面処理剤溶液に用いられる溶媒としては、水またはアルコール系溶媒が好ましく用いられる。第二表面処理剤溶液の濃度は、例えば、0.005~0.5mol/Lとすることができる。第二表面処理剤溶液と第一表面処理アルミナフィラーとの混合割合は、適宜変更可能であるが、例えば、第一表面処理アルミナフィラー1kgに対し、100~1000mlの第二表面処理溶液が使用される。
【0036】
第一表面処理アルミナフィラーを、第二表面処理剤で処理して得られる第二表面処理アルミナフィラーは、アルミナフィラーと第二表面処理剤とが、第一表面処理剤を介して付着した構造を有すると推定される。換言すると、第一表面処理剤の一端がアルミナフィラーと結合し、第一表面処理剤の他端が第二表面処理剤と結合していると推定される。なお、詳細は明らかではないもの、第一表面処理剤のヒドロキシ基が、アルミナフィラーとの結合に関与し、第一表面処理剤のカルボキシ基が、第二表面処理剤であるシランカップリング剤との結合に関与していると推定される。
【0037】
好ましい実施形態において、本実施形態の樹脂組成物は、上述の第二表面処理アルミナフィラーを含む。このようなアルミナフィラーを含む樹脂組成物は、良好な流動性を有するとともに、この樹脂組成物の硬化物は高い熱伝導性を有する。
【0038】
上記の第一表面処理アルミナフィラーまたは第二表面処理アルミナフィラーの含有量の下限は、樹脂組成物の固形分に対して、例えば、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが好ましい。これにより、樹脂組成物の硬化物における熱伝導率を向上させることができる。一方、第一表面処理アルミナフィラーまたは第二表面処理アルミナフィラーの含有量の上限は、樹脂組成物の固形分に対して、例えば、98質量%未満であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、93質量%以下であることが好ましい。これにより、樹脂組成物の粘度を、封止工程の際に好適な範囲に調節することができる。
【0039】
(カップリング剤)
本実施形態の樹脂組成物は、カップリング剤を含んでもよい。特に、アルミナフィラーとして、上述の第一表面処理アルミナフィラーを用いる場合、カップリング剤を用いることが好ましい。
カップリング剤としては、上記の第二の表面処理剤として使用したカップリング剤と同じでもよいし、別のカップリング剤を使用してもよい。
使用できるカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリルシラン;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン;イソシアヌレートシラン;アルキルシラン;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランなどのウレイドシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン;チタン系化合物;アルミニウムキレート類;アルミニウム/ジルコニウム系化合物などが挙げられる。カップリング剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0040】
カップリング剤を用いる場合、その配合量は、樹脂組成物全体に対して、例えば、0.1質量%以上5質量%以下であり、好ましくは、0.1質量%以上3質量%以下である。
【0041】
(フェノール樹脂硬化剤)
本実施形態の樹脂組成物は、フェノール樹脂硬化剤を含んでもよい。用いることができるフェノール樹脂硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック、フェノール‐ビフェニルノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格含有ナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール化合物などが挙げられる。フェノール樹脂系硬化剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。フェノール樹脂系硬化剤としては、上記具体例のうち、フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂を含むことが好ましい。これにより樹脂組成物において、エポキシ樹脂を良好に硬化することができる。
【0042】
フェノール樹脂硬化剤の配合割合の下限値については、特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。また、硬化剤の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、16質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、樹脂組成物の流動性および融け性を所望の範囲とすることができる。
【0043】
また、エポキシ樹脂とフェノール樹脂系硬化剤との配合比率としては、エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)とフェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が0.8以上、1.3以下であることが好ましい。当量比がこの範囲内であると、樹脂組成物の成形時に充分な硬化性を得ることができる。また、当量比がこの範囲内であると、樹脂組成物の流動性および融け性を所望の範囲とすることができる。
【0044】
(硬化促進剤)
本実施形態の樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤としては、上述のフェノール樹脂と上述のフェノール樹脂硬化剤との硬化反応を促進することができるものであれば、特に制限することなく使用することができ、例えば、オニウム塩化合物;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン等の有機ホスフィン;テトラ置換ホスホニウム化合物;ホスホベタイン化合物;ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物;スホニウム化合物とシラン化合物との付加物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)、2-フェニル-4-メチルイミダゾール(2P4MZ)、2-フェニルイミダゾール(2PZ)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール(2P4MHZ)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(1B2PZ)などのイミダゾール化合物;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBU)、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂硬化剤との合計量に対して、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。硬化促進剤の含有量が上記下限値より少ないと、硬化促進効果を高めることができない場合がある。また、上記上限値より多いと、流動性や成形性に不具合を生じる傾向があり、また、製造コストの増加につながる場合がある。
【0046】
(その他の成分)
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、アルミナフィラー以外の無機フィラー、流動性付与剤、離型剤、イオン捕捉剤、低応力剤、着色剤、難燃剤等の添加剤を含んでもよい。以下、代表成分について説明する。
【0047】
(無機フィラー)
本実施形態の樹脂組成物は、上述のアルミナフィラーに加え、他の無機フィラーを含んでもよい。無機フィラーとしては、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ、2次凝集シリカ等のシリカ;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化チタン、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタンホワイト、タルク、クレー、マイカ、ガラス繊維等が挙げられる。粒子形状は限りなく真球状であることが好ましく、また、粒子の大きさの異なるものを混合することにより充填量を多くすることができる。また無機フィラーは、カップリング剤による表面処理が施されていてもよい。
【0048】
(流動性付与剤)
流動性付与剤は、リン原子含有硬化促進剤などの潜伏性を有さない硬化促進剤が樹脂組成物の溶融混練時に反応するのを抑制するように働く。これにより、樹脂組成物の生産性を向上できる。流動性付与剤としては、具体的には、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体などの芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物などが挙げられる。
【0049】
(離型剤)
離型剤としては、具体的には、カルナバワックスなどの天然ワックス;モンタン酸エステルワックス、酸化ポリエチレンワックスなどの合成ワックス;ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩;パラフィン;エルカ酸アミドなどのカルボン酸アミドなどが挙げられる。離型剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0050】
(イオン捕捉剤)
上記イオン捕捉剤は、具体的には、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト状物質などのハイドロタルサイト類;マグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物などが挙げられる。イオン捕捉剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0051】
(低応力剤)
低応力剤としては、具体的には、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどのシリコーン化合物;ポリブタジエン化合物;アクリロニトリル-カルボキシル基末端ブタジエン共重合化合物などのアクリロニトリル-ブタジエン共重合化合物などを挙げることができる。低応力剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0052】
(着色剤)
着色剤としては、具体的には、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタンなどを挙げることができる。着色剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0053】
(難燃剤)
難燃剤としては、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼン、カーボンブラックなどを挙げることができる。難燃剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0054】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の樹脂組成物は、上述のエポキシ樹脂、および上述の第一表面処理アルミナフィラーまたは第二表面処理アルミナフィラー、ならびに必要に応じて用いられる添加剤を所定の含有量となるように、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサー等のミキサーやブレンダー等で均一に混合した後、ニーダー、ロール、ディスパー、アジホモミキサー、及びプラネタリーミキサー等で加熱しながら混練することにより製造できる。なお、混練時の温度としては、硬化反応が生じない温度範囲である必要があり、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂硬化剤の組成にもよるが、70~150℃程度で溶融混練することが好ましい。混練後に冷却固化し、混練物を、粉粒状、顆粒状、タブレット状、またはシート状に加工してもよい。
【0055】
粉粒状の樹脂組成物を得る方法としては、たとえば、粉砕装置により、混練物を粉砕する方法が挙げられる。混練物をシートに成形したものを粉砕してもよい。粉砕装置としては、たとえば、ハンマーミル、石臼式磨砕機、ロールクラッシャーを用いることができる。
【0056】
顆粒状または粉末状の樹脂組成物を得る方法としては、たとえば、混練装置の出口に小径を有するダイスを設置して、ダイスから吐出される溶融状態の混練物を、カッター等で所定の長さに切断するというホットカット法に代表される造粒法を用いることもできる。この場合、ホットカット法等の造粒法により顆粒状または粉末状の樹脂組成物を得た後、樹脂組成物の温度があまり下がらないうちに脱気を行うことが好ましい。
【0057】
上述のようにして製造された本実施形態の樹脂組成物は、その硬化物のレーザフラッシュ法により測定した場合の熱伝導率が、3W/m・K以上であり、好ましくは、4W/m・K以上である。
【0058】
本実施形態の樹脂組成物の最低溶融粘度は、例えば、15kPa・s以下であり、12kPa・s以下であることより好ましい。上記値を超えると、充填性が低下し、ボイドや未充填部分が発生するおそれがある。
【0059】
(用途)
本実施形態に係る封止用樹脂組成物を封止剤として用いて製造される電子装置の一例について説明する。
図1は本実施形態に係る両面封止型の電子装置100を示す断面図である。
本実施形態の半導体装置100は、電子素子20と、電子素子20に接続されるボンディングワイヤ40と、封止材50と、を備えるものであり、当該封止材50は、前述の樹脂組成物の硬化物により構成される。
【0060】
より具体的には、電子素子20は、基材30上にダイアタッチ材10を介して固定されており、電子装置100は、電子素子20上に設けられた図示しない電極パッドからボンディングワイヤ40を介して接続されるアウターリード34を有する。ボンディングワイヤ40は用いられる電子素子20等を勘案しながら設定することができるが、たとえばCuワイヤを用いることができる。
【0061】
図2は、本実施形態の樹脂組成物を用いて、回路基板に搭載した電子素子を封止して得られる片面封止型の電子装置の一例について、断面構造を示した図である。回路基板408上にダイアタッチ材402を介して電子素子401が固定されている。電子素子401の電極パッド407と回路基板408上の電極パッド407との間はボンディングワイヤ404によって接続されている。本実施形態の樹脂組成物の硬化体で構成される封止材406によって、回路基板408の電子素子401が搭載された面が封止されている。回路基板408上の電極パッド407は回路基板408上の非封止面側の半田ボール409と内部で接合されている。
【0062】
以下に、本実施形態に係る封止用樹脂組成物を用いた半導体装置の製造方法について説明する。
本実施形態に係る半導体装置は、例えば、上述した封止用樹脂組成物の製造方法により、封止用樹脂組成物を得る工程と、基板上に電子素子を搭載する工程と、前記封止用樹脂組成物を用いて、前記電子素子を封止する工程とにより製造される。封止剤を形成するために用いられる手法として、例えば、トランスファー成形法、圧縮成形法、インジェクション成形法等を用いることができる。封止する工程は、樹脂組成物を、80℃から200℃程度の温度で10分から10時間程度の時間をかけて硬化させることにより実施される。
【0063】
封止される電子素子の種類としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子などの半導体素子が挙げられるが、これらに限定されない。得られる電子装置の形態としては、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップサイズ・パッケージ(CSP)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0065】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
実施例、比較例で用いた成分を以下に示す。
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YX4000HK)
【0067】
(硬化剤)
・硬化剤1:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(明和化成製、MEH-7851SS)
・硬化剤2:フェノールノボラック(住友ベークライト製、PR-55617)
【0068】
(アルミナフィラー)
・未処理アルミナフィラー1:アルミナ(マイクロン社製、TA943、平均粒子径(D50)20.3μm)
・表面処理アルミナフィラー1-1:未処理アルミナフィラー1を以下の方法で表面処理した。
(表面処理アルミナフィラー1-1の調製方法)
(工程1)まず、蒸留水400mlに、没食子酸・1水和物を0.05重量部、および炭酸アンモニウムを0.01重量部溶解し、pHを5~7に調整して、第一表面処理剤溶液を調製した。得られた未処理アルミナフィラー分散液400mlと、1kgの未処理アルミナフィラー1とを、ヘンシェルミキサーにて、90℃で、6時間混合して、混合液を得た。
(工程2)次いで、得られた混合液に、トリエタノールアミンを0.05重量部添加して撹拌し、その後120℃で加熱することにより乾燥させて、第一表面処理アルミナフィラーを得た。
(工程3)3-イソシアネートプルピルトリエトキシシラン10gを、蒸留水10mlおよびエタノール90mlからなる混合溶媒と混合し、第二表面処理剤溶液を調製した。調製後速やかに、この第二表面処理剤溶液1重量部を、上記で得た第一表面処理アルミナフィラーに添加し、加熱下で混合して、得られた第二表面処理アルミナフィラーを乾燥させた。乾燥した第二表面処理アルミナフィラーを、高速撹拌機で解砕して、目的の表面処理アルミナフィラー1-1を得た。
・表面処理アルミナフィラー1―2:未処理アルミナフィラー1を以下の方法で表面処理した。
(表面処理アルミナフィラー1-2の調製方法)
表面処理アルミナフィラー1-1の調製方法における工程3において、3-イソシアネートプルピルトリエトキシシラン10gを、エタノール100mlと混合して、8時間静置して第二表面処理溶液を調製したこと以外は、表面処理アルミナフィラー1-1の調製方法と同様にして、表面処理アルミナフィラー1-2を得た。
【0069】
・未処理アルミナフィラー2:アルミナ(デンカ社製、DAW-02、平均粒子径(D50)2.7μm)
・表面処理アルミナフィラー2―1:未処理アルミナフィラー2を以下の方法で表面処理した。
(表面処理アルミナフィラー2-1の調製方法)
表面処理アルミナフィラー1-1の調製方法における工程1において、蒸留水を1Lとした以外は、表面処理アルミナフィラー1-1の調製方法と同様にして、表面処理アルミナフィラー2-1を得た。
・表面処理アルミナフィラー2―2:未処理アルミナフィラー2を以下の方法で表面処理した。
(表面処理アルミナフィラー2-2の調製方法)
表面処理アルミナフィラー1-1の調製方法における工程1において、蒸留水を1Lとし、表面処理アルミナフィラー1-1の調製方法における工程3において、3-イソシアネートプルピルトリエトキシシラン10gを、エタノール100mlと混合して、8時間静置して第二表面処理溶液を調製したこと以外は、表面処理アルミナフィラー1-1の調製方法と同様にして、表面処理アルミナフィラー2-2を得た。
【0070】
(カップリング剤)
・カップリング剤1:N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、CF-4083)
・カップリング材2:γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM803P)
【0071】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:テトラフェニルホスホニウム2,3-ジヒドロキシナフタレート(住友ベークライト社製)
【0072】
(離型剤)
・離型剤1:モンタン酸エチレングリコールエステル(クライアント・ジャパン社製、リコワックスE)
【0073】
(着色剤)
・着色剤1:カーボンブラック(東海カーボン社製、ERS-2001)
(オイル)
・オイル1:カルボニル末端ブチルニトリルゴム(蝶理GLEX社製、CTBN1008SP)
・オイル2:ジメチルシロキサン-アルキルカルボン酸-4,4'-(1メチルエチリデン)ビスフェノールジグリシジルエーテル共重合体(住友ベークライト社製)
(無機フィラー)
・無機フィラー1:シリカ(アドマテックス社製、SC-2500-SQ)
【0074】
(実施例1~4、比較例1~2)
表1で示す配合の原料をスーパーミキサーにより5分間粉砕混合したのち、この混合原料を同方向回転二軸押出機にて溶融混練した。次に、混練後に冷却固化した後、ロールクラッシャーを用いて粉砕し、粉粒状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、以下の項目について、以下に示す方法により評価した。
【0075】
(流動性(スパイラルフロー))
低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS-15)を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で、樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性の指標であり、数値が大きい方が、流動性が良好である。単位はcm。
【0076】
(狭ギャップ充填性)
低圧トランスファー成形機(NEC社製、40tマニュアルプレス)を用いて、金型温度175℃、注入速度0.7mm/secの条件にて、幅13mm、厚さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に樹脂組成物を注入した。このとき、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定し、注入から10秒後の圧力(kgf/cm2)を矩形圧とした。矩形圧は、溶融粘度の指標であり、数値が小さい方が、溶融粘度が低いことを示し、狭ギャップ充填性が優れることを示す。
【0077】
(曲げ強度)
樹脂組成物を用い、JIS K 6911に準じ、トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間15分で、80mm×10mm×4mm(厚さ)の試験片を成形し、260℃にて曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。
【0078】
(熱伝導性)
長さ1cm、巾1cm、厚さ1mmの試験片を作成し、熱拡散率の測定を行った。パウダーを使って比熱測定を行った。得られた熱拡散率、比熱、比重から熱伝導率を求めた。
【0079】