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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073137
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240522BHJP
   H01L 25/00 20060101ALI20240522BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L25/00 B
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184179
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 孝行
(72)【発明者】
【氏名】中柴 康隆
【テーマコード(参考)】
5H740
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BB05
5H740BB09
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK03
5H740KK04
5H740PP02
5H740PP03
(57)【要約】
【課題】電子装置のコスト低減を図る。
【解決手段】第2トランスフォーマの構成要素である下層インダクタBL2Aと上層インダクタTL2Aとの間の第2間隔(「B」)は、第1トランスフォーマの構成要素である下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとの間の第1間隔(「A」)よりも小さい。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体チップを有する第1半導体装置と、
第2半導体チップを有する第2半導体装置と、
を備え、
前記第1半導体チップは、第1電位と第2電位との間の非接触通信を行う第1アイソレータを有し、
前記第2半導体チップは、第3電位と第4電位との間の非接触通信を行う第2アイソレータを有し、
前記第1電位と前記第2電位との間の差は、前記第3電位と前記第4電位との間の差よりも大きく、
前記第1アイソレータは、第1トランスフォーマまたは第1コンデンサから構成され、
前記第2アイソレータは、第2トランスフォーマまたは第2コンデンサから構成され、
前記第1トランスフォーマは、
第1下層インダクタと、
第1上層インダクタと、
前記第1下層インダクタと前記第1上層インダクタとの間に介在する第1絶縁層と、
を有し、
前記第2トランスフォーマは、
第2下層インダクタと、
第2上層インダクタと、
前記第2下層インダクタと前記第2上層インダクタとの間に介在する第2絶縁層と、
を有し、
前記第2下層インダクタと前記第2上層インダクタとの間の第2間隔は、前記第1下層インダクタと前記第1上層インダクタとの間の第1間隔よりも小さく、
前記第1コンデンサは、
第1下層電極と、
第1上層電極と、
前記第1下層電極と前記第1上層電極との間に介在する第1容量絶縁層と、
を有し、
前記第2コンデンサは、
第2下層電極と、
第2上層電極と、
前記第2下層電極と前記第2上層電極との間に介在する第2容量絶縁層と、
を有し、
前記第2下層電極と前記第2上層電極との間の第2電極間隔は、前記第1下層電極と前記第1上層電極との間の第1電極間隔よりも小さい、電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置において、
前記第1半導体チップは、第1多層配線層を有し、
前記第2半導体チップは、第2多層配線層を有し、
前記第1下層インダクタは、前記第1多層配線層内に形成され、
前記第1上層インダクタは、前記第1多層配線層上に形成され、
前記第2下層インダクタは、前記第2多層配線層内に形成され、
前記第2上層インダクタは、前記第2多層配線層上に形成され、
前記第2多層配線層の厚さは、前記第1多層配線層の厚さよりも小さい、電子装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電子装置において、
前記第1半導体チップは、第1多層配線層を有し、
前記第2半導体チップは、第2多層配線層を有し、
前記第1下層電極は、前記第1多層配線層内に形成され、
前記第1上層電極は、前記第1多層配線層上に形成され、
前記第2下層電極は、前記第2多層配線層内に形成され、
前記第2上層電極は、前記第2多層配線層上に形成され、
前記第2多層配線層の厚さは、前記第1多層配線層の厚さよりも小さい、電子装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電子装置において、
前記第1下層インダクタと前記第1上層インダクタとは、磁気結合可能に構成され、
前記第2下層インダクタと前記第2上層インダクタとは、磁気結合可能に構成される、電子装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電子装置において、
前記第1下層電極と前記第1上層電極とは、容量結合可能に構成され、
前記第2下層電極と前記第2上層電極とは、容量結合可能に構成される、電子装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電子装置において、
前記電子装置は、
ハイサイド部と、
ローサイド部と、
を有し、
前記ハイサイド部は、
前記第1電位を前記第1下層インダクタに印加可能な第1回路部と、
前記第1トランスフォーマと、
前記第2電位を前記第1上層インダクタに印加可能な第2回路部と、
を有し、
前記ローサイド部は、
前記第3電位を前記第2下層インダクタに印加可能な第3回路部と、
前記第2トランスフォーマと、
前記第4電位を前記第2上層インダクタに印加可能な第4回路部と、
を有する、電子装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電子装置において、
前記第1半導体装置は、
前記第1半導体チップと、
ハイサイドチップと、
を有し、
前記第1回路部と前記第1トランスフォーマは、前記第1半導体チップに形成され、
前記第2回路部は、前記ハイサイドチップに形成され、
前記第2半導体装置は、
前記第2半導体チップと、
ローサイドチップと、
を有し、
前記第3回路部と前記第2トランスフォーマは、前記第2半導体チップに形成され、
前記第4回路部は、前記ローサイドチップに形成されている、電子装置。
【請求項8】
請求項6に記載の電子装置において、
前記第1半導体装置は、
前記第1半導体チップと、
第1ハイサイドチップと、
第2ハイサイドチップと、
を有し、
前記第1回路部は、前記第1ハイサイドチップに形成され、
前記第2回路部は、前記第2ハイサイドチップに形成され、
前記第1トランスフォーマは、前記第1半導体チップに形成され、
前記第2半導体装置は、
前記第2半導体チップと、
第1ローサイドチップと、
第2ローサイドチップと、
を有し、
前記第3回路部は、前記第1ローサイドチップに形成され、
前記第4回路部は、前記第2ローサイドチップに形成され、
前記第2トランスフォーマは、前記第2半導体チップに形成されている、電子装置。
【請求項9】
請求項1に記載の電子装置において、
前記電子装置は、
ハイサイド部と、
ローサイド部と、
を有し、
前記ハイサイド部は、
前記第1電位を前記第1下層電極に印加可能な第1回路部と、
前記第1コンデンサと、
前記第2電位を前記第1上層電極に印加可能な第2回路部と、
を有し、
前記ローサイド部は、
前記第3電位を前記第2下層電極に印加可能な第3回路部と、
前記第2コンデンサと、
前記第4電位を前記第2上層電極に印加可能な第4回路部と、
を有する、電子装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電子装置において、
前記第1半導体装置は、
前記第1半導体チップと、
ハイサイドチップと、
を有し、
前記第1回路部と前記第1コンデンサは、前記第1半導体チップに形成され、
前記第2回路部は、前記ハイサイドチップに形成され、
前記第2半導体装置は、
前記第2半導体チップと、
ローサイドチップと、
を有し、
前記第3回路部と前記第2コンデンサは、前記第2半導体チップに形成され、
前記第4回路部は、前記ローサイドチップに形成されている、電子装置。
【請求項11】
請求項9に記載の電子装置において、
前記第1半導体装置は、
前記第1半導体チップと、
第1ハイサイドチップと、
第2ハイサイドチップと、
を有し、
前記第1回路部は、前記第1ハイサイドチップに形成され、
前記第2回路部は、前記第2ハイサイドチップに形成され、
前記第1コンデンサは、前記第1半導体チップに形成され、
前記第2半導体装置は、
前記第2半導体チップと、
第1ローサイドチップと、
第2ローサイドチップと、
を有し、
前記第3回路部は、前記第1ローサイドチップに形成され、
前記第4回路部は、前記第2ローサイドチップに形成され、
前記第2コンデンサは、前記第2半導体チップに形成されている、電子装置。
【請求項12】
請求項1に記載の電子装置において、
前記電子装置は、インバータを制御するように構成されている、電子装置。
【請求項13】
請求項1に記載の電子装置において、
前記第1下層インダクタは、第1下層インダクタ配線を有し、
前記第1上層インダクタは、第1上層インダクタ配線を有し、
前記第2下層インダクタは、第2下層インダクタ配線を有し、
前記第2上層インダクタは、第2上層インダクタ配線を有し、
前記第2下層インダクタ配線の巻き数は、前記第1下層インダクタ配線の巻き数よりも少なく、
前記第2上層インダクタ配線の巻き数は、前記第1上層インダクタ配線の巻き数よりも少ない、電子装置。
【請求項14】
請求項1に記載の電子装置において、
前記第1下層インダクタは、第1下層インダクタ配線を有し、
前記第1上層インダクタは、第1上層インダクタ配線を有し、
前記第2下層インダクタは、第2下層インダクタ配線を有し、
前記第2上層インダクタは、第2上層インダクタ配線を有し、
前記第2下層インダクタ配線の長さは、前記第1下層インダクタ配線の長さよりも短く、
前記第2上層インダクタ配線の長さは、前記第1上層インダクタ配線の長さよりも短い、
電子装置。
【請求項15】
請求項1に記載の電子装置において、
前記第1下層インダクタは、第1下層インダクタ配線を有し、
前記第1上層インダクタは、第1上層インダクタ配線を有し、
前記第2下層インダクタは、第2下層インダクタ配線を有し、
前記第2上層インダクタは、第2上層インダクタ配線を有し、
前記第2下層インダクタ配線の延在方向と直交する断面での断面積は、前記第1下層インダクタ配線の延在方向と直交する断面での断面積よりも小さく、
前記第2上層インダクタ配線の延在方向と直交する断面での断面積は、前記第1上層インダクタ配線の延在方向と直交する断面での断面積よりも小さい、電子装置。
【請求項16】
請求項1に記載の電子装置において、
前記第2下層電極の電極面積は、前記第1下層電極の電極面積よりも小さく、
前記第2上層電極の電極面積は、前記第1上層電極の電極面積よりも小さい、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置に関し、例えば、インバータを制御するように構成された電子装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-82212号公報(特許文献1)には、トランスフォーマを構成するコイルの寄生抵抗成分の大部分を占める直列抵抗を低減するために、微細化を妨げることなく、コイル断面積を大きくすることが可能な技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-82212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、モータなどの負荷回路を駆動するインバータを制御する制御回路では、異なる電位の間での非接触の信号伝送が必要とされる。この点に関し、異なる電位間での非接触の信号伝送を可能とするために、一般的にフォトカプラが使用されている。
【0005】
しかしながら、近年では、電気自動車の拡大に伴い、異なる電位間での非接触の信号伝送を可能とする部品として、誘導結合した一対のインダクタを利用したトランスフォーマ(デジタルアイソレータ)や、コンデンサが注目されている。すなわち、半導体チップに内蔵可能なトランスフォーマやコンデンサに注目が集まっている。そのため、トランスフォーマやコンデンサの生産量が増加している。
【0006】
このため、他社との競争優位性を獲得するため、トランスフォーマやコンデンサの高性能化だけでなく、コスト低減が重要となっている。したがって、トランスフォーマやコンデンサのコスト削減を図るための工夫が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態における電子装置は、第1半導体チップを有する第1半導体装置と、第2半導体チップを有する第2半導体装置と、を備える。ここで、第1半導体チップは、第1電位と第2電位との間の非接触通信を行う第1アイソレータを有する一方、第2半導体チップは、第3電位と第4電位との間の非接触通信を行う第2アイソレータを有する。このとき、第1電位と第2電位との間の差は、第3電位と第4電位との間の差よりも大きく、第1アイソレータは、第1トランスフォーマまたは第1コンデンサから構成され、第2アイソレータは、第2トランスフォーマまたは第2コンデンサから構成される。
【0008】
第1トランスフォーマは、第1下層インダクタと、第1上層インダクタと、第1下層インダクタと第1上層インダクタとの間に介在する第1絶縁層と、を有する。一方、第2トランスフォーマは、第2下層インダクタと、第2上層インダクタと、第2下層インダクタと第2上層インダクタとの間に介在する第2絶縁層と、を有する。このとき、第2下層インダクタと第2上層インダクタとの間の第2間隔は、第1下層インダクタと第1上層インダクタとの間の第1間隔よりも小さい。
【0009】
また、第1コンデンサは、第1下層電極と、第1上層電極と、第1下層電極と第1上層電極との間に介在する第1容量絶縁層と、を有する。一方、第2コンデンサは、第2下層電極と、第2上層電極と、第2下層電極と第2上層電極との間に介在する第2容量絶縁層と、を有する。このとき、第2下層電極と第2上層電極との間の第2容量間隔は、第1下層電極と第1上層電極との間の第1容量間隔よりも小さい。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、電子装置のコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インバータおよび3相誘導モータを含む回路の構成を示す回路図である。
図2】ゲート制御回路の構成を説明する図である。
図3】具現化態様1における電子装置の構成を示す図である。
図4】2チップ構成の第1半導体装置の構成を示すブロック図である。
図5】2チップ構成の第2半導体装置の構成を示すブロック図である。
図6】第1半導体装置の構成を示す断面図である。
図7】第2半導体装置の構成を示す断面図である。
図8】(a)は、ハイサイド部に設けられる第1トランスフォーマの構成要素である第1上層インダクタの構成を示す模式図であり、(b)は、ローサイド部に設けられる第2トランスフォーマの構成要素である第2上層インダクタの構成を示す模式図である。
図9】3チップ構成の第1半導体装置を示す図である。
図10】3チップ構成の第2半導体装置を示す図である。
図11】具現化態様2における第1半導体装置の構成を示す断面図である。
図12】具現化態様2における第2半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0013】
インバータは、例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、鉄道車両、あるいは、産業機器に備わるモータを駆動する回路である。インバータは、例えば、パワーモジュールとして製品化されている。そして、インバータは、制御回路によって制御されるように構成されている。インバータを制御する制御回路は、例えば、電子装置として製品化されている。
【0014】
<3相インバータの構成例>
以下では、3相インバータを例に挙げて説明する。
【0015】
パワーモジュールは、例えば、エアコンなどに使用される3相誘導モータの駆動回路に使用されるものである。具体的に、この駆動回路には、インバータが含まれる。このインバータは直流電力を交流電力に変換する機能を有する回路である。
【0016】
図1は、インバータおよび3相誘導モータを含むモータ回路の構成を示す回路図である。図1において、モータ回路は、3相誘導モータMTおよびインバータINVを有している。3相誘導モータMTは、位相の異なる3相の電圧により駆動するように構成されている。具体的に、3相誘導モータMTでは、位相が120度ずれたU相、V相、W相と呼ばれる3相交流を利用して導体であるロータRTの回りに回転磁界を発生させる。この場合、ロータRTの回りを磁界が回転する。このことは、導体であるロータRTを横切る磁束が変化することを意味する。この結果、導体であるロータRTに電磁誘導が生じて、ロータRTに誘導電流が流れる。そして、回転磁界中で誘導電流が流れるということは、フレミングの左手の法則によって、ロータRTに力が加わることを意味する。この力によって、ロータRTが回転することになる。
【0017】
このように3相誘導モータMTでは、3相交流を利用することにより、ロータRTを回転させることができる。つまり、3相誘導モータMTでは、3相交流が必要である。そこで、モータ回路では、直流から交流を作り出すインバータINVを利用することにより、3相誘導モータに3相交流を供給している。
【0018】
以下に、このインバータINVの構成例について説明する。
【0019】
図1に示すように、例えば、インバータINVには、3相に対応してスイッチング素子Q1とダイオードFWDが設けられている。すなわち、インバータINVでは、例えば、図1に示すようなスイッチング素子Q1とダイオードFWDを逆並列接続した構成により、インバータINVの構成要素を実現している。
【0020】
例えば、図1において、第1レグLG1の上アームおよび下アーム、第2レグLG2の上アームおよび下アーム、第3レグLG3の上アームおよび下アームのそれぞれは、スイッチング素子Q1とダイオードFWDを逆並列接続した構成要素から構成されている。
【0021】
言い換えれば、インバータINVでは、正電位端子PTと3相誘導モータMTの各相(U相、V相、W相)との間にスイッチング素子Q1とダイオードFWDが逆並列に接続されている。また、3相誘導モータMTの各相と負電位端子NT(あるいはグランド端子)との間にもスイッチング素子Q1とダイオードFWDが逆並列に接続されている。つまり、単相ごとに2つのスイッチング素子Q1と2つのダイオードFWDが設けられている。3相で、6つのスイッチング素子Q1と6つのダイオードFWDが設けられている。
【0022】
そして、個々のスイッチング素子Q1のゲート電極には、ゲート制御回路GCCが接続されている。このゲート制御回路GCCによって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作が制御される。このゲート制御回路GCCでスイッチング素子Q1のスイッチング動作を制御することにより、直流電力を3相交流電力に変換する。この3相交流電力が3相誘導モータMTに供給される。
【0023】
<スイッチング素子の種類>
例えば、インバータINVに使用されるスイッチング素子Q1としては、パワーMOSFETやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を挙げることができる。
【0024】
<ゲート制御回路の構成>
図2は、ゲート制御回路GCCの構成を説明する図である。
【0025】
図2において、3相誘導モータMTと電気的に接続されるインバータINVの一部を構成する第1レグLG1が示されている。第1レグLG1は、例えば、ハイサイド用IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ:Insulated Gate Bipolar Transistor)10Aとローサイド用IGBT10Bとを有している。インバータINVは、図1に示すように、第1レグLG1と第2レグLG2と第3レグLG3を有している。以下では、第1レグLG1に着目して、ゲート制御回路GCCの構成を説明する。
【0026】
インバータINVは、ゲート制御回路GCCと電気的に接続されている。ゲート制御回路GCCは、MCU(Micro Controller Unit)100と電気的に接続されている。
【0027】
ここで、ゲート制御回路GCCは、MCU100からの指令(制御信号)に基づいて、インバータINVを構成するスイッチング素子を制御するように構成されている。例えば、ゲート制御回路GCCは、インバータINVを構成するハイサイド用IGBT10Aのオン/オフ制御と、ローサイド用IGBT10Bのオン/オフ制御を行なうように構成されている。これにより、3相誘導モータMTの制御が行われる。
【0028】
図2に示すように、ゲート制御回路GCCは、ハイサイド部HSUとローサイド部LSUとを有している。ハイサイド部HSUは、ハイサイド用IGBT10Aのスイッチング動作を制御する機能を有している。具体的に、ハイサイド部HSUは、ハイサイド用IGBT10Aのゲート電極と電気的に接続されたハイサイド用ゲートドライバGD1と、ハイサイド用ゲートドライバGD1と電気的に接続されたハイサイド用アイソレータISO1とを有している。そして、ハイサイド用アイソレータISO1は、MCU100と電気的に接続されている。
【0029】
一方、ローサイド部LSUは、ローサイド用IGBT10Bのスイッチング動作を制御する機能を有している。具体的に、ローサイド部LSUは、ローサイド用IGBT10Bのゲート電極と電気的に接続されたローサイド用ゲートドライバGD2と、ローサイド用ゲートドライバGD2と電気的に接続されたローサイド用アイソレータISO2とを有している。そして、ローサイド用アイソレータISO2は、MCU100と電気的に接続されている。
【0030】
ここで、MCU100とゲートドライバGDとは、基準電位の電圧レベルが異なっている。すなわち、MCU100では、基準電位が接地電位に固定されている一方、図2に示すように、ゲートドライバGDは、インバータINVと電気的に接続されている。
【0031】
インバータINVでは、ハイサイド用IGBT10Aのオン/オフ制御をハイサイド用ゲートドライバGD1で行うとともに、ローサイド用IGBT10Bのオン/オフ制御をローサイド用ゲートドライバGD2で行なう。これにより、インバータINVによる3相誘導モータMTの制御が行われる。
【0032】
具体的に、ハイサイド用IGBT10Aのオン/オフ制御は、ハイサイド用ゲートドライバGD1によって、ハイサイド用IGBT10Aのゲート電極に印加する電位を制御することによって行なわれる。同様に、ローサイド用IGBT10Bのオン/オフ制御は、ローサイド用ゲートドライバGD2によって、ローサイド用IGBT10Bのゲート電極に印加する電位を制御することによって行なわれる。
【0033】
このとき、例えば、ローサイド用IGBT10Bのオン制御は、接地電位と接続されているローサイド用IGBT10Bのエミッタ電位(0V)を基準として、「エミッタ電位(0V)+しきい値電圧(15V)」をゲート電極に印加することにより実現される。
【0034】
一方、例えば、ローサイド用IGBT10Bのオフ制御は、接地電位と接続されているローサイド用IGBT10Bのエミッタ電位(0V)を基準として、「エミッタ電位(0V)」をゲート電極に印加することにより実現される。
【0035】
したがって、ローサイド用IGBT10Bのオン/オフ制御は、0Vを基準電位として、ゲート電極にしきい値電圧(15V)を印加するか否かによって行なわれる。
【0036】
一方、例えば、ハイサイド用IGBT10Aのオン制御も、ハイサイド用IGBT10Aのエミッタ電位を基準電位として、この基準電位に対して、ゲート電極に「基準電位+しきい値電圧(15V)」を印加するか否かによって行なわれる。
【0037】
ところが、ハイサイド用IGBT10Aのエミッタ電位は、ローサイド用IGBT10Bのエミッタ電位のように接地電位に固定されているわけではない。すなわち、インバータINVにおいては、電源電位と接地電位との間に、ハイサイド用IGBT10Aとローサイド用IGBT10Bとが直列接続されている。そして、インバータINVでは、ハイサイド用IGBT10Aがオンする際には、ローサイド用IGBT10Bをオフする一方、ハイサイド用IGBT10Aがオフする際には、ローサイド用IGBT10Bをオンする制御が行なわれる。
【0038】
したがって、ハイサイド用IGBT10Aがオフしている際には、ローサイド用IGBT10Bがオンしていることから、ハイサイド用IGBT10Aのエミッタ電位は、オンしているローサイド用IGBT10Bによって、接地電位となる。
【0039】
一方、ハイサイド用IGBT10Aがオンしている際には、ローサイド用IGBT10Bがオフしていることから、ハイサイド用IGBT10Aのエミッタ電位は、IGBTバス電圧となる。このとき、ハイサイド用IGBT10Aのオン/オフ制御は、ハイサイド用IGBT10Aのエミッタ電位を基準電位として、ゲート電極に「基準電位+しきい値電圧(15V)」を印加するか否かによって行なわれる。
【0040】
上述したように、ハイサイド用IGBT10Aのエミッタ電位は、ハイサイド用IGBT10Aがオンしている場合とオフしている場合で変動する。すなわち、ハイサイド用IGBT10Aのエミッタ電位は、接地電位(0V)から電源電位(例えば、800V)まで変動する。したがって、ハイサイド用IGBT10Aをオンするためには、ハイサイド用IGBT10Aのエミッタ電位を基準電位として、ゲート電極に「IGBTバス電圧(800V)+しきい値電圧(15V)」を印加する必要がある。
【0041】
このことから、ハイサイド用IGBT10Aのオン/オフ制御を行なうハイサイド用ゲートドライバGD1においては、ハイサイド用IGBT10Aのエミッタ電位を把握する必要がある。このため、ハイサイド用ゲートドライバGD1は、ハイサイド用IGBT10Aのエミッタ電位を入力するように構成されている。この結果、ハイサイド用ゲートドライバGD1には、800Vの基準電位が入力される。そして、ハイサイド用ゲートドライバGD1は、この800Vの基準電位に対して、15Vのしきい値電圧(15V)をハイサイド用IGBT10Aのゲート電極に印加することによって、ハイサイド用IGBT10Aをオンするように制御する。したがって、ハイサイド用ゲートドライバGD1には、800V程度の高電位が印加される。
【0042】
このように、インバータINVを制御する回路は、低電位(数V)を取り扱うMCU100と、高電位(数百V)を取り扱うハイサイド用ゲートドライバGD1とを有している。このことから、MCU100とハイサイド用ゲートドライバGD1との間での信号の伝達は、異電位回路間での信号の伝達を行なうことが必要とされる。MCU100とハイサイド用ゲートドライバGD1との間での信号の伝達は、ハイサイド用アイソレータISO1を介在して行なわれるため、異電位回路間での信号の伝達が可能である。このハイサイド用アイソレータISO1は、異電位回路間での信号の伝達を行なう機能とともに、例えば、(1)低電位(数V)と高電位(数百V)との間のレベルシフト、(2)ノイズに敏感なMCU100(低電圧ドメイン)とノイズの多いハイサイド用ゲートドライバGD1(高電圧ドメイン)との間の電源/GNDのアイソレーションを行なう機能を有している。
【0043】
一方、ローサイド用ゲートドライバGD2では、上述したように、ハイサイド用ゲートドライバGD1のように数百Vの高電位を取り扱うことはなく、数十V程度の電位を取り扱う。ただし、ローサイド用ゲートドライバGD2においても、低電位(数V)を取り扱うMCU100よりも高い電位を取り扱う。そのため、MCU100とローサイド用ゲートドライバGD2との間での信号の伝達は、異電位回路間での信号の伝達を行なうことが必要とされる。MCU100とローサイド用ゲートドライバGD2との間での信号の伝達は、ローサイド用アイソレータISO2を介在して行なわれるため、異電位回路間での信号の伝達が可能である。このローサイド用アイソレータISO2は、異電位回路間での信号の伝達を行なう機能とともに、例えば、(1)低電位(数V)と高電位(数十V)との間のレベルシフト、(2)ノイズに敏感なMCU100(低電圧ドメイン)とノイズの多いローサイド用ゲートドライバGD2(高電圧ドメイン)との間の電源/GNDのアイソレーションを行なう機能を有している。
【0044】
以上のようにして、ゲート制御回路GCCが構成されている。
【0045】
<実施の形態における基本思想>
続いて、本実施の形態における基本思想について説明する。
【0046】
低電位(数V)を取り扱うMCU100と高電位(数百V)を取り扱うハイサイド用ゲートドライバGD1との間に設けられるハイサイド用アイソレータISO1には、高い絶縁耐圧が要求される。一方、低電位(数V)を取り扱うMCU100と電位(数十V)を取り扱うローサイド用ゲートドライバGD2との間に設けられるローサイド用アイソレータISO2には、ハイサイド用アイソレータISO1よりも絶縁耐圧は要求されない。
【0047】
この点に関し、ハイサイド用アイソレータISO1の構造とローサイド用アイソレータISO2の構造は共通化されている。この場合、ハイサイド用アイソレータISO1の高い絶縁耐圧を確保できるように、共通化されるアイソレータの構造が設計される。
【0048】
すると、ローサイド用アイソレータISO2においては、必要以上の絶縁耐圧が確保される。すなわち、ハイサイド用アイソレータISO1の構造とローサイド用アイソレータISO2の構造を共通化すると、ローサイド用アイソレータISO2の性能は過剰品質となる。言い換えれば、ローサイド用アイソレータISO2においては、必要以上の性能が付与される。つまり、要求される絶縁耐圧が異なるハイサイド用アイソレータISO1の構造とローサイド用アイソレータISO2の構造を共通化すると、必然的に、要求の厳しい仕様にあわせてアイソレータの構造が設計される。その結果、要求の緩やかなローサイド用アイソレータISO2において、必要以上の性能が付加される。
【0049】
このことは、要求の緩やかなローサイド用アイソレータISO2の製造に余計な製造コストがかかることを意味する。したがって、要求される絶縁耐圧が大きく異なるハイサイド用アイソレータISO1の構造とローサイド用アイソレータISO2の構造を共通化することには、アイソレータの製造コストを削減する観点から改善の余地がある。
【0050】
そこで、本実施の形態における基本思想は、ハイサイド用アイソレータISO1の構造とローサイド用アイソレータISO2の構造を相違させることを前提としている。そして、基本思想は、それぞれに要求される絶縁耐圧を満足するために必要十分な性能を発揮できる構造をハイサイド用アイソレータISO1およびローサイド用アイソレータISO2のそれぞれに採用する思想である。
【0051】
この基本思想によれば、要求の緩やかなローサイド用アイソレータISO2において、要求の厳しいハイサイド用アイソレータISO1の仕様にあわせて設計された構造が採用されずに、ローサイド用アイソレータISO2に要求される絶縁耐圧を満足するために必要十分な性能を有する構造が採用される。この結果、基本思想によれば、要求の緩やかなローサイド用アイソレータISO2に対して、必要以上の過剰性能が付加されることを抑制できるため、ローサイド用アイソレータISO2の製造コストを低減できる。
【0052】
以下では、この基本思想を具現化した具現化態様について説明する。特に、具現化態様では、誘導結合(磁気結合)した一対のインダクタを利用したトランスフォーマからアイソレータを構成する例について説明する。変形例では、容量結合した一対の電極を利用したコンデンサからアイソレータを構成する例について説明する。
【0053】
<具現化態様1>
<<電子装置の構成>>
例えば、図2に示すゲート制御回路GCCは、電子装置EAとして具現化される。すなわち、電子装置EAは、インバータを制御するように構成されている。
【0054】
図3は、具現化態様1における電子装置EAの構成を示す図である。
【0055】
図3において、電子装置EAは、第1半導体装置SA1と第2半導体装置SA2を有している。第1半導体装置SA1は、例えば、パッケージ構造体から構成されている。第1半導体装置SA1は、図2に示すハイサイド部HSUの構成要素を含んでいる。一方、第2半導体装置SA2も、例えば、パッケージ構造体から構成されている。第2半導体装置SA2は、図2に示すローサイド部LSUの構成要素を含んでいる。このようにして、具現化態様1における電子装置EAが構成されている。
【0056】
<<第1半導体装置の機能ブロック構成>>
図4は、ゲート制御回路GCCのハイサイド部HSUを有する第1半導体装置SA1の構成を示すブロック図である。
【0057】
図4に示すように、第1半導体装置SA1は、送信回路TX1Aと、トランスフォーマTR1Aと、受信回路RX1Aと、ハイサイド用ゲートドライバGD1と、を有している。
【0058】
ここで、送信回路TX1Aは、図2に示すMCU100と電気的に接続されている。そして、送信回路TX1Aおよび受信回路RX1Aのそれぞれは、トランスフォーマTR1Aと電気的に接続されている。具体的に、トランスフォーマTR1Aは、下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとを有する。送信回路TX1Aは、下層インダクタBL1Aと電気的に接続されている。受信回路RX1Aは、上層インダクタTL1Aと電気的に接続されている。さらに、受信回路RX1Aは、ハイサイド用ゲートドライバGD1と電気的に接続されている。ハイサイド用ゲートドライバGD1は、図2に示すハイサイド用IGBT10Aのゲート電極と電気的に接続されている。
【0059】
送信回路TX1Aおよび受信回路RX1Aは、MCU100(図2参照)から出力される制御信号をハイサイド用ゲートドライバGD1に伝達するための回路である。
【0060】
送信回路TX1Aと受信回路RX1Aとの間には、誘導結合(磁気結合)した下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1AからなるトランスフォーマTR1Aが介在している。これにより、送信回路TX1Aから受信回路RX1Aに、トランスフォーマTR1Aを介して制御信号を伝達することができる。この結果、ハイサイド用ゲートドライバGD1は、トランスフォーマTR1Aを介して、MCU100(図2参照)から出力された制御信号を受信することができる。
【0061】
このように、誘導結合を利用して電気的に絶縁したトランスフォーマTR1Aによって、MCU100(図2参照)からハイサイド用ゲートドライバGD1への電気的ノイズの伝達を抑制しながら、MCU100(図2参照)からハイサイド用ゲートドライバGD1に制御信号を伝達することができる。このことから、制御信号への電気的ノイズの重畳に起因するハイサイド用ゲートドライバGD1の誤動作を抑制することができる。これによって、第1半導体装置SA1の動作信頼性を向上することができる。
【0062】
トランスフォーマTR1Aを構成する下層インダクタBL1Aおよび上層インダクタTL1Aは、それぞれインダクタとして機能する。トランスフォーマTR1Aは、誘導結合した下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aからなる磁気結合素子として機能する。このように、トランスフォーマTR1Aは、下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとにより構成されている。下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとは、導体を介して繋がっておらず、磁気的に結合している。
【0063】
このことから、下層インダクタBL1Aに電流が流れると、その電流の変化に応じて上層インダクタTL1Aに誘導起電力が発生して誘導電流が流れる。このとき、下層インダクタBL1Aが一次コイルであり、上層インダクタTL1Aが二次コイルである。このように、トランスフォーマTR1Aは、下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとの間に生じる電磁誘導現象を利用している。すなわち、送信回路TX1AからトランスフォーマTR1Aの下層インダクタBL1Aに信号を送って電流を流した結果、トランスフォーマTR1Aの上層インダクタTL1Aに生じた誘導電流を受信回路RX1Aで検知する。これにより、受信回路RX1Aは送信回路TX1Aから出力された制御信号に対応した信号を受信できる。
【0064】
以上のように、送信回路TX1AからトランスフォーマTR1Aを経由して受信回路RX1Aに至る経路によって、MCU100(図2参照)からハイサイド用ゲートドライバGD1への制御信号の送信が行なわれる。すなわち、送信回路TX1Aが送信した制御信号を受信回路RX1Aが受信することにより、MCU100(図2参照)からハイサイド用ゲートドライバGD1への制御信号の送信を行うことができる。これにより、ハイサイド用ゲートドライバGD1は、MCU100(図2参照)から送信された制御信号に応じて、3相誘導モータMT(図2参照)を動作させるためのインバータINV(図2参照)の構成要素であるハイサイド用IGBT10Aのオン/オフ制御を行なうことができる。
【0065】
続いて、第1半導体装置SA1は、温度検出部20Aと、電流検出部30Aと、送信回路TX2Aと、トランスフォーマTR1Bと、受信回路RX2Aと、を有している。
【0066】
ここで、受信回路RX2Aは、図2に示すMCU100と電気的に接続されている。そして、受信回路RX2Aおよび送信回路TX2Aのそれぞれは、トランスフォーマTR1Bと電気的に接続されている。具体的に、トランスフォーマTR1Bは、下層インダクタBL1Bと上層インダクタTL1Bとを有する。受信回路RX2Aは、下層インダクタBL1Bと電気的に接続されている。一方、送信回路TX2Aは、上層インダクタTL1Bと電気的に接続されている。さらに、送信回路TX2Aは、温度検出部20Aおよび電流検出部30Aと電気的に接続されている。
【0067】
そして、温度検出部20Aは、図2に示すインバータINVに内蔵されている温度検知ダイオードと電気的に接続されている。すなわち、図2に示すハイサイド用IGBT10Aが形成されているIGBTチップには、ハイサイド用IGBT10Aとともに温度検知ダイオードも形成されている。温度検出部20Aは、この温度検知ダイオードと電気的に接続されている。一方、電流検出部30Aは、ハイサイド用IGBT10A(メイントランジスタ)を流れる電流を検出するセンストランジスタと電気的に接続されている。すなわち、ハイサイド用IGBT10Aが形成されているIGBTチップには、メイントランジスタであるハイサイド用IGBT10Aとともにセンストランジスタも形成されている。電流検出部30Aは、このセンストランジスタと電気的に接続されている。
【0068】
温度検出部20Aは、IGBTチップに形成されている温度検知ダイオードの順方向電圧降下を検出するように構成されている。この温度検出部20Aから送信回路TX2Aに順方向電圧降下を示す温度検出信号が出力される。
【0069】
電流検出部30Aは、IGBTチップに形成されているセンストランジスタを流れるセンス電流を検出するように構成されている。この電流検出部30Aから送信回路TX2Aにセンス電流を示す電流検出信号が出力される。
【0070】
送信回路TX2Aおよび受信回路RX2Aは、温度検出部20Aから出力される温度検出信号および電流検出部30Aから出力される電流検出信号をMCU100(図2参照)に伝達するための回路である。
【0071】
送信回路TX2Aと受信回路RX2Aとの間には、誘導結合(磁気結合)した下層インダクタBL1Bと上層インダクタTL1BからなるトランスフォーマTR1Bが介在している。これにより、送信回路TX2Aから受信回路RX2Aに、トランスフォーマTR1Bを介して温度検出信号および電流検出信号を伝達することができる。この結果、MCU100(図2参照)は、トランスフォーマTR1Bを介して、温度検出部20Aから出力された温度検出信号および電流検出部30Aから出力された電流検出信号を受信することができる。
【0072】
このように、誘導結合を利用して電気的に絶縁したトランスフォーマTR1Bによって、温度検出部20Aおよび電流検出部30AからMCU100(図2参照)への電気的ノイズの伝達を抑制しながら、温度検出部20Aおよび電流検出部30AからMCU100(図2参照)に温度検出信号および電流検出信号を伝達することができる。このことから、温度検出信号および電流検出信号への電気的ノイズの重畳に起因するMCU100(図2参照)の誤動作を抑制することができる。これによって、第1半導体装置SA1の動作信頼性を向上することができる。
【0073】
トランスフォーマTR1Bを構成する下層インダクタBL1Bおよび上層インダクタTL1Bは、それぞれインダクタとして機能する。トランスフォーマTR1Bは、誘導結合した下層インダクタBL1Bと上層インダクタTL1Bからなる磁気結合素子として機能する。このように、トランスフォーマTR1Bは、下層インダクタBL1Bと上層インダクタTL1Bとにより構成されている。下層インダクタBL1Bと上層インダクタTL1Bとは、導体を介して繋がっておらず、磁気的に結合している。
【0074】
このことから、上層インダクタTL1Bに電流が流れると、その電流の変化に応じて下層インダクタBL1Bに誘導起電力が発生して誘導電流が流れる。このとき、上層インダクタTL1Bが一次コイルであり、下層インダクタBL1Bが二次コイルである。このように、トランスフォーマTR1Bは、下層インダクタBL1Bと上層インダクタTL1Bとの間に生じる電磁誘導現象を利用している。すなわち、送信回路TX2AからトランスフォーマTR1Bの上層インダクタTL1Bに信号を送って電流を流した結果、トランスフォーマTR1Bの下層インダクタBL1Bに生じた誘導電流を受信回路RX2Aで検知する。これにより、受信回路RX2Aは送信回路TX2Aから出力された温度検出信号および電流検出信号を受信できる。
【0075】
以上のように、送信回路TX2AからトランスフォーマTR1Bを経由して受信回路RX2Aに至る経路によって、温度検出部20Aおよび電流検出部30AからMCU100(図2参照)への温度検出信号および電流検出信号の送信が行なわれる。すなわち、送信回路TX2Aが送信した温度検出信号および電流検出信号を受信回路RX2Aが受信することにより、温度検出部20Aおよび電流検出部30AからMCU100(図2参照)への温度検出信号および電流検出信号の送信を行うことができる。
【0076】
これにより、MCU100(図2参照)は、順方向電圧降下を示す温度検出信号に基づいて、IGBTチップの温度を検出することができる。具体的に、温度検知ダイオードの順方向電圧降下は温度依存性を有する。そのため、例えば、MCU100(図2参照)は、温度検知ダイオードに一定電流を流した際における順方向電圧降下を示す温度検出信号に基づいて、間接的に温度を検出することができる。また、MCU100(図2参照)は、センストランジスタを流れるセンス電流を示す電流検出信号と予め取得しているセンス比(メイン電流:センス電流)とに基づいて、ハイサイド用IGBT10A(メイントランジスタ)を流れるメイン電流を検出することができる。
【0077】
以上のようにして、第1半導体装置SA1が構成されている。
【0078】
<<<2チップ構成>>>
ハイサイド部HSUを有する第1半導体装置SA1は、例えば、2つの半導体チップから構成されている。具体的に、図4に示すように、半導体チップCHP1Aには、送信回路TX1AとトランスフォーマTR1Aと受信回路RX2Aとが形成されている。
【0079】
一方、半導体チップCHP2Aには、受信回路RX1Aとハイサイド用ゲートドライバGD1と送信回路TX2AとトランスフォーマTR1Bと温度検出部20Aと電流検出部30Aとが形成されている。
【0080】
このような2チップ構成では、例えば、トランスフォーマTR1Aが送信回路TX1Aと受信回路RX2Aと同一の半導体チップCHP1Aに形成される。したがって、トランスフォーマTR1Aと送信回路TX1Aと受信回路RX2Aの集積化が可能となる。
【0081】
同様に、トランスフォーマTR1Bがハイサイド用ゲートドライバGD1と受信回路RX1Aと送信回路TX2Aと温度検出部20Aと電流検出部30Aと同一の半導体チップCHP2Aに形成される。このため、トランスフォーマTR1Bとハイサイド用ゲートドライバGD1と受信回路RX1Aと送信回路TX2Aと温度検出部20Aと電流検出部30Aの集積化が可能となる。
【0082】
ここで、例えば、半導体チップCHP1Aにおいては、送信回路TX1Aと受信回路RX2Aとが形成される。そのため、半導体チップCHP1Aには、送信回路TX1Aや受信回路RX2Aを構成するトランジスタが形成される。
【0083】
同様に、半導体チップCHP2Aにおいても、ハイサイド用ゲートドライバGD1と受信回路RX1Aと送信回路TX2Aと温度検出部20Aと電流検出部30Aが形成される。そのため、半導体チップCHP2Aにも、ハイサイド用ゲートドライバGD1や受信回路RX1Aや送信回路TX2Aや温度検出部20Aや電流検出部30Aを構成するトランジスタが形成される。したがって、半導体チップCHP1Aにおいては、トランスフォーマTR1Aとトランジスタとが一緒に形成される。同様に、半導体チップCHP2Aにおいても、トランスフォーマTR1Bとトランジスタとが一緒に形成される。
【0084】
<<第2半導体装置の機能ブロック構成>>
図5は、ゲート制御回路GCCのローサイド部LSUを有する第2半導体装置SA2の構成を示すブロック図である。
【0085】
図5に示すように、第2半導体装置SA2は、送信回路TX1Bと、トランスフォーマTR2Aと、受信回路RX1Bと、ローサイド用ゲートドライバGD2と、を有している。
【0086】
ここで、送信回路TX1Bは、図2に示すMCU100と電気的に接続されている。そして、送信回路TX1Bおよび受信回路RX1Bのそれぞれは、トランスフォーマTR2Aと電気的に接続されている。具体的に、トランスフォーマTR2Aは、下層インダクタBL2Aと上層インダクタTL2Aとを有する。送信回路TX1Bは、下層インダクタBL2Aと電気的に接続されている。一方、受信回路RX1Bは、上層インダクタTL2Aと電気的に接続されている。さらに、受信回路RX1Bは、ローサイド用ゲートドライバGD2と電気的に接続されている。ローサイド用ゲートドライバGD2は、図2に示すローサイド用IGBT10Bのゲート電極と電気的に接続されている。
【0087】
送信回路TX1Bおよび受信回路RX1Bは、MCU100(図2参照)から出力される制御信号をローサイド用ゲートドライバGD2に伝達するための回路である。
【0088】
送信回路TX1Bと受信回路RX1Bとの間には、誘導結合(磁気結合)した下層インダクタBL2Aと上層インダクタTL2AからなるトランスフォーマTR2Aが介在している。これにより、送信回路TX1Bから受信回路RX1Bに、トランスフォーマTR2Aを介して制御信号を伝達することができる。この結果、ローサイド用ゲートドライバGD2は、トランスフォーマTR2Aを介して、MCU100(図2参照)から出力された制御信号を受信することができる。
【0089】
このように、誘導結合を利用して電気的に絶縁したトランスフォーマTR2Aによって、MCU100(図2参照)からローサイド用ゲートドライバGD2への電気的ノイズの伝達を抑制しながら、MCU100(図2参照)からローサイド用ゲートドライバGD2に制御信号を伝達することができる。このことから、制御信号への電気的ノイズの重畳に起因するローサイド用ゲートドライバGD2の誤動作を抑制することができ、これによって、第2半導体装置SA2の動作信頼性を向上することができる。
【0090】
トランスフォーマTR2Aを構成する下層インダクタBL2Aおよび上層インダクタTL2Aは、それぞれインダクタとして機能する。トランスフォーマTR2Aは、誘導結合した下層インダクタBL2Aと上層インダクタTL2Aからなる磁気結合素子として機能する。このように、トランスフォーマTR2Aは、下層インダクタBL2Aと上層インダクタTL2Aとにより構成されている。下層インダクタBL2Aと上層インダクタTL2Aとは、導体を介して繋がっておらず、磁気的に結合している。
【0091】
このことから、下層インダクタBL2Aに電流が流れると、その電流の変化に応じて上層インダクタTL2Aに誘導起電力が発生して誘導電流が流れる。このとき、下層インダクタBL2Aが一次コイルであり、上層インダクタTL2Aが二次コイルである。このように、トランスフォーマTR2Aは、下層インダクタBL2Aと上層インダクタTL2Aとの間に生じる電磁誘導現象を利用している。すなわち、送信回路TX1BからトランスフォーマTR2Aの下層インダクタBL2Aに信号を送って電流を流した結果、トランスフォーマTR2Aの上層インダクタTL2Aに生じた誘導電流を受信回路RX1Bで検知することにより、受信回路RX1Bは送信回路TX1Bから出力された制御信号に対応した信号を受信できる。
【0092】
以上のように、送信回路TX1BからトランスフォーマTR2Aを経由して受信回路RX1Bに至る経路によって、MCU100(図2参照)からローサイド用ゲートドライバGD2への制御信号の送信が行なわれる。すなわち、送信回路TX1Bが送信した制御信号を受信回路RX1Bが受信することにより、MCU100(図2参照)からローサイド用ゲートドライバGD2への制御信号の送信を行うことができる。これにより、ローサイド用ゲートドライバGD2は、MCU100(図2参照)から送信された制御信号に応じて、3相誘導モータMT(図2参照)を動作させるためのインバータINV(図2参照)の構成要素であるローサイド用IGBT10Bのオン/オフ制御を行なうことができる。
【0093】
続いて、第2半導体装置SA2は、温度検出部20Bと、電流検出部30Bと、送信回路TX2Bと、トランスフォーマTR2Bと、受信回路RX2Bと、を有している。
【0094】
ここで、受信回路RX2Bは、図2に示すMCU100と電気的に接続されている。そして、受信回路RX2Bおよび送信回路TX2Bのそれぞれは、トランスフォーマTR2Bと電気的に接続されている。具体的に、トランスフォーマTR2Bは、下層インダクタBL2Bと上層インダクタTL2Bとを有する。受信回路RX2Bは、下層インダクタBL2Bと電気的に接続されている。一方、送信回路TX2Bは、上層インダクタTL2Bと電気的に接続されている。さらに、送信回路TX2Bは、温度検出部20Bおよび電流検出部30Bと電気的に接続されている。
【0095】
そして、温度検出部20Bは、図2に示すインバータINVに内蔵されている温度検知ダイオードと電気的に接続されている。すなわち、図2に示すローサイド用IGBT10Bが形成されているIGBTチップには、ローサイド用IGBT10Bとともに温度検知ダイオードも形成されている。温度検出部20Bは、この温度検知ダイオードと電気的に接続されている。一方、電流検出部30Bは、ローサイド用IGBT10B(メイントランジスタ)を流れる電流を検出するセンストランジスタと電気的に接続されている。すなわち、ローサイド用IGBT10Bが形成されているIGBTチップには、メイントランジスタであるローサイド用IGBT10Bとともにセンストランジスタも形成されている。電流検出部30Bは、このセンストランジスタと電気的に接続されている。
【0096】
温度検出部20Bは、IGBTチップに形成されている温度検知ダイオードの順方向電圧降下を検出するように構成されている。この温度検出部20Bから送信回路TX2Bに順方向電圧降下を示す温度検出信号が出力される。
【0097】
電流検出部30Bは、IGBTチップに形成されているセンストランジスタを流れるセンス電流を検出するように構成されている。この電流検出部30Bから送信回路TX2Bにセンス電流を示す電流検出信号が出力される。
【0098】
送信回路TX2Bおよび受信回路RX2Bは、温度検出部20Bから出力される温度検出信号および電流検出部30Bから出力される電流検出信号をMCU100(図2参照)に伝達するための回路である。
【0099】
送信回路TX2Bと受信回路RX2Bとの間には、誘導結合(磁気結合)した下層インダクタBL2Bと上層インダクタTL2BからなるトランスフォーマTR2Bが介在している。これにより、送信回路TX2Bから受信回路RX2Bに、トランスフォーマTR2Bを介して温度検出信号および電流検出信号を伝達することができる。この結果、MCU100(図2参照)は、トランスフォーマTR2Bを介して、温度検出部20Bから出力された温度検出信号および電流検出部30Bから出力された電流検出信号を受信することができる。
【0100】
このように、誘導結合を利用して電気的に絶縁したトランスフォーマTR2Bによって、温度検出部20Bおよび電流検出部30BからMCU100(図2参照)への電気的ノイズの伝達を抑制しながら、温度検出部20Bおよび電流検出部30BからMCU100(図2参照)に温度検出信号および電流検出信号を伝達することができる。このことから、温度検出信号および電流検出信号への電気的ノイズの重畳に起因するMCU100(図2参照)の誤動作を抑制することができる。これによって、第2半導体装置SA2の動作信頼性を向上することができる。
【0101】
トランスフォーマTR2Bを構成する下層インダクタBL2Bおよび上層インダクタTL2Bは、それぞれインダクタとして機能する。トランスフォーマTR2Bは、誘導結合した下層インダクタBL2Bと上層インダクタTL2Bからなる磁気結合素子として機能する。このように、トランスフォーマTR2Bは、下層インダクタBL2Bと上層インダクタTL2Bとにより構成されている。下層インダクタBL2Bと上層インダクタTL2Bとは、導体によっては繋がっておらず、磁気的に結合している。
【0102】
このことから、上層インダクタTL2Bに電流が流れると、その電流の変化に応じて下層インダクタBL2Bに誘導起電力が発生して誘導電流が流れる。このとき、上層インダクタTL2Bが一次コイルであり、下層インダクタBL2Bが二次コイルである。このように、トランスフォーマTR2Bは、下層インダクタBL2Bと上層インダクタTL2Bとの間に生じる電磁誘導現象を利用している。すなわち、送信回路TX2BからトランスフォーマTR2Bの上層インダクタTL2Bに信号を送って電流を流した結果、トランスフォーマTR2Bの下層インダクタBL2Bに生じた誘導電流を受信回路RX2Bで検知することにより、受信回路RX2Bは送信回路TX2Bから出力された温度検出信号および電流検出信号を受信できる。
【0103】
以上のように、送信回路TX2BからトランスフォーマTR2Bを経由して受信回路RX2Bに至る経路によって、温度検出部20Bおよび電流検出部30BからMCU100(図2参照)への温度検出信号および電流検出信号の送信が行なわれる。すなわち、送信回路TX2Bが送信した温度検出信号および電流検出信号を受信回路RX2Bが受信することにより、温度検出部20Bおよび電流検出部30BからMCU100(図2参照)への温度検出信号および電流検出信号の送信を行うことができる。
【0104】
これにより、MCU100(図2参照)は、順方向電圧降下を示す温度検出信号に基づいて、IGBTチップの温度を検出することができる。具体的に、温度検知ダイオードの順方向電圧降下は温度依存性を有する。そのため、例えば、MCU100(図2参照)は、温度検知ダイオードに一定電流を流した際における順方向電圧降下を示す温度検出信号に基づいて、間接的に温度を検出することができる。また、MCU100(図2参照)は、センストランジスタを流れるセンス電流を示す電流検出信号と予め取得しているセンス比(メイン電流:センス電流)とに基づいて、ローサイド用IGBT10B(メイントランジスタ)を流れるメイン電流を検出することができる。
【0105】
以上のようにして、第2半導体装置SA2が構成されている。
【0106】
<<<2チップ構成>>>
ローサイド部LSUを有する第2半導体装置SA2は、例えば、2つの半導体チップから構成されている。具体的に、図5に示すように、半導体チップCHP1Bには、送信回路TX1BとトランスフォーマTR2Aと受信回路RX2Bとが形成されている。
【0107】
一方、半導体チップCHP2Bには、受信回路RX1Bとローサイド用ゲートドライバGD2と送信回路TX2BとトランスフォーマTR2Bと温度検出部20Bと電流検出部30Bとが形成されている。
【0108】
このような2チップ構成では、例えば、トランスフォーマTR2Aが送信回路TX1Bと受信回路RX2Bと同一の半導体チップCHP1Bに形成される。したがって、トランスフォーマTR2Aと送信回路TX1Bと受信回路RX2Bの集積化が可能となる。
【0109】
同様に、トランスフォーマTR2Bがローサイド用ゲートドライバGD2と受信回路RX1Bと送信回路TX2Bと温度検出部20Bと電流検出部30Bと同一の半導体チップCHP2Bに形成される。このため、トランスフォーマTR2Bとローサイド用ゲートドライバGD2と受信回路RX1Bと送信回路TX2Bと温度検出部20Bと電流検出部30Bの集積化が可能となる。
【0110】
ここで、例えば、半導体チップCHP1Bにおいては、送信回路TX1Bと受信回路RX2Bとが形成される。そのため、半導体チップCHP1Bには、送信回路TX1Bや受信回路RX2Bを構成するトランジスタが形成される。
【0111】
同様に、半導体チップCHP2Bにおいても、ローサイド用ゲートドライバGD2と受信回路RX1Bと送信回路TX2Bと温度検出部20Bと電流検出部30Bが形成される。そのため、半導体チップCHP2Bにも、ローサイド用ゲートドライバGD2や受信回路RX1Bや送信回路TX2Bや温度検出部20Bや電流検出部30Bを構成するトランジスタが形成される。したがって、半導体チップCHP1Bにおいては、トランスフォーマTR2Aとトランジスタとが一緒に形成される。同様に、半導体チップCHP2Bにおいても、トランスフォーマTR2Bとトランジスタとが一緒に形成される。
【0112】
<<第1半導体装置の構成>>
次に、第1半導体装置SA1の構成について説明する。
【0113】
図6は、第1半導体装置SA1の構成を示す断面図である。
【0114】
図6において、第1半導体装置SA1は、半導体チップCHP1Aと半導体チップCHP2Aを有している。すなわち、半導体装置SA1は、2チップ構成をしている。半導体チップCHP1Aは、例えば、チップ搭載部であるダイパッドDP1A上に導電性接着材PST1Aを介して搭載される。一方、半導体チップCHP2Aは、例えば、チップ搭載部であるダイパッドDP2A上に導電性接着材PST2Aを介して搭載される。
【0115】
ここで、ダイパッドDP1AおよびダイパッドDP2Aのそれぞれは、例えば、銅材から構成されている。また、導電性接着材PST1Aおよび導電性接着材PST2Aのそれぞれは、例えば、銀ペーストや半田から構成されている。
【0116】
半導体チップCHP1Aには、図4に示す送信回路TX1Aや受信回路RX2AやトランスフォーマTR1Aが形成されている。この半導体チップCHP1Aは、図6に示すように、半導体基板SUB1Aと、半導体基板SUB1A上に形成された多層配線層MWL1Aを有している。半導体基板SUB1Aには、複数のトランジスタQAが形成されている。複数のトランジスタQAが形成された半導体基板SUB1Aの上方に多層配線層MWL1Aが形成されている。多層配線層MWL1Aの最下層は、半導体基板SUB1Aと接している。
【0117】
多層配線層MWL1Aでは、複数の層間絶縁膜と複数の配線が積層されている。そして、多層配線層MWL1Aのそれぞれの層には、配線が形成されている。この配線は、トランジスタQAと電気的に接続されている。互いに電気的に接続されたトランジスタQAと配線によって、送信回路TX1Aや受信回路RX2Aが構成されている。
【0118】
多層配線層MWL1Aには、配線だけでなく、トランスフォーマTR1Aの構成要素である下層インダクタBL1Aも形成されている。下層インダクタBL1Aは、例えば、渦巻き状の配線からなる。
【0119】
続いて、図6に示すように、半導体チップCHP1Aにおいては、多層配線層MWL1Aの最上層と接するように配線および絶縁膜IF1Aが形成されている。さらに、多層配線層MWL1Aの最上層と接するように、多層配線層MWL1Aの上面上にトランスフォーマTR1Aの構成要素である上層インダクタTL1Aが設けられている。つまり、多層配線層MWL1Aは、上層インダクタTL1Aと半導体基板SUB1Aの間に設けられている。
【0120】
そして、多層配線層MWL1Aの最上層と接するように形成されているパッドを含む配線上、上層インダクタTL1A上および絶縁膜IF1A上には、無機絶縁膜40aが形成されている。この無機絶縁膜40a上に有機絶縁膜50aが形成されている。
【0121】
ここで、無機絶縁膜40aは、窒化シリコン膜から構成されている。一方、有機絶縁膜50aは、ポリイミド樹脂膜から構成されている。
【0122】
このとき、有機絶縁膜50aおよび無機絶縁膜40aには、上層インダクタTL1Aの構成要素であるパッドの表面を露出するために、有機絶縁膜50aおよび無機絶縁膜40aを貫通するようにパッド開口部60aが設けられている。
【0123】
次に、半導体チップCHP2Aには、図4に示すハイサイド用ゲートドライバGD1、受信回路RX1A、送信回路TX2A、温度検出部20Aおよび電流検出部30Aが形成されている。この半導体チップCHP2Aは、図6に示すように、半導体基板SUB2Aと、半導体基板SUB2A上に形成された多層配線層MWL2Aを有している。
【0124】
半導体基板SUB2Aには、複数のトランジスタQBが形成されている。複数のトランジスタQBが形成された半導体基板SUB2Aの上方に多層配線層MWL2Aが形成されている。多層配線層MWL2Aでは、複数の層間絶縁膜と複数の配線が積層されている。そして、多層配線層MWL2Aのそれぞれの層には、配線が形成されている。この配線は、トランジスタQBと電気的に接続されている。互いに電気的に接続されたトランジスタQBと配線によって、ハイサイド用ゲートドライバGD1、受信回路RX1A、送信回路TX2A、温度検出部20Aおよび電流検出部30Aが構成されている。
【0125】
そして、多層配線層MWL2Aの最上層と接するようにパッドを含む配線および絶縁膜IF2Aが形成されている。さらに、多層配線層MWL2Aの最上層と接するように形成されているパッドを含む配線上および絶縁膜IF2A上には、無機絶縁膜40bが形成されている。この無機絶縁膜40b上に有機絶縁膜50bが形成されている。
【0126】
ここで、無機絶縁膜40bは、窒化シリコン膜から構成されている。一方、有機絶縁膜50bは、ポリイミド樹脂膜から構成されている。このとき、有機絶縁膜50bおよび無機絶縁膜40bには、パッドの表面を露出するために、有機絶縁膜50bおよび無機絶縁膜40bを貫通するようにパッド開口部60bが設けられている。
【0127】
次に、図6に示すように、半導体チップCHP1Aに設けられている上層インダクタTL1Aは、例えば、ボンディングワイヤW1を介して、半導体チップCHP2Aの多層配線層MWL2Aの最上層と接するように配置されている配線(パッド)と電気的に接続されている。具体的には、パッド開口部60aから露出する上層インダクタTL1Aの構成要素であるパッドと、パッド開口部60bから露出するパッドとがボンディングワイヤW1を介して接続される。半導体チップCHP1Aに設けられている上層インダクタTL1Aは、例えば、パッドと、パッドと接続された渦巻き状の配線からなる。
【0128】
このように構成されている半導体チップCHP1Aおよび半導体チップCHP2Aは、例えば、エポキシ樹脂から構成されるモールド樹脂MR1で覆われている。以上のようにして、具現化態様1における2チップ構成の第1半導体装置SA1が構成されている。
【0129】
さらに、具現化態様1における第1半導体装置SA1の構成について説明する。
【0130】
図6に示すように、半導体チップCHP1Aには、異電位間の非接触通信を行うトランスフォーマTR1A(図4参照)の構成要素である上層インダクタTL1Aが設けられている。このとき、上層インダクタTL1Aは、半導体チップCHP2Aに設けられている多層配線層MWL2Aに存在する配線と電気的に接続されている。上層インダクタTL1Aには、約800V程度の基準電位である第2電位が印加される。具体的に、具現化態様1における第1半導体装置SA1は、上層インダクタTL1Aに第2電位を印加する回路(第2回路部)を有する半導体チップCHP2Aを含んでいる。半導体チップCHP1Aに設けられた上層インダクタTL1Aは、導電性部材の一例であるボンディングワイヤW1を介して、半導体チップCHP2Aに設けられた回路と電気的に接続されている。これにより、上層インダクタTL1Aには、半導体チップCHP2Aに設けられた回路から出力された第2電位が印加される。
【0131】
また、半導体チップCHP1Aには、下層インダクタBL1Aが設けられているとともに、下層インダクタBL1Aに約0V程度の基準電位である第1電位を印加する回路(第1回路部)も有している。これにより、下層インダクタBL1Aには、半導体チップCHP1Aに設けられた回路から出力された第1電位が印加される。この結果、上層インダクタTL1Aには、第2電位が印加される一方、下層インダクタBL1Aには、第1電位が印加される。
【0132】
ここで、上層インダクタTL1Aは、半導体チップCHP1Aの厚さ方向において、第2電位とは異なる第1電位が印加される下層インダクタBL1Aと磁気結合可能に設けられている。具体的に、上層インダクタTL1Aが多層配線層MWL1Aの最上層と接するように設けられている一方、下層インダクタBL1Aが多層配線層MWL1Aに設けられている。これにより、上層インダクタTL1Aと下層インダクタBL1Aは、互いに磁気結合可能に構成される。
【0133】
<<第2半導体装置の構成>>
続いて、第2半導体装置SA2の構成について説明する。
【0134】
図7は、第2半導体装置SA2の構成を示す断面図である。
【0135】
図7において、第2半導体装置SA2は、半導体チップCHP1Bと半導体チップCHP2Bを有している。すなわち、半導体装置SA2は、2チップ構成をしている。半導体チップCHP1Bは、例えば、チップ搭載部であるダイパッドDP1B上に導電性接着材PST1Bを介して搭載される。一方、半導体チップCHP2Bは、例えば、チップ搭載部であるダイパッドDP2B上に導電性接着材PST2Bを介して搭載される。
【0136】
ここで、ダイパッドDP1BおよびダイパッドDP2Bのそれぞれは、例えば、銅材から構成されている。また、導電性接着材PST1Bおよび導電性接着材PST2Bのそれぞれは、例えば、銀ペーストや半田から構成されている。
【0137】
半導体チップCHP1Bには、図5に示す送信回路TX1Bや受信回路RX2BやトランスフォーマTR2Aが形成されている。この半導体チップCHP1Bは、図7に示すように、半導体基板SUB1Bと、半導体基板SUB1B上に形成された多層配線層MWL1Bを有している。半導体基板SUB1Bには、複数のトランジスタQCが形成されている。複数のトランジスタQCが形成された半導体基板SUB1Bの上方に多層配線層MWL1Bが形成されている。多層配線層MWL1Bの最下層は、半導体基板SUB1Bと接している。
【0138】
多層配線層MWL1Bでは、複数の層間絶縁膜と複数の配線が積層されている。そして、多層配線層MWL1Bのそれぞれの層には、配線が形成されている。この配線は、トランジスタQCと電気的に接続されている。互いに電気的に接続されたトランジスタQCと配線によって、送信回路TX1Bや受信回路RX2Bが構成されている。
【0139】
多層配線層MWL1Bには、配線だけでなく、トランスフォーマTR2Aの構成要素である下層インダクタBL2Aも形成されている。下層インダクタBL2Aは、例えば、渦巻き状の配線からなる。
【0140】
続いて、図7に示すように、半導体チップCHP1Bにおいては、多層配線層MWL1Bの最上層と接するように配線および絶縁膜IF1Bが形成されている。さらに、多層配線層MWL1Bの最上層と接するように、多層配線層MWL1Bの上面上にトランスフォーマTR2Aの構成要素である上層インダクタTL2Aが設けられている。つまり、多層配線層MWL1Bは、上層インダクタTL2Aと半導体基板SUB1Bの間に設けられている。
【0141】
そして、多層配線層MWL1Bの最上層と接するように形成されているパッドを含む配線上、上層インダクタTL2A上および絶縁膜IF1B上には、無機絶縁膜40cが形成されている。この無機絶縁膜40c上に有機絶縁膜50cが形成されている。
【0142】
ここで、無機絶縁膜40cは、窒化シリコン膜から構成されている。一方、有機絶縁膜50cは、ポリイミド樹脂膜から構成されている。
【0143】
このとき、有機絶縁膜50cおよび無機絶縁膜40cには、上層インダクタTL2Aの構成要素であるパッドの表面を露出するために、有機絶縁膜50cおよび無機絶縁膜40cを貫通するようにパッド開口部60cが設けられている。
【0144】
次に、半導体チップCHP2Bには、図5に示すローサイド用ゲートドライバGD2、受信回路RX1B、送信回路TX2B、温度検出部20Bおよび電流検出部30Bが形成されている。この半導体チップCHP2Bは、図7に示すように、半導体基板SUB2Bと、半導体基板SUB2B上に形成された多層配線層MWL2Bを有している。
【0145】
半導体基板SUB2Bには、複数のトランジスタQDが形成されている。複数のトランジスタQDが形成された半導体基板SUB2Bの上方に多層配線層MWL2Bが形成されている。多層配線層MWL2Bでは、複数の層間絶縁膜と複数の配線が積層されている。そして、多層配線層MWL2Bのそれぞれの層には、配線が形成されている。この配線は、トランジスタQDと電気的に接続されている。互いに電気的に接続されたトランジスタQDと配線によって、ローサイド用ゲートドライバGD2、受信回路RX1B、送信回路TX2B、温度検出部20Bおよび電流検出部30Bが構成されている。
【0146】
そして、多層配線層MWL2Bの最上層と接するようにパッドを含む配線および絶縁膜IF2Bが形成されている。さらに、多層配線層MWL2Bの最上層と接するように形成されているパッドを含む配線上および絶縁膜IF2B上には、無機絶縁膜40dが形成されている。この無機絶縁膜40d上に有機絶縁膜50dが形成されている。
【0147】
ここで、無機絶縁膜40dは、窒化シリコン膜から構成されている。一方、有機絶縁膜50dは、ポリイミド樹脂膜から構成されている。このとき、有機絶縁膜50dおよび無機絶縁膜40dには、パッドの表面を露出するために、有機絶縁膜50dおよび無機絶縁膜40dを貫通するようにパッド開口部60dが設けられている。
【0148】
次に、図7に示すように、半導体チップCHP1Bに設けられている上層インダクタTL2Aは、例えば、ボンディングワイヤW2を介して、半導体チップCHP2Bの多層配線層MWL2Bの最上層と接するように配置されている配線(パッド)と電気的に接続されている。具体的には、パッド開口部60cから露出する上層インダクタTL2Aの構成要素であるパッドと、パッド開口部60dから露出するパッドとがボンディングワイヤW2を介して接続される。半導体チップCHP1Bに設けられている上層インダクタTL2Aは、例えば、パッドと、パッドと接続された渦巻き状の配線からなる。
【0149】
このように構成されている半導体チップCHP1Bおよび半導体チップCHP2Bは、例えば、エポキシ樹脂から構成されるモールド樹脂MR2で覆われている。以上のようにして、具現化態様1における2チップ構成の第2半導体装置SA2が構成されている。
【0150】
さらに、具現化態様1における第2半導体装置SA2の構成について説明する。
【0151】
図7に示すように、半導体チップCHP1Bには、異電位間の非接触通信を行うトランスフォーマTR2A(図5参照)の構成要素である上層インダクタTL2Aが設けられている。このとき、上層インダクタTL2Aは、半導体チップCHP2Bに設けられている多層配線層MWL2Bに存在する配線と電気的に接続されている。上層インダクタTL2Aには、約数十V程度の基準電位である第4電位が印加される。具体的に、具現化態様1における第2半導体装置SA2は、上層インダクタTL2Aに第4電位を印加する回路(第4回路部)を有する半導体チップCHP2Bを含んでいる。半導体チップCHP1Bに設けられた上層インダクタTL2Aは、導電性部材の一例であるボンディングワイヤW2を介して、半導体チップCHP2Bに設けられた回路と電気的に接続されている。これにより、上層インダクタTL2Aには、半導体チップCHP2Bに設けられた回路から出力された第4電位が印加される。
【0152】
また、半導体チップCHP1Bには、下層インダクタBL2Aが設けられているとともに、下層インダクタBL2Aに約0V程度の基準電位である第3電位を印加する回路(第3回路部)も有している。これにより、下層インダクタBL2Aには、半導体チップCHP1Bに設けられた回路から出力された第3電位が印加される。この結果、上層インダクタTL2Aには、第4電位が印加される一方、下層インダクタBL2Aには、第3電位が印加される。
【0153】
ここで、上層インダクタTL2Aは、半導体チップCHP1Bの厚さ方向において、第4電位とは異なる第3電位が印加される下層インダクタBL2Aと磁気結合可能に設けられている。具体的に、上層インダクタTL2Aが多層配線層MWL1Bの最上層と接するように設けられている一方、下層インダクタBL2Aが多層配線層MWL1Bに設けられている。これにより、上層インダクタTL2Aと下層インダクタBL2Aは、互いに磁気結合可能に構成される。
【0154】
<<電子装置の構成>>
次に、電子装置の構成について説明する。
【0155】
電子装置は、図6に示す第1半導体装置SA1と図7に示す第2半導体装置SA2とを有している。具体的に、電子装置は、半導体チップCHP1Aと半導体チップCHP2Aを備える第1半導体装置SA1と、半導体チップCHP1Bと半導体チップCHP2Bを備える第2半導体装置SA2とを含むように構成されている。
【0156】
ここで、半導体チップCHP1Aは、第1電位と第2電位との間の非接触通信を行うトランスフォーマTR1Aを有する。一方、半導体チップCHP1Bは、第3電位と第4電位との間の非接触通信を行うトランスフォーマTR2Aを有する。このとき、第1電位と第2電位との間の差は、第3電位と第4電位との間の差よりも大きい。したがって、トランスフォーマTR1Aの絶縁耐圧は、トランスフォーマTR2Aの絶縁耐圧よりも大きくする必要がある。言い換えれば、トランスフォーマTR2Aの絶縁耐圧は、トランスフォーマTR1Aの絶縁耐圧よりも低く設定することができる。
【0157】
トランスフォーマTR1Aは、下層インダクタBL1Aと、上層インダクタTL1Aと、下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとの間に介在する第1絶縁層と、を有する。このとき、第1絶縁層は、1層の絶縁層から構成されてもよいし、多層の絶縁層から構成されていてもよい。一方、トランスフォーマTR2Aは、下層インダクタBL2Aと、上層インダクタTL2Aと、下層インダクタBL2Aと上層インダクタTL2Aとの間に介在する第2絶縁層と、を有する。このとき、第2絶縁層も、1層の絶縁層から構成されてもよいし、多層の絶縁層から構成されていてもよい。
【0158】
ここで、図5および図7に示す下層インダクタBL2Aと上層インダクタTL2Aとの間の第2間隔(「B」)は、図4および図6に示す下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとの間の第1間隔(「A」)よりも小さい。
【0159】
別の観点から説明すると、図6において、半導体チップCHP1Aは、多層配線層MWL1A(第1多層配線層)を有する。そして、下層インダクタBL1Aは、多層配線層MWL1A内に形成されている。一方、上層インダクタTL1Aは、多層配線層MWL1A上に形成されている。これに対し、図7において、半導体チップCHP1Bは、多層配線層MWL1B(第2多層配線層)を有する。そして、下層インダクタBL2Aは、多層配線層MWL1B内に形成されている。一方、上層インダクタTL2Aは、多層配線層MWL1B上に形成されている。このとき、多層配線層MWL1Bの厚さは、多層配線層MWL1Aの厚さよりも小さい。
【0160】
電子装置EAは、例えば、図3に示すように、ハイサイド部HSUを構成する第1半導体装置SA1と、ローサイド部LSUを構成する第2半導体装置SA2を有する。
【0161】
このとき、ハイサイド部HSUは、第1電位を下層インダクタBL1Aに印加可能な第1回路部と、下層インダクタBL1Aおよび上層インダクタTL1Aを含むトランスフォーマTR1Aと、第2電位を上層インダクタTL1Aに印加可能な第2回路部を有する。一方、ローサイド部LSUは、第3電位を下層インダクタBL2Aに印加可能な第3回路部と、下層インダクタBL2Aおよび上層インダクタTL2Aを含むトランスフォーマTR2Aと、第4電位を上層インダクタTL2Aに印加可能な第4回路部を有する。
【0162】
ここで、例えば、図4および図6に示すように、第1半導体装置SA1は、半導体チップCHP1A(第1半導体チップ)と、半導体チップCHP2A(ハイサイドチップ)を有する2チップ構成をしている。第1回路部とトランスフォーマTR1Aは、半導体チップCHP1A(第1半導体チップ)に形成されている。一方、第2回路部は、半導体チップCHP2A(ハイサイドチップ)に形成されている。
【0163】
例えば、第1回路部は、図4に示す送信回路TX1Aから構成されている一方、第2回路部は、図4に示す受信回路RX1Aから構成されている。
【0164】
次に、図5および図7に示すように、第2半導体装置SA2は、半導体チップCHP1B(第2半導体チップ)と、半導体チップCHP2B(ローサイドチップ)を有する2チップ構成をしている。第3回路部とトランスフォーマTR2Aは、半導体チップCHP1B(第2半導体チップ)に形成されている。一方、第4回路部は、半導体チップCHP2B(ローサイドチップ)に形成されている。
【0165】
例えば、第3回路部は、図5に示す送信回路TX1Bから構成されている一方、第4回路部は、図5に示す受信回路RX1Bから構成されている。
【0166】
以上のようにして、電子装置EAが構成されている。
【0167】
<<具現化態様1における特徴>>
続いて、具現化態様1における特徴点について説明する。
【0168】
具現化態様1における特徴点は、例えば、図4および図5に示すように、ハイサイド部HSUに含まれるトランスフォーマTR1Aの構造と、ローサイド部LSUに含まれるトランスフォーマTR2Aの構造とを相違させる点にある。具現化態様1において、トランスフォーマTR1Aの構成要素である下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとの間の第1間隔を「A」とし、トランスフォーマTR2Aの構成要素である下層インダクタBL2Aと上層インダクタTL2Aとの間の第2間隔を「B」とする。この場合において、特徴点は、「B」が「A」よりも小さい点にある(図6および図7も参照)。
【0169】
これにより、具現化態様1における特徴点によれば、電子装置の製造コストを削減することができる。以下では、この点について説明する。
【0170】
例えば、低電位(数V)を取り扱うMCU100と高電位(数百V)を取り扱うハイサイド用ゲートドライバGD1との間に設けられるトランスフォーマTR1Aには、高い絶縁耐圧が要求される。一方、低電位(数V)を取り扱うMCU100と電位(数十V)を取り扱うローサイド用ゲートドライバGD2との間に設けられるトランスフォーマTR2Aには、トランスフォーマTR1Aよりも絶縁耐圧は要求されない。
【0171】
この点に関し、例えば、ハイサイド部HSUに設けられるトランスフォーマTR1Aの下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとの第1間隔と、ローサイド部LSUに設けられるトランスフォーマTR2Aの下層インダクタBL2Aと上層インダクタTL2Aとの第2間隔を等しくすることを考える。
【0172】
この場合、ハイサイド部HSUに設けられるトランスフォーマTR1Aの高い絶縁耐圧を確保できるように、互いに等しい第1間隔および第2間隔は、トランスフォーマTR1Aの高い絶縁耐圧を確保できる間隔に設計される。
【0173】
すると、ローサイド部LSUに設けられるトランスフォーマTR2Aにおいては、必要以上の絶縁耐圧が確保されることになる。すなわち、第1間隔と第2間隔を等しくすると、第2間隔は、絶縁耐圧を確保するために必要十分な間隔よりも大きくなる。その結果、ローサイド部LSUに設けられるトランスフォーマTR2Aの性能は過剰品質となる。言い換えれば、トランスフォーマTR2Aにおいては、必要以上の不必要な性能が付与される。つまり、要求される絶縁耐圧が異なるトランスフォーマTR1Aにおける第1間隔とトランスフォーマTR2Aにおける第2間隔を等しくすると、必然的に、要求の厳しい仕様にあわせてトランスフォーマにおける間隔が設計される。その結果、要求の緩やかなトランスフォーマTR2Aにおいて、必要以上の不要な性能が付加される。
【0174】
このことは、ローサイド部LSUに設けられる絶縁耐圧に関する要求の緩やかなトランスフォーマTR2Aの製造に余計な製造コストがかかることを意味する。したがって、第1間隔と第2間隔を等しく設計することは、ローサイド部LSUに設けられるトランスフォーマTR2Aの製造コスト、引いては、電子装置の製造コストを削減する観点から望ましいとは言えない。
【0175】
そこで、具現化態様1では、要求される絶縁耐圧が大きく異なるトランスフォーマTR1Aの構造とトランスフォーマTR2Aの構造を相違させることを前提としている。そして、具現化態様1では、それぞれに要求される絶縁耐圧を満足するために必要十分な性能を発揮できる構造をトランスフォーマTR1AおよびトランスフォーマTR2Aのそれぞれに採用している。具体的に、具現化態様1における特徴点は、ローサイド部LSUに設けられるトランスフォーマTR2Aの第2間隔(「B」)をハイサイド部HSUに設けられるトランスフォーマTR1Aの第1間隔(「A」)よりも小さくする構造を採用している点にある。この特徴点によって、上述した基本思想が具現化されている。
【0176】
この特徴点を具現化する結果、例えば、図6および図7に示すように、多層配線層MWL1Bの厚さは、多層配線層MWL1Aの厚さよりも小さくなる。これにより、多層配線層MWL1Bの厚さを薄くすることによる製造コスト削減を図ることができる。
【0177】
別の観点から説明すると、この特徴点を具現化する結果、例えば、多層配線層MWL1Bの層数を削減できる。このため、特徴点によれば、多層配線層MWL1Bの層数を削減することによる製造コスト削減を図ることができる。
【0178】
つまり、特徴点によれば、ローサイド部LSUに設けられるトランスフォーマTR2Aの構造として、絶縁耐圧に関する要求の厳しいトランスフォーマTR1Aの仕様にあわせて設計された構造(第1間隔A)が採用されるのではなく、トランスフォーマTR2Aに要求される絶縁耐圧を満足するために必要十分な性能を有する構造(第2間隔B)が採用される。このため、特徴点によれば、絶縁耐圧に関する要求の緩やかなトランスフォーマTR2Aに対して、必要以上の過剰性能が付加されることを抑制できる。そのため、電子装置の製造コストを低減することができる。
【0179】
<<特徴から派生した構成>>
上述した特徴点は、トランスフォーマTR2Aにおける下層インダクタBL2Aと上層インダクタTL2Aとの間の通信距離が、トランスフォーマTR1Aにおける下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとの間の通信距離よりも短いことを意味する。
【0180】
したがって、ローサイド部LSUに設けられるトランスフォーマTR2Aの結合係数を、ハイサイド部HSUに設けられるトランスフォーマTR1Aの結合係数よりも小さくしても、トランスフォーマTR2Aでの通信品質を確保することができる。
【0181】
つまり、上述した特徴点を採用すると、ローサイド部LSUに設けられるトランスフォーマTR2Aの結合係数を、ハイサイド部HSUに設けられるトランスフォーマTR1Aの結合係数よりも小さくすることができる。そのため、結合係数を小さくする構成を採用することによって、さらなる製造コストの削減を図ることができる。
【0182】
以下では、結合係数を小さくする構成について説明する。
【0183】
図8(a)は、ハイサイド部HSUに設けられるトランスフォーマTR1Aの構成要素である上層インダクタTL1Aの構成を示す模式図である。一方、図8(b)は、ローサイド部LSUに設けられるトランスフォーマTR2Aの構成要素である上層インダクタTL2Aの構成を示す模式図である。
【0184】
図8(a)において、上層インダクタTL1Aは、例えば、一対の差動配線に対応して、センタータップパッド1aと、インダクタ配線である渦巻配線1bと、トランスパッド1cと、インダクタ配線である渦巻配線1dと、トランスパッド1eを備えるように構成されている。これに対し、図8(b)において、上層インダクタTL2Aは、例えば、一対の差動配線に対応して、センタータップパッド2aと、インダクタ配線である渦巻配線2bと、トランスパッド2cと、インダクタ配線である渦巻配線2dと、トランスパッド2eを備えるように構成されている。
【0185】
ここで、例えば、トランスフォーマTR1Aでは、図8(a)に示す上層インダクタTL1Aの構成が採用されている。これに対し、ローサイド部LSUに設けられるトランスフォーマTR2Aの結合係数を、ハイサイド部HSUに設けられるトランスフォーマTR1Aの結合係数よりも小さくする。そのため、トランスフォーマTR2Aでは、図8(b)に示す上層インダクタTL2Aの構成が採用されている。
【0186】
(1)トランスフォーマTR2Aの結合係数をトランスフォーマTR1Aの結合係数よりも小さくするため、例えば、図8(b)に示す渦巻配線2bの巻き数は、図8(a)に示す渦巻配線1bの巻き数よりも少ない。また、図8(b)に示す渦巻配線2dの巻き数は、図8(a)に示す渦巻配線1dの巻き数よりも少ない。これにより、トランスフォーマTR2Aの結合係数は、トランスフォーマTR1Aの結合係数よりも小さくなるが、巻き数が少なくなる分だけトランスフォーマTR2Aの製造コストを削減できる。
【0187】
(2)トランスフォーマTR2Aの結合係数をトランスフォーマTR1Aの結合係数よりも小さくするため、例えば、図8(b)に示す渦巻配線2bの長さ(延在方向の長さ)は、図8(a)に示す渦巻配線1bの長さ(延在方向の長さ)よりも短い。また、図8(b)に示す渦巻配線2dの長さ(延在方向の長さ)は、図8(a)に示す渦巻配線1dの長さ(延在方向の長さ)よりも短い。これにより、トランスフォーマTR2Aの結合係数は、トランスフォーマTR1Aの結合係数よりも小さくなるが、長さが短くなる分だけトランスフォーマTR2Aの製造コストを削減できる。
【0188】
(3)トランスフォーマTR2Aの結合係数をトランスフォーマTR1Aの結合係数よりも小さくするため、例えば、図8(b)に示す渦巻配線2bの延在方向と直交する断面での断面積は、図8(a)に示す渦巻配線1bの延在方向と直交する断面での断面積よりも小さい。また、図8(b)に示す渦巻配線2dの延在方向と直交する断面での断面積は、図8(a)に示す渦巻配線1dの延在方向と直交する断面での断面積よりも小さい。これにより、トランスフォーマTR2Aの結合係数は、トランスフォーマTR1Aの結合係数よりも小さくなるが、チップサイズが小さくなる分だけトランスフォーマTR2Aの製造コストを削減できる。
【0189】
なお、ここでは、上層インダクタTL1Aと上層インダクタTL2Aを取り上げて、上層インダクタTL1Aの構成と、上層インダクタTL2Aの構成の相違点について説明した。同様の構成の相違点は、下層インダクタBL1Aの構成と下層インダクタBL2Aの構成にも適用することができる。特に、図8(a)の構成と図8(b)の構成の相違点を上層インダクタと下層インダクタの両方に適用することにより、さらなる製造コストの削減を図ることができる。
【0190】
<変形例1>
本変形例1では、容量結合した一対の電極を利用したコンデンサからアイソレータを構成する例について説明する。
【0191】
本変形例1における電子装置は、基本的に図6に示す第1半導体装置SA1と図7に示す第2半導体装置SA2とを有している。具体的に、電子装置は、半導体チップCHP1Aと半導体チップCHP2Aを備える第1半導体装置SA1と、半導体チップCHP1Bと半導体チップCHP2Bを備える第2半導体装置SA2とを含むように構成される。
【0192】
ここで、半導体チップCHP1Aは、第1電位と第2電位との間の非接触通信を行う第1コンデンサを有する。つまり、半導体チップCHP1Aは、図6に示す下層インダクタBL1Aに代わる第1下部電極と、図6に示す上層インダクタTL1Aに代わる第1上部電極から構成される第1コンデンサを有する。一方、半導体チップCHP1Bは、第3電位と第4電位との間の非接触通信を行う第2コンデンサを有する。つまり、半導体チップCHP1Bは、図7に示す下層インダクタBL2Aに代わる第2下部電極と、図7に示す上層インダクタTL2Aに代わる第2上部電極から構成される第2コンデンサを有する。
【0193】
このとき、第1電位と第2電位との間の差は、第3電位と第4電位との間の差よりも大きい。したがって、第1コンデンサの絶縁耐圧は、第2コンデンサの絶縁耐圧よりも大きくする必要がある。言い換えれば、第2コンデンサの絶縁耐圧は、第1コンデンサの絶縁耐圧よりも低く設定することができる。
【0194】
第1コンデンサは、第1下層電極と、第1上層電極と、第1下層電極と第1上層電極との間に介在する第1容量絶縁層を有する。このとき、第1容量絶縁層は、1層の絶縁層から構成されてもよいし、多層の絶縁層から構成されていてもよい。また、第1下層電極と第1上層電極とは、容量結合可能に構成されている。
【0195】
一方、第2コンデンサは、第2下層電極と、第2上層電極と、第2下層電極と第2上層電極との間に介在する第2容量絶縁層を有する。このとき、第2容量絶縁層も、1層の絶縁層から構成されてもよいし、多層の絶縁層から構成されていてもよい。また、第2下層電極と第2上層電極とは、容量結合可能に構成されている。
【0196】
ここで、第2下層電極と第2上層電極との間の第2電極間隔は、第1下層電極と第1上層電極との間の第1電極間隔よりも小さくなっている。
【0197】
別の観点から説明すると、図6において、半導体チップCHP1Aは、多層配線層MWL1A(第1多層配線層)を有する。そして、下層インダクタBL1Aに代わる第1下部電極は、多層配線層MWL1A内に形成されている。一方、上層インダクタTL1Aに代わる第1上部電極は、多層配線層MWL1A上に形成されている。
【0198】
これに対し、図7において、半導体チップCHP1Bは、多層配線層MWL1B(第2多層配線層)を有する。そして、下層インダクタBL2Aに代わる第2下部電極は、多層配線層MWL1B内に形成されている。一方、上層インダクタTL2Aに代わる第2上部電極は、多層配線層MWL1B上に形成されている。このとき、多層配線層MWL1Bの厚さは、多層配線層MWL1Aの厚さよりも小さい。
【0199】
電子装置EAは、例えば、図3に示すように、ハイサイド部HSUを構成する第1半導体装置SA1と、ローサイド部LSUを構成する第2半導体装置SA2を有する。
【0200】
このとき、ハイサイド部HSUは、第1電位を第1下層電極に印加可能な第1回路部と、第1下層電極および第1上層電極を含む第1コンデンサと、第2電位を第1上層電極に印加可能な第2回路部を有する。一方、ローサイド部LSUは、第3電位を第2下層電極に印加可能な第3回路部と、第2下層電極および第2上層電極を含む第2コンデンサと、第4電位を第2上層電極に印加可能な第4回路部を有する。
【0201】
ここで、例えば、第1半導体装置SA1は、半導体チップCHP1A(第1半導体チップ)と、半導体チップCHP2A(ハイサイドチップ)を有する2チップ構成をしている。第1回路部と第1コンデンサは、半導体チップCHP1A(第1半導体チップ)に形成されている。一方、第2回路部は、半導体チップCHP2A(ハイサイドチップ)に形成されている。例えば、第1回路部は、図4に示す送信回路TX1Aから構成されている。一方、第2回路部は、図4に示す受信回路RX1Aから構成されている。
【0202】
次に、第2半導体装置SA2は、半導体チップCHP1B(第2半導体チップ)と、半導体チップCHP2B(ローサイドチップ)を有する2チップ構成をしている。第3回路部と第2コンデンサは、半導体チップCHP1B(第2半導体チップ)に形成されている。一方、第4回路部は、半導体チップCHP2B(ローサイドチップ)に形成されている。例えば、第3回路部は、図5に示す送信回路TX1Bから構成されている。一方、第4回路部は、図5に示す受信回路RX1Bから構成されている。
【0203】
以上のようにして、本変形例1における電子装置EAが構成されている。
【0204】
本変形例1における特徴点は、例えば、ハイサイド部HSUに含まれる第1コンデンサの構造と、ローサイド部LSUに含まれる第2コンデンサの構造とを相違させる点にある。具体的に、第1コンデンサの構成要素である第1下層電極と第1上層電極との間の第1電極間隔を「C」とし、第2コンデンサの構成要素である第2下層電極と第2上層電極との間の第2電極間隔を「D」とする。この場合において、本変形例1における特徴点は、「D」が「C」よりも小さい点にある。これにより、本変形例1によれば、電子装置の製造コストを削減できる。別の表現をすると、例えば、本変形例1の基本構成を示す図6および図7において、多層配線層MWL1Bの厚さは、多層配線層MWL1Aの厚さよりも小さくなる。これにより、本変形例1によっても、多層配線層MWL1Bの厚さを薄くすることによる製造コスト削減を図ることができる。
【0205】
さらに、別の観点から説明すると、例えば、本変形例1によれば、多層配線層MWL1Bの層数を削減できる。このため、本変形例1によっても、多層配線層MWL1Bの層数を削減することによる製造コスト削減を図ることができる。
【0206】
上述した特徴点を採用すると、ローサイド部LSUに設けられる第2コンデンサの結合容量を、ハイサイド部HSUに設けられる第1コンデンサの結合容量よりも小さくすることができる。そのため、結合容量を小さくする構成を採用することによって、さらなる製造コストの削減を図ることができる。具体的には、第2コンデンサの結合容量を第1コンデンサの結合容量よりも小さくするため、例えば、第2下層電極の電極面積は、第1下層電極の電極面積よりも小さい。これにより、第2コンデンサの結合容量を第1コンデンサの結合容量よりも小さくすることが可能である。電極面積が少なくなることに起因して第2コンデンサの製造コストを削減することができる。ここで、「電極面積」とは、例えば、一対の第1下層電極と第1上層電極において、互いに対向する面の面積をいう。
【0207】
なお、ここでは、第1下層電極と第2下層電極を取り上げて、第1下層電極の構成と、第2下層電極の構成の相違点について説明した。同様の構成の相違点は、第1上層電極の構成と第2上層電極の構成にも適用することができる。特に、上述した構成の相違点を下層電極と上層電極の両方に適用することにより、製造コストを削減できる。
【0208】
<具現化態様2>
<<3チップ構成>>
上述した具現化態様1における第1半導体装置SA1および第2半導体装置SA2では、2チップ構成が採用されている。ただし、例えば、2チップ構成の第1半導体装置SA1では、トランスフォーマTR1Aと送信回路TX1Aと受信回路RX2Aとを1つの半導体チップに形成するため、半導体チップCHP1Aの製造プロセスが複雑化する。または、2チップ構成の第1半導体装置SA1では、トランスフォーマTR1Bとハイサイド用ゲートドライバGD1と受信回路RX1Aと送信回路TX2Aと温度検出部20Aと電流検出部30Aを1つの半導体チップに形成するため、半導体チップCHP2Aの製造プロセスが複雑化する。この結果、半導体チップCHP1Aおよび半導体チップCHP2Aの製造コストが上昇することがある。
【0209】
同様に、例えば、2チップ構成の第2半導体装置SA2では、例えば、トランスフォーマTR2Aと送信回路TX1Bと受信回路RX2Bとを1つの半導体チップに形成するため、半導体チップCHP1Bの製造プロセスが複雑化する。または、2チップ構成の第2半導体装置SA2では、トランスフォーマTR2Bとローサイド用ゲートドライバGD2と受信回路RX1Bと送信回路TX2Bと温度検出部20Bと電流検出部30Bを1つの半導体チップに形成するため、半導体チップCHP2Bの製造プロセスが複雑化する。この結果、半導体チップCHP1Bおよび半導体チップCHP2Bの製造コストが上昇することがある。
【0210】
そこで、上述した第1半導体装置SA1および第2半導体装置SA2のそれぞれを2チップ構成から構成するのではなく、3チップ構成から構成することが検討されている。以下では、新規な3チップ構成について説明する。
【0211】
図9は、3チップ構成の第1半導体装置SA1を示す図である。
【0212】
図9において、半導体チップCHP1Aには、送信回路TX1Aと受信回路RX2Aとが形成されている。また、半導体チップCHP2Aには、ハイサイド用ゲートドライバGD1と受信回路RX1Aと送信回路TX2Aと温度検出部20Aと電流検出部30Aが形成されている。一方、半導体チップCHP3Aには、トランスフォーマTR1AとトランスフォーマTR1Bとが形成されている。
【0213】
また、図10は、3チップ構成の第2半導体装置SA2を示す図である。
【0214】
図10において、半導体チップCHP1Bには、送信回路TX1Bと受信回路RX2Bとが形成されている。また、半導体チップCHP2Bには、ローサイド用ゲートドライバGD2と受信回路RX1Bと送信回路TX2Bと温度検出部20Bと電流検出部30Bが形成されている。一方、半導体チップCHP3Bには、トランスフォーマTR2AとトランスフォーマTR2Bとが形成されている。
【0215】
これにより、3チップ構成の第1半導体装置SA1は、トランスフォーマTR1AとトランスフォーマTR1Bだけが形成された半導体チップCHP3Aを有している。3チップ構成の第2半導体装置SA2は、トランスフォーマTR2AとトランスフォーマTR2Bだけが形成された半導体チップCHP3Bを有している。
【0216】
すなわち、3チップ構成の第1半導体装置SA1では、半導体チップCHP1Aおよび半導体チップCHP2Aの構成に関わらず、半導体チップCHP3Aを使用することができる。同様に、3チップ構成の第2半導体装置SA2では、半導体チップCHP1Bおよび半導体チップCHP2Bの構成に関わらず、半導体チップCHP3Bを使用することができる。このことから、3チップ構成の第1半導体装置SA1によれば、使用可能な半導体チップCHP1Aおよび半導体チップCHP2Aのバリエーションを増加させることができる。言い換えれば、トランスフォーマTR1AおよびトランスフォーマTR1Bが形成された半導体チップCHP3Aの汎用性を高めることができる。さらに、トランスフォーマTR1AおよびトランスフォーマTR1Bが形成された半導体チップCHP3Aは、トランジスタを含んでいない。このため、配線工程だけで半導体チップCHP3Aを形成することができる結果、製造プロセスの簡素化を図ることができる。したがって、3チップ構成の第1半導体装置SA1によれば、製造コストの削減が可能である。
【0217】
同様に、3チップ構成の第2半導体装置SA2によれば、使用可能な半導体チップCHP1Bおよび半導体チップCHP2Bのバリエーションを増加させることができる。言い換えれば、トランスフォーマTR2AおよびトランスフォーマTR2Bが形成された半導体チップCHP3Bの汎用性を高めることができる。さらに、トランスフォーマTR2AおよびトランスフォーマTR2Bが形成された半導体チップCHP3Bは、トランジスタを含んでいない。このため、配線工程だけで半導体チップCHP3Bを形成することができる結果、製造プロセスの簡素化を図ることができる。したがって、3チップ構成の第2半導体装置SA2によれば、製造コストの削減が可能である。
【0218】
なお、以下では、トランスフォーマTR1AおよびトランスフォーマTR1Bが形成された半導体チップCHP3Aを「第1トランスチップ」と呼ぶことがある。トランスフォーマTR2AおよびトランスフォーマTR2Bが形成された半導体チップCHP3Bを「第2トランスチップ」と呼ぶことがある。
【0219】
<<第1半導体装置の構成>>
図11は、具現化態様2における第1半導体装置SA1の構成を示す断面図である。
【0220】
図11において、第1半導体装置SA1は、半導体チップCHP1Aと半導体チップCHP2Aと半導体チップCHP3Aを有している。すなわち、図11に示す具現化態様2における第1半導体装置SA1は、3チップ構成をしている。
【0221】
半導体チップCHP1Aは、例えば、チップ搭載部であるダイパッドDP1A上に導電性接着材PST1Aを介して搭載されている。一方、半導体チップCHP2Aは、例えば、チップ搭載部であるダイパッドDP2A上に導電性接着材PST2Aを介して搭載されている。また、半導体チップCHP3Aは、例えば、チップ搭載部であるダイパッドDP3A上に導電性接着材PST3Aを介して搭載されている。
【0222】
ここで、ダイパッドDP1A、ダイパッドDP2AおよびダイパッドDP3Aは、例えば、銅材から構成されている。また、導電性接着材PST1A、導電性接着材PST2Aおよび導電性接着材PST3Aは、例えば、銀ペーストや半田から構成されている。
【0223】
半導体チップCHP1Aには、図9に示す送信回路TX1Aや受信回路RX2Aが形成されている。この半導体チップCHP1Aは、図11に示すように、半導体基板SUB1Aと、半導体基板SUB1A上に形成された多層配線層MWL1Aを有している。
【0224】
半導体基板SUB1Aには、複数のトランジスタQAが形成されている。複数のトランジスタQAが形成された半導体基板SUB1Aの上方に多層配線層MWL1Aが形成されている。多層配線層MWL1Aでは、複数の層間絶縁膜と複数の配線が積層されている。そして、多層配線層MWL1Aのそれぞれの層には、配線が形成されている。この配線は、トランジスタQAと電気的に接続されている。互いに電気的に接続されたトランジスタQAと配線によって、送信回路TX1Aや受信回路RX2Aが構成されている。
【0225】
続いて、図11に示すように、半導体チップCHP1Aにおいては、多層配線層MWL1Aの最上層と接するように配線および絶縁膜IF1Aが形成されている。そして、多層配線層MWL1Aの最上層と接するように形成されているパッドを含む配線上および絶縁膜IF1A上には、無機絶縁膜40aが形成されている。この無機絶縁膜40a上に有機絶縁膜50aが形成されている。ここで、無機絶縁膜40aは、窒化シリコン膜から構成されている。一方、有機絶縁膜50aは、ポリイミド樹脂膜から構成されている。
【0226】
次に、半導体チップCHP2Aには、図9に示す送信回路TX2Aと受信回路RX1Aとハイサイド用ゲートドライバGD1と温度検出部20Aと電流検出部30Aが形成されている。この半導体チップCHP2Aは、図11に示すように、半導体基板SUB2Aと、半導体基板SUB2A上に形成された多層配線層MWL2Aを有している。
【0227】
半導体基板SUB2Aには、複数のトランジスタQBが形成されている。複数のトランジスタQBが形成された半導体基板SUB2Aの上方に多層配線層MWL2Aが形成されている。多層配線層MWL2Aでは、複数の層間絶縁膜と複数の配線が積層されている。そして、多層配線層MWL2Aのそれぞれの層には、配線が形成されている。この配線は、トランジスタQBと電気的に接続されている。互いに電気的に接続されたトランジスタQBと配線によって、送信回路TX2Aと受信回路RX1Aとハイサイド用ゲートドライバGD1と温度検出部20Aと電流検出部30Aが構成されている。
【0228】
続いて、図11に示すように、半導体チップCHP2Aにおいては、多層配線層MWL2Aの最上層と接するように配線および絶縁膜IF2Aが形成されている。そして、多層配線層MWL2Aの最上層と接するように形成されているパッドを含む配線上および絶縁膜IF2A上には、無機絶縁膜40bが形成されている。この無機絶縁膜40b上に有機絶縁膜50bが形成されている。ここで、無機絶縁膜40bは、窒化シリコン膜から構成されている。一方、有機絶縁膜50bは、ポリイミド樹脂膜から構成されている。
【0229】
次に、半導体チップCHP3A(「第1トランスチップ」)には、図9に示すトランスフォーマTR1AやトランスフォーマTR1Bが形成されている。この半導体チップCHP3Aは、図11に示すように、半導体基板SUB3Aと、半導体基板SUB3A上に形成された多層配線層MWL3Aを有している。多層配線層MWL3Aの最下層は、半導体基板SUB3Aと接している。多層配線層MWL3Aには、配線だけでなく、トランスフォーマTR1Aの構成要素である下層インダクタBL1Aが形成されている。下層インダクタBL1Aは、例えば、渦巻き状の配線からなる。
【0230】
そして、図11に示すように、半導体チップCHP3Aにおいては、多層配線層MWL3Aの最上層と接するように配線および絶縁膜IF3Aが形成されている。さらに、多層配線層MWL3Aの最上層と接するように、多層配線層MWL3Aの上面上にトランスフォーマTR1Aの構成要素である上層インダクタTL1Aが設けられている。つまり、多層配線層MWL3Aは、上層インダクタTL1Aと半導体基板SUB3Aの間に設けられている。
【0231】
さらに、多層配線層MWL3Aの最上層と接するように形成されているパッドを含む配線上、上層インダクタTL1A上および絶縁膜IF3A上には、無機絶縁膜40eが形成されている。この無機絶縁膜40e上に有機絶縁膜50eが形成されている。ここで、無機絶縁膜40eは、窒化シリコン膜から構成されている。一方、有機絶縁膜50eは、ポリイミド樹脂膜から構成されている。
【0232】
図11に示すように、半導体チップCHP3Aには、異電位間の非接触通信を行うトランスフォーマの構成要素である上層インダクタTL1Aと下層インダクタBL1Aとが設けられている。このとき、上層インダクタTL1Aは、半導体チップCHP2Aに設けられている多層配線層MWL2Aに存在する配線と電気的に接続されている。上層インダクタTL1Aには、約800V程度の基準電位である第2電位が印加される。具体的に、具現化態様2における第1半導体装置SA1は、上層インダクタTL1Aに第2電位を印加する回路(第2回路部)を有する半導体チップCHP2Aを含んでいる。半導体チップCHP3Aに設けられた上層インダクタTL1Aは、導電性部材の一例であるボンディングワイヤW2Aを介して、半導体チップCHP2Aに設けられた回路と電気的に接続されている。これにより、上層インダクタTL1Aには、半導体チップCHP2Aに設けられた回路から出力された第2電位が印加される。
【0233】
また、下層インダクタBL1Aは、半導体チップCHP1Aに設けられている多層配線層MWL1Aに存在する配線と電気的に接続されている。下層インダクタBL1Aには、約0V程度の基準電位である第1電位が印加される。具体的に、具現化態様2における第1半導体装置SA1は、下層インダクタBL1Aに第1電位を印加する回路(第1回路部)を有する半導体チップCHP1Aを含んでいる。半導体チップCHP3Aに設けられた下層インダクタBL1Aは、導電性部材の一例であるボンディングワイヤW1Aを介して、半導体チップCHP1Aに設けられた回路と電気的に接続されている。これにより、下層インダクタBL1Aには、半導体チップCHP1Aに設けられた回路から出力された第1電位が印加される。
【0234】
このように、第1半導体装置SA1は、半導体チップCHP1A(第1ハイサイドチップ)と、半導体チップCHP2A(第2ハイサイドチップ)と、半導体チップCHP3A(第1半導体チップ)を有する。このとき、第1回路部は、半導体チップCHP1A(第1ハイサイドチップ)に形成されている。第2回路部は、半導体チップCHP2A(第2ハイサイドチップ)に形成されている。トランスフォーマTR1Aは、半導体チップCHP3A(第1半導体チップ)に形成されている。
【0235】
なお、上層インダクタTL1Aは、半導体チップCHP3Aの厚さ方向において、第2電位とは異なる第1電位が印加される下層インダクタBL1Aと磁気結合可能に設けられている。具体的に、上層インダクタTL1Aが多層配線層MWL3Aの最上層と接するように設けられている一方、下層インダクタBL1Aが多層配線層MWL3Aに設けられている。これにより、上層インダクタTL1Aと下層インダクタBL1Aは、互いに磁気結合可能に構成される。
【0236】
以上のように構成されている半導体チップCHP1A、半導体チップCHP2Aおよび半導体チップCHP3Aは、図11に示すように、例えば、エポキシ樹脂から構成されるモールド樹脂MR1で封止される。言い換えれば、半導体チップCHP1A、半導体チップCHP2Aおよび半導体チップCHP3Aは、モールド樹脂MR1で覆われる。このようにして、3チップ構成の第1半導体装置SA1が構成されている。
【0237】
<<第2半導体装置の構成>>
図12は、具現化態様2における第2半導体装置SA2の構成を示す断面図である。
【0238】
図12において、第2半導体装置SA2は、半導体チップCHP1Bと半導体チップCHP2Bと半導体チップCHP3Bを有している。すなわち、図12に示す具現化態様2における第2半導体装置SA2は、3チップ構成をしている。
【0239】
半導体チップCHP1Bは、例えば、チップ搭載部であるダイパッドDP1B上に導電性接着材PST1Bを介して搭載されている。一方、半導体チップCHP2Bは、例えば、チップ搭載部であるダイパッドDP2B上に導電性接着材PST2Bを介して搭載されている。また、半導体チップCHP3Bは、例えば、チップ搭載部であるダイパッドDP3B上に導電性接着材PST3Bを介して搭載されている。
【0240】
ここで、ダイパッドDP1B、ダイパッドDP2BおよびダイパッドDP3Bは、例えば、銅材から構成されている。また、導電性接着材PST1B、導電性接着材PST2Bおよび導電性接着材PST3Bは、例えば、銀ペーストや半田から構成されている。
【0241】
半導体チップCHP1Bには、図10に示す送信回路TX1Bや受信回路RX2Bが形成されている。この半導体チップCHP1Bは、図12に示すように、半導体基板SUB1Bと、半導体基板SUB1B上に形成された多層配線層MWL1Bを有している。
【0242】
半導体基板SUB1Bには、複数のトランジスタQCが形成されている。複数のトランジスタQCが形成された半導体基板SUB1Bの上方に多層配線層MWL1Bが形成されている。多層配線層MWL1Bでは、複数の層間絶縁膜と複数の配線が積層されている。そして、多層配線層MWL1Bのそれぞれの層には、配線が形成されている。この配線は、トランジスタQCと電気的に接続されている。互いに電気的に接続されたトランジスタQCと配線によって、送信回路TX1Bや受信回路RX2Bが構成されている。
【0243】
続いて、図12に示すように、半導体チップCHP1Bにおいては、多層配線層MWL1Bの最上層と接するように配線および絶縁膜IF1Bが形成されている。そして、多層配線層MWL1Bの最上層と接するように形成されているパッドを含む配線上および絶縁膜IF1B上には、無機絶縁膜40cが形成されている。この無機絶縁膜40c上に有機絶縁膜50cが形成されている。ここで、無機絶縁膜40cは、窒化シリコン膜から構成されている。一方、有機絶縁膜50cは、ポリイミド樹脂膜から構成されている。
【0244】
次に、半導体チップCHP2Bには、図10に示す送信回路TX2Bと受信回路RX1Bとローサイド用ゲートドライバGD2と温度検出部20Bと電流検出部30Bが形成されている。この半導体チップCHP2Bは、図12に示すように、半導体基板SUB2Bと、半導体基板SUB2B上に形成された多層配線層MWL2Bを有している。
【0245】
半導体基板SUB2Bには、複数のトランジスタQDが形成されている。複数のトランジスタQDが形成された半導体基板SUB2Bの上方に多層配線層MWL2Bが形成されている。多層配線層MWL2Bでは、複数の層間絶縁膜と複数の配線が積層されている。そして、多層配線層MWL2Bのそれぞれの層には、配線が形成されている。この配線は、トランジスタQDと電気的に接続されている。互いに電気的に接続されたトランジスタQDと配線によって、送信回路TX2Bと受信回路RX1Bとローサイド用ゲートドライバGD2と温度検出部20Bと電流検出部30Bが構成されている。
【0246】
続いて、図12に示すように、半導体チップCHP2Bにおいては、多層配線層MWL2Bの最上層と接するように配線および絶縁膜IF2Bが形成されている。そして、多層配線層MWL2Bの最上層と接するように形成されているパッドを含む配線上および絶縁膜IF2B上には、無機絶縁膜40dが形成されている。この無機絶縁膜40d上に有機絶縁膜50dが形成されている。ここで、無機絶縁膜40dは、窒化シリコン膜から構成されている。一方、有機絶縁膜50dは、ポリイミド樹脂膜から構成されている。
【0247】
次に、半導体チップCHP3B(「第2トランスチップ」)には、図10に示すトランスフォーマTR2AやトランスフォーマTR2Bが形成されている。この半導体チップCHP3Bは、図12に示すように、半導体基板SUB3Bと、半導体基板SUB3B上に形成された多層配線層MWL3Bを有している。多層配線層MWL3Bの最下層は、半導体基板SUB3Bと接している。多層配線層MWL3Bには、配線だけでなく、トランスフォーマTR2Aの構成要素である下層インダクタBL2Aが形成されている。下層インダクタBL2Aは、例えば、渦巻き状の配線からなる。
【0248】
そして、図12に示すように、半導体チップCHP3Bにおいては、多層配線層MWL3Bの最上層と接するように配線および絶縁膜IF3Bが形成されている。さらに、多層配線層MWL3Bの最上層と接するように、多層配線層MWL3Bの上面上にトランスフォーマTR2Aの構成要素である上層インダクタTL2Aが設けられている。つまり、多層配線層MWL3Bは、上層インダクタTL2Aと半導体基板SUB3Bの間に設けられている。
【0249】
さらに、多層配線層MWL3Bの最上層と接するように形成されているパッドを含む配線上、上層インダクタTL2A上および絶縁膜IF3B上には、無機絶縁膜40fが形成されている。この無機絶縁膜40f上に有機絶縁膜50fが形成されている。ここで、無機絶縁膜40fは、窒化シリコン膜から構成されている。一方、有機絶縁膜50fは、ポリイミド樹脂膜から構成されている。
【0250】
図12に示すように、半導体チップCHP3Bには、異電位間の非接触通信を行うトランスフォーマの構成要素である上層インダクタTL2Aと下層インダクタBL2Aとが設けられている。このとき、上層インダクタTL2Aは、半導体チップCHP2Bに設けられている多層配線層MWL2Bに存在する配線と電気的に接続されている。上層インダクタTL2Aには、数十V程度の基準電位である第4電位が印加される。具体的に、具現化態様2における第2半導体装置SA2は、上層インダクタTL2Aに第4電位を印加する回路(第4回路部)を有する半導体チップCHP2Bを含んでいる。半導体チップCHP3Bに設けられた上層インダクタTL2Aは、導電性部材の一例であるボンディングワイヤW2Bを介して、半導体チップCHP2Bに設けられた回路と電気的に接続されている。これにより、上層インダクタTL2Aには、半導体チップCHP2Bに設けられた回路から出力された第4電位が印加される。
【0251】
また、下層インダクタBL2Aは、半導体チップCHP1Bに設けられている多層配線層MWL1Bに存在する配線と電気的に接続されている。下層インダクタBL2Aには、約0V程度の基準電位である第3電位が印加される。具体的に、具現化態様2における第2半導体装置SA2は、下層インダクタBL2Aに第3電位を印加する回路(第3回路部)を有する半導体チップCHP1Bを含んでいる。半導体チップCHP3Bに設けられた下層インダクタBL2Aは、導電性部材の一例であるボンディングワイヤW1Bを介して、半導体チップCHP1Bに設けられた回路と電気的に接続されている。これにより、下層インダクタBL2Aには、半導体チップCHP1Bに設けられた回路から出力された第3電位が印加される。
【0252】
このように、第2半導体装置SA2は、半導体チップCHP1B(第1ローサイドチップ)と、半導体チップCHP2B(第2ローサイドチップ)と、半導体チップCHP3B(第2半導体チップ)を有する。このとき、第3回路部は、半導体チップCHP1B(第1ローサイドチップ)に形成されている。第4回路部は、半導体チップCHP2B(第2ローサイドチップ)に形成されている。トランスフォーマTR2Aは、半導体チップCHP3B(第2半導体チップ)に形成されている。
【0253】
なお、上層インダクタTL2Aは、半導体チップCHP3Bの厚さ方向において、第4電位とは異なる第3電位が印加される下層インダクタBL2Aと磁気結合可能に設けられている。具体的に、上層インダクタTL2Aが多層配線層MWL3Bの最上層と接するように設けられている。一方、下層インダクタBL2Aが多層配線層MWL3Bに設けられている。これにより、上層インダクタTL2Aと下層インダクタBL2Aは、互いに磁気結合可能に構成される。
【0254】
以上のように構成されている半導体チップCHP1B、半導体チップCHP2Bおよび半導体チップCHP3Bは、図12に示すように、例えば、エポキシ樹脂から構成されるモールド樹脂MR2で封止される。言い換えれば、半導体チップCHP1B、半導体チップCHP2Bおよび半導体チップCHP3Bは、モールド樹脂MR2で覆われる。このようにして、3チップ構成の第2半導体装置SA2が構成されている。
【0255】
<<具現化態様2における特徴>>
次に、具現化態様2における特徴点について説明する。
【0256】
具現化態様2における特徴点は、例えば、図9および図10に示すように、ハイサイド部HSUに含まれるトランスフォーマTR1Aの構造と、ローサイド部LSUに含まれるトランスフォーマTR2Aの構造とを相違させる点にある。具体的に、具現化態様2において、トランスフォーマTR1Aの構成要素である下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとの間の第1間隔を「A」とし、トランスフォーマTR2Aの構成要素である下層インダクタBL2Aと上層インダクタTL2Aとの間の第2間隔を「B」とする。この場合において、特徴点は、「B」が「A」よりも小さい点にある(図11および図12も参照)。この特徴点によって、上述した基本思想が具現化されている。
【0257】
この特徴点を具現化する結果、例えば、図11および図12に示すように、多層配線層MWL3Bの厚さは、多層配線層MWL3Aの厚さよりも小さくなる。これにより、多層配線層MWL3Bの厚さを薄くすることによる製造コスト削減を図ることができる。
【0258】
別の観点から説明すると、この特徴点を具現化する結果、例えば、多層配線層MWL3Bの層数を削減できる。このため、特徴点によれば、多層配線層MWL3Bの層数を削減することによる製造コスト削減を図ることができる。
【0259】
つまり、特徴点によれば、ローサイド部LSUに設けられるトランスフォーマTR2Aの構造として、絶縁耐圧に関する要求の厳しいトランスフォーマTR1Aの仕様にあわせて設計された構造(第1間隔A)が採用されるのではなく、トランスフォーマTR2Aに要求される絶縁耐圧を満足するために必要十分な性能を有する構造(第2間隔B)が採用される。このため、特徴点によれば、絶縁耐圧に関する要求の緩やかなトランスフォーマTR2Aに対して、必要以上の過剰性能が付加されることを抑制できるため、電子装置の製造コストを低減できる。
【0260】
<変形例2>
3チップ構成においても、誘導結合(磁気結合)した一対のインダクタを利用したトランスフォーマからアイソレータを構成する代わりに、容量結合した一対の電極を利用したコンデンサからアイソレータを構成することもできる。この場合、半導体チップCHP3Aに第1コンデンサが形成される。一方、半導体チップCHP3Bに第2コンデンサが形成される。
【0261】
具体的に、半導体チップCHP3Aに第1コンデンサを構成する第1下層電極と第1上層電極が形成される。一方、半導体チップCHP3Bに第2コンデンサを構成する第2下層電極と第2上層電極が形成される。このとき、第1コンデンサの構成要素である第1下層電極と第1上層電極との間の第1電極間隔を「C」とし、第2コンデンサの構成要素である第2下層電極と第2上層電極との間の第2電極間隔を「D」とする。この場合において、「D」が「C」よりも小さい。これにより、本変形例2によれば、電子装置の製造コストを削減することができる。別の表現をすると、例えば、本変形例2の基本構成を示す図11および図12において、多層配線層MWL3Bの厚さは、多層配線層MWL3Aの厚さよりも小さくなる。これにより、本変形例2によっても、多層配線層MWL3Bの厚さを薄くすることによる製造コスト削減を図ることができる。
【0262】
さらに、別の観点から説明すると、例えば、本変形例2によれば、多層配線層MWL3Bの層数を削減できる。このため、本変形例2によっても、多層配線層MWL3Bの層数を削減することによる製造コスト削減を図ることができる。
【0263】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0264】
1a センタータップパッド
1b 渦巻配線
1c トランスパッド
1d 渦巻配線
1e トランスパッド
2a センタータップパッド
2b 渦巻配線
2c トランスパッド
2d 渦巻配線
2e トランスパッド
10A ハイサイド用IGBT
10B ローサイド用IGBT
20A 温度検出部
20B 温度検出部
30A 電流検出部
30B 電流検出部
40a 無機絶縁膜
40b 無機絶縁膜
40c 無機絶縁膜
40d 無機絶縁膜
40e 無機絶縁膜
40f 無機絶縁膜
50a 有機絶縁膜
50b 有機絶縁膜
50c 有機絶縁膜
50d 有機絶縁膜
50e 有機絶縁膜
50f 有機絶縁膜
60a パッド開口部
60b パッド開口部
60c パッド開口部
60d パッド開口部
100 MCU
BL1A 下層インダクタ
BL2A 下層インダクタ
BL1B 下層インダクタ
BL2B 下層インダクタ
CHP1A 半導体チップ
CHP1B 半導体チップ
CHP2A 半導体チップ
CHP2B 半導体チップ
CHP3A 半導体チップ
CHP3B 半導体チップ
DP1A ダイパッド
DP1B ダイパッド
DP2A ダイパッド
DP2B ダイパッド
DP3A ダイパッド
DP3B ダイパッド
EA 電子装置
FWD ダイオード
GCC ゲート制御回路
GD ゲートドライバ
GD1 ハイサイド用ゲートドライバ
GD2 ローサイド用ゲートドライバ
HSU ハイサイド部
IF1A 絶縁膜
IF1B 絶縁膜
IF2A 絶縁膜
IF2B 絶縁膜
IF3A 絶縁膜
IF3B 絶縁膜
INV インバータ
LG1 第1レグ
LG2 第2レグ
LG3 第3レグ
LSU ローサイド部
MR1 モールド樹脂
MR2 モールド樹脂
MT 3相誘導モータ
MWL1A 多層配線層
MWL1B 多層配線層
MWL2A 多層配線層
MWL2B 多層配線層
MWL3A 多層配線層
MWL3B 多層配線層
NT 負電位端子
PST1A 導電性接着材
PST1B 導電性接着材
PST2A 導電性接着材
PST2B 導電性接着材
PST3A 導電性接着材
PST3B 導電性接着材
PT 正電位端子
QA トランジスタ
QB トランジスタ
QC トランジスタ
QD トランジスタ
Q1 スイッチング素子
RT ロータ
RX1A 受信回路
RX1B 受信回路
RX2A 受信回路
RX2B 受信回路
SA1 第1半導体装置
SA2 第2半導体装置
SUB1A 半導体基板
SUB1B 半導体基板
SUB2A 半導体基板
SUB2B 半導体基板
SUB3A 半導体基板
SUB3B 半導体基板
TL1A 上層インダクタ
TL1B 上層インダクタ
TL2A 上層インダクタ
TL2B 上層インダクタ
TR1A トランスフォーマ
TR1B トランスフォーマ
TR2A トランスフォーマ
TR2B トランスフォーマ
TX1A 送信回路
TX1B 送信回路
TX2A 送信回路
TX2B 送信回路
W1 ボンディングワイヤ
W1A ボンディングワイヤ
W1B ボンディングワイヤ
W2 ボンディングワイヤ
W2A ボンディングワイヤ
W2B ボンディングワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12