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特開2024-73140炭酸化・積層造形用セメント組成物、炭酸化・積層造形用結合材、炭酸化・積層造形用モルタル組成物、炭酸化積層体、および炭酸化積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073140
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】炭酸化・積層造形用セメント組成物、炭酸化・積層造形用結合材、炭酸化・積層造形用モルタル組成物、炭酸化積層体、および炭酸化積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20240522BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20240522BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20240522BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240522BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B28B1/30
B28B11/24
C04B40/02
C04B28/02
C04B18/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184183
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】黒野 承太郎
(72)【発明者】
【氏名】河野 克哉
【テーマコード(参考)】
4G052
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
4G055AA01
4G055BA02
4G112PA28
4G112RA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、炭酸化により強度および耐久性がより向上する、炭酸化・積層造形用セメント組成物等を提供する。
【解決手段】本発明は、ポルトランドセメントクリンカAを0~50質量%、下記(a)および(b)の割合で下記鉱物を含むクリンカBを50~100質量%、および、前記クリンカAおよびクリンカBの合計100質量部に対し、石膏をSO換算で1~5質量部含む、炭酸化・積層造形用セメント組成物等である。
(a)2CaO・SiO 100質量部に対し、3CaO・Alを0~15質量部、並びに、2CaO・Al・SiOおよび4CaO・Al・Feを合計で10~100質量部
(b)2CaO・Al・SiO 100質量部に対し、4CaO・Al・Feを0~210質量部
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメントクリンカAを0~50質量%、
下記(a)および(b)の割合で下記鉱物を含むクリンカBを50~100質量%、および、
前記クリンカAおよびクリンカBの合計100質量部に対し、石膏をSO換算で1~5質量部含む、炭酸化・積層造形用セメント組成物。
(a)2CaO・SiO 100質量部に対し、3CaO・Alを0~15質量部、並びに、2CaO・Al・SiOおよび4CaO・Al・Feを合計で10~100質量部
(b)2CaO・Al・SiO 100質量部に対し、4CaO・Al・Feを0~210質量部
【請求項2】
請求項1に記載の炭酸化・積層造形用セメント組成物100質量部に対し、シリカフュームを5~50質量部含む、炭酸化・積層造形用結合材。
【請求項3】
請求項1に記載の炭酸化・積層造形用セメント組成物100質量部、または請求項2に記載の炭酸化・積層造形用結合材100質量部に対し、水を13~50質量部、および細骨材を含む、炭酸化・積層造形用モルタル組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の炭酸化・積層造形用モルタル組成物の積層体を炭酸化した炭酸化積層体であって、二酸化炭素による中性化深さが4mm以上である炭酸化積層体。
【請求項5】
請求項3に記載の炭酸化・積層造形用モルタル組成物と、押出し方式付加製造装置を用いて積層体を製造した後、該積層体を炭酸化する、炭酸化積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸化・積層造形用セメント組成物、該セメント組成物を含む炭酸化・積層造形用結合材、該結合材を含む炭酸化・積層造形用モルタル組成物、該モルタル組成物を用いた炭酸化積層体、および、該炭酸化積層体の製造方法に関する。
ここで、前記炭酸化・積層造形用セメント組成物、炭酸化・積層造形用結合材、および炭酸化・積層造形用モルタル組成物は、それぞれ、積層造形用途のセメント組成物、結合材、およびモルタル組成物であって、積層造形後に炭酸化養生を行うセメント組成物、結合材、およびモルタル組成物である。
【0002】
近年、押出し方式付加製造装置(3Dプリンター)を用いて、水硬性材料の混練物を、積載台(台座)上に押し出しながら固化して順次積層することにより、繊細な形状を造形する方法が提案されている。
例えば、特許文献1では、特定のフロー値を有するセメント質混練物を用いて、(A)ノズルの位置決め機構、および(B)セメント質混練物の押し出し機構を少なくとも含む、セメント質混練物の造形用付加製造システムが提案されている。
また、特許文献2では、(A)造形用セメント組成物と水を混練してセメント質混練物を得るための混練工程と、(B)該セメント質混練物を押し出して硬化させて造形物を得るための押し出し工程を少なくとも含む、付加製造方法が提案されている。
【0003】
しかし、押出し方式付加製造装置を用いて造形した積層体は、一般に、下層の混練物が硬化した後に、上層(次層)の混練物を積層するため、層間の一体性が損なわれて層間に空隙が生じやすく、積層体の強度や耐久性が低下するおそれがある。
また、押出し方式付加製造装置を用いて建造物を構築する工法は、型枠工事や型枠工がいらないため、最近の建設DX(デジタルトランスフォーメーション)に合致した工法である。しかし、該工法は、積層した直後からコンクリートが外気に晒されて乾燥するため、セメントの水和が阻害されて強度が十分に発現しない場合がある。
【0004】
ところで、近年、地球温暖化の抑制のため、地球温暖化の主な原因物質である二酸化炭素の総排出量を低減する方法として、コンクリート等の混練物や硬化体の硬化過程で生成するセメント水和物と二酸化炭素の反応を利用して、該混練物や硬化体を炭酸化する方法が提案されている。この方法によれば、二酸化炭素の総排出量の低減のほか、硬化体の組織の緻密化により強度や耐久性が向上する。
ちなみに、前記二酸化炭素の総排出量とは、セメントの製造過程で排出される二酸化炭素量から、コンクリート等のセメント質硬化体が吸収して固定する二酸化炭素量を差し引いた二酸化炭素量をいう。
【0005】
例えば、特許文献3では、(A)ムライトとアノーサイトのいずれか一方または両方を含むセメント混合用粉末とポルトランドセメントを含む粉末状セメント組成物、(B)水、および、(C)骨材を含むセメント混練物の硬化体を、炭酸化してなるセメント質硬化体が提案されている。
また、特許文献4では、(A)CS(2CaO・SiO)100質量部に対し、CAS(2CaO・Al・SiO)を10~200質量部含有し、かつ、CA(3CaO・Al)が20質量部以下である焼成物の粉砕物と、ポルトランドセメントを含む粉末状セメント組成物と、(B)水と、(C)骨材の各材料を含むセメント混練物の硬化体を、炭酸化してなるセメント質硬化体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-185645号公報
【特許文献2】特開2018-122539号公報
【特許文献3】特開2016-153357号公報
【特許文献4】特開2016-47788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、前記技術をさらに発展させて、炭酸化により強度および耐久性がより向上する、炭酸化・積層造形用セメント組成物、炭酸化・積層造形用結合材、炭酸化・積層造形用モルタル組成物、炭酸化積層体、および、炭酸化積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、二酸化炭素を固定する2CaO・Al・SiO、4CaO・Al・Fe、および、長期に水和反応が持続する2CaO・SiO、並びに、シリカフューム等の混合材を含むセメント組成物等は、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の構成からなる炭酸化・積層造形用セメント組成物等である。
【0009】
[1]ポルトランドセメントクリンカAを0~50質量%、
下記(a)および(b)の割合で下記鉱物を含むクリンカBを50~100質量%、および、
前記クリンカAおよびクリンカBの合計100質量部に対し、石膏をSO換算で1~5質量部含む、炭酸化・積層造形用セメント組成物。
(a)2CaO・SiO 100質量部に対し、3CaO・Alを0~15質量部、並びに、2CaO・Al・SiOおよび4CaO・Al・Feを合計で10~100質量部
(b)2CaO・Al・SiO 100質量部に対し、4CaO・Al・Feを0~210質量部
[2]前記[1]に記載の炭酸化・積層造形用セメント組成物100質量部に対し、シリカフュームを5~50質量部含む、炭酸化・積層造形用結合材。
[3]前記[1]に記載の炭酸化・積層造形用セメント組成物100質量部、または前記[2]に記載の炭酸化・積層造形用結合材100質量部に対し、水を13~50質量部、および細骨材を含む、炭酸化・積層造形用モルタル組成物。
[4]前記[3]に記載の炭酸化・積層造形用モルタル組成物の積層体を炭酸化した炭酸化積層体であって、二酸化炭素による中性化深さが4mm以上である炭酸化積層体。
[5]前記[3]に記載の炭酸化・積層造形用モルタル組成物と、押出し方式付加製造装置を用いて積層体を製造した後、該積層体を炭酸化する、炭酸化積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炭酸化・積層造形用セメント組成物等は、炭酸化により強度および耐久性が向上する。また、本発明の炭酸化積層体の製造方法は、炭酸化により二酸化炭素の総排出量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明で用いる押出し方式付加製造装置の1例であるカートリッジを用いた押出装置のカートリッジ部分の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、前記のとおり、特定量のクリンカA、クリンカB、および、石膏を含む炭酸化・積層造形用セメント組成物等である。
なお、これ以降は、鉱物の記載を簡略にするため、2CaO・SiOは「CS」、3CaO・Alは「CA」、2CaO・Al・SiOは「CAS」、および4CaO・Al・Feは「CAF」と略記する。
以下、本発明を、炭酸化・積層造形用セメント組成物、炭酸化・積層造形用結合材、炭酸化・積層造形用モルタル組成物、炭酸化積層体、および、炭酸化積層体の製造方法に分けて説明する。
【0013】
1.炭酸化・積層造形用セメント組成物
本発明の炭酸化・積層造形用セメント組成物は、ポルトランドセメントクリンカAを0~50質量%、前記(a)および(b)の割合で鉱物を含むクリンカBを50~100質量%、および、クリンカAおよびクリンカBの合計100質量部に対し、石膏をSO換算で1~5質量部含む組成物である。
クリンカAが0~50質量%およびクリンカBが50~100質量%であれば、炭酸化の速度が高く、また炭酸化の領域が広く、さらに強度発現性に優れる。なお、クリンカAおよびクリンカBの含有率は、好ましくは、クリンカAが10~40質量%およびクリンカBが60~90質量%、より好ましくは、クリンカAが20~30質量%およびクリンカBが70~80質量%である。
【0014】
次に、本発明の炭酸化・積層造形用セメント組成物に含まれる、クリンカA、クリンカB、クリンカBの製造方法、および石膏について説明する。
(1)クリンカA
クリンカAは、普通、早強、中庸熱、および低熱等のポルトランドセメントのクリンカから選ばれる1種以上が挙げられる。クリンカAは、本発明の炭酸化・積層造形用セメント組成物において、主に、強度発現性を担う。
そのため、クリンカAのブレーン比表面積は、好ましくは2500~5000cm/g、より好ましくは3000~4500cm/gである。なお、クリンカAは、単独で粉砕するほかに、クリンカBおよび石膏等の1種以上と同時に粉砕してもよい。また、クリンカAは、粉砕の手間が省けるから、前記クリンカの代わりに、市販の普通、早強、中庸熱、および低熱等のポルトランドセメントから選ばれる1種以上を用いてもよい。
【0015】
(2)クリンカB
クリンカB中の鉱物、これらの含有割合、および、これらの意義は、以下のとおりである。
(a)CS100質量部に対し、CAは0~15質量部、並びに、CASおよびCAFは合計で10~100質量部である。
Aの含有割合が15質量部を超えるクリンカBの製造は困難であるとともに、造形性が低下する。なお、CAの含有割合は、CS100質量部に対し、好ましくは0~10質量部、より好ましくは0~5質量部である。また、CASおよびCAFの合計の含有割合が、CS100質量部に対し、10質量部未満では、水和反応の速度が遅いCSが多くなって炭酸化が進み難いため、材齢初期において二酸化炭素の吸収量が少なく、100質量部を超えると、CSの割合が減少するため、長期にわたる二酸化炭素の吸収量が少なくなる。なお、CASおよびCAFの合計の含有割合は、CS100質量部に対し、好ましくは20~90質量部、より好ましくは30~80質量部である。
(b)CAS100質量部に対し、CAFは0~210質量部である。
AFの含有割合がCAS100質量部に対し、210質量部を超えると初期の水和活性が低下する。なお、CAFの含有率は、CAS100質量部に対し、より好ましくは0~120質量部、さらに好ましくは10~100質量部である。
クリンカBの鉱物組成(CS、CA、CAS、およびCAF等の含有割合)は、各鉱物の理論プロファイルを、本発明のクリンカ粉末の粉末X線回折チャート(実測プロファイル)にフィッティングしてリートベルト解析により定量でき、この定量には市販の解析ソフトが使用できる。また、顕微鏡観察や電子線後方散乱回折を用いたポイントカウンティングなどによっても定量できる。
【0016】
(3)クリンカBの製造方法
本発明に用いるクリンカBは、産業廃棄物、一般廃棄物、および建設発生土から選ばれる1種以上を原料として、1000~1450℃で焼成して製造する。
該製造方法は、(a)原料調合工程、(b)焼成・冷却工程、および(c)粉砕工程を含む。
【0017】
以下に、(a)原料調合工程、(b)焼成・冷却工程、および(c)粉砕工程について説明する。
(a)原料調合工程
該工程では、原料として、産業廃棄物、一般廃棄物、および建設発生土から選ばれる1種以上の廃棄物を用いて、クリンカBの鉱物組成の範囲になるように調合する。前記廃棄物を原料に用いることは、廃棄物の有効利用の観点から好ましい。
そして、前記産業廃棄物は、石炭灰、生コンクリートスラッジ、コンクリート廃材、浄水汚泥、建設汚泥、製鉄汚泥、建設廃材、鋳物砂、ロックウール、廃ガラス、高炉二次灰、およびボーリング廃土等から選ばれる1種以上が挙げられる。また、前記一般廃棄物は、下水汚泥、都市ごみ焼却灰、下水汚泥乾粉、貝殻、および下水汚泥焼却灰等から選ばれる1種以上が挙げられる。さらに、前記建設発生土は、建設現場や工事現場等から発生する土壌、残土、および廃土壌等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0018】
また、前記廃棄物だけでは、クリンカBの鉱物組成が前記範囲内になるように調合することが難しい場合は、カルシウム原料、ケイ素原料、アルミニウム原料、および鉄原料等の天然原料を用いて補ってもよい。ここで、カルシウム原料は、石灰石、生石灰、消石灰、および製鋼スラグ等から選ばれる1種以上が挙げられ、ケイ素原料は、珪石および粘土等が挙げられ、アルミニウム原料は、粘土等が挙げられ、鉄原料は、鉄滓および鉄ケーキ等が挙げられる。
【0019】
また、前記原料の粒度を調整する必要がある場合は、ボールミル等の粉砕機で所定の粒度になるまで粉砕して調整する。また、前記原料は、焼成を容易にするため造粒してもよい。この造粒方法は、転動造粒法、押出し造粒法、および圧縮造粒法等が挙げられる。
【0020】
(b)焼成・冷却工程
前記調合した原料をロータリーキルン等の焼成炉で焼成した後、クーラーで冷却してクリンカBを得る。
ここでの焼成温度は、1000~1450℃である。焼成温度が1000℃未満では、クリンカB中のフリーライムを減らすことが難しく、1450℃を超えると調合原料が溶融してクリンカBが減少するおそれがある。なお、前記焼成温度は、好ましくは1150~1350℃、より好ましくは1200~1350℃である。
また、焼成時間は、好ましくは30~150分である。該時間が30分未満では焼成が十分でなく、150分を超えると生産性が低下する。なお、前記焼成時間は、より好ましくは40~120分である。
また、焼成炉は、特に制限されないが、連続生産が可能で製造効率が高いことから、好ましくはロータリーキルンである。
また、焼成用の燃料は重油のほかに、石炭、廃油、廃タイヤ、および廃プラスチック等の燃料代替廃棄物も使用できる。
なお、クリンカBの鉱物組成(CS、CAS、CAF、およびCAの割合:質量%)は、クリンカBの調合原料中またはクリンカB中のCaO、SiO、Al、Feの各含有率(質量%)から、以下の式を用いて算出できる。
S=1.02×CaO+0.95×SiO-1.69×Al-0.36×Fe
AS=-1.63×CaO+3.04×SiO+2.69×Al+0.57×Fe
AF=3.04×Fe
A=1.61×CaO-3.00×SiO-2.26×Fe(ただし、CAがマイナスになる場合は、CAは「0」とみなす。)
【0021】
(c)粉砕工程
粉砕方法は、特に制限されず、例えば、ボールミルやロッドミル等の粉砕機を用いて粉砕するとよい。
また、クリンカBのブレーン比表面積は、水和反応の促進、二酸化炭素の吸収量の増大、および炭酸化積層体の強度発現性の向上のため、好ましくは2500~5000cm/g、より好ましくは3000~4500cm/gである。
また、前記粉砕の効率を高めるために、好ましくは粉砕助剤を添加して粉砕するとよい。該粉砕助剤は、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、およびトリイソプロパノールアミン等から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの粉砕助剤の添加割合は、クリンカB100質量部に対し、好ましくは0.01~1質量部である。なお、クリンカBは、単独で粉砕するほかに、クリンカAおよび石膏等の1種以上と同時に粉砕してもよい。
【0022】
(4)石膏
本発明の炭酸化・積層造形用セメント組成物中の石膏の含有割合は、クリンカAおよびクリンカBの合計100質量部に対し、SO換算で1~5質量部である。石膏の含有割合が1~5質量部であれば、強度発現性が高く造形性も良好である。なお、石膏の含有割合は、SO換算で、好ましくは1.5~4質量部、より好ましくは1.5~3質量%である。
また、前記石膏は、二水石膏、排煙脱硫石膏、リン酸石膏、チタン石膏、フッ酸石膏、精錬石膏、半水石膏、および無水石膏から選ばれる1種以上が挙げられる。
なお、前記炭酸化・積層造形用セメント組成物と押出し方式付加製造装置を用いて積層体を製造する場合、前記炭酸化・積層造形用セメント組成物に、押出しができる量の水を混合して用いる。また、それぞれ単独で粉砕したクリンカA、クリンカB、および石膏等を混合するなど、石膏が水との混練時に混合されていれば、添加方法は問わない。
【0023】
2.炭酸化・積層造形用結合材
本発明の炭酸化・積層造形用結合材は、好ましくは前記炭酸化・積層造形用セメント組成物100質量部に対し、シリカフュームを5~50質量部含む。シリカフュームの含有割合が前記範囲にあれば、強度発現性が高く、また耐久性に優れる。なお、シリカフュームの含有割合は、前記炭酸化・積層造形用セメント組成物100質量部に対し、好ましくは10~40質量部、より好ましくは10~30質量部である。
また、前記シリカフュームのBET比表面積は、好ましくは15~25m/g、より好ましくは17~23m/g、さらに好ましくは18~22m/gである。シリカフュームのBET比表面積が15m/g未満では、強度発現性が低下するおそれがあり、25m/gを超えると、造形性が低下するおそれがある。 本発明の炭酸化・積層造形用結合材は、要求される強度発現性、耐久性、および造形性等の特性に応じて、フライアッシュ、シリカ粉末、および石灰石粉末等の混和材を1種類以上含んでもよい。
なお、前記炭酸化・積層造形用結合材と押出し方式付加製造装置を用いて積層体を製造する場合、前記炭酸化・積層造形用結合材に、押出しができる量の水を混合して用いる。なお、シリカフューム等の混和材は、クリンカA等の粉砕時に混合してもよいし、水を混合する際にクリンカA等を含む炭酸化・積層造形用セメント組成物に混合して、混練してもよい。
【0024】
3.炭酸化・積層造形用モルタル組成物
本発明の炭酸化・積層造形用モルタル組成物は、前記炭酸化・積層造形用セメント組成物100質量部、または前記炭酸化・積層造形用結合材100質量部に対し、水を13~50質量部、および細骨材を含む。水の含有割合が前記範囲にあれば、造形性と強度発現性が高い。なお、水は、前記炭酸化・積層造形用結合材100質量部に対し、好ましくは15~40質量部、より好ましくは20~30質量部である。
また、細骨材は、前記炭酸化・積層造形用セメント組成物100質量部、または前記炭酸化・積層造形用結合材100質量部に対し、好ましくは10~300質量部含む。細骨材の含有割合が前記範囲にあれば、造形性と強度発現性が高い。なお、細骨材は、前記炭酸化・積層造形用セメント組成物100質量部、または前記炭酸化・積層造形用結合材100質量部に対し、より好ましくは20~200質量部、さらに好ましくは50~150質量部である。
また、前記細骨材は、好ましくは、クリンカ細骨材、珪砂、石灰石細骨材、川砂、山砂、陸砂、および軽量細骨材等から選ばれる1種以上が挙げられる。
前記細骨材の粒度は、最大粒径が好ましくは3mm以下、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.1~0.3mmの粒度を有する粒体を、50質量%以上含む細骨材(例えば、珪砂7号や珪砂6号)が挙げられる。
【0025】
また、前記クリンカ細骨材は、CSおよびCAS等を含む細骨材であって、CASの含有割合は、CS100質量部に対し5~100質量部であり、かつ、CS100質量部に対しCAを20質量部以下含む細骨材である。CASの含有割合が5質量部以上では、骨材の焼成温度が高い場合でも、フリーライム(未反応のCaO)が増加し難く、焼成が容易で、また、二酸化炭素の吸収量はより多くなる。また、CASの含有割合が100質量部以下では、クリンカ細骨材を製造する際に、高温下で発生する融液の量が減少するため、焼成が可能な温度範囲が広がる。また相対的に、骨材中のCSの量が多くなるため、炭酸化積層体の強度が高くなる。
なお、CASの含有割合は、CS100質量部に対し、好ましくは6~75質量部、より好ましくは7~50質量部、さらに好ましくは8~40質量部、特に好ましくは12~30質量部である。
【0026】
前記クリンカ細骨材は、造形性の向上等の観点から、好ましくはCA(アルミネート相)をCS100質量部に対し20質量部以下含む骨材である。前記含有割合が20質量部を超えると、造形性が低下するおそれがある。なお、CAの含有割合は、CS100質量部に対し、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。
【0027】
前記クリンカ細骨材中のCSの含有率は、炭酸化積層体の強度の向上の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
また、前記クリンカ細骨材中のCASの含有率は、好ましくは5~25質量%、より好ましくは6~20質量%、さらに好ましくは7~15質量%である。前記含有率が5質量%以上では、骨材中のフリーライムが増加し難く、また、二酸化炭素の吸収量がより多くなり、25質量%以下では、炭酸化積層体の強度が向上する。
なお、クリンカ細骨材の鉱物組成(CS、CA、およびCASの含有率:質量%)は、前記クリンカBの鉱物組成と同様の方法で求めることができる。
前記クリンカ細骨材中のフリーライムの含有率は、骨材の膨張劣化の防止の観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.2~1.5質量%である。
また、クリンカ細骨材中の鉱物は、前記CS等のほかに、CAF、12CaO・7Al、ムライト、アノーサイト、非晶質相、SiO、クリストバライト、ランキナイト、およびウォラストナイト等から選ばれる1種以上が挙げられる。なお、クリンカ細骨材中の、CS、CAS、およびCA以外の含有物の合計の含有率は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0028】
前記クリンカ細骨材の製造方法は、例えば、産業廃棄物、一般廃棄物、および建設発生土から選ばれる1種以上を含む焼成用骨材材料を、1250~1500℃で焼成して焼成物を得る焼成工程、該焼成物を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程、および該粉砕物を分級してクリンカ細骨材を得る分級工程を含む製造方法等が挙げられる。
前記焼成用骨材材料、該材料の焼成温度、および焼成方法は、一般のセメントの製造に用いる焼成用クリンカ材料、該材料の焼成温度、および焼成方法と同じである。
また、分級工程において、篩等の一般的な分級方法を用いて、所望の粒度分布を有する細骨材を得ることもできる。
なお、通常のセメントクリンカの焼成工程で得られるクリンカを、前記クリンカ細骨材として用いてもよい。
また、細骨材が、クリンカ細骨材と、クリンカ細骨材以外の骨材の両方を含む場合、細骨材の全量中のクリンカ細骨材の含有率は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。前記含有率が40質量%以上であれば、より多くの二酸化炭素を固定して強度および耐久性が向上する。
なお、前記炭酸化・積層造形用モルタル組成物は、要求される強度や造形性等の特性に応じて、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、および収縮低減剤等の混和剤を含んでもよい。前記減水剤の中でも、造形性および強度発現性の観点から、好ましくは高性能AE減水剤であり、その含有割合は、前記炭酸化・積層造形用セメント組成物100質量部、または前記炭酸化・積層造形用結合材100質量部に対し、好ましくは0.2~5質量部、より好ましくは0.5~4質量部、さらに好ましくは1~3%質量部である。
【0029】
4.炭酸化積層体およびその製造方法
本発明の炭酸化積層体は、前記の炭酸化・積層造形用セメント組成物の加水物、炭酸化・積層造形用結合材の加水物、または、炭酸化・積層造形用モルタル組成物のいずれかの積層体を炭酸化した炭酸化積層体であって、二酸化炭素による中性化深さが、好ましくは4mm以上の積層体である。炭酸化積層体の中性化深さが4mm以上であれば、炭酸化により、強度および耐久性が向上する。なお、炭酸化積層体の中性化深さは、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上であり、炭酸化時間等の短縮(炭酸化の効率)の観点からは、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下である。なお、前記中性化深さは、JIS A 1152「コンクリートの中性化深さの測定方法」に準拠して測定するとよい。
【0030】
また、前記炭酸化積層体の圧縮強度は、好ましくは60N/mm以上、より好ましくは70N/mm以上、さらに好ましくは80N/mm以上である。
また、前記炭酸化積層体の層間付着強度は、積層体の崩壊の防止と、埋設型枠として用いた場合のコンクリート充填時の変形防止の観点から、好ましくは3N/mm以上、より好ましくは4N/mm以上、さらに好ましくは5N/mm以上である。
また、前記炭酸化積層体の塩分の浸透深さは、耐久性と、埋設型枠として用いた場合の内部に充填されたコンクリートの劣化防止の観点から、好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以上、さらに好ましくは5mm以下である。
【0031】
本発明の炭酸化・積層造形用セメント組成物、または炭酸化・積層造形用結合材を用いた造形物の製造方法は、例えば、炭酸化・積層造形用セメント組成物等の加水物を積層製造装置に供給する供給工程と、積層製造装置において、造形物を形成する積層工程を含む方法が挙げられる。
炭酸化・積層造形用セメント組成物等の加水物は、炭酸化・積層造形用セメント組成物等と水を混練して、調製することができる。前記混練手段は、特に限定されず、モルタルやコンクリートの練り混ぜにおいて一般に使用されるミキサを使用できる。具体的には、縦型ミキサ、横型ミキサ、ナウターミキサ、傾胴ミキサ、強制ミキサ、および二軸ミキサ等が挙げられる。
前記縦型ミキサは、例えば、ホバート社製の「ホバートミキサ」、およびヘンシェル社製の「ヘンシェルミキサ」等が挙げられる。また、前記横型ミキサは、例えば、レディゲ社製の「レディゲミキサ」等が挙げられる。
調製された炭酸化・積層造形用セメント組成物等の加水物は、供給工程において、積層製造装置に投入する。該付加製造装置は、市販されている一般的な付加製造装置(3Dプリンタ)が使用できる。また、積層工程では、付加製造装置のノズル等から炭酸化・積層造形用セメント組成物等の加水物を押し出して、積層させて積層体を製造する。
【0032】
また、製造した積層体を炭酸化する方法(炭酸化工程)は、積層体を二酸化炭素に晒して炭酸化養生する方法のほかに、二酸化炭素をより多く吸収する観点から、炭酸化・積層造形用セメント組成物等の混練時に、該混練物中に二酸化炭素を吹き込む方法が挙げられる。
【0033】
また、前記炭酸化工程における二酸化炭素ガスの濃度は、好ましくは1体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上、特に好ましくは60体積%以上である。該濃度が1体積%以上であれば、炭酸化工程において二酸化炭素の固定量をより多くできる。
二酸化炭素の濃度が高いほど、二酸化炭素の吸収量が多くなるが、炭酸化の設備費等を低減する等の観点から、二酸化炭素ガスの濃度は、好ましくは90体積%以下、より好ましくは85体積%以下、さらに好ましくは80体積%以下である。
【0034】
また、前記炭酸化工程における温度は、好ましくは5~100℃、より好ましくは10~70℃、さらに好ましくは15~50℃、特に好ましくは20~35℃である。前記温度が5℃以上で、炭酸化の効率や炭酸化積層体の強度がより高くなり、100℃を超えると、炭酸化に要するエネルギーコストが過大になる。
また、前記炭酸化工程における相対湿度は、好ましくは20~90%、より好ましくは30~80%、特に好ましくは40~70%である。前記相対湿度が20%以上で、炭酸化の効率や炭酸化積層体の強度等がより高くなり、90%を超えると設備等にかかるコストが過大になる。
【実施例0035】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.使用材料
(1)クリンカA
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
ブレーン比表面積は3100cm/gで、該セメントの化学組成を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
(2)クリンカB
下水汚泥、建設発生土、石灰石、および粘土を原料に用いて、表2に示す化学組成に従い調合した後、ロータリーキルンで表2に示す温度で焼成して、表3に示す鉱物組成のクリンカBを製造した。なお、焼成燃料は重油のほかに、廃油や廃プラスチックを使用した。
なお、表3に示すクリンカBの鉱物組成は下記(i)~(iii)の方法で算出した。
(i)クリンカBを粉砕した後、D8 ADVANCE A-25型(ブルカージャパン社製)を用いて粉末X線回折(XRD)パターンを取得した。
(ii)前記粉末XRDの測定条件は、ターゲットCuKα、管球条件40kV- 40mA、走査範囲2θ=5~65°、ステップ幅0.023°/step、および測定時間0.13秒/stepである。
(iii)XRDパターンをDIFFRAC.EVA(ブルカージャパン社製)により定性分析したところ、CS(β-CS)、CAS、およびCAFのピークが認められた。そして、DIFFRAC.TOPAS ver.6(ブルカージャパン社製)により、リートベルト法によって、CS(β-CS)、CAS、およびCAFの各鉱物の理論プロファイルを、粉末XRDの結果から得らえた実測プロファイルにフィッティングすることにより各鉱物相の含有率を求めた。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
(3)二水石膏
(4)細骨材
珪砂7号で、粒径は0.3mm以下である。
(5)ポリカルボン酸系高性能減水剤(以下「減水剤」という。)
商品名はVP900M(フローリック社製)である。
(5)シリカフューム
BET比表面積は20m/gで、密度は2.33g/cmである。
(6)佐倉市上水道水
【0041】
2.セメント組成物および結合材の製造
クリンカBの合計100質量部に対し、二水石膏をSO換算で2.0質量部添加した後、ブレーン比表面積が3440cm/gになるまで粉砕した。それぞれ石膏を除いたクリンカ分の質量を基準にして、表4の配合に従いクリンカAとクリンカBを混合し、セメント組成物a~eを製造した。次に、表5の配合に従い、セメント組成物a~eとシリカフュームを混合して各結合材を製造した。
【0042】
【表4】
【0043】
3.モルタル組成物および積層体の製造、並びに積層体の養生
表5に示す配合に従い、結合材、珪砂、および水を、ホバートミキサに投入して3分間混練しモルタル組成物を製造した後、該モルタル組成物を用いて押出し方式付加製造装置(図1のノズルの径は10mm、およびノズルの移動速度は60mm/sである。)により、縦100mm、横100mm、高さ400mmの積層体を製造した。
次に、前記積層体を用いて、二酸化炭素濃度80体積%、温度30℃、および相対湿度60%で炭酸化養生を、また、温度20℃、および相対湿度60%で気中養生を、それぞれ材齢28日まで行った。
【0044】
【表5】
【0045】
4.中性化深さ、圧縮強度、層間付着強度、および塩分浸透深さの測定
次に、前記積層体を用いて、圧縮強度等を下記の方法で測定した。
(i)中性化深さの測定
養生した積層体の積層面直上からコアを削孔して、直径50mm、高さ100mmの円柱供試体を作製した後、高さ方向に割裂した。次に、この割裂した面に、1質量%のフェノールフタレイン水溶液を噴霧して、紫色に呈色した部分の長さを、JIS A 1152「コンクリートの中性化深さの測定方法」に準拠して測定し、これを中性化深さとした。
ここで、本実施例において、中性化深さは、二酸化炭素の固定を促進できるクリンカBを材料とする積層体が、二酸化炭素を固定して、積層体内の空隙(組織)が緻密化したレベルを示す指標として用いた。
(ii)圧縮強度の測定
養生した積層体の積層面直上からコアを削孔して、直径50mm、高さ100mmの円柱供試体を作製した後、JSCE-G 505「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法(案)」に準拠して、圧縮強度を測定した。
(iii)層間付着強度の測定
養生した積層体の側面からコアを削孔して、直径50mm、高さ100mmの円柱供試体を作製した後、該供試体を試験機の加圧板上に横に載置してJIS A 1113「コンクリートの割裂引張強度試験方法」に準拠して、層間付着強度を測定した。
(iv)塩分浸透深さの測定
養生した積層体の積層面直上からコアを削孔して、直径50mm、高さ100mmの円柱供試体を作製した後、該供試体の側面をエポキシ樹脂で被覆した。次に、該被覆した供試体を10質量%の塩化ナトリウム水溶液に1か月間浸漬した後、該供試体を高さ方向に割裂した。そして、この割裂した面に、0.1Mの硝酸銀水溶液を噴霧して呈色した部分の長さを、JIS A 1152「コンクリートの中性化深さの測定方法」に準拠して測定して、これを塩分浸透深さとした。
これらの測定結果を表6に示す。
【0046】
【表6】
【0047】
5.測定結果について
セメント組成物a~eを90質量部含み、水/結合材比が20%、シリカフュームの添加量が10質量部、および、減水剤の添加量がB×1.8%で同じである実施例1~3および比較例7、8と比べると、以下のとおりである。
すなわち、セメント組成物a~cをそれぞれ含む実施例1~3は、セメント組成物d、eをそれぞれ含む比較例7、8と比べ、中性化深さが深く二酸化炭素の固定が進んで、積層体が緻密化した結果、圧縮強度および層間付着強度がより高く、また、塩分浸透深さがより浅いことから耐久性がより高いと考える。
【0048】
また、セメント組成物の種類および添加量、水/結合材比、シリカフュームの添加量、並びに、減水剤の添加量が同じである実施例と比較例同士(具体的には、実施例3と比較例1、実施例4と比較例2、実施例5と比較例3、および、実施例8と比較例5)を比べると、以下のとおりである。
すなわち、すべての組において、実施例は比較例と比べ、中性化深さが深く二酸化炭素の固定が進んで、積層体が緻密化した結果、圧縮強度および層間付着強度がより高く、また、塩分浸透深さがより浅いことから耐久性が向上したと考える。
【符号の説明】
【0049】
2 カートリッジ
21 ピストン
22 炭酸化・積層造形用モルタル組成物
23 ノズル

図1