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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073141
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240522BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240522BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240522BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240522BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01L29/78 658H
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652P
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/78 658A
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184184
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】熊田 恵志郎
(57)【要約】
【課題】内蔵ダイオードの通電劣化を抑制すると共に、活性素子のオン抵抗のばらつきを抑制することができる炭化珪素半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】炭化珪素基板1pの上面側にドリフト層2をエピタキシャル成長させる工程と、ドリフト層2の上面側にベース領域6を形成する工程と、ドリフト層2の上面側に主領域7を形成する工程と、ベース領域6及び主領域7に注入された不純物イオンを活性化するための活性化アニール工程と、ゲート絶縁膜及びゲート電極を形成する工程と、ベース領域及び主領域に電気的に接続される主電極を形成する工程と、活性化アニール工程よりも後で、且つ主電極を形成する工程よりも前に、ドリフト層2の上面側からライフタイムキラーを照射する工程を含み、ライフタイムキラーを照射する工程よりも後で、且つ主電極を形成する工程よりも前に、900℃以上、1300℃以下で熱処理を行う。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の炭化珪素基板と、
前記炭化珪素基板の上面側に設けられた第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層の上面側に設けられた第2導電型のベース領域と、
前記ドリフト層の上面側に前記ベース領域に接して設けられた第1導電型の主領域と、
前記主領域及びベース領域に接して設けられた絶縁ゲート型電極構造と、
前記ドリフト層の下面を含むように設けられたライフタイムキラー領域と、
を備え、
前記ライフタイムキラー領域のライフタイムが0.08μs以上、0.14μs以下である炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁ゲート型電極構造が、前記ベース領域及び前記主領域を貫通するトレンチに埋め込まれ、
前記トレンチ直下の前記ライフタイムキラー領域の深さが、前記トレンチの周囲の前記ライフタイムキラー領域の深さよりも深い
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記炭化珪素基板と前記ドリフト層との間に設けられ、前記ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の転位変換層を更に備える
請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記転位変換層と前記ドリフト層との間に設けられ、前記転位変換層よりも高不純物濃度の第1導電型の再結合促進層を更に備える
請求項3に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
第1導電型の炭化珪素基板の上面側に第1導電型のドリフト層をエピタキシャル成長させる工程と、
第2導電型の不純物イオンを注入して前記ドリフト層の上面側にベース領域を形成する工程と、
第1導電型の不純物イオンを注入して前記ドリフト層の上面側に前記ベース領域に接するように主領域を形成する工程と、
前記ベース領域及び前記主領域にそれぞれ注入された前記不純物イオンを活性化するための活性化アニール工程と、
前記ベース領域及び前記主領域に接するようにゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ベース領域及び前記主領域に前記ゲート絶縁膜を介して接するようにゲート電極を形成する工程と、
前記ベース領域及び前記主領域の上面に前記ゲート電極を覆う層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する工程と、
前記コンタクトホールを介して前記ベース領域及び前記主領域に電気的に接続される主電極を形成する工程と、
前記活性化アニール工程よりも後で、且つ前記主電極を形成する工程よりも前に、前記ドリフト層の上面側からライフタイムキラーを照射する工程と、
を含み、
前記ライフタイムキラーを照射する工程よりも後で、且つ前記主電極を形成する工程よりも前に、900℃以上、1300℃以下で熱処理を行う炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ベース領域及び前記主領域を貫通するトレンチを形成する工程を更に含み、
前記ライフタイムキラーを照射する工程は、前記トレンチを形成する工程よりも前に行う
請求項5に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ベース領域及び前記主領域を貫通するトレンチを形成する工程を更に含み、
前記ライフタイムキラーを照射する工程は、前記トレンチを形成する工程よりも後で、且つ前記ゲート絶縁膜を形成する工程よりも前に行う
請求項5に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記ライフタイムキラーを照射する工程は、前記ゲート電極を形成する工程よりも後で、且つ前記コンタクトホールを形成する工程よりも前に行う
請求項5に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理は、前記ゲート絶縁膜を形成する工程に含まれる
請求項5又は6に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記コンタクトホールを形成する工程よりも後に、前記層間絶縁膜を平坦化するためのリフロー工程を更に含み、
前記熱処理は、前記リフロー工程に含まれる
請求項5又は6に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記主電極を形成する工程よりも前に、前記ベース領域及び前記主領域の上面にソースコンタクト層を形成する工程を更に含み、
前記熱処理は、前記ソースコンタクト層のシンタリング工程に含まれる
請求項5又は6に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記ライフタイムキラーは、プロトン又はヘリウムイオンである
請求項5又は6に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記プロトン又はヘリウムイオンのドーズ量は1×1010cm-2以上、2×1012cm-2以下である
請求項12に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記ライフタイムキラーを照射して形成されるライフタイムキラー領域のライフタイムが0.08μs以上、0.14μs以下である
請求項5又は6に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記ドリフト層をエピタキシャル成長させる工程よりも前に、前記炭化珪素基板の上面側に、前記ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の転位変換層を形成する工程を更に含む
請求項5又は6に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記転位変換層を形成する工程よりも後、且つ前記ドリフト層をエピタキシャル成長させる工程よりも前に、前記転位変換層の上面側に、前記転位変換層よりも高不純物濃度の第1導電型の再結合促進層を形成する工程を更に含む
請求項15に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素(SiC)を用いたSiC半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内蔵ダイオードの通電劣化の原因となる積層欠陥の拡張を防止するため、熱処理(リフロー)により層間絶縁膜を平坦化した後に、おもて面側からライフタイムキラーとしてプロトン等を注入するSiC半導体装置の製造方法が開示されている。特許文献2には、基板の下面を研磨した後に、基板の裏面側からプロトン等を注入するSiC半導体装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-102493号公報
【特許文献2】特開2022-163554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SiC半導体装置では、シリコン(Si)を用いたSi半導体装置と比較して、基板の厚さが厚く、且つ基板上にエピタキシャル成長させたドリフト層の厚さが薄い。このため、基板の裏面側からライフタイムキラーを照射すると、ライフタイムキラーのドリフト層内の分布がばらつき、活性素子のオン抵抗がばらつく。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑み、内蔵ダイオードの通電劣化を抑制すると共に、活性素子のオン抵抗のばらつきを抑制することができるSiC半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の一態様は、(a)第1導電型のSiC基板と、(b)SiC基板の上面側に設けられた第1導電型のドリフト層と(c)ドリフト層の上面側に設けられた第2導電型のベース領域と、(d)ドリフト層の上面側にベース領域に接して設けられた第1導電型の主領域と、(e)主領域及びベース領域に接して設けられた絶縁ゲート型電極構造と、(f)ドリフト層の下面を含むように設けられたライフタイムキラー領域とを備え、ライフタイムキラー領域のライフタイムが0.08μs以上、0.14μs以下であるSiC半導体装置であることを要旨とする。
【0007】
本開示の他の態様は、(a)第1導電型のSiC基板の上面側に第1導電型のドリフト層をエピタキシャル成長させる工程と、(b)第2導電型の不純物イオンを注入してドリフト層の上面側にベース領域を形成する工程と、(c)第1導電型の不純物イオンを注入してドリフト層の上面側にベース領域に接するように主領域を形成する工程と、(d)ベース領域及び主領域にそれぞれ注入された不純物イオンを活性化するための活性化アニール工程と、(e)ベース領域及び主領域に接するようにゲート絶縁膜を形成する工程と、(f)ベース領域及び主領域にゲート絶縁膜を介して接するようにゲート電極を形成する工程と、(g)ベース領域及び主領域の上面にゲート電極を覆う層間絶縁膜を形成する工程と、(h)層間絶縁膜にベース領域及び主領域を露出するコンタクトホールを形成する工程と、(i)コンタクトホールを介してベース領域及び主領域に電気的に接続される主電極を形成する工程と、(j)活性化アニール工程よりも後で、且つ主電極を形成する工程よりも前に、ドリフト層の上面側からライフタイムキラーを照射する工程とを含み、ライフタイムキラーを照射する工程よりも後で、且つ主電極を形成する工程よりも前に、900℃以上、1300℃以下で熱処理を行うSiC半導体装置の製造方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、内蔵ダイオードの通電劣化を抑制すると共に、活性素子のオン抵抗のばらつきを抑制することができるSiC半導体装置及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るSiC半導体装置の一例を示す平面概略図である。
図2図1中のA-A線方向から見た断面概略図である。
図3】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面概略図である。
図4】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図3に引き続く断面概略図である。
図5】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図4に引き続く断面概略図である。
図6】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図5に引き続く断面概略図である。
図7】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図6に引き続く断面概略図である。
図8】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図7に引き続く断面概略図である。
図9】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図8に引き続く断面概略図である。
図10】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図9に引き続く断面概略図である。
図11】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図10に引き続く断面概略図である。
図12】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図11に引き続く断面概略図である。
図13】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図12に引き続く断面概略図である。
図14】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図13に引き続く断面概略図である。
図15】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図14に引き続く断面概略図である。
図16】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図15に引き続く断面概略図である。
図17】各種条件下でのSiCのライフタイム測定結果を示すグラフである。
図18】各種条件下でのSiCのライフタイム測定結果を示す表である。
図19】第2実施形態に係るSiC半導体装置の一例を示す断面概略図である。
図20】第2実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面概略図である。
図21】第3実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面概略図である。
図22】第4実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面概略図である。
図23】第5実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面概略図である。
図24】第6実施形態に係るSiC半導体装置の一例を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示の第1~第6実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なる場合がある。また、図面相互間においても寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、以下に示す第1~第6実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。
【0011】
本明細書において、MOSトランジスタのソース領域は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)のエミッタ領域として選択可能な「一方の主領域(第1主領域)」である。また、MOS制御静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)等のサイリスタにおいては、「一方の主領域」はカソード領域として選択可能である。MOSトランジスタのドレイン領域は、IGBTにおいてはコレクタ領域を、サイリスタにおいてはアノード領域として選択可能な半導体装置の「他方の主領域(第2主領域)」である。本明細書において単に「主領域」と言うときは、当業者の技術常識から妥当な第1主領域又は第2主領域のいずれかを意味する。
【0012】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本開示の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。また、「上面」は「おもて面」と読み替えてもよく、「下面」は「裏面」と読み替えてもよい。
【0013】
また、以下の説明では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても構わない。またnやpに付す+や-は、+及び-が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。ただし同じnとnとが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。
【0014】
また、SiC結晶には結晶多形が存在し、主なものは立方晶の3C、及び六方晶の4H、6Hである。室温における禁制帯幅は3C-SiCでは2.23eV、4H-SiCでは3.26eV、6H-SiCでは3.02eVの値が報告されている。以下の説明では、4H-SiCを用いる場合を例示する。
【0015】
(第1実施形態)
<SiC半導体装置の構造>
第1実施形態に係るSiC半導体装置は、図1に示すように、SiC半導体基板(基板)100を用いて製造される。基板100は、複数のチップ領域101と、ダイシングライン102を含む。例えば、チップ領域101は、矩形状の平面形状を有し、マトリックス状に基板100に設けられている。ダイシングライン102は、チップ領域101のそれぞれを囲むように格子状に設けられている。
【0016】
チップ領域101は、図2に示すように、活性素子を含む活性領域101aと、活性領域101aの周囲に設けられ、耐圧構造を有する終端領域(外周部)101bとを含む。図2では、活性領域101aが、活性素子として第1導電型(n型)のドリフト層2の上部に設けられたトレンチゲート構造の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を含み、終端領域101bが、耐圧構造として電界緩和領域(ガードリング)6aを含む場合を例示している。
【0017】
ドリフト層2は、SiCからなるエピタキシャル成長層で構成されている。ドリフト層2の不純物濃度は、例えば1×1015cm-3以上、5×1016cm-3以下程度である。ドリフト層2の厚さは、例えば1μm以上、100μm以下程度である。ドリフト層2の不純物濃度及び厚さは、後述する内蔵ダイオードの耐圧仕様等に応じて適宜調整可能である。
【0018】
活性領域101aにおいて、ドリフト層2の上面側には第2導電型(p型)のベース領域6が設けられている。ベース領域6は、SiCからなるエピタキシャル成長層で構成されている。ベース領域6の不純物濃度は、例えば1×1016cm-3以上、1×1018cm-3以下程度である。ベース領域6は、ドリフト層2にp型不純物をイオン注入した領域であってよい。
【0019】
ベース領域6の上部には、ベース領域6よりも高不純物濃度のp型のベースコンタクト領域8が選択的に設けられている。ベースコンタクト領域8の不純物濃度は、例えば5×1018cm-3以上、5×1020cm-3以下程度である。
【0020】
ベース領域6の上部には、ベースコンタクト領域8に接するように、ドリフト層2よりも高不純物濃度のn型の第1主領域(ソース領域)7が選択的に設けられている。ソース領域7の不純物濃度は、例えば5×1018cm-3以上、5×1020cm-3以下程度である。
【0021】
ソース領域7の上面から深さ方向に向かって、ソース領域7及びベース領域6を貫通するトレンチ9が設けられている。トレンチ9の幅は例えば1μm以下程度である。トレンチ9の側面には、ソース領域7及びベース領域6が接している。トレンチ9の下面及び側面に沿ってゲート絶縁膜11が設けられている。トレンチ9の内側にはゲート絶縁膜11を介してゲート電極12が埋め込まれている。ゲート絶縁膜11及びゲート電極12により絶縁ゲート型電極構造(11,12)が構成されている。
【0022】
ゲート絶縁膜11としては、シリコン酸化膜(SiO膜)の他、酸窒化珪素(SiON)膜、ストロンチウム酸化物(SrO)膜、窒化珪素(Si)膜、アルミニウム酸化物(Al)膜、マグネシウム酸化物(MgO)膜、イットリウム酸化物(Y)膜、ハフニウム酸化物(HfO)膜、ジルコニウム酸化物(ZrO)膜、タンタル酸化物(Ta)膜、ビスマス酸化物(Bi)膜のいずれか1つの単層膜或いはこれらの複数を積層した複合膜等が採用可能である。ゲート電極12の材料としては、例えば燐(P)やボロン(B)等の不純物を高不純物濃度に添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)が使用可能である。
【0023】
ドリフト層2の上部には、ドリフト層2よりも高不純物濃度のn型の電流拡散層(CSL)3が選択的に設けられている。電流拡散層3の上面はベース領域6の下面に接する。電流拡散層3の不純物濃度は、例えば5×1016cm-3以上、5×1017cm-3以下程度である。トレンチ9の下面は電流拡散層3に達する。なお、電流拡散層3は必ずしも設ける必要はなく、電流拡散層3を設けない場合にはトレンチ9の下面はドリフト層2に達する。
【0024】
ドリフト層2の上部で、且つトレンチ9の底部には、p型のゲート底部保護領域4bが設けられている。ゲート底部保護領域4bの上面はトレンチ9の下面に接している。ゲート底部保護領域4bの側面は電流拡散層3に接している。ゲート底部保護領域4bの下面はドリフト層2に接している。ゲート底部保護領域4bの不純物濃度は、例えば1×1017cm-3以上、1×1019cm-3以下程度である。
【0025】
ドリフト層2の上部で、且つベースコンタクト領域8の下方には、ゲート底部保護領域4bと同程度の深さで、ゲート底部保護領域4bから離間してp型の第1埋込領域4aが設けられている。ドリフト層2の上部で、且つ第1埋込領域4aの上面とベース領域6の下面の間には、p型の第2埋込領域5が設けられている。第1埋込領域4a及び第2埋込領域5によりベース底部埋込領域(4a,5)が構成されている。図2では図示を省略するが、図2の紙面の手前側及び奥行側において、第1埋込領域4aとゲート底部保護領域4bとを接続するp型の接続部が選択的に設けられている。第1埋込領域4a、第2埋込領域5及びp型の接続部の不純物濃度は、例えば1×1017cm-3以上、1×1019cm-3以下程度である。
【0026】
ゲート電極12の上面側には層間絶縁膜13が設けられている。層間絶縁膜13としては、例えば硼素(B)及び燐(P)を添加したシリコン酸化膜(BPSG膜)が用いられる。層間絶縁膜13としては、燐(P)を添加したシリコン酸化膜(PSG膜)、「NSG」と称される燐(P)や硼素(B)を含まないノンドープのシリコン酸化膜、硼素(B)を添加したシリコン酸化膜(BSG膜)、シリコン窒化膜(Si膜)等でもよい。またこれらの積層膜でもよい。
【0027】
層間絶縁膜13のコンタクトホール13aに露出したソース領域7及びベースコンタクト領域8の上面側にはソースコンタクト層14が設けられている。ソースコンタクト層14は、ソース領域7及びベースコンタクト領域8に物理的に接している。層間絶縁膜13及びソースコンタクト層14を覆うようにバリアメタル層15が設けられている。バリアメタル層15を覆うように第1主電極(ソース電極)16が設けられている。ソース電極16は、バリアメタル層15及びソースコンタクト層14を介してソース領域7及びベースコンタクト領域8に電気的に接続されている。ソース電極16は、ゲート電極12に電気的に接続されるゲート表面電極(図示省略)と分離して設けられている。例えば、ソースコンタクト層14をニッケルシリサイド(NiSi)膜、バリアメタル層15を窒化チタン(TiN)膜やチタン(Ti)膜、ソース電極16をアルミニウム(Al)膜やアルミニウム-シリコン(Al-Si)膜で構成することができる。
【0028】
ドリフト層2の下面側には、ドリフト層2よりも高不純物濃度のn型の転位変換層(バッファ層)21が設けられている。転位変換層21は、積層欠陥の拡張の起点となる基底面転位を、積層欠陥に拡張しない貫通転位に変換する機能を有する。転位変換層21の不純物濃度は例えば5×1017cm-3以上、1×1018cm-3以下程度である。転位変換層21の厚さは例えば0.3μm以上、3.0μm以下程度である。ドリフト層2と転位変換層21の界面近傍にはライフタイムキラー領域22が設けられている。ライフタイムキラー領域22については後述する。
【0029】
転位変換層21の下面側には、転位変換層21よりも高不純物濃度のn型の第2主領域(ドレイン領域)1が設けられている。ドレイン領域1はSiC半導体基板(基板)で構成されている。ドレイン領域1の不純物濃度は、例えば1×1019cm-3以上、3×1020cm-3以下程度である。ドレイン領域1の厚さは、例え30μm以上、100μm以下程度である。
【0030】
ドレイン領域1の下面側には第2主電極(ドレイン電極)18が設けられている。ドレイン電極18としては、例えば金(Au)からなる単層膜や、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、Auの順で積層された金属膜が使用可能であり、更にその最下層にモリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属膜を積層してもよい。また、ドレイン領域1とドレイン電極18との間にニッケルシリサイド(NiSi)膜等のドレインコンタクト層が設けられてもよい。
【0031】
終端領域101bにおいて、活性領域101aから延在するp型のベース領域6を貫通してドリフト層2に達するn型の複数の分離領域17が設けられている。複数の分離領域17は、活性領域101aを取り囲むように、同心リング状に設けられている。複数の分離領域17に挟まれたp型のベース領域6が、p型の複数の電界緩和領域(ガードリング)6aとなる。したがって、複数のガードリング6aと複数の分離領域17は、互いに接して交互に設けられている。複数のガードリング6aは、複数の分離領域17により互いに離間して同心リング状に設けられている。
【0032】
複数のガードリング6a及び複数の分離領域17の上面にはフィールド絶縁膜10を介して、活性領域101aから延在する層間絶縁膜13が設けられる。終端領域101bの外側端部において、分離領域17の上部にn型のチャネルストッパを同心リング状に設けてもよい。なお、n型のチャネルストッパの代わりに、p型のチャネルストッパを設けてもよい。
【0033】
第1実施形態に係るSiC半導体装置の動作時は、ソース電極16をアース電位として、ドレイン電極18に正電圧を印加し、ゲート電極12に閾値以上の正電圧を印加すると、ベース領域6のトレンチ9の側面側に反転層(チャネル)が形成されてオン状態となる。反転層は、ベース領域6がゲート電極12に対向する位置に挟まれたゲート絶縁膜11とベース領域6との界面となるトレンチ9の側面に露出したベース領域6の表面に形成される。オン状態では、ドレイン電極18からドレイン領域1、転位変換層21、ドリフト層2、電流拡散層3、ベース領域6の反転層及びソース領域7を経由してソース電極16へ電流が流れる。一方、ゲート電極12に印加される電圧が閾値未満の場合、ベース領域6に反転層が形成されないため、オフ状態となり、ドレイン電極18からソース電極16へ電流が流れない。
【0034】
第1実施形態に係るSiC半導体装置では、p型のベース領域6がn型のドリフト層2の上部に形成されることにより、pn接合の内蔵ダイオード(ボディダイオード)が形成される。即ち、p型のベースコンタクト領域8、p型のベース領域6及びp型のベース底部埋込領域(4a,5)は内蔵ダイオードのアノード領域として機能し、n型のドレイン領域1は内蔵ダイオードのカソード領域として機能する。n型の電流拡散層3及びn型のドリフト層2は、ドレイン領域1から供給される多数キャリア(電子)がドリフト走行する走行領域として機能する。ベースコンタクト領域8側から、ベース領域6を介してドリフト層2に少数キャリア(正孔)が注入される。
【0035】
ドリフト層2に注入された正孔は、十分高い密度で転位変換層21を介してドレイン領域1に到達し得る。転位変換層21とドレイン領域1との界面近傍に局在する基底面転位を起点として、積層欠陥がドリフト層2内で拡張することになる。積層欠陥は高抵抗領域となるため、電流は積層欠陥のない領域を流れることになる。この結果、内蔵ダイオードにおいて、順方向電圧(オン電圧)やオン抵抗の増加等の順方向特性の劣化を招いてしまう。
【0036】
そこで、第1実施形態に係るSiC半導体装置では、ドリフト層2と転位変換層21の間にライフタイムキラー領域22が設けられている。ライフタイムキラー領域22は、ドリフト層2の下面を含むように設けられている。換言すれば、ライフタイムキラー領域22は、ドリフト層2と転位変換層21との界面を含むように設けられている。ライフタイムキラー領域22は、少数キャリアの正孔を再結合する再結合中心としての結晶欠陥を有し、ドリフト層2よりも少数キャリアの正孔のライフタイムが短い領域である。結晶欠陥は、イオン注入されたプロトン(水素)又はヘリウムにより形成された点欠陥からなる。水素又はヘリウムの面密度は、例えば5×1010cm-2以上、2×1012cm-2以下程度である。ライフタイムキラー領域22の厚さは例えば0.2μm以上、5μm以下程度である。ライフタイムキラー領域22の少数キャリア(正孔)のライフタイムは、例えば0.08μs以上、0.14μs以下程度である
【0037】
水素又はヘリウムにより形成された点欠陥の濃度の深さ方向のピーク位置は、転位変換層21とドリフト層2との界面よりも深い、転位変換層21内の位置にあることが好ましい。この位置に調整することにより、ライフタイムキラー領域22が正孔を再結合させる機能を十分に維持しつつ、水素又はヘリウムがゲート絶縁膜11に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0038】
水素又はヘリウムにより形成された点欠陥の濃度の深さ方向のピーク位置は、転位変換層21とドリフト層2との界面に対して水素又はヘリウムにより形成された点欠陥の濃度の半値全幅(FWHM)だけ浅いドリフト層2内の位置から、転位変換層21とドリフト層2との界面に対して半値全幅の5倍だけ深い基板1内の位置までの範囲内に形成してもよい。半値全幅は、例えば水素又はヘリウムを照射する際に用いる遮蔽層の厚さ及び水素又はヘリウムの加速電圧を調整することにより適宜調整可能である。
【0039】
<SiC半導体装置の製造方法>
次に、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明する。なお、以下に述べるSiC半導体装置の製造方法は一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0040】
まず、窒素(N)等のn型不純物が添加されたn型のSiC半導体基板(基板)1p(図3参照)を用意する。基板1pの上面に、N等のn型不純物が添加され、基板1pよりも低不純物濃度のn型のSiCからなる転位変換層(バッファ層)21(図3参照)をエピタキシャル成長させる。転位変換層21の下面は基板1pの上面に接する。
【0041】
次に、転位変換層21の上面に、N等のn型不純物が添加され、転位変換層21よりも低不純物濃度のn型のSiCからなるドリフト層2p(図3参照)をエピタキシャル成長させる。ドリフト層2pの下面は転位変換層21の上面に接する。
【0042】
次に、ドリフト層2pの上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術等を用いてフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をイオン注入用マスクとして用いて、窒素(N)等のn型不純物を、ドリフト層2pに選択的にイオン注入する。その後、イオン注入用マスクとして用いたフォトレジスト膜を除去する。この結果、図3に示すように、活性領域101aのドリフト層2pの上部にn型イオン注入層3pが選択的に形成される。
【0043】
次に、化学気相成長(CVD)技術等により、n型イオン注入層3p及びドリフト層2pの上面に酸化膜40(図4参照)を堆積する。酸化膜40の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等を用いて酸化膜40をパターニングする。パターニングされた酸化膜40をイオン注入用マスクとして用いて、アルミニウム(Al)等のp型不純物を、n型イオン注入層3pに選択的にイオン注入する。この結果、図4に示すように、n型イオン注入層3pの内部にp型の第1埋込領域4a及びp型のゲート底部保護領域4bが選択的に形成される。その後、イオン注入用マスクとして用いた酸化膜40を除去する。
【0044】
次に、n型イオン注入層3p、第1埋込領域4a、ゲート底部保護領域4b及びドリフト層2pの上面に、n型のSiCからなるエピタキシャル成長層55(図5参照)をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長層55の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術等を用いてフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をイオン注入用マスクとして用いて、窒素(N)等のn型不純物を、エピタキシャル成長層55に選択的にイオン注入する。その後、イオン注入用マスクとして用いたフォトレジスト膜を除去する。この結果、図5に示すように、活性領域101aのエピタキシャル成長層55の内部に、n型イオン注入層5pが選択的に形成される。
【0045】
次に、CVD技術等により、n型イオン注入層5p及びエピタキシャル成長層55の上面に酸化膜60(図6参照)を堆積する。酸化膜60の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等を用いて酸化膜60をパターニングする。パターニングされた酸化膜60をイオン注入用マスクとして用いて、アルミニウム(Al)等のp型不純物を、n型イオン注入層5pに選択的にイオン注入する。この結果、図6に示すように、n型イオン注入層5pの第1埋込領域4aの上面側に対応する位置に、p型の第2埋込領域5が選択的に形成される。その後、イオン注入用マスクとして用いた酸化膜60を除去する。
【0046】
次に、ベース底部埋込領域5、n型イオン注入層5p及びドリフト層2の上面に、p型のベース領域6p(図7参照)をエピタキシャル成長させる。CVD技術等により、ベース領域6pの上面に酸化膜を堆積する。この酸化膜の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等を用いて酸化膜をパターニングする。パターニングされた酸化膜をイオン注入用マスクとして用いて、アルミニウム(Al)等のp型不純物を、ベース領域6pに選択的にイオン注入する。その後、イオン注入用マスクとして用いた酸化膜を除去する。この結果、図7に示すように、ベース底部埋込領域5及びn型イオン注入層5pの上方に位置するベース領域6pの上部に、p型のベースコンタクト領域8が選択的に形成される。
【0047】
次に、CVD技術等により、ベースコンタクト領域8及びベース領域6pの上面に酸化膜70(図8参照)を堆積する。酸化膜70の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等を用いて酸化膜70をパターニングする。パターニングされた酸化膜70をイオン注入用マスクとして用いて、燐(P)等のn型不純物を、ベース領域6pに選択的にイオン注入する。この結果、図8に示すように、n型イオン注入層5pの上方に位置するベース領域6pの上部に、n型のソース領域7が形成される。その後、イオン注入用マスクとして用いた酸化膜70を除去する。
【0048】
次に、ベースコンタクト領域8、ソース領域7及びベース領域6pの上面にフォトレジスト膜80(図9参照)を塗布し、フォトリソグラフィ技術等を用いてフォトレジスト膜80をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜80をイオン注入用マスクとして用いて、窒素(N)等のn型不純物を、ベース領域6pに選択的にイオン注入する。この結果、図9に示すように、終端領域101bのベース領域6pにn型の複数の分離領域17が形成される。また、複数の分離領域17に挟まれたベース領域6pがp型の複数のガードリング6aとなり、互いに離間して同心リング状に形成される。また、活性領域101aのベース領域6pがベース領域6となる。その後、イオン注入用マスクとして用いたフォトレジスト膜80を除去する。
【0049】
次に、活性化アニール(熱処理)を行うことにより、第1埋込領域4a、ゲート底部保護領域4b、第2埋込領域5、ソース領域7、ベースコンタクト領域8、ガードリング6a等にそれぞれイオン注入されたp型不純物イオン又はn型不純物を一斉に活性化させる。この結果、n型イオン注入層3pとn型イオン注入層5pとからなるn型の電流拡散層3(図10参照)がドリフト層2の上面に形成される。活性化アニールの温度は例えば1600℃以上、1850℃以下程度であり、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法において最も高温となる。なお、ここではすべてのイオン注入工程の後に一括して1回の活性化アニールを行う場合を例示するが、各イオン注入工程後に個別に複数回の活性化アニールを行ってもよい。
【0050】
次に、図10に示すように、ドリフト層2の上面側から、ドリフト層2の上面の全領域に亘って、水素(H)イオンであるプロトン又はヘリウム(He)イオンを照射する。図10では、プロトン又はヘリウムイオンの照射を矢印で模式的に示している。プロトン又はヘリウムイオンのドーズ量は例えば1×1010cm-2以上、2×1012cm-2以下程度であり、加速電圧は例えば0.1MeV以上、25MeV以下程度である。低加速での照射時は多段イオン注入を、高加速電圧の場合は1段で注入を行い、照射したイオンの深さ方向分布を調整する。低加速で多段注入を行う場合、点欠陥の位置を正確に制御できる。高加速で1段注入の場合、照射時間を短縮できる。この結果、転位変換層21とドリフト層2との界面を含むようにライフタイムキラー領域22が一様に平坦に形成される。SiC半導体装置におけるドリフト層2の厚さは例えば10μm程度であり、Si半導体装置における例えば100μm程度のドリフト層よりも薄いため、プロトン又はヘリウムイオンをドリフト層2の上面側から、転位変換層21とドリフト層2との界面に精度よく照射することができる。
【0051】
次に、CVD技術等により、ベースコンタクト領域8、ソース領域7、ベース領域6、複数の分離領域17及び複数のガードリング6aの上面に酸化膜90(図11参照)を堆積する。酸化膜90の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等を用いて酸化膜をパターニングする。パターニングされた酸化膜90をエッチング用マスクとして用いて、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチング技術により、図11に示すように、トレンチ9を選択的に形成する。トレンチ9は、ソース領域7、ベース領域6、及び電流拡散層3を貫通してゲート底部保護領域4bに達する。その後、エッチング用マスクとして用いた酸化膜90を除去する。
【0052】
次に、CVD技術等により、フィールド絶縁膜10(図12参照)を堆積する。フィールド絶縁膜10の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等を用いてフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をエッチング用マスクとして用いて、フィールド絶縁膜10を選択的に除去する。この結果、図12に示すように、ガードリング6a及び分離領域17の上面にフィールド絶縁膜10が選択的に形成される。
【0053】
次に、熱酸化法又はCVD技術等により、トレンチ9の下面及び側面、並びにソース領域7及びベースコンタクト領域8の上面に、ゲート絶縁膜11(図13参照)を形成する。ゲート絶縁膜11の形成時には、例えば900℃以上、1300℃以下程度で熱処理を行う。ゲート絶縁膜11の形成時の熱処理の温度は、活性化アニールの温度よりも低く、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法において、活性化アニールの温度の次に高い。ゲート絶縁膜11の形成時の熱処理により、ライフタイムキラー領域22に含まれる結晶欠陥を安定化させることができる。
【0054】
次に、CVD技術等により、図13に示すように、トレンチ9を埋めるように、燐(P)やボロン(B)等の不純物を高濃度で添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)12pを堆積する。その後、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチングにより、ポリシリコン層12pの一部及びゲート絶縁膜11の一部を選択的に除去する。この結果、ゲート絶縁膜11及びゲート電極12からなる絶縁ゲート型電極構造(11,12)(図14参照)が形成される。
【0055】
次に、CVD技術等により、絶縁ゲート型電極構造(11,12)の上面に層間絶縁膜13(図14参照)を堆積する。フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等により、層間絶縁膜13の一部を選択的に除去し、層間絶縁膜13にソース領域7及びベースコンタクト領域8の上面を露出するコンタクトホール13aを開口する。次に、層間絶縁膜13を平坦化するための熱処理(リフロー)を行う。リフローの温度は、例えば900℃以上、1000℃以下程度である。リフローの温度は、ゲート絶縁膜11の形成時の熱処理の温度よりも低い。なお、層間絶縁膜13を平坦化するためのリフローは省略してもよい。
【0056】
次に、スパッタリング法又は蒸着法等によりニッケル(Ni)等からなる金属層を堆積する。フォトリソグラフィ技術及びRIE技術等を用いて金属層をパターニングする。その後、高速熱処理(RTA)等の熱処理(シンタリング)により、金属層の金属元素とSiC中のSiを反応させる。この結果、図15に示すように、ソース領域7及びベースコンタクト領域8の上面にシリサイド層からなるソースコンタクト層14が形成される。シンタリングの温度は、例えば900℃以上、1200℃以下程度である。シンタリングの温度は、ゲート絶縁膜11の形成時の熱処理の温度よりも低い。シンタリングの温度は、層間絶縁膜13のリフローの温度と同等であってもよく、層間絶縁膜13のリフローの温度よりも高くてもよく、或いは低くてもよい。なお、ソースコンタクト層14を形成しなくても、ソース領域7及びベースコンタクト領域8とソース電極16がオーミック接触可能である場合には、ソースコンタクト層14となる金属層を堆積する工程、金属層をパターニングする工程、及びシンタリングによりソースコンタクト層14を形成する工程を省略してもよい。
【0057】
次に、スパッタリング技術等により、窒化チタン(TiN)等からなる金属層を堆積する。フォトリソグラフィ技術及びRIE技術等を用いて金属層をパターニングして、層間絶縁膜13及びソースコンタクト層14を被覆するようにバリアメタル層15(図16参照)を形成する。
【0058】
次に、スパッタリング法等により、アルミニウム(Al)等からなる金属層を堆積する。フォトリソグラフィ技術とRIE技術等を用いて金属層をパターニングする。この結果、図16に示すように、バリアメタル層15を被覆するようにソース電極16が形成される。ソース電極16は、ソースコンタクト層14及びバリアメタル層15を介して、ソース領域7及びベースコンタクト領域8に電気的に接続される。
【0059】
次に、研削又は化学機械研磨(CMP)等により、基板1pを下面側から薄化して厚さを調整することにより、ドレイン領域1(図2参照)を形成する。次に、スパッタリング法又は蒸着法等により、ドレイン領域1の下面の全面に金(Au)等からなるドレイン電極18(図2参照)を形成する。このようにして、図2に示したSiC半導体装置が完成する。
【0060】
なお、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法においては、図10のライフタイムキラーの照射工程を、図9の活性化アニールの工程よりも後で、且つ図11のトレンチ9の形成工程よりも前に行う場合を例示した。しかし、ライフタイムキラーの照射工程は、図9の活性化アニールの工程よりも後で、且つ図16のソース電極16の形成工程よりも前のいずれの段階で行ってもよい。
【0061】
<実施例>
図17及び図18は、SiCについて、「1750℃+1300℃」、「1300℃」、「照射直後」及び「未照射」の4つの条件下での、マイクロ波検出フォトコンダクタンス減衰(μ-PCD)法によるライフタイムの測定結果を示す。
【0062】
「1750℃+1300℃」は比較例であり、SiCにヘリウム(He)イオンを照射後、活性化アニール時の温度である1750℃で加熱し、更にゲート絶縁膜11の形成時の温度である1300℃で加熱した場合であり、活性化アニール前にHeイオンを照射する場合を想定している。「1300℃」は第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の実施例であり、Heイオンを照射後、1300℃で加熱した場合であり、活性化アニール後、且つゲート絶縁膜11の形成前にHeイオンを照射する場合を想定している。「照射直後」は比較例であり、Heイオンを照射後、熱処理を行っていない場合である。「未照射」は比較例であり、Heイオンを照射していない場合である。各条件のHeイオンの照射時の加速電圧は23MeV、ドーズ量は1.5×1011cm-2である。
【0063】
図17の横軸は時間を示し、図17の縦軸はマイクロ波反射強度を示す。図18は、マイクロ波反射強度が1/eに減衰するまでの時間である実効的なライフタイムを示す。図17及び図18から、実施例である「1300℃」では、比較例である「未照射」及び比較例である「1750℃+1300℃」よりもライフタイムが短くなることが確認できる。
【0064】
<効果>
第1実施形態によれば、ライフタイムキラーとしてプロトン又はヘリウムイオンをドリフト層2の上面側から照射することにより、Si半導体装置と比較してドリフト層2が薄いため、転位変換層21とドリフト層2との界面に精度よく照射することができ、ライフタイムキラー領域22を精度よく形成することができる。このため、内蔵ダイオードに通電時に、ライフタイムキラー領域22が少数キャリアである正孔を効率よく再結合して消滅させることができ、積層欠陥の拡張を抑制することができる。よって、大電流を印加しても内蔵ダイオードの順方向電圧等の通電劣化を抑制することができる。更に、MOSFETのオン抵抗のばらつきを抑制することができる。
【0065】
更に、SiCはバンドギャップが大きく結合エネルギが強いため、活性化アニールによりSiC中の炭素(C)が脱離し、禁制帯間の中間に準位が形成される。このため、図10のライフタイムキラーの照射工程を、図9の活性化アニール工程よりも後に行うことにより、プロトン又はヘリウムイオンによる準位が形成されるため、禁制帯間に形成した準位を回復できない。よって、図9の活性化アニール工程よりも前に行う場合と比較して、ライフタイムキラーを照射による欠陥を安定して制御することができる。
【0066】
更に、図10のライフタイムキラーの照射工程を、図16のソース電極16の形成工程よりも前に行うことにより、図16のソース電極16の形成工程よりも後に行う場合と比較して、ソース電極16やソース電極16を覆うポリイミド等の保護膜(不図示)等が形成されていないため、ライフタイムキラー領域22の深さ方向のばらつきを抑制することができる。
【0067】
更に、図10のライフタイムキラーの照射工程を、図11のトレンチ9の形成工程よりも前に行うことにより、図11のトレンチ9の形成工程よりも後に行う場合と比較して、トレンチ9による凹凸の影響を受けずに、ライフタイムキラー領域22を精度よく平坦に形成することができる。
【0068】
更に、図10のライフタイムキラーの照射工程を、図13のゲート絶縁膜11の形成工程よりも前に行うことにより、図13のゲート絶縁膜11の形成工程よりも後に行う場合と比較して、ゲート絶縁膜11に影響を及ぼすことを防止することができ、ゲート閾値変動を防止することができる。
【0069】
更に、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法では、図10のライフタイムキラーの照射工程よりも後に、900℃以上、1300℃以下程度の熱処理として、図13のゲート絶縁膜11の形成工程の900℃以上、1300℃以下程度の熱処理、図14の層間絶縁膜13を平坦化するためのリフロー工程における900℃以上、1000℃以下程度の熱処理、及び図16のソースコンタクト層14をシンタリングするための900℃以上、1200℃以下程度の熱処理を含む。これにより、ライフタイムキラー領域22におけるライフタイムを犠牲にすることなく、ライフタイムキラー領域22の結晶欠陥を安定して形成することができる。
【0070】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るSiC半導体装置は、図19に示すように、トレンチ9直下のライフタイムキラー領域22aの深さが、トレンチ9直下を含まないトレンチ9の周囲の領域におけるライフタイムキラー領域22aの深さよりも深い点が、図2に示した第1実施形態に係るSiC半導体装置と異なる。
【0071】
トレンチ9の周囲の領域におけるライフタイムキラー領域22は、図2に示したライフタイムキラー領域22と同様の深さで、平坦且つ一様に設けられている。一方、トレンチ9直下におけるライフタイムキラー領域22aは、例えば、ドレイン領域1の内部に設けられている。第2実施形態に係るSiC半導体装置の他の構成は、図2に示した第1実施形態に係るSiC半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0072】
第2実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法としては、図20に示すように、トレンチ9の形成工程よりも後で、且つゲート絶縁膜11の形成工程よりも前に、ドリフト層2の上面側からライフタイムキラーとしてプロトン又はヘリウムイオンを照射することにより、ライフタイムキラー領域22,22aを形成する。この際、トレンチ9直下のライフタイムキラー領域22aが選択的に、トレンチ9の周囲の領域におけるライフタイムキラー領域22aよりも深く形成される。
【0073】
第2実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法では、図20のライフタイムキラーの照射工程よりも後に、図13の900℃以上、1300℃以下程度のゲート絶縁膜11の形成工程が実施される。また、図14の900℃以上、1000℃以下程度の層間絶縁膜13を平坦化するためのリフロー工程、及び図16の900℃以上、1200℃以下程度のソースコンタクト層14のシンタリング工程も実施されてよい。第2実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の他の手順は、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0074】
第2実施形態によれば、ライフタイムキラー領域22,22aを精度よく形成することにより、内蔵ダイオードの通電劣化を抑制すると共に、活性素子のオン抵抗のばらつきを抑制することができる。
【0075】
更に、トレンチ9直下の領域とトレンチ9の周囲の領域とで、ライフタイムキラーを異なる深さに注入することができ、ライフタイムキラー領域22,22aを異なる深さで形成することができるため、オン電圧の微調整が可能となる。
【0076】
更に、図20のライフタイムキラーの照射工程を、図13のゲート絶縁膜11の形成工程よりも前に行うことにより、図13のゲート絶縁膜11の形成工程よりも後に行う場合と比較して、ゲート絶縁膜11に影響を及ぼすことを防止することができ、ゲート閾値変動を防止することができる。
【0077】
更に、図20のライフタイムキラーの照射工程を、図14の層間絶縁膜13の形成工程よりも前に行うことにより、図14の層間絶縁膜13の形成工程よりも後に行う場合と比較して、層間絶縁膜13、ソース電極16、及びソース電極16を覆うポリイミド等の保護膜(不図示)等が形成されていないため、ライフタイムキラー領域22の深さ方向のばらつきを抑制することができる。
【0078】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法は、図21に示すように、ゲート絶縁膜11及びゲート電極12からなる絶縁ゲート型電極構造(11,12)の形成工程よりも後で、且つ層間絶縁膜13の形成工程よりも前に、ドリフト層2の上面側からライフタイムキラーとしてプロトン又はヘリウムイオンを照射することにより、ライフタイムキラー領域22を形成する点が、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と異なる。
【0079】
第3実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法では、図21のライフタイムキラーの照射工程よりも後に、図14の900℃以上、1000℃以下程度の層間絶縁膜13を平坦化するためのリフロー工程、及び図16の900℃以上、1200℃以下程度のソースコンタクト層14のシンタリング工程のうちの少なくともいずれかが実施される。第3実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の他の手順は、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0080】
第3実施形態によれば、ライフタイムキラー領域22を精度よく形成することにより、内蔵ダイオードの通電劣化を抑制すると共に、活性素子のオン抵抗のばらつきを抑制することができる。
【0081】
更に、図21のライフタイムキラーの照射工程を、図14の層間絶縁膜13の形成工程よりも前に行うことにより、図14の層間絶縁膜13の形成工程よりも後に行う場合と比較して、層間絶縁膜13、ソース電極16、及びソース電極16を覆うポリイミド等の保護膜(不図示)等が形成されていないため、ライフタイムキラー領域22の深さ方向のばらつきを抑制することができる。
【0082】
(第4実施形態)
第4実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法は、図22に示すように、層間絶縁膜13の形成工程よりも後で、且つ層間絶縁膜13のコンタクトホール13aの形成工程よりも前に、ドリフト層2の上面側からライフタイムキラーとしてプロトン又はヘリウムイオンを照射することにより、ライフタイムキラー領域22を形成する点が、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と異なる。
【0083】
第4実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法では、図22のライフタイムキラーの照射工程よりも後に、図14の層間絶縁膜13を平坦化するための900℃以上、1000℃以下程度のリフロー工程、及び図16の900℃以上、1200℃以下程度のソースコンタクト層14のシンタリング工程のうちの少なくともいずれかが実施される。第4実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の他の手順は、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0084】
第4実施形態によれば、ライフタイムキラー領域22を精度よく形成することにより、内蔵ダイオードの通電劣化を抑制すると共に、活性素子のオン抵抗のばらつきを抑制することができる。
【0085】
なお、図14の層間絶縁膜13のコンタクトホール13aの形成工程よりも後で、且つ層間絶縁膜13を平坦化するためのリフロー工程よりも前に、ドリフト層2の上面側からライフタイムキラーとしてプロトン又はヘリウムイオンを照射することにより、ライフタイムキラー領域22を形成してもよい。
【0086】
(第5実施形態)
第5実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法は、図23に示すように、層間絶縁膜13を平坦化するためのリフロー工程よりも後で、且つソースコンタクト層14の形成工程よりも前に、ドリフト層2の上面側からライフタイムキラーとしてプロトン又はヘリウムイオンを照射することにより、ライフタイムキラー領域22を形成する点が、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と異なる。
【0087】
第5実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法では、図23のライフタイムキラーを照射工程の後に、ソースコンタクト層14となる金属膜を堆積する工程と、図16の900℃以上、1200℃以下程度のソースコンタクト層14のシンタリングアニール工程が実施される。第5実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の他の手順は、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0088】
第5実施形態によれば、ライフタイムキラー領域22を精度よく形成することにより、内蔵ダイオードの通電劣化を抑制すると共に、活性素子のオン抵抗のばらつきを抑制することができる。
【0089】
なお、ソースコンタクト層14となる金属膜を堆積する工程よりも後で、且つ金属膜のシンタリングアニール工程よりも前に、ドリフト層2の上面側からライフタイムキラーとしてプロトン又はヘリウムイオンを照射することにより、ライフタイムキラー領域22を形成してもよい。
(第6実施形態)
第6実施形態に係るSiC半導体装置は、図24に示すように、転位変換層21の上面側に設けられ、転位変換層21よりも高不純物濃度のn型の再結合促進層23を更に備える点が、図2に示した第1実施形態に係るSiC半導体装置と異なる。再結合促進層23を設けることにより、ソース電極16側からドリフト層2に注入される正孔を再結合させることができる。再結合促進層23の厚さは、例えば3μm以上、10μm以下程度である。再結合促進層23の不純物濃度は、例えば1×1018cm-3以上、1×1019cm-3以下程度である。
【0090】
再結合促進層23とドリフト層2との間にはライフタイムキラー領域22が設けられている。ライフタイムキラー領域22は、ドリフト層2の下面を含むように設けられている。換言すれば、ライフタイムキラー領域22は、ドリフト層2と再結合促進層23との界面を含むように設けられている。
【0091】
ライフタイムキラー領域22を構成する水素又はヘリウムにより形成された点欠陥の濃度の深さ方向のピーク位置は、再結合促進層23内の上面側にあることが好ましい。この位置に形成することにより、ライフタイムキラー領域22が正孔を再結合させる機能を十分に維持しつつ、水素又はヘリウムがゲート絶縁膜11に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0092】
ライフタイムキラー領域22を構成する水素又はヘリウムにより形成された点欠陥の濃度の深さ方向のピーク位置は、再結合促進層23とドリフト層2との界面に対して水素又はヘリウムにより形成された点欠陥の濃度の半値全幅だけ浅いドリフト層2内の位置から、再結合促進層23とドリフト層2との界面に対して半値全幅の5倍だけ深い再結合促進層23内の位置までの範囲内にあってよい。第6実施形態に係るSiC半導体装置の他の構成は、図2に示した第1実施形態に係るSiC半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0093】
第6実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法としては、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と同様に、図3に示すように基板1pの上面に転位変換層21をエピタキシャル成長させる。その後、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法とは異なり、転位変換層21の上面に再結合促進層23をエピタキシャル成長させる。そして、再結合促進層23の上面にドリフト層2をエピタキシャル成長させる。
【0094】
その後、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と同様に、図9の活性化アニールの工程よりも後、且つ図16のソース電極16の形成工程よりも前に、ドリフト層2の上面側からプロトン又はヘリウムイオンを照射することによりライフタイムキラー領域22を形成する。第6実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の他の手順は、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0095】
第6実施形態によれば、転位変換層21とドリフト層2との間に再結合促進層23を設ける場合でも、ライフタイムキラー領域22を精度よく形成することにより、内蔵ダイオードの通電劣化を抑制すると共に、活性素子のオン抵抗のばらつきを抑制することができる。
【0096】
(その他の実施形態)
上記のように、本開示の第1~第6実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本開示を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0097】
例えば、第1~第6実施形態に係るSiC半導体装置として、トレンチゲート型のSiC半導体装置を例示したが、プレーナゲート型のSiC半導体装置にも適用可能である。また、SiC以外のワイドバンドギャップ半導体を材料とした半導体装置にも適用可能である。
【0098】
また、第1~第6実施形態において、ライフタイムキラーとしてプロトン又はヘリウムイオンを照射する場合を例示したが、プロトン又はヘリウムイオンの代わりに、電子線をSiC半導体装置の上面側又は下面側から照射してもよい。
【0099】
また、第1~第6実施形態が開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。このように、本開示はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本開示の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0100】
1…ドレイン領域
1,1p…基板
2,2p…ドリフト層
3…電流拡散層
3p…n型イオン注入層
4a…第1埋込領域
4b…ゲート底部保護領域
5…第2埋込領域
5p…n型イオン注入層
6…ベース領域
6a…電界緩和領域(ガードリング)
6p…ベース領域
7…ソース領域
8…ベースコンタクト領域
9…トレンチ
10…フィールド絶縁膜
11…ゲート絶縁膜
12…ゲート電極
12p…ポリシリコン層
13…層間絶縁膜
13a…コンタクトホール
14…ソースコンタクト層
15…バリアメタル層
16…ソース電極
17…分離領域
18…ドレイン電極
21…バッファ層(転位変換層)
22,22a…ライフタイムキラー領域
23…再結合促進層
40…酸化膜
55…エピタキシャル成長層
60,70…酸化膜
80…フォトレジスト膜
90…酸化膜
100…基板
101…チップ領域
101a…活性領域
101b…終端領域(外周部)
102…ダイシングライン
図1
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