(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073142
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240522BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 G
H01L23/48 M
H01L23/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184185
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】福田 大祐
(57)【要約】
【課題】配線面積の増加を低減することができ、チップサイズ及びコストの増大を低減することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】第1主電極を下面側に、第2主電極を上面側にそれぞれ有する第1半導体チップ3g~3l及び第2半導体チップ3a~3fと、第1半導体チップ3g~3lの第1主電極と、第2半導体チップ3a~3fの第2主電極とを電気的に接続する導電部材と、第1半導体チップ3g~3lの第2主電極に電気的に接続し、導電部材と一部が対向する第1外部端子2aと、導電部材と第1外部端子2aとの間に少なくとも一部が配置された樹脂部材8とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主電極を下面側に、第2主電極を上面側にそれぞれ有する第1半導体チップ及び第2半導体チップと、
前記第1半導体チップの前記第1主電極と、前記第2半導体チップの前記第2主電極とを電気的に接続する導電部材と、
前記第1半導体チップの前記第2主電極に電気的に接続し、前記導電部材と一部が対向する第1外部端子と、
前記導電部材と前記第1外部端子との間に少なくとも一部が配置された樹脂部材と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第1半導体チップが下アームを構成し、前記第2半導体チップが上アームを構成するハーフブリッジ回路を含む
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記樹脂部材が、前記導電部材及び前記第1外部端子と一体的に形成されている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記樹脂部材が、前記導電部材及び前記第1外部端子の少なくともいずれかに固定されている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記樹脂部材の下面側に支持部が設けられている
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記導電部材及び前記樹脂部材のそれぞれに互いに係合する係合部が設けられている
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記樹脂部材に、前記第2半導体チップの制御配線領域に重なる位置に開口部が設けられている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記樹脂部材の表面が粗化されている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1半導体チップの下面側が接合された第1導電基板と、
前記第2半導体チップの下面側が接合された第2導電基板と、
を更に備える
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1導電基板に接合された第2外部端子と、
前記第2導電基板に接合された第3外部端子と、
を更に備える
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1導電基板の上面に配置され、前記第1半導体チップの上面側の制御電極に電気的に接続される第1プリント基板と、
前記第2導電基板の上面に配置され、前記第2半導体チップの上面側の制御電極に電気的に接続される第2プリント基板と、
を更に備える
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1導電基板及び前記第2導電基板の下面側に配置された樹脂シートと、
前記樹脂シートの下面側に配置された冷却器と、
を更に備える
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1半導体チップ及び前記第2半導体チップを封止する封止部材を更に備える
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記導電部材が、
前記第2半導体チップの前記第2主電極に接合されるチップ接合部と、
前記第1導電基板の上面側のパッド部に接合されるパッド接合部と、
を備える
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1外部端子が、
前記第1半導体チップの前記第2主電極に接合されるチップ接合部と、
前記導電部材と対向する接続部と、
を備える
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワー半導体素子を搭載する半導体装置(パワー半導体モジュール)に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体モジュールの各スイッチング素子を電源に接続するためのバスバー構造において、スイッチング素子の正・負極電源接続端子を一体成形して樹脂ケースに収納し、接続端子の少なくとも互いの主面の一部が略平行に向かい合う対向領域を有するように配置し、対向領域間に絶縁部材を配置するとともに、絶縁部材に樹脂が接触しないようインサート成形することが開示されている。
【0003】
特許文献2には、厚板部と、薄板部とを有する異形条のリードフレームであって、厚板部は、半導体素子が搭載される第1凸部と、第1凸部よりも厚みが小さい第2凸部とを有し、第1凸部および第2凸部は厚板部の長手方向に沿って交互に設けられており、薄板部の上面および側面と、第1凸部の側面と、第2凸部の上面および側面とが粗化面になっているリードフレームが開示されている。
【0004】
特許文献3には、貫通孔やくし部を設けてクリップの表面積を増大することで、表皮効果の影響によるクリップの抵抗の増大を抑制するとともに、クリップの側面に開口部を設けることにより、貫通孔内やクリップ下部における封止樹脂の空気の抱き込みによる気泡やボイドの発生を防止し、製品品質の信頼性を高める半導体装置が開示されている。
【0005】
特許文献4には、パッケージが、キャリア上に取り付けられた少なくとも1つのコンポーネントを有するキャリアを備え、クリップはキャリアの上に配置され、貫通穴を有し、少なくとも1つの構成要素の少なくとも1つの少なくとも一部および/または少なくとも1つの構成要素を電気的に接続する導電接続要素の少なくとも一部は、少なくとも部分的にスルーホール内に配置される、パッケージおよび製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献5には、半導体デバイスが、基板に取り付けられた半導体ダイと、半導体ダイの基板とは反対側に半田付け接合によって取り付けられた金属クリップとを含み、金属クリップは、はんだ接合部を形成するためにリフローされたはんだペーストの少なくとも10%を占めるように寸法決めされた複数のスロットを有することが開示されている。
【0007】
特許文献6には、半導体モジュールが、半導体装置およびバスバーを、その構成要素に含み、半導体装置が、絶縁基板、導電部材、複数のスイッチング素子、第1入力端子および第2入力端子を備え、絶縁基板は、厚さ方向において互いに反対側を向く主面および裏面を有し、導電部材は主面に配置され、複数のスイッチング素子は導通部材に導通する状態で接合され、第1入力端子は第1端子部を有し、かつ導電部材に導通する状態で接合され、第2入力端子は厚さ方向に沿って視て第1端子部に重なる第2端子部を有し、かつ複数のスイッチング素子に導通し、第2入力端子は厚さ方向において第1入力端子および導電部材の双方に対して離隔して配置され、バスバーは、第1供給端子および第2供給端子を備え、第2供給端子は厚さ方向において第1供給端子に対して離隔して配置され、かつ厚さ方向に沿って視て第1供給端子に少なくとも一部が重なり、第1供給端子が第1端子部に導通する状態で接合され、第2供給端子が第2端子部に導通する状態で接合されていることが開示されている。
【0008】
特許文献7には、接合構造体が、第1金属部材と第2金属部材とが第1方向に見て重なり、第1金属部材と第2金属部材とが接合され、接合構造体は、第1金属部材と第2金属部材とが重なった領域において、第1金属部材および第2金属部材の一部ずつが融接された溶接部を備え、溶接部は、外周縁と、複数の線状痕とを有し、外周縁は第1方向に見て環状であり、複数の線状痕は第1方向に見て各々が溶接部の内方から外周縁に向けて延びており、複数の線状痕の各々は外周縁に沿う環状方向の一方に向かって膨らむように湾曲していることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-86438号公報
【特許文献2】特開2021-9973号公報
【特許文献3】特開2013-51295号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2022/0254696号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2022/0238475号明細書
【特許文献6】国際公開第2019/239771号
【特許文献7】国際公開第2020/045263号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のパワー半導体モジュールにおいて、絶縁回路基板の回路パターン上に半導体チップを搭載し、リードフレーム及びボンディングワイヤ等で半導体チップと絶縁回路基板の回路パターンとの電気的接続を行う場合、複数(多数)の半導体チップを搭載すると、配線面積が増加するという課題がある。
【0011】
上記課題に鑑み、本開示は、配線面積の増加を低減することができ、チップサイズ及びコストの増大を低減することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様は、第1主電極を下面側に、第2主電極を上面側にそれぞれ有する第1半導体チップ及び第2半導体チップと、第1半導体チップの第1主電極と、第2半導体チップの第2主電極とを電気的に接続する導電部材と、第1半導体チップの第2主電極に電気的に接続し、導電部材と一部が対向する第1外部端子と、導電部材と第1外部端子との間に少なくとも一部が配置された樹脂部材とを備える半導体装置であることを要旨とする。
【0013】
また、前記半導体装置は、前記第1半導体チップが下アームを構成し、前記第2半導体チップが上アームを構成するハーフブリッジ回路を含んでよい。
【0014】
また、前記半導体装置は、前記樹脂部材が、前記導電部材及び前記第1外部端子と一体的に形成されてよい。
【0015】
また、前記半導体装置は、前記樹脂部材が、前記導電部材及び前記第1外部端子の少なくともいずれかに固定されてよい。
【0016】
また、前記半導体装置は、前記樹脂部材の下面側に支持部が設けられてよい。
【0017】
また、前記半導体装置は、前記導電部材及び前記樹脂部材のそれぞれに互いに係合する係合部が設けられてよい。
【0018】
また、前記半導体装置は、前記樹脂部材に、前記第2半導体チップの制御配線領域に重なる位置に開口部が設けられてよい。
【0019】
また、前記半導体装置は、前記樹脂部材の表面が粗化されてよい。
【0020】
また、前記半導体装置は、更に、前記第1半導体チップの下面側が接合された第1導電基板と、前記第2半導体チップの下面側が接合された第2導電基板と、を備えてよい。
【0021】
また、前記半導体装置は、更に、前記第1導電基板に接合された第2外部端子と、前記第2導電基板に接合された第3外部端子と、を備えてよい。
【0022】
また、前記半導体装置は、更に、前記第1導電基板の上面に配置され、前記第1半導体チップの上面側の制御電極に電気的に接続される第1プリント基板と、前記第2導電基板の上面に配置され、前記第2半導体チップの上面側の制御電極に電気的に接続される第2プリント基板と、を備えてよい。
【0023】
また、前記半導体装置は、更に、前記第1導電基板及び前記第2導電基板の下面側に配置された樹脂シートと、前記樹脂シートの下面側に配置された冷却器と、を備えてよい。
【0024】
また、前記半導体装置は、更に、前記第1半導体チップ及び前記第2半導体チップを封止する封止部材を備えてよい。
【0025】
また、前記半導体装置は、前記導電部材が、前記第2半導体チップの前記第2主電極に接合されるチップ接合部と、前記第1導電基板の上面側のパッド部に接合されるパッド接合部と、を備えてよい。
【0026】
また、前記半導体装置は、前記第1外部端子が、前記第1半導体チップの前記第2主電極に接合されるチップ接合部と、前記導電部材と対向する接続部と、を備えてよい。
【0027】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、配線面積の増加を低減することができ、チップサイズ及びコストの増大を低減することができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置の斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る半導体装置の一部を省略した場合の斜視図である。
【
図7】第1実施形態に係る半導体装置の一部を省略した場合の斜視図である。
【
図9】第1実施形態に係る半導体装置の導電部材の斜視図である。
【
図10】第1実施形態に係る半導体装置の負極端子の斜視図である。
【
図11】第1実施形態に係る半導体装置の樹脂部材の斜視図である。
【
図12】第1実施形態に係る半導体装置の実装構造の側面図である。
【
図13】第1実施形態に係る半導体装置の等価回路図である。
【
図14】第2実施形態に係る半導体装置の一部を省略した場合の斜視図である。
【
図16】第2実施形態に係る半導体装置の樹脂部材の斜視図である。
【
図17】第2実施形態に係る半導体装置のラミネート構造体の側面図である。
【
図19】
図17に示したラミネート構造体の組み立て方法を説明する側面図である。
【
図20】第2実施形態の変形例に係る半導体装置の導電部材の斜視図である。
【
図21】第2実施形態の変形例に係る半導体装置の樹脂部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下において、図面を参照して本開示の第1及び第2実施形態を説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0031】
また、以下の説明における「上」、「下」、「上下」、「左」、「右」、「左右」等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本開示の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば「上下」は「左右」に変換して読まれ、180°回転して観察すれば「上下」は反転して読まれることは勿論である。また、「上面」及び「下面」をそれぞれ「おもて面」及び「裏面」と読み替えてもよい。また、各部材の「第1主面」及び「第2主面」は互いに対向する主面であり、例えば「第1主面」が上面であれば、「第2主面」は下面である。
【0032】
(第1実施形態)
<半導体装置の構造>
図1は、第1実施形態に係る半導体装置(パワー半導体モジュール)の斜視図であり、
図2は、第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図1及び
図2に示すように、第1実施形態に係る半導体装置は、パワー半導体素子(半導体チップ)を封止する封止樹脂10と、封止樹脂10からそれぞれ突出する外部端子(負極端子)2a、外部端子(正極端子)2b、外部端子(出力端子)2c、及び制御端子4a~4gを有する。
【0033】
封止樹脂10は、略直方体形状を有する。負極端子2a及び正極端子2bは、封止樹脂10の略直方体形状の共通の一面から突出する。出力端子2cは、封止樹脂10の略直方体形状の負極端子2a及び正極端子2bが突出する一面と対向する一面から突出する。制御端子4a~4gは、封止樹脂10の略直方体形状の負極端子2a及び正極端子2bが突出する一面と、出力端子2cが突出する一面との間の一面から突出する。
【0034】
封止樹脂10は、エポキシ系樹脂等の絶縁性の樹脂で構成されている。出力端子2c、正極端子2b、負極端子2a及び制御端子4a~4gは、例えば銅(Cu)、Cu合金、アルミニウム(Al)又はAl合金等の導電材料で構成されている。
【0035】
図3は、
図1及び
図2に示した封止樹脂10を省略した第1実施形態に係る半導体装置の斜視図である。
図4は
図3に対応する平面図であり、
図5は
図3に対応する側面図であり、
図6は
図5の領域Aを拡大した側面図である。
【0036】
図3~
図6に示すように、第1実施形態に係る半導体装置は、互いに離隔して配置された導電基板1a及び導電基板1bを備える。導電基板1a及び導電基板1bは、略矩形の平面パターンを有する。導電基板1a及び導電基板1bは、例えば銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の導電材料で構成されている。導電基板1a及び導電基板1bの下面は、
図1及び
図2に示した封止樹脂10から露出する。
【0037】
出力端子2cは、L字状に折れ曲がる平板形状を有し、導電基板1aにはんだ又は焼結材等の接合材を介して、又は直接接合により接合されている。正極端子2bは、L字状に折れ曲がる平板形状を有し、導電基板1bにはんだ又は焼結材等の接合材を介して、又は直接接合により接合されている。負極端子2aは、正極端子2bと並んで配置され、L字状に折れ曲がる平板形状の外部接続部24を有する。負極端子2aは、出力端子2c側に延伸して、導電基板1a及び導電基板1bに亘るように設けられている。
【0038】
図3及び
図4では不図示であるが、負極端子2aと導電基板1a及び導電基板1bとの間には、
図9に示す導電部材(「中間クリップ」又は「リードフレーム」とも呼ぶ)6が設けられている。導電部材6は、負極端子2aの一部と対向するように、且つ負極端子2aから離隔して設けられている。負極端子2aの一部及び導電部材6の一部は、樹脂部材8により被覆されている。
【0039】
負極端子2a、導電部材6及び樹脂部材8は、一体成形等により一体的に形成され、一体化構造体(2a,6,8)を構成している。負極端子2aと導電部材6との間には、樹脂部材8の一部が挟まるように設けられている。負極端子2a、導電部材6及び樹脂部材8を一体的に形成し、樹脂部材8により負極端子2aと導電部材6とのギャップを保つことで、低インダクタンス、絶縁特性の担保、ボイド管理(評価)を可能とする。また、負極端子2a、導電部材6及び樹脂部材8を1つの部品とすることで、治具やリードフレームの複雑化によるコストアップを抑制し、工数削減に繋げることができる。負極端子2a、導電部材6及び樹脂部材8の各構造については後述する。
【0040】
図7は、
図1及び
図2に示した第1実施形態に係る半導体装置の封止樹脂10を省略し、更に、負極端子2a、導電部材6及び樹脂部材8で構成される一体化構造体(2a,6,8)を省略した斜視図であり、
図8は
図7に対応する平面図である。
【0041】
図7及び
図8に示すように、第1実施形態に係る半導体装置は、導電基板1aの上面側に配置された複数(6つ)のパワー半導体素子(半導体チップ)3a~3fと、導電基板1bの上面側に配置された複数(6つ)のパワー半導体素子(半導体チップ)3g~3lを備える。半導体チップ3a~3fは、導電基板1a上に、はんだ又は焼結材等の接合材を介して接合されている。半導体チップ3g~3lは、導電基板1b上に、はんだ又は焼結材等の接合材を介して接合されている。
【0042】
第1実施形態に係る半導体装置では、半導体チップ3a~3lとしてMOSFETを例示し、MOSFETを6並列、2対直列に接続した2イン1型のパワー半導体モジュールを例示している。半導体チップ3a~3fが、3相インバータ回路の1相分のハーフブリッジ回路の下アームを構成し、半導体チップ3g~3lが上アームを構成する。なお、第1実施形態に係る半導体装置は、2イン1型の半導体モジュールに限定されず、例えば6イン1型の半導体モジュールであってもよい。
【0043】
半導体チップ3a~3lは、半導体基板と、半導体基板の下面側に設けられた第1主電極(ドレイン電極)と、半導体基板の上面側に設けられた第2主電極(ソース電極)31a~31及び制御電極(ゲート電極)を有する。半導体チップ3a~3fのそれぞれのドレイン電極は、導電基板1aに電気的に接続されている。半導体チップ3e~3hのそれぞれのドレイン電極は、導電基板1bに電気的に接続されている。
【0044】
半導体チップ3a~3lの半導体基板は、例えばシリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)等で構成されている。半導体チップ3a~3lの配置位置や数は特に限定されない。半導体チップ3a~3lは、MOSFET等の電界効果トランジスタ(FET)の他にも、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、静電誘導(SI)サイリスタ又はゲートターンオフ(GTO)サイリスタ等であってもよい。
【0045】
導電基板1aの上面側には、制御配線用のプリント基板(11,12a~12e)が配置されている。プリント基板(11,12a~12e)は、絶縁層11と、絶縁層11の上面側に互いに離隔して配置された導電層12a~12eを備える。絶縁層11は、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)、窒化ホウ素(BN)等を主剤としたセラミクス板や、高分子材料等を用いた樹脂絶縁層で構成されている。導電層12a~12eは、例えば銅(Cu)やアルミニウム(Al)等で構成されている。
【0046】
絶縁層11及び導電層12aは、導電基板1aの端部から、半導体チップ3a~3cと、半導体チップ3d~3fとの間に延伸するように設けられている。導電層12aには、制御端子4aがはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合されている。導電層12aは、制御配線(ボンディングワイヤ)72a~72fを介して半導体チップ3a~3fのそれぞれのゲート電極に電気的に接続されている。制御端子4aは、導電層12a及びボンディングワイヤ72a~72fを介して、半導体チップ3a~3fのそれぞれのゲート電極に制御信号を印加する。
【0047】
導電層12bは、導電層12aと並列に、導電基板1aの端部から、半導体チップ3a~3cと、半導体チップ3d~3fとの間に延伸するように設けられている。導電層12bには、制御端子4bがはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合されている。導電層12bは、制御配線(ボンディングワイヤ)71a~71fを介して半導体チップ3a~3fのそれぞれのソース電極31a~31の一部に電気的に接続されている。制御端子4bは、ボンディングワイヤ71a~71f及び導電層12bを介して、半導体チップ3a~3fのソース電極31a~31に流れる電流を検出する。
【0048】
導電層12cには、制御端子4cがはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合されている。導電層12dには、制御端子4dがはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合されている。導電層12eには、温度検出チップ5がはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合されている。導電層12dは、制御配線(ボンディングワイヤ)73を介して温度検出チップ5に接続されている。制御端子4dは、ボンディングワイヤ73及び導電層12cを介して温度検出チップ5からの温度検出信号を検出する。
【0049】
導電基板1aの導電基板1bと隣り合う位置の上面側には、パッド部15a~15cが設けられている。パッド部15a~15cは、はんだ又は焼結材等の接合材を用いて導電基板1aの上面に接合されている。パッド部15a~15cは、例えば銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の導電材料で構成されている。パッド部15a~15cは、導電基板1aと一体的に形成されていてもよい。
【0050】
導電基板1bの上面側には、制御配線用のプリント基板(13,14a~14c)が配置されている。プリント基板(13,14a~14c)は、絶縁層13と、絶縁層13の上面側に互いに離隔して配置された導電層14a~14cを備える。絶縁層13は、絶縁層11と同様の材料を使用可能であり、導電層14a~14cは、導電層12a~12eと同様の材料を使用可能である。
【0051】
絶縁層13及び導電層14aは、導電基板1bの端部から、半導体チップ3g~3iと、半導体チップ3j~3lとの間に延伸するように設けられている。導電層14aには、制御端子4eがはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合されている。導電層14aは、制御配線(ボンディングワイヤ)72g~72lを介して半導体チップ3g~3lのそれぞれのゲート電極に電気的に接続されている。制御端子4eは、導電層14a及びボンディングワイヤ72g~72lを介して、半導体チップ3g~3lのそれぞれのゲート電極に制御信号を印加する。
【0052】
導電層14bは、導電層14aと並列に、導電基板1bの端部から、半導体チップ3g~3iと、半導体チップ3j~3lとの間に延伸するように設けられている。導電層14bには、制御端子4fがはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合されている。導電層14bは、制御配線(ボンディングワイヤ)71g~71lを介して半導体チップ3g~3lのそれぞれのソース電極31g~31lの一部に電気的に接続されている。制御端子4fは、ボンディングワイヤ71g~71l及び導電層14bを介して、半導体チップ3g~3lのソース電極31g~31lに流れる電流を検出する。
【0053】
導電層14cには、制御端子4gがはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合されている。導電層14cは、制御配線(ボンディングワイヤ)74を介して、導電基板1bに接続されている。制御端子4gは、ボンディングワイヤ74及び導電層14cを介して、半導体チップ3g~3lのドレイン電極に流れる電流を検出する。
【0054】
図9は、一体化構造体(2a,6,8)の構成要素である導電部材6の斜視図を示す。
図9に示すように、導電部材6は、パッド接合部61a~61cと、パッド接合部61a~61cに接続された接続部62と、接続部62に接続されたチップ接合部63a~63cと、チップ接合部63a~63cに接続された接続部64a~64cと、接続部64a~64cに接続されたチップ接合部63d~63fを備える。パッド接合部61a~61c及びチップ接合部63a~63fは、接続部62及び接続部64a~64cに対して下側に凸となるように湾曲して接続されている。接続部64a~64cは、互いに離隔し且つ平行に延伸するストライプ状の平面パターンを有する。
【0055】
パッド接合部61a~61cの少なくとも下面は、
図3~
図6に示した樹脂部材8から露出する。パッド接合部61a~61cは、
図7及び
図8に示した導電基板1aの上面側のパッド部15a~15cに、はんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合されている。接続部62及び接続部64a~64cは、
図3~
図6に示した樹脂部材8により被覆されている。チップ接合部63a~63fの少なくとも下面は、
図3~
図6に示した樹脂部材8から露出する。チップ接合部63a~63fは、
図7及び
図8に示した半導体チップ3g~3lのソース電極31g~31lに、はんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合されている。
【0056】
図10は、一体化構造体(2a,6,8)の構成要素である負極端子2aの斜視図を示す。
図10に示すように、負極端子2aは、チップ接合部21a~21cと、チップ接合部21a~21cに接続された接続部22a~22cと、接続部22a~22cに接続されたチップ接合部21d~21fと、チップ接合部21d~21fに接続された接続部23と、接続部23に接続された外部接続部24を備える。チップ接合部21a~21f、接続部22a~22c及び外部接続部24は、
図3~
図6に示した樹脂部材8から露出する。接続部23の一部は、
図3~
図6に示した樹脂部材8から露出し、接続部23の他の一部は、樹脂部材8で被覆される。
【0057】
図10に示したチップ接合部21a~21fは、接続部22a~22cに対して下側に凸となるように湾曲して接続されている。チップ接合部21a~21fは、
図7及び
図8に示した半導体チップ3a~3fのそれぞれのソース電極31a~31fにはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合される。接続部22a~22cは、互いに離隔し且つ平行に延伸するストライプ状の平面パターンを有する。
【0058】
接続部23は、略矩形の平面パターンを有する。接続部23は、
図9に示した導電部材6のパッド接合部61a~61c、接続部62、チップ接合部63a~63f及び接続部64a~64cに対向して配置されている。接続部23には、接続部23の上面から下面まで貫通する開口部23a,23bが設けられている。開口部23a,23bは、略矩形の平面パターンを有する。開口部23aは、
図9に示した接続部64a,64bの間のスペースと重なり合うように設けられている。開口部23bは、
図9に示した接続部64b,64cの間のスペースと重なり合うように設けられている。
【0059】
平面視において、開口部23aは、
図7及び
図8に示した半導体チップ3h,3kに接続されたボンディングワイヤ71h,71k,72h,72kを含む制御配線領域と重なるように配置されている。開口部23bは、
図7及び
図8に示した半導体チップ3i,3lに接続されたボンディングワイヤ71i,71l,72i,72lを含む制御配線領域と重なるように配置されている。
【0060】
なお、負極端子2aのうち、外部接続部24の部分を「負極端子」と定義し、外部接続部24以外の部分であるチップ接合部21a~21c、接続部22a~22c、チップ接合部21d~21f及び接続部23を、「負極端子」と一体化された「リードフレーム」と定義してもよい。
【0061】
図11は、一体化構造体(2a,6,8)の構成要素である樹脂部材8の斜視図を示す。
図11に示すように、樹脂部材8は、外形が略直方体形状の本体部80を備える。本体部80の側面には、開口部82及び開口部83a~83cが設けられている。開口部82からは、負極端子2aの接続部23の一部が露出する。開口部83a~83cからは、樹脂部材8のパッド接合部61a~61cが露出する。本体部80には、本体部80の上面から下面まで貫通する開口部81a,81bが設けられている。開口部81a,81bは、
図10に示した負極端子2aの開口部23a,23bと重なり合うように設けられている。
【0062】
図3及び
図4に示すように、導電基板1a,1bの上面側に一体化構造体(2a,6,8)を配置したときに、平面視において、樹脂部材8の開口部81aは、半導体チップ3h,3kに接続されたボンディングワイヤ71h,71k,72h,72kを含む制御配線領域と重なるように位置されている。開口部23bは、半導体チップ3i,3lに接続されたボンディングワイヤ71i,71l,72i,72lを含む制御配線領域と重なるように配置されている。
【0063】
図4~
図6に示すように、本体部80の下面側には支持部84及び支持部85a~85eが設けられている。
図4では、本体部80の下に隠れた支持部85a~85eを破線で模式的に示している。支持部84及び支持部85a~85eは、本体部80と一体的に形成されている。支持部84は、導電基板1aの上面側に配置されている。支持部85a~85eは、導電基板1bの上面側に配置されている。支持部85a~85eの形状は、例えば円柱状であるが、特に限定されない。支持部85a~85eの配置位置及び数は特に限定されない。
【0064】
本体部80の下面側に支持部84及び支持部85a~85eを設けることにより、負極端子2aのチップ接合部21a~21f及び導電部材6のチップ接合部63a~63fを半導体チップ3a~3lのソース電極にはんだ付けするときに、チップ接合部21a~21f及びチップ接合部63a~63fを含む一体化構造体(2a,6,8)の傾きを抑制し、一体化構造体(2a,6,8)の高さを制御することができる。
【0065】
樹脂部材8の表面は、シボ加工等の表面を粗化する加工を施すことにより粗化されていてもよい。樹脂部材8の表面を粗化することにより、樹脂部材8と封止樹脂10との剥離を防止し、密着性を向上させることができる。樹脂部材8の表面全体を粗化してもよく、樹脂部材8の表面の一部を部分的に粗化してもよい。
【0066】
図12は、第1実施形態に係る半導体装置101の実装構造の概略側面図である。半導体装置101は、
図1及び
図2に示した半導体装置に相当し、半導体装置101の下面側には導電基板1a,1bの下面が露出している。半導体装置101の下面側には、シート状の樹脂層(樹脂シート)102を介して冷却器(ベース)103が配置されている。
【0067】
樹脂シート102は、半導体装置101から冷却器103への放熱性を確保しつつ、半導体装置101と冷却器103との絶縁及び接着の機能を有する。樹脂シート102の材料としては、例えばエポキシ樹脂等が使用可能である。冷却器103の材料としては、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、Alと炭化珪素の複合材料(AlSiC)、マグネシウム(Mg)と炭化珪素の複合材料(MgSiC)等が使用可能である。
【0068】
半導体装置101の実装構造によれば、絶縁回路基板を冷却器にはんだで接合する場合と比較して、絶縁、接着、放熱の機能を樹脂シート102に集約することができるので、コストを削減することができる。
【0069】
図13は、第1実施形態に係る半導体装置の等価回路を示す。
図13に示すように、第1実施形態に係る半導体装置は、3相ブリッジ回路の一部を構成する。正極端子Pに、上アーム側のトランジスタT1のドレイン電極が接続され、負極端子Nに、下アーム側のトランジスタT2のソース電極が接続されている。トランジスタT1のソース電極及びトランジスタT2のドレイン電極が出力端子U及び補助ソース端子S1に接続されている。トランジスタT2のソース電極には、補助ソース端子S2が接続されている。トランジスタT1,T2のゲート電極にはゲート制御端子G1,G2が接続されている。トランジスタT1,T2には、還流ダイオード(FWD)となるボディーダイオードD1,D2が逆並列に接続して内蔵されている。
【0070】
図13に示した出力端子U、正極端子P及び負極端子Nが、
図7及び
図8に示した出力端子2c、正極端子2b及び負極端子2aに対応する。
図13に示したトランジスタT1及びボディーダイオードD1が、
図7及び
図8に示した半導体チップ3g~3lに対応する。
図13に示したトランジスタT2及びボディーダイオードD2が、
図7及び
図8に示した半導体チップ3a~3fに対応する。
図13に示したゲート制御端子G1,G2が、
図7及び
図8に示した制御端子4a,4eに対応する。
図13に示した補助ソース端子S1,S2が、
図7及び
図8に示した制御端子4b,4fに対応する。
【0071】
次に、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する。
図7及び
図8に示すように、導電基板1aの上面に、出力端子2c、半導体チップ3a~3f、プリント基板(11,12a~12e)及びパッド部15a~15cを、はんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合する。更に、プリント基板(11,12a~12e)の上面に、制御端子4a~4d及び温度検出チップ5をはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合する。更に、半導体チップ3a~3f、プリント基板(11,12a~12e)及び温度検出チップ5を、ボンディングワイヤ71a~71f,72a~72f,73を用いて互いに接続する。
【0072】
また、
図7及び
図8に示すように、導電基板1bの上面に、正極端子2b、半導体チップ3g~3l及びプリント基板(13,14a~14c)を、はんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合する。更に、プリント基板(13,14a~14c)の上面に、制御端子4e~4gをはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合する。更に、半導体チップ3g~3l及びプリント基板(13,14a~14c)を、ボンディングワイヤ71g~71l,72g~72lを用いて互いに接続する。
【0073】
また、
図9に示した導電部材6、
図10に示した負極端子2a、及び
図11に示した樹脂部材8を、金型を用いて一体成型することにより、一体化構造体(2a,6,8)を作製する。
【0074】
次に、
図3~
図6に示すように、半導体チップ3a~3f等が接合された導電基板1a、及び半導体チップ3g~3l等が接合された導電基板1bと、一体化構造体(2a,6,8)を対向させる。そして、半導体チップ3a~3fのソース電極31a~31fに一体化構造体(2a,6,8)の構成要素の負極端子2aのチップ接合部21a~21fをはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合する。また、半導体チップ3g~3lのソース電極31g~31lに、一体化構造体(2a,6,8)の構成要素の導電部材6のチップ接合部63a~63fをはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合する。また、導電基板1aの上面側のパッド部15a~15cに、導電部材6のパッド接合部61a~61cをはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合する。
【0075】
次に、トランスファーモールドにより、
図1に示すように、半導体チップ3a~3l等を封止樹脂10で封止する。これにより、第1実施形態に係る半導体装置が完成する。
【0076】
第1実施形態に係る半導体装置によれば、負極端子2a、導電部材6及び樹脂部材8を一体的に形成して一体化構造体(2a,6,8)を構成し、主配線回路を3次元配線化すると共に、制御配線用のプリント基板(11,12a~12e)及びプリント基板(13,14a~14c)を用いて制御配線回路を別基板化する。
【0077】
これにより、従来の半導体装置であって、絶縁回路基板の回路パターン上に半導体チップを搭載し、リードフレーム及びボンディングワイヤ等で半導体チップと絶縁回路基板の回路パターンとの電気的接続を行う場合と比較して、配線面積を削減することができるため、チップサイズ及びコストの増大を低減することができると共に、低インダクタンス特性を実現することができる。
【0078】
また、従来の半導体装置であって、絶縁回路基板上に搭載した半導体チップの上方にプリント基板を配置して、ピン端子を用いて半導体チップとプリント基板を電気的に接続する場合と比較して、接続部の信頼性を確保することができ、検査が容易となり、低コスト化を図ることができる。また、プリント基板の反りや熱変形の問題が無く、搭載性や信頼性を確保することができ、取り扱いが容易となる。
【0079】
また、従来の半導体装置であって、ケースで絶縁回路基板を囲い、ポッティングにより樹脂を注入し、封止する場合と比較して、ケースが不要となり、スペース、工数及びコストを削減することができる。
【0080】
このように、第1実施形態に係る半導体装置によれば、複雑な部材位置精度制御技術を使用せず、低コストかつモノづくりがし易い配線技術を実現することができると共に、放熱特性を維持し、炭化珪素(SiC)等からなる半導体チップの特性を最大化させる低インダクタンス特性を実現することができる。例えば、SiCからなる半導体チップを使用する際に、コストを圧縮するため小チップを多数並列接続する場合があるが、このように多数の半導体チップを搭載する場合に配線面積の削減効果が大きく、特に有効である。
【0081】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る半導体装置は、
図1及び
図2に示した第1実施形態に係る半導体装置と同様の外観を構成する。
図14は、
図1及び
図2に示した封止樹脂10を省略した第2実施形態に係る半導体装置の斜視図であり、
図15は、
図14に対応する平面図である。
【0082】
図14及び
図15に示すように、第2実施形態に係る半導体装置は、負極端子2a及び導電部材6に挟まれるように配置された樹脂部材9を備える点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。第2実施形態に係る半導体装置では、負極端子2a、導電部材6及び樹脂部材9が積層されたラミネート構造体(2a,6,9)が構成されている。ラミネート構造体(2a,6,9)の構成要素である負極端子2a及び導電部材6はそれぞれ、
図10に示した負極端子2a及び
図9に示した導電部材6と同様の構造である。
【0083】
図16は、ラミネート構造体(2a,6,9)の構成要素である樹脂部材9の斜視図を示す。
図16に示すように、樹脂部材9は、平坦部90と、平坦部90に接続されたストライプ部91a~91cを備える。平坦部90は、
図9に示した導電部材6の接続部62と、
図10に示した負極端子2aの接続部23との間に配置される。平坦部90の下面側には突出部94が設けられている。突出部94は、
図9に示した導電部材6の下側に湾曲するパッド接合部61a~61cに嵌め込まれる。なお、突出部94は設けられていなくてもよい。
【0084】
ストライプ部91aは、
図9に示した導電部材6のチップ接合部63a、接続部64a及びチップ接合部63dと、
図10に示した負極端子2aの接続部23の開口部23aよりも端部側のストライプ部との間に配置される。ストライプ部91aの下面側には突出部95a,95dが設けられている。突出部95a,95dは、
図9に示した導電部材6の下側に湾曲するチップ接合部63a,63dに嵌め込まれる。
【0085】
ストライプ部91bは、
図9に示した導電部材6のチップ接合部63b、接続部64b及びチップ接合部63eと、
図10に示した負極端子2aの接続部23の開口部23a,23bの間のストライプ部との間に配置される。ストライプ部91bの下面側には突出部95b,95eが設けられている。突出部95b,95eは、
図9に示した導電部材6の下側に湾曲するチップ接合部63b,63eに嵌め込まれる。
【0086】
ストライプ部91cは、
図9に示した導電部材6のチップ接合部63c、接続部64c及びチップ接合部63fと、
図10に示した負極端子2aの接続部23の開口部23bよりも端部側のストライプ部との間に配置される。ストライプ部91cの下面側には突出部95c,95fが設けられている。突出部95c,95fは、
図9に示した導電部材6の下側に湾曲するチップ接合部63c,63fに嵌め込まれる。
【0087】
ストライプ部91a,91bの間のスペースは、
図9に示した導電部材6の接続部64a,64bの間のスペース、及び
図10に示した負極端子2aの接続部23の開口部23aと重なり合うように設けられている。ストライプ部91b,91cの間のスペースは、
図9に示した導電部材6の接続部64b,64cの間のスペース、及び
図10に示した負極端子2aの接続部23の開口部23bと重なり合うように設けられている。
【0088】
図17は、ラミネート構造体(2a,6,9)の側面図である。
図17に示すように、導電部材6のチップ接合部63c,63fの上面側は、樹脂部材9の突出部95c,95fに接している。同様に、導電部材6のチップ接合部63a,63b,63d,63eの上面側は、樹脂部材9の突出部95a,95b,95d,95eに接している。また、
図17に示すように、樹脂部材9の平坦部90及びストライプ部91cの上面側は、負極端子2aの接続部23の下面に接している。同様に、樹脂部材9のストライプ部91a,91bの上面側は、負極端子2aの接続部23の下面に接している。
【0089】
図17の樹脂部材9の突出部95cの周囲を破線で囲んだ領域Aを拡大した側面図を
図18に示す。樹脂部材9の突出部95cの側面には、係合部(凸部)92a,92bが設けられている。導電部材6のチップ接合部63cの湾曲部には、係合部(凹部)65a,65bが設けられている。樹脂部材9の凸部92a,92bと、導電部材6の凹部65a,65bが係合する(嵌め合う)ことにより、樹脂部材9に導電部材6を固定することができる。
【0090】
図17は、ラミネート構造体(2a,6,9)の組み立て方法の一例を
図19に示す。負極端子2a、樹脂部材9及び導電部材6を用意し、
図19に示すように、負極端子2aの下面に、樹脂部材9の上面を圧着等により接合(固定)する。次に、負極端子2aに固定された樹脂部材9の下面側に導電部材6の上面側を対向させて、樹脂部材9の下面に導電部材6の上面を圧着等により固定する。このとき、樹脂部材9の凸部92a,92bと、導電部材6の凹部65a,65bが係合する(嵌め合う)ことにより、樹脂部材9の下面に導電部材6の上面を強固に固定することができる。
【0091】
第2実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0092】
第2実施形態に係る半導体装置によれば、負極端子2a、導電部材6及び樹脂部材9によりラミネート構造体(2a,6,9)を構成して主配線回路を3次元配線化すると共に、制御配線用のプリント基板(11,12a~12e)及びプリント基板(13,14a~14c)を用いて制御配線回路を別基板化する。これにより、配線面積を削減することができるため、チップサイズ及びコストの増大を低減することができると共に、低インダクタンス特性を実現することができる。
【0093】
図20は、ラミネート構造体(2a,6,9)の構成要素である導電部材6の他の一例の斜視図である。
図20に示した導電部材6は、チップ接合部63d~63fに接続された接続部65を更に備える点が、
図9に示した導電部材6と異なる。
図21は、ラミネート構造体(2a,6,9)の構成要素である樹脂部材9の他の一例の斜視図である。
図21に示した樹脂部材9は、ストライプ部91a~91cに接続された接続部97を更に備える点が、
図16に示した導電部材6と異なる。第2実施形態に係る半導体装置において、
図20に示した導電部材6、
図21に示した樹脂部材9及び
図10に示した負極端子2aによりラミネート構造体(2a,6,9)を構成してもよい。
【0094】
(その他の実施形態)
上記のように、本開示は第1及び第2実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本開示を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0095】
例えば、第1及び第2実施形態において、導電基板1a及び導電基板1bを備える場合を例示したが、導電基板1a及び導電基板1bを直接銅接合(DCB)基板等の絶縁回路基板の上面側の回路パターンで構成してもよい。
【0096】
また、第1及び第2実施形態が開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。このように、本開示はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本開示の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0097】
1a,1b…導電基板
2a…負極端子
2b…正極端子
2c…出力端子
3a~3l…半導体チップ
4a~4g…制御端子
5…温度検出チップ
6…導電部材
8,9…樹脂部材
10…封止樹脂
11…絶縁層
12a~12e…導電層
13…絶縁層
14a~14c…導電層
15a~15c…パッド部
21a~21f…チップ接合部
22a~22c,23…接続部
23a,23b…開口部
24…外部接続部
31a~31l…ソース電極
61a~61c…パッド接合部
62…接続部
63a~63f…チップ接合部
64a~64c…接続部
65…接続部
65a,65b…凹部
71a~71l,72a~72l,73,74…ボンディングワイヤ
80…本体部
81a,81b,82,83a~83c…開口部
84…支持部
85a~85e…支持部
90…平坦部
91a~91c…ストライプ部
92a,92b…凸部
94,95a~95f…突出部
97…接続部
101…半導体装置
102…樹脂層(樹脂シート)
103…冷却器(ベース)
D1,D2…ボディーダイオード
G1,G2…ゲート制御端子
N…負極端子
P…正極端子
S1,S2…補助ソース端子
T1,T2…トランジスタ
U…出力端子
【手続補正書】
【提出日】2023-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
半導体チップ3a~3lは、半導体基板と、半導体基板の下面側に設けられた第1主電極(ドレイン電極)と、半導体基板の上面側に設けられた第2主電極(ソース電極)31a~31l及び制御電極(ゲート電極)を有する。半導体チップ3a~3fのそれぞれのドレイン電極は、導電基板1aに電気的に接続されている。半導体チップ3g~3lのそれぞれのドレイン電極は、導電基板1bに電気的に接続されている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
導電層12bは、導電層12aと並列に、導電基板1aの端部から、半導体チップ3a~3cと、半導体チップ3d~3fとの間に延伸するように設けられている。導電層12bには、制御端子4bがはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合されている。導電層12bは、制御配線(ボンディングワイヤ)71a~71fを介して半導体チップ3a~3fのそれぞれのソース電極31a~31fの一部に電気的に接続されている。制御端子4bは、ボンディングワイヤ71a~71f及び導電層12bを介して、半導体チップ3a~3fのソース電極31a~31fに流れる電流を検出する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
導電層12cには、制御端子4cがはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合されている。導電層12dには、制御端子4dがはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合されている。導電層12eには、温度検出チップ5がはんだ又は焼結材等の接合材を用いて接合されている。導電層12dは、制御配線(ボンディングワイヤ)73を介して温度検出チップ5に接続されている。制御端子4dは、ボンディングワイヤ73及び導電層12dを介して温度検出チップ5からの温度検出信号を検出する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
図11は、一体化構造体(2a,6,8)の構成要素である樹脂部材8の斜視図を示す。
図11に示すように、樹脂部材8は、外形が略直方体形状の本体部80を備える。本体部80の側面には、開口部82及び開口部83a~83cが設けられている。開口部82からは、負極端子2aの接続部23の一部が露出する。開口部83a~83cからは、
導電部材6のパッド接合部61a~61cが露出する。本体部80には、本体部80の上面から下面まで貫通する開口部81a,81bが設けられている。開口部81a,81bは、
図10に示した負極端子2aの開口部23a,23bと重なり合うように設けられている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
図3及び
図4に示すように、導電基板1a,1bの上面側に一体化構造体(2a,6,8)を配置したときに、平面視において、樹脂部材8の開口部81aは、半導体チップ3h,3kに接続されたボンディングワイヤ71h,71k,72h,72kを含む制御配線領域と重なるように位置されている。開口部
81bは、半導体チップ3i,3lに接続されたボンディングワイヤ71i,71l,72i,72lを含む制御配線領域と重なるように配置されている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
図17に示したラミネート構造体(2a,6,9)の組み立て方法の一例を
図19に示す。負極端子2a、樹脂部材9及び導電部材6を用意し、
図19に示すように、負極端子2aの下面に、樹脂部材9の上面を圧着等により接合(固定)する。次に、負極端子2aに固定された樹脂部材9の下面側に導電部材6の上面側を対向させて、樹脂部材9の下面に導電部材6の上面を圧着等により固定する。このとき、樹脂部材9の凸部92a,92bと、導電部材6の凹部65a,65bが係合する(嵌め合う)ことにより、樹脂部材9の下面に導電部材6の上面を強固に固定することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0093
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0093】
図20は、ラミネート構造体(2a,6,9)の構成要素である導電部材6の他の一例の斜視図である。
図20に示した導電部材6は、チップ接合部63d~63fに接続された接続部65を更に備える点が、
図9に示した導電部材6と異なる。
図21は、ラミネート構造体(2a,6,9)の構成要素である樹脂部材9の他の一例の斜視図である。
図21に示した樹脂部材9は、ストライプ部91a~91cに接続された接続部97を更に備える点が、
図16に示した
樹脂部材9と異なる。第2実施形態に係る半導体装置において、
図20に示した導電部材6、
図21に示した樹脂部材9及び
図10に示した負極端子2aによりラミネート構造体(2a,6,9)を構成してもよい。