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特開2024-73157導電層形成方法、および導電層形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073157
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】導電層形成方法、および導電層形成装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/10 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
H05K3/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184225
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】長田 将彦
(72)【発明者】
【氏名】三成 剛生
(72)【発明者】
【氏名】李 玲穎
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343AA12
5E343AA33
5E343BB25
5E343BB72
5E343DD20
5E343EE32
5E343ER43
5E343ER60
5E343GG06
5E343GG08
(57)【要約】
【課題】従来より配線のピッチを細くできる導電層形成方法、および導電層形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】基板上にエネルギーを付与し高表面エネルギー部を形成する第1形成工程と、導電性材料を含有する液体を高表面エネルギー部に付与する付与工程と、基板上を移動させることで導電性材料を含有する液体を広げるコーティングバーにより、高表面エネルギー部上に導電性材料を含有する液体を塗布する塗布工程と、を有し、基板に設けられた高表面エネルギー部は、本体部とダミー部に分かれ、本体部に対しコーティングバーの移動方向の少なくとも前後いずれかの部位にダミー部が配置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にエネルギーを付与し高表面エネルギー部を形成する第1形成工程と、
導電性材料を含有する液体を前記高表面エネルギー部に付与する付与工程と、
前記基板上を移動させることで前記導電性材料を含有する液体を広げるコーティングバーにより、前記高表面エネルギー部上に前記導電性材料を含有する液体を塗布する塗布工程と、
を有し、
前記基板に設けられた前記高表面エネルギー部は、本体部とダミー部に分かれ、前記本体部に対し前記コーティングバーの移動方向の少なくとも前後いずれかの部位に前記ダミー部が配置される、導電層形成方法。
【請求項2】
前記コーティングバーの移動方向の前の部位に配置されるダミー部の前部、前記本体部、前記コーティングバーの移動方向の後の部位に配置されるダミー部の後部の位置関係で配置され、
前記塗布工程は、前記ダミー部の前部、前記本体部、前記ダミー部の後部の順に前記液体を塗布する、請求項1に記載の導電層形成方法。
【請求項3】
前記ダミー部の前部よりも前記ダミー部の後部が、前記コーティングバーの移動方向に幅広である、請求項2に記載の導電層形成方法。
【請求項4】
前記ダミー部の前部と前記ダミー部の後部は、高表面エネルギー部ではない溝部を有する、請求項2または請求項3に記載に導電層形成方法。
【請求項5】
前記ダミー部は、前記本体部に対し前記コーティングバーの移動方向の少なくとも左右いずれかの部位に前記ダミー部が配置される、請求項1または請求項2に記載の導電層形成方法。
【請求項6】
前記塗布工程は、前記基板上の垂直方向に対して傾けかつ前記コーティングバーの進行方向の垂直方向に対して傾けて、酸素を含まないガスを噴射しながら前記液体を塗布する、請求項1または請求項2に記載の導電層形成方法。
【請求項7】
前記基板上にエネルギーの付与により表面エネルギーが変化する材料を含有する濡れ性変化層を形成する第2形成工程を、前記第1形成工程の前に行う、請求項1または請求項2に記載の導電層形成方法。
【請求項8】
基板上にエネルギーを付与し高表面エネルギー部を形成する高表面エネルギー付与部と、
導電性材料を含有する液体を前記高表面エネルギー部に付与する液体付与部と、
前記基板上を移動することで前記導電性材料を含有する液体を広げるコーティングバーを制御するバー制御部と、
を備え、
前記高表面エネルギー付与部は、本体部とダミー部に分かれ、前記本体部に対しコーティングバーの移動方向の少なくとも前後いずれかの部位にダミー部を形成する、導電層形成装置。
【請求項9】
前記コーティングバーの移動方向の前の部位に配置されるダミー部の前部、前記本体部、前記コーティングバーの移動方向の後の部位に配置されるダミー部の後部の位置関係で配置され、
前記バー制御部は、前記ダミー部の前部、前記本体部、前記ダミー部の後部の順に前記液体を塗布する、請求項8に記載の導電層形成装置。
【請求項10】
前記ダミー部の前部よりも前記ダミー部の後部が、前記コーティングバーの移動方向に幅広である、請求項9に記載の導電層形成装置。
【請求項11】
前記ダミー部の前部と前記ダミー部の後部は、高表面エネルギー部ではない溝部を有する、請求項9または請求項10に記載に導電層形成装置。
【請求項12】
前記ダミー部は、前記本体部に対し前記コーティングバーの移動方向の少なくとも左右いずれかの部位に前記ダミー部が配置される、請求項8または請求項9に記載の導電層形成装置。
【請求項13】
前記液体の塗布の際に、前記基板上の垂直方向に対して傾けかつ前記コーティングバーの進行方向の垂直方向に対して傾けて、酸素を含まないガスを噴射するガス噴射部をさらに備える、請求項8または請求項9に記載の導電層形成装置。
【請求項14】
前記基板上にエネルギーの付与により表面エネルギーが変化する材料を含有する濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成部を備える、請求項8または請求項9に記載の導電層形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電層形成方法、および導電層形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、静電気力で発生するエネルギーを動力に変換し、物体を動かす働きをもつ静電アクチュエータの開発が進められている。静電アクチュエータは、例えば、可変焦点レンズの駆動、シャッターの駆動などの光学分野で使用されている。また、静電アクチュエータは、ロボットの人工筋肉、義手、義足などへの適用が研究されている。このような静電アクチュエータは、プリンテッドエレクトロニクスの手法を用いて作成される。例えば、ロボット等の人工筋肉に静電アクチュエータを用いる場合、静電アクチュエータは、例えばサブトラクティブ法によってFPC(Flexible printed circuits)電極を作成することが検討されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Xuying Liu , Masayuki Kanehara , Chuan Liu,他, “Spontaneous Patterning of High-Resolution Electronics via Parallel Vacuum Ultraviolet”, Adv. Mater. 2016, 28, 6568-6573, WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来手法で作成した静電アクチュエータを例えばロボット等の人工筋肉として利用する場合は、駆動に例えば1kVを超えるような高電圧が必要であり、電源が大型化してしまう課題がある。フィルムピッチが細かいほど出力が出せ低電圧化が可能であるが、従来の製法(サブトラクション法)では、配線のピッチ100μm程度の限界があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、従来より配線のピッチを細くできる導電層形成方法、および導電層形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る導電層形成方法は、基板(例えばFPCフィルム)上にエネルギー(例えば紫外線)を付与し高表面エネルギー部(極性化された箇所)を形成する第1形成工程と、導電性材料(金属材料)を含有する液体(インク)を前記高表面エネルギー部に付与する付与工程と、前記基板上を移動させることで前記導電性材料を含有する液体を広げるコーティングバーにより、前記高表面エネルギー部上に前記導電性材料を含有する液体を塗布する塗布工程と、を有し、前記基板に設けられた前記高表面エネルギー部は、本体部とダミー部に分かれ、前記本体部に対し前記コーティングバーの移動方向の少なくとも前後いずれかの部位に前記ダミー部が配置される、導電層形成方法である。
【0007】
(2)また、本発明の一態様に係る導電層形成方法において、前記コーティングバーの移動方向の前の部位に配置されるダミー部の前部、前記本体部、前記コーティングバーの移動方向の後の部位に配置されるダミー部の後部の位置関係で配置され、前記塗布工程は、前記ダミー部の前部、前記本体部、前記ダミー部の後部の順に前記液体を塗布する、(1)に記載の導電層形成方法である。
【0008】
(3)また、本発明の一態様に係る導電層形成方法において、前記ダミー部の前部よりも前記ダミー部の後部が、前記コーティングバーの移動方向に幅広である、(2)に記載の導電層形成方法である。
【0009】
(4)また、本発明の一態様に係る導電層形成方法において、前記ダミー部の前部と前記ダミー部の後部は、高表面エネルギー部ではない溝部(例えばスリット)を有する、(2)または(3)に記載に導電層形成方法である。
【0010】
(5)また、本発明の一態様に係る導電層形成方法において、前記ダミー部は、前記本体部に対し前記コーティングバーの移動方向の少なくとも左右いずれかの部位に前記ダミー部が配置される、(1)から(4)のうちのいずれか1つに記載の導電層形成方法。
【0011】
(6)また、本発明の一態様に係る導電層形成方法において、前記塗布工程は、前記基板上の垂直方向に対して傾けかつ前記コーティングバーの進行方向の垂直方向に対して傾けて、酸素を含まないガスを噴射しながら前記液体を塗布する、(1)から(5)のうちのいずれか1つに記載の導電層形成方法である。
【0012】
(7)また、本発明の一態様に係る導電層形成方法において、前記基板上にエネルギーの付与により表面エネルギーが変化する材料を含有する濡れ性変化層を形成する第2形成工程を、前記第1形成工程の前に行う、(1)から(6)のうちのいずれか1つに記載の導電層形成方法である。
【0013】
(8)上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る導電層形成装置は、基板上にエネルギーを付与し高表面エネルギー部を形成する高表面エネルギー付与部と、導電性材料を含有する液体を前記高表面エネルギー部に付与する液体付与部と、前記基板上を移動することで前記導電性材料を含有する液体を広げるコーティングバーを制御するバー制御部と、を備え、前記高表面エネルギー付与部は、本体部とダミー部に分かれ、前記本体部に対しコーティングバーの移動方向の少なくとも前後いずれかの部位にダミー部を形成する、導電層形成装置である。
【0014】
(9)また、本発明の一態様に係る導電層形成装置において、前記コーティングバーの移動方向の前の部位に配置されるダミー部の前部、前記本体部、前記コーティングバーの移動方向の後の部位に配置されるダミー部の後部の位置関係で配置され、前記バー制御部は、前記ダミー部の前部、前記本体部、前記ダミー部の後部の順に前記液体を塗布する、(8)に記載の導電層形成装置である。
【0015】
(10)また、本発明の一態様に係る導電層形成装置において、前記ダミー部の前部よりも前記ダミー部の後部が、前記コーティングバーの移動方向に幅広である、(9)に記載の導電層形成装置である。
【0016】
(11)また、本発明の一態様に係る導電層形成装置において、前記ダミー部の前部と前記ダミー部の後部は、高表面エネルギー部ではない溝部(例えばスリット)を有する、(9)または(10)に記載に導電層形成装置である。
【0017】
(12)また、本発明の一態様に係る導電層形成装置において、前記ダミー部は、前記本体部に対し前記コーティングバーの移動方向の少なくとも左右いずれかの部位に前記ダミー部が配置される、(8)から(11)のうちのいずれか1つに記載の導電層形成装置である。
【0018】
(13)また、本発明の一態様に係る導電層形成装置において、前記液体の塗布の際に、前記基板上の垂直方向に対して傾けかつ前記コーティングバーの進行方向の垂直方向に対して傾けて、酸素を含まないガスを噴射するガス噴射部をさらに備える、(8)から(12)のうちのいずれか1つに記載の導電層形成装置である。
【0019】
(14)また、本発明の一態様に係る導電層形成装置において、前記基板上にエネルギーの付与により表面エネルギーが変化する材料を含有する濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成部を備える、(8)から(13)のうちのいずれか1つに記載の導電層形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
(1)~(14)によれば、従来より配線のピッチを細くできる。
(1)、(8)によれば、本体部に適切な量のインクを塗布することができる。
(2)、(9)によれば、本体部に適切な量のインクを塗布することができる、また(2)、(9)によれば、本体部プリント後、コーティングバーにインクが残らず、本体部にインク戻りを発生させることが無くなる。
(3)、(10)によれば、ダミー部の前部により本体部への塗布に適切な量のインクを残すことができ、コーティングバーの進行方向と垂直すなわちコーティングバー方向にインクの広がりを促すことができるので、本体部への左右方向へインク塗布を均一できる。また、(3)、(10)によれば、ダミー部後ろ部により、次のプリントに余計なインクを残すことがなくなる。
(4)、(11)によれば、溝部で甲表面エネルギー部が分割されることで表面張力により盛り上がるインクの高さが低減され、コーティングバーに余計なインクが付着することが無くなる。
(5)、(12)によれば、コーティングバーの進行方向にインクの流れを促すことができるので、本体部の前後方向へインク塗布を均一できる。
(6)、(13)によれば、ガスによりインクがコーティングバーに追従するので、インク塗布済みの個所にインクが戻ることが無くなる。
(7)、(14)によれば、高分子溶液塗布による濡れ性変化層(制御層)を形成するようにしたので、ポリイミドフィルムにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態の導電層形成装置、導電層形成方法によって作成した電極パターン(導電層)の例を示す図である。
図2】第1実施形態に係る導電層形成装置の構成例を示す図である。
図3】第1実施形態に係る電極パターンの作成手順のフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る電極パターンの作成手順を説明するための図である。
図5】比較例のエッチング法による電極パターンの作成手順例を示す図である。
図6】比較例の銀ナノプリントで形成した電極パターンの例を示す図である。
図7】第1実施形態に係る金属ナノインクの塗布の際の窒素の噴射方向や角度を説明するための図である。
図8】第1実施形態に係るダミーパターンの例を示す図である。
図9】第1実施形態に係る導電層形成方法で作成したアクチュエータの例を示す図である。
図10】第1実施形態の導電層形成方法で作成したアクチュエータにより静電フィルムアクチュエータの構成例を示す図である。
図11】静電フィルムアクチュエータを上から見た図である。
図12図11の動作を横から見た模式化した図である。
図13】比較例と第1実施形態の静電フィルムアクチュエータの構成例と大きさ例を示す図である。
図14】第2実施形態に係る導電層形成装置の構成例を示す図である。
図15】第2実施形態に係る電極パターンの作成手順のフローチャートである。
図16】第2実施形態に係る電極パターンの作成手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づいて」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づいて」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0023】
[電極パターン(導電層)の例]
まず、本実施形態の導電層形成装置、導電層形成方法によって作成した電極パターン(導電層)の例を説明する。
図1は、本実施形態の導電層形成装置、導電層形成方法によって作成した電極パターンの例を示す図である。図1において、長手方向をx軸方向、短手方向をy方向とする。後述するように、図1の電極パターンは、FPC(Flexible printed circuits)フィルム(基板)上にx軸方向にインクをプリントして作成する。符号g1は、電極パターンの右端を拡大した画像である。符号g1の画像のようなクローズドなパターンを、本実施形態の導電層形成装置、導電層形成方法によって作成した場合は、クローズドな領域がインクで埋まってしまうことなく、パターンを分離して作成できる。
【0024】
<第1実施形態>
第1実施形態では、高分子溶液塗布による濡れ性変化層(制御層)を用いない形成方法の例を説明する。
【0025】
[導電層形成装置の構成例]
次に、導電層形成装置1の構成例を説明する。
図2は、本実施形態に係る導電層形成装置の構成例を示す図である。図2のように、導電層形成装置1は、例えば、制御部11と、記憶部12を備える。
制御部11は、例えば、紫外線照射制御部111(高表面エネルギー付与部)と、バー駆動制御部112(バー制御部)と、インク塗布制御部113(液体付与部)と、ガス噴射制御部114(ガス噴射部)を備える。
導電層形成装置1には、例えば、紫外線照射装置2(高表面エネルギー付与部)と、コーティングバー3と、インク供給装置4(液体付与部)と、ガス噴射装置5が接続される。
【0026】
紫外線照射装置2は、導電層形成装置1の制御に応じて、紫外線を照射する。
【0027】
コーティングバー3は、インク供給装置4によって、例えばFPCフィルム上に塗布された金属ナノインクを、導電層形成装置1の制御に応じて馴らす。
【0028】
インク供給装置4は、インク41(例えば銀ナノインク)を備える。インク供給装置4は、導電層形成装置1の制御に応じて、金属ナノインクを例えばFPCフィルム上に塗布する。
【0029】
ガス噴射装置5は、ガス51(例えば窒素)を備える。ガス噴射装置5は、導電層形成装置1の制御に応じて、ガスを噴射する。なお、ガスは、酸素を含まないガス以外であればよく、アルゴン等であってもよい。
【0030】
記憶部12は、窒素の噴射方向、噴射角度、噴射量等を記憶する。記憶部12は、塗布する金属ナノインクの量を記憶する。
【0031】
紫外線照射制御部111は、紫外線照射装置2に対して、紫外線の照射量、照射開始、照射終了等を制御する。
【0032】
バー駆動制御部112は、コーティングバー3のフィルムへの接触開始、接触終了、移動等を制御する。
【0033】
インク塗布制御部113は、インク供給装置4に対して、インクの塗布開始、塗布終了、塗布量等を制御する。
【0034】
ガス噴射制御部114は、ガス噴射装置5に対して、不活性ガスの噴射開始、噴射終了、噴射量、濃度等を制御する。
【0035】
[電極パターンの作成方法]
次に、本実施形態の電極パターンの作成方法について、図3図4を用いて説明する。図3は、本実施形態に係る電極パターンの作成手順のフローチャートである。図4は、本実施形態に係る電極パターンの作成手順を説明するための図である。なお、本実施形態の導電層形成では、銀ナノプリント法をベースにしている。なお、図4の符号g11のように、プリントする方向をx軸方向、FPCフィルムの厚み方向をz軸方向とする。なお、パターンを形成する対象は、FPCフィルムに限らない。また、フィルムに塗布して、電極パターンの形成に用いる金属ナノインクの一例として、銀ナノインクを例に説明する。
【0036】
(ステップS1)図4の符号g11のように、導電層形成装置1には、パターンを形成するFPCフィルム301がセットされる。
【0037】
(ステップS2)図4の符号g12のように、導電層形成装置1は、濡れ性制御層上のパターンを形成しない部分にマスク302を形成する。
【0038】
(ステップS3)図4の符号g13のように、導電層形成装置1は、紫外線照射装置2を制御し、例えば200nm以下の波長を有する紫外線を照射させて露光を行う。この露光によって、図4の符号g14のように、FPCフィルム301のマスク302がされていない紫外線が照射されたパターン形成領域303は、極性化される。なお、極性化された箇所は、金属を含むインクが付着しやすくなる。
【0039】
(ステップS4)図4の符号g15のように、導電層形成装置1は、インク供給装置4を制御してインク41を塗布し、コーティングバー3を制御してインク41をx軸方向に馴らしていく。なお、このプリントの際、導電層形成装置1は、ガス噴射装置5を制御して、例えば窒素314を噴射する。なお、窒素314の噴射方向や角度については、後述する。図4の符号g16のように、窒素314を噴射しながらインク41をコーティングバー3で馴らした結果、極性化されたパターン形成領域のみにインク41が塗布される。このように、導電層形成装置1は、FPCフィルム301上に、電極パターンを形成するためのインク41をプリントする。
【0040】
(ステップS5)図4の符号g17のように、導電層形成装置1は、紫外線照射装置2を制御し、紫外線を照射させてインク41の硬化を行う。これにより、図4の符号g18のように、FPCフィルム301の所望位置に電極パターン305が形成される。
【0041】
ここで、比較例として、一般的なエッチング法による電極パターンの作成手順例を説明する。図5は、比較例のエッチング法による電極パターンの作成手順例を示す図である。
この場合は、まず、導電層形成装置は、FPCフィルムを用意し(g901)、FPCフィルムの上に銅箔を形成する(g902)。次に、導電層形成装置は、レジストを塗布し(g903)、さらにパターンを形成する領域以外にマスクを装着する(g904)。次に、導電層形成装置は、紫外線を照射させて露光を行い(g905)、パターン形成部を硬化させる(g906)。硬化後、導電層形成装置は、現像によってレジストの除去を行い(g907)、さらにエッチングを行ってパターン形成部以外の銅箔を除去する(g908)。その後、導電層形成装置は、パターン上のレジストを除去して、電極パターンの形成を終了する(g909)。なお、符号g910のように、エッチング法で作成したパターンは、パターンの左右がえぐれてテーパができてしまうので、パターン間のピッチを狭くするのが困難であった。このため、従来の手法では100μm程度のパターン間のピッチの電極パターンしか形成できなかった。
【0042】
このように、本実施形態の導電層形成方法(図3図4)によれば、一般的なエッチング法による電極パターンと比べて、銅箔の形成、レジストの塗布、レジスト除去、エッチング等の工程と作成コストを大幅に削減することができる。
【0043】
[窒素の噴射]
次に、プリントの際の窒素の噴射について説明する。
図6は、比較例の銀ナノプリントで形成した電極パターンの例を示す図である。なお、図6の例で、パターン同士のピッチが40μmの例であり、本実施形態のように金属ナノインクの塗布の際に窒素を噴射せず、後述するガードパターンを形成せずにパターンを形成した例である。例えば画像g920の例では、隣接するパターンg921とg922との間にインクがたまってしまい、パターン同士がくっついてしまう場合があった。また、画像g930の例では、クローズドなパターンの間にインクがたまってしまい(g931)、パターン同士がくっついてしまう場合があった。
【0044】
本実施形態では、金属ナノインクの塗布の際、図6のような噴射方向と角度で窒素を噴射するようにした。図7は、本実施形態に係る金属ナノインクの塗布の際の窒素の噴射方向や角度を説明するための図である。
【0045】
符号g50の画像は、コーティングバー3を横から見た図である。符号g51は窒素314の噴射角度を示し、符号g52はコーティングバー3の進行方向を示している。パターンにインクが乗るのを邪魔せず、膜が貼らずに膜が壊れるように、インク41が必要以上に残らないようにするために、噴射角度g51は、FPCフィルムに対して急な角度(例えばコーティングバー3の下部にあるインク41に当たる角度)が望ましい。また、窒素314の噴射は、コーティングバー3の進行方向に対して、後方からである。なお、本実施形態において、膜が貼るとは、インク41が表面張力によって、パターン間やクローズドパターンを埋めてしまう状態である。
【0046】
符号g60の画像は、コーティングバー3を上から見た図である。符号g61は窒素314の噴射方向を示し、符号g62はコーティングバー3の進行方向を示している。噴射方向は、真正面にコーティングバー3から出た(漏れた)インク41を電極パターン部分に押し戻さないような角度(コーティングバー3に対して垂直ではなく傾いた角度)が望ましい。
【0047】
なお、噴射するガスの流量、角度、方向等は、作成するパターン等に応じて設定する。
また、インク塗布の際に、上述した例のように窒素を用いる理由は、例えば空気を噴射してしまうと、金属ナノインクが酸化して固まりやすくなるためである。
【0048】
これにより、本実施形態によれば、パターン間、クローズドパターン等にインク41の膜ができるのを防ぐことができる。
【0049】
[ダミーパターン]
次に、プリントの際に用いるダミーパターンについて説明する。
図8は、本実施形態に係るダミーパターンの例を示す図である。図8において、符号g213はフィルムを示し、符号g211とg212は作成したいパターンを示している。また、符号g201~g204はダミーパターンを示している。符号g201とg202のダミーパターンは、所望の電極パターンg211、g212(本体部)の前後に設けられ、例えばy軸方向が長手方向であり、x軸方向が短手方向である。符号g203とg204のダミーパターンは、所望の電極パターンの左右に設けられ、例えばx軸方向が長手方向であり、y軸方向が短手方向である。なお、所望の電極パターンg211、g212は、例えば、固定子用と移動子用である。
【0050】
前方のダミーパターン(g201)(ダミー部の前部)の効果は、電極パターン部に到達するインクの量を適量に抑えることができ、所望のパターンにインクが効率よく広がるようにすることができる。さらに、前方のダミーパターン(g201)は、所望のパターンに対して垂直に設けられているので、インクの塗布開始時に、このダミーパターンによって、ダミーパターンが形成されている方向であるy軸方向にインクが広がりやすくなり。結果的に所望のパターンに対してy軸方向にインクが広がりやすくできるガイド的な効果も得られる。
【0051】
後方のダミーパターン(g202)(ダミー部の後部)の効果は、電極パターン部の他の箇所に余計なインクが付かないようにすることができ、余ったインクを吸い取ることができる。
【0052】
なお、前方のダミーパターン(g201)は多すぎるとインクを吸いすぎるので、後方のダミーパターン(g202)より本数を少なくするようにしてもよい。なお、ダミーパターンの本数や幅等は、例えば、形成するパターン間のピッチ、用いるインク等に応じて設定する。また、形成したいパターンの位置と、ダミーパターンの位置との関係は、例えば、形成するパターン間のピッチ、用いるインク等に応じて設定する。なお、塗布するインクの量を余らないように適切に制御出来る場合は、後方のダミーパターン(g202)を設けなくてもよい。
【0053】
また、パターンの左右に設けられるダミーパターン(g203、g204)の効果は、進行方向の左右の余分なインクを吸い取ることができる。なお、電極パターンg211とg212との間にも、ダミーパターンを設けるようにしてもよい。すなわち、ダミーパターンは、所望の電極パターンを形成しない領域に設けるようにしてもよい。ダミーパターン(g203、g204)は、所望のパターン方向に形成することで、所望のパターンに対して進行方向にインクが広がりやすくできる効果も得られる。なお、ダミーパターン(g203、g204)は、所望のパターンに対して垂直方向の複数の線で構成してもよい。なお、左右のダミーパターンは、左右のうちのいずれか1つであってもよい。
【0054】
なお、ダミーパターンに溝部(スリット)を入れている理由は、広いパターンであるとインクが膨らんでしまい、プリントする際のコーティングバー3に張り付きインクが意図しない箇所に移動してしまうためである。このため、本実施形態ではダミーパターンにスリットを入れるようにした。これにより、本実施形態によれば、張り付いたインクが表面張力により液の高さが抑えられ、液がコーティングバー3に干渉しづらくなって散りにくくなる。
【0055】
なお、ダミーパターンは、複数の平行な直線であってもよく、サイン波のような複数の曲線であってもよく、複数の三角波であってもよく、複数の矩形波であってよい。複数の線は等間隔であってもよく、等間隔でなくてもよい。さらに、ダミーパターンは、複数の線で構成されて無くてもよく、隙間のある複数の模様(例えば幾何学模様等)で構成されていてもよい。
【0056】
なお、ダミーパターン付きでインクをプリントした後は、ダミーパターン部を切り離して例えばアクチュエータとしてフィルムを用いる。
【0057】
[導電層形成方法で作成したアクチュエータの例]
次に、導電層形成方法で作成したアクチュエータの例を説明する。
図9は、本実施形態に係る導電層形成方法で作成したアクチュエータの例を示す図である。
符号g301とg304は、1相のパターンである。符号g302とg305は、2相のパターンである。符号g303とg306は、3相のパターンである。符号g307は、同じ1相のパターン(g301とg304)をつなげるためのクローズドパターン部である。
符号g311は、表面のバスラインである。符号g312は、裏面のバスラインである。符号g313は、2相目(g305)を、スルーホールを介して裏面のパターンに接続している接続部である。
【0058】
なお、図9のアクチュエータのパターンは、例えば図1に示した電極パターンを用いて作成したものの一部を示している。
【0059】
[静電フィルムアクチュエータの例]
次に、本実施形態の導電層形成方法で作成したアクチュエータにより静電フィルムアクチュエータの例を説明する。
図10は、本実施形態の導電層形成方法で作成したアクチュエータにより静電フィルムアクチュエータの構成例を示す図である。図10に示した静電フィルムアクチュエータは、3相の高電圧交流波(g411)を用いて、移動子(g401、g403)、固定子(g402、g404)が同位相を保つように駆動される。なお、移動子と固定子において、「1」は1相、「2」は2相、「3」は3相を表している。図10の静電フィルムアクチュエータは、移動子(g401、g403)が、交流波によって紙面に対して左右に移動する。
なお、固定子と移動子とは、例えば、オイルg405と、回転可能なボールgg406を介して平行に配置される。
【0060】
図10は、静電フィルムアクチュエータを上から見た図である。画像g450は第
1の状態を示している。画像g460は、矢印g473のように、移動子g472が固定子g471に対して右に移動した第2の状態を示している。
【0061】
図12は、図11の動作を横から見た模式化した図である。
画像g500は、固定子g541と移動子g542が移動前の状態例を示している。なお、サイン波g551は、固定子g541における位相のイメージを表している。サイン波g552は、移動子g542における位相のイメージを表している。
画像g510は、固定子g541に対して移動子g542が右に移動し始めた状態例を示している。
画像g520は、固定子g541に対して移動子g542が右に最大量移動した状態例を示している。
なお、画像g522の後、画像g530のように、移動子g542は、固定子g541に対して左に移動する。
このように、交流波によって、移動子は、固定子に対して例えば左右への移動が制御される。
【0062】
図13は、比較例と本実施形態の静電フィルムアクチュエータの構成例と大きさ例を示す図である。なお、図6において、長手方向をx軸方向、厚み方向をz軸方向とする。
画像g600は、比較例の静電フィルムアクチュエータであり、エッチング法で作成したものである。比較例の静電フィルムアクチュエータは、例えば、x軸方向の電極パターンの中心間の距離が200μm、z軸方向の電極パターンの距離が70μm、電極パターンとFPCフィルム表面との距離が25μmである。また、この条件において、フィルムが壊れず推力を大きくするために必要な印加電圧は、例えば1500V(1.5kV)、非誘電率εは1.9である。
画像g610は、本実施形態の静電フィルムアクチュエータであり、本実施形態の導電層形成方法で作成したものである。本実施形態の静電フィルムアクチュエータは、例えば、x軸方向の電極パターンの中心間の距離が10μm、z軸方向の電極パターンの距離が12μm、電極パターンとFPCフィルム表面との距離が5μmである。また、必要な印加電圧は650V、非誘電率εは2.6である。
【0063】
ここで、電圧を印加することで働く力fは次式(1)のように表され、容量Cは次式(2)のように表すことができる。
【0064】
【数1】
【0065】
【数2】
【0066】
なお、式(1)、(2)において、pはx軸方向の電極パターンの中心間の距離、dはz軸方向の電極パターンの距離、Vは印加電圧、Sは、移動子、固定子の電極の重なり面積である。
【0067】
式(1)に従って、与える電圧Vによって推力が変わる。このため、本実施形態によれば、中心間の距離Pを細かくするとその分で推力が増し、電圧Vを下げることができる。
このように作成した本実施形態の静電フィルムアクチュエータは、比較例の静電フィルムアクチュエータに対して、例えば、アクチュエータ単体で1/10の重さとサイズを実現でき、電源等の周辺機器を含めても質量を1/3程度に削減できた。
【0068】
以上のように、本実施形態では、必要パターン部以外を削るウェットエッジングでなく、必要パターン部を積層して作り出していくアディティブマニファクチュアリングの1つとして金属ナノプリント法を用いて電極パターンを形成するようにした。さらに本実施形態では、インク塗布の際に窒素を噴射し、さらにダミーパターンを形成するようにした。そして、本実施形態では、このように作成した電極パターンを備える静電フィルムアクチュエータを作成した。
【0069】
また、本実施形態では、金属ナノインクによるプリントで電極パターンを形成するようにした。金属ナノインクによるプリントでは、部品の形成等においてじゃ、まだ課題等があるが、このようにパターンの形成に使用することで、パターン間のピッチを狭くすることができる。そして、静電フィルムアクチュエータの場合は、部品を実装する必要が無く、配線部分を形成するため、金属ナノインクによるプリント法を用いることは好適である。そして、本実施形態では、金属ナノプリントを用いて、パターン間の細分化のために、インク塗布に際のガスの噴射とダミーパターンも使用するようにした。
【0070】
これにより、本実施形態によれば、窒素の噴射とダミーパターンによって、パターン同士の接触等を低減できるので、従来技術では作成できかったより細かいピッチ(例えば10、20μm)のフィルムを実現した。これにより、本実施形態によれば、従来技術ではできなかったライン(パターン)とスペースとの比率を、例えば50%程度(従来は例えば10%程度)に向上できる。また、本実施形態によれば、このように作成した電極パターンを備える静電フィルムアクチュエータによれば、小型化、印加電圧の削減を行うことができる。なお、本実施形態によれば、アクチュエータを小型化できるため、同じ出力に必要なアクチュエータをより薄く小さくすることが可能である。また、本実施形態によれば、電極パターンの形成に係る工程や工数を、従来より大幅に削減することができる。
【0071】
<第2実施形態>
第2実施形態では、高分子溶液塗布による濡れ性変化層(制御層)を用いる形成方法の例を説明する。
【0072】
[導電層形成装置の構成例]
次に、導電層形成装置1Aの構成例を説明する。
図14は、本実施形態に係る導電層形成装置の構成例を示す図である。図14のように、導電層形成装置1Aは、例えば、制御部11Aと、記憶部12を備える。
制御部11Aは、例えば、紫外線照射制御部111(高表面エネルギー付与部)と、バー駆動制御部112(バー制御部)と、インク塗布制御部113(液体付与部)と、ガス噴射制御部114(ガス噴射部)と、高分子溶液塗布制御部115(濡れ性変化層形成部)を備える。
導電層形成装置1Aには、例えば、紫外線照射装置2(高表面エネルギー付与部)と、コーティングバー3と、インク供給装置4(液体付与部)と、ガス噴射装置5と、高分子溶液塗布装置6(濡れ性変化層形成部)が接続される。
【0073】
高分子溶液塗布装置6は、シクロオレフィンポリマー、ポリ乳酸、およびこれらの誘電体、ならびにポロシラザンからなる群から少なくとも1種選択される高分子材料を含む高分子溶液61を備える。高分子溶液塗布装置6は、導電層形成装置1の制御に応じて、高分子溶液を塗布する。なお、高分子溶液は、エネルギー(紫外線)の付与により表面エネルギーが変化する材料の一例である。
【0074】
高分子溶液塗布制御部115は、高分子溶液塗布装置6に対して、高分子溶液の塗布開始、塗布終了、塗布量等を制御する。
【0075】
[電極パターンの作成方法]
次に、本実施形態の電極パターンの作成方法について、図15図16を用いて説明する。図15は、本実施形態に係る電極パターンの作成手順のフローチャートである。図16は、本実施形態に係る電極パターンの作成手順を説明するための図である。なお、本実施形態の導電層形成では、銀ナノプリント法をベースにしている。なお、図15の符号g101のように、プリントする方向をx軸方向、FPCフィルムの厚み方向をz軸方向とする。なお、パターンを形成する対象は、FPCフィルムに限らない。また、フィルムに塗布して、電極パターンの形成に用いる金属ナノインクの一例として、銀ナノインクを例に説明する。
【0076】
(ステップS101)図15の符号g101のように、導電層形成装置1Aには、パターンを形成するFPCフィルム301がセットされる。
【0077】
(ステップS102)図15の符号g102のように、導電層形成装置1Aは、高分子溶液塗布制御部115を制御して、FPCフィルム301上に高分子溶液を塗布し、塗布後乾燥させて濡れ性制御層303を形成する。
【0078】
(ステップS103)図15の符号g103のように、導電層形成装置1Aは、濡れ性制御層303上のパターンを形成しない部分にマスク302を形成する。
【0079】
(ステップS104)図15の符号g104のように、導電層形成装置1Aは、紫外線照射装置2を制御し、例えば200nm以下の波長を有する紫外線を照射させて露光を行う。この露光によって、図15の符号g105のように、FPCフィルム301のマスク302がされていない紫外線が照射されたパターン形成領域304は、極性化される。なお、極性化された箇所は、金属を含むインクが付着しやすくなる。
【0080】
(ステップS105)図15の符号g106のように、導電層形成装置1Aは、インク供給装置4を制御してインク41を塗布し、コーティングバー3を制御してインク41をx軸方向に馴らしていく。なお、このプリントの際、導電層形成装置1Aは、ガス噴射装置5を制御して、例えば窒素314を噴射する。なお、窒素314の噴射方向や角度については、後述する。図15の符号g107のように、窒素314を噴射しながらインク41をコーティングバー3で馴らした結果、極性化されたパターン形成領域のみにインク41が塗布される。このように、導電層形成装置1Aは、FPCフィルム301上に、電極パターンを形成するためのインク41をプリントする。
【0081】
(ステップS106)図15の符号g1108のように、導電層形成装置1Aは、紫外線照射装置2を制御し、紫外線を照射させてインク41の硬化を行う。これにより、図15の符号g109のように、FPCフィルム301の所望位置に電極パターン305が形成される。
【0082】
このように、本実施形態の導電層形成方法(図15図16)によれば、高分子溶液を塗布し、塗布後乾燥させて濡れ性制御層(制御層)を形成するようにしたので、ポリイミドフィルムにも適用できる。また、本実施形態においても。第1実施形態と同様に、一般的なエッチング法による電極パターンと比べて、銅箔の形成、レジストの塗布、レジスト除去、エッチング等の工程と作成コストを大幅に削減することができる。
【0083】
なお、上述した例では、塗布する金属インクの例として銀ナノインクを例に説明したが、これに限らない、インクは、例えば、金、銅、ニッケル、スズ、白金、パラジウム等であってもよい。
また、上述した例では、インクの塗布の際に窒素を噴射する例を説明したが、噴射するガスはこれに限らない、噴射するガスは、インクに含まれる金属を酸化させにくく固まりにくいものであればよい。
【0084】
なお、上述した各実施例では、このような手法で作成したパターンを静電アクチュエータに用いる例を説明したが、これに限らない。製品のパターンとして利用するようにすることももちろん可能である。
また、このように作成した静電アクチュエータは、例えばロボットやアシスト装置等の人工筋肉等に利用できる。
【0085】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【0086】
[付記]
(付記1)基板上にエネルギー(紫外線)の付与により表面エネルギーが変化する材料を含有する濡れ性変化層を形成する第1形成工程と、
前記濡れ性変化層にエネルギーを付与し高表面エネルギー部(極性化された箇所)を形成する第2形成工程と、
導電性材料(金属材料)を含有する液体(インク)を前記高表面エネルギー部に付与する付与工程と、
前記基板上を移動させることで前記導電性材料を含有する液体を広げるコーティングバーにより、前記高表面エネルギー部上に前記導電性材料を含有する液体を塗布する塗布工程と、
を有し、
前記塗布工程で、前記液体に対して酸素を含まないガスを噴射しながら、前記液体を塗布する、導電層形成方法。
(付記2)
(付記1)において、前記塗布工程で、前記ガスを、前記コーティングバーの進行方向に対して後ろ側から噴射する、導電層形成方法。
(付記3)
(付記1)または(付記2)において、前記塗布工程で、前記基板の平面上で、前記コーティングバーの進行方向に対して傾けて前記ガスを噴射する、導電層形成方法。
(付記4)(付記1)から(付記3)のいずれか1つにおいて、前記ガスは窒素である、導電層形成方法。
【符号の説明】
【0087】
1…導電層形成装置、11…制御部、12…記憶部、111…紫外線照射制御部、112…バー駆動制御部、113…インク塗布制御部、114…ガス噴射制御部、2…紫外線照射装置、3…コーティングバー、4…インク供給装置、5…ガス噴射装置、6…高分子溶液塗布装置、41…インク、51…ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16