(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073159
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】送電コイルユニット及び給電システム
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20240522BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240522BHJP
H01F 27/08 20060101ALI20240522BHJP
H01F 27/22 20060101ALI20240522BHJP
B60M 7/00 20060101ALN20240522BHJP
【FI】
H01F38/14
H02J50/10
H01F27/08 150
H01F27/22
B60M7/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184227
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】大泉 朋久
【テーマコード(参考)】
5E050
【Fターム(参考)】
5E050BA03
5E050CB02
5E050JA03
(57)【要約】
【課題】強度確保と効率的な熱放出とを両立させた送電コイルユニット及び給電システムを提供する。
【解決手段】送電コイルユニットは、送電コイルと、前記送電コイルの配線を通す壁によって幾何学的形状の空間を形成する構造体とを、底板及び天板で挟持して構成され、前記空間には冷却材が充填されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイルと、前記送電コイルの配線を通す壁によって幾何学的形状の空間を形成する構造体とを、底板及び天板で挟持して構成され、前記空間には冷却材が充填されている、
送電コイルユニット。
【請求項2】
前記構造体は、ハニカム状に空間を形成する構造を有する
請求項1に記載の送電コイルユニット。
【請求項3】
前記底板の外面には、放熱リブが設けられている
請求項1に記載の送電コイルユニット。
【請求項4】
前記構造体及び天板は、樹脂製で一体成型されている
請求項1に記載の送電コイルユニット。
【請求項5】
路面下に並べて埋設された複数の送電コイルユニットと、
前記複数の送電コイルユニットに接続され、電流を供給する送電装置と、
前記複数の送電コイルユニットからの電力の出力を制御する制御装置と
を含み、
前記複数の送電コイルユニットは、送電コイルと、前記送電コイルの配線を通す壁によって幾何学的形状の空間を形成する構造体とを、底板及び天板で挟持して構成され、前記空間には冷却材が充填されている
給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電システムにおける送電コイルユニット及び給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車へのワイヤレス給電システムが実用化されている。ワイヤレス給電システムは、駐車エリアに送電コイルを設置したタイプのみならず、車両が徐行するエリアの路面に送電コイルを複数埋設して走行中に給電を実現するタイプが提案されている。
【0003】
走行中の給電を実現する走行中ワイヤレス給電システムでは、送電コイルを車両が走行する路面下に埋設するので、送電コイルの耐久性や、強度を持たせた場合の熱放出が問題となる。特許文献1は、送電コイルを樹脂でモールドすることによって強度を確保することを開示している。特許文献2は、駐車エリアに埋設するタイプに関し送電コイルの内部に冷却水を循環させることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-012377号公報
【特許文献2】特開2018-093589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走行中ワイヤレス給電システムを普及させるためには、強度確保が必要である。特許文献1の送電コイルでは、樹脂でモールドして強度を確保しているが、そのため放熱が困難である。特許文献2に開示された方法で冷却することは可能であるが、冷却循環装置が必要であるため、走行中ワイヤレス給電システムに適しているとは言えない。
【0006】
本発明は、斯かる事情を鑑みてなされたものであり、強度確保と効率的な熱放出とを両立させた送電コイルユニット及び給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態の送電コイルユニットは、送電コイルと、前記送電コイルの配線を通す壁によって幾何学的形状の空間を形成する構造体とを、底板及び天板で挟持して構成され、前記空間には冷却材が充填されている。
【0008】
本開示の一実施形態の給電システムは、路面下に並べて埋設された複数の送電コイルユニットと、前記複数の送電コイルユニットに接続され、電流を供給する送電装置と、前記複数の送電コイルユニットからの電力の出力を制御する制御装置とを含み、前記複数の送電コイルユニットは、送電コイルと、前記送電コイルの配線を通す壁によって幾何学的形状の空間を形成する構造体とを、底板及び天板で挟持して構成され、前記空間には冷却材が充填されている。
【0009】
本開示の送電コイルユニット及び給電システムでは、複数の幾何学形状の空間を連続的に形成する壁を路面に対して垂直に設置可能な構造体で送電コイルを保護するので、放熱ができる状態で強度を確保できる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、簡易な構成で強度確保と効率的な熱放出とが可能な送電コイルユニット及び給電システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態のワイヤレス給電システムの概要図である。
【
図5】構造体の幾何学形状の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
図1は、本実施形態のワイヤレス給電システム100の概要図である。ワイヤレス給電システム100は、車両Vが走行する道路Rの路面下に並べて埋設された複数の送電コイルユニット1と、複数の送電コイルユニット1のコイルへ電流を供給する送電装置2とを含む。ワイヤレス給電システム100は、送電コイルユニット1からの電力の出力を制御する制御装置3を更に含む。送電コイルユニット1の送電コイルが、送電装置2及び制御装置3に接続されている。制御装置3は、並べて埋設された複数の送電コイルユニット1の起動、停止の制御、及び、異常検知を実施する。
【0014】
複数の送電コイルユニット1はそれぞれ、平板状の形状を有する。複数の送電コイルユニット1は、路面下に、
図1に示すように並べて埋設される。
図1に示すように、1つの送電装置2に、複数の送電コイルユニット1が接続される構成のみならず、各送電コイルユニット1に送電装置2が接続されていてもよい。
【0015】
図2は、送電コイルユニット1の略示斜視図であり、
図3は、送電コイルユニット1の断面図であり、
図4は、送電コイルユニット1の一部拡大図である。
【0016】
送電コイルユニット1は、金属製の矩形状の底板10と、底板10に載置された送電コイル11と、底板10に対して立設されるハニカム状の構造体12と、構造体12で区切られる空間に充填された冷却材13と、天板14とを含む。
【0017】
底板10は、熱伝導率が比較的高く、放熱性に優れた金属製である。底板10は例えばアルミニウム製板である。底板10には、放熱を助けるリブ101が設けられている。リブ101は必須ではない。
【0018】
リブ101を下方にして載置される底板10に、板面に垂直な壁121で区切られた六角柱状の空間を隙間なく形成する構造体12が立設されている。構造体12は、非磁性体材料製の矩形枠120内に、同材料製の壁121をハニカム状に設けて成形されている。構造体12は例えば、樹脂を成形した樹脂製ハニカムコアである。構造体12の壁121の一部には、孔122が設けられている。孔122は、壁121全てに設けられていてもよい。孔122は、リッツ線111を通すために使用されてもよいし、冷却材13の流路にも使用できる。壁121全てに孔が設けられている場合、熱伝導率を向上させることができる。
【0019】
構造体12に区切られた空間それぞれの底板10側には、
図3、
図4に示すように、磁性体21及び絶縁シート22が設けられている。磁性体21は例えばフェライト板である。磁性体21は、送電コイル11で発生した磁界を送電コイル11側へ反射する。絶縁シート22は、例えばゴムであって、送電コイル11を通過する電気が金属である磁性体21や底板10へ伝わることを防ぐ。なお磁性体21及び絶縁シート22は、送電コイル11が被覆されたリッツ線111である場合、必須ではない。
【0020】
送電コイル11は、複数の導線を束ねて被覆したリッツ線111を、同心軸上に異なる径のコイルを形成するように底板10に載置される。送電コイル11は、同一径で複数回巻かれるようにして形成されていてもよい。リッツ線111は、構造体12で形成される六角柱状の複数の空間に亘る場合に、構造体12の壁121の孔122を通るように設けられる。送電コイル11は、
図1に示したように、円形に巻回される構成のみならず、正多角形、楕円形、長円形等の形状に巻回されていてもよい。
【0021】
送電コイル11が設置された構造体12で形成される正六角柱状の複数の空間にはそれぞれ、冷却材13が充填される。冷却材13は、絶縁性能及び熱伝導率がいずれも高い素材の材料である。冷却材13は例えばシリコーンである。
【0022】
送電コイルユニット1は、底板10の反対側に、天板14を固定してある。天板14は、非磁性体製の平板である。天板14と構造体12は一体化していてもよい。天板14と構造体12が一体型である場合、底板10は側壁を有する箱体であって、構造体12が一体化した天板14の構造体12部分を、底板10から立設された側壁内部に収めて構成される。
【0023】
このように、送電コイルユニット1は、送電コイル11を中に通した樹脂製のハニカムコアである構造体12を、底板10と天板14とで挟むようにして、内部に冷却材13を充填して構成される。
【0024】
このように構成される送電コイルユニット1は、構造体12がハニカム形状を有することで、空洞を有しながらも高い耐荷重性を有する性質をそのまま有し、路面下に埋設しても送電コイル11を保護することができる。構造体12が形成する空洞(空間)に、冷却材13を充填するので、冷却材13は、熱を発する送電コイル11から熱を吸収し、その熱を絶縁シート22へ伝えることができる。絶縁シート22に伝わった熱は、磁性体21を介して底板10に伝わり、底板10から地中に逃げやすい。
【0025】
構造体12の幾何学形状は、正六角形(ハニカム)に限られない。
図5は、構造体12の幾何学形状の他の例を示す図である。構造体12は、他の正角柱状の空間を形成するような形状であってもよい。構造体12は、
図5Aに示すように、正方形柱の空間を隙間なく埋めるような形状であってもよい。構造体12は、
図5Bに示すように、ダイヤ形状の空間を隙間なく埋めるような形状であってもよい。構造体12は、同一の形状が隙間なく連続する形状に限らず、壁121の高さ方向に耐久性が高い形状であればよい。構造体12は例えば、
図5Cに示すように、円柱を並べ、その隙間に構造であってもよい。
【0026】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0027】
特許請求の範囲に記載されている複数の請求項に関して、引用形式に関わらず、相互に組み合わせることが可能である。特許請求の範囲では、複数の請求項に従属する多項従属請求項が記載されている。特許請求の範囲では、多項従属請求項に従属する多項従属請求項は記載されていないが、多項従属請求項に従属する多項従属請求項を記載してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 送電コイルユニット
10 底板
101 リブ
11 送電コイル
12 構造体
121 壁
13 冷却材
14 天板
2 送電装置
3 制御装置