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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007316
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】引張曲げ試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/20 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
G01N3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063353
(22)【出願日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2022108603
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】田口 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 恭志
(72)【発明者】
【氏名】前田 康裕
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA07
2G061AB03
2G061BA04
2G061CA02
2G061CB01
2G061CC11
2G061DA01
2G061EA02
2G061EA04
2G061EB07
(57)【要約】
【課題】
曲げ角度が一定で、かつデジタル画像相関法による試験中のひずみ測定が可能な引張曲げ試験を、簡易な試験機構成で実現する。
【解決手段】
ホルダ3とダイ4で試験片2の長手方向の端部を挟持し、パンチ5を押圧して引張曲げ変形させる。パンチ5は、先端部の試験片2の短手方向の断面形状が一定であり、先端部の試験片2の長手方向における両端にそれぞれ第1凸曲面14e,14fを有するパンチ本体11と、パンチ本体11の先端部に試験片側に突出するように設けられ、試験片2の短手方向の断面形状が一定の第2凸曲面12dを有し、パンチ本体11の第1凸曲面14e,14f間の試験片2の長手方向の離間距離である第1幅WMよりも狭い、第2幅WPを有する突起部12Aとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダとダイで板状の試験片の長手方向の端部を挟持し、
前記試験片にパンチを押圧して引張曲げ変形させ、
前記パンチは、
先端部の前記試験片の短手方向の断面形状が一定であり、前記先端部の前記試験片の前記長手方向における両端にそれぞれ第1凸曲面を有するパンチ本体と、
前記パンチ本体の前記先端部に前記試験片側に突出するように設けられ、前記試験片の前記短手方向の断面形状が一定の第2凸曲面を有し、前記パンチ本体の第1凸曲面間の前記試験片の前記長手方向の離間距離である第1幅よりも狭い、前記試験片の前記長手方向の寸法である第2幅を有する突起部と
を備える、引張曲げ試験方法。
【請求項2】
前記突起部は前記パンチ本体の前記先端部に取り外し可能に固定されている、請求項1に記載の引張曲げ試験方法。
【請求項3】
前記突起部の前記第2凸曲面のみが前記試験片に接触している第1状態では、前記ダイによって前記ホルダに対して押し付けて前記試験片を保持する試験片保持力を第1保持力に設定し、
前記突起部の前記第2凸曲面と前記パンチ本体の前記第1凸曲面の両方が前記試験片に接触する第2状態では、前記試験片保持力を前記試験片の前記ホルダと前記ダイで挟持された部分からの材料流入が生じない第2保持力に設定し、
前記第1保持力は前記第2保持力より小さい、請求項1又は請求項2に記載の引張曲げ試験方法。
【請求項4】
前記試験片の前記ホルダと前記ダイで挟持された部分と前記パンチが押圧される部分との間に、前記試験片を前記長手方向に曲げ返した余剰部が設けられている、請求項1又は2に記載の引張曲げ試験方法。
【請求項5】
前記試験片の前記パンチの前記突起部が押圧される部分の前記短手方向の両端に切欠がそれぞれ設けられ、前記切欠の形状は前記パンチの前記突起部の先端に向かって幅が直線的又は曲線的に漸減し、かつ最先端における幅が最も狭い、請求項1又は2に記載の引張曲げ試験方法。
【請求項6】
前記突起部の前記試験片の前記短手方向の寸法である突起長が、前記試験片の前記短手方向の寸法である幅よりも短く、
前記試験片にパンチを押圧して引張曲げ変形させるときに、前記試験片の前記短手方向の両端部を前記突起部に対して前記短手方向に突出させる、
請求項1又は2に記載の引張曲げ試験方法。
【請求項7】
前記突起長は、前記試験片の前記幅の半分値よりも長い、
請求項6に記載の引張曲げ試験方法。
【請求項8】
前記突起部の前記試験片の前記短手方向における両端に、前記パンチ本体の前記先端部に前記試験片側に突出するように設けられた補助突起部が設けられ、
前記突起部の前記パンチ本体からの突出量である第1突起高さが、前記補助突起部の前記パンチ本体からの突出量である第2突起高さよりも大きい、
請求項6に記載の引張曲げ試験方法。
【請求項9】
前記突起部と前記補助突起部とが湾曲面を介して連続している
請求項8に記載の引張曲げ試験方法。
【請求項10】
前記試験片に対して前記パンチとは反対側に配置されたカメラで前記パンチの押圧により引張曲げ変形中の前記試験片を撮影する、請求項1又は2に記載の引張曲げ試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張曲げ試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板等のブランクのプレス成形性の予測のための、張力を伴う曲げ(引張曲げ)による試験片の割れを評価する試験(引張曲げ試験)が知られている。
【0003】
非特許文献1に開示された引張曲げ試験では、試験片の両側を材料流入が生じないようにチャックし、アールの異なるパンチを用いて割れが生じるまで試験片を引張曲げ変形させる。
【0004】
非特許文献2に開示された引張曲げ試験では、成形初期に低張力で試験片をパンチになじませた後、パンチの変位を止め、割れが発生するまで試験片に張力を付与する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A.J. Martinez-Doanire et.al, Analysis of the failure of H240LA Steel Sheets subjected to strech-bending conditions, Procedia Manufacuring 41, 2019年, p. 626-633
【非特許文献2】米林亮 中田匡浩,"高張力鋼板の引張曲げ加工性に及ぼす工具寸法および初期張力の影響"第62回塑性加工連合講演会講演論文集,2011年,p. 367-368
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1の引張曲げ試験では、パンチの変位に伴って曲げ角度と張力の両方が変化する。その結果、板厚方向ひずみ勾配(曲げ方向のひずみの板厚方向の勾配)もパンチの変位に伴って変化する。
【0007】
非特許文献2の引張曲げ試験では、曲げ角度を一定として張力を制御できるため、板厚方向ひずみ勾配が一定の条件下での試験が可能である。しかし、この引張曲げ試験を行うためには、複雑な試験機と特殊な治具が必要である。また、この試験機は、カメラで試験片を撮影する視野の確保が困難であるので、デジタル画像相関法(DIC: Digital Image Correlation)による試験中のひずみ測定に適さない。
【0008】
本発明は、曲げ角度が一定で、かつデジタル画像相関法による試験中のひずみ測定が可能な引張曲げ試験を、簡易な試験機構成で実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ホルダとダイで板状の試験片の長手方向の端部を挟持し、前記試験片にパンチを押圧して引張曲げ変形させ、前記パンチは、先端部の前記試験片の短手方向の断面形状が一定であり、前記先端部の前記試験片の前記長手方向における両端にそれぞれ第1凸曲面を有するパンチ本体と、前記パンチ本体の前記先端部に前記試験片側に突出するように設けられ、前記試験片の前記短手方向の断面形状が一定の第2凸曲面を有し、前記パンチ本体の第1凸曲面間の前記試験片の前記長手方向の離間距離である第1幅よりも狭い、前記試験片の前記長手方向の寸法である第2幅を有する突起部とを備える、引張曲げ試験方法を提供する。
【0010】
試験片にパンチが押圧されると、まず突起部の第2凸曲面のみが試験片に接触し、さらにパンチが変位すると第2曲面に加えパンチ本体の先端部の両端の第1凸曲面も試験片に接触する。この状態、つまり試験片がパンチになじんだ状態では、試験片の突起部の第2凸曲面に接触している部分とパンチ本体の一対の第1凸曲面の接触している部分との間がそれぞれ直線状となる。つまり、試験片がパンチになじんだ状態では、試験片には、突起部の第2凸曲面と接触している部分とパンチ本体の一方の第1凸曲面との間の直線状の部分と、突起部の第2凸曲面と接触している部分とパンチ本体の他方の第1凸曲面との間の直線状の部分との間に曲げ角度が付けられる。
【0011】
試験片がパンチになじんだ後、パンチがさらに変位しても、これらの直線状の部分の姿勢は保持されるので、一対の第1凸曲面間の領域における試験片の曲げ角度は一定で維持される。つまり、いったん試験片がパンチになじむと、パンチがさらに変位しても、試験片の第1凸曲面間の領域では、曲げ角度は変化せず、張力のみが増大する。
【0012】
以上のように、試験片の第1凸曲面間の領域では、試験片の曲げ角度を一定に維持しつつ、試験片に作用する張力を増加させることができるので、板厚方向ひずみ勾配が一定の条件を維持したままで、試験片を引張曲げ変形させることができる。
【0013】
また、試験片のパンチが押し付けられる側とは反対の表面にはカメラの視野を遮るものがなく、カメラの視野が確保される。そのため、デジタル画像相関法による試験中のひずみ測定が可能である。
【0014】
さらに、曲げ角度一定の引張曲げは、パンチ本体の先端部に幅狭の突起部を設けた2段構造のパンチによって実現される。そのため、曲げ角度一定の引張曲げを実現するために特殊な治具を製作する必要もないし、試験機に複雑な機構や制御が要求されることもない。
【0015】
前記突起部は前記パンチ本体の前記先端部に取り外し可能に固定されていてもよい。
【0016】
第2凸曲面の形状、第2幅、高さ(パンチ本体の先端部からの突出量)等が異なる突起部に交換することで、試験片が第2凸曲面に沿って曲がっている部分のアールや、曲げ角度が異なる条件で曲げ角度一定の引張曲げ試験を行うことができ、種々の板厚方向ひずみ勾配での評価が可能となる。
【0017】
前記突起部の前記第2凸曲面のみが前記試験片に接触している第1状態では、前記ダイによって前記ホルダに対して押し付けて前記試験片を保持する試験片保持力を第1保持力に設定し、前記突起部の前記第2凸曲面と前記パンチ本体の前記第1凸曲面の両方が前記試験片に接触する第2状態では、前記試験片保持力を前記試験片の前記ホルダと前記ダイで挟持された部分からの材料流入が生じない第2保持力に設定し、前記第1保持力は前記第2保持力より小さくてもよい。
【0018】
試験片保持力をこのように制御することで、試験片を構成する材料の全伸びが低い(例えば、約35%以下)場合であっても、試験片がパンチになじむ前、つまり曲げ角度一定の引張曲げとなる前に、試験片に割れが発生するのを防止できる。
【0019】
前記試験片の前記ホルダと前記ダイで挟持された部分と前記パンチが押圧される部分との間に、前記試験片を前記長手方向に曲げ返した余剰部が設けられていてもよい。
【0020】
試験片がパンチになじむ前、つまり試験片がパンチ本体の第1凸曲面に接触する前の段階では、余剰部が伸びることで試験片に作用する張力が緩和される。そのため、試験片を構成する材料の全伸びが低い(例えば、約35%以下)場合であっても、試験片保持力を制御することなく、試験片がパンチになじむ前、つまり曲げ角度一定の引張曲げとなる前に、試験片に割れが発生するのを防止できる。
【0021】
前記試験片の前記パンチの前記突起部が押圧される部分の前記短手方向の両端に切欠がそれぞれ設けられ、前記切欠の形状は前記パンチの前記突起部の先端に向かって幅が直線的又は曲線的に漸減し、かつ最先端における幅が最も狭くてもよい。
【0022】
切欠を設けることで、試験片の変形が長手方向の寸法が幅方向の寸法よりも十分に小さい狭い領域に集中する。その結果、試験片のひずみを平面ひずみ状態とすることができる。
【0023】
前記試験片に対して前記パンチとは反対側に配置されたカメラで前記パンチの押圧により引張曲げ変形中の前記試験片を撮影してもよい。
【0024】
カメラにより、試験片のパンチとは反対側の表面、つまり曲げ外側の試験片の表面を撮影できる。そのため、デジタル画像相関法により、試験中の試験片のひずみの変化を測定でき、割れによる成形限界のひずみの算出が可能となる。
【0025】
前記突起部の前記試験片の前記短手方向の寸法である突起長さが、前記試験片の前記短手方向の寸法である試験片幅よりも短く、前記試験片にパンチを押圧して引張曲げ変形させるときに、前記試験片の前記短手方向の両端部を前記突起部に対して前記短手方向に突出させてもよい。
【0026】
試験片の短手方向の両端部が突起部の端面に向けて曲がり、突起部に押圧されている部分において試験片が短手方向に縮むのを抑制できる。したがって、この突起部に押圧されている部分において、理想的な平面ひずみ状態を作り出すことができる。
【0027】
前記突起長さは、前記試験片幅の半分値よりも長くてもよい。
【0028】
試験片の短手方向において突起部で押圧されている部分の寸法が長くなる。平面ひずみ状態となる領域が広くなる。
【0029】
前記突起部の前記試験片の前記短手方向における両端に、前記パンチ本体の前記先端部に前記試験片側に突出するように設けられた補助突起部が設けられ、前記突起部の前記パンチ本体からの突出量である第1高さが、前記補助突起部の前記パンチ本体からの突出量である第2高さよりも大きくてもよい。
【0030】
前記突起部と前記補助突起部とが湾曲面を介して連続していてもよい。
【0031】
試験片の短手方向の両端部を突起部の端面になじませやすくなる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の引張曲げ試験によれば、曲げ角度が一定で、かつデジタル画像相関法による試験中のひずみ測定が可能な引張曲げ試験を、簡易な試験機構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1実施形態に係る引張曲げ試験方法における試験機の模式的な正面図。
図2図1の試験機の模式的な平面図。
図3】パンチの斜視図。
図4】パンチの正面図。
図5】パンチの分解正面図。
図6】突起部を交換したパンチの正面図。
図7】突起部を交換したパンチの正面図。
図8】第1実施形態におけるパンチ変位に対するブランク保持力の変化を示す線図。
図9】パンチが初期位置にあるときの試験機の模式的な正面図。
図10】パンチが図9の位置よりも上昇した位置にあるときの試験機の模式的な正面図。
図11】パンチが図10の位置よりも上昇した位置にあるときの試験機の模式的な正面図。
図12】パンチが図11の位置よりも上昇した位置にあるときの試験機の模式的な正面図。
図13】板厚方向ひずみ勾配を説明するための概念図。
図14】本発明の第2実施形態に係る引張試験方法における試験機の模式的な正面図。
図15図14の試験機の模式的な平面図。
図16】第2実施形態におけるパンチ変位に対するブランク保持力の変化を示す線図。
図17】第3実施形態に係る引張試験方法における試験機のパンチの斜視図。
図18図17の試験機の模式的な平面図。
図19図18のXIX-XIX線に沿って示す断面図。
図20】パンチが上昇した位置にあるときのパンチ及びブランクを示す断面図。
図21】パンチが上昇した位置にあるときのパンチ及びブランクを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1実施形態)
図1及び図2は、本発明の第1実施形態に係る引張曲げ試験方法における試験機1を示す。
【0035】
試験機1は、ブランク(試験片)2を保持するためのホルダ3とダイ4を備える。また、試験機1は、ホルダ3とダイ4で保持されたブランク2の下方に、ブランク2を引張曲げ変形させるためのパンチ5を備える。さらに、試験機1は、ホルダ3とダイ4で保持されたブランク2に対してパンチ5とは反対側、ホルダ3とダイ4で保持されたブランク2の上方に配置された2台のカメラ6A,6Bを備える。
【0036】
本実施形態におけるブランク2は、長手方向(図においてY方向)の寸法、つまり長さが、短手方向(図においてX方向)の寸法、つまり幅よりも十分に大きい細長い長方形板状である。また、ブランク2の厚さ(図においてZ方向の寸法)は一定である。ブランク2には短手方向の両端に短手方向に互いに対向する一対の切欠2a,2bが設けられている。切欠2a,2bについては、後に詳述する。
【0037】
本実施形態におけるホルダ3とダイ4はいずれも円環状である。ホルダ3の上面とダイ4の下面との間にブランク2の長手方向の両端が挟持され、それによってホルダ3とダイ4に対してブランク2が保持される。詳細には、ホルダ3は固定であるのに対して、ダイ4は図1において矢印Bで示す下向きの力、つまりブランク保持力でブランク2をホルダ3に押し付けている。ホルダ3とダイ4の形状はブランク2の両端を適切に保持できる限り特に限定されない。
【0038】
パンチ5は、ホルダ3とダイ4で取り囲まれた空間において、前述のようにホルダ3とダイ4で保持されたブランク2の下方に配置されている。
【0039】
図3及び図4を併せて参照すると、パンチ5は、パンチ本体11と突起部12A(後述するように、別の突起部12B,12Cと交換可能)を備える。本実施形態では、パンチ本体11は、円筒状のパンチ基部13と、パンチ基部13の先端に固定された補助部材14とを備える。補助部材14はパンチ本体11の先端部を構成している。パンチ基部13の形状は、特に限定されず、角柱状であってもよい(図17を参照)。また、パンチ基部13と補助部材14が一体構造であってもよい。パンチ5は昇降可能である。図において矢印UPで示すようにパンチ5が上昇することで、後に詳述する態様で、突起部12Aと補助部材14がブランク2に押圧され、それによってブランク2が引張曲げ変形する。
【0040】
図3及び図4を参照すると、補助部材14は、全体として扁平な直方体状であり、ブランク2の短手方向(図においてX方向)の断面形状が一定である。補助部材14の底面14a、前面14b、及び後面14cは平坦面である。底面14a、前面14b、及び後面14cは平坦面に限定されず、一部又は全部に凹凸を有していてもよい。補助部材14の頂面14dはブランク2の長手方向(図においてY方向)の両端に凸曲面(第1凸曲面)14e,14fをそれぞれ有している。
【0041】
本実施形態における補助部材14の頂面14dの形状をさらに説明する。
【0042】
頂面14dの両端の凸曲面14e,14fは、本実施形態では、ブランク2の短手方向の断面形状が真円を4等分して部分円弧である。つまり、凸曲面14e,14fは、ブランク2の短手方向に伸びる円筒面を4等分した曲面である。凸曲面14e,14fのアールRMと、凸曲面14e,14fの最外端間のブランク2の長手方向における離間距離、つまり補助部材14のブランク2の長手方向における幅(第1幅)WMは、後述するブランク2がパンチ5になじんだ後の曲げ角度θを決定する要因である。凸曲面14e,14fの断面形状は、部分円弧に限定されない。例えば、凸曲面14e,14fの断面形状は、部分楕円弧であってもよいし、部分円弧と部分楕円弧を複合した曲面であってもよいし、断面形状の一部が直線であってもよい。
【0043】
頂面14dの凸曲面14e,14fで挟まれたブランク2の長手方向の領域は、本実施形態では平坦面14gである。この領域は平坦面に限定されず、一部又は全部に凹凸を有していてもよい。
【0044】
次に、突起部12Aの形状を説明する。
【0045】
図3及び図4を参照すると、突起部12Aは、ブランク2の短手方向(図においてX方向)の断面形状が一定である。本実施形態では突起部12Aの底面12a、前面12b、及び後面12cは平坦面である。底面12a、前面12b、及び後面12cは平坦面に限定されず、一部又は全部に凹凸を有していてもよい。突起部12Aは頂面である凸曲面(第2凸曲面)12dを有する。
【0046】
突起部12Aの凸曲面12dは、ブランク2の短手方向の断面形状が、真円を2等分した部分円弧、つまり半円弧である。つまり、凸曲面12dは、ブランク2の短手方向伸びる円筒面を2等分した半円筒面である。凸曲面12dのアールRPと、補助部材14の頂面14dから凸曲面12dの頂点までの距離、つまり突起部12Aの高さHPは、後述するブランク2がパンチ5になじんだ後の曲げ角度θを決定する要因である。突起部12Aのブランク2の長手方向の寸法である幅(第2幅)WPは、補助部材14の頂面14dの幅WMよりも狭く設定される。
【0047】
図5を参照すると、補助部材14は底面14aから突出する一対のピン14hを備えており、これらのピン14hをパンチ基部13の頂面13aに設けられた一対の孔13bに差し込むことで、補助部材14がパンチ基部13に保持される。補助部材14をパンチ基部13から取り外した状態で、補助部材14から突起部12Aを取り外し、他の突起部12B,12C(図6図7)と交換できる。突起部12A~12Cの底面12aには、ねじ孔12eが設けられている。一方、補助部材14には段付き貫通孔14iが設けられている。ねじ15を段付き貫通孔14iに挿通してねじ孔12eに螺合することで、突起部12A~12Cが補助部材14に対して固定されている。従って、パンチ基部13から補助部材14を取り外した状態でねじ15を緩めて外すことで、補助部材14から突起部12A~12Cを取り外し、他の突起部12A~12Cと交換できる。
【0048】
図6に示す突起部12Bは、凸曲面12dのアールRPが突起部12Aよりも小さく、高さHPは突起部12Aと同じである。図7に示す突起部12Cは、凸曲面12dのアールRPが突起部12Bよりも小さく、高さHPは突起部12A,12Bと同じである。
【0049】
次に、図8から図12を参照して、第1実施形態の引張曲げ試験方法を説明する。
【0050】
図8は、パンチ5の変位に対するブランク保持力Bの変化を示している。このブランク保持力Bの制御については後に詳述する。
【0051】
図9に示す状態、つまりパンチ5の突起部12Aの凸曲面12dの最先端が試験片2の下面2cに接触した初期状態から、パンチ5が矢印UPで示すように上昇していく。初期状態では、パンチ本体11の補助部材14の一対の凸曲面14e,14fは、試験片2の下面2cに対して離れて位置して接触していない。
【0052】
以降、パンチ5は試験片2に割れが生じるまで上昇し、その間、試験片の上面2dがカメラ6A,6Bによって撮影される。
【0053】
図10を参照すると、パンチ5が初期状態(図9)から少し上昇すると、試験片2の下面2cに突起部12Aの曲面12dが押し付けられることで、試験片2が長手方向に曲げられる(曲げ角度を符号θで示す。)。図10の状態では、パンチ本体11の一対の凸曲面14e,14fに試験片2の下面2cから離れており、試験片2の突起部12Aの曲面12dに接触している部分からホルダ3とダイ4で挟まれた両端との間は概ね直線状となっている。
【0054】
図11を参照すると、パンチ5が図10に示す高さ位置からさらに上昇すると、試験片2の下面2cには、突起部12Aの凸曲面12dが接触して押し付けられるだけでなく、パンチ本体11の凸曲面14e,14fも接触する。この状態、つまり試験片2がパンチ5になじんだ状態では、試験片2の突起部12Aの凸曲面12dに接触している部分とパンチ本体11の一対の凸曲面14e,14fの接触している部分との間がそれぞれ直線状となる。つまり、試験片2がパンチ5になじんだ状態では、試験片2には、突起部12Aの凸曲面12dと接触している部分とパンチ本体11の一方の凸曲面14eとの間の直線状の部分と、突起部12Aの凸曲面12dと接触している部分とパンチ本体11の他方の凸曲面14fとの間の直線状の部分との間に曲げ角度θが付けられる。
【0055】
図12を参照すると、図11に示す試験片2がパンチ5になじんだ状態となる高さ位置からパンチ5がさらに上昇しても、パンチ本体11の一対の凸曲面14e,14f間の領域における曲げ角度θは一定で維持される。つまり、いったん試験片2がパンチ5になじむと、パンチ5がさらに上昇しても、試験片2の第1凸曲面14e,14f間の領域では、曲げ角度θは変化せず、張力のみが増大する。パンチ5は試験片に割れが生じるまで上昇する。
【0056】
以上のように、試験片2の凸曲面14e,14f間の領域では、試験片2の曲げ角度θを一定に維持しつつ、張力を増加させることができる。その結果、板厚方向ひずみ勾配が一定の条件を維持したままで、試験片2を引張曲げ変形させることができる。
【0057】
図13を参照すると、板厚方向ひずみ勾配SBは、同図において矢印BDで示す試験片2の曲げ方向(試験片2の長手方向と同じ方向)のひずみの板厚方向の勾配である。
【0058】
パンチ5は試験片2の下側に配置されて試験片2の下面2cに押し付けられるが、その反対側は、すなわち試験片2の上側にはカメラ6A,6Bの視野を遮るものがなく、試験中、一対の凸曲面14e,14f間において試験片2の上面2dに対するカメラ6A,6Bの視野が確保される。そのため、カメラ6A,6Bは試験片2の上面2dの一対の凸曲面14e,14f間の部分を撮影し続けることができ、デジタル画像相関法による試験中の試験片2の上面2d(曲げ外面)のひずみ測定が可能でき、割れによる成形限界のひずみの算出が可能となる。
【0059】
曲げ角度θが一定の引張曲げは、パンチ本体11の先端部である補助部材14に幅狭の突起部12Aを設けた2段構造のパンチ5によって実現される。そのため、曲げ角度θが一定の引張曲げを実現するために特殊な治具を製作する必要もないし、試験機1に複雑な機構や制御が要求されることもない。
【0060】
突起部12Aを、突起部12B,12Cのように、凸曲面12dの形状、幅WP、高さHPaが異なるものに交換することで、試験片2が凸曲面12dに沿って曲がっている部分のアールや、曲げ角度θが異なる条件で曲げ角度一定の引張曲げ試験を行うことができ、種々の板厚方向ひずみ勾配での評価が可能となる。
【0061】
図8を参照すると、本実施形態では、パンチ5の変位に対してブランク保持力Bを変化させている。具体的には、図9に示す初期状態から図11に示すように試験片2がパンチ5になじむまで、つまり、試験片2の下面2cに突起部12Aの凸曲面12dのみが接触している状態(第1状態)では、ブランク保持力Bは相対的に小さい保持力(第1保持力)B1に設定される。図11に示すように試験片2がパンチ5なじんでさらにパンチ5が上昇する状態、つまり試験片2の下面2cに突起部12Aの凸曲面12dとパンチ本体11の凸曲面14e,14fの両方が接触する状態(第2)状態では、ブランク保持力Bは相対的に大きい保持力(第2保持力)B2に設定される。保持力B2はホルダ3とダイ4で挟持された試験片2の長手方向の両端から材料流入が生じない大きさに設定される。保持力B1は保持力B2よりも小さく設定される。
【0062】
ブランク保持力Bをこのように制御することで、試験片2を構成する材料の全伸びが低い(例えば、約35%以下)場合であっても、試験片2がパンチ5になじむ前、つまり曲げ角度θが一定の引張曲げとなる前に、試験片2に割れが発生するのを防止できる。
【0063】
図2を参照して、ブランク2の短手方向の両端に設けられた短手方向に互いに対向する一対の切欠2a,2bについて説明する。
【0064】
一般に試験片2の長手方向(図13において矢印BDで示す曲げ方向と一致する)の変形に対して、試験片2の短手方向の寸法が十分に長い場合に、短手方向の変形が抑制されて平面ひずみ状態となる。短手方向に対向する一対の切欠2a,2bを設けることで、試験片2の変形が切欠2a,2bの頂点を結ぶ狭い領域Aに集中する。この領域Aは短手方向に細長い形状(長手方向の幅が狭い形状)を有しており、長手方向の寸法に対して短手方向の寸法が十分に長い。従って、この領域Aでは平面ひずみ状態となる。このように、切欠2a,2bを設けることで、試験片2の変形が長手方向の寸法が幅方向の寸法よりも十分に小さい狭い領域に集中し、平面ひずみ状態を作り出すことができる。変形を狭い領域Aに集中させて平面ひずみ状態を作り出すために、本実施形態における切欠2a,2bの形状は、概ね半楕円状であり、パンチ5の突起部12Aの先端に向かって幅が曲線的に漸減し、かつ最先端における幅が最も狭くなっている。切欠2a,2bはパンチ5の突起部12Aの先端に向かって幅が直線的に漸減し、かつ最先端における幅が最も狭くなる形状であってもよい。また、切欠2a,2bの形状は、パンチ5の突起部12Aの先端に向かって幅が漸減し、かつ最先端における幅が最も狭くなっていれば、幅が直線的に漸減する部分と曲線的に漸減する部分の両方を含んでいてもよい。
【0065】
(第2実施形態)
図14から図16を参照して本発明の第2実施形態に係る引張曲げ試験方法を説明する。以下の説明において言及する事項を除いて、第2実施形態は第1実施形態と同様であり、図14から図16において第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付している。
【0066】
図14及び図15を参照すると、本実施形態では、試験機1の構成は第1実施形態と同様であるが、試験片2の形状が第1実施形態と異なる。
【0067】
試験片2にはホルダ3とダイ4とで挟持される長手方向の両端とパンチ5が押圧される部分との間に、長手方向に曲げ返した余剰部2eがそれぞれ設けられている。
【0068】
図16を参照すると、本実施形態では、ブランク保持力Bは、初期状態(図9参照)から試験片2に割れが生じるまで、ホルダ3とダイ4で挟持された試験片2の長手方向の両端から材料流入が生じない保持力B2に設定される。
【0069】
試験片2がパンチ5になじむ前、つまり試験片2がパンチ本体11の凸曲面14e,14fに接触する前の段階では、余剰部2eが伸びることで試験片2に作用する張力が緩和される。そのため、試験片2を構成する材料の全伸びが低い(例えば、約35%以下)場合であっても、ブランク保持力Bを制御(第1実施形態のように保持力B1から保持力B2へ段階的に増加)することなく、試験片2がパンチ5になじむ前、つまり曲げ角度θが一定の引張曲げとなる前に、試験片2に割れが発生するのを防止できる。
【0070】
(第3実施形態)
図17から図21を参照して、本発明の第3実施形態に係る引張曲げ試験方法を説明する。以下の説明において言及する事項を除き、第3実施形態は、第1実施形態と同様であり、図17から図21において第1又は第2実施形態と同一の要素には同一の符号を付している。なお、本実施形態において、試験機1のホルダ3及びダイ4(図17から図21において不図示)の構造及び動作は、図1及び図9図12を参照して説明した第1実施形態と同様である。
【0071】
図17を参照すると、パンチ基部13が角柱状である。補助部材14は、第1実施形態と同様に形成され、凸曲面14e,14f及び平坦面14gを含む頂面14dを有し、パンチ基部13の先端に固定され、パンチ本体11の先端部を構成する。
【0072】
突起部12Aは、第1実施形態と同様に、パンチ本体11の先端部に上側に突出するように設けられている。突起部12Aは、ブランクの幅方向の断面形状が一定の凸曲面12dを有する。突起部12Aの幅WPは、パンチ本体11の幅WMよりも狭い。
【0073】
図18を参照して、本実施形態におけるブランク2は、切欠2a,2bを有さない。ブランク2は、鋼板である。ブランク2は、その長手方向(図においてY方向)の寸法、つまり長さが、その短手方向(図においてX方向)の寸法、つまり幅よりも十分に大きい細長い長方形板状である。ブランク2の厚さ(図においてZ方向の寸法)は、一定である。
【0074】
上記実施形態とは異なり、突起部12Aのブランク2の短手方向の寸法、つまり突起長LPが、ブランク2の幅WBよりも短い。一方、突起長LPは、ブランク2の幅WBの半分値よりも大きい。すなわち、突起長LPとブランク2の幅WBとは、次式:WB/2<LP<WBを満たす。
【0075】
突起部12Aは、ブランク2の短手方向においてパンチ本体11の先端部の中央部に配置され、ブランク2の長手方向においてパンチ本体11の先端部の中央部に配置されている。
【0076】
パンチ5は、突起部12Aのブランク2の短手方向における両端それぞれに設けられた一対の補助突起部22を備える。補助突起部22も、パンチ本体11の先端部に上側に突出する。
【0077】
補助突起部22は、ブランク2の短手方向の断面形状が一定である。補助突起部22は、頂面である凸曲面22dを有する。補助突起部22の凸曲面22dは、ブランク2の短手方向に見て半円弧状である。つまり、凸曲面22dは、突起部12Aの凸曲面12dと同様にして、ブランク2の短手方向に延びる円筒面を2等分した半円筒面である。
【0078】
補助突起部22は、突起部12Aに対して低背且つ狭幅である。突起部12Aのパンチ本体11からの上側への突出量、すなわち第1突出高さHPは、補助突起部22のパン耐本体11からの上側への突出量、すなわち第2突出高さHP2よりも高い。突起部12Aの幅WPは、補助突起部22のブランク2の長手方向の寸法、すなわち第2突起幅WP2よりも広い。
【0079】
補助突起部22のブランク2の長手方向の中心は、突起部12Aのブランク2の長手方向の中心と一致している。換言すると、ブランク2の短手方向に見たときに、突起部12Aの凸曲面12dが成す半円弧と、補助突起部22の凸曲面22dが成す半円弧とが、互いに同心状である。
【0080】
突起部12Aと補助突起部22とは、湾曲面23を介して連続している。突起部12Aの凸曲面12dは、湾曲面23を介して補助突起部22の凸曲面22dと連続している。緩やかな段差が、突起部12Aと補助突起部22との間に形成される。湾曲面23は、ブランク2の短手方向に延び且つ短手方向に直交する任意の方向に延びる断面であって、突起部12A及び補助突起部22のブランク2の長手方向の中心を通過する断面において、一様な形状を有する。
【0081】
湾曲面23は、突起部12Aの凸曲面12dから延びる第1湾曲面23aと、第1湾曲面23aから連続して補助突起部22の凸曲面22dに繋がる第2湾曲面23bとを有する。第1湾曲面23aは、上に凸の曲面であって、その頂点部となる凸曲面12dの端縁から短手方向外側へ向かうほど下に向かうように湾曲されている。第2湾曲面23bは、下に凸の曲面であって、その頂点部となる凸曲面22dの端縁から短手方向中央側へ向かうほど上に向かうように湾曲されている。第1湾曲面23aと第2湾曲面23bとは滑らかに連続している。
【0082】
図18及び図19を参照して、ブランク2をパンチ5で押圧して引張曲げ変形させるときには、ブランク2の長手方向の両端が、図1を参照して説明した第1実施形態と同様にして、ホルダ3の上面とダイ4の下面との間に保持される。ブランク2の短手方向の両端部が、突起部12Aに対して短手方向に突出するようにして、ブランク2の下面が突起部12Aの頂点部に接触する。この状態で、図9から図12を参照して説明した第1実施形態と同様にして、パンチ5を上昇させる。
【0083】
図20を参照して、パンチ5が上昇を続けると、ブランク2は長手方向に引っ張られる。そのため、ブランク2は短手方向に縮もうとする。一方、ブランク2のうち突起部12Aの凸曲面12dの頂点部と接触している部分は、当該接触部分と短手方向に隣接してパンチ5から浮いている部分よりも、パンチ5から大きな面圧を受ける。そのため、この浮いている部分が、頂点部との接触部分に対して相対的に下方に倒れるように変形し、突起部12Aの短手方向外側の部位、すなわち湾曲面23に接触する。パンチ5の変位量が大きくなるほど、このブランク2の短手方向の両端部が湾曲面23になじんでいく。
【0084】
これにより、ブランク2は、パンチ5に押圧される部位にて、短手方向の両端部が突起部12Aの端部に引っ掛かり、長手方向に引っ張られても短手方向に縮みにくくなる。そのため、突起部12Aに押圧されている部分において、理想的な平面ひずみ状態を作り出すことができる。
【0085】
突起長LPが、ブランク2の幅WBよりも短い。そのため、このようなブランク2の短手方向の変形(収縮)の拘束を実現でき、理想的な平面ひずみ状態の創生を実現できる。突起長LPは、ブランク2の幅WBの半分長よりも長い。したがって、平面ひずみ領域が広くなる。
【0086】
これまで実施形態について説明したが、上記構成は、本発明の範囲内で適宜変更、追加、又は削除可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 試験機
2 ブランク
2a,2b 切欠
2c 下面
2d 上面
2e 余剰部
3 ホルダ
4 ダイ
5 パンチ
6A,6B カメラ
11 パンチ本体
12A,12B,12C 突起部
12a 底面
12b 前面
12c 後面
12d 凸曲面(第2凸曲面)
12e ねじ孔
13 パンチ基部
13a 頂面
13b 孔
14 補助部材
14a 底面
14b 前面
14c 後面
14d 頂面
14e,14f 凸曲面(第1凸曲面)
14g 平坦面
14h ピン
14i 段付き貫通孔
15 ねじ
22 補助突起部
22d 凸曲面
23 湾曲面
23a 第1湾曲面
23b 第2湾曲面
A 領域
B ブランク保持力
UP パンチ5が上昇する向き
RM 凸曲面14e,14のアール
WM 補助部材14の頂面14dの幅(第1幅)
RP 凸曲面12dのアール
LP 突起長
HP 突起部12A~Cの高さ(第1突起高さ)
HP2 第2突起高さ
WP 突起部12A~Cの幅(第2幅)
WP2 補助突起部22の幅
WB 試験片2の幅
SB ひずみ勾配
BD 試験片2の曲げ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21