(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073176
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】離島における発電機制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20240522BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240522BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240522BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240522BHJP
H02P 9/08 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/00 170
H02J13/00 311R
H02J13/00 301A
H02J3/38 110
H02P9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184247
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】島田 洋平
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5H590
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064BA07
5G064CB06
5G064CB13
5G064DA02
5G066AA03
5G066AA09
5G066AB02
5G066AD01
5G066AE04
5G066HA04
5G066HA06
5G066HA13
5G066HA15
5G066HA17
5G066HB01
5G066HB02
5G066JA01
5G066LA02
5H590AA11
5H590CE01
5H590EA01
5H590EA05
5H590HA02
5H590HA04
5H590HA09
5H590HA10
5H590HA27
5H590JA02
5H590JB02
5H590KK04
(57)【要約】
【課題】気象に関する警報等を利用して離島全体の停電を確実に回避することができる離島における発電機制御システムを提供する。
【解決手段】発電機制御システム1は、離島に設置されて、本土に設置される発電設備51と送電線52を介して接続される発電機53の運転条件を制御するための、離島における発電機制御システムであって、発電機53よりも上流側の送電線52に配置されて、発電機53の運転条件に依存する計測値を計測する計測器2と、計測値と、運転条件と、気象情報が、それぞれ入力されて、気象情報に応じ、計測値に基づいて運転条件を制御する制御装置3を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離島に設置されて、本土に設置される発電設備と送電線を介して接続される発電機の運転条件を制御するための、離島における発電機制御システムであって、
前記発電機よりも上流側の前記送電線に配置されて、前記発電機の前記運転条件に依存する計測値を計測する計測器と、
前記計測値と、前記運転条件と、気象情報が、それぞれ入力されて、前記気象情報に応じ、前記計測値に基づいて前記運転条件を制御する制御装置を備えることを特徴とする離島における発電機制御システム。
【請求項2】
前記発電機は、複数の前記離島にそれぞれ設置され、
前記制御装置は、一台設置されて、複数の前記離島にそれぞれ設置される前記発電機の前記運転条件をすべて制御することを特徴とする請求項1に記載の離島における発電機制御システム。
【請求項3】
前記計測器は、前記送電線を流れる潮流を前記計測値とし、
前記制御装置は、前記計測値がゼロになるように、前記運転条件を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の離島における発電機制御システム。
【請求項4】
前記気象情報は、気象庁から発表される、特別警報、警報、注意報の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の離島における発電機制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離島に設置される発電機の稼働を制御するための発電機制御システムであって、特に、気象情報に応じて発電機の運転条件を制御して停電を防止する離島における発電機制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本土と離島を結ぶ送電線においては、離島での負荷量に応じた大きさの電流が流れている。しかし、この送電線において永久事故(復旧困難な事故)が発生した場合、離島全体が停電になってしまうことがある。こうなると、復旧に大変な時間が必要となる。
具体的には、永久事故のうち、送電線が断線する事故では、発電機の起動ができなくなったり、送電線を流れる交流電流の周波数が低下して正常値に戻るのに時間がかかったりするおそれがある。そのため、このような不利益が発生しないように、離島において電力供給を維持することは非常に重要である。
そこで、近年、離島において電力供給を維持するための技術が開発されており、それに関して既に発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には「直流送電設備」という名称で、離島内の電力供給を安定に継続するための送電設備に関する発明が開示されている。
以下、特許文献1に開示された発明について説明する。特許文献1に開示された発明は、離島側の直流海底ケーブル端の電力変換装置に、交流電圧変成器と交流電圧検出器とを有して送電先の電力系統の電圧変動と周波数変動を検出することにより、電力変換装置の出力有効電力と出力無効電力とを制御する制御装置を有することを特徴とする。
このような特徴を有する発明においては、離島内の電力系統で送電線故障、一部のディーゼル発電機その他の発電機解列等の大きな電力変動が起きた場合に、離島内のディーゼル発電機や電力変換装置が互いに脱調することなく連系運転を保ち、再び安定な状態に戻る系を作り出す動作を行うため、離島内の電力供給を安定に継続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された発明においては、離島内の電力系統に大きな電力変動が発生した場合に、離島全体の停電を防止することができる。しかしながら、これは、あくまで電力変動が発生した後での対応であり、電力変動を予見していち早く対応するものではない。ただし、電力変動を予見することは、例えば、送電線故障を予見することであるから、手間やコストを必要とし、必ずしも容易であるとはいえない。
なお、送電線の故障として、例えば、暴風、着雪といった悪天候を要因とする断線がある。このような悪天候の種類や発生時期は、気象庁が発表する警報や注意報によって、離島が実際に暴風等に見舞われる前に予め知ることができる。よって、気象に関する警報等を送電線の断線防止のための情報として利用すると、送電線に断線のおそれがあることを早期に予見して離島全体の停電を回避するよう対処することができる。そのため、気象に関する警報を利用して離島全体の停電を回避する技術が望まれるところである。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、気象に関する警報等を利用して離島全体の停電を確実に回避することができる離島における発電機制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の発明は、離島に設置されて、本土に設置される発電設備と送電線を介して接続される発電機の運転条件を制御するための、離島における発電機制御システムであって、発電機よりも上流側の送電線に配置されて、発電機の運転条件に依存する計測値を計測する計測器と、計測値と、運転条件と、気象情報が、それぞれ入力されて、気象情報に応じ、計測値に基づいて運転条件を制御する制御装置を備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成の発明において、発電機の運転条件に依存する計測値とは、発電機の運転条件との相関関係が既知である物理量の計測値である。そのための計測器として、例えば、送電線を流れる潮流を計測値として計測する電力計や、送電線を流れる電流を計測値として計測する電流計が考えられる。
また、制御装置は、例えば離島外に設置されて、ネットワークを介し、発電機の運転条件を遠隔制御可能に構成される。
さらに、第1の発明は、一島に設置されるほか、複数の離島に設置されてもよい。そして、一島当たりに設置される発電機の台数は一台以上でもよい。また、制御装置は、複数の離島を一括して制御する一台の制御装置が設けられるほか、一島毎に一台の制御装置がそれぞれ設けられてもよい。
なお、気象情報としては、気象庁から発表される、特別警報、警報、注意報が想定される。
【0009】
第1の発明においては、制御装置は、計測値と、運転条件と、気象情報が、それぞれ入力されるので、例えば、気象情報として特別警報が発表されると、制御装置はこの特別警報を受信し、計測器が計測した実際の計測値と、計測値の目標値とを比較する。この目標値とは、離島が本土からの電力供給を受けない場合に、離島のみにおいて電力受給を可能とするような発電機の運転条件に対応する値である。
よって、制御装置が、実際の計測値を目標値に近づけるように、発電機の運転条件を制御すると、発電機の運転条件が離島のみにおいて電力受給を可能とするような条件に調整される。
このように、制御装置は、気象情報に応じ、計測値に基づいて運転条件を制御可能である。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、発電機は、複数の離島にそれぞれ設置され、制御装置は、一台設置されて、複数の離島にそれぞれ設置される発電機の運転条件をすべて制御することを特徴とする。
このような構成において、気象情報は、通常、離島毎に発表されるのでなく、より広域の地域毎に発表される。そのため、一つの気象情報が適用される範囲には、複数の離島が含まれることが多い。よって、制御装置が、一つの気象情報を受信すると、この気象情報が適用される範囲内に存在する複数の離島にそれぞれ設置される発電機を、一括して制御しても運転条件を制御する点で精度に問題はない。なお、複数の離島にそれぞれ設置される発電機において、制御される運転条件の種類や値は、互いに同一であってもよいし、同一でなくてもよい。
上記構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、一台の制御装置が複数の離島にそれぞれ設置される発電機の運転条件を一括して制御するので、複数の離島において、同時期に停電防止が実現される。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、計測器は、送電線を流れる潮流を計測値とし、制御装置は、計測値がゼロになるように、運転条件を制御することを特徴とする。
このような発明において、潮流とは、送電線を流れる電力である。また、計測器は、発電機よりも上流側の送電線に配置されているから、潮流がゼロになるとは、離島が本土からの電力供給を受けない状態を意味する。
さらに、潮流がゼロになるとは、前述の計測値の目標値がゼロに設定されているということを意味する。そして、前述のように、目標値とは、離島が本土からの電力供給を受けない場合に、離島のみにおいて電力受給を可能とするような発電機の運転条件に対応する値である。
したがって、上記構成の発明においては、第1又は第2の発明の作用に加えて、制御装置が、潮流の計測値がゼロになるように、運転条件を制御することによって、離島が本土からの電力供給を受けないでおいて、離島のみにおいて電力受給が可能な状態となる。
【0012】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、気象情報は、気象庁から発表される、特別警報、警報、注意報の少なくともいずれかであることを特徴とする。
このような発明において、現在、特別警報は6種類、警報は7種類、注意報は16種類が規定されている。なお、制御装置が発電機の運転条件を制御する際の指標としては、複数種類の特別警報等のうちから、送電線における永久事故の要因になり易いものを適宜設定するとよい。また、複数種類の特別警報等のすべてを指標として設定してもよい。
したがって、上記構成の発明においては、第1又は第2の発明の作用に加えて、例えば、送電線における永久事故の要因になり易い特別警報等を指標として設定すると、悪天候時の永久事故の予見が高い精度で、かつ早期に可能となる。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、制御装置によって、発電機の運転条件が離島のみにおいて電力受給を可能とするような条件に調整されるから、離島全体の停電を確実に防止することができる。
【0014】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、一台の制御装置により、複数の離島において、同時期に停電防止が実現されるため、これらの離島毎に制御装置を設置する必要がなく効率的な制御が可能となる。
【0015】
第3の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、制御装置によって、離島が本土からの電力供給を受けないでおいて、離島のみにおいて電力受給が可能な状態となるため、本土と離島との間で送電線が断線する永久事故が発生した場合に、離島に設置される発電機によって本土と切り離して電力を賄うことが可能になる。すなわち、第3の発明によれば、永久事故に伴う不利益が離島に波及することを防止可能である。
【0016】
第4の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、悪天候時の永久事故の予見が高い精度で可能となるため、確実に離島全体の停電防止を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)及び(b)は、いずれも実施例に係る離島における発電機制御システムの構成及び作用を説明するための構成図である。
【
図2】実施例に係る離島における発電機制御システムが実行する離島における発電機制御方法を説明するためのフロー図である。
【
図3】(a)及び(b)は、いずれも実施例の変形例に係る離島における発電機制御システムの構成及び作用を説明するための構成図である。
【
図4】(a)及び(b)は、いずれも従来技術に係る離島における発電システムの構成及び作用を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0018】
まず、従来技術に係る離島における発電システムについて、
図4を用いて説明する。
図4(a)及び
図4(b)は、いずれも従来技術に係る離島における発電システムの構成及び作用を説明するための構成図である。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、離島A,Bにおいては、従来技術に係る離島における発電システム50(以下、発電システム50という。)がそれぞれ設置されている。
この発電システム50は、本土に設置される発電設備51と送電線52を介して接続される発電機53と、発電機53よりも上流側の送電線52に配置される遮断器54を備える。なお、上流とは、発電機53から発電設備51により近づく側をいう。
また、送電線52は、送電線52aと、送電線52bに分岐しており、このうち送電線52aが離島Aの遮断器54と接続され、送電線52bが離島Bの遮断器54と接続されている。そして、発電機53と遮断器54の間には、変圧器55と、工場設備といった負荷56が、並列に接続されている。
【0019】
図4(a)に示すように、通常時においては、離島A,Bには、発電設備51から変圧器55と負荷56に対して、電流の流れ方向57のとおり、電力が供給される。このとき、各発電機53は、運転停止の状態にある。
しかし、
図4(b)に示すように、例えば、送電線52が断線する永久事故が事故点60において発生すると、離島A,Bの各遮断器54が発電設備51からの電力供給をそれぞれ遮断する(図中バツ印)ことから、各負荷56等に停電が発生する。
そこで、各負荷56等に電力を供給するため、発電機53,53をともに緊急で起動する必要があるが、停電が離島A,Bの全体に発生していると、発電機53,53の起動ができない場合がある。
なお、事故点60の位置が送電線52aと送電線52bのいずれか一方であった場合でも、離島A,Bの各遮断器54は、いずれも発電設備51からの電力供給を遮断するため、上記と同様な事態となる。
このように、従来技術に係る発電システム50においては、離島A,Bの全体が停電になると、復旧に大変な時間が必要となるという課題があった。
【0020】
次に、本発明の実施の形態に係る離島における発電機制御システムについて、
図1乃至
図3を用いて詳細に説明する。
図1(a)及び
図1(b)は、いずれも実施例に係る離島における発電機制御システムの構成及び作用を説明するための構成図である。なお、
図4で示した構成要素については、
図1においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図1(a)及び
図1(b)に示すように、実施例に係る離島における発電機制御システム1(以下、発電機制御システム1という。)は、離島Aに設置されて、本土に設置される発電設備51と送電線52を介して接続される発電機53の運転条件を制御することを目的とする。
発電機制御システム1は、遮断器54よりも上流側の送電線52の途中に配置される計測器2と、離島Aの外部、例えば本土に設置されて、ネットワーク30を介し、発電機53の運転条件を遠隔制御可能な制御装置3と、制御装置3と発電機53の通信を可能とする通信手段4と、計測器2の計測値を通信手段4に送信するために離島Aに設置される通信経路5を備える。
【0021】
このうち、発電機53は、運転条件(例えば、回転速度、電圧、電流、周波数、電圧の位相、発電容量等)に従って稼働する。そして、発電機53の台数は一台である。ただし、複数台の発電機53が、例えば並列に接続されており、それぞれの出力電流が送電線52にすべて流れる構成であってもよい。
また、計測器2は、発電機53の運転条件に依存する計測値を計測しており、具体的には、送電線52を流れる潮流を計測値とする電力計である。計測器2が計測する時間間隔tは、計測器2にタイマー機能を持たせることで、任意に設定可能である。
なお、発電機53の運転条件に依存する計測値とは、発電機53の運転条件との相関関係が既知である物理量、すなわち本実施例における潮流の計測値である。
【0022】
また、制御装置3は、計測器2の計測値と、発電機53の運転条件と、気象庁から発表される気象情報が、それぞれ入力されて、予め記憶部3bに記憶された気象情報に応じ、計測値に基づいて発電機53の運転条件を制御する。具体的には、制御装置3は、計測器2の計測値、すなわち潮流がゼロになるように、発電機53の運転条件を制御する。
【0023】
さらに、制御装置3は、通信部3aと、記憶部3bと、これらの動作をすべて制御したり、各種の演算を実行したりする制御部3cを備える。具体的には、制御装置3として、パーソナルコンピュータが用いられる。
制御装置3のうち、通信部3aは、ネットワーク30を介した、制御装置3と通信手段4との双方向通信を可能とする。
次に、記憶部3bには、発電機53の運転条件と、計測器2の計測値との相関関係を示すテーブルTと、潮流がゼロになるときの計測値の目標値M(≒ゼロ)と、発電機53を起動させる起動運転条件が記憶されている。
詳細には、テーブルTは、例えば、-aから+a(ただし、a>0)の範囲内で、b(ただし、b>0)毎の微小間隔を空けて大きさ順に配列された計測値KTと、各計測値KTに対応して、潮流をそれぞれゼロとすることが可能な運転条件UTとが、互いに関連付けられたテーブルである。なお、計測値が負の値になっている場合は、逆潮流が生じていることを意味する。具体的には、離島Aにおける消費電力量が発電機53の発電電力量よりも小さい場合に、逆潮流が検知される可能性がある。
したがって、制御装置3が、計測値に基づいて発電機53の運転条件を制御するとは、制御装置3が、計測器2がリアルタイムで計測した計測値がKであるときに、テーブルTを参照して、この計測値Kと等しい計測値KTと、この計測値KTに対応する運転条件UTを抽出し、そして、その時点での実際の運転条件Uが抽出した運転条件UTになるよう、発電機53に指令する、ということである。これにより、発電機53において、抽出した運転条件UTが実現されるため、潮流がゼロになることを実現できる。
【0024】
また、気象庁から発表される気象情報は、現在、特別警報、警報、注意報が規定されている。このうち、特別警報は、大雨特別、大雪特別、暴風特別、暴風雪特別等の6種類である。また、警報は、大雨、洪水、大雪、暴風、暴風雪等の7種類である。さらに、注意報は、大雨、洪水、大雪、強風、風雪、着氷、着雪、雷等の16種類である。
よって、予め記憶部3bに記憶された気象情報とは、上記の特別警報等のうちから、送電線52の断線のような永久事故の要因になり易いもの、例えば、雨、風、雪、雷等に関連するものが含まれるリストLである。なお、記憶部3bに記憶された気象情報は、例えば、公知の方法により、その種類が制御部3cによって自動認識されたものである。
【0025】
次に、
図1(a)に示すように、通常時においては、
図4(a)に示した発電システム50と同様に、離島Aには、流れ方向57のとおり電力が供給される。このとき、発電機53は、運転停止の状態にある。
しかし、
図1(b)に示すように、例えば、送電線52が断線する永久事故が事故点60において発生すると、離島Aの遮断器54が発電設備51からの電力供給を遮断する(図中バツ印)。
【0026】
しかし、
図1(a)に示したような、永久事故が発生する前の通常時に、発電機53を起動することは、離島Aが停電をしていないので十分に可能である。
ここで、計測器2の位置での潮流がゼロになるとは、離島Aにおける消費電力量が発電機53の発電電力量と等しい状態、すなわち離島Aが本土からの電力供給を受けない状態を意味する。そこで、この状態が維持され、かつ発電機53が運転を継続すると、電力が流れ方向57のように供給され続けることになる。よって、制御装置3が、潮流がゼロを維持するように、発電機53の運転条件を制御すると、送電線52に永久事故が発生したとしても、離島Aのみにおいて電力受給が可能となる。なお、制御装置3が発電機53の運転条件を制御する工程については、後に、
図2を用いて説明する。
このように、発電機制御システム1においては、永久事故の発生時に、離島Aの全体が停電になることを防止できるため、復旧に大変な時間が必要となるという課題も存在しなくなるのである。
【0027】
続いて、実施例に係る発電機制御システムが実行する離島における発電機制御方法について、
図2を用いて説明する。
図2は、実施例に係る離島における発電機制御システムが実行する離島における発電機制御方法を説明するためのフロー図である。
図2に示すように、発電機制御システム1は、離島における発電機制御方法20(以下、発電機制御方法20という。)を実行する。この発電機制御方法20は、ステップS1の気象情報等受信工程乃至ステップS7の問い合わせ工程を備える。
以下、各工程について、説明する。
【0028】
まず、ステップS1の気象情報等受信工程では、制御装置3を構成する制御部3cが、ネットワーク30を介して、気象庁が発表した気象情報と、計測器2が計測した計測値Kを受信して、記憶部3bに記憶する。このうち、計測値Kは、気象情報の受信とは無関係に、任意に設定された時間間隔t毎に計測器2によって計測されるとともに、制御部3cへの送信が継続される。
【0029】
次に、ステップS2の気象情報照会工程は、制御部3cが、気象情報を受信した場合に実行する工程である。この工程において、制御部3cは、受信した気象情報が、記憶部3bに記憶されている気象情報のリストLに含まれる特別警報等と一致するか否かを照会する。一致する場合、制御部3cは、ステップS3の一致回数判定工程を実行する。一致しない場合、制御部3cは、ステップS1の気象情報等受信工程を継続する。
【0030】
ステップS3の一致回数判定工程では、制御部3cが、気象情報がリストLに含まれる特別警報等と一致する一致回数を加算する。制御部3cは、この一致回数が1であると判定したとき、ステップS4の発電機起動工程を実行する。一方、制御部3cは、この一致回数が2以上であると判定したとき、ステップS5の計測値比較工程を実行する。
【0031】
ステップS4の発電機起動工程では、制御部3cが、記憶部3bに記憶された起動運転条件で、発電機53を起動させる。
【0032】
次に、ステップS5の計測値比較工程では、制御部3cが、記憶部3bに記憶された計測値K(MW)のうち、最新の計測値KL(MW)と、予め記憶部3bに記憶された目標値M(MW)とを比較する。この目標値Mとして、具体的には、ゼロを中心値として、-c(MW)から+c(MW)(ただし、cは、通常時に計測される計測値Kのオーダーに対し、無視できる程度に小さいオーダーを有する任意の正の値)までの許容範囲Hに設定された幅を持った値が用いられる。
制御部3cが、計測値KLが許容範囲Hに含まれないと判定した場合、制御部3cは、ステップS6の発電機運転条件調整工程を実行する。これに対し、制御部3cは、計測値KLが許容範囲Hに含まれると判定した場合、後述するステップS7の問い合わせ工程を実行する。
【0033】
ステップS6の発電機運転条件調整工程では、制御部3cが、記憶部3bに記憶されたテーブルTを参照して、計測器2の最新の計測値KLに対応する運転条件UTを抽出し、その時点での実際の運転条件Uが抽出した運転条件UTになるよう、発電機53に指令する。これにより、潮流がゼロになることが実現される。
【0034】
続いて、ステップS7の問い合わせ工程では、制御部3cが、制御装置3に設けられる表示部(図示せず)に、制御装置3を操作するオペレータに対する問い合わせのメッセージを表示する。その内容は、例えば、「発電機運転条件調整を終了しますか?」というものである。
このメッセージに対し、オペレータが、リストLに含まれる特別警報等と一致するすべての気象情報が解除されているから、発電機運転条件調整を終了してもよいと判断する場合は「Y」を、そうでない場合は「N」を、制御部3cに設けられるキーボードやマウスといった入力部(図示せず)を介してそれぞれ入力する。
そして、「Y」が入力された場合、制御部3cは、発電機制御方法20を終了する。また、「N」が入力された場合、制御部3cは、ステップS5の計測値比較工程以降を繰り返す。
【0035】
以上説明したように、発電機制御システム1によれば、発電機53の運転条件が離島のみにおいて電力受給を可能とするような条件に調整されるから、離島A全体の停電を確実に防止することができる。
さらに、気象情報は、通常、気象条件が変化する数時間前に発表されるため、発電機の運転条件の調整に、気象条件を利用することによって、送電線52に対する悪影響を早期に検知し、時間的な余裕を持って対処することができる。
【0036】
加えて、発電機制御システム1によれば、制御装置3によって、離島Aが本土からの電力供給を受けないでおいて、離島Aのみにおいて電力受給が可能な状態となるため、本土と離島Aとの間で送電線52が断線する永久事故が発生した場合に、離島Aに設置される発電機53によって本土と切り離して電力を賄うことが可能になる。すなわち、発電機制御システム1によれば、永久事故に伴う不利益が離島Aに波及することを防止可能である。
【0037】
また、発電機制御方法20においては、ステップS3の一致回数判定工程を備えるため、受信時刻の異なる複数の気象情報が、気象情報のリストLに含まれる異なる種類の特別警報等とそれぞれ一致する場合であっても、離島Aにおいて、発電機53の起動を最も早期に一致したときの1回のみに抑えることができる。
そして、ステップS7の問い合わせ工程を備えるため、オペレータが判断した場合に限って、発電機制御方法20を終了させることができる。そのため、発電機制御方法20の終了時期を信頼性の高いものとすることができる。
【0038】
続いて、実施例の変形例に係る発電機制御システムについて、
図3を用いて説明する。
図3(a)及び
図3(b)は、いずれも実施例の変形例に係る離島における発電機制御システムの構成及び作用を説明するための構成図である。なお、
図1,4で示した構成要素については、
図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、実施例の変形例に係る発電機制御システム1Aは、複数の離島に発電機がそれぞれ一台毎設置されている場合に適用されるものであって、制御装置3は、一台設置されて、複数の離島A,Bにそれぞれ設置される発電機53,53の各運転条件をそれぞれ制御する。
【0039】
図3(a)に示すように、通常時においては、
図4(a)に示した発電システム50と同様に、離島A,Bには、電流の流れ方向57のとおり電力が供給される。このとき、発電機53,53は、いずれも運転停止の状態にある。
しかし、
図3(b)に示すように、例えば、送電線52が断線する永久事故が事故点60において発生すると、離島A,Bの遮断器54,54が発電設備51からの電力供給を遮断する(図中バツ印)。
【0040】
このような構成において、離島A,Bは、一つの気象情報が適用される範囲に含まれると想定されている。また、制御装置3が、一つの気象情報を受信して、離島A,Bにそれぞれ設置される発電機53,53において、制御する運転条件の種類や値は、互いに同一でない。この場合、テーブルTとして、離島A,Bにそれぞれ設置される発電機53,53毎に、異なる種類のテーブルTA,TBが、記憶部3bに記憶されている。このテーブルTA,TBにおいても、テーブルTと同様に、離島A,Bにおける各計測値KTに対する発電機53,53の各運転条件UTA,UTBが、それぞれ関連付けられている。
【0041】
よって、制御部3cは、テーブルTA,TBを参照して、離島A,Bにそれぞれ設置される発電機53,53の運転条件UTA,UTBを抽出して、その時点での運転条件UA,UBがそれぞれ運転条件UTA,UTBとなるように一括して制御可能である。よって、複数の離島A,Bにおいて、同時期に停電防止が実現される。
なお、発電機制御システム1Aも発電機制御方法20を実行する。ただし、ステップS1の気象情報等受信工程乃至ステップS7の問い合わせ工程のうち、ステップS1の気象情報等受信工程乃至ステップS3の一致回数判定工程は、離島A,Bでまとめて実行され、ステップS4の発電機起動工程乃至ステップS7の問い合わせ工程は、離島A,Bでそれぞれ実行される。
【0042】
したがって、発電機制御システム1Aによれば、一台の制御装置3により、複数の離島A,Bにおいて、同時期に停電防止が実現されるため、これらの離島A,B毎に制御装置3を設置する必要がなく効率的な制御が可能となるとともに、複数の離島A,Bの何れかで制御が遅れて停電が発生するという事態を防止できる。
これ以外の発電機制御システム1Aの構成、作用及び効果は、発電機制御システム1の構成、作用及び効果と同一である。
【0043】
なお、本発明に係る発電機制御システム1,1Aは、実施例に示すものに限定されない。例えば、発電機制御システム1,1Aにおいて、計測器2は電流計であってもよい。この場合、テーブルT,TA,TBは、計測した電流値に対する運転条件が関連付けられている。また、発電機制御システム1Aにおいて、離島A,Bにそれぞれ複数の発電機53が直列に接続されて設置されてもよい。
1,1A…発電機制御システム 2…計測器 3…制御装置 3a…通信部 3b…記憶部 3c…制御部 4…通信手段 5…通信経路 20…発電機制御方法 30…ネットワーク 50…発電システム 51…発電設備 52,52a,52b…送電線 53…発電機 54…遮断器 55…変圧器 56…負荷 57…流れ方向 60…事故点 A,B…離島