(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073182
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】電力伝送システム、及び電力伝送プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/50 20160101AFI20240522BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20240522BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240522BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H02J50/50
H02M3/28 H
H02J50/10
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184257
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】小林 尚斗
(72)【発明者】
【氏名】半田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】筒 雄樹
【テーマコード(参考)】
5G503
5H730
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA04
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503GB08
5H730AA15
5H730AS08
5H730BB27
5H730BB81
5H730BB88
5H730DD04
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE72
(57)【要約】
【課題】電磁気的に結合された複数の電力変換装置を備える電力伝送システムにおいて、互いに離れた2つの電力変換装置間で伝送可能な最大電力を増加させる。
【解決手段】電力伝送システム(100)は、3以上の電力変換装置(10,20,30)と、3以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を入出力する入出力部(11,21,31)と、3以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を伝送する伝送部(15,25,35)と3以上の電力変換装置を制御する制御部(90)と、を備える。伝送部が磁路(71,72)により互いに電磁気的に結合されている。制御部は、3以上の電力変換装置のうちの第1電力変換装置(10)と第2電力変換装置(30)との間で電力を伝送する際に、第1伝送部(15)と第2伝送部(35)との間に配置された中間伝送部(25)に接続された中間電力変換装置(20)の少なくとも1つを動作状態に制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3以上の電力変換装置(10,20,30,40,50)と、
前記3以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を入出力する入出力部(11,21,31,41,51)と、
前記3以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を伝送する伝送部(15,25,35,45,55)と、
前記3以上の電力変換装置を制御する制御部(90)と、
を備え、前記伝送部が磁路(71,72,73,74)により互いに電磁気的に結合されている電力伝送システム(100,200,300)であって、
前記制御部は、前記3以上の電力変換装置のうちの第1電力変換装置(10)と第2電力変換装置(30,50)との間で電力を伝送する際に、前記第1電力変換装置に接続された前記伝送部である第1伝送部(15)と、前記第2電力変換装置に接続された前記伝送部である第2伝送部(35,55)との間に配置された前記伝送部である中間伝送部(25,35,45)に接続された前記電力変換装置である中間電力変換装置(20,30,40)の少なくとも1つを動作状態に制御する、電力伝送システム。
【請求項2】
3以上の前記伝送部は、互いに着脱可能な前記伝送部である着脱伝送部(15,25)を少なくとも2つ含み、
互いに別個の前記着脱伝送部にそれぞれ接続された前記電力変換装置(10,20)は、自身に接続された前記着脱伝送部及び前記入出力部(11,21)と共に互いに別個の筐体(81,82)にそれぞれ収納されている、請求項1に記載の電力伝送システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1伝送部から前記第2伝送部へ伝送する電力の目標値が大きいほど、動作状態に制御する前記中間電力変換装置の数を多くする、請求項1又は2に記載の電力伝送システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置との間で電力を伝送する際に、動作状態に制御する前記中間電力変換装置(30)に接続された前記伝送部である中継伝送部(35)が、動作状態に制御しない複数の前記中間電力変換装置(20,40)にそれぞれ接続された前記伝送部である非中継伝送部(25,45)を、最も均等に近い数の連続する前記非中継伝送部のグループに分けるように、動作状態に制御する前記中間電力変換装置を選択する、請求項1又は2に記載の電力伝送システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1伝送部から前記第2伝送部へ伝送する電力の目標値が大きいほど、定格電力が大きい前記中間電力変換装置を動作状態に制御する、請求項1又は2に記載の電力伝送システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置との間で電力を伝送する際に、動作状態に制御する前記中間電力変換装置に接続された前記入出力部が出力する電力が0になるように、動作状態に制御する前記中間電力変換装置を制御する、請求項1又は2に記載の電力伝送システム。
【請求項7】
前記伝送部は、前記電力変換装置に接続されたコイル(16,26,36,46,56)と、前記コイルが巻回されて前記磁路に接続された磁性体コア(17,27,37,47,57)とを含む、請求項1又は2に記載の電力伝送システム。
【請求項8】
3以上の電力変換装置(10,20,30,40,50)と、
前記3以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を入出力する入出力部(11,21,31,41,51)と、
前記3以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を伝送する伝送部(15,25,35,45,55)と、
前記3以上の電力変換装置を制御する制御部(90)と、
を備え、前記伝送部が磁路(71,72,73,74)により互いに電磁気的に結合されている電力伝送システム(100,200,300)、に適用される電力伝送プログラムであって、
前記制御部に、
前記3以上の電力変換装置のうちの第1電力変換装置(10)と第2電力変換装置(30,50)との間で電力を伝送させる際に、前記第1電力変換装置に接続された前記伝送部である第1伝送部(15)と、前記第2電力変換装置に接続された前記伝送部である第2伝送部(35,55)との間に配置された前記伝送部である中間伝送部(25,35,45)に接続された前記電力変換装置である中間電力変換装置(20,30,40)の少なくとも1つを動作状態に制御させる、電力伝送プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁気的に結合された複数の電力変換装置を備える電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の電源ユニット(電力変換装置)を備える電源装置が記載されている。この電源装置では、複数の電源ユニットは、電源ユニットとは別に設けられた配線用バックボードを介して互いに電気的に接続されており、配線用バックボードを介して電力の授受を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電力を伝送する構成として、複数の電力変換装置を電気的に接続する構成の他に、磁路を介して複数の電力変換装置を電磁気的に結合する構成が考えられる。こうした構成によれば、2つの電力変換装置間を電気的に絶縁した状態で電力を伝送することができる。しかし、電力変換装置の数が増えるほど、互いに離れた2つの電力変換装置間の磁路長が長くなり、2つの電力変換装置間の漏れインダンクタンスが大きくなる。このため、互いに離れた2つの電力変換装置間で伝送可能な最大電力が減少することとなる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、電磁気的に結合された複数の電力変換装置を備える電力伝送システムにおいて、互いに離れた2つの電力変換装置間で伝送可能な最大電力を増加させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
3以上の電力変換装置(10,20,30,40,50)と、
前記3以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を入出力する入出力部(11,21,31,41,51)と、
前記3以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を伝送する伝送部(15,25,35,45,55)と、
前記3以上の電力変換装置を制御する制御部(90)と、
を備え、前記伝送部が磁路(71,72,73,74)により互いに電磁気的に結合されている電力伝送システム(100,200,300)であって、
前記制御部は、前記3以上の電力変換装置のうちの第1電力変換装置(10)と第2電力変換装置(30,50)との間で電力を伝送する際に、前記第1電力変換装置に接続された前記伝送部である第1伝送部(15)と、前記第2電力変換装置に接続された前記伝送部である第2伝送部(35,55)との間に配置された前記伝送部である中間伝送部(25,35,45)に接続された前記電力変換装置である中間電力変換装置(20,30,40)の少なくとも1つを動作状態に制御する。
【0007】
上記構成によれば、入出力部は、前記3以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を入出力する。伝送部は、前記3以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を伝送する。このため、制御部が前記3以上の電力変換装置のうちの第1電力変換装置を制御することにより、第1電力変換装置に接続された入出力部から入力した電力を、第1電力変換装置に接続された第1伝送部へ出力することができる。第1伝送部と、前記3以上の電力変換装置のうちの第2電力変換装置に接続された第2伝送部とが磁路により電磁気的に結合されている。このため、制御部が第2電力変換装置を制御することにより、第1伝送部から第2伝送部へ電力を電気的に絶縁した状態で伝送し、第2電力変換装置に接続された入出力部から電力を出力することができる。
【0008】
ここで、第1電力変換装置と第2電力変換装置との間で電力を伝送する際に、第1伝送部と第2伝送部との間に配置された中間伝送部に接続された中間電力変換装置が停止状態である場合は、第1伝送部から磁路を介して第2伝送部へ直接電力が伝送される。この場合、第1伝送部から第2伝送部までの磁路長が長くなり、第1伝送部と第2伝送部との間の漏れインダクタンスが大きくなる。その結果、第1伝送部と第2伝送部との間で伝送可能な最大電力が減少することとなる。
【0009】
これに対して、前記制御部は、第1電力変換装置と第2電力変換装置との間で電力を伝送する際に、中間伝送部に接続された中間電力変換装置の少なくとも1つを動作状態に制御する。この場合、第1伝送部から磁路及び中間伝送部を介して第2伝送部へ電力を伝送する、すなわち第1伝送部から磁路を介して中間伝送部へ電力を伝送し、中間伝送部から磁路を介して第2伝送部へ電力を伝送することができる。このため、第1伝送部から第2伝送部までの磁路長よりも、第1伝送部から中間伝送部までの磁路長、及び中間伝送部から第2伝送部までの磁路長をそれぞれ短くすることができる。したがって、第1伝送部と第2伝送部との間の漏れインダクタンスよりも、第1伝送部と中間伝送部との間の漏れインダクタンス、及び中間伝送部と第2伝送部との間の漏れインダクタンスを小さくすることができる。その結果、中間電力変換装置が停止状態である場合に第1伝送部と第2伝送部との間で伝送可能な最大電力よりも、中間電力変換装置が動作状態である場合に、第1伝送部と中間伝送部との間で伝送可能な最大電力、及び中間伝送部と第2伝送部との間で伝送可能な最大電力を大きくすることができ、ひいては第1伝送部と第2伝送部との間で伝送可能な最大電力を増加させることができる。
【0010】
第2の手段では、3以上の前記伝送部は、互いに着脱可能な前記伝送部である着脱伝送部(15,25)を少なくとも2つ含み、互いに別個の前記着脱伝送部にそれぞれ接続された前記電力変換装置(10,20)は、自身に接続された前記着脱伝送部及び前記入出力部(11,21)と共に互いに別個の筐体(81,82)にそれぞれ収納されている。こうした構成によれば、電力変換装置、着脱伝送部、及び入出力部を、筐体ごと着脱することができ、ユーザの要望に合わせて電力伝送システムの編成を容易に変更することができる。
【0011】
動作状態に制御する前記中間電力変換装置(以下、「中間動作装置」という)の数が多いほど、中間動作装置に接続されて電力の伝送を中継する中間伝送部(以下、「中継伝送部」という)の数を多くすることができる。このため、第1伝送部から中継伝送部までの磁路長、中継伝送部同士の間の磁路長、及び中継伝送部から第2伝送部までの磁路長を短くすることができる。したがって、中間電力変換装置が動作状態である場合に、第1伝送部と第2伝送部との間で伝送可能な最大電力を増加させることができる。一方、電力変換装置を動作状態に制御する際には、電力変換装置に含まれるスイッチング素子等において損失が生じる。このため、中間動作装置の数が多くなるほど、電力伝送システム全体での損失が増加する。
【0012】
この点、第3の手段では、前記制御部は、前記第1伝送部から前記第2伝送部へ伝送する電力の目標値が大きいほど、動作状態に制御する前記中間電力変換装置の数を多くする。したがって、前記第1伝送部から前記第2伝送部へ伝送する電力の目標値が大きいほど、第1伝送部と第2伝送部との間で伝送可能な最大電力を増加させることができ、目標値の電力を伝送しやすくなる。一方、前記制御部は、前記第1伝送部から前記第2伝送部へ伝送する電力の目標値が小さいほど、中間動作装置の数を少なくする。したがって、前記第1伝送部から前記第2伝送部へ伝送する電力の目標値が小さくなるほど、電力伝送システム全体での損失を減少させることができる。
【0013】
動作状態に制御しない前記中間電力変換装置に接続された前記伝送部である非中継伝送部が連続する数が多くなると、その部分において磁路長が長くなり、伝送可能な最大電力が減少する。
【0014】
この点、第4の手段では、前記制御部は、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置との間で電力を伝送する際に、動作状態に制御する前記中間電力変換装置(30)に接続された前記伝送部である中継伝送部(35)が、動作状態に制御しない複数の前記中間電力変換装置(20,40)にそれぞれ接続された前記伝送部である非中継伝送部(25,45)を、最も均等に近い数の連続する前記非中継伝送部のグループに分けるように、動作状態に制御する前記中間電力変換装置を選択する。こうした構成によれば、非中継伝送部が連続する数が多くなることを抑制することができ、磁路長が長い部分が生じることを抑制することができる。したがって、中間電力変換装置を動作状態に制御する数あたりの伝送可能な最大電力を最大化することができ、中間動作装置の数を減少させることができる。その結果、より少ない中間動作装置により効率的に電力を伝送することができ、中間電力変換装置を動作状態に制御することに伴う損失を低減することができる。
【0015】
前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置との間で電力を伝送する際に、中間動作装置に供給される電力が定格電力を超えると、中間動作装置の動作が停止されるおそれがある。
【0016】
この点、第5の手段では、前記制御部は、前記第1伝送部から前記第2伝送部へ伝送する電力の目標値が大きいほど、定格電力が大きい前記中間電力変換装置を動作状態に制御する。こうした構成によれば、中間動作装置に供給される電力が定格電力を超えることを抑制することができ、第1伝送部と第2伝送部との間で伝送可能な最大電力が制限されることを抑制することができる。
【0017】
第6の手段では、前記制御部は、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置との間で電力を伝送する際に、動作状態に制御する前記中間電力変換装置に接続された前記入出力部が出力する電力が0になるように、動作状態に制御する前記中間電力変換装置を制御する。こうした構成によれば、動作状態に制御する前記中間電力変換装置に接続された前記入出力部が出力する電力の目標値が0である場合でも、中間電力変換装置を動作状態に制御することができ、第1伝送部と第2伝送部との間で伝送可能な最大電力を増加させることができる。
【0018】
具体的には、第7の手段のように、前記伝送部は、前記電力変換装置に接続されたコイル(16,26,36,46,56)と、前記コイルが巻回されて前記磁路に接続された磁性体コア(17,27,37,47,57)とを含む、といった構成を採用することができる。
【0019】
第8の手段は、
3以上の電力変換装置(10,20,30,40,50)と、
前記3以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を入出力する入出力部(11,21,31,41,51)と、
前記3以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を伝送する伝送部(15,25,35,45,55)と、
前記3以上の電力変換装置を制御する制御部(90)と、
を備え、前記伝送部が磁路(71,72,73,74)により互いに電磁気的に結合されている電力伝送システム(100,200,300)、に適用される電力伝送プログラムであって、
前記制御部に、
前記3以上の電力変換装置のうちの第1電力変換装置(10)と第2電力変換装置(30,50)との間で電力を伝送させる際に、前記第1電力変換装置に接続された前記伝送部である第1伝送部(15)と、前記第2電力変換装置に接続された前記伝送部である第2伝送部(35,55)との間に配置された前記伝送部である中間伝送部(25,35,45)に接続された前記電力変換装置である中間電力変換装置(20,30,40)の少なくとも1つを動作状態に制御させる。
【0020】
上記構成によれば、電力伝送システムに適用される電力伝送プログラムにより、第1の手段と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】中間伝送部の数と漏れインダクタンスとの関係を示すグラフ。
【
図3】中間伝送部の数と伝送可能な最大電力との関係を示すグラフ。
【
図4】第1実施形態の各電力変換装置のスイッチング素子のオンオフ状態、各コイルにそれぞれ流れる電流、各入出力部がそれぞれ入力する平均電力を示すグラフ。
【
図7】第3実施形態の各電力変換装置のスイッチング素子のオンオフ状態、各コイルにそれぞれ流れる電流、各入出力部がそれぞれ入力する平均電力を示すグラフ。
【
図8】
図7(a)~(d)の伝送可能な最大電力をそれぞれ示すグラフ。
【
図9】第4実施形態の各電力変換装置のスイッチング素子のオンオフ状態、各コイルにそれぞれ流れる電流、各入出力部がそれぞれ入力する平均電力を示すグラフ。
【
図10】
図9(a),(b)の伝送可能な最大電力をそれぞれ示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、移動販売車等のMaaS(Mobility as a Service)に搭載される電力伝送システムに具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。電力伝送システムは、多様な外部機器に接続可能であり、接続された外部機器から入力される多様な電圧の直流電力又は交流電力を伝送して、接続された外部機器に対して適切な電圧の直流電力又は交流電力を出力する。
【0023】
図1に示すように、電力伝送システム100は、入出力部11,21,31、電力変換装置10,20,30、コンデンサ12,22,32、及び電力伝送部15,25,35等を備えている。
【0024】
入出力部11,21,31には、それぞれ外部機器が接続される。外部機器は、系統電源、蓄電装置、発電機、又は太陽電池等の外部電源と、電気機器、蓄電装置等の電気負荷とを含んでいる。入出力部11,21,31は、外部から電力を入力する入力状態と、外部へ電力を出力する出力状態と、電力を入出力しない停止状態とに変化し得る。
【0025】
電力変換装置10,20,30は、例えば4つのスイッチング素子を備えるフルブリッジ回路により構成されている。電力変換装置10,20,30には、それぞれ入出力部11,21,31が接続されている。入出力部11,21,31は、上側スイッチング素子の正極端子と下側スイッチング素子の負極端子とに接続されている。入出力部11,21,31と電力変換装置10,20,30との間には、それぞれコンデンサ12,22,32が並列に接続されている。
【0026】
電力変換装置10,20,30の上側スイッチング素子と下側スイッチング素子との接続点には、電力伝送部15,25,35が接続されている。電力伝送部15,25,35(伝送部)は、それぞれコイル16,26,36を備えている。コイル16,26,36の両端は、それぞれのレグにおいて上側スイッチング素子と下側スイッチング素子との接続点に接続されている。電力伝送部15,25,35は、それぞれ磁性体コア17,27,37を備えている。磁性体コア17,27,37(磁路)は、例えばフェライトからなる部材である。磁性体コア17,27,37には、それぞれコイル16,26,36が巻回されている。
【0027】
磁性体コア17と磁性体コア27とは、磁性体コア71(磁路)により接続されている。これにより、コイル16とコイル26とは、磁性体コア17,71,27により電磁気的に結合されている。磁性体コア27と磁性体コア37とは、磁性体コア72(磁路)により接続されている。これにより、コイル26とコイル36とは、磁性体コア27,72,37により電磁気的に結合されている。磁性体コア71,72は、例えばフェライトからなる部材である。コイル16,26,36は、磁性体コア17,71,27,72,37により互いに電磁気的に結合されている。すなわち、電力伝送部15,25,35は、磁性体コア71,72により互いに電磁気的に結合されている。コイル16,26,36の巻数は、同一でもよいし、入出力部11,21、31に入出力する電圧の高さに応じて異ならせてもよい。電力伝送部15,25,35は、電力変換装置10,20,30の制御に基づいて、互いに電力を伝送する。電力伝送部15,25,35及び電力変換装置10,20,30により、DAB(Dual Active Bridge)回路が構成されている。
【0028】
制御部90は、例えばCPU、ROM、RAM、駆動回路、及び入出力インターフェース等を備えるコンピュータを主体として構成されている。制御部90は、電力変換装置10,20,30を制御する。詳しくは、制御部90は、電力変換装置10,20,30の各スイッチング素子Q1~Q12のオンオフ状態を制御する。なお、上記の各構成は、1つの筐体に全て収納されている。
【0029】
そして、制御部90は、各電力変換装置10,20,30のスイッチング素子をオンにする位相(以下、「オン位相」という)を制御することにより、各電力伝送部15,25,35の間で電力を伝送する。具体的には、一方の電力変換装置のオン位相を他方の電力変換装置のオン位相よりも進めるほど、一方の電力変換装置に接続された入出力部から他方の電力変換装置に接続された入出力部へ伝送される電力が大きくなる。一方の電力変換装置のオン位相を他方の電力変換装置のオン位相よりも遅らせるほど、他方の電力変換装置に接続された入出力部から一方の電力変換装置に接続された入出力部へ伝送される電力が大きくなる。このため、各電力変換装置のオン位相を調整することにより、各入出力部に必要な電力(各入出力部が出力する電力の目標値)を実現することができる。
【0030】
なお、上記動作は、2つの電力変換装置が電磁気的に結合された構成ではオン位相が±90degの範囲内で成立し、3以上の電力変換装置が電磁気的に結合された構成ではオン位相が±90degよりも広い範囲でも成立する。しかし、以降の説明を簡単にするため、3以上の電力変換装置が電磁気的に結合された構成においても、オン位相を最大でも±90degの範囲内とする。また、停止状態は、電力変換装置のスイッチング素子をオフとする、又はリレー等により入出力部を切り離す等により実現可能である。
【0031】
ここで、電力伝送システム100が備える電力変換装置の数が増えるほど、互いに離れた2つの電力変換装置間の磁路長が長くなり、2つの電力変換装置間の漏れインダンクタンスが大きくなる。例えば、電力変換装置10と電力変換装置30との間で電力を伝送する際に、電力伝送部15と電力伝送部35との間に配置された電力伝送部(中間伝送部)の数が増えるほど、電力変換装置10と電力変換装置30との間の磁路長が長くなる。その結果、電力変換装置10と電力変換装置30との間の漏れインダクタンスが大きくなる。
図2は、中間伝送部の数と漏れインダクタンスとの関係を示すグラフである。同図に示すように、中間伝送部の数が増えるほど、その両側に配置された電力伝送部にそれぞれ接続された電力変換装置の間の漏れインダクタンスが大きくなる。
【0032】
図3は、中間伝送部の数と伝送可能な最大電力との関係を示すグラフである。同図に示すように、中間伝送部の数が増えるほど、その両側に配置された電力伝送部にそれぞれ接続された電力変換装置の間で伝送可能な最大電力が減少する。
【0033】
そこで、制御部90は、電力変換装置10(第1電力変換装置)と電力変換装置30(第2電力変換装置)との間で電力を伝送する際に、電力伝送部15(第1伝送部)と電力伝送部35(第2伝送部)との間に配置された電力伝送部25(中間伝送部)に接続された電力変換装置20(中間電力変換装置の少なくとも1つ)を動作状態に制御する(停止状態にしない)。電力変換装置10,20,30を動作状態に制御する(駆動する)際には、一方のレグにおいて上側のスイッチング素子をオンにして下側のスイッチング素子をオフにし、且つ他方のレグにおいて上側のスイッチング素子をオフにして下側のスイッチング素子をオンにする。例えば、電力変換装置10を動作状態に制御する際には、スイッチング素子Q1,Q4をオンにし且つスイッチング素子Q2,Q3をオフにした状態と、スイッチング素子Q1,Q4をオフにし且つスイッチング素子Q2,Q3をオンにした状態とを交互に繰り返す。なお、電力変換装置20を動作状態に制御すると、スイッチング素子Q5~Q8をオンオフする際にスイッチング損失が生じる。このため、入出力部21から電力の入出力を行わない場合は、電力変換装置20を停止状態にする(動作状態にしない)ことが通常である。
【0034】
図4は、各電力変換装置10,20,30のスイッチング素子のオンオフ状態、コイル16,26,36にそれぞれ流れる電流Itr1,Itr2,Itr3、入出力部11,21,31がそれぞれ入力する平均電力P1,P2,P3を示すグラフである。平均電力P1,P2,P3は、正の値の場合に入力となり、負の値の場合に出力となる。電力変換装置10のスイッチング素子Q1(Q4)のオン位相は、電力変換装置30のスイッチング素子Q9(Q12)のオン位相よりも90deg進んでいる。なお、同図では、各スイッチング素子Q1,Q5,Q9のオンオフ状態を見やすくするために、オン状態でのグラフの高さを異ならせている。
【0035】
図4(a)は、電力変換装置20(中間電力変換装置)を停止状態に制御した場合である。この場合、電力変換装置20のスイッチング素子Q5~Q8はオフで維持されている。このため、電流Itr2は0であり、平均電力P2は0である。
【0036】
図4(b)は、電力変換装置20を動作状態に制御した場合である。この場合、電力変換装置20のスイッチング素子Q5(Q8)は、スイッチング素子Q1がオンにされてからスイッチング素子Q9(Q12)がオンにされるまでの間にオンにされている。すなわち、電力変換装置20のスイッチング素子Q5のオン位相は、電力変換装置10のスイッチング素子Q1のオン位相よりも遅れており、電力変換装置30のスイッチング素子Q9のオン位相よりも進んでいる。このため、電流Itr1の減少に伴って電流Itr2が増加し、電流Itr2の減少に伴って電流Itr3が増加している。
図4(b)における電流Itr2の傾きは、
図4(a)における電流Itr2の傾きよりも大きくなっている。その結果、
図4(b)において入出力部11から入出力部31へ伝送された平均電力P1(P3)は、
図4(a)において入出力部11から入出力部31へ伝送された平均電力P1(P3)よりも増加している。そして、
図4(a)の平均電力P1(P3)が伝送可能な最大電力である場合、
図4(b)で伝送される平均電力P1(P3)、すなわち伝送可能な最大電力を増加させることができる。なお、
図4(b)は、平均電力P2を0にした場合を示しているが、平均電力P2が正の値で入力の場合、及び平均電力P2が負の値で出力の場合も、平均電力P2の値によらず、伝送される平均電力P1(P3)が増加する効果が得られる。
【0037】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0038】
・入出力部11,21,31は、電力変換装置10,20,30にそれぞれ接続されて電力を入出力する。電力伝送部15,25,35は、電力変換装置10,20,30にそれぞれ接続されて電力を伝送する。このため、制御部90が電力変換装置10,20,30のうちの電力変換装置10を制御することにより、電力変換装置10に接続された入出力部11から入力した電力を、電力変換装置10に接続された電力伝送部15へ出力することができる。電力伝送部15と、電力変換装置10,20,30のうちの電力変換装置30に接続された電力伝送部35とが磁性体コア71,27,72により電磁気的に結合されている。このため、制御部90が電力変換装置30を制御することにより、電力伝送部15から電力伝送部35へ電力を電気的に絶縁した状態で伝送し、電力変換装置30に接続された入出力部31から電力を出力することができる。
【0039】
・制御部90は、電力変換装置10と電力変換装置30との間で電力を伝送する際に、電力伝送部25に接続された電力変換装置20を動作状態に制御する。この場合、電力伝送部15から磁性体コア71,72及び電力伝送部25を介して電力伝送部35へ電力を伝送する、すなわち電力伝送部15から磁性体コア71を介して電力伝送部25へ電力を伝送し、電力伝送部25から磁性体コア72を介して電力伝送部35へ電力を伝送することができる。このため、電力伝送部15から電力伝送部35までの磁路長よりも、電力伝送部15から電力伝送部25までの磁路長、及び電力伝送部25から電力伝送部35までの磁路長をそれぞれ短くすることができる。したがって、電力伝送部15と電力伝送部35との間の漏れインダクタンスよりも、電力伝送部15と電力伝送部25との間の漏れインダクタンス、及び電力伝送部25と電力伝送部35との間の漏れインダクタンスを小さくすることができる。その結果、電力変換装置20が停止状態である場合に電力伝送部15と電力伝送部35との間で伝送可能な最大電力よりも、電力変換装置20が動作状態である場合に、電力伝送部15と電力伝送部25との間で伝送可能な最大電力、及び電力伝送部25と電力伝送部35との間で伝送可能な最大電力を大きくすることができ、ひいては電力伝送部15と電力伝送部35との間で伝送可能な最大電力を増加させることができる。
【0040】
・制御部90は、電力変換装置10と電力変換装置30との間で電力を伝送する際に、動作状態に制御する電力変換装置20に接続された入出力部21が出力する電力が0になるように、電力変換装置20を制御する。こうした構成によれば、動作状態に制御する電力変換装置20に接続された入出力部21が出力する電力の目標値が0である場合でも、電力変換装置20を動作状態に制御することができ、電力伝送部15と電力伝送部35との間で伝送可能な最大電力を増加させることができる。
【0041】
・
図4(b)における電流Itr2の傾きを、
図4(a)における電流Itr2の傾きよりも大きくすることができる。その結果、
図4(b)において入出力部11から入出力部31へ伝送された平均電力P1(P3)を、
図4(a)において入出力部11から入出力部31へ伝送された平均電力P1(P3)よりも増加させることができる。
【0042】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図5に示すように、本実施形態では電力伝送システム200が、電力変換装置10等を収納した筐体81と、電力変換装置20,30等を収納した筐体82とを備える点で、第1実施形態と異なる。
【0043】
筐体81は、入出力部11、コンデンサ12、電力変換装置10、及び電力伝送部15を収納している。電力伝送部15は、接合部18を備えている。筐体82は、入出力部21,31、コンデンサ22,32、電力変換装置20,30、磁性体コア72、電力伝送部25,35、及び制御部90を収納している。なお、制御部90は、筐体82ではなく、筐体81に収納されていてもよい。また、制御部90は、電力変換装置10,20,30をそれぞれ高速で制御する副制御部と、副制御部を統括して制御する主制御部とにより構成されていてもよい。その場合、各副制御部は、各電力変換装置10,20,30を収納する各筐体に収納されていてもよい。電力伝送部25は、接合部28を備えている。接合部18と接合部28とは、着脱可能に接合している。これにより、電力伝送部15(着脱伝送部)と電力伝送部25(着脱伝送部)とが着脱可能になっており、ひいては筐体81と筐体82とが着脱可能になっている。接合部18と接合部28とが接合している状態において、磁性体コア17と磁性体コア27とが接続されており、コイル16とコイル26とが磁性体コア17,27により電磁気的に結合されている。
【0044】
すなわち、電力伝送部15,25,35は、互いに着脱可能な電力伝送部15,25(着脱電力伝送部)を含み、互いに別個の電力伝送部15,25にそれぞれ接続された電力変換装置10,20は、自身に接続された電力伝送部15,25及び入出力部11,21と共に互いに別個の筐体81,82にそれぞれ収納されている。
【0045】
上記構成によれば、電力変換装置10、電力伝送部15、及び入出力部11と、電力変換装置20,30、電力伝送部25,35、及び入出力部21,31とを、筐体81,82ごと着脱することができ、ユーザの要望に合わせて電力伝送システム200の編成を容易に変更することができる。
【0046】
なお、電力変換装置20と電力変換装置30とが別個の筐体にそれぞれ収納されていてもよい。この場合、電力伝送部25が備える接合部と、電力伝送部35が備える接合部とが、上記接合部18,28と同様に着脱可能に接合していればよい。そして、磁性体コア27と磁性体コア37とが接続されており、コイル26とコイル36とが磁性体コア27,37により電磁気的に結合されていればよい。
【0047】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図6に示すように、本実施形態では電力伝送システム300が、電力変換装置10,20,30,40,50と、電力変換装置10,20,30,40,50にそれぞれ接続された入出力部11,21,31,41,51、コンデンサ12,22,32,42,52、及び電力伝送部15,25,35,45,55と、磁性体コア71,72,73,74と、を備える点で、第1実施形態と異なる。
【0048】
ここで、入出力部11から入出力部51へ電力を伝送する場合、電力変換装置20,30,40のうち動作状態に制御する電力変換装置(中間動作装置)の数が多いほど、中間動作装置に接続されて電力の伝送を中継する電力伝送部(中継電力伝送部)の数を多くすることができる。このため、電力伝送部15から中継電力伝送部までの磁路長、中継電力伝送部同士の間の磁路長、及び中継電力伝送部から電力伝送部55までの磁路長を短くすることができる。したがって、電力変換装置20,30,40(中間電力変換装置)の少なくとも1つを動作状態に制御する場合に、電力伝送部15と電力伝送部55との間で伝送可能な最大電力を増加させることができる。一方、電力変換装置20,30,40を動作状態に制御する際には、電力変換装置20,30,40に含まれるスイッチング素子Q5~Q16等において損失が生じる。詳しくは、スイッチング素子Q5~Q16をオンオフする際には、スイッチング損失が生じる。このため、中間動作装置の数が多くなるほど、電力伝送システム300全体での損失が増加する。
【0049】
そこで、制御部90は、電力伝送部15から電力伝送部55へ伝送する電力の目標値が大きいほど、中間動作装置の数を多くする。伝送する電力の目標値と中間動作装置の数との関係は、予めシミュレーションや実験等に基づいて設定しておくことができる。
【0050】
図7は、各電力変換装置10,20,30,40,50のスイッチング素子のオンオフ状態、コイル16,26,36,46,56にそれぞれ流れる電流Itr1,Itr2,Itr3,Itr4,Itr5、入出力部11,21,31,41,51がそれぞれ入力する平均電力P1,P2,P3,P4、P5を示すグラフである。電力変換装置10のスイッチング素子Q1(Q4)のオン位相は、電力変換装置50のスイッチング素子Q17(Q20)のオン位相よりも90deg進んでいる。
【0051】
図7(a)は、電力変換装置20,30,40(中間電力変換装置)を停止状態に制御した場合である。この場合、電力変換装置20,30,40のスイッチング素子Q5Q16はオフで維持されている。このため、電流Itr2,Itr3,Itr4は0であり、平均電力P2,P3,P4は0である。
【0052】
図7(b)は、電力変換装置20を動作状態に制御した場合である。この場合、電力変換装置20のスイッチング素子Q5(Q8)は、スイッチング素子Q1がオンにされてからスイッチング素子Q17(Q20)がオンにされるまでの間にオンにされている。すなわち、電力変換装置20のスイッチング素子Q5のオン位相は、電力変換装置10のスイッチング素子Q1のオン位相よりも遅れており、電力変換装置50のスイッチング素子Q17のオン位相よりも進んでいる。その結果、
図7(b)において入出力部11から入出力部51へ伝送された平均電力P1(P5)は、
図7(a)において入出力部11から入出力部51へ伝送された平均電力P1(P5)よりも増加している。そして、
図7(a)の平均電力P1(P5)が伝送可能な最大電力である場合、
図7(b)で伝送される平均電力P1(P5)、すなわち伝送可能な最大電力を増加させることができる。なお、
図7(b)は、平均電力P2,P3,P4を0にした場合を示しているが、平均電力P2,P3,P4が正の値で入力の場合、及び平均電力P2,P3,P4が負の値で出力の場合も、平均電力P2,P3,P4の値によらず、伝送される平均電力P1(P5)が増加する効果が得られる。この点は、以降の
図7(c),(d)でも同様である。
【0053】
図7(c)は、電力変換装置20,30を動作状態に制御した場合である。この場合、電力変換装置20,30のスイッチング素子Q5(Q8),Q9(Q12)は、スイッチング素子Q1がオンにされてからスイッチング素子Q17(Q20)がオンにされるまでの間に順にオンにされている。すなわち、電力変換装置20,30のスイッチング素子Q5,Q9のオン位相は、電力変換装置10のスイッチング素子Q1のオン位相よりも遅れており、電力変換装置50のスイッチング素子Q17のオン位相よりも進んでいる。その結果、
図7(c)において入出力部11から入出力部51へ伝送された平均電力P1(P5)は、
図7(b)において入出力部11から入出力部51へ伝送された平均電力P1(P5)よりも増加している。そして、
図7(b)の平均電力P1(P5)が伝送可能な最大電力である場合、
図7(c)で伝送される平均電力P1(P5)、すなわち伝送可能な最大電力をさらに増加させることができる。
【0054】
図7(d)は、電力変換装置20,30,40を動作状態に制御した場合である。この場合、電力変換装置20,30,40のスイッチング素子Q5(Q8),Q9(Q12),Q13(Q16)は、スイッチング素子Q1がオンにされてからスイッチング素子Q17(Q20)がオンにされるまでの間に順にオンにされている。すなわち、電力変換装置20,30,40のスイッチング素子Q5,Q9,Q13のオン位相は、電力変換装置10のスイッチング素子Q1のオン位相よりも遅れており、電力変換装置50のスイッチング素子Q17のオン位相よりも進んでいる。その結果、
図7(d)において入出力部11から入出力部51へ伝送された平均電力P1(P5)は、
図7(c)において入出力部11から入出力部51へ伝送された平均電力P1(P5)よりも増加している。そして、
図7(c)の平均電力P1(P5)が伝送可能な最大電力である場合、
図7(d)で伝送される平均電力P1(P5)、すなわち伝送可能な最大電力をさらに増加させることができる。
【0055】
図8は、
図7(a)~(d)の伝送可能な最大電力をそれぞれ示すグラフである。
【0056】
したがって、電力伝送部15から電力伝送部55へ伝送する電力の目標値が大きいほど、電力伝送部15と電力伝送部55との間で伝送可能な最大電力を増加させることができ、目標値の電力を伝送しやすくなる。一方、制御部90は、電力伝送部15から電力伝送部55へ伝送する電力の目標値が小さいほど、中間動作装置の数を少なくする。したがって、電力伝送部15から電力伝送部55へ伝送する電力の目標値が小さくなるほど、電力伝送システム300全体での損失を減少させることができる。
【0057】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、第3実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図6に示すように、本実施形態の電力伝送システム300の構成は、第3実施形態の電力伝送システム300の構成と同一である。本実施形態では、中間動作装置を選択する方法が第3実施形態と異なっている。
【0058】
ここで、動作状態に制御しない電力変換装置に接続された電力伝送部(非中継電力伝送部)が連続する数が多くなると、その部分において磁路長が長くなり、伝送可能な最大電力が減少する。例えば、電力変換装置10(入出力部11)から電力変換装置50(入出力部51)へ電力を伝送する際に、電力変換装置20,30,40のいずれか1つを動作状態に制御する場合について考える。電力変換装置20を動作状態に制御する場合、動作状態に制御しない電力変換装置30,40にそれぞれ接続された電力伝送部35,45が連続する。これに対して、電力変換装置30を動作状態に制御する場合、動作状態に制御しない電力変換装置20,40にそれぞれ接続された電力伝送部25,45は連続しない。このため、電力変換装置20を動作状態に制御する場合の電力伝送部25から電力伝送部55までの磁路長は、電力変換装置30を動作状態に制御する場合の電力伝送部15から電力伝送部35までの磁路長及び電力伝送部35から電力伝送部55までの磁路長よりも長くなる。したがって、電力変換装置20を動作状態に制御する場合に伝送可能な最大電力は、電力変換装置30を動作状態に制御する場合に伝送可能な最大電力よりも減少する。
【0059】
そこで、制御部90は、互いに離れた2つの電力変換装置の間で電力を伝送する際に、中間動作装置に接続された中継電力伝送部が、動作状態に制御しない複数の電力変換装置にそれぞれ接続された非中継電力伝送部を、最も均等に近い(概ね等しい)数の連続する非中継電力伝送部のクループに分けるように、中間動作装置を選択する。
【0060】
例えば、電力変換装置10と電力変換装置50との間電力を伝送する際は、動作状態に制御する電力変換装置30に接続された電力伝送部35が、動作状態に制御しない電力変換装置20,40にそれぞれ接続された電力伝送部25,45を、1つの電力伝送部25のグループと1つの電力伝送部45のクループとに分けるように、動作状態に制御する電力変換装置を選択する。すなわち、制御部90は、電力を電送(中継)する電力伝送部に挟まれた非中継電力伝送部の数が最も均等に近く(概ね等しく)なるように、中間動作装置を選択する。なお、電力変換装置20を動作状態に制御する場合、電力変換装置20に接続された電力伝送部25が、動作状態に制御しない電力変換装置30,40にそれぞれ接続された電力伝送部35,45を、0の電力伝送部のグループと2つの電力伝送部35,45のクループとに分けている。また、電力を電送(中継)する電力伝送部15,25,55に挟まれた非中継電力伝送部の数が、それぞれ0と2になっている。
【0061】
図9(a)は電力変換装置20を動作状態に制御した場合であり、
図7(b)と同一のである。
【0062】
図9(b)は、電力変換装置30を動作状態に制御した場合である。
図9(b)において入出力部11から入出力部51へ伝送された平均電力P1(P5)は、
図9(a)において入出力部11から入出力部51へ伝送された平均電力P1(P5)よりも増加している。そして、
図9(a)の平均電力P1(P5)が伝送可能な最大電力である場合、
図9(b)で伝送される平均電力P1(P5)、すなわち伝送可能な最大電力を増加させることができる。なお、
図9(a),(b)は、平均電力P2,P3,P4を0にした場合を示しているが、平均電力P2,P3,P4が正の値で入力の場合、及び平均電力P2,P3,P4が負の値で出力の場合も、平均電力P2,P3,P4の値によらず、伝送される平均電力P1(P5)が増加する効果が得られる。
【0063】
図10は、
図9(a),(b)の伝送可能な最大電力をそれぞれ示すグラフである。
【0064】
上記構成によれば、非中継電力伝送部が連続する数が多くなることを抑制することができ、磁路長が長い部分が生じることを抑制することができる。したがって、互いに電力を伝送する2つの電力変換装置10,50の間において、電力変換装置を動作状態に制御する数(上記では1)あたりの伝送可能な最大電力を最大化することができ、中間動作装置の数を減少させることができる。その結果、より少ない中間動作装置により効率的に電力を伝送することができ、電力変換装置を動作状態に制御することに伴う損失を低減することができる。
【0065】
なお、電力伝送システムが6以上の電力変換装置を備え、互いに離れた2つの電力変換装置の間で電力を伝送する際に、複数の中間電力変換装置を動作状態に制御する場合も同様の作用効果を奏することができる。
【0066】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について、第3実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図6に示すように、本実施形態の電力伝送システム300の構成は、第3実施形態の電力伝送システム300の構成と同一である。本実施形態では、中間動作装置を選択する方法が第3,第4実施形態と異なっている。
【0067】
ここで、電力変換装置10と電力変換装置50との間で電力を伝送する際に、中間動作装置に供給される電力が定格電力を超えると、中間動作装置の動作が停止されるおそれがある。例えば、中間動作装置のコイルやスイッチング素子に流れる電流が上限値を超えた場合は、中間動作装置が強制的に停止されることがある。
【0068】
そこで、制御部90は、電力伝送部15から電力伝送部55へ伝送する電力の目標値が大きいほど、定格電力が大きい中間電力変換装置を動作状態に制御する。各電力変換装置10,20,30,40,50の各定格電力は予め決まっており、制御部90は各電力変換装置10,20,30,40,50の各定格電力を予め取得している。そして、制御部90は、伝送する電力の目標値と各電力変換装置10,20,30,40,50の各定格電力とに基づいて、中間動作装置を選択する。
【0069】
上記構成によれば、中間動作装置に供給される電力が定格電力を超えることを抑制することができ、電力伝送部15と電力伝送部55との間で伝送可能な最大電力が制限されることを抑制することができる。
【0070】
なお、電力伝送システムが6以上の電力変換装置を備え、互いに離れた2つの電力変換装置の間で電力を伝送する際に、複数の中間電力変換装置を動作状態に制御する場合も同様の作用効果を奏することができる。
【0071】
また、電力伝送部15から電力伝送部55へ伝送する電力の目標値が所定目標値よりも大きい場合に、定格電力が所定電力よりも大きい中間電力変換装置を動作状態に制御してもよい。また、電力伝送部15から電力伝送部55へ伝送する電力の目標値が大きいほど、定格電力が大きい中間動作装置の割合を大きくしてもよい。
【0072】
なお、第1~第5実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。
【0073】
・各入出力部と各電力変換装置との間に、DC/ACコンバータを設けることもできる。
【0074】
・各電力変換装置を、2つのスイッチング素子と2つのコンデンサとを備えるハーフブリッジ回路により構成することもできる。
【0075】
・本開示に記載の制御部90及びその手法は、コンピュータプログラム(電力伝送プログラム)により具体化された一つ乃至は複数の機能(命令)を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部90及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部90及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0076】
・以下、上述した各実施形態及び変更例から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
3以上の電力変換装置(10,20,30,40,50)と、
前記3以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を入出力する入出力部(11,21,31,41,51)と、
前記3以上の電力変換装置にそれぞれ接続されて電力を伝送する伝送部(15,25,35,45,55)と、
前記3以上の電力変換装置を制御する制御部(90)と、
を備え、前記伝送部が磁路(71,72,73,74)により互いに電磁気的に結合されている電力伝送システム(100,200,300)であって、
前記制御部は、前記3以上の電力変換装置のうちの第1電力変換装置(10)と第2電力変換装置(30,50)との間で電力を伝送する際に、前記第1電力変換装置に接続された前記伝送部である第1伝送部(15)と、前記第2電力変換装置に接続された前記伝送部である第2伝送部(35,55)との間に配置された前記伝送部である中間伝送部(25,35,45)に接続された前記電力変換装置である中間電力変換装置(20,30,40)の少なくとも1つを動作状態に制御する、電力伝送システム。
[構成2]
3以上の前記伝送部は、互いに着脱可能な前記伝送部である着脱伝送部(15,25)を少なくとも2つ含み、
互いに別個の前記着脱伝送部にそれぞれ接続された前記電力変換装置(10,20)は、自身に接続された前記着脱伝送部及び前記入出力部(11,21)と共に互いに別個の筐体(81,82)にそれぞれ収納されている、構成1に記載の電力伝送システム。
[構成3]
前記制御部は、前記第1伝送部から前記第2伝送部へ伝送する電力の目標値が大きいほど、動作状態に制御する前記中間電力変換装置の数を多くする、構成1又は2に記載の電力伝送システム。
[構成4]
前記制御部は、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置との間で電力を伝送する際に、動作状態に制御する前記中間電力変換装置(30)に接続された前記伝送部である中継伝送部(35)が、動作状態に制御しない複数の前記中間電力変換装置(20,40)にそれぞれ接続された前記伝送部である非中継伝送部(25,45)を、最も均等に近い数の連続する前記非中継伝送部のグループに分けるように、動作状態に制御する前記中間電力変換装置を選択する、構成1~3のいずれか1つに記載の電力伝送システム。
[構成5]
前記制御部は、前記第1伝送部から前記第2伝送部へ伝送する電力の目標値が大きいほど、定格電力が大きい前記中間電力変換装置を動作状態に制御する、構成1~3のいずれか1つに記載の電力伝送システム。
[構成6]
前記制御部は、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置との間で電力を伝送する際に、動作状態に制御する前記中間電力変換装置に接続された前記入出力部が出力する電力が0になるように、動作状態に制御する前記中間電力変換装置を制御する、構成1~5のいずれか1つに記載の電力伝送システム。
[構成7]
前記伝送部は、前記電力変換装置に接続されたコイル(16,26,36,46,56)と、前記コイルが巻回されて前記磁路に接続された磁性体コア(17,27,37,47,57)とを含む、構成1~6のいずれか1つに記載の電力伝送システム。
【符号の説明】
【0077】
10…電力変換装置、11…入出力部、15…電力伝送部、20…電力変換装置、21…入出力部、25…電力伝送部、30…電力変換装置、31…入出力部、35…電力伝送部、40…電力変換装置、41…入出力部、42…筐体、45…電力伝送部、50…電力変換装置、51…入出力部、55…電力伝送部、71…磁性体コア、72…磁性体コア、73…磁性体コア、74…磁性体コア、90…制御部、100…電力伝送システム、200…電力伝送システム、300…電力伝送システム。