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特開2024-73189プレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073189
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 40/02 20060101AFI20240522BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C04B40/02
B28B11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184272
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000211237
【氏名又は名称】ランデス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】山野 泰明
(72)【発明者】
【氏名】関 健吾
(72)【発明者】
【氏名】取違 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】向 俊成
(72)【発明者】
【氏名】境 美緒
(72)【発明者】
【氏名】藤木 昭宏
【テーマコード(参考)】
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055BA02
4G055BA12
4G112RA02
(57)【要約】
【課題】施設自体の大規模な築造や改造が不要であると共に、炭酸化養生終了までの施設全体の占有が不要である、簡便なプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法を提供する。
【解決手段】本発明のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法は、フレッシュコンクリートを型枠に打設して硬化させて、5%以上45%以下の空隙率を有する1つ以上のプレキャストコンクリート部材を得るプレキャストコンクリート生成工程と、前記プレキャストコンクリート部材の単位水量の減少率が5.0%以上になるまで、前記プレキャストコンクリート部材を乾燥させる乾燥工程と、パレット上に積載され、囲み部材で囲まれている乾燥後のプレキャストコンクリート部材を、前記囲み部材の内部に炭酸ガス含有ガスを供給して、炭酸化養生する、炭酸化養生工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレッシュコンクリートを型枠に打設して硬化させて、5%以上45%以下の空隙率を有する1つ以上のプレキャストコンクリート部材を得るプレキャストコンクリート生成工程と、
前記プレキャストコンクリート部材の単位水量の減少率が5.0%以上になるまで、前記プレキャストコンクリート部材を乾燥させる乾燥工程と、
パレット上に積載され、囲み部材で囲まれている乾燥後のプレキャストコンクリート部材を、前記囲み部材の内部に炭酸ガス含有ガスを供給して、炭酸化養生する、炭酸化養生工程と、
を有する、プレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法。
【請求項2】
前記囲み部材はフィルム状であり、
前記炭酸化養生工程では、前記プレキャストコンクリート部材を前記囲み部材で巻いた状態で炭酸化養生し、
前記炭酸化養生工程の終了後、前記プレキャストコンクリート部材を前記囲み部材で巻いた状態を維持して、前記プレキャストコンクリート部材を出荷する、
請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法。
【請求項3】
前記炭酸化養生工程で得られる炭酸化養生後のプレキャストコンクリート部材は、厚さが40mm以上500mm以下、かつ透水係数が1×10-4m/s以上である、請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法。
【請求項4】
前記乾燥工程において、互いに所定の間隔を空けて配置されている前記プレキャストコンクリート部材に対して、温度および湿度の少なくとも一方を制御している空気を送風して、前記プレキャストコンクリート部材を乾燥させる、請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法。
【請求項5】
前記パレットは透気性を有する、請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートに使用されているセメントは、製造時に原料の脱炭酸および焼成時の燃料により多量の炭酸ガス(二酸化炭素、CO)を排出する。近年の気候変動抑制に対する関心の高まりを受けて、コンクリートの製造時における炭酸ガスの排出量を大きく削減することが求められている。
【0003】
炭酸ガスの排出量を削減する方法の一つとして、プレキャストコンクリート部材を炭酸化養生することによって、プレキャストコンクリート部材の炭酸化反応により、炭酸ガスをプレキャストコンクリート部材に固定化する方法がある。
【0004】
例えば、炭酸ガスの排出量の削減が目的ではないものの、特許文献1には、コンクリート製品の養生方法が記載されている。特許文献1の養生方法では、パレット上に脱型載置されたコンクリート製品に囲み枠を載せ、この状態のパレットを複数段積み重ねた囲み枠内に霧状の水分や炭酸ガスを供給する。しかしながら、パレットを介して未硬化のコンクリート製品を直接多段に積み重ねる方式では、下段のコンクリート製品に変形や破損が生じやすく、またコンクリート製品の直上に配置されているパレットのさびや汚れが落下して、コンクリート製品の上面に付着することがある。
【0005】
また、特許文献1を含め、プレキャストコンクリート部材を炭酸化養生する一般的な方法では、工場の施設自体を二酸化炭素の雰囲気に制御するため、施設の大規模な築造や改造が必要である。また、プレキャストコンクリート部材の炭酸化養生では、ある程度の養生期間が必要であるため、養生終了まで施設全体を占有する必要がある。このように、プレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法について、様々な改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平01-145385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、施設自体の大規模な築造や改造が不要であると共に、炭酸化養生終了までの施設全体の占有が不要である、簡便なプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] フレッシュコンクリートを型枠に打設して硬化させて、5%以上45%以下の空隙率を有する1つ以上のプレキャストコンクリート部材を得るプレキャストコンクリート生成工程と、前記プレキャストコンクリート部材の単位水量の減少率が5.0%以上になるまで、前記プレキャストコンクリート部材を乾燥させる乾燥工程と、パレット上に積載され、囲み部材で囲まれている乾燥後のプレキャストコンクリート部材を、前記囲み部材の内部に炭酸ガス含有ガスを供給して、炭酸化養生する、炭酸化養生工程と、を有する、プレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法。
[2] 前記囲み部材はフィルム状であり、前記炭酸化養生工程では、前記プレキャストコンクリート部材を前記囲み部材で巻いた状態で炭酸化養生し、前記炭酸化養生工程の終了後、前記プレキャストコンクリート部材を前記囲み部材で巻いた状態を維持して、前記プレキャストコンクリート部材を出荷する、上記[1]に記載のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法。
[3] 前記炭酸化養生工程で得られる炭酸化養生後のプレキャストコンクリート部材は、厚さが40mm以上500mm以下、かつ透水係数が1×10-4m/s以上である、上記[1]または[2]に記載のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法。
[4] 前記乾燥工程において、互いに所定の間隔を空けて配置されている前記プレキャストコンクリート部材に対して、温度および湿度の少なくとも一方を制御している空気を送風して、前記プレキャストコンクリート部材を乾燥させる、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法。
[5] 前記パレットは透気性を有する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、施設自体の大規模な築造や改造が不要であると共に、炭酸化養生終了までの施設全体の占有が不要である、簡便なプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法の一例を示すフローチャートである。
図2図2は、乾燥工程の一例を示す概略図である。
図3図3は、炭酸化養生工程の一例を示す概略図である。
図4図4は、乾燥工程の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0012】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、単位水量の減少率を所定範囲内になるまで乾燥させたプレキャストコンクリート部材を炭酸化養生すると、プレキャストコンクリート部材を全体的に効率よく炭酸化でき、その結果として、炭酸化養生するための施設自体の大規模な築造や改造が不要および、炭酸化養生終了までの施設全体の占有が不要となる方法を見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法は、フレッシュコンクリートを型枠に打設して硬化させて、5%以上45%以下の空隙率を有する1つ以上のプレキャストコンクリート部材を得るプレキャストコンクリート生成工程と、プレキャストコンクリート部材の単位水量の減少率が5.0%以上になるまで、プレキャストコンクリート部材を乾燥させる乾燥工程と、パレット上に積載され、囲み部材で囲まれている乾燥後のプレキャストコンクリート部材を、囲み部材の内部に炭酸ガス含有ガスを供給して、炭酸化養生する、炭酸化養生工程と、を有する。
【0014】
図1は、実施形態のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法の一例を示すフローチャートである。図1に示すように、プレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法は、プレキャストコンクリート生成工程S1と乾燥工程S2と炭酸化養生工程S3とを有する。
【0015】
プレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法を構成するプレキャストコンクリート生成工程S1では、フレッシュコンクリートを型枠に打設して硬化させて、1つ以上のプレキャストコンクリート部材を得る。以降では、プレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法の効果を顕著に発揮させる観点から、複数のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法について説明するが、1つのプレキャストコンクリート部材を炭酸化養生する方法でも同様の効果を奏する。
【0016】
型枠に打設するフレッシュコンクリートは、水硬性組成物であり、少なくとも、水と、セメントと、骨材とを含有する。
【0017】
フレッシュコンクリートに含まれるセメントは、ポルトランドセメントであることが好ましい。ポルトランドセメントには、普通ポルトランドセメントの他、早強、超早強、中庸熱、低熱耐硫酸塩等の種類があり、これらはJIS R 5210:2019に規定されている。フレッシュコンクリートにおいては、これら種々のポルトランドセメントの1種又は2種以上を配合するものを用いることができる。
【0018】
また、セメントとして、高炉スラグ微粉末とセメント材とを含む高炉セメント(混合セメント)を用いてもよい。高炉セメントは、JIS R 5211:2009に規定されているものを用いることができる。
【0019】
フレッシュコンクリートに含まれる骨材は、細骨材および粗骨材の少なくとも一方を含む。
【0020】
フレッシュコンクリートに含まれる細骨材とは、JIS A 5308、JIS A 5005、JIS A 5002及びJIS A 5011で定義される骨材である。細骨材としては、例えば砕砂、砂、川砂、海砂、石灰砕砂、砕石、再生骨材、軽量骨材、重量骨材等が挙げられる。
【0021】
フレッシュコンクリートに含まれる粗骨材とは、JIS A 5308、JIS A 5005、JIS A 5002及びJIS A 5011で定義される骨材であり、粒の大きさにより上記の細骨材と区別されるもので、5mm篩を通るか否かで区分する。実用上、10mm篩をすべて通り5mm篩を重量で85%以上通るものを細骨材、5mm篩に重量で85%以上とどまるものを粗骨材としている。
【0022】
また、フレッシュコンクリートは、上記成分に加えて、本発明の効果を奏する範囲内で、γ-CS、消石灰、石炭灰、フライアッシュ、石灰石微粉末などの混和材を含んでもよい。
【0023】
プレキャストコンクリート生成工程S1では、フレッシュコンクリートを型枠に打設して硬化させて、5%以上45%以下の空隙率を有するプレキャストコンクリート部材を得る。プレキャストコンクリート部材の空隙率は、例えば、転厚や即時脱型などによって制御できる。プレキャストコンクリート部材は、複数の細孔が互いに連通している多孔質構造を有することから、プレキャストコンクリート部材は、透気性および透水性に優れている。また、プレキャストコンクリート生成工程S1で得られる乾燥前のプレキャストコンクリート部材における優れた透気性および透水性は、後述する乾燥工程S2で得られる乾燥後のプレキャストコンクリート部材でも維持される。
【0024】
プレキャストコンクリート部材の空隙率が上記範囲内であると、透気性および透水性が向上し、後述する乾燥工程S2によってプレキャストコンクリート部材を全体的かつ乾燥速度を速めて効率よく乾燥できると共に、後述する炭酸化養生工程S3によって乾燥後のプレキャストコンクリート部材を全体的かつ炭酸化速度を速めて効率よく炭酸化養生できる。
【0025】
プレキャストコンクリート生成工程S1の後に実施される乾燥工程S2では、プレキャストコンクリート生成工程S1で得られたプレキャストコンクリート部材の単位水量の減少率が5.0%以上になるまで、プレキャストコンクリート部材を乾燥させる。
【0026】
本発明者らが検討したところ、プレキャストコンクリート部材の炭酸化速度は、プレキャストコンクリート部材の含水率に関係しており、プレキャストコンクリート部材の単位水量の減少率を所定範囲内になるまで乾燥させたプレキャストコンクリート部材では、炭酸化が効率的に進行することを見出した。さらに本発明者らが検討したところ、上記所定範囲内の空隙率を有するプレキャストコンクリート部材を所定範囲内の単位水量の減少率になるまで乾燥させることで、後述する炭酸化養生工程S3では、乾燥後のプレキャストコンクリート部材を全体的かつ炭酸化速度を速めて効率よく炭酸化養生できることを見出した。こうした観点から、乾燥工程S2におけるプレキャストコンクリート部材の単位水量の減少率は、5.0%以上であり、好ましくは15.0%以上、より好ましくは25.0%以上である。
【0027】
乾燥工程S2を実施する前のプレキャストコンクリート部材(以下、乾燥前のプレキャストコンクリート部材ともいう。)および乾燥工程S2を終了した後のプレキャストコンクリート部材(以下、乾燥後のプレキャストコンクリート部材ともいう。)の単位水量を赤外線水分計などの水分計で測定し、乾燥前のプレキャストコンクリート部材の単位水量から乾燥前のプレキャストコンクリート部材の単位水量を差し引いて得られる値を、乾燥前のプレキャストコンクリート部材の単位水量で除して100を乗じることで、プレキャストコンクリート部材の単位水量の減少率(%)を求めることができる。
【0028】
また、乾燥前後のプレキャストコンクリート部材の重量減少率から、プレキャストコンクリート部材の単位水量の減少率を求めることもできる。乾燥前のプレキャストコンクリート部材の重量から乾燥後のプレキャストコンクリート部材の重量を差し引いて得られた値は、乾燥工程S2でプレキャストコンクリート部材から出た水分量に相当し、プレキャストコンクリート部材の単位水量の減少率は、プレキャストコンクリート部材の重量減少率に関係している。
【0029】
図2は、乾燥工程S2の一例を示す概略図である。図2に示すように、乾燥工程S2では、乾燥前の複数のプレキャストコンクリート部材1(乾燥前のプレキャストコンクリート部材1を単にプレキャストコンクリート部材1ともいう。)を棚部材10に整列して、プレキャストコンクリート部材1を乾燥させる。
【0030】
図2に示すように、所定の間隔を空けて複数のプレキャストコンクリート部材1を配置すると、複数のプレキャストコンクリート部材1を均等に乾燥でき、さらには各々のプレキャストコンクリート部材1を表面から内部に亘って全体的に乾燥できると共に、各々のプレキャストコンクリート部材1の単位水量の減少率を速めることができる。ただし、プレキャストコンクリート部材1は上記数値範囲内の空隙率を有することから、間隔を空けずに複数のプレキャストコンクリート部材1を接触させて配置しても、プレキャストコンクリート部材1の乾燥状態が過度に偏ることはなく、さらにはプレキャストコンクリート部材1の単位水量の減少率を所定範囲に到達させるために要する時間が過度に長くなることはない。
【0031】
また、乾燥工程S2では、湿度や温度を制御していない空気や、温度および湿度の少なくとも一方を制御している空気をプレキャストコンクリート部材1に送風して、プレキャストコンクリート部材1を乾燥させると、プレキャストコンクリート部材1の乾燥速度、すなわちプレキャストコンクリート部材1における単位水量の減少率の速度を増加かつ制御することができる。
【0032】
図3は、炭酸化養生工程S3の一例を示す概略図である。図3に示すように、乾燥工程S2の後に実施される炭酸化養生工程S3では、乾燥工程S2で得られた乾燥後のプレキャストコンクリート部材2(乾燥後のプレキャストコンクリート部材2を単にプレキャストコンクリート部材2ともいう。)に対する炭酸化養生を行う。炭酸化養生工程S3において、プレキャストコンクリート部材2は、パレット20上に積載され、囲み部材21で囲まれている。囲み部材21の内部には、プレキャストコンクリート部材2が配置されている。囲み部材21の下部は開放している。この状態で、囲み部材21の内部に炭酸ガス含有ガス22を供給して、プレキャストコンクリート部材2を炭酸化養生する。こうして、プレキャストコンクリート部材2に炭酸ガスを固定化できる。
【0033】
例えば、図3に示すように、炭酸ガス含有ガス22は、囲み部材21の上部に設けられたガス注入穴21aに接続されている配管23を介して、炭酸ガス含有ガス源24である二酸化炭素ボンベから囲み部材21の内部に供給される。図3では1つのガス注入穴21aが囲み部材21に設けられている例を図示しているが、複数のガス注入穴21aが囲み部材21に設けられてもよい。また、複数のプレキャストコンクリート部材2同士やプレキャストコンクリート部材2とパレット20とを不図示の金属バンドでかしめてもよい。
【0034】
上記のように、プレキャストコンクリート部材2は、所定範囲内の空隙率を有し、プレキャストコンクリート部材2を構成する複数の細孔は、互いに連通している。さらに、プレキャストコンクリート部材2は、単位水量の減少率が所定範囲内になるまで、表面から内部に亘って全体的に乾燥している。囲み部材21の内部に供給された炭酸ガス含有ガス22は、互いに連通している複数の細孔内を介して、所定の含水率を有するプレキャストコンクリート部材2の内部を流通する。その結果、炭酸ガス含有ガス22に含まれる炭酸ガスは、プレキャストコンクリート部材2の内部全体にわたって固定化される。
【0035】
炭酸化養生工程S3では、乾燥後のプレキャストコンクリート部材2に対して炭酸ガスを強制的に固定化したものであり、いわゆるプレキャストコンクリート部材2を強制的に炭酸化したものである。
【0036】
炭酸ガス含有ガス源24としては、二酸化炭素ボンベ、分離回収した二酸化炭素、火力発電所の排ガス、ボイラーからの排ガス、他の製品の製造工程で排出される二酸化炭素を含む排ガスのような各種排ガスであることが好ましい。また、これらの排ガスは、湿度や温度を調整してもよい。
【0037】
プレキャストコンクリート部材2を積載するパレット20は、木材から構成され、透気性および透水性を有する。そのため、プレキャストコンクリート部材2の底面を施設内の床や透気性に乏しい支持部材に積載する場合に比べて、プレキャストコンクリート部材2の底面をパレット20上に接触させると、プレキャストコンクリート部材2の炭酸化速度および炭酸化の均一性を向上できる。また、パレット20は透水性を有することから、プレキャストコンクリート部材2の炭酸化養生で発生した水は、プレキャストコンクリート部材2の底面からパレット20の内部を通過して、系外に排出される。
【0038】
プレキャストコンクリート部材2は所定範囲内の空隙率を有する。そのため、図3に示すように、複数のプレキャストコンクリート部材2を高さ方向に間隔なく積み重ねた配置状態や、複数のプレキャストコンクリート部材2を横方向に間隔なく接触させた配置状態でも、プレキャストコンクリート部材2における炭酸化速度の遅延化や炭酸化の偏りについて、実用上の問題とはならない。複数のプレキャストコンクリート部材2を横方向に所定の間隔を空けて配置すると、プレキャストコンクリート部材2における炭酸化速度や炭酸化の均一性を向上できる。
【0039】
囲み部材21は、少なくともプレキャストコンクリート部材2の底面を除く部分を囲み、囲み部材21の下部は開放している。囲み部材21は、図3に示すようにパレットの側面を囲んでもよい。囲み部材21の内部は、所定の気密性を維持している。プレキャストコンクリート部材2の全体を囲んでいる囲み部材21は、囲み部材21の内部に供給された炭酸ガス含有ガス22が囲み部材21の下部以外から漏れることを抑制し、プレキャストコンクリート部材2の内部に炭酸ガス含有ガス22を効率的に流通させる。
【0040】
囲み部材21は、炭酸ガスに対する透気性が低い。プレキャストコンクリート部材2を容易に包装する観点から、囲み部材21はフィルム状であることが好ましい。囲み部材21がフィルム状であると、囲み部材21でプレキャストコンクリート部材2を一巻き以上巻くことで、プレキャストコンクリート部材2を囲み部材21で囲むことができる。例えば、パレット20上に複数のプレキャストコンクリート部材2を整列して積み重ね、続いて囲み部材21で複数のプレキャストコンクリート部材2を巻くことで、炭酸化養生のためのプレキャストコンクリート部材2の設置準備が完了する。
【0041】
また、炭酸ガスは空気よりも重いため、図3に示すように囲み部材21の上側から炭酸ガス含有ガス22を供給すると、炭酸ガス含有ガス22は、上段のパレット20の上に積載されているプレキャストコンクリート部材2の内部を流通し、続いて上段のパレット20の内部を流通し、続いて下段のパレット20の上に積載されているプレキャストコンクリート部材2の内部を流通し、続いて下段のパレット20の内部を流通し、その後に系外に放出される。こうして、プレキャストコンクリート部材2を効率的に炭酸化養生できる。
【0042】
また、図3に示すプレキャストコンクリート部材2の整列状態は、プレキャストコンクリート部材2の出荷の荷姿に相当する。そのため、炭酸化養生工程S3の終了後、プレキャストコンクリート部材2を囲み部材21で巻いた状態を維持し、囲み部材21から配管23を取り外したのみで、プレキャストコンクリート部材2を出荷することができる。そのため、フレッシュコンクリートからプレキャストコンクリート部材を製造し、プレキャストコンクリート部材を炭酸化養生して出荷するまで、簡便に短時間で行うことができる。
【0043】
炭酸化養生工程S3で得られる炭酸化養生後のプレキャストコンクリート部材は、透水性および透気性を有する。炭酸化養生後のプレキャストコンクリート部材の透水係数は1×10-4m/s以上であることが好ましい。また、炭酸化養生後のプレキャストコンクリート部材の厚さは40mm以上500mm以下であることが好ましい。このようなプレキャストコンクリート部材は、透水性インターロッキングブロックに好適に用いられる。
【0044】
このように、実施形態のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法は、囲み部材の内部に炭酸ガス含有ガスを供給すること以外、炭酸化養生工程を有さないプレキャストコンクリート部材の製造から出荷までの従来プロセスをほぼ変更せずに実施できる。そのため、プレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法では、工場の施設自体の大規模な築造や改造が不要であり、プレキャストコンクリート部材を容易に炭酸化できる。
【0045】
また、実施形態のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法では、炭酸化養生に必要な炭酸ガス含有ガス源および配管を除いて、基本的にはプレキャストコンクリート部材の製品出荷時に必要な部材を使用しているため、新たな部材を必要としない。さらには、新たな部材を必要としないため、施設自体の大規模な築造や改造が不要である。また、プレキャストコンクリート部材の製品出荷時に必要な部材を使用しているため、炭酸化養生終了までの施設全体の占有が不要である。
【0046】
なお、上記では、乾燥工程S2において、図2に示すように、乾燥前の複数のプレキャストコンクリート部材1を棚部材10に整列して乾燥させる例について説明したが、棚部材10を使用せず、図4に示すように、炭酸化養生工程S3で用いられるパレット20上に乾燥前の複数のプレキャストコンクリート部材1を積載して乾燥させてもよい。このとき、プレキャストコンクリート部材1は囲み部材21で囲まれてもよいが、プレキャストコンクリート部材1の乾燥速度を速めるためには、プレキャストコンクリート部材1は囲み部材21で囲まれないことが好ましい。図4に示す状態で乾燥工程S2を行うと、乾燥工程S2の終了後、プレキャストコンクリート部材2の配置状態を変えずに、炭酸化養生工程S3を速やかに行うことができる。
【0047】
以上説明した実施形態によれば、単位水量の減少率を所定範囲内になるまで乾燥させたプレキャストコンクリート部材を炭酸化養生することによって、プレキャストコンクリート部材を全体的に効率よく炭酸化することができる。その結果、実施形態のプレキャストコンクリート部材の炭酸化養生方法では、炭酸化養生するための施設自体の大規模な築造や改造が不要になると共に、炭酸化養生終了までの施設全体の占有が不要になる。
【0048】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例0049】
次に、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1-1~1-3、比較例1-1)
まず、フレッシュコンクリートを調製した。具体的には、水道水84kg/m、普通ポルトランドセメント365kg/m、砕石1649kg/mを混錬して、フレッシュコンクリートを得た。続いて、フレッシュコンクリートを型枠に打設して硬化させて、表1に示す空隙率を有するプレキャストコンクリート部材を得た。
【0051】
続いて、プレキャストコンクリート部材の単位水量を赤外線水分計で測定しながら、プレキャストコンクリート部材の単位水量の減少率が表1の値になるまでプレキャストコンクリート部材を乾燥させた後、図3に示すように、囲み部材の内部に炭酸ガスを供給して、パレット上に積載され、囲み部材で囲まれている乾燥後のプレキャストコンクリート部材を3日間炭酸化養生した。炭酸化養生後のプレキャストコンクリート部材の厚さは40mm以上500mm以下であった。
【0052】
(実施例2-1~2-3、比較例2-1)
まず、フレッシュコンクリートを調製した。具体的には、水道水84kg/m、普通ポルトランドセメント183kg/m、γ-CS183kg/m、砕石1641kg/mを混錬して、フレッシュコンクリートを得た。続いて、フレッシュコンクリートを型枠に打設して硬化させて、表2に示す空隙率を有するプレキャストコンクリート部材を得た。
【0053】
続いて、プレキャストコンクリート部材の単位水量を赤外線水分計で測定しながら、プレキャストコンクリート部材の単位水量の減少率が表2の値になるまでプレキャストコンクリート部材を乾燥させた後、図3に示すように、囲み部材の内部に炭酸ガスを供給して、パレット上に積載され、囲み部材で囲まれている乾燥後のプレキャストコンクリート部材を3日間炭酸化養生した。炭酸化養生後のプレキャストコンクリート部材の厚さは40mm以上500mm以下であった。
【0054】
(実施例3-1~3-3、比較例3-1)
まず、フレッシュコンクリートを調製した。具体的には、水道水84kg/m、普通ポルトランドセメント201kg/m、高炉スラグ微粉末164kg/m、砕石1636kg/mを混錬して、フレッシュコンクリートを得た。続いて、フレッシュコンクリートを型枠に打設して硬化させて、表3に示す空隙率を有するプレキャストコンクリート部材を得た。
【0055】
続いて、プレキャストコンクリート部材の単位水量を赤外線水分計で測定しながら、プレキャストコンクリート部材の単位水量の減少率が表3の値になるまでプレキャストコンクリート部材を乾燥させた後、図3に示すように、囲み部材の内部に炭酸ガスを供給して、パレット上に積載され、囲み部材で囲まれている乾燥後のプレキャストコンクリート部材を3日間炭酸化養生した。炭酸化養生後のプレキャストコンクリート部材の厚さは40mm以上500mm以下であった。
【0056】
上記実施例および比較例で得られた炭酸化養生後のプレキャストコンクリート部材について、下記の測定および評価を行った。
【0057】
[1] 炭酸化率
炭酸化養生後のプレキャストコンクリート部材を切断して切断試料を得た。続いて、切断試料の切断面の全面にフェノールフタレイン試薬を噴霧した。フェノールフタレイン試薬により赤色に呈色した部分は、炭酸化しておらず、アルカリ性を示す。また、赤色に呈色しなかった部分は、炭酸化した部分である。フェノールフタレイン試薬を噴霧した切断面の面積に対する、この切断面における赤色に呈色しなかった部分の面積の割合を、炭酸化率(%)とした。
【0058】
[2] 透水係数
JIS A 5371(プレキャスト無筋コンクリート製品)に準拠して、炭酸化養生後のプレキャストコンクリート部材の透水係数を測定した。
【0059】
[3] 評価
以下のランク付けを行った。なお、ランク◎、〇、△は合格であり、ランク×は不合格である。
【0060】
◎:炭酸化率が80%以上であった。
〇:炭酸化率が60%以上80%未満であった。
△:炭酸化率が40%以上60%未満であった。
×:炭酸化率が40%未満であった。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
表1~3に示すように、上記実施例では、所定範囲内の空隙率を有し、かつ単位水量の減少率を所定範囲内になるまで乾燥させたプレキャストコンクリート部材を炭酸化養生したため、プレキャストコンクリート部材を全体的に効率よく炭酸化できた。一方、上記比較例では、少なくとも単位水量の減少率が所定範囲外であるプレキャストコンクリート部材を炭酸化養生したため、プレキャストコンクリート部材の炭酸化が不十分であった。
【符号の説明】
【0065】
1 乾燥前のプレキャストコンクリート部材
2 乾燥後のプレキャストコンクリート部材
10 棚部材
20 パレット
21 囲み部材
21a ガス注入穴
22 炭酸ガス含有ガス
23 配管
24 炭酸ガス含有ガス源
図1
図2
図3
図4